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資料5 加藤委員提出資料(PDF形式:613KB)

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資料5 加藤委員提出資料(PDF形式:613KB)
資料5
2006年10月31日
産業構造審議会・基本政策部会
社会保障改革に向けて
-人口減少社会における課題と政策の方向性-
明治大学政治経済学部
加藤久和
1.社会保障制度の現状と課題
・社会保障給付額等の推移…p.3
・社会支出でみた国際比較…p.4
・社会保障負担と財源…p.5
・所得と負担(保険料)の伸び…p.6
・財政と社会保障/産業としての社会保障…p.7
・社会保障制度の現状と課題-総論…p.8
・(参考1)年金改革について-2004年改革と世界の年金改革
…p.9
・(参考2)医療費の推移と医療制度改革について…p.10
2
図1 社会保障給付額の推移(1)
2003年度の給付
額は84.3兆円
・1980年代に入ってから、社会保障給付額に
占める年金の割合が急増している。1983年
度では年金のシェアは45.1%、93年度では
51.1%、そして2003年度では53.1%である。
その一方、医療は給付額は増加しているもの
の、シェアは83年度の41.0%から2003年度
では31.6%に低下している。
90.0
80.0
70.0
60.0
合計
年金
医療
福祉その他
2003年度の年金の給付額
は44.8兆円、割合は
53.1%。
1980年度では42.2%で、そ
れまでは医療の割合のほ
うが大きかった。
50.0
2003年度の医療の
給付額は26.6兆
円。
40.0
・福祉その他が2000年度から増加しているの
は介護保険の導入による。今後は、介護保険
の増加がポイントになる。
30.0
20.0
10.0
0.0
1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003
図2 社会保障給付費の推移(2)
注:単位はいずれも兆円
90.0
・高齢者関係給付:年金給付、老人保
健(医療分)、老人福祉サービス、高年
齢雇用継続費の合計
・児童・家族関係給付:児童手当、児童
福祉サービス、育児休業給付、出産関
係費の合計
・総給付額に占める高齢者給付のシェ
アは1983年度が48.8%、1993年度が
60.9%、2003年度が70.4%とほぼ10
年で10%ポイント上昇している。
Point:年金、高齢者向けのウエ
イトが徐々に高まりつつある。
80.0
合計
70.0
高齢者関係給付
60.0
児童・家族関係給付費
両者の差額を高齢
者以外の給付とする
と、高齢者:それ以
外=7:3
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
児童・家族関係費
は3.2兆円、3.8%
2003年度の高齢者関
係給付額は59.3兆円、
社会保障給付額全体
の70.4%
0.0
1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003
3
資料:国立社会保障・人口問題研究所「社会保障給付
社会支出
図2 社会支出の対GDP比の比較(2001年)
35.0%
30.0%
25.0%
高齢者向け
ドイツ、フランス、ス
ウェーデン、デンマーク
の割合は27~29%
日本は社会
支出計で
16.9%、高齢
者向け7.3%、
家族向け
0.6%
家族向け
Point:日本の社会支出水準は
低い一方、先進国では支出水
準のばらつきが縮小しつつある。
20.0%
15.0%
10.0%
5.0%
デンマーク
スウェーデン
韓国
イタリア
カナダ
フランス
ドイツ
イギリス
アメリカ
日本
0.0%
・社会支出は社会保障給付よりも施設費
などが含まれるため、より広い概念であ
る。
・社会支出の対国内総生産比は日本の
16.9%に対して、ヨーロッパ諸国では
25%前後。アメリカは14.8%と日本より
低い。また、韓国は6.1%にすぎない。
資料:OECD(2004)"Social Expenditure database"
図3 OECD諸国の社会支出平均値と標準偏差
25.0%
20.0%
15.0%
平均
1980年代の26ヶ
国平均は
18.9%、90年代
以降は21.1%
10.0%
標準偏差
5.0%
OECD26ヶ国の社会支出の対GDP比
は、1980年が17.9%、1990年が
19.4%、2001年が21.3%と上昇してい
る。その標準偏差をみると、1990年代
以降縮小していることがみてとれる。
標準偏差の値は、1980年の6.3%から
1990年には7.3%に上昇したが、2001
年には5.8%まで低下している。近年、
OECD諸国の社会支出の規模は拡大
すると同時に、国別の格差が縮小する
傾向にあることがうかがえる。
90年代以降、標準偏
差は縮小傾向にある。
0.0%
1980
1982
1984
1986
1988
1990
資料:OECD(2004)"Social Expenditure database"
1992
1994
1996
1998
2000
4
兆円
図4-1 93SNAベースでみた社会保障給付と負担
80.0
70.0
社会保障給付
60.0
社会保障負担
・社会保障給付額と負担額の差をみ
ると、1980年度では2.9兆円、これが
給付額に占める割合は14.9%、1990
年度でも5.9兆円に増えたが同割合
は14.6%にすぎなかった。90年代に
入るとこの割合(差額/給付額)は急
増し、94年度に21.5%と20%を超え、
2000年度では30.8%と30%台に突
入した。
2004年度の給付額は75.9兆円、
一方負担額(保険料)は49.2兆
円であり、差額26.7兆円は公費
(租税)負担。
50.0
40.0
30.0
給付額と負担額の差額は1980
年度では2.9兆円、90年度では
5.9兆円に過ぎず、給付に占める
割合も14.9%、14.6%であった。
2004年度では35.1%
20.0
10.0
0.0
1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003
