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Title Author(s) Citation Issue Date URL 身体障害者・老人をとりまく環境―QOLの向上を目指 して― 鈴木, 康三; 万久里, 知美 京都大学医療技術短期大学部紀要. 別冊, 健康人間学 (2000), 12: 12-16 2000 http://hdl.handle.net/2433/49575 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 京都大学医療技術短期 大学部紀 要別冊 健康 人間学 第 12号 2000 身体 障害者 ・老人 を と りま く環境 - QOL の向上 を目指 して- 鈴木 康三,万久里知美 Envi r onmentSur r oundst heDi s abl ed and El der l y Pe r s ons -I mpr ovementorQOI . Koz o SuzUKIaI l d Sat omiMAKt T RI 演,④社会参加,( 豆趣味,( す旅行 ・レジャー ・ 近年,QOL ( 生 活 の質) につ いて,論 議 さ れることが多 くなって きたが,身体障害者 ( 特 スポーツ 等 々が構成要素 と考 えられ,「 QOI J に下肢切断者) につ いて も例外ではない。以前 の向上」 とはまさに社会的不利が最大限に除去 は 「 歩 けるように さえなれば」 とい う患者の願 され,個人の もつ可能性が最大限に開花 した状 望は,「 健常 な人 と同 じように歩 きたい」,「 走 .とは結果 と 態 と言 える。 つ ま り,最高の QOI りたい」,「スポーツをや りたい」等 と変化 して して達成 される もので はな く, 『どの ような人 きた。切断者の残 りの人生 をよ り質の高い ・内 生 を送 りたいのか,創 り出 したいのか』 とい う 容の濃い ものにするような義足の研究,開発 も 目標 に向か って個 々に詳細 な計画 を立て,それ 進み, このような願 いは不可能ではな くなって に向けて進めていって初めて実現 される もの と きている。 言 える。 また,内部障害の身体障害者 ( 呼吸不全 によ こ う した QOI .は,l VHO ( 世界保健機構) るもの)に して も, 以前 は病院で しか生活で きな が提唱 している障害分類 に対応 して次の ように かった状態の患者 も,家庭 に帰 った り,職場 に 分けることがで きる。 復帰 した りす ることがあた りまえの ようになっ 1.生物 レベルの QOl 」( 生命の質) 機能 ・形態障害 に対応 した もの て きた し,余暇 も楽 しめるようになって きた。 こうした事実 は,早期 リハ ビリテーシ ョンの 2.個人 レベルの QOl 」( 生活の質) 能力障害 に対応 考 え方 の浸 透 やそ れに伴 った機 器 ・用具 の開 発,発展 によるところが大 きい と思われる。 3.社会 レベルの QOl .( 人生 の質) 社会的不利 に対応 本稿では まず,QOI .の考 えを整理 し,下肢 切断者,呼吸不全患 者,高齢者の QOい E り上 に Ⅱ.下肢切断による障害者の QOL について ついて話 を進めたい。 6世紀頃, イン ド 義足の最古 の記録 は紀元前 1 L QOL について の医学書 リグ ・ベ ーダに見 ることがで きる 。 この後の義足の推移 は闘争 ( 戦争)の歴史 と QOI .( Qual i t y( ) fLi f e )を構成 す る要素 は非 常 に多 くの もの を含 んでいる 重 なるが,初期の義足 は断端 に棒 をつ けたよう 。 な棒義足 ( パ イロン)であったことが残 ってい ① ADl J(日常生活 活動),② 仕事,③ 家庭生 京都 大学 医療技術短期 大学部理学療法学科 Di v i s i o no fPh v s i c a l r rh e r a p y ,Co l l e g eo fMe di c a lTe c l l n O I o L qy.Kv o t oUr l i v e r s i t y 1 999年 I L )月 15日受付 12 鈴木康三,他 :身体障害者 ・老人をとりまく環境 図 1 仏レスカール らは人寺院のモザイク るモザ イク絵 らもわか る ( 今世紀 に入 か ってか 図 1)0 を見せ と して義足 は飛躍的 な進 歩 2度 の世界人戦 を契機 で は膝継手が固定か ら遊 動 にな り,吸 た。