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平成22年度 新潟県の農林水産業
平成 22 年度 新潟県の農林水産業 平成 23 年5月 新 潟 県 目 次 はじめに 1 新潟県の農林水産業を取り巻く情勢 2 特集1 戸別所得補償制度の導入 13 特集2 22年産米の品質低下の要因と今後の対策 15 特集3 2010年世界農林業センサスの結果から 16 第1 安全・安心で豊かな食の提供 21 1 安全・安心な農林水産物の提供 23 2 環境と調和のとれた農業の推進 26 3 地産地消、食育の推進 30 第2 産業として成り立つ魅力ある農林水産業の実現 1 担い手の確保・育成 35 37 (1) 人材の確保・育成 37 (2) 経営体等の確保・育成 39 (3) 地域に即した持続的発展が可能な農業システム 43 2 「安全・安心なにいがた」ブランド農産物の提供 46 (1) 「新潟米」を中心とした水田農業生産体制の確立 46 (2) 高収益・周年型を目指した園芸の拡大 53 (3) 豊かな地域資源を活用した畜産の振興 57 (4) 県産農林水産物の多様な販売戦略の推進 62 3 森林資源の利用促進による林業の振興 66 4 資源の適切・有効利用による水産業の振興 72 5 農地・農業用水等の生産基盤の確保・保全 76 (1) 優良農地の確保 76 (2) 農業生産を支える用排水機能の確保 79 (3) 農地・水・農村環境の保全 82 第3 多面的機能を発揮する農山漁村の維持発展 85 1 農山漁村の活性化 87 2 バイオマス利活用の推進 89 3 中山間地域の維持発展 92 (1) 中山間地域の活性化 92 (2) 都市と農山漁村の交流促進 96 4 森林・農地・海岸の保全と景観等に配慮した生活環境の整備 100 (1) 美しく住みよい農山漁村の整備 100 (2) 森林・農地・海岸の保全 102 (3) 県民参加による多面的機能の維持と理解の促進 105 第4 中越大震災・中越沖地震からの復旧・復興 109 第5 研究開発の推進 115 にいがた農林水産ビジョン指標項目進捗状況 121 平成23年度の基本方針 122 は じ め に 我が国を取り巻く国際情勢を見てみますと、ロシアで穀物輸出禁止措置が採られるなど、 干ばつや洪水等、世界的な異常気象の影響により、一旦落ち着いていた穀物の国際価格が 上昇し、FAO(国際連合食糧農業機関)の発表では、世界の食料価格が史上最高値を更 新しました。 また、平成 20 年7月の交渉決裂以降停滞していたWTOドーハ・ラウンドの早期妥結 に向けた動きや、日本のインド、ペルーとのEPA交渉合意や日豪EPA交渉、TPP協 定など経済連携の動きが活発になっております。 国内に目を向けますと、昨年3月に「戸別所得補償制度策」や「農業・農村の6次産業 化」等を新たに盛り込んだ「食料・農業・農村基本計画」が策定され、農政の基本が価格 政策から所得政策へと大きく転換されました。 さらには、「米トレサ法」や「6次産業化法」の施行や「バイオマス利活用推進基本計 画」の策定など、食の安全・安心、食料自給率向上、競争力ある経営体の育成などに向け た施策が展開されています。 一方、11 月には、高いレベルでの経済連携を目指すとした「包括的経済連携に関する 基本方針」が閣議決定され、経済連携の推進と我が国の食料自給率の向上や国内農業・農 村の振興と両立を目指し「食と農林漁業の再生推進本部」が設置され、検討が進められて います。 また、林業における森林・林業基本計画の変更や、水産業における所得補償制度の導入 などの議論も始まっております。 このような中、県としては、「新潟県『夢おこし』政策プラン」や「にいがた農林水産 ビジョン」に掲げる政策目標や政策指標などの実現に向け、各種施策を展開してまいりま した。 特に、農業においては、所得政策の確立に向けた取組や、にいがた発「R 10 プロジェ クト」の推進、「新潟米」の区分集荷・区分販売の実施、農業の6次産業化の取組などに より、新たな動きも見られます。一方で、本県農業の基幹である稲作は、猛暑等による品 質・収量低下に加え、需給状況の緩和等による価格低下も重なり、大変厳しい年となりま した。 また、林業、水産業においては、地球温暖化の防止や森林の保全のための政策税制の導 入に向けた税制調査会や、「個別漁獲量割当制度(IQ)」等による新しい水産資源の管理 手法の導入に向けた委員会の開催など、新たな取組に向けた検討も進められました。 本書は、こうした平成 22 年度の動向を踏まえ、施策の実施状況や成果及び今後の課題 について、県民をはじめ関係する多くの方々と認識を共有し、今後の取組推進に対する理 解を深めることをねらいとして作成したものです。 -1- 新潟県の農林水産業を取り巻く情勢 1 国際的な動き (1) 世界の食料の需給動向と今後の見通し ア 世界の食料の需給動向 世界の穀物の需要量は、人口の増加、中国・インド等の経済発展による食料需要の増大、 バイオ燃料の原料への仕向け量の増加等により増加傾向で推移している。一方、生産量は作 柄により変動しているものの、主に単収の伸びにより需要量の増加に対応している。 穀物全体の期末在庫率は、2010年度には19.0%まで低下すると見込まれている。天候不 順によりロシア等の主要生産国で小麦の生産が減少したことが主な要因である。 穀物等の国際価格は、価格が高騰した2008年夏以降一旦落ち着いたものの、2010年7月以 降ロシアの穀物輸出禁止措置やとうもろこしのバイオ燃料向け需要の増大、中国の旺盛な大 豆輸入などから、再び上昇している。FAO(国際連合食糧農業機関)は、特に天候不順に よる予期せぬ供給不足、いくつかの輸出国による政策対応、および通貨市場での変動など複 合的な要因の結果であると分析し、2011年の生産が著しく増加しないと、国際価格は更に上 昇する可能性があると指摘している。 このような中、食料安全保障への国際的な関心が高まっており、2010年10月にはAPEC初 の食料安全保障担当大臣会合が新潟市で開催され、今後の食料安全保障の指針として、食料 供給力の拡大や責任ある農業投資の促進などを内容とする「新潟宣言」が採択された。 【世界の穀物需給と在庫率の推移】 100万トン % 10年 度 ( 予 測 ) 2,400 60 生 産 量 2,179百 万 t 生産量 消 費 量 2,241百 万 t 2,200 消費量 2,000 50 1,800 1,600 40 1,400 10年 度 ( 予 測 ) 1,200 30 19.0% 1,000 期末在庫率 800 20 (右 目 盛 ) 600 06年 度 : 16.6% 400 10 07年 度 : 17.0%ま で 低 下 200 0 0 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 年度 注)期末在庫率(%)=期末在庫量/消費量× 100 資料:USDA「World Agricultural Supply and Demand Estimates」、「Grain:World Markets and Trade」、「PS&D」 【穀物等の国際価格の推移】 ( ド ル /ト ン ) 1000 注)大豆、小麦、とうもろこしは、シカ 800 ゴ商品取引所における毎月第1金曜 米 日の期近価格 600 米は、タイ国家貿易取引委員会、タ 大豆 400 イうるち精米 100%、2等、第1水曜 小麦 日の FOB 価格 200 とうもろこし 資料:農林水産省 0 2006 2007 2008 2009 2010 -2- 2011 イ 世界の食料需給の見通し 平成 22 年 2 月に、農林水産省(農林水産政策研究所)から「2019 年における世界の食料 需給見通し」が発表され、それによれば、2008 年の世界的な金融危機による経済成長の低 迷は一時的なものであり、途上国の経済成長は今後とも高い水準で推移すると見込まれてい る。これを前提とすると、人口の増加、所得の向上、バイオ燃料の拡大などから農産物の需 要が増大し、今後とも穀物等の需給がひっ迫した状態が継続、食料価格は高い水準で、かつ、 上昇傾向で推移する見通しとされている。 【世界食料需給モデルによる 2019 年における世界の食料需給見通し】 資料:農林水産政策研究所「2019 年における世界の食料需給見通し」 ウ 世界の水産物の需給動向 欧米での健康志向の高まりや、中国、 【世界の食用魚介類の国別供給量】 万トン 12,000 インド等の経済発展などを背景とした 世界的な水産物需要の増大に応える形で 35% 中国シェア 30% 10,000 世界の食用水産物供給量は年々増加を続 け、2005年には1億543万トンとなった。 特に中国の増加が著しく、世界全体の 25% 8,000 その他 EU 3分の1のシェアを占めている。 また、近年の世界的な需要増加により 国際価格が上昇した結果、国際市場にお いて、日本の輸入業者が望む価格で購入 20% 6,000 15% 米国 4,000 2,000 できない事態(いわゆる「買い負け」)も 日本 インド 10% 中国 5% 0 0% 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 起きている。 資料:平成22年度 水産白書 -3- (2) 国際交渉の動き ア WTO農業交渉 WTO農業交渉は、2008年7月に閣僚会合が開催されたが、中国・インド等新興国とア メリカの間で途上国向け特別セーフガードをめぐり意見が対立し交渉が決裂した。同年12 月にはモダリティ ※合意に向けた再改訂議長案が提示されたものの、閣僚会合の開催自体 が見送られた。その後、2009年7月のG8ラクイラ・サミット共同宣言で「2010年にドーハ 開発ラウンドの最終妥結を目指す」とされたが、交渉は停滞した。 交渉が10年目となる中、2010年11月のAPEC閣僚会合(横浜市)並びにG20サミット (ソウル)において、2011年の妥結を目指すこととされ、今後交渉の加速が予想される。 政府は、従来通り「多様な農業の共存」を基本理念に、ドーハ・ラウンド交渉の早期 妥結に向け、交渉にあたるとしている。 ※ モダリティ:関税削減率や重要品目の数、関税割当の拡大幅などについて具体的な数字を決めた加盟 国すべてに適用されるルール イ EPA※1/FTA※2の動き WTO交渉が停滞する中、主要貿易国間においてEPA/FTAの締結が進んでいる。我 が国においても、2010年2月にインドとのEPA協定が締結されたほか、2010年11月には ペルーとの交渉が終了し、協定を締結する国・地域は13となった。 しかしながら、主要国に比べて日本の取組が遅れている現状から、政府は2010年11月に 「包括的経済連携協定に関する基本方針」を閣議決定した。今後、世界の主要貿易国との 間で高いレベルの経済連携を進めるとともに、必要となる競争力強化等の抜本的な国内改 革を先行的に推進することが示された。 具体的には、アジア太平洋地域を最重要地域として、二国間EPA、広域経済連携に取 り組むほか、EUなど主要国との交渉入りの調整を加速することとされた。 一方、国内対策としては、持続可能な力強い農業を育てるための対策を講じるために「食 と農林漁業の再生推進本部」が2010年11月に設置された。今後、同本部において、基本方 針の策定及び行動計画の策定がされる予定である。 ※1 EPA:Economic Partnership Agreement(経済連携協定)の略。協定構成国間での、物やサービスの ※2 貿易自由化だけでなく、投資の自由化、人的交流の拡大、協力の促進等幅広い分野を含む協定。 FTA:Free Trade Agreement(自由貿易協定)の略。複数の国(地域)において、関税その他の通商規 則を構成国(地域)間における実質上のすべての貿易について撤廃するという協定。 【「包括的経済連携協定に関する基本方針」のポイント(H22.11.9 閣議決定)】 1.我が国を取り巻く環境と高いレベルの経済連携推進 ・世界の主要貿易国との間で、高いレベルの経済連携を進める。 ・必要となる競争力強化等の抜本的な国内改革を先行的に推進。 ・アジア太平洋地域内の広域経済連携等の分野別取組の積極的推進に主導的役割を果たす。 2.包括的経済連携強化に向けての具体的取組 ・センシティブ品目について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とし、交渉を通じ て、高いレベルの経済連携を目指す。 (アジア太平洋地域における取組) ・交渉中のEPA交渉の妥結等の取組を加速。同時に日中韓FTA、東アジア自由貿易圏構想 (EAFTA)等の研究段階の広域経済連携等の交渉開始を可及的速やかに実現。 ・EPA交渉に入っていない主要国等との二国間EPAを国内環境整備を図りながら推進。 ・TPPについては、その情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早 急に進めるとともに、関係国との協議を開始。 -4- 3.経済連携交渉と国内対策の一体的実施 (1)農業 ・「食と農林漁業の再生推進本部」を設置。H 23 年6月めどに基本方針決定。 ・抜本的国内対策、財政措置、その財源を検討しH 23 年 10 月に行動計画を策定。早急に実施。 ・関税措置等の在り方を見直し、安定財源を確保。段階的な納税者負担制度への移行を検討。 (2)人の移動 ・人口の将来動向等を踏まえ検討。H 23 年6月までに基本的方針策定。 (3)規制制度改革 ・非関税障壁を撤廃する観点からH 23 年3月までに具体的方針を決定。 ウ TPP※(環太平洋パートナーシップ)を巡る議論 2010 年 10 月の首相所信表明演説においてTPP交渉の参加を検討することが示され、国内 での議論が開始された。政府は当面「情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の 環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する。」としており、現在交渉参加 国等への情報収集が行われている。 交渉を主導する米国は 2011 年 11 月の APEC までに合意を目指しており、今後、我が国にお ける議論が注視されている。 TPPはアジア太平洋地域の今後の貿易・投資ルールとなる可能性がある一方、10 年以内 の関税撤廃を原則とすることや労働や環境などの分野も交渉に含まれることから国内産業等へ の影響も懸念されている。 ※ TPP:Trans Pacific Partnership(環太平洋パートナーシップ)の略。シンガポール、チリ、ブルネイ、 NZ、米国、豪州、ペルー、マレーシア、ベトナムの9カ国で交渉中の広域経済連携協定。 トピックス「APEC新潟食料安全保障担当大臣会合開催」 2010 年 10 月 16 日から 17 日、新潟市朱鷺メッセにおいて、初めてのアジア太平洋経済協力 (APEC)食料安全保障担当大臣会合が開催された(議長:鹿野農林水産大臣)。 21 の APEC メンバー・エコノミーから食料安全保障担当閣僚等が出席し、「持続可能な農業の発 展」と「投資、貿易及び市場の円滑化」の 2 つをテーマに議論が行われ、最終日には「APEC 食料 安全保障新潟宣言」及び「APEC 食料安全保障行動計画」が採択された。 会合の前日には歓迎レセプションが催されたほ か、会合期間中には会場内に展示ブースを設置し、 果物や米粉ロールケーキの試食、食品産業やフー ドブランドのパネル展示により「新潟の食」の紹 介を行った。 会合参加者からは、品質の高い県産食材やボラ ンティア等スタッフの活動に対し高い評価が得ら れ、新潟を世界にアピールする機会となった。 〈高品質で新鮮な県産果物は試食でも大人気〉 -5- 2 国内的な動き (1) 食料自給率の動向 平成 21 年度の食料自給率は、カロリーベー 【食料自給率】 スで前年度から1ポイント減少し 40 %となっ % た一方、生産額ベースは前年度から5ポイント 100 86 85 83 77 80 増加し 70 %となった。 