資料:内閣府「国民経済計算年報」、89年以前は筆者による推計。
Point:90年代以降の保険
料の伸び悩み
兆円
・その原因は負担額の伸び悩みであ
る。80年代の給付と負担額の平均増
加率はそれぞれ7.8%、7.2%であっ
たが、90年以降はそれぞれ4.6%、
2.6%と、両者の増加率に2%ポイント
の差が開いた。その原因は生産年齢
人口の減少、経済成長率の鈍化であ
ると考えられる。
図4-2 社会保障財源の内訳の推移
60.0
保険料等
社会保障給付費に掲載されて
いる社会保障財源のうち、被
保険者拠出と事業主負担を保
険料等とし、これと公費負担の
推移を示したものである。90年
代以降、保険料等が伸び悩ん
でいる一方、公費負担はトレン
ドで増加している。2003年度
の保険料等は54.6兆円、公費
負担は27.8兆円で、両者の比
率はおおよそ2:1であった。
50.0
40.0
30.0
公費負担
両者の割合
は、バブル経
済の頃は7:3
であった。
2003年度の保険料等
は54.6兆円、公費負担
は27.8兆円で、両者の
比率はおおよそ2:1
20.0
10.0
0.0
1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003
資料:国立社会保障・人口問題研究所「社会保障給付費」
5
図5 国民所得・社会保障負担の伸び率
国民所得
社会保障負担
20.0%
過去25年をみると、概
ね社会保障負担率の
伸び率が国民所得の
伸び率を上回ってい
る。
15.0%
・過去の国民所得と社会保障負担の伸
び率をみると、概ね社会保障負担の伸び
率のほうが高くなっている。
・1976-89年の平均伸び率は国民所得が
7.1%、社会保障負担は9.7%、19902004年の平均伸び率は同じく0.3%、
2.6%である。2000年以降をみても国民
所得の伸び率が平均△0.3%であるのに
対し、社会保障負担は0.9%となっている。
1993年以降でみる
と、社会保障負担
の伸び率は0.9%で
あるが国民所得の
伸び率は△0.6%
10.0%
5.0%
0.0%
1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003
Point:負担率の伸び>所得の伸び
-5.0%
資料:内閣府「国民経済計算年報」、89年以前の社会保障負担は筆者による推計。
図6 潜在的国民負担率の比較(2003年)
%
社会保障負担率
80
日本の社会保障負担
率はアメリカ、イギリ
スよりも大きい。財政
赤字は比較した国の
中では最も大きい。
70
60
50
66.5%
58.4%
51.2%
46.9%
40
10.6
30
14.5
10.1
租税負担率
0.1
5.6
71.1%
10
日本
アメリカ
30.0%
その他
25.0%
介護保険導
入による増
加
年金は5年に1回
の財政再計算時
に増加が著しい
10.0%
24.5
5.0%
24.7
0.0%
49.9
36.9
23.1
医療
15.0%
8.7
21.8
35.0%
20.0%
6.6
20
年金
21.0
5.1
4.2
38.3%
図5-2 社会保障負担(三分野別)伸び率
財政赤字
-5.0%
1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004
-10.0%
36.4
28.6
資料:内閣府「国民経済計算年報」、89年以前の社会保障負担は筆者による推計。
0
イギリス
ドイツ
フランス
資料:OECD"National Accounts"、財務省「財政関係諸資料」(財務省HPから)
スウェーデン
6
産業としての社会保障
図7 一般会計に占める社会保障関係費(決算ベース)
1995年産業連関表による社会保障分野の波及効果
社会保障関係費のシェアは過去30
年以上、20%弱。ここ数年で上昇し
ている。2004年では23.9%であっ
た。
30.0%
25.0%
20.0%
15.0%
10.0%
社会保障
5.0%
公共事業
国債費
0.0%
1970
1973
1976
1979
1982
1985
1988
1991
1994
1997
2000
2003
資料:財務省「決算書」
全産業
輸送機械
精密機械
住宅建設
医療
社会保険事業
公共事業
社会福祉
保健衛生
運輸
金融・保険
農林水産業
通信
電力
不動産
生産誘発係 追加波及係 総波及係数
1.823
2.165
3.717
2.709
2.085
4.473
2.067
2.153
3.943
1.963
2.215
3.939
1.729
2.3
3.844
1.774
2.249
3.806
1.874
2.185
3.802
1.463
2.433
3.794
1.427
2.414
3.727
1.788
2.163
3.68
1.511
2.295
3.619
1.718
2.162
3.609
1.434
2.076
3.184
1.663
1.839
3.027
1.215
1.97
2.794
資料:医療経済研究機構(1999)「医療と福祉の産業連関分析
図7-2 歳出総額と社会保障関係費の伸び率
歳出
50.0%
社会保障
40.0%
社会保障関係費の伸び率はおおむね
歳出総額の伸び率を上回っている。
2000年以降では歳出総額の伸び率
は平均△0.9%であるのに対し、社会
保障関係費は1.3%。
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
1970 1972 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003
-10.0%
資料:財務省「決算書」
7
出所:厚生省「厚生白書」平成11年版
社会保障制度の現状と課題-総論
課題と問題意識
•
•
•
•
社会保障給付のうち、年金給付が高齢
化とともに急増している。また、高齢者
向け給付の割合もまた急増している。
一方、家族関係給付の水準・伸び率と
も低い。
諸外国に比べ対GDP比でみた社会保
障給付の水準が低い。OECD諸国を
みると、日本の水準はアメリカ、イギリ
スなどの自由主義的、あるいは“残余
的”?福祉国家の水準である。その上
で、家族の構造変化、企業の福祉から
の撤退に直面している。新たな担い手
は登場するのか?