大腿義足 形 ソケ ットの導入,体重 の であ っ 着式 四辺 坐骨支持 な どがそ う での殻構造義足 た。今世紀後半 か ら外 に入 って くる と,それ ま 骨格構造義 足 観 や触感 も生体 に似せ た 切 断者が ミニスカー に変 わ って トを もう きた。 この義足 は女性 一 願望 を満たせ る ものであ った し度着たい とい う ジュール化 して い るので 種 々の ,構成要素がモ パ ーツを取 り付 けること も可能であ 機 能 を持 った ば正座 を可能 にす る部 品)。 コ ンピ った ( 例え 術 を駆使 した義足 も開発 されて きたュー ター技 歩行速度 に合わせ て下腿 部の振 り出がそれは, ロール し,ゆ っ くり歩 いて も,速 く しをコン ト 座 に対応で きるようマ イ クロコンピ歩いて も即 くものである。歩行速度 が違 って もュー タが働 出 しが対応す るので 「 走 る」 ことがで 下腿の振 きる り にな った。義足足部 の開発 も進み,歩行周 よう 「蛙接地」 期の で放 出す か らエ ネルギー を貯めて 「爪先離れ」 現 で よ りるエ ネルギー蓄積型足部 ( 図 2) の出 味と 走 りやす くなった。結果的 に余暇 ・趣 第1 2号 健康 人間学 2000 表 1 陸上競技記録 ( 1 998年 4月現在の公式記録) T42)1 ) ] [ 大腿切断者 を含む競技 グループ ( 200m 10( )nー 男子 世界記録 1 3′ ′ 54 日本記録 1 女子 世界記録 [ 下 本記録 800m i ) 1, 500m 7〝 39 6′ ′ 67 46′ ′ 40 1 9′ ′ 38 43′ ′ 39 23〝 60 1 ′ 1 3′ ′ 29 日 loom 腿切断考を含む競技 グループ l OOn t i( T44) 2 ) ] 男子世界記録 11 〝 36 i ) 3 ′ ) 0 ( ) m 日 HOOnー 1, 500m ′ 07 53′ ′ 99 i ) i ′ 23〝 26 5′ 54′ ′ 06 i ) ′ 34〝 1 3 400m 本記録 女イ ー 世界記録 1 3′ ′ 00 26〝 90 1 ′ 05〝 46 日本記録 1 9 4′ ′ ′ ( 8 ー ( 9 ) 3L ) ′ ′ 03 l l oom 200m I l o ( ) m ′ 1 9 ′ ′ L ) O 8〔 ) ( ーnt 1. 5 0 男+世界記録 9′ ′ 84 1 9〝 32 43′ ′ L ) 9 l ′ 41 ′ 口本記録 女子世界記録 日本記録 l O′ ′ 08 20〝 29 44〝 7 8 ′ 1 1 1 ′ 46〝 l H 3′ 27′ ′ 37 1 0′ ′ 49 i ) 1 ′ ′ 34 47 ′ ′ 6( 〕 1 ′ 53′ ′ L ) 8 3′ 5 ( ) 3 8 ′ ′ 24 11 〝 48 23" 7 3 53′ ′ L ) I i ) i ′ ( 0nt ′ ′ 46 ) 3′ ′ L 1 5 4′ 11 ′ ′ 1 0 1) 一 側 2) 一 大腿切断 ・ 股関節離断 側下腿切断 ・ サ イム切断,歩行 叶能で 一 側下肢 または両下肢の機 表 2 在宅酸素療法の適応 能低下 圧1本胸部疾患学 ピ ュー ター に よ 会肺 生 る呼 吸 同 1)臨床的に安定 した病態 理専門委員 会) を呈しているが, i )投 )家庭で酸素投 与が必 要な者( L j を実 約1 7 時 の 酸素 とマ イ ク ロ コ ン って吸 気 時 にの み酸 素 を供 給 す 調 酸素 供 給 調 節 器 を組 み 合 わせ れ ば, 間 の使 用 が 可 能 に な るの で ,泊 ま り込 み 旅行 も: 実 現開 叶能 とな った。 2. 更な る展 を■ しない者。 3 )動脈 l r L L 酸素分圧 うO 施 しえれば入院を必要と 脈血酸 素分 圧 60 の病 慢性 呼 吸 不全患者 在 宅院 人」二 呼吸 な ど r以下の者,ただ し動 Tor 酸 素 療 法 の 普 及 ・保 険 適 か 用らの 開放 は, 在 宅 QOI .