82 産出額ベース 77 80 カロリーベースの自給率低下の主な要因は、 小麦、砂糖類(てんさい・さとうきび)の生産 量減及び米の消費量減少などによる。 74 60 40 カロリー ベ 49 平成5産米大冷害 (全国作況74) 20 要因は、輸入量・輸入単価の低下(畜産物、魚 69 53 53 また、生産額ベースの食料自給率向上の主な 72 70 72 71 70 70 69 70 69 69 68 66 65 37 0 40 45 50 55 60 H元 5 介類、油脂類及び野菜)や飼料の輸入額減少及 び小麦・果実において国内消費仕向額が減少 40 40 40 40 40 40 40 40 39 40 41 40 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 (概算) 資料:農林水産省調査 したことなどによる。 (2) 農業生産の動向 平成 21 年の農業総産出額は8兆 491 億円となり、前年より 4.9 %減少した。 部門別にみると、米は1兆 7,950 億円(前年比 5.6 %減少)、野菜は2兆 331 億円(同 3.7 % 減少)と、米、野菜とも生産量の減少に加え価格の低下により、前年より減少した。 なお、果実はみかんの価格低下などにより前年より 5.6 %減少した。 また、畜産部門では、乳用牛は生乳価格の価格の上昇により 7.5 %増加したが、肉用牛と 豚と鶏は価格の低下により、それぞれ 4.0 %、12.1 %、5.6 %減少した。 【農業産出額】 (億円) 120,000 116,295 110,526 104,472 99,264 102,625 100,000 87,136 88,565 83,322 85,119 84,662 82,585 80,491 80,000 米 野菜 果実 60,000 肉用 牛 乳用 40,000 20,000 0 55 60 H元 5 10 15 資料:農林水産省「農林水産統計」 -6- 16 17 18 19 20 21 (3) 林業の動向 ア 林業産出額 【林業産出額の推移】 平成 21 年の林業産出額は 4,122 億円で、前 年に比べ 7.3 %減少した。これは、木材生産 量の減少及び価格の低下等により木材生産の 産出額が前年に比べ 12.8 %減少し 1,861 億円 になったこと等による。 イ 木材需給 木材(素材)供給量は、国産材が 1,661 万9 千m 3 で、前年に比べ 6.2 %減少した。外材 資料:農林水産省大臣官房統計部「農林水産統計」 は 618 万 4 千m 3 で、米材・北洋材の減少に 【木材(素材)供給量と供給割合】 より前年に比べて 25.7 %減少した。これは住 宅需要が大きく落ち込んだことに加え、ロシ ア政府が丸太輸出税の段階的引上げを決定し たことを契機に、北洋材が国産材に移行した ことによる。 素材供給量に占める国産材の割合は 72.9% となり、前年を 4.9 ポイント上回った。用材 では、国産材の供給割合は対前年 1.4 ポイン ト増の 24.0 %となっている。 資料:農林水産省大臣官房統計部「木材統計」 (4) 水産業の動向 ア 漁業生産額 【漁業生産額】 漁業生産額は、近年微増していたが、 (億円) 内水面養殖 30,000 平成 21 年は1兆 4,727 億円で、前年に比 内水面漁業 25,000 べ 9.5 %の減少となった。 海面養殖業 海面漁業 20,000 部門別では、海面漁業が 9,742 億円で 14,727 15,000 全体の 66 %を占め、マグロ類の減少によ 4,095 10,000 り前年に比べ 13.4 %減少した。海面養殖 9,742 5,000 業は 4,095 億円で、ほぼ前年並みとなっ 0 た。 55 内水面漁業は、264 億円で、アユ等の 60 5 10 15 16 17 18 19 20 21 資料:農林水産省「農林水産統計」 増加により前年に比べ 10.3 %増加し、内 水面養殖業は 626 億円で、ウナギの増加 H元 【全国の漁業生産量】 (千トン) 13,000 により、前年に比べ 2.3 %増加した。 内水面漁業・養殖業 11,000 海面漁業・養殖業 イ 漁業生産量 9,000 平成 21 年の海面漁業・養殖業は約 535 7,000 万トン、内水面漁業・養殖業は約8万ト 5,000 ンで、 国内の漁業生産量の合計は約 543 万トンとなり、引き続き減少傾向にある。 5,429 3,000 S55 60 H元 5 10 15 16 資料:農林水産省「農林水産統計」 -7- 17 18 19 20 21 3 県内の動き (1) 農業 ア 農業者の動向 新潟県の基幹的農業従事者数は、平成 22 年は 74,827 人で5年前に比べて 782 人増加 (+ 1.1%)した。 年齢構成別にみると、65 歳以上が 67 %を占めており、特に 75 歳以上は5年前に比べて 151 %と大幅に増加した。また、基幹的農業従事者の平均年齢は 67.7 歳(+2.1 歳)となり、全 国平均の 66.1 歳(+1.9 歳)に比べて高齢化が進展している。 (人) 20,000 平成22年 平成17年 平成12年 平成7年 平成2年 15,000 10,000 5,000 85 ∼ 80 ∼ 84 75 ∼ 79 70 ∼ 74 65 ∼ 69 60 ∼ 64 55 ∼ 59 50 ∼ 54 45 ∼ 49 40 ∼ 44 35 ∼ 39 30 ∼ 34 25 ∼ 29 20 ∼ 24 15 ∼ 19 0 基幹的農業従事者年齢(歳) 資料:農林水産省調査 イ 農業生産の動向 新潟県の平成 21 年の農業産出額は 2,588 億円で、米の収穫量の減少や価格の下落により 前年に比べ 189 億円減少した。 なお、米の産出額は引き続き全国1位であるが、前年に比べて 160 億円減少し 1,509 億円 となり、全国シェアも 8.4 %と、前年に比べて 0.2 ポイント低下した。 (億円) 4,000 3,157 3,000 3,146 3,124 3,163 464 462 444 456 640 632 638 613 3,281 2,920 3,044 2,964 512 544 525 432 568 589 2,000 566 578 2,710 2,777 478 491 591 594 2,588 461 596 畜産 園芸 米 1,000 2,028 2,019 2,000 2,051 2,237 1,787 1,903 1,831 1,623 1,669 1,509 16年 17年 18年 19年 20年 21年 0 11年 12年 13年 14年 15年 資料:農林水産省「農林水産統計」 -8- (2) 林業 ア 林業従事者の動向 県内の森林組合における平成21年の林業従事者数は、651人で4年前に比べて139人減少 した。 年齢構成別にみると、60才以上が最も多く、次いで50才代となっているが、ともに減少 傾向にある。一方、林業就業に意欲のある若者等を支援する「緑の雇用」制度等により、 40才以下の人数は微増傾向にある。 【年代別森林組合技術員数の推移】 資料:森林組合一斉調査結果(H2 ∼ 17)、森林組合等事業量調査(H21) イ 林業生産の動向 平成21年の林業産出額は、対前年比97.4%の368億5千万円となり、全国の減少率に比べ 小幅の落ち込みとなった。 内訳をみると、本県の林業産出額の大部分を占める栽培きのこ類は、354億7千万円と前 年に比べ2.4ポイント減少したが、長野県に次ぐ全国第2位の地位を維持した。 また、木材生産については、前年に比べ6.9ポイント減の13億5千万円となっている。 【部門別林業産出額の推移】 資料:農林水産省大臣官房統計部「農林水産統計」 -9- (3) 水産業 ア 漁業者の動向 新潟県の漁業就業者は昭和 30 年代には 8,000 人を超えていたが、平成 20 年には 3,211 人 まで減少している。 65 歳以上の高齢者の占める割合は、平成 5 年は全体の 45 %であったが、平成 20 年には 全体の 51 %となっており、全国平均の約 34 %と比較しても高齢化が進行している。 (人) 2,000 平成20年 平成15年 平成10年 平成5年 昭和63年 1,500 1,000 500 0 15∼19 20∼24 25∼29 30∼34 35∼39 40∼44 45∼49 50∼54 55∼59 60∼64 65∼ 漁業就業者年齢(歳) 資料:漁業センサス イ 漁業生産の動向 新潟県の海面漁業・養殖業生産量(属人)は、近年減少傾向が続いているが、平成 21 年 は 37,313 トンで、前年に比べ 8.7 %増加した。 生産額は、近年の国際的な水産物需要の高まりからカツオ、マグロ類の価格が上昇したこ とにより、生産額は若干増加し、161 億円となった。 【海面漁業・養殖業の生産量、生産額(属人)】 養殖業生産量 漁業生産量 漁業・養殖業生産額 (トン) 70,000 60,000 (億円) 161 180 160 140 120 50,000 40,000 1,415 30,000 20,000 35,898 10,000 100 80 60 40 20 0 0 H11 H12 H13 H14 H15 H16 資料:新潟農林水産統計年報 - 10 - H17 H18 H19 H20 H21 特 集 ○ 特集1 戸別所得補償制度の導入 ○ 特集2 22年 産 米 の 品 質 低 下 の 要 因 と 今 後 の 対 策 ○ 特集3 2010年 世 界 農 林 業 セ ン サ ス の 結 果 か ら - 11 - 特集1 1 戸別所得補償制度の導入 22年度の戸別所得補償モデル対策の概要 国では、食料自給率の向上と多面的機能の維持に向け、意欲あるすべての農業者が将来に わたって農業を継続し、経営発展に取り組むことができる環境を整備するため、戸別所得補 償制度を導入することとし、22年度は、23年度からの本格実施に向けて、事業の効果や円滑 な事業運営を検証するため、「戸別所得補償モデル対策」(5,618億円)を実施した。 (1) 米戸別所得補償モデル事業 3,371億円 意欲ある農業者が水田農業を継続できる環境を整えることを目的に、恒常的に生産する費 用が販売価格を上回る米に対して、所得補償を直接支払いにより実施する。 ア 交付単価(全国一律) (ア) 定額部分 15,000円/10a(恒常的なコスト割れ相当分の助成) (イ) 変動部分 15,100円/10a(22年産販売価格と過去3年間の販売価格との差額を基に算定) イ 交付対象者 米の「生産数量目標」に即した生産を行った販売農家・集落営農のうち、水稲共済加入者 又は21年度の出荷・販売の実績がある者 (2) 水田利活用自給率向上事業 2,167億円 自給率の向上を図るため、水田を有効活用して、麦・大豆・米粉用米・飼料用米等の戦略 作物の生産を行う販売農家に対して、主食用米並の所得を確保し得る水準を直接支払いによ り交付する。 ア 交付単価(全国一律) 作 イ 物 単価(10a当たり) 麦、大豆、飼料作物 35,000円 新規需要米(米粉用・飼料用・バイオ燃料用米・WCS用稲) 80,000円 そば、なたね、加工用米 20,000円 その他作物(県単位で単価設定が可能) 10,000円 二毛作助成 15,000円 激変緩和措置(地域裁量による配分) 交付単価がこれまでの対策に比べて減少する地域において、継続して作物を生産できる よう、激変緩和調整枠を設け、単価変動の大きい作物への加算を実施 2 本県における戸別所得補償モデル対策の実施状況 (1) 戸別所得補償モデル対策への加入申請 本県における戸別所得補償モデル対策の加入申請件数は全国第2位となる69,353件、うち 米戸別所得補償モデル事業では66,571件であった。 加入申請件数 全 国 新潟県 1,330,233 69,353 (2) 事業別の加入申請件数 米戸別所得補償モデル事業 水田利活用自給力向上事業 1,177,332 985,019 66,571 (2) 51,370 (1) 注:新潟県の( )内は加入申請件数の全国順位 (2) 米の需給調整への影響 米の需給調整はこれまで転作作物への助成により推進されてきたが、戸別所得補償モデル 対策の導入を契機として、需給調整は米への支援で確保する仕組みに転換された。しかし、 - 13 - 全国では過剰作付が1万ha程度減少したものの依然として過剰作付は解消されず、本県にお いても過剰作付割合はほぼ前年並みとなった。 (3) 主食用米以外の作付状況 戸別所得補償モデル対策の導入を契機に、米粉用米や飼料用米等の作付が前年に比べ大幅 に増加した。特に米粉用米の生産が拡大し、全国シェアの 35 %を占めた。 米粉用米 飼料用米 加工用米 【参考】大豆 22年作付面積(全国) 4,957ha 14,883ha 39,327ha 119,000ha うち新潟県作付面積 1,731ha 859ha 7,453ha 6,530ha +1,048ha +845ha +1,937ha ▲ 400ha 対前年増減 注1:非主食用米(米粉用米、飼料用米、加工用米)は、農林水産省取組計画認定状況より 注2:大豆は、農林水産統計における田での作付面積より 3 所得保障(補償)制度に関する本県の取組 (1) 新潟版所得保障モデル事業の実施 本県では、所得保障制度のモデル的な実施を通じて制度の有効性を検証し、国に対して制 度提案を行うことを目的として、平成21年度より「新潟版所得保障モデル事業」を実施し、 事業効果の検証を行うとともに国への提案を実施した。 (2) 国への提案内容 戸別所得補償制度について、以下の仕組みの導入などの改善を図るよう提案を行った。 ○ 非主食用米への支援を充実し、過剰となっている主食用米から非主食用米への作付 転換を誘導する仕組み ○ 多様な地域の営農実態に配慮し、地域の裁量が発揮できる仕組み ○ 経営規模の拡大など農業者が行う経営努力等への加算など、担い手育成につながる 仕組み 4 23年度の農業者戸別所得補償制度 23年度からは農業者戸別所得補償制度が本格実施され、新たに畑作物の所得補償制度が導 入されるとともに、各種の加算措置が講じられることになっている。 (1) 主食用米に対する助成(米の所得補償交付金及び米価変動補てん交付金) 3,320億円 戸別所得補償モデル対策と同様、定額助成及び米価変動の場合の補てんを実施する。 (2) 畑作物の所得補償交付金 2,123億円 麦、大豆、そば、なたね、てん菜、でん粉原料用ばれいしょを生産数量目標に従って生産 する農業者に対し、標準的な生産費と標準的な販売価格の差額を直接交付する。 (3) 水田活用の所得補償交付金 2,284億円 水田での麦、大豆、非主食用米等の戦略作物の生産に対する全国一律単価での助成に加え、 新たに「産地資金」を創設し、地域の実情に即して、戦略作物の生産性向上、地域振興作物 や備蓄米の生産の取組等を支援する(地域で対象作物や交付単価等の設定が可能)。 (4) 加算措置等(加算措置150億円、推進事業等116億円) 新たに、面的集積により経営規模を拡大した場合に助成する「規模拡大加算」や、畑の耕 作放棄地を解消し、麦、大豆、そば、なたねを作付けた場合に助成する「再生利用加算」等 の加算措置のほか、集落営農が法人化した場合の事務費の助成等を実施する。 - 14 - 特集2 1 22年産米の品質低下の要因と今後の対策 品質低下の状況 本県産の 22 年産米の1等級比率は、うるち玄米 21.1 %、コシヒカリ 21.1 %(23 年1月末 現在)で、全国平均や他の米主産道県と比較して低く、過去最低の1等級比率となった。 2等米以下の格落ち理由は、心白粒、背白粒といった白未熟粒及び除青未熟粒が多発生し たためであり、特に、背白粒及び基部未熟粒の多発生が特徴的であった。 このため、専門家等による「平成 22 年産米の品質に関する研究会」を平成 22 年 11 月に立 ち上げ、要因分析及び次年度以降の対策について検討を行った。 2 研究会報告の概要 (1) 気象 これまでの知見では、最高気温が 32 ℃、 平均気温が 27 ∼ 28 ℃、最低気温が 23 ∼ 24 ℃を超えると白未熟粒の発生が助長さ れるとされている。 