所得の伸び率以上に、負担の伸び率
が大きい。負担の拡大には、生産年齢
人口減少などの人口要因と経済成長
鈍化などの経済要因の二つがある。
財政面から見ても、社会保障関係費の
増加は財政健全化にとっての重しと
なっている。
解決策のための前提条件
•
•
•
•
引退後の生活を支える財源として年
金は重要(引退後の所得を年金にの
み頼っている高齢者が6割いるという
調査もある)。年金の重要性は今後も
変わらず、単純な水準切り下げでは
解決しない。
諸外国との比較をもとに水準を上げ
れば(家族関連支出を含め)、負担は
現役世代に集中する。高齢化が進展
する前に上げるべきであったが、今で
は手遅れの感がある。給付水準の上
昇は、現役世代以外の負担上昇と
セットで考え、高齢者の世代内再分配
を再考すべき。
負担の上昇は社会の閉塞感・国際競
争力低下をもたらし、経済成長にもマ
イナスである。社会保障財政の持続
可能性は成長が前提。
産業としての社会保障の役割もあわ
せて考える必要がある。
8
(参考1)年金改革について-2004年改革と世界の年金改革
2004年年金改革の内容
世界の年金改革の類型化
①保険料の上限を設定:厚生年金は2017年で18.3%に固定
①マイナー改革:日本、ドイツ、フランス、カナダなど
⇒給付を現行水準に維持するには26%程度まで保険料率を上げる必
要があると推計されてきたが、給付水準引き下げで負担を引き下げ。
・受給資格の変更…支給開始年齢、拠出期間
②有限均衡方式の導入:5年ごとの見直し
⇒95年後には1年分の積立金を残す前提で給付計画をたてる。
・拠出構造の変更…対象範囲(標準報酬の上限引き上げ、対象
者拡大)、保険料率等
・受給構造…年金額算定方式、インデクセーション(物価スライ
ド)、年金課税等
②メジャー改革
③マクロ経済スライドの導入
⇒既裁定であれば「物価上昇率-0.9%」で年金水準を改定する。
②-1:確定拠出への変更…オーストラリア、ハンガリーなど
②-2:概念上の拠出立て賦課方式…スウェーデン、イタリア、
ポーランド
④給付水準のコミットメント
⇒現役世代の可処分所得の50%を確保
②-3:積立方式への移行…チリ、アルゼンチン、ペルーなど
年金再計算の前提
物価上昇率1.0%、賃金上昇率2.1%、名目利回り3.2%
世界銀行2005年レポート
マクロ経済スライドの意味
政策オプションの提案
有限均衡方式の財政条件:
T
∑δ
t =1
t
C t + F1 =
T
∑δ
t =1
t
Bt + δ 95 F95
ここで、 Bは給付額、C は保険料(及び国庫負担)、F は積立金であり、 δ(r は利子率)
は割引率である。年金の財政再計算では、利子率r 、物価上昇率π 、人口増加率n 、経
済成長率g 、置換比率m がパラメータになる。このうち、 nが所与(人口推計による)、m
が政治的に決定される(ex.50%)とすると、残りの三つの基礎率 r、π 、g のうち二つを
決定すると、上記の財政条件から残り一つは一意に決まる。言い換えれば、自由度は3
ではなく2である。財政再計算において設定した(任意の)三つの基礎率が有限均衡方式
下のシステムをクローズさせるには、もう一つの操作変数が必要になる。それがマクロ経
済スライドである。
⇒年金財政の推移は、基礎率の変動とともに常に見直しを迫られる。例え人口推計が正
確であったとしても、基礎率すなわち経済環境の変化に敏感である。
(1)給付建て賦課方式+マイナー改革(従来型)、
(2)スウェーデン方式
(3)積立型移行と完全な民営化
(4)政府が積立型年金を運営
その他
・積立制移行への消極化(1994年レポート見直し)
・経路依存性の強調 他
9
(参考2)医療費の推移と医療制度改革について
図参1 国民医療費の伸び率
国民医療費
医療制度改革大綱の考え方:厚労省資料から
国民所得
20.0%
国民医療費の伸び率
は国民所得の伸び率よ
りも概ね高いといえる。
15.0%
2000年以降の伸び
率は国民所得が△
0.3%、国民医療費
は0.9%
10.0%
5.0%
0.0%
1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004
-5.0%
資料:内閣府「国民経済計算年報」、厚生労働省「国民医療費」
図参2 医療関連支出の対GDP比(2003年)
%
15.2
16.0
14.0
日本の医療関連支出は、世
界的に見てもそれほど高い水
準にはない。
12.0
10.9
10.4
10.0
8.0
中長期的対策
9.9
9.3
8.2
7.9
8.9
(1)生活習慣病対策
8.0
(2)平均在院日数の短縮
5.5
6.0
短期的対策
4.0
2.0
(1)高齢者の患者負担の見直し(既に実施)
資料:OECD(2006)"Health Data 2006"
医療関連支出には医療、救急医療、看護、技術開発等のすべてを含む。
デンマーク
スウェーデン
韓国
イタリア
カナダ
フランス
ドイツ
イギリス
アメリカ
日本
0.0
(2)入院中の高齢者の食費・居住費増(既に実施)
医療保険制度改革
新たな高齢者医療制度、都道府県単位の保険者の統合
10
2.社会保障財政の見通しと経済成長
ー給付と負担、出生率、労働市場-
・社会保障の負担と給付(厚労省見通し)…p.12
・日本の人口推計(高齢化のピークと独自推計)…p.13
・独自モデルによる社会保障財政の将来見通し…p.14
・経済成長の仮定と年金財政の将来見通し…p.15
・参考:出生率と経済成長…p.16
・社会支出(社会保障給付)と経済成長…p.17-19
・参考:労働力人口の見通し…p.20
・労働力人口の減少と技術進歩・生産性…p.21-22
・基本的な視点・問題意識…p.23
11
表1 社会保障給付と負担の見通し 厚生労働省2006年5月
将来見通しの期間
は、推計は難しい
が、高齢化のピー
ク時まで必要では
ないか?