の 向 上 に 人 い に貢 献 し で 叶 能 と な り, To r i者。 )入院 して酸素療法 r以下で も肺性 心 を伴 う を受け, は人工 呼 吸 管 理 下 に はあ るが た ,十 とい え る。 今 度 危険のないことが さえす れ ば家庭 に戻 る可 能性 の あ 分注 る人 意 た ちへ を払 い 問によ的な外 来受診, または医師,保健婦の訪 をとりり病態 を把握 し,必要に応 じ適切な対策 ア プ ロ ーチ が待 た れ て い る。 気 管 切 開 して い の 5確認で )定期 きた者∩ こ と, 小 型 人 l 二 呼 吸 器 の貸 与 な ど問題 は山積 る 6)あ らか じめ患者およびその家族 に うる場合。 て い るが不 u T能 で は な い。 )実 際 , こ 法の意味,危険,機器の取扱い,治療中に起 対 し酸素療 りうる危険な兆候,医師 との連絡方法につ き説 は在 宅 人 」二 呼 吸 に積 極 的 明 し, これについて患者およびその家族が十分 に理解 し,協力が えられることが明 らか となっ た場合。 1 4 こ の ボ ンベ に微 圧 セ ンサ ー し -一 部 の病 院 で 鈴木康三,他 :身体障害者 ・老人 をと りま く環境 図 3 老 人に起 こる転倒事 故 慢性 的に炭酸 ガスの蓄積 を伴 った n型呼吸不全 表 3 転倒 防 I L策 材質 を使用す る。 の患者が適応 となるが, 鼻マ スクを介 して換気 ・味,階段 は滑 らない を行 うもので鼻 マ ス ク陽圧 入二 日呼吸 ( NI PPV) ・廊 卜,階段 , トイレ,浴室 には手す りを取 り付 ける と呼 ばれる ものが それで あ る。 これ は器械 も小 O ・階段 は傾斜 を緩 く,けあげ を少 な くす る。 型 であ り, シ ョル ダーバ ッグに入れれば外 出 も ・老 人の居 室 は階段 を利用 しな くともよい よ うに 可能 となる。 1階 にお く′ つ ただ, これ ら在宅 人工 呼吸療法で は実施す る L H . 入 H,洗 面所 ,廊 ・トイ レ, 浴室,ベ ランダの r 下 の床 面は 同 一 面 とし,段 差 をな くす。 医療機 関や患 者 の家の近 医や保健所 との連携 が ・階段 の端 や段 差のある ところな ど転 びやす い と 必 要であ り, どこで も可 能 とまで は至 っていな ころに, カラーテープな ど目印 を してお く。 いのが現状 であ る。 ・小 さい じゅうたんは使用 しないか, ゴムの裏 う ちを して しっか り止めておいて, その Lに乗 っ Ⅳ.高齢者 ・寝 た きりについて た とき滑 らない よ うにす る。 ・階段 の敷物 は しっか りl Lめてお く。床 に水が こ I.不慮の事故 ( 転倒 な ど)の予 防 ぼれた らただ ちに拭 き,乾 かす。洗 面所 や浴 室 平 成 7年 度 の在宅 要 介護 者 数 は 111万 2千 人 の 周辺 は特 に注意す る。 86万 1千 人) を で, その う ち65歳以上が 77% ( ・階段 には照 明 をつ ける。 〕照 明 は階段 の 上で点滅 占めている。 )寝 た き り者 数 は33万 1千 人にのぼ で きるようにす る。 り, 65歳以上が 86% ( 2f TJ j4千 人)であ った. ・老 人の歩行範囲 にある物 は片づ けて,つ まづ か ない ようにす るo 寝 た きりに陥 りやす い主要 な原 因に転倒 に よ ・浴槽 の底 には ゴムマ ッ トを敷 くo 図 3) 。転 倒 に よる骨折 を予 防 る骨折 が あ る ( で きれば次 に述べ るような長期臥床 に よる悪循 環 を防 l 卜す るこ とも叶能 であ る し, 介護者 の約 半数が60歳以上 であ る とい うような調査結果 か らも明 らかな老老 介護 とい う状態 に陥 るこ とも 抑l Lで きよう ( 表 3)。 2.長期の臥床が もた らす悪循環 転倒 による骨折 な どに よって安 静臥床 を強 い 図 4)。 同 られ る と廃 用症 候 群 にな りやす い ( のサ ー クルに含 まれて しまうと,筋 力低下 や R 図 4 廃用症候群 の悪循環 l . 1 健康 人間学 図 第1 2号 ' 2 000