本年、出穂期から 20 日間の新潟市の最 高気温は 32.8 ℃、平均気温は 28.9 ℃、最 低気温は 25.7 ℃となるなど、登熟期に連 続した高温となった。 アメダス新潟 また、連続無降雨日数が 16 日以上の地 域では品質が低下する傾向が見られ、無 降雨日数の長さも品質低下を助長したも のと考えられた。 (2) 稲体の栄養状態 本年は、幼穂形成期以降、急激に葉色が低下し、稲体の活力が低下していたことが推察され た。この稲体活力の低下により、本年のような高温年では、出穂期前の同化産物の蓄積不足や 登熟期の同化産物の消耗・光合成能力の低下・転流抑制などを助長し、白未熟粒等の多発生を 招いたと考えられた。 また、稲体活力を低下させる原因として、 ・ 浅い作土深や中干しの長期化により根域が縮小し、根の養分吸収力が低下した ・ 5月中旬の低温・日照不足による分げつ抑制や、梅雨入り後の高温・日照不足による 長草化で倒伏が懸念され、1回目の穂肥の施用ができなかった こと等が推察された。 (3) 今後の対策 根域の拡大につながる作土深の確保等による土づくりや、葉色の推移等による生育診断に基 づいた穂肥施用などを基本技術へと反映させるとともに周知・徹底を図る。また、高温時の緊 急対策として、緊急時の迅速な生育診断や情報提供の体制を整備する。 技術・品種開発面では、高温条件等に対応する生産技術の開発や高温耐性をもつ新品種を開 発し、気象変動に対応できる取組を進める。 - 15 - 特集3 1 2010年世界農林業センサスの結果から 調査の概要 農林業センサスは農林業を営んでいる全ての農家、林家、法人を対象に5年に1度実施され る調査であり、2010年2月1日現在で最新の調査が実施された。 平成23年3月に公表された確定値から、本県農業の推移の特徴をまとめた。 2 調査結果の概要 (1) 販売農家数は減少、一方で法人化した経営体が増加 販売農家数は5年前と比べて15,410戸(18.8%)減少し、66,601戸となった。一方、自給 的農家数は1,169戸(4.8%)増加して25,686戸、土地持ち非農家数は9,190戸(18.0%)増加 して60,115戸となった。 また、法人化した農業経営体は378(60.5%)増加して1,003となり、5年前と比べて大幅 な増加となった。 販売農家数が減少した要因は、高齢化等による離農に加え、平成19年度に開始した水田経 営所得安定対策を契機とした法人化の進展により、販売農家の定義を満たさなくなった農家 が増加したことによると考えられる。 【販売農家数の推移】 ( 千 戸 ) 2 , 9 7 1 ( 戸 ) -10.8% -11.8% 3 , 0 0 0 2 , 6 5 1 -16.0% 2 , 3 3 7 2 , 5 0 0 1 2 0 , 8 6 7 1 0 0 , 0 0 0 1 , 6 3 1 1 0 8 , 6 6 1 -10.1% 1 , 5 0 0 1 2 0 , 0 0 0 -16.9% 1 , 9 6 3 2 , 0 0 0 1 4 0 , 0 0 0 新 潟 県 全 国 8 0 , 0 0 0 9 5 , 9 1 3 -11.7% 8 2 , 0 1 1 6 0 , 0 0 0 -14.5% 1 , 0 0 0 -18.8% 6 6 , 6 0 1 4 0 , 0 0 0 5 0 0 2 0 , 0 0 0 0 0 平 成 2 年 平 成 7 年 平 成 1 2 年 平 成 1 7 年 平 成 2 2 年 【法人化している農業経営体数】 1,200 ( 625経 営 体 ) ( 1,003経 営 体 ) 27 ︵ 1,000 23 600 ︶ 経 営 体 174 800 204 438 会 社 364 農 事 組 合 法 人 400 200 0 302 そ の 他 法 人 各 種 団 体 96 平 成 17 平 成 22 農業経営体:農林産物の生産を行うか又は委託を受けて農作業を行い、生産又は作業に係る面積・頭数が、 一定の規模以上に該当する事業を行う者をいう。 一定の規模の例:経営耕地面積が30a 以上の規模の農業調査期日前1年間の農業生産物の総販売額50万円に相 当する事業の規模 など - 16 - (2)農業就業人口の平均年齢は66.4歳 新潟県の農業就業人口は98,988人で、5年前より30,229人(23.4%)減少した。 また、農業就業人口の平均年齢は、66.4歳(+2.7歳)となり、全国平均の65.8歳 (+2.6歳)よりも高齢化が進展している。 【農業就業人口と平均年齢の推移(新潟県)】 68 169,503 147,745 平 66 均 年 64 齢 62 66.4 146,373 129,217 98,988 ︵ ︶ 56 平 成 2年 平 成 7年 平 成 12年 農 業 就 業 人 口 平 成 17年 人 ︶ 60.3 58 61.6 農 業 就 業 人 口 ︵ 63.7 歳 60 180,000 160,000 140,000 120,000 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 平 成 22年 平 均 年 齢 農業就業人口:自営農業に従事した世帯員(農業従事者)のうち、調査期日前1年間に自営農業のみに従事した者又 は農業とそれ以外の仕事の両方に従事した者のうち、自営農業が主の者をいう。 (3)基幹的農業従事者数は横ばいとなったものの平均年齢は上昇 新潟県の基幹的農業従事者数は74,827人で5年前より782人増加(+1.1%)した。 年齢構成別にみると、65歳以上が67%を占めており、特に75歳以上は5年前に比べて151 %と大幅に増加した。 また、基幹的農業従事者の平均年齢は67.7歳(+2.1歳)となり、全国平均66.1歳(+1.9 歳)に比べて高齢化が進展している。 【年齢別基幹的農業従事者数の推移(新潟県)】 (人) 20,000 15,000 平成22年 平成17年 平成12年 平成7年 平成2年 10,000 5,000 0 15∼19 20∼24 25∼29 30∼34 35∼39 40∼44 45∼49 50∼54 55∼59 60∼64 65∼69 70∼74 75∼79 80∼84 85∼ 基幹的農業従事者年齢(歳) 基幹的農業従事者数:農業就業人口のうち、調査期日前1年間の「ふだんの主な状態」が「主に仕事に従事していた 者」のことをいう(自営農業に主として従事した世帯員のうち、仕事が主の者)。 - 17 - (4) 経営規模の拡大が進展 経営耕地面積規模別に農業経営体数をみると、5年前に比べて5ha 未満層が減少している ものの、5ha 以上層では経営体数が増加した。 担い手農家や法人等大規模農家の育成により、農地集積が進展した結果と考えられる。 特に本県は全国に比べて10ha 以上層の増加率が高くなっており、法人化の進展等に伴い 農地集積が進んでいることが伺える。 【経営耕地面積規模別農業経営体数の増減率(新潟県)】 200.0% 157.3% 150.0% 95.8% 100.0% 50.0% 新潟県 全国 40.6% 19.6% 3.1% 0.0% -15.7% -18.9% -17.1% -50.0% -24.7% -17.5% -21.7% 1.0ha未満 1.0∼2.0 2.0∼3.0 -5.7% 9.9% 18.6% 21.5% -9.2% 3.0∼5.0 5.0∼10.0 10.0∼20.0 20.0∼30.0 30.0ha以上 経営耕地:調査期日現在で農業経営体が経営している耕地をいい、自作地と借入耕地の合計である。 (5)耕作放棄地の増加速度は鈍化 農家及び土地持ち非農家の耕作放棄地面積は9,452ha となり、5年前に比べて273ha(3.0%) 増加したものの、中山間地域直接支払制度や農地・水・環境保全向上対策等の施策推進によ り、増加進度は鈍化した。 【耕作放棄地面積の推移(新潟県)】 10,000 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 h 2,000 a 1,000 0 耕 作 放 棄 地 面 積 ( 8,672ha) ( 6,066ha) 1,347 ( 9,179ha) ( 9,452ha) 土地持ち 非農家 1,744 自給的 農家 2,691 1,314 1,526 4,667 4,321 3,823 平 成 12年 平 成 17年 平 成 22年 977 ( 3,742 3,885 3,332 ) 平 成 7年 - 18 - 販売農家 (6) 6次産業化の取組は着実に増加 農業経営体が取り組む農業生産関連事業の状況について見ると、農産物加工や直売などの 6次産業化の取組が着実に増加している。特に、農産物の加工に取り組む農業経営体数は97 3経営体となり、5年前に比べて382経営体(64.6%)増加し、観光農園や貸農園・体験農園 等のレジャー型の事業に取り組む農業経営体数も5年前に比べて増加している。 また、農産物の出荷先別に見ると、稲作が主体の本県においては農協への出荷が最も高い 割合を占めるものの、高齢化や法人化の進展により経営体数が減少したことに伴い、農協出 荷は5年前に比べて14,181経営体(20.0%)減少した。 一方、消費者への直接販売に取り組む農業経営体は5年前に比べて626経営体(5.0%)増 加した。 【農業生産関連事業への取組状況(新潟県)】 1200 973 1000 ( 経 営 体 800 600 400 ) 200 591 平 成 22 平 成 17 64 137 111 124 33 36 30 0 農産物 加工 貸農園・ 体験農園等 観光農園 農家 レストラン 海外への 輸出 注:「海外への輸出」は2005年センサスでは調査していない。 【農業経営体の農産物の出荷先の状況(新潟県、複数回答)】 (20.0%減少) 72,000 64,000 56,000 48,000 経 40,000 営 32,000 体 24,000 16,000 8,000 0 70,087 55,906 ( 平 成 17 平 成 22 (14.8%増加) ) 7,136 8,193 農協 農協以外の 集出荷団体 (5.0%増加) (20.1%減少) (10.8%減少) 2,603 2,081 3,063 2,733 卸売市場 小売業者 - 19 - (14.8%減少) 682 12,446 13,072 581 食 品 製 造 業 者 ・ 外食産業 消費者に 直接販売 第1 安全・安心で豊かな食の提供 - 21 - 第1−1 1 安全・安心な農林水産物の提供 動向 (1) GAP ※ の取組が拡大 平成22年度のGAPの取組産地・団体数は、園芸産地等を中心に生産履歴記帳の推進 と合わせたGAP導入の啓発が行われたことなどから、前年に比べ35産地増加し、226 (米41、園芸173、きのこ12)産地となった。 【新潟県内の産地・団体におけるGAP取組状況】(産地等) 対 象 H19 H20 H21 H22 米 4 11 32 41 うちJA 2 8 18 25 園芸 24 98 150 173 きのこ 1 2 9 12 計 29 111 191 226 ※農産園芸課調査(平成22年12月末日現在) ※ GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理手法): 食品安全の確保、環境の保全、労働安全など様々な目的を達成するために、生産者が農業生産工程全 体を管理する手法。農作業ごとに予め危害発生場面(農薬の適正使用、異物混入の確認など)を総ざら いし、その場面ごとの対策を確実に実践する取組。 (2) HACCP方式導入農場が増加 畜 産安 心ブ ランド生産農場 ※ は、農家の廃 業等の影響で伸び率は鈍化したものの、平 成22年は230農場と農場全体の3割に達した。 生産農場認定状況 250 200 150 ※ 年末認定総戸数 畜産安心ブランド農場: HA C C Pの 考 え 方 に 基 づ く 管 理 方 式 を 導入 した 農 場で 、 公 益社 団 法 人 新 潟 県 畜 産 協 会 が 認 定す るも 100 の。 50 0 H15 H16 H17 H18 H19 資料:公益社団法人 H20 H21 H22 新潟県畜産協会 (3) 水 産 物 の 衛 生 管 理 施 設 の 整 備 が 進 展 全国の流通拠点漁港において、安全・安心な水産物の安定供給対策を図るため 高度な衛生管理型の荷捌き所、岸壁等の整備が推進されている。このような中、 本 県 に お い て も 高 度 な 衛 生 管 理 を 図 る た め 、 県 内 64漁 港 の う ち 取 扱 規 模 が 大 き な 市 場 を 有 す る 両 津 漁 港 と 能 生 漁 港 で は 、 平 成 23年 度 の 完 成 に 向 け 衛 生 管 理 施 設 の 整 備 が 進 め ら れ て い る 。 ま た 、 県 内 10港 湾 の う ち 平 成 22年 度 に は 、 新 潟 漁 協 新 潟 支所において防風・防暑施設等を備えた衛生管理市場が整備された。 2 施策の取組状況と成果 平 成 19 年 3 月 に 策 定 し た 「 に い が た 食 の 安 全 ・ 安 心 基 本 計 画 」( 計 画 期 間 : 平 成 19年 度 ∼ 平 成 24年 度 ) に 基 づ き 、 市 町 村 や 関 係 団 体 、 地 域 住 民 ら と 連 携 し て 、 食の安全・安心に関する取組を次のとおり総合的・計画的に推進した。 - 23 - (1)GAPの取組推進 ○ 産地等の農業者、指導者に対する研修会の開催、県GAP推進マニュアルの作成・ 配布などを通じて、GAPの理解及び導入・実践が促進され、GAP導入産地・団体 数が拡大した。 ○ 国のガイドラインに基づく高度なGAPを指導できる普及指導員を養成するととも に、取組を志向する農業者や産地等のGAP認証取得に向けた支援を実施し、高度な GAP導入が促進された。 (2)HACCP方式の導入推進 ○ 畜産生産現場にHACCP方式の導入を推進するとともに、導入農場を畜産安心ブ ランド生産農場として認定することで、導入農場数の増加が図られた。 (3)水産物の鮮度・衛生管理の向上 ○ 水産物の鮮度・衛生管理の向上を図るため、能生漁港の岸壁において、日射による 鮮度低下を防ぐための防暑施設(屋根)を整備している。また、能生漁港、両津漁港 の清浄海水導入施設の整備に向けた設計に着手した。 (4)安全・安心な農産物の提供と消費者の理解促進 ○ 持続性の高い農業生産方式を導入する農業者を「エコファーマー」として認 定し、環境保全型農業を実践する農業者の育成と定着が図られた。 ○ 農薬や化学肥料を地域の慣行栽培から5割以上低減した特別栽培農産物を認証し、 消費者の信頼確保と県産農産物の円滑な流通を促進した。 (5)法令遵守の意識向上 ○ 農業者に対する現地指導や農薬管理指導士の確保・育成等により農薬の適正使用を 指導した。 ○ 米穀事業者等に対し、食糧法及び米トレーサビリティ法の遵守状況を確認するため、 巡回点検を実施し、法令遵守の徹底を図った。 これらの取組により、基本計画の成果指標である「食の安全確保の取組が十分に行わ れていると感じる県内外の住民の割合」は、県内では前年度比1.9ポイント増の48.6% となった。 一方、県外(首都圏)では同比0.4ポイント減の52.6%となったものの最終目標を上 回り、県内外で食の安全確保の取組に対する認知が進みつつあると考えられる。 区分 現 成果指標 3 状 (H18年) 目 標 (H24年) 調査結果 H21 H22 食の安全確保の取組が十分に行われ 県 内 42.3% 50.0%以上 46.7% 48.6% ていると感じる県内外の住民の割合 首都圏 42.9% 50.0%以上 53.0% 52.6% 今後の課題 基本計画に基づき、引き続き施策を総合的に実施し、県産農林水産物に対する 県民・消費者の信頼を確保するため、次のような取組を進めていくことが必要で ある。 ・農林水産物の生産段階における安全性確保の取組拡大 ・各種法令に基づく食の安全に関する遵守事項の徹底 ・県民・消費者への積極的かつわかりやすい情報提供 - 24 - トピックス「農業生産工程管理手法(GAP)の導入」 国では平成22年4月に生産工程管理のガイドラインを示し、高度なGAPの取組拡大 を進めている。これを受け、県では、GAP導入の推進のため、普及指導員のJGAP 指導員資格(民間認証)の取得推進に取り組むとともに、各地域でGAPの導入普及に向 け指導を実施している。 長岡地域振興局では、現地への積極的な導入指導の結果、米では管内の全てのJA(6 JA)で取組が行われ、JA越後ながおか、JAにいがた南蒲の米については実需者も 加わった検証委員会を設置し、実施状況を確認している。 こうした中、JA越後ながおかでは、エコ・5-5JGAP生産部会としてJGAPの団 体認証を取得し、現在8農場で取り組まれている。 また、新潟地域振興局新津農業振興部管内の五泉市の「渡辺農園」では、県内で初め て個別経営体として野菜生産のJGAP認証を取得した。 県内では、こうした団体認証の取組や園芸品目での認証が進むよう、今後とも支援を 行っていく。 <渡辺農園> トピックス「米トレーサビリティ制度について」 米穀等について、食品としての安全性を欠くものの流通の防止、表示の適正化 及び適正かつ円滑な流通の確保を目的に、米トレーサビリティ法(米穀等の取引 等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律)が制定された。 平 成 22年 10月 か ら 同 法 が 施 行 さ れ 、 下 表 の 対 象 品 目 の 仕 入 ・ 販 売 等 の 事 業 を 行 う者(対象者)は、その取引等の記録を作成し、原則3年間保存することになっ た。 対象品目 米 ( 玄 米 、 精 米 等 )、 米 加 工 品( 米 飯 類 、米 粉 、も ち 、米 菓 、清 酒 等 ) 対 象 者 米生産者、米加工品製造業者、流通業者、 小売販売業者、外食事業者等 ま た 、 平 成 23年 7月 か ら は 、 対 象 品 目 を 他 の 事 業 者 へ 譲 り 渡 す 場 合 や 、 一 般 消 費 者に販売・提供する場合には、産地情報の伝達が必要となる(ただし、外食店等 が 米 飯 類 以 外 の 品 目 を 提 供 す る 場 合 は 、 そ の 伝 達 は 不 要 )。 こ の た め 、 関 係 業 界 等 では、包装の表示の変更等、産地情報の伝達に向けた対応を進めている。 - 25 - 第1−2 1 環境と調和のとれた農業の推進 動向 (1) 環境保全型農業の取組面積等は順調に拡大 特別栽培農産物等面積 ※ ア 農業者への環境保全型農業の意識啓発や地域ぐるみの取組等を推進してきた結果、平成 22年12月末の特別栽培農産物等面積は、65,848haとなり、前年度に比べ6ポイント増加し た。 うち、化学合成農薬と化学肥料を5割以上低減した取組面積は、32,023haと全体の約49 %を占めた。また、有機農業 ※の取組面積は440ha(うち有機JAS取組面積347ha)となった。 イ 有機質資源(稲わら) の活用状況 水田への稲わらの秋 【特別栽培農産物等面積の推移】 (ha) 70,000 有機農業 60,000 不順であったことか 40,000 ら 、 前 年 に 比 べ 1. 9 ポ イント減少したもの 30,000 移している。 20,000 6,259 302 1,065 10,000 水田へのたい肥の施 1,367 (22%) 9,404 299 6,261 14,848 29,600 (48%) 22,057 (42%) 29,167 21,741 34,154 320 16,064 の、近年40%以上で推 53,147 315 3割∼5割低減 50,000 440 433 有機農業を除く5割以上低減 すき込み率は、平成22 年は稲刈り後の天候が 65,848 62,003 32,023 (49%) 31,583 15,169 (44%) 239 6,560 (70%) 9,704 9,943 (62%) 0 用面積については、前 H16 年に比べ1ポイント程 H17 H18 H19 H20 H21 H22 資料:農産園芸課調査 注:有機農業は、平成20年まで有機JAS取組面積、平成21 年からは有機JAS及び有機JAS以外の有機農業取組面積 度増加するなど、漸増 傾向となっている。 【稲わら秋すき込み面積率】 【水田へのたい肥施用面積率】 (%) (%) 46 43.3 44 42.1 42 40 14 44.0 40.8 40.0 39.6 37.6 38 38.2 39.0 11.6 12 9.2 10 7.0 8 6 12.4 10.5 4.9 5.1 5.1 5.6 H14 H15 H16 H17 4 36 2 34 0 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 資料:農産園芸課調査 ※ H18 H19 H20 H21 H22 資料:農産園芸課調査 特別栽培農産物等面積:化学合成農薬と化学肥料を、県が定めた地域慣行基準と比較して3割以上減ら して栽培された農産物の栽培面積 ※ 有機農業:①栽培期間中禁止された農薬・化学肥料を使用しない、②遺伝子組み換え技術を使用しない 農法のこと - 26 - 【エコファーマー認定者数(累計)の推移】 エ コ フ ァ ー マ ー ※の 認 定 状 況 イ (人 ) 16,0 00 15,115 14,436 14,0 00 エコファーマーの認定者数は、 11,7 51 12,0 00 地域ぐるみでの取組が進んだこ 10,0 00 と 等 に よ り 、 平 成 23年 2 月 末 日 8,0 00 現 在 で 15,115人 と な り 、 前 年 に 6,0 00 9,906 3,846 4,0 00 比べ 5ポ イン ト増 加し た。 2,0 00 123 500 1,1 43 0 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 資料:農産園芸課調査 ※ エコファーマー:「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」に基づいて環境保全型農業を 実践する農業者のこと。「土づくり技術」「化学肥料低減技術」「化学合成農薬低減技術」 を一体的に取り組む計画を策定し、この計画が県の基準に適合した場合、県が環境保全 型農業を実践する生産者として認定。 新潟県特別栽培農産物認証制度※における認証状況 ウ 県特別栽培農産物認証制度の取組面積は、これまで着実に増加してきたが、平成22 年は、佐渡地域において約3,300haが本制度の申請を取りやめ、佐渡市独自の認証制度 である「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」へ移行したことにより、平成22年12月末日現 在 の認証面積は、11,844haと前年の約83%となった。 【県特別栽培農産物認証面積】 年 度 H16 H17 米 1,029 2,458 園芸(大豆、茶含む) 36 60 合計 1,065 2,517 H18 4,988 34 5,022 H19 H20 H21 7,700 10,942 14,243 29 25 28 7,728 10,967 14,272 (ha) H22 H22/H21 11,819 83 % 26 90 % 11,844 83 % 資料:農産園芸課調査(平成22年12月末日現 在 ) ※ 2 新潟県特別栽培農産物認証制度: 新潟県内で、農薬の使用回数及び化学肥料の使用量を慣行栽培の5割以下に低減して栽培された農産 物を特別栽培農産物として、県が認証する制度。この制度によって、分りやすく統一された適正な表示 を行い、安全・安心な農産物を求める消費者からの信頼を高めてもらうとともに、環境への負荷を軽減 した生産方式の拡大などを図っている。 施策の取組状況と成果 「 新 潟 県 環 境 保 全 型 農 業 推 進 方 針 ( に い が た ク リ ー ン ラ ン ド 戦 略 )」 に 基 づ き 、 環 境と調和のとれた農業を推進するため、次の施策を展開した。 (1) 農 業 者 の 意 識 啓 発 ○ 地域毎の環境保全型農業推進研修会及び消費者・実需者との交流会等の開催や、 環境保全型農業推進コンクールの表彰などを通じて、農業者の意識啓発を図った。 - 27 - (2) 環 境 と 調 和 し た 農 業 生 産 の 推 進 農薬や化学肥料を大幅に低減する技術の確立と地 ○ 域 へ の 定 着 を 目 指 し 、取 組 4 年 目 と な る 農 地 ・水 ・環 境保全向上対策の「営農活動支援」により、支援し た。 営農活動支援の取組面積は、前年よりも600ha程度拡 大するなど、活動が広がっている。 < 環境保全型農業現地研修会 > 【平成22年度営農活動支援の取組状況】 地域協議会 取組区域 取組面積(ha) 21 290 7,821 資料:農産園芸課調査(平成23年3月末現在) ○ エコファーマー育成研修会の開催や産地ぐるみでのエコファーマー認定を支援することに より、環境保全型農業の担い手の育成を図った。 ○ 除草剤に頼らない畦畔管理の定着・拡大を図るため、大規模経営の農業者等に普及可能な 畦畔管理技術を実証し、「みどりの畦畔づくり運動」を推進した。 ○ 有機農業の推進を図るため、「コシヒカリBLにおける有機栽培の手引き」を作成した。 (3) た い 肥 等 有 機 資 源 の 循 環 利 用 の 推 進 ○ たい肥等有機物の利用を促進するため、たい肥利用促進に係る普及啓発や散布・利用体 制整備等を支援した。 ○ 未利用有機質資源の農地への還元を進めるため、稲わら・籾がらの秋すき込み等による 土づくりを推進した。 これらの取組を進めることにより、農業者の意識向上が図られ、特別栽培農産物等面積は前 年度に比べて6ポイント増加し、エコファーマー認定者数は前年度に比べ5ポイント増加す るなど、県内での環境保全型農業に対する取組は着実に定着・拡大した。 3 今後の課題 ○ 「みどりの畦畔づくり運動」の普及や県特別栽培農産物認証制度の適確な運用、コシヒ カリBLの有利性を発揮させた農薬を3割以上低減する取組の推進などにより、農薬や 化学肥料の使用量低減等による環境への負荷低減をさらに進める必要がある。 ○ 農薬や化学肥料の使用量を大幅に低減する技術を確立するとともに、地球温暖化防止や 生物多様性保全に対応する、より高度な環境保全型農業の普及推進を図る必要がある。 ○ 有機農業の取組を拡大するため、「コシヒカリBL有機栽培の手引き」に基づく水稲有 機栽培技術の地域への普及を進める必要がある。 ○ 耕畜連携による土づくりを推進するとともに、稲わら・籾がらの焼却防止や秋すき込み の推進等により、未利用有機質資源の農地への還元を進める必要がある。 - 28 - 指標項目 特別栽培農産物等面積(ha) エコファーマー認定者数(人) ※実績欄の( 実 績 平成21年 62,003 (113%) 目 平成22年 65,848 (101%) 55,000:目標値 65,000:目標値 14,436 (115%) 15,115 (101%) 12,500:目標値 15,000:目標値 標 (平成24年) 55,000 ※ 16,000 )は達成率。下段は当該年度の目標値。 ※特別栽培農産物等面積の目標値については、今後見直しを予定 トピックス「産地ぐるみで取り組むエコファーマー」 聖 籠 町 は 、 昭 和 40年 代 に 造 成 さ れ た 果 樹 団 地 で 、 地 域 特 産 品 種 の 「 小 坂 梅 」 等 を 長 年栽培しているうめ産地である。 同 町 の 興 野 梅 団 地 組 合 で は 、、 消 費 者 に 「 安 全 ・ 安 心 」 な う め を 提 供 し て い こ う と の 機 運 が 高 ま っ た こ と か ら 、 組 織 ぐ る み で の エ コ フ ァ ー マ ー 取 得 を 目 指 し 、「 土 づ く り 技 術 」 や 「 化 学 肥 料 低 減 技 術 」、「 化 学 合 成 農 薬 低 減 技 術 」 の 導 入 を 推 進 し て き た 。 そ の 結 果 、 平 成 22年 12月 ま で に 生 産 組 織 構 成 員 17名 の う ち 14名 が エ コ フ ァ ー マ ー の 認定を受けた。今後、残る3名の構成員についてもエコファーマー取得を目指してい く。 組 織 名:興野梅団地組合 構 成 員 : 17名 ( う ち 14名 が エ コ フ ァ ー マ ー 取 得 ) 栽 培 品 種 :「 越 の 梅 」、「 藤 五 郎 」、「 小 坂 梅 」 - 29 - 第1−3 1 地産地消、食育の推進 動向 (1) 地産地消の推進体制の整備が進む 市町村段階での地産地消の推進主体である「市町村地産地消推進協議会」が、今年 度は新たに6ヶ所で設置された。 現在、28市町村(H23.3現在)で活動が展開されており、学校給食における地場産農 林水産物の利用拡大などの方策の検討や、直売グループと連携した地場産品PRイベ ントの開催など、地産地消を推進するための様々な取組が行われている。 (2) 学校給食での県産農林水産物の使用状況 平成21年度に県内小中学校給食で使用した食 品数に占める県産農林水産物の割合(抽出調査) は、学校給食関係者と生産者の連携促進の取組 等により、総使用割合において、これまでの調 査結果で最も高い38.2%となり、全国平均の 26.1%を大幅に上回った。 また、項目別では、農産物や畜産物の県産使 【H21年度学校給食での県産使用食品数割合】 県産使用割合 項 目 総使用割合 38.2% うち油脂・砂糖・種実類除く割合 45.8% うち穀類(注1)の割合 36.0% うち農産物(注2)の割合 51.1% うち畜産物(注3)の割合 67.3% うち水産物の割合 7.5% 資料:文部科学省、教育庁保健体育課(抽出調査) 注1:穀類:米、小麦、豆、いも、澱粉類等 注2:農産物:野菜、果物、きのこ類 注3:畜産物:肉類、牛乳、卵類、乳製品等 用割合が5割を超えているが、調味料的要素が 【週あたり米飯給食回数の推移】 強い油脂、砂糖、種実類を除いた県産割合では 45.8%となっている。水産物は1割未満と低い。 新潟県 全国平均 米飯給食回数は年々増加し、平成22年の週当 H19 3.71 3.0 H20 3.85 3.1 H21 4.04 3.2 H22 4.06 − 資料:文部科学省、教育庁保健体育課 りの平均実施回数は4.06と、昨年から0.02回増 加した。平成20年度において週4回を超えている都道府県は1県のみであり、本県は 全国的にも米飯給食回数がトップレベルとなっている。 また、パン・めん給食については、米粉製品の導入を推進しており、年間1回以上 米粉パンを導入している学校の割合は、平成22年で81.7%(計画値)と前年に比べて 14.2%増と大幅に増加した。なお、今年度からは米粉めんの本格的導入も始まってい る。 (3) 学校や地域での食育活動 県内の食育ボランティアは125人・10団体(1,587人)が登録しており、学校や地域 において農業体験や調理実習などの食育実践活動で活躍している。なお、今年度、 新潟県調理師会など食育活動を行う団体との連携を強化した結果、食育ボランティ アの登録数は、昨年度の150人から大幅に増加した。 県内公立小中学校の多くでは、教育効果を期待し、総合学習の一環として、農林 漁業体験学習を取り入れており、特に、県内公立小学校では、稲作体験学習が定着 している。 ※ 食育ボランティア:郷土料理の歴史や作り方、農産物の育て方、食と体づくりの関わりなど「食」 に関する専門的な知識を持ち、学校や地域での「食育」に関する活動を行っている方々をいう。 - 30 - (4) 直売所の販売額は大幅に増加 平成22年度の本県の直売所設置箇所数 は638ヶ所となり、販売額は96億3千万円 (箇所) 700 となった。設置箇所数、販売額とも年々 600 増加傾向にあり、特に販売額は平成20年度 500 比163%の大幅な増加となった。 