資料:「社会保障の給付と負担の将来見通し-平成18年5月推計-について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/05/h0526-3.html
注:( )内は改革前の数値、%は対国民所得比
2012年度以降の経済前提
物価上昇率
1.0%
賃金上昇率
2.1%
名目利回り
3.2%
国民所得伸び率
1.6%
平成18年6月に公表された厚生労働省の社会保障給付と負担の見通しによると、社会保障給付費は2015年度に116
兆円、2025年度に141兆円に増加する。この間の増加率を計算すると年平均で2.4%となる。一方、経済前提をみると
賃金上昇率は2.1%であり、所得の伸びよりも給付の伸びのほうが高いことになる。
12
日本の人口推計:高齢化のピークと独自推計
図8 高齢化比率・老年人口比率の推移
40.0%
35.0%
30.0%
日本の将来人口は2002年推計によれば
2050年に1億50万人にまで減少する。高
齢化のピークは2050~60年であり、その
時点においても破綻しない社会保障財政
が必要となる。(65歳以上人口の絶対数の
ピークは2043年、3647万人である。)
80.0%
65歳以上人口比率、
老年人口指数のピー
クは2055年で、それぞ
れ36.0%、72.9%。
70.0%
75歳以上人口比率
のピークは2060年
の23.1%
60.0%
25.0%
50.0%
20.0%
40.0%
15.0%
65歳比率(左軸)
30.0%
10.0%
75歳比率(左軸)
20.0%
ここで定義した老年人口指数=
(65歳以上人口)/(20-64歳人
口)
5.0%
0.0%
1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060
人口減少は所与の条件である。
老年人口指数(右軸)
10.0%
2070
2080
参考:今後、出生率が急速に改善して
も1億人を回復することはない。
0.0%
2090 2100
資料:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口 平成14年1月推計」
図9 将来人口推計
図参3 出生率回復時の人口
140000
13000
2110年前後に9740万人
で定常化
120000
12000
100000
80000
11000
低位
10000
中位
TFR=1.8
9000
2050年の人口は中位が1億50万
人、低位が9200万人、2025年に
TFR=1.8では1億1100万人、
TFR=0.9では8790万人。
TFR=0.9
60000
2050年で2.07
2050年で1.85
2030年で2.07
中位推計
40000
20000
2130年に8450万人
で定常化
資料:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口 平成14年1月推計」
注:TFR=1.8、0.9は2025年までに直線的に変化して以降一定になる場合。加藤推計。
注:TFRが直線的に改善するケース。加藤推計。
13
2200
2190
2180
2170
2160
2150
2140
2130
2120
2110
2100
2090
2080
2070
2060
2050
2040
2030
2020
2010
8000
1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
2000
0
表2 独自モデルと厚労省見通しの比較
2015
2025
2030
2050
社会保障給付
年金
医療
給付計
厚労省
モデル
厚労省
モデル
厚労省
モデル
59
61.2
37
36.6
116
110.4
65
68.8
48
47.6
141
129.5
72.1
52.7
140.2
85.4
81.7
186.1
2015
2025
2030
2050
社会保障負担(保険料)
年金
医療
保険料計
厚労省
モデル
厚労省
モデル
厚労省
モデル
43
39.4
21
20.4
73
66.6
47.3
23.5
78.2
50.9
24.1
82.5
63.3
24.8
96.0
社会保障財政の将来見通し
社会保障給付額と負担額の差をみると、2004年の
28.5兆円から、2025年では52.9兆円、2050年では
96.0兆円に拡大
資料:「社会保障の給付と負担の将来見通し-平成18年5月推計-について
10億円
図10 社会保障給付と負担の見通し(独自モデル)
200,000.0
180,000.0
社会保障給付
160,000.0
社会保障負担(保険料)
社会保障給付額は
2050年で186.1兆円。
140,000.0
120,000.0
2050年の差
額は90.0兆円
100,000.0
80,000.0
60,000.0
40,000.0
社会保障負担(保険
料)は2050年で96.0
兆円
20,000.0
0.0
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
14
経済成長と年金財政の将来見通し
表3 経済成長と年金財政の見通し
2015
2025
2030
2040
2050
要約表 ベースケース
(兆円)
SSBPWP SSBP
SSCPWP SSCP
WPFUND
29.1
61.2
30.7
39.4
165.4
32.0
68.8
37.7
47.3
184.2
34.1
72.1
40.9
50.9
204.2
38.4
80.1
46.1
56.5
259.2
42.6
85.4
52.3
63.3
310.6
2015
2025
2030
2040
2050
要約表 高成長ケース
SSBPWP SSBP
SSCPWP SSCP
WPFUND
29.1
61.2
31.4
40.2
168.9
32.0
68.8
40.5
50.6
212.6
34.1
72.1
45.1
55.7
256.5
38.4
80.1
53.6
65.0
390.4
42.6
85.4
63.9
76.6
574.4
2015
2025
2030
2040
2050
要約表 ベースケース-高成長ケース
SSBPWP SSBP
SSCPWP SSCP
WPFUND
0.0
0.0
0.7
0.8
3.5
0.0
0.0
2.9
3.3
28.4
0.0
0.0
4.2
4.9
52.3
0.0
0.0
7.4
8.5
131.2
0.0
0.0
11.5
13.3
263.9
2015
2025
2030
2040
2050
要約表 低成長ケース
SSBPWP SSBP
SSCPWP SSCP
WPFUND
29.1
61.2
30.1
38.7
161.2
32.0
68.8
35.0
44.2
155.1
34.1
72.1
37.0
46.4
153.0
38.4
80.1
39.7
49.0
139.5
42.6
85.4
42.8
52.3
84.6
2015
2025
2030
2040
2050
要約表 ベースケース-低成長ケース
SSBPWP SSBP
SSCPWP SSCP
WPFUND
0.0
0.0
-0.6
-0.7
-4.1
0.0
0.0
-2.7
-3.1
-29.1
0.0
0.0
-3.9
-4.5
-51.2
0.0
0.0
-6.5
-7.4
-119.7
0.0
0.0
-9.6
-11.0
-226.0
賃金上昇率で1%の違いは保険料負担額にして
2050年で24兆円程度の差となる。
年金財政は経済成長に敏感である。厚生年金の積立金は
高成長であれば逓増するが、低成長なら枯渇に向かう。
700.0
600.0
ベースケース
500.0
賃金上昇率名目利回り物価上昇率
2.1%
3.2%
1.0%
2.6%
3.5%
1.0%
1.6%
2.8%
1.0%
ベースケース
高成長
低成長
図11 厚生年金積立金の見通し
兆円
400.0
高成長
低成長
2050年の積立金は、
ベースケースで310.6兆
円、高成長では574.4
兆円、低成長では84.6
兆円
300.0
200.0
100.0
0.0
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
15
参考:出生率と経済成長
図参5 経済成長率と出生率(2025-50年)
人口(年
齢別等)
(人口)
0.80%
労働市場ブロック
労働力率、労働力
人口(男女)
人口予測ブロック
(GDP等) 中央政府、地方政
府、社会保障基金
→経常収支、
貯蓄投資差額
(労働力等)
TFRの仮定
→2050年までの
独自推計
0.72%
財政ブロック
(賃金等)
物価水準、
(失業率)他
0.67%
0.62%
0.57%
0.60%
マクロ経済ブロック
(人口構造)
0.70%
0.70%
(供給側)生産関数(GDP)
(需要側)消費、投資、貯蓄
(所得)賃金
↓
貯蓄率、利子率etc.
民間・国内貯蓄投資差額
(所得等)
(負担)
0.54%
0.52%
(給付・負担)
0.47%
0.50%
0.42%
(財政収支)
社会保障ブロック
0.36%
0.40%
①年金:厚生年金、国民年金
②医療:国民医療費等
③介護:費用等
0.34%
0.31%
0.30%
内生変数:277
外生変数:172
図参4 マクロ経済・社会保障モデルの概要
0.25%
0.20%
1.8
高位
1.7
1.6
1.5
中位
1.4
1.3
1.2
1.1
低位
1
0.9
注:横軸の数値は、2025年のTFRの水準を示す。加藤試算。
図参6 潜在的国民負担率(2050年)
64.2%
0.65
62.7%
61.3% 61.3%
人口減少は与件であるが、しかし出生率改
善は成長率促進を通じて、長期的によりベ
ターな経済環境をもたらすことも考えられる。
60.0%
0.6
58.7%
57.1% 57.4%
56.2%
55.1%
0.55
52.9%
53.5%
54.0%
0.5
1.8
高位
1.7
1.6
1.5
中位
1.4
1.3
1.2
注:横軸の数値は、2025年のTFRの水準を示す。加藤試算。
1.1
低位
1
0.9
16
社会支出(社会保障給付)と経済成長
加藤(2006)「社会保障の規模と政府の役割」から
①政府支出の増加や国民負担の増加と経済成長との関係についての先行研究 Atkinson(1995)、宮島(1992)、古川他(2000)、上
村(2001)、内閣府(2003)、茂呂(2004) ⇒多くが負担増は成長率に負の影響を及ぼす。しかしその因果関係については検討の余地
がある。
②加藤(2006)では、社会支出(社会保障給付)の成長に対する供給面への影響を重視して、分析を行った。
・社会支出の拡大、とりわけ年金支出の増加は、高齢者などに対する労働供給のインセンティブを低下させ、労働力率を低下させる
(早期引退効果)。
・年金給付の充実は、引退後貯蓄の必要性を低下させ、その結果、民間貯蓄率の低下をもたらす。
・所得再分配の活発化は、政府の関与を通じてマクロ経済全体の効率性を損ない、成長力を低下させる可能性をもつ。
・また社会保障支出等の増加が政府支出の拡大をもたらし、財政赤字を悪化させる。財政赤字の悪化がクラウド・アウトをもたらして
金利を上昇させ、投資を減少させ、需要面・供給面の双方から成長に負のインパクトをもたらす可能性をもつ。
・その一方、「クズネッツの逆U字仮説」など、社会保障制度の拡充による所得再分配の促進が経済成長を高めるという見方もある。
社会支出/GDP
図12 社会支出比率と高齢化
参考文献
Atkinson,A.B.(1995), “The Welfare State and Economic
Performance,” National Tax Journal, Vol.48,No.2, pp171179.
40.0%
35.0%
30.0%
スウェーデン、
フィンランド、ノ
ルウェー
北欧三ヶ国の回帰
線
その他の国の回帰線
25.0%
内閣府(2003)、『平成15年度経済財政白書』
20.0%
古川尚史・高川泉・植村修一(2000)、「国民負担率と経済成
長」、日本銀行Working Paper Series、00-6、日本銀行調査
統計局。
15.0%
10.0%
トルコ
日本
5.0%
0.0%
0.0%
上村敏之(2001)、『財政負担の経済分析』、関西学院大学出
版会。
宮島洋(1992)、『高齢化時代の社会経済学』、岩波書店。
韓国
5.0%
65歳以上人口比率
10.0%
15.0%
20.0%
資料:OECD(2004)"Social Expenditure database","Labor Market Statistics"
出所:加藤(2006)「社会保障の規模と政府の役割」
25.0%
茂呂賢吾(2004)、「政府の規模と経済成長」、ESRI
Discussion Paper Series No.103、内閣府経済社会総合研
究所。
17
社会支出(社会保障給付)と経済成長(続)
表4 貯蓄率、労働力人口への影響-パネル分析の結果①
<1>
プーリング
OLS
貯蓄率
0.1597
(23.75)
社会支出比率(合計) -0.3001
(-9.496)
高齢化比率
モデル
推定方法
被説明変数
定数項
<2>
固定効果
OLS
貯蓄率
0.2339
(23.09)
-0.6704
(-13.36)
1期前一人当たりGDP
adj R~2
s.e.
サンプル数
F値
ハウスマン検定
0.1493
0.0511
509
0.7425
0.0281
509
49.67*
<3>
固定効果
OLS
貯蓄率
-0.6835
(-6.692)
-0.8581
(-13.39)
-0.6426
(-4.386)
0.1068
(9.326)
0.8037
0.0245
434
58.85**
<4>
固定効果
IV
貯蓄率
-0.7098
(-6.630)
-0.6480
(-8.684)
-0.9420
(-5.828)
0.1087
(9.058)
0.8052
0.0239
418
60.98**
<5>
<6>
<7>
<8>
<9>
変量効果 プーリング 固定効果 固定効果 変量効果
GLS
OLS
OLS
OLS
GLS
貯蓄率 労働力人口 労働力人口 労働力人口 労働力人口
-0.5114
0.0238
0.0424
-0.1286
0.0146
(-5.951)
(7.903)
(4.740)
(-1.789)
(0.781)
-0.8187
-0.0637
-0.1524
-0.1690
-0.0732
(-13.71)
(-4.658)
(-3.591)
(-3.471)
(-3.973)
-0.5109
-0.0664
-0.0229
(-3.879)
(-0.604)
(-0.634)
0.0868
0.0187
0.0014
(8.994)
(2.340)
(0.660)
0.4087
0.0468
0.0810
0.0888
0.0505
0.0251
0.0189
0.0186
0.0181
0.0183
434
423
423
414
414
1.682*
1.673*
21.90**
10.81*
注1)OECD(2004),"Social Expenditure database"などから作成。作成方法や変数については本文を参照されたい。
2)括弧内はt値である。
3)推計期間は1980~2001年。データベースには欠損値がある、アンバランスド・パネルである。
4)F値は固定効果モデルとプーリング・モデルの選択、ハウスマン検定は固定効果モデルと変量効果モデルの選択の指標である。
*は5%有意水準で、**は1%有意水準で帰無仮説が棄却されることを示す。
表5 経済成長率への影響-パネル分析の結果③(重回帰)
<1>
プーリング
OLS
0.0156
(7.034)
社会支出比率(増分) -1.1100
(-10.05)
貯蓄率
0.1082
(5.570)
労働力人口増加率
0.3366
(6.289)
高齢化比率
モデル
推定方法
定数項
adj R~2
s.e.