平成22年度は販売額500万円未満の直売 400 所が減少する一方で、販売額1千万円以上 の直売所が平成20年に比べて3.9%増加して 農産物直売所数・販売額 (百万円) 6 38 箇所、9 ,6 3 2百 万円 10000 9000 8000 7000 3 07 箇所 1 ,0 68百万円 6000 300 5000 4000 200 3000 100 2000 1000 0 30.2%を占めたことに加え、販売額1億円 0 H13 H14 H15 H16 H17 直売所数 H18 H19 H20 販売額 H22 以上の直売所も12ヶ所増加して21ヶ所にな るなど、直売所の大型化が進展している。 2 資料:食品・流通課調査 施策の取組状況と成果 (1) にいがた21地産地消運動の推進 ○ 平成13年度から10年間の県民運動として展開してきた「にいがた21地産地消運 動」は、消費者、生産者、流通関係者、行政等が一体となって取組を進めた結果、 県民の地産地消に対する認知度が向上するとともに、農産物直売所の増加など、県 内各地で地産地消の取組が拡大した。 ○ 地域の課題に即した「より身近な地産地消」を推進するため、市町村地産地消推 進協議会の設立と運営の支援を行い、平成22年度末までに28市町村において地産地 消の推進体制の整備が進んだ。 (2) 県産農産物の販売・使用促進 ○ 県民の県産農産物の優先購入を促進するた め、平成21年度の実証結果で最も効果の高か った「旬」の統一POP表示について、同マー クの利用規程を定め、県内全域の小売店等に おける利用を推進した。 ○ 学校給食での県産農産物使用拡大に向け、 学校給食関係者と生産者による検討会の開催 や供給体制の構築、卸売市場による流通情報 の提供手法の検討等を行った。 これらの取組等により、学校給食での県産 <学校 給食週間(小千谷 市)での 検討会> 農林水産物の使用割合は過去最大の38.2% (H21)となった。 ○ 学校給食への米粉製品の供給拡大に向け、新たに米粉めんに対しても米粉パンと 同様に、小麦粉製品との価格差支援をすることにより、年間1回以上米粉めんを導 入している学校は61.7%(計画値)となった。 ○ 米粉パンについては、導入拡大の大きな阻害要因であった、小麦粉パンとの価格 差の保護者負担を軽減するため、原料米の調達方法の見直し等を行い、価格の引下 げを実現した。 - 31 - (3) 食育の推進 ○ ごはんを中心とした日本型食生活や規則 正しい食習慣の重要性を啓発するため、園 児及び小学生の保護者を対象とした「ごは ん食推進講演会」を県内18箇所(うち、3 箇所は調理実習とあわせて実施)で開催し、 延べ900人が参加した。 参加者に対するアンケート調査では、 「今 後、ごはん食を増やす(又は既に毎朝ごは ん食)」との回答が約90%と高い水準とな り、ごはんを中心とした食生活を見直す機 会として一定の効果があった。 ○ <ごはん食推進講演会時の調理実習の様 子> 小中学校での農業体験学習をはじめ、JAや民間団体等が、県内各地で生産現 場の見学や作業体験、県産食材を使用した料理教室等を開催し、農林水産業や県産 農林水産物に対する理解促進を図った。なお、このような地域や学校での取組では 食育ボランティアも活躍した。 (4) 直売所を活用した県農業の方向性に関する検討 県では、直売所を県内農業活性化の拠点と位置 付け、その良さ・特徴を活かした具体的取組につ いて検討を行うため、有識者による『うまさぎっ しり新潟「食のプロデュース会議」』の中に「直売 所分科会」を設置し、活発な議論が展開された。 同分科会の検討結果として、積極的情報発信、 道の駅の直売機能の充実、POS等を活用した計 画的な品揃え、直販ルートの整備、直売ビジネス リーダーの育成、並びに必要な行政の支援につい て提言がまとめられた。 3 <「食のプロデュース会議」直売所分科会> 今後の課題 ○ 市町村地産地消推進協議会のもと、消費者、生産者、実需者、流通関係者等の取 組主体が連携の上、市町村の課題に即した具体的な取組を実践し、地産地消を一層 推進する必要がある。 ○ 県内での県産食材の一層の利用拡大を図るため、県と関係者等が連携し、市町村 内流通を越えた県内全域での県産食材の流通拡大を図る必要がある。 ○ 『うまさぎっしり新潟「食のプロデュース会議」』の提言を受け、関係者との連 携等により、直売所の総合的な情報発信や品揃えの確保・充実等に積極的に取り組 み、直売所の活性化を図る必要がある。 ○ 学校給食への米粉製品について、より一層の食味等の向上による導入拡大を通じ て、次代を担う児童・生徒の米粉への理解促進を図る必要がある。 ○ 食育ボランティアとも連携し、ごはんを中心とした日本型食生活の啓発など、地 域の要望に応じた食育活動を支援していく必要がある。 - 32 - トピックス「にいがた夏野菜カレープロジェクトの実施」 大手食品メーカーや県内の小売店、外食産業に呼 びかけ、全国1位の作付面積を誇る「なす」など旬 の「にいがた夏野菜」と、都道府県庁所在市及び政 令指定都市別ランキングで新潟市が1世帯当たり年 間の支出金額第1位(総務省家計調査)の「カレー」 をテーマにしたフェアを展開。県民に新潟の食文化 の魅力や旬のおいしさを再認識していただくこと で、県産農産物の消費拡大を図った。 このプロジェクトには23事業者が参加し、7月か ら8月の2ヶ月間、スーパー店頭での新たな「にいが <知 事参 加による プロ ジェ クト 発表会> た夏野菜カレー」レシピの提案やホテルが競う新メニューの提供、産地と卸売市場による夏 野菜収穫体験や調理体験、三条カレーラーメンとのコラボレーション等に取り組んだ。 - 33 - 第2 産業として成り立つ魅力ある農林水産業 - 35 - 第2−1 担い手の確保・育成 (1)人材の確保・育成 1 動向 【新規 就農者 数 】 (1) 新規就農者の確保・育成 300 人 新規就農者 うち法人等就業者 250 平 成 22年 の 新 規 就 農 者 数 は 、 前 年 に 比 べ て 190 200 わずかに減少したものの245人が確保された。 258 186 245 182 151 137 150 このうち、農業法人等への就業者数は、前 100 年より若干減少しているものの、雇用の基金 50 事業などの緊急雇用対策の実施により、全体 0 40 38 平成19年 平成20年 30 平成18年 平成21年 平成22年 の56%を占める137人が確保された。 また、退職等を機会に農業と関わりながら 資 料:経営 普及 課調査 農 村 地 域 で 生 活 す る 55∼64歳 の 定 年 就 農 者 は 注 :デー タは 各年12月末 日現在 57人となり、平成21年と比較して13人増加し た。 (2) 女性農業者等の経営参画の促進 農 村 女 性 起 業 数 は 、 近 年 増 加 傾 向 に あ り 、 平 成 22年 で 415件 と 前 年 度 に 比 べ 31件 増 加 し た 。 ま た 、 そ の う ち 売 上 500万 円 以 上 の 取 組 も 増 加 傾 向 に あ り 、 平 成 21年 度 は 73 件となった。 家 族 経 営 協 定 締 結 農 家 数 に つ い て も 引 き 続 き 増 加 傾 向 に あ り 、 平 成 22年 で 1,341戸 と前年に比べ68戸増加した。 女 性 の 認 定 農 業 者 は 、 平 成 22年 で 412人 と な り 、 前 年 に 比 べ 44人 増 加 す る な ど 認 定 が進んでいる。なお、女性の共同申請は73人となっている。 【農 村女性起 業数 の推移】 【農 村女性の 経営 参画状況 】 1,600 500 400 332 356 352 384 415 1,200 1,080 300 家族経営協定締結農家数 農村女性起業数 売上500万円以上 200 100 53 47 54 61 73 0 H17 H18 H19 H20 H21 資料:経営普及課調査 注:データは各年度末 2 1,341 1,273 1,233 1,184 女性の認定農業者数 800 368 400 163 212 412 271 0 H17 H18 H19 H20 H21 資料:経営普及課調査 注:データは各年度末 施策の取組状況と成果 (1) 新規就農者の確保・育成 ○ 就農相 談窓口の 設置や 就農情報 メールの 配信等に よる情報 発信、首 都圏等におけ る就農フ ェアの開 催など 、就農相 談員を中 心とした 相談活動 の実施や 、緊急雇用対 策などの支援策の実施等により、例年より多くの新規就農者を確保した。 ○ 緊急雇 用対策等 により 農業法人 等へ新規 就農した 者の着実 な定着に 向け、仲間づ くりのための交流会や技術研修会等を開催した。 - 37 - ○ 「受入 モデル地 区」を 3ヶ所設 置し、就 農希望者 や農村体 験希望者 の受入れを支 援した。 (2) 女性農業者等の経営参画の促進 ○ 女性農 業者が、 新たな 経営部門 として取 り組む直 売や農産 加工につ いて、その経 営や技術に関する課題解決を支援し、販売額の向上が図られた。 ○ 関係機 関との連 携によ り、若い 世代の女 性農業者 リストを 整備し、 技術・知識の 習得に向 けた集合 研修や 個別指導 を実施し た。これ らの取組 により、 若い女性農業 者のネッ トワーク づくり が図られ た他、農 業経営に おける女 性の位置 付けを明確に して農業に取り組む事例が増えた。 3 今後の課題 ○ 目標と する新規 就農者数 を確保 していく ため、首 都圏の若 者等に対 する「農業の 魅 力 や 就 農 情 報 の 発 信 」、「 就 農 体 験 受 入 先 の 確 保 」、「 法 人 等 就 農 希 望 者 の 受 け 皿 づくり」を強化する必要がある。 また、 緊急雇用 対策等 により法 人等に新 規就農し た者の定 着に向け 、技術研修会 や仲間づくりの交流会の開催など、引き続き支援が必要である。 ○ 指導農 業士、農 村地域生 活アド バイザー 等の農業 者リーダ ーに対し 、女性認定農 業者 確保に向 けた共同 申請や 、家族経 営協定の 締結を働 きかけ、 地域への普及を図 る必要がある。 ○ 今 後の農業 経営を担 う若い 世代の女 性農業者 に対して 継続的に 研修を実施し、経 営者としての意欲や資質の向上を図る必要がある。 指標項目 実 績 目標 平成21年 平成22年 新規就農者数(人) 258 (92%) 245 (88%) 〔法人就業者を含む〕 280:目標値 280:目標値 ※実績欄の( )は達成率。下段は当該年度の目標値。 - 38 - (平成24年) 280 第2−1−(2)経営体等の確保・育成 1 動向 認定農業者数※が引き続き増加 (1) 平成22年の認定農業者数は、水田経営所得 安定対策の加入推進等により、前年に比べ 【 認定農業者数の推移 】 15,000 10,000 206増加し、13,712となった。 9,817 11,951 13,506 H19 H20 H21 13,712 5,000 なお、経営類型別では、個人経営の約6割、 法人経営の約8割が稲作中心の経営となって 0 H18 いる。 ※ 認定農業者:経営体を目指し、市町村から認定を 受けた農業者 11,801 H22 資料:地域農政推進課調査(各年3月末現在の調査数字) 【農業法人数の推移】 (2) 法人化が緩やかに進展 法人 水田経営所得安定対策や米政策改革推進対 1,000 策の本格実施に対応し、経営体質の強化のた 800 めに法人化する農業者が平成19年から20年に 600 459 400 157 200 302 363 H18 H19 かけて大幅に増加したものの、それ以降の伸 びは鈍化している。平成22年は、前年に比べ その他農業法人 535 800 810 832 193 184 191 607 626 641 H20 H21 H22 172 0 22法人増加し、832法人となった。また、こ のうち、農業生産法人数は641法人で、一戸 農業生産法人 資料:経営普及課調査(各年3月末現在の調査数字) 一法人を除く農業生産法人数は、約8割を占 める519法人となった。 (3) ア 資料:地域農政推進課調査(各年3月末現在の調査数字) 【経営体数の推移】 経営体※は引き続き増加 経営体数 個別経営体数 組織経営体数 4,000 経営体数の推移 6次産業化の推進や担い手への農地集積等 3,338 3,500 により、平成22年の経営体数は前年に比べ 3,000 213増加し、3,551になった。 2,500 2,851 3,011 337 3,551 366 300 2,565 209 132 2,433 2,642 2,711 H18 H19 H20 3,001 3,185 H21 H22 2,000 イ 経営体売上額の推移 1経営体当たりの売上額は、6次産業化の 取組による売上向上の効果はみられるもの 資料:地域農政推進課調査(各年3月末現在の調査数字) の、米価等の下落傾向の中では、その効果は 売上高 (万円) 限定的なことから、平成22年は前年とほぼ同 3,000 水準となった。 2,800 ※ 2,600 経営体:他産業並みの所得を得る農業経営 2,400 2,200 【経営体売上高の推移】 2,649 2,376 2,358 2,369 2,200 2,000 H18 - 39 - H19 H20 H21 H22 ウ 経営体の農地集積率の推移 【経営体の農地集積率の推移】 シェア(%) 30.0 平成22年の経営体の農地集積率は、経営 体数の増加と比例して増加傾向にあり、前 20.0 年に比べ0.7ポイント増加し、22.1%となっ た。また、1経営体あたりの経営面積は 18.9 17.5 14.3 21.4 22.1 H21 H22 10.0 10.6haとなった。 0.0 一方、経営体を含む認定農業者等担い手 H18 への農地集積率は、担い手数の増加と比例 H19 H20 して増加傾向にあり、前年に比べ1.2ポイン ト増加して55.1%となった。また、経営面 積は5.3haとなった。 担い手数 【認定農業者等の担い手数と農地集積率の推移】 農業者数 農地集積率(%) 集積率 20,000 70.0 60.0 15,000 10,000 42.4 48.7 51.3 55.1 53.9 50.0 40.0 30.0 20.0 5,000 10.0 0 年度 0.0 H18 H19 H20 H21 H22 資料:地域農政推進課調査(各年3月末現在の調査数字) 資料:地域農政推進課調査(各年3月末現在の調査数字) (4) 6次産業化が進展 平成21年度の加工又は直売に取り組む経営体数は、前年度に比べ7ポイント増加し44%とな った。 また、平成21年度の経営体の平均販売額は2,369万円で、前年度とほぼ同額となっている。 そのうち、加工・直売を実施する経営体の平均販売額は2,657万円で、未実施の2,141万円と 比べると516万円高く、6次産業化の取組による一定の売上向上効果がみられる。 農産加工・直接販売の取組状況(単位:%) 経営体の平均販売額(単位:万円) 加工又は直売の実施割合 平均販売額 うち加工 うち直売 個別 H20 35 4 34 経営体 H21 42 5 41 H20 49 11 47 経営体 H21 56 13 55 組織 個別 加工・直売実施 加工・直売なし H20 1,926 2,313 1,728 経営体 H21 1,933 2,083 1,830 H20 6,203 8,201 4,089 経営体 H21 6,092 6,390 5,725 組織 合 H20 37 5 36 合 H20 2,358 3,325 1,978 計 H21 44 6 43 計 H21 2,369 2,657 2,141 出典:地域農政推進課調査 注:加工・直売の双方を実施する経営体を含む 出典:地域農政推進課調査 また、従来から取り組まれている農業者グループや農協による大型直売所や加工施設の設 置等、地域農業者がまとまって行う6次産業化の取組に加え、農業者と商工業者が有機的に 連携し、新商品・新サービスの開発を進める農商工連携の取組も徐々に広まりつつある。 - 40 - (5) 企業等の農業参入が増加 平成22年12月末の企業等の農業参入数は、 3月末から10法人増加し、41法人となった。 41法人のうち、平成21年12月の農地法等の 改正以後、新たに農業参入した企業等は11法 人となっており、建設業、食品関連業等多様 な業種の企業が参入している。 法人数 50 40 30 20 10 0 【企業等の農業参入数】 41 31 31 H21.3 H22.3 23 17 H19.3 H20.3 H22.12 資料:地域農政推進課調査 2 施策の取組状況と主な成果 経営体の育成・確保を進めるため、新規設立法人の経営の安定化、経営体等の企画・販売力 等の強化、担い手への農地集積を支援した。 (1) 経営発展支援の取組 新規設立法人や集落営農組織等に対して、収益性の向上及び経営の健全化に向けた指導を 実施し、経営発展を支援した。 (2) 経営体の企画・販売力等の強化の取組 「新潟県農業担い手サポートセンター」の外部専門家(販売戦略スペシャリスト)と連携 し、担い手の企画・販売力等の向上による商品開発 や 販路拡大による売上額向上を支援した 結果、平成22年度の商談成立数は49件(H22.11末現在)となった。 また、農商工連携の取組を全県的に波及させるとともに、農業者の所得を確保するため、 農商工連携のモデル的な取組を支援した。 (3) 担い手への農地の流動化支援 農業経営基盤強化促進法が平成21年12月に改正され、農地を面的にまとめて効率的に利用 するために、農地利用集積円滑化事業が創設された。この仕組みの中で、農地利用集積円滑 化団体が行う農地の利用集積を促進する取組と補助事業を活用した支援により、担い手への 農地の面的集積を促進した結果、H21.3からH22.3までの1年間に2,150haが集積された。 3 今後の課題 ○ 他産業並みの所得を確保する「経営体」を育成するため、認定農業者等の経営発展に向 け、次の取組を支援する必要がある。 ① 水田経営の安定化を図るため、地域の実情に合った所得補償制度の実現 ② 農業者の企画・販売力等の強化による6次産業化の推進 ③ 認定農業者等への農地集積(規模拡大)の推進 ④ 中山間地域等における集落営農の組織化や法人化、企業による農業参入等、多様な 担い手の確保 - 41 - 指標項目 1経営体当たり売上額 経営体数 個別経営体 組織経営体 経営体の耕地シェア 実 績 平成21年 平成22年 2,369(90) −(−) 2,625:目標値 2,750:目標値 3,551(90) −(−) 3,950:目標値 4,300:目標値 3,185(88) −(−) 3,600:目標値 3,900:目標値 366(105) −(−) 350:目標値 400:目標値 22.1%(92) −(−) 24.0:目標値 27.0:目標値 目標 (平成24年) 3,000 5,000 4,500 500 33% ※ 実績欄の( )は当該年に対する達成率 ※ 夢プランの見直し(平成21年12月)により、平成21年度以降の1経営体当たり売上額及び経営体数 の目標が変更 トピックス「農商工連携による『ぷち森シリーズ』の開発・販売」 新津商工会議所とJA新津さつきが連携し、特産農産物であるプチヴェールの知名度向上 と地域の活性化を図るため、プチヴェールを利用した特産品開発に取り組んでいる。 平成19年5∼6月に開催した「にいつ食の陣」において、地元菓子組合、料理組合、麺類 組合等参加店がプチヴェールを使用した創作メニューを提供した。このイベントが新聞等で 報道されたことから、プチヴェールが地域内外で注目されるようになった。 平成20年度、商工会議所とJAは菓子組合、大学、行政等と連携し、プチヴェールを使っ た「ぷち森シリーズ」(ケーキ、饅頭、クッキー等8種類)を完成させ、平成21年3月から 菓子組合傘下の12店舗で販売を開始し、1ヶ月の売上高が400万円と好調な滑り出しとなった。 平成21年度からは、商工会議所が事務局となりJAや認定農業者、菓子組合、流通運輸業 者等を構成員とした「新津農商工連携推進協議会」を組織し、「農商工連携推進モデル事業」 (県単)を活用して販路拡大や食材加工技術の研究等に取り組んだことにより、平成21年度 の売上高は当初予想を大きく上回る1,500万円となった。 食材となっているプチヴェールの外葉は、これまでは多くがほ場で廃棄されていたもので あり、加工品への活用は付加価値向上による農業所得の確保につながっている。 <「にいつ食の陣」開催の様子> <「ぷち森シリーズ」食パン、饅頭等8種> - 42 - 第2−1−(3)地域に即した持続的発展が可能な農業システム 1 動向 (1) 組織化・法人化は進展 本県の農業就業人口は、平成22年 【農業就業人口と平均年齢の推移(新潟県)】 で98,988人となり、5年前に比べ 23.4%減少した。平均年齢は5年前 より2.7歳高い66.4歳となり、高齢 化が進行している。 146,373 129,217 98,988 63.7 歳 60 58 61.6 60.3 ︶ 56 し、農業法人数は平成20年には800 200,000 農 業 150,000 就 業 100,000 人 口 50,000 人 0 ︵ 地域で営農体制の話し合いが進展 147,745 ︶ 的経営安定対策の導入を契機に各 66.4 169,503 ︵ 一方で、平成19年度の品目横断 68 平 均 66 年 64 齢 62 平成2年 平成7年 平成12年 平成17年 平成22年 法人と制度導入時の平成19年の535 農業就業人口 法人から大幅に増加した。しかし 平均年齢 資料:農林水産省「農林業センサス」 ながら近年は法人化の動きは一段落 し、平成22年は832法人で微増とな った。〔関連データは第2-1-(2)に掲載〕 また、認定農業者数についても、前述の対策の要件となったことから増加し、平成22年 は13,712となった。〔関連データは第2-1-(1)に掲載〕 平成19年度に導入された水田経営所得安定対策への加入者数は、新規設立法人や集落営 農等に対する加入推進等により近年微増傾向にあり、平成22年は前年より115者増加の10,6 35者が加入した。また、対策対象面積に対する面積カバー率は前年並みの49%となった。 一方、平成22年度に導入された戸別所得補償モデル対策には、本県では対象農家の82% にあたる66,571件が加入し、全国の67%よりも高い加入率となった。 【水田経営所得安定対策の加入申請状況】 H19 加入者数 H20 H21 H22 6,970 10,219 10,520 10,635 40% 47% 49% 49% 面積カバー率 資料:面積カバー率 地域農政推進課調査 対策加入者数 農林水産省調査 【米戸別所得補償モデル事業の加入申請件数】 新潟県 全国 加入申請件数:A 66,571 1,177,332 水稲共済引受戸数(H21):B 81,539 1,755,763 82% 67% 加入割合(A/B) 資料:農林水産省 (2) 担い手への農地集積が進展、耕作放棄地の発生は抑制 市町村長が地域農業の担い手として認定する認定農業者数の確保や、市町村農業委員会 による農地集積の調整などにより、認定農業者等担い手への農地集積率は増加傾向にあり、 - 43 - 平成22年では55.1%となった。〔関連データは第2-1-(3)に掲載〕 一方、耕作放棄地面積は平成22年 【耕地面積及び耕作放棄地面積の推移(新潟県)】 に9,452haとなり、5年前に比べて 273ha増加したものの、中山間地域等 直接支払制度や農地・水・環境保全 6,066 h a 実施により、耕作放棄地の発生が抑 制され、一部地域ではその解消も見 174,400 +273ha +507ha +2,606ha 8,672 9,179 9,452 平 成 12年 平 成 17年 平 成 22年 2,000 0 ) られる。 平 成 7年 耕作放棄地 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 耕 地 面 積 千 h a ︶ 4,000 177,100 181,500 ︵ 委員会を中心とする発生防止対策の 187,200 ︵ 向上対策等の施策推進や市町村農業 耕 14,000 作 放 12,000 棄 10,000 地 面 8,000 積 6,000 耕地面積 資料:農林水産省「耕地面積統計」「農林業センサス」 (3) 施策効果により新規需要米等の作付けが着実に増加 年々拡大する生産調整に適確に対応するためには、国の支援等を有効に活用し、地域に おいて栽培に適する作物の選択や効率的な土地利用調整を行う必要がある。平成22年は戸 別所得補償モデル対策による支援の充実により、水田作に最も適する米粉用米や飼料用米 等新規需要米の作付けが前年に比べて大幅に増加している。特に米粉用米の作付面積は、 前年に比べ1,048ha増加して1,731haとなり、前年に引き続き、全国1位となった。 一方、これまでブロックローテーション等集団的な土地利用が定着している大豆につい ては、助成水準が下がったことなどにより、平成22年の作付面積は前年に比べて減少して いる。〔関連データは第2-2-(1)に掲載〕 2 施策の取組状況と主な成果 (1) 戸別所得補償モデル対策及び水田経営所得安定対策の加入推進 ア 戸別所得補償モデル対策 県段階では、全戸配布の啓発資料の作成・配布による制度周知や、新聞への広告掲載を通 じて加入推進を図った。市町村段階においても、啓発資料の配布や集落説明会、広報誌等を 活用して制度周知を図るとともに、加入申請・相談窓口の設置や地区巡回受付の実施、未提 出者への戸別連絡等を通じて申請漏れがないよう取り組みを進めた。 これ らのこと から、本 県にお ける平成 22年 度の米戸 別所得補 償モデル 事業の加入申 請 は 67千 戸 と な り 、 対 象 農 家 と 見 な さ れ る 水 稲 共 済 引 受 戸 数 (H21)に 対 し 、 約 82% の 加入割合となった。 イ 水田経営所得安定対策 平成18年度から「水田経営所得安定対策への対応」を緊急的な課題と位置づけ、水田経営 所得安定対策の対象面積が県の水田耕地面積の過半を占めるよう、地域農業の担い手の確保 ・育成に取り組んできた。 また、平成22年度は引き続き、新規設立法人・集落営農組織等に対する加入を推進し、地 域担い手の育成・確保に取り組むとともに、既に対策に加入している者については、農地集 積や企画・販売力の強化等を通じて、他産業並みの所得を確保する農業経営体への発展を支 援した。 加入促進に取り組んだ結果、面積カバー率は平成21年と同程度の49%となり目標をほぼ達 成した。 - 44 - (2) 県版所得保障モデル事業(水田経営安定化・フル活用モデル事業)の取組状況 22年度は、非主食用米の生産を誘導する加算措置を新設するとともに、これまでの平 場4地区に加え、新たに中山間地を中心に5地区をモデル地区に追加し、県内の多様な 地域における事業効果の検証に取り組んだ。 昨年に引き続き、米粉用などの非主食用米の栽培面積は大幅に拡大するなど、非主食 用米等への栽培誘導効果が確認された。 【非主食用米等の栽培面積】 採択年度 地区数 H21 4地区 作目 H20 5地区 H22 7.7ha 12.2ha 18.3ha 150% 8.7ha 8.0ha 7.2ha 90% 16.4ha 20.2ha 25.5ha 126% ― 14.4ha 19.9ha 138% ― 1.7ha 2.6ha 153% ― 16.1ha 22.5ha 140% 16.4ha 36.3ha 48.0ha 132% 非主食用米 大豆 小計① H22 H21 非主食用米 大豆 小計② 合計(①+②) H22/H21 資料:地域農政推進課調査(H 2 2 . 1 1 月現地調査より) (3) 関係機関・団体による支援体制の整備 関 係 機 関 ・ 団 体 が 一 体 と な っ て 担 い 手 育 成 を 進 め る た め 、「 市 町 村 担 い 手 育 成 総 合 支援協議会」と連携し、法人・組織設立支援や認定農業者等の販路拡大に向けた企画 販売力強化研修等により、地域農業の担い手の確保・育成活動を支援した。 3 ○ 今後の課題 戸別所得補償モデル対策の加入割合は8割以上に達したものの、22年産米の過剰作付面積 は約3,800ha、過剰作付割合では103.7%とほぼ前年並みであり、依然として主食用米は過剰 作付となっている。このため、主食用米から非主食用米へ誘導するインセンティブの強化や、 地域裁量が発揮できる制度となるよう引き続き国に提案していく必要がある。 ○ 認定農業者数が約13,800人となり、地域の担い手が一定程度確保されたことから、今後も 認定農業者等への農地集積や6次産業化、農商工連携を推進し、他産業並みの所得を確保す る経営体の確保・育成が必要である。 ○ 経営規模が零細で担い手が少ない地域では、組織化・法人化の推進や企業等の農業参入に より、地域の実態に即した営農体制の構築が急務である。特に担い手の確保が困難な中山間 地域等においては、周辺集落と連携した広域的な営農体制の整備が必要である。 ○ 県版所得保障モデル事業(水田経営安定化・フル活用モデル事業)については、引き続き 事業効果の検証に取り組むとともに、他産業並の所得が確保される所得保障制度が確立され るよう国に提案していくことが必要である。 - 45 - 第2−2 「安全・安心なにいがた」ブランド農産物の提供 (1)「新潟米」を中心とした水田農業生産体制の確立 1 動向 (1) 21年産米産出額は大幅に減少 消費者の低価格志向や、20年産米の繰越在庫等による価格低迷、生産数量目標の削減に伴 う収穫量の減少等により、本県の21年産米産出額は前年比90%の1,509億円に減少した。ま た、全国の米産出額は、前年比93%の18,044億円と本県同様に減少したが、本県産米の減少 率が大きかったことから、新潟米の産出額シェアは8.4%へと低下した。 本県産米の減少率が全国に比べて大きくなった要因は、本県産米の農家庭先価格が前年に 比べ7ポイント低下したのに対し、全国では3ポイントの低下に留まったことが大きな要因 と考えられる。 【米産出額等の推移】 産出額 シェア(%) 新潟 産出額(億円) 全国 新潟 収穫量 (子実用:千㌧) 農家庭先価格 (推定:千円/㌧) 全国 全国 新潟 新潟 H19 9.0 18,058 1,623 8,714 651 207 249 H20 8.6 19,312 1,669 8,823 644 219 259 H21 8.4 18,044 1,509 8,474 627 213 241 21/20 98 93 90 96 97 97 93 資料:産出額及び収穫量は農林水産省公表資料、農家庭先価格は農産園芸課推計 (2) 22年産米は作柄はやや不良で、1等級比率は記録的な低下 ア 22年産米の生産状況 本県の22年産水稲の作付面積は、22年産米の生産数量目標が減少する一方で、新規需要米 や加工用米などの非主食用米が大幅に増加したことから、前年産に比べ500ha 増加の117,90 0ha となった。 作柄は、5月中下旬の低温・日照不足により初期分げつが抑制された。また、6月下旬は 夜温が高く気温日較差も小さかったため、後期高次分げつも抑制され、穂数は少なくなった。 その結果、一穂籾数はやや多かったが、全籾数はやや少ない状況となった。梅雨明け以降は、 記録的な高温・多照で推移したが、高温の影響により登熟は平年並みとなり、本県の作況指 数は97のやや不良となった。 品質は、記録的な猛暑により高温障害を受け、過去最低の1等級比率21.1%(うるち玄米、 平成23年1月末現在)となった。 