サンプル数
F値
ハウスマン検定
0.3420
0.0206
402
<2>
固定効果
OLS
0.0084
(2.438)
-1.0273
(-9.141)
0.1844
(5.573)
0.2787
(5.211)
<3>
変量効果
GLS
0.0126
(4.084)
-1.0802
(-10.02)
0.1411
(5.727)
0.3046
(5.832)
<4>
プーリング
GLS
0.0176
(10.57)
-1.1350
(-14.70)
0.0599
(3.572)
0.4309
(10.40)
<5>
固定効果
GLS
0.0094
(3.568)
-1.0192
(-13.50)
0.1668
(6.435)
0.3464
(7.815)
<6>
固定効果
OLS
0.0103
(2.881)
-0.9285
(-7.179)
0.1631
(4.726)
0.2778
(5.184)
0.4207
0.0193
402
3.014**
0.3573
0.0194
402
0.5220
0.0202
402
0.5765
0.0192
402
2.904**
0.4477
0.0189
402
<7>
<8>
<9>
固定効果 固定効果 固定効果
OLS
OLS
OLS
0.0042
-0.0013
0.0073
(1.193)
(-0.378)
(2.109)
-2.2840 a) -1.8227 b) -1.0686 c)
(-8.246)
(-4.136)
(-7.462)
0.2230
0.2674
0.1933
(6.662)
(8.039)
(5.720)
0.2408
0.2857
0.2870
(4.412)
(4.942)
(5.278)
0.4025
0.0196
393
2.636**
0.3220
0.0209
410
3.372**
0.3756
0.0194
382
2.856**
5.951**
注1)OECD(2004),"Social Expenditure database"などから作成。作成方法や変数については本文を参照されたい。
2)被説明変数は実質経済成長率である。
3)括弧内はt値である。
4)推計期間は1980~2001年。データベースには欠損値がある、アンバランスド・パネルである。
5)F値は固定効果モデルとプーリング・モデルの選択、ハウスマン検定は固定効果モデルと変量効果モデルの選択の指標である。
6)<4>と<5>は国別の分散不均一性を考慮してGLSを適用したもの、<6>は時間ダミーを加えたものである。
7) a)は年金比率(増分)、b)は医療比率(増分)、c)は社会支出から失業関連支出を除いた社会支出比率を説明変数としている。
パネルデータによる分析では、社
会支出の増加は供給面における
生産要素(貯蓄率、労働力人口)に
対して負の影響を及ぼしている。
社会支出の規模(対
GDP比)は経済成長
率に対して有意にマイ
ナスの影響を与えてお
り、この比率が1%ポ
イント増加すると、経
済成長率もおおむね
1%低下する。
注:
生産関数を GDP=F(資本ス
トック、労働力人口、技術水準)
とする。GDPの差分から成長率
が計算されるとすれば、これに
対応する説明変数として、成長
率=F(資本ストックの増分≒貯
蓄、労働力人口の増分、その
他)とすることが適切であると考
えた。なお、説明変数間の相関
については、表4の各モデルの
決定係数が比較的小さいことか
ら、問題はないと判断している。
18
社会支出(社会保障給付)と経済成長(続)
図14-1 経済成長と社会保障支出(1980年代)
図13 経済成長率と社会保障支出の増加
0.15
Y:実質経済成長率
0.15
Y:実質経済成長率
0.1
0.1
0.05
0.05
-0.04
-0.03
-0.02
-0.01
0
X:△社会支出/GDP
0
-0.04
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
-0.03
-0.02
-0.01
0
0.01
0.02
X:△社会保障支出/
GDP
0.03
0.04
0.05
0.06
0.06
-0.05
-0.05
-0.1
Y=0.030-1.311X
(20.22) (-7.40)
-0.1
Y=0.031-1.311X
(29.5) (-11.6)
図14-2 経済成長と社会保障支出(1990年代以降)
資料:OECD "Social Expenditure database", "National Accounts"
出所:加藤(2006)「社会保障の規模と政府の役割」
0.15
Y:実質経済成長率
RGDP = 0.003 − 1.311× SOEX
0.1
データはOECD26ヶ国における1981-2001年の
501サンプル。(アンバランスド・パネル)
0.05
X:△社会保障支出/GDP
0
-0.04
社会支出の増加と経済成長率の間の負の関係
は、期間を変えてもほぼ同様な結果が得られる。
-0.03
-0.02
-0.01
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
-0.05
Y=0.032-1.313X
(22..01) (-9.03)
-0.1
19
0.06
参考:労働力人口の将来展望
図参6 労働力人口の展望
7,000.0
6,500.0
6,000.0
中位
5,500.0
高位
低位
5,000.0
2025年1.8
4,500.0
2050年の労働力人口は、中位で
5005万人、TFR=1.8なら5360万
人、TFR=0.9なら4500万人。TFR
=1.8と0.9の差は860万人にもの
ぼる。なお、2005年度の労働力
人口は6654万人。
2025年0.9
4,000.0
1998
2003
2008
2013
2018
2023
2028
2033
2038
2043
2048
出所:加藤(2006)「少子化がマクロ経済や財政・社会保障などに及ぼす影響」
労働力人口の乖離率
2015
2025
高位
0.0%
0.3%
低位
0.0%
-0.4%
2025年1.8
0.1%
0.1%
2025年0.9
0.1%
-0.2%
中位推計と比較した場合である。
2050
6.0%
-7.0%
7.2%
-10.0%
20
労働力人口減少と技術進歩・生産性
労働力人口と技術進歩の関係(1)
図15 技術進歩と労働力人口増加率:プールド・データによる回
帰
6
技術進歩率(TFP)
Kuznets(1960)、Simon(1981)は、人口
総数が多いほど優れたイノベーター生まれ
る可能性が高まり、また相互の知的交流の
機会も増えることで技術進歩が促されると指
摘する。Kremer(1993)は、戦後の先進国に
おける技術進歩の速度低下を人口増加速度
の低下と関連させて説明した。さらに、
Aghion and Howitt(1992)は研究開発の
成果は市場の規模が大きいほど多くなるとし
ている。
5
4
3
2
1
-1
0
労働力人口と技術進歩の関係(2)
-1
①規模の経済喪失効果:労働力人口増加率
が低下することによる集団的な力の低下。
-2
③労働節約促進効果:技術進歩を含め労働
力以外の生産要素を相対的に多く用いるこ
とから技術進歩が促進される。
経済企画庁編(1995)『平成7年版経済白
書』。
①+②<③なら労働力人口減少は技術進
歩を促す。
経済企画庁(1995)、八代(1999)、労働省
(2000)、内閣府(2003)など多数の分析あり。
労働力人口増加率(LG)
0
-2
②創造性喪失効果:労働力人口の減少とこ
れに伴う若年労働力の減少により、若年層
が持つ創造性や積極性が全体として乏しく
なる。
TFP=1.254-0.2356×LG
(14.28)(-4.09)
1
2
3
4
5
6
資料:OECD(2006)。本文参照。
注:1)対象はデータの揃った18ヶ国である(アイルランドを除く)。また、データ数(NT)は296である。.
2) 1985~2004年までのデータを対象とした、アンバランスド・パネルである。
出所:加藤(2006b)「技術進歩と労働力人口変動のパネル分析」
表6 技術進歩と労働力人口-パネル分析②
モデル
被説明変数
推定方法
定数項
労働力人口増加率
65歳以上人口比率
adj R~2
サンプル数
F値
ハウスマン検定
<1>
固定効果
TFP
OLS
2.071
(2.259)
-0.2275
(-3.404)
-5.657
(-0.905)
0.083
296
1.567*
<2>
<3>
<4>
<5>
<6>
変量効果 固定効果 変量効果 固定効果 固定効果
TFP
労働生産性 労働生産性
TFP
労働生産性
GLS
OLS
GLS
OLS
OLS
1.902
4.010
4.169
2.151
4.377
(3.059)
(3.967)
(5.736)
(2.308)
(4.632)
-0.2468
-0.3156
-0.3295
-0.2292
-0.4264
(-3.982)
(-6.145)
(-6.551)
(-3.356)
(-6.408)
-4.394
-11.624
-12.357
-6.060
-13.612
(-1.068)
(-1.591)
(-2.438)
(-0.963)
(-2.018)
0.044
0.275
0.092
0.083
0.351
296
480
480
283
401
5.287**
1.560*
6.146**
0.601
1.958
資料:OECD(2006)。本文参照。
注:対象はデータの揃ったOECD18ヶ国である。
詳細については、加藤(2006b)「技術進歩と労働力人口変動のパネル分析」参照。
21
労働力人口減少と技術進歩・生産性(続)
表7 技術進歩と労働力人口-パネル分析③(G7ケース)
<1>
モデル
プーリング
被説明変数
TFP
推定方法
OLS
定数項
1.190
(9.344)
労働力人口増加率 -0.1160
(-1.085)
65歳以上人口比率
adj R~2
サンプル数
F値
ハウスマン検定
0.001
126
<2>
固定効果
TFP
GLS
1.1253
(8.533)
-0.0293
(-0.242)
0.060
126
2.276**
<3>
変量効果
TFP
OLS
1.161
(6.828)
-0.0705
(-0.626)
0.000
126
<4>
固定効果
TFP
OLS
5.399
(5.312)
-0.1000
(-0.874)
-29.268
(-4.237)
0.179
126
4.982**
0.872
図16 全要素生産性上昇率の推計値比較(日本)
<5>
変量効果
TFP
GLS
3.888
(4.378)
-0.1607
(-1.431)
-18.358
(-3.148)
0.060
126
6
OECD
4
2
0
1970
1982
1985
1988
1991
1994
1997
2000
2003
-6
-8
資料:OECD(2006)及び著者の推計
表8 技術進歩と労働力人口-わが国の時系列データによる検証
<1>
さらに、日本の時系列データを用いて推定を行うと、
労働力人口増加率と技術進歩率には正の関係がみ
られる。
1979
筆者の推計
推定式
前頁で述べた労働力人口増加率と技術進歩率の負
の関係は、G7(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、
イタリア、カナダ、日本 )だけを取り出すと有意な関
係は消えてしまう。
1976
-4
8.752*
資料:OECD(2006)。本文参照。
注:1)対象はG7の国々である。.
2) 1985~2004年までのデータを対象とした。アンバランスド・パネルである。
3)括弧内はt値である。
*は5%有意水準で、**は1%有意水準で帰無仮説が棄却されることを示す。
1973
-2
<2>
<3>
<4>
<5>
定数項 労働力人口65歳以上
増加率
人口比率
-0.097
1.0688
(-0.162) (2.034)
-0.362
0.7983
(-0.608) (1.513)
1.688
0.5994
-0.1272
(0.922)
(0.863) (-1.032)
-0.0230
1.5773
(-0.350) (3.506)
0.7700
1.3713 -0.0100
(0.411)
(2.365) (-0.571)
dum74
dum85
1.584
(1.943)
0.9559
(1.470)
1.5163
(1.284)
調整済み
決定係数
0.068
D.W.