【本県の年次別収穫量等】 作付面積 (子実用 ha) 収穫量 (子実用 ㌧) H19 120,700 650,600 100 H20 116,900 644,100 102 H21 117,400 626,900 99 H22 117,900 617,800 97 作況指数 資料:北陸農政局 - 46 - 【22年産米の1等級比率】 うるち玄米 もち玄米 醸造用玄米 新潟 21.1 56.1 45.0 全国 61.7 47.7 69.3 資料:農林水産省 平成23年1月末現在 イ 22年産米の販売状況 少子・高齢化等による米消費量の減少や、21年産米の持ち越しによる全国的な流通在庫の 増加、さらに、景気動向による低価格志向等により本県産米の販売環境は依然として予断 を許さないものの、22年産米については、消費者が受け入れやすい店頭価格に設定されたこ とや作況指数が「やや不良」になったことによる品薄感から、卸売業者の引き合いが強まり、 販売進度は前年に比べ改善されつつある。 本県の22年産コシヒカリの販売量は、平成23年2月末現在で100,794t となり、前年同期よ りも20,404t多い状況となっている。 また、22年産こしいぶきは、家庭用・業務用ともに新規需要が拡大し、平成23年2月末現 在の販売数量は21,339tで、前年の同期に比べて6,029t多い販売状況となっている。 また、本県の22年産コシヒカリの相対取引価格は、前年に比べ低下しているものの、販売 が好調なこと等から23年1月の一般コシの価格は前月に比べ、わずかに上昇している。 【新潟米の販売状況(2月末現在)】 (単位:トン、%) H19産 コシヒカリ こしいぶき 113,420 H20産 H21産 96,650 80,390 100,794 100% 15,570 H22産 85% 83% 125% 19,460 15,310 21,339 125% 79% 139% 100% 下段は、前年比 資料:JA全農新潟及び県主食集荷協同組合の販売状況 ウ 品種構成 景気動向等の影響を踏まえ、関係団体と連携し、値頃感のある米の需要増加等に対応する ため、こしいぶき等への作付誘導に取り組んでいる。 22年産のこしいぶきの検査数量は、18年産の187%に増え、一方で、コシヒカリの検査数 量は18年産の80%へと減少しており、コシヒカリからこしいぶきの作付転換が進んでいる。 (単位:㌧) 【米の検査数量の推移】 H18 品種 全体 451,029 < 100% > 351,800 コシヒカリ < 78% > 41,182 こしいぶき < 9% > 1,323 ゆきん子舞 < 0% > 24,071 もち < 5% > 11,313 醸造用 < 3% > H19 ( 100% ) ( 100% ) ( 100% ) ( 100% ) ( 100% ) ( 100% ) H20 H21 H22 444,849 ( 99% ) 457,331 ( 101% ) 433,423 ( 96% ) 420,894 ( 93% ) < 100% > < 100% > < 100% > < 100% > 344,854 ( 98% ) 337,205 ( 96% ) 309,609 ( 88% ) 282,031 ( 80% ) < 78% > < 74% > < 71% > < 67% > 43,801 ( 106% ) 60,887 ( 148% ) 67,571 ( 164% ) 76,849 ( 187% ) < 10% > < 13% > < 16% > < 18% > 3,448 ( 261% ) 5,380 ( 407% ) 6,507 ( 492% ) 9,651 ( 729% ) < 1% > < 1% > < 2% > < 2% > 22,495 ( 93% ) 25,093 ( 104% ) 25,141 ( 104% ) 28,482 ( 118% ) < 5% > < 5% > < 6% > < 7% > 12,784 ( 113% ) 13,305 ( 118% ) 11,664 ( 103% ) 10,002 ( 88% ) < 3% > < 3% > < 3% > < 2% > 翌年2月末時点。( )はH18を100とした比率、< >は全体を100とした比率 H22産は23年1月末時点 資料:北陸農政局 - 47 - (3) 米生産費の状況(米生産費は減少) 21年産米の10a 当たり米生産費 ※は、農機具費、労働費、土地改良水利費が減少したこと から、前年に比べ4.0%減少し111,290円となった。なお、土地改良費は主として償還金が減 少したためであり、農機具費は主として調査対象となった経営体が耐用年数が終了した資 産を所有していたため償却費が減少したことによる。 本県の米生産費は、全国及び北陸よりも低いものの、北海道及び東北よりも依然として 高い状況にある。 なお、5 ha 以上層の10a 当たり米生産費は83,389円で、前年に比べて2.0%減少した。 【 生 産 費 の 主 要 費 目 の 推 移 】 年 産 10,904 12,370 (10.0%) (11.1%) 17 18 11,486 (9.6%) 11,985 (10.9%) 10,756 10,884 24,057 (21.8%) 10,390 10,131 (9.0%) (8.7%) 21 9,841 10,496 (8.8%) (9.4%) 0 75,000 賃借料及び料金 115,870 36,689 (33.0%) 111,290 100,000 金 額 (円) 土地改良及び水利費 107,230 34,960 (30.2%) 30,354 (27.3%) 50,000 111,129 30,014 (28.0%) 32,295 (27.9%) 23,910 (21.5%) 25,000 30,939 (27.6%) 33,114 (30.9%) 28,094 (24.2%) 114,004 31,461 (27.1%) 32,682 (30.2%) 22,462 (21.0%) 19 (10.0%) (10.2%) 20 34,453 (31.1%) 24,816 (20.8%) 農機具費 労働費 125,000 その他 ※ 生産費とは、「物財費+労働費−副産物価額」をいう。 ※ 平成19年度の税制改正により、減価償却資産の評価方法が変更となり農機具費及び建物費にしめる償却費が増 加したため、平成20年産以降の生産費が増加している。 資料:農林水産省「農業経営統計調査」(10a当たり新潟県平均) 【 平 成 21年 産 米 生 産 費 の 地 域 別 比 較 】 本県 9,841 全国 5,126 11,650 北陸 7,369 11,308 東北 6,213 10,742 10,496 5,906 8,655 北海道 0 34,911 25,819 118,917 35,033 106,008 94,182 31,191 30,996 25,000 118,732 39,510 33,029 20,991 111,290 37,921 37,456 26,579 17,434 36,689 30,354 23,910 50,000 75,000 100,000 125,000 金額(円) 土地改良 及び水利費 賃借料 及び料金 農機具費 - 48 - 労働費 その他 (4)新規需要米・加工用米が大幅に拡大 戸別所得補償モデル対策において、米粉用米などの新規需要米や加工用米の助成水準が前 対策より充実したことなどにより、22年産の非主食用米の作付けが大幅に拡大した。特に米 粉用米は前年の2.5倍の1,731ha と急増し、全国シェアの約35%を占めた。また、加工用米は 県内実需者と直接契約取引する地域流通が拡大し、前年に比べ約2,000ha 多い7,453ha とな った。 一方、麦・大豆・そばの土地利用型作物の作付けは前対策より助成水準が下がったものの、 国の激変緩和調整枠による加算措置が講じられたことなどから若干の減少に留まった。 【大豆・そば・大麦・非主食用米の作付け状況】 18年産 19年産 20年産 21年産 22年産 大豆 6,450 6,340 7,320 7,140 6,670 そば 六条大麦 米粉用米 飼料用米 加工用米 1,520 453 − − 5,183 1,430 444 − − 5,047 1,560 432 58 10 5,457 1,450 386 683 14 5,516 1,520 381 1,731 859 7,453 資料:農林水産省公表値 注 2 :18年産∼20年産の加工用米については、公表数量を県平年収量で面積換算 施策の取組状況と成果 (1) 品質確保に向けた対応 「新潟米ブランド強化推進運動」の重点推進事項に「一定水準以上の食味・品質の確 保」を掲げ、地域の実情を踏まえた「地域最重点技術対策」を設定し推進した。 本年は、出穂期までの生育前半は倒伏が懸念される稲姿となり、出穂期以降は連続した 高温と無降雨が続いたことから、関係機関・団体が連携して倒伏防止対策や水管理対策の 周知・徹底、農業用水の緊急的な取水期間延長等の対応を実施したものの、本年の記録的 な猛暑により、うるち玄米の1等級比率は21.1%(23年1月末現在)へと低下した。 このため、県では、専門家等による「平成22産米の品質に関する研究会」を開催し次年 度以降の対策を検討した。 (2) 販売力・ブランド力の強化 ア 新潟米のブランド戦略の推進(区分集荷・販売、物語性のある商品づくり) ○ 新潟米の一層のブランド強化を図るため、食味等の調査結果を農業者にフィードバッ クし栽培管理の改善を図る「お米通信簿」や区分集荷・販売の実施などにより、「新潟 米食味・品質基準ガイドライン」に基づき、一定水準以上の食味・品質を確保したコシ ヒカリを提供する取組を推進した。 全農と連携し、JAに働きかけるとともに、JA等が行う、こだわりや物語性等の付 加価値を付与した商品づくりの取組を支援した。 これらの取組の結果、「お米通信簿」は全JAで取り組まれ、また、区分集荷・販売 の取組も拡大した。 - 49 - イ 県産米の消費拡大 ○ 県民の「新潟米」愛用の意識醸成を図るため、身近な「おにぎり」をテーマに、昨 年に引き続き「新潟米おにぎりキャンペーン」を展開した。 ○ 首都圏では「新潟米」の販売促進を図るため、「いただきます。新潟米。」をキャッ チフレーズに著名人を起用したPRポスターを作成し、首都圏の駅構内に掲出したほ か、米穀小売店に配布した。また、全国紙や雑誌に広告を掲載し、安全・安心でおい しい「新潟米」をPRするとともに、首都圏の飲食店とタイアップし、「おいしい新潟 米が食べられるお店」を消費者向けにアピールした。 ウ 県産米の信頼確保 首都圏における新潟米モニター(20人)の設置や、首都圏等で流通している新潟県産 コシヒカリのDNA検査(50点×4回)の実施、「新潟オリジナルコシヒカリ」ロゴマー クの普及拡大等により、「新潟米」に対する消費者の信頼確保に取り組んだ。 (3) 生産コストの低減 ○ 地域ごとにコストカットの目標を設定し、経営体へ低コスト技術を普及させるため、 啓発資料の作成や研修会を実施した。 (4) 非主食用米の生産拡大に対する支援 ○ 県内食品産業への県産加工用米の供給拡大に向けて、生産体制の整備等を推進するた め、県内食品産業等への加工用米供給拡大数量に応じて、保管料等の流通経費に対する支 援をモデル的に行った。その結果、県内の生産サイドと実需サイドの結び付きが拡大し、 新たに3,000トンの加工用米の地域流通契約が結ばれるなど、大幅な供給拡大につながっ た。 ○ 多収性品種の利用を拡大し、水田を活用した非主食用米の安定供給システムを確立す るため、収量性の高い新潟26号などの展示ほや、翌年度の種子を確保するための採種ほの 設置を支援し、多収穫米の普及拡大を図った。 3 今後の課題 ○ 地球温暖化の状況を踏まえれば、異常高温のような激しい気象変動下においても、食味 を維持しつつ一定の品質が確保されるよう、基本技術の徹底などの取組を強化していく必 要がある。 また、高温や急激な葉色低下等の変化にも適確に対応していくため、緊急時の生育診断 や情報提供の体制整備などの対策の強化が必要である。 ○ 次年度からの戸別所得補償制度の本格実施にあたり、制度への参加促進による主食用米 の的確な需給調整と、加工用米や新規需要米の作付拡大等の取組が必要である。 ○ 米消費量が減少し産地間競争が激化する中で、今後とも新潟米のブランド力を維持・強化 していくためには、価格に見合う食味・品質を確保し、消費者の信頼を獲得することが必要で ある。このため、一定水準以上の食味・品質を確保する取組の一層の拡大を図るとともに、 消費者や実需者のニーズを踏まえ、地域の特長を活かした特色ある米づくりの取組を拡大 していく必要がある。 ○ 値頃感のある米の需要拡大等に対応するため、こしいぶきやゆきん子舞等コシヒカリ以 外の品種の品揃えが必要である。 - 50 - 実績 新潟米の産出額シェア(%) 5ha以上層の水稲生産コスト※ (円/10a) 不作付地等を活用した新規需要 米等の作付拡大面積(ha) 目標 (平成24年) 平成21年 平成22年 8.4(84%) 10.0:目標値 − 10.2:目標値 10.3 83,389(104%) 80,000:目標値 − 74,000:目標値 68,500 14(2%) 625:目標値 1,123(90%) 1,250:目標値 2,500 ※ ( )内は、当該年の目標達成率 ※ 水稲生産コスト:「物財費+労働費−副産物価額」をいう。 - 51 - トピックス 「区分集荷・販売の取組事例」 新潟米ブランドにふさわしい一定水準以上の食味・品質の確保や、安全・安心な県産米を 提供するため、平成22年2月に、栽培管理、集出荷に係る食味・品質基準設定の取組に関す る基本的な考え方を示す「新潟米食味・品質基準ガイドライン(以下、「ガイドライン」とい う。)」を策定した。 22年度はガイドラインの普及拡大を図るため、基準を満たす米の有利販売や基準に満たな い米の流通ルートを確保するモデルとして、6 JA の取組を支援した。 1 新潟米食味・品質基準ガイドラインの概要 基準項目 2 水 準 玄米タンパク質含有率 6.5%以下(水分15%換算) 化学合成農薬の使用成分回数 地域の慣行栽培の3割以上低減 生産履歴記帳 統一項目について生産履歴記帳を実施 取組の概要 (1) 基準を満たした米の有利販売の取組 ガイドラインの基準よりレベルの高 い独自基準によるプレミアム米づくり や、地域の自然環境を保全する等の栽 培方法による米づくりなど、物語性を 付与した商品づくりが行われた。 また、これらの取組に対して、首都 圏等の小売店からは、「プレミアム米の取 組は消費者に説明しやすく、売りやすい。」 【農産物検査用の刺し米により食味分析】 「商品を通じて、消費者が産地をイメー ジすることができ好評。」など一定の評価 が得られた。 (2) 基準に満たない米の流通ルート確保へ の取組 基準に満たない米は、ブレンド米の 原料などに利用するほか、試作段階で はあるものの加工原料として活用する など、新たな流通ルートの確保に向け た取組が試行された。 【食味分析によって区分された米】 - 52 - 第2−2−(2) 1 高収益・周年型を目指した園芸の拡大 動向 (1) 平成21年度の生産・出荷状況 平成21年度の園芸品目の作付面積は、野菜や果樹、工芸作物等で減少し、前年に比べ 368ha 減の20,378ha となったが、産出額は596億円と前年に比べ2億円増加した。 野菜は、春・夏野菜が不作となり出荷量が減少したが、秋野菜は豊作となった。出荷量 が減少した品目を中心に販売単価は前年を上回ったことから、野菜全体の産出額は前年を 上回った。 果樹は、全般に春先の天候不良や梅雨の長雨による品質低下が見られ、作柄はやや不良 となり出荷量が減ったため、産出額は減少した。 花きは、長雨の影響で作柄がやや不良となり、出荷量が減ったことから、産出額は減少 した。 葉たばこを含む工芸作物は、作付面積、産出額ともに減少した。 