0.126
1.40
0.069
1.26
0.193
1.33
0.180
1.34
1.21
資料:国民経済計算年報、労働力調査
注:1)推定期間は1961~2004年。
2) dum74は1961~1974年を1、それ以降を0とするダミー変数。
2) dum85は1985年以降を1、それ以外を0とするダミー変数。
3)<4>、<5>はOECDデータを1985年以降接続した系列を対象とした結果である。
22
基本的な視点・問題意識
基本的な視点
• 成長に伴うパイの拡大が社会保障財政を持続させる。
• 成長のためには社会保障精度の効率性が求められる。
• 今後、経済成長を維持するには、教育・訓練などを通じた
“人財”育成などによって技術進歩を高めていく必要がある。
(さらなる)問題意識
経済成長がなければ社会保障も維持できない。成長が維持できなければ切り
分けるパイが小さくなる。但し、パイが拡大しても、それが富者にのみ獲得さ
れるようなシステムでは問題がある。どのように拡大したパイを社会に公平に
還元するか、が重要である。ひとつは、セーフティネット(公的扶助、基礎年金
等)を厚くする方向がある。ただ給付を増やしても、現役世代への過度の負担
が生じ、これによって成長が低下してしまえば、ライフサイクルで見た個人の
効用水準が低下する可能性を考慮する必要がある。
23
3.社会保障制度:改革の方向性を考える
•
•
•
•
•
•
社会保障の機能…p.25
視点1-成熟型社会における位置づけ…p.26
視点2-経済的効率性…p.27
参考:負の所得税について…p.28
視点3-規範的側面…p.29
視点4-社会政策の一環としての側面…p.30
24
社会保障の機能
社会保障を政府の役割とするならば、政府の機能に伴う三つに機能がある。
①資源配分機能
⇒年金や医療保険など、民間では供給できない(過少供給となる)公的なリス
クプーリングの手段
②所得再分配機能
⇒公的扶助(本来の意味でのセーフティネット)など。分配という視点から積極
的に関与する必要性。但し、租税との役割分担については検討要。(租税に
おいて消費税へのシフトが生じれば、分配における社会保障の役割がさらに
求められる可能性。)
③経済(安定化)機能
A)リスクプールとの関係から:安心(社会の活力)・安定(雇用・失業率の改
善)・安全(複線型ライフコース選択の機会コストの低減)の整備が経済活力
を生み出す。
B)リスク軽減との関係から:ビルトインスタビライザー(失業給付等)としての
役割、産業としての社会保障(経済への直接的な寄与)
25
⇒成長の維持による失業率安定化とこれによる貧困状況の改善
視点1:成熟型社会における役割
●成熟型社会の定義…A.高齢化社会、B.非・右肩上がり経済社会、C.多様な
選択肢の存在、D.豊かな生活水準
●成熟型社会における社会保障制度の役割
①人生における多様な選択の機会(C.)
⇒人生の選択における機会コストを低減させる必要がある。(出生の機会コス
ト、年金・退職金のポータビリティの難しさに伴うコスト等)
⇒システム(社会保障制度)の一元化(ex. 年金・医療の一元化)、準コーポラ
ティズム型制度からユニバーサル型制度への転換
②担い手の多様化の必要性(非・残余的福祉国家)(A.、B.)
⇒政府、家族、企業、個人の自己責任の四者間のバランスの必要性(エスピン
=アンデルセンによる日本型福祉国家)+コミュニティ、NPOの位置づけは?
③セーフティ・ネットの再構築(D.)
⇒ロールズ“的”マキシミン原理:パイの切りわけで、最小の取り分の者のパイ
も増加させる。
26
視点2:経済的効率性の重視
●視点:効率的な制度、政府支出の無駄の排除、国際競争力の視点
●政策の方向性
①年金・医療・介護の重複の見直し
・給付・負担ポイント制:ある年齢での給付総額を10点とし、年金3点、医療7点などの選
択性を取り入れる。
・セーフティネット整合性:生活保護、基礎年金、最低賃金、税額控除の水準の統合
⇒究極の手段としての「負の所得税構想」
・基礎年金の全額租税化(ex.2050年度で6.6%程度の消費税率上昇(加藤(2006))
②社会保障需要の減少
・健康増進・予防の重視による医療費:健康診断等の保険化、医療知識等の普及
・平均寿命を考慮した年金給付額の設定(65歳から平均寿命までの給付総額をもとに
した柔軟な給付開始年齢の選択)
③制度運営の柔軟性
・逆物価スライド:景気がいいときは給付を減らし(負担を増やし)、景気が悪化した場合
には給付を増やす(負担を減らす)。高齢世代も好景気なら金利も上がり資産からの収
27
益が増加する。⇒マクロ経済指標との連動の強化
参考:負の所得税について
課税後所得
45度線
c
d
負の所得税とベーシック・インカム構想
・負の所得税
y0'
b
実行可能性、財政負担
ym'
税制度と社会保障制度の融合
a
⇒国民総背番号制の必要
O
ym
y0
y*
当初所得
図17 生活保護と負の所得税(フリードマン・モデル)
フリードマンのモデルでは、所得がナショナル・ミニ
マム以下の世帯に対してはymに達するまでの所
得を負の所得税として支払い、課税最低限(y0)以
上の所得を持つ世帯には通常の所得税が課せら
れる。一方、所得がym以上yo以下の世帯に対し
ては、 を税率とする負の所得税が給付されるとい
うものである。したがって、負の所得税導入後の課
税後所得はym’bcとなる。
・ベーシック・インカム
最低限の所得を一律に保障する。
社会保障の普遍化(vs.選別化)の象徴
マーシャル(社会権)
⇒最低保証年金へ
(加藤(2003)「財政学講義」から)
28
視点3:規範的側面
●負担と公平性の問題
○勝者の論理、敗者の論理にならないようにすべき。手厚い福祉が福祉依存、
モラルハザードを引き起こす懸念。70年代の福祉国家への批判。
①必要な者への給付
年金:高齢者に対するインカムテスト、年金課税の重視等。
医療:軽症等の負担増大、歯科診療の患者負担見直し、保険免責制の導入
②高齢世代の負担のありかた
高齢層における世代内の格差にも考慮(高齢層ほどジニ係数が高い)
高齢世代も少子化に責任がないわけではない(少子化が始まって30年)
③セーフティネットの再構築
ロールズ“的”マキシミン原理(パイの切りわけで、最小の取り分の者も増や
す)、負の所得税構想他
④拠出額と給付額の連動性・透明性
個人記録の整備、ポイント制などのわかりやすさ、情報開示
29
視点4:総合的社会/公共政策としての側面
社会政策…社会保障、保険医療、福祉サービス、住宅供給、コミュニティ・サー
ビス、教育( T.H.マーシャル)
①医療政策、教育政策、住宅政策などとの連携の必要性
・予防医療や少子化対策との協同の必要性
・低所得者向け公共住宅の供給、奨学金支援制度、軽症医療のバウチャー発
行制度(免責制導入後などに負担軽減のため)等
②雇用政策等との連携
・高齢者雇用-高齢労働力の需要開拓・支援企業への助成(高年齢雇用継続給
付等の見直し?)
・正規・非正規などの雇用の分化・二極化はセーフティネットの二極化(守られる
ものと保障のないもの)を生み出す危険性を持つ。
・高等教育機関による人的資本再投資支援
30
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