【作付面積】 野 菜 果 樹 花 き 工芸作物他 園芸計 H19 15,226 3,040 636 1,345 20,247 H20 15,321 3,020 629 1,776 20,746 (単位:ha) H21 H21-H20 15,214 △ 107 2,910 △ 110 646 17 1,608 △ 168 20,378 △ 368 資料:新潟農林水産統計年報 *花き面積は花壇用苗もの類面積を除く 【重点品目面積の推移】 ブランド品目 H19 越後姫 30 えだまめ 1,510 西洋なし 104 ユリ切り花 148 H21 H21-H20 30 0 1,550 △ 30 106 2 165 20 資料:新潟農林水産統計年報(越後姫は経営普及課及び農産園芸課調査) (2) 野 菜 果 樹 花 き 工芸作物他 園芸計 H19 361 91 103 36 591 H20 363 96 97 38 594 (単位:億円) H21 H21-H20 384 21 89 △7 93 △4 30 △8 596 2 資料:新潟農林水産統計年報 (単位:ha) H20 30 1,580 104 145 【産出額】 (単位:t、千本) 【重点品目出荷量の推移】 ブランド品目 H19 H20 H21 H21-H20 越後姫 647 660 652 △ 8 えだまめ 3,000 3,560 3,100 △ 460 西洋なし 1,350 1,940 1,700 △ 240 ユリ切り花 17,600 18,000 17,200 △ 800 資料:新潟農林水産統計年報(越後姫は全農販売実績6月末) ※園芸ブランド確立推進運動の重点品目 (越後姫、えだまめ、ル レクチエ、ユリ切り花) 平成22年度の生産・出荷状況 野菜は、春先の低温・日照不足や夏季の高温・乾燥等の影響が大きく、えだまめやさと いもを除くほとんどの品目において作柄が不良となった。しかしながら、全国的にも作柄 が悪く、流通量が少なかったことから、各品目の単価は全般に上昇し、販売額は前年並み となっている。 越後姫(重点品目)は、春先の低温・日照不足の影響を大きく受け、前年に比べ収量は 低下した。また、えだまめ(重点品目)については、生育中期以降が好天だったこともあ り、作柄は良かったが、夏季の高温により全国的に出荷のピークが重なり、価格は前年に 比べ大幅に低下した。 果樹は、全般に高温干ばつの影響から小玉で出荷量は減少したが、高糖度で品質が高く、 また全国的にも作柄が不良だったことから高単価で取引された。なお、かきでは、春先の 低温による芽枯れの発生や日焼け果、11月の雹害により大幅に出荷量が減少した。 ル レクチエ(重点品目)は、夏季の高温干ばつの影響から小玉で生理障害果が多発し、 - 53 - 品質・収量とも低下したものの、品薄感から価格が上昇し、販売額は前年と同程度となっ た。 花きは、春先の低温により、前半の生育は遅れたが、梅雨明け後の高温により、切り花 全般に品質低下や出荷時期が集中する等の影響が出た。 ユリ切り花(重点品目)では 、 草丈不足や奇形花の発生、土壌病害の多発等により品質 が低下した。しかしながら販売面では、天候不順の影響を受け、全国的に出荷量が品薄傾 向となったことから、単価高となった。 【重点品目の出荷状況】 数量 越後姫 652 えだまめ 803 ル レクチエ 993 ユリ切り花 12,521 資料:1月末 2 (単位:t、千本、千円、円/kg・本) H21 金額 単価 数量 634,497 973 621 578,845 721 1,006 498,742 502 854 2,649,105 212 11,855 H22 金額 603,488 546,040 506,218 2,683,079 単価 971 543 593 226 前年対比(%) 数量 金額 単価 95 95 100 125 94 75 86 101 118 95 101 107 全農県本部園芸主要品目取扱実績、越後姫は全農販売実績(6月末) 施策の取組状況と成果 (1) ブランドの確立と販売力強化 ○ 生産者、関係団体等で組織する新潟県青果物フード・ブランド推進協議会が中心とな り、越後姫、えだまめ、ル レクチエの品質確保に向けた取組を行った。 ○ 販売面では、首都圏での認知度向上を図るため、東京ミッドタウンのイベントにおけ るPR活動や、県内外の市場や小売店と連携したPR活動を行うとともに、流通段階の 商品管理を徹底するため卸売市場に対する説明会を実施した。 ○ 生産面では、特に首都圏での需要が拡大している越後姫については、新規施設整備等 の支援により、土耕栽培から高設栽培への転換が進み、生産拡大が図られた。 ○ ユリ切り花など花きについては、県産花きの購買機会を増やすため、小売店等で切花 の産地を表示する取組を継続して実施するとともに、効果的な表示の実施に向け、県外 小売店に対し意向調査を実施した。この取組により、市場や小売店等と産地との連携が 強化され、取引店舗数が拡大し、販売額が増加した産地もあった。 (2) ブランドに見合う信頼、安全・安心の確保 ○ 越後姫では、果実品質調査に基づく品質向上の課題とその改善対策を産地へ周知した。 併せて、高品質生産に向け栽培のポイント毎に栽培技術の研修会を実施し、品質の平準 化に向けた取組を推進した。 ○ えだまめは、栽培管理チェックシートや良食味栽培管理資料に基づく、栽培管理の徹 底を推進した。また、市場等へ正確な出荷情報を提供するための体制づくりを行った。 ○ ル レクチエは、渋み・糖度と果実の大きさの関連等、果実内部品質を左右するデータ の収集について、継続して調査を実施した。 (3) 園芸産地の体制強化 ○ 野菜の高品質安定生産に向けて、施設化・機械化を支援した。特に越後姫は、品質確 - 54 - 保の取組を積極的に進める産地を重点的に支援し、当該産地での生産拡大を推進した。 また、えだまめについては茶豆の作期拡大を図るため、7月出荷の新品種育成を行っ た。 ○ 果樹については、巻地域を中心に、改植、園地再生を進めるための園地台帳整備や、 労働力調整システムのための研修に係る取組を支援した。 また、かきについては、高温による日焼け果実に対応した脱渋対策について、脱渋施 設巡回を実施し、脱渋技術向上による高品質生産の支援を行った。 ○ 花きは、消費者ニーズに基づいた産地づくりに取り組むため、7産地において産地の 特色を生かした生産・販売体制の確立に向けた産地ブランド計画の策定等を支援した。 (4) 稲作農家への園芸導入 ○ 稲作農家への園芸導入を加速するため、園芸導入意向のある対象者リストを作成する とともに、技術習得や初度的経費の支援を行い、アスパラガス、いちご、えだまめを中 心に園芸導入を推進した。 3 今後の課題 ○ 越後姫の産地単位における品質確保の取組と、生産拡大を進める必要がある。 ○ えだまめ栽培管理チェックシートの取組徹底による品質の底上げと、食味重視の品質 管理を徹底する産地を育成する必要がある。 ○ ル レクチエについては、品質を確保しつつ更に出荷量を伸ばしていくために 、 適正 な生産・追熟管理の取組を徹底する産地を育成し、商品化率の向上を図っていく必要が ある。 ○ 花きは、消費者に対する情報発信について、より効果的な方法を検討する必要がある。 ○ GAP手法の取組品目の拡大と継続的な取組を推進する必要がある。 ○ 複合営農の推進と園芸導入した稲作農家等による園芸部門の定着、拡大に向けた取組 を推進する必要がある。 【ブランド化を目指す農産物の産出額(園芸品目)】 指標項目 いちご産出額(億円) えだまめ産出額(億円) 西洋なし産出額(億円) ユリ切花産出額(億円) ※実績欄の( 実 績 目標 平成21年 平成22年 12(86) −(−) 14:目標値 15:目標値 40(121) −(−) 33:目標値 34:目標値 10(111) −(−) 9:目標値 10:目標値 33(94) −(−) 35:目標値 35:目標値 )は達成率。下段は当該年次の目標値。 - 55 - (平成24年) 15 34 10 36 トピックス「園芸複合で経営の安定化を目指す」 胎内市の農事組合法人「くさの」は集落ぐるみ型農事組合法人として平成19年に設立された。 当初、構成員7戸、水稲10ha の水稲単作経営であったが、米価の下落等に対応するため、水稲 以外の品目の導入を検討し、収益性や価格の安定性から、「アスパラガス」を取組品目として選 定した。 平成21年度に「本気でチャレンジ園芸導入支援事業」を活用し、先進農家での技術研修や種苗 等の初度的経費の支援を受け、10アールの作付けを実施。平成23年春から本格的な収穫が始まり、 年間500kg/10a 程度の収穫を見込んでいる。 今後は、施設園芸導入も検討し、園芸複合による農業所得の拡大に取り組み、法人経営の安定 化を目指していくこととしている。 <ほ場の定植風景> <定植1年目のほ場風景> - 56 - 第2−2−(3)豊かな地域資源を活用した畜産の振興 1 動向 (1) 全体的に飼養戸数の減少が続く 農家の高齢化や飼料価格の高止まりによる経営悪化の影響を受け、全畜種で飼養戸数は 減少傾向にある。特に豚については価格の低下により飼養戸数、頭数とも畜種の中で最も 減少幅が大きい。 肉用牛の飼養頭数については、規模拡大を推進した結果前年より1,100頭増加の13,600頭 となり、一戸当たり飼養頭数は前年の41.8頭から45.6頭に増加した。 また、畜産産出額は、価格の低迷等により30億円減少し、461億円となった。 乳用牛と肉用牛の飼養状況 ︵ ︶ 8 6 4 2 0 H17 18 19 20 21 乳用牛頭数 肉用牛頭数 乳用牛戸数 肉用牛戸数 20 100 19 50 ︶ 40 200 20 100 0 19 20 21 22 農業産出額の推移 採卵鶏羽数 ブロイラー羽数 採卵鶏戸数 ブロイラー戸数 畜 560 産 産 540 出 520 額 500 180 畜 種 160 別 140 産 120 出 額 100 億 480 円 460 80 億 60 円 ︶ 300 0 18 ︶ 30 豚頭数 豚戸数 ︵ 50 21 150 ︵ 万 600 羽 500 ︵ 70 戸 数 60 20 21 H17 羽 800 数 700 19 200 18 採卵鶏・ブロイラーの飼養状況 H17 18 万 22 頭 22 400 250 戸 数 ︶ 450 戸 400 数 350 300 250 200 150 100 50 0 ︵ 頭 16 数 14 千 12 頭 10 豚の飼養状況 頭 数 23 440 40 10 420 20 0 400 22 畜 産産出額 採 卵鶏 豚 乳 用牛 肉 用牛 ブロイラー 0 H17 18 19 20 21 資料:「畜産統計調査・畜産基本調査」、「生産農業所得統計」(農林水産省) 注:戸数・頭羽数については各年2月1日現在の数値 注:H17・H22の豚・採卵鶏の戸数と頭羽数、H22のブロイラーの戸数と羽数は「家畜頭羽数調査集計表」(新潟県) の数値を用いた。 (2) ブランド畜産物の動向 にいがた和牛は中越大震災の被災により出荷頭数が大幅に減少したが、大震災被災地か らの出荷が再開された平成20年度以降出荷頭数は増加している。また近年は品質向上の取 組が進められ、3等級以上の格付割合が増加し、平成21年は76%となった。 【にいがた和牛の出荷状況】 項目 県産和牛出荷頭数 にいがた和牛出荷頭数 にいがた和牛(3等級以上)格付率(%) 資料:畜産課調査 H17 2,422 1,751 72 - 57 - H18 1,859 1,283 69 H19 1,702 1,182 69 H20 2,490 1,770 71 H21 2,485 1,895 76 にいがた地鶏の出荷羽数は、平成18から19年度に12,000羽を超える羽数まで拡大したが、 その後、景気低迷に伴う消費停滞により、出荷羽数を抑制している。平成21年度は出荷羽 数は微増となったが、にいがた地鶏の発育を改良したことにより、大型の商品の割合が大 幅に増加している。 【にいがた地鶏の出荷状況】 項目 H17 H18 H19 H20 H21 にいがた地鶏出荷羽数 6,780 12,983 12,667 9,257 9,833 大型の商品規格割合(%) − − − 59 90 資料:畜産課調査 注)規格はH20から設定 (3) 平成22年度の暑熱による被害状況 猛暑により畜産被害が前年に比べ多く発生し、特に新潟市管内の乳用牛の死亡、廃用が 多かった。 【暑熱による畜産被害状況】 資料:畜産課調査 (4) 飼料作物の生産状況(耕畜連携の取組、稲WCS、飼料用米など) 戸別所得補償モデル対策による新規需要米の 生産振興等により、平成22年産の稲WCS作付面 積は274haと前年より53ha増加し、飼料用米は 859haと前年より845haと大幅に増加した。 なお、牧草等の他の飼料作物については、 減少傾向にある。 稲WCSについては作付面積の約6割が乳用牛 に給与されている。また、畜産業者と直接結びついて生産される飼料用米については、作 付面積のほとんどが養鶏、養豚で利用されている。 - 58 - (5) 飼料価格の動向と畜産経営 配合飼料価格はピーク時に比べると値下がりしているものの、依然高止まりの状態が続 いているため、各畜種とも生産費は増加している。加えて、景気低迷による消費減退等の 影響により、各畜種とも生産物の卸売価格が低迷していることから、乳価の引き上げを実 施した酪農以外の収益性は悪化している。特に枝肉価格が低下傾向の肉用牛肥育や養豚で の落ち込みが大きい。 【配合飼料価格の推移】 資料:畜産課調査 2 【畜産経営における一戸当たり所得(単位:千円)】 資料:農業経営統計調査(営農類型別経営統計(個別経営)) 施策の取組状況と成果 (1) 畜産経営の体質強化 ○ 畜産農家への経営改善指導や家畜衛生対策指導の実施、生産施設・機械の整備支援 などにより、所得アップに向けた生産性の向上や生産コストの低減を促進した。 (2) トップブランド畜産物の確立 ○ 「にいがた和牛」、「にいがた地鶏」を効果的に宣伝す るため、東京新潟県人会100周年記念新潟県人会大交流 祭「にいがた大物産展」において「にいがた和牛」、 「に いがた地鶏」の販売を行った。 ○ にいがた和牛の出荷頭数の増加や、関係団体と連携し たPRにより、にいがた和牛の知名度向上に向けた取組 を積極的に実施した。 ○ にいがた地鶏の増体改良に対応するため、飼養管理マ <にいがた大物産展での物販> ニュアルを改訂し、改良型地鶏の本格生産を開始した。 にいがた地鶏は生産者のメディアへの露出により、公式ホームページへのアクセス数が 増加するなど消費者の関心が高まりつつある。 - 59 - (3) 安全・安心な飼料生産体制の整備 ○ 飼料用米及び稲WCSの生産拡大に向け、飼料作物コン トラクター(生産受託組織)を育成するとともに、各地 域において生産利用体制の構築を図った。 平成22年度の飼料用米及び稲WCSの作付面積は前年の 約5倍の1,133haと大幅に増加するなど、耕畜連携による 県産飼料の活用が進んだ。 ○ 豆腐粕や野菜屑等の食品残さの飼料化に向け、飼料 製造業者や食品小売店等への情報提供 や 意識啓発を実施 <飼料用米の破砕> した。 (4) 環境と調和した畜産の振興 ○ 「畜産臭気対策技術研修会」を開催し、市町村等関 係者の臭気改善指導技術の向上に努めた。 ○ 関係部局との連携により悪臭対策に向けた研修会を 開催し、部局を超えた情報の共有と改善指導の連携を 図った。 ○ 悪臭改善に取り組む畜産農場において臭気測定装置 を活用したモデル的な臭気低減対策を実施した。 <畜産臭気対策技術研修会> (5) 口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザへの対応状況 ○ 地域振興局単位での防疫演習を通じて、防疫作業リーダーを育成するなどにより、万 一発生した場合に円滑かつ迅速に防疫対応が図られるよう危機管理体制を整備した。 研修会等を開催し、畜産農家への正しい知識の普及、情報共有、防疫対策の確認等を 行った。 (6) 暑熱被害への対応状況 ○ 被害防止対策について、家畜保健衛生所、普及指導センターを通じて畜舎の送風、散 水や飼料給与の工夫など、繰り返し農家指導を実施した。 3 今後の課題 ○ 「にいがた和牛」の首都圏への安定供給を図るため、出荷頭数の拡大が急務である。 また、品質の高位平準化を図るとともに、うまみ成分の向上に向けた技術開発等を進め る必要がある。 ○ 「にいがた地鶏」の消費拡大を図るため、知名度の向上やにいがた地鶏に適した料理 ・食べ方の提案など、にいがた地鶏生産普及研究会や取扱登録店と連携した継続的検討 を進める。 ○ 食品残さの飼料化と利用促進を図るため、食品製造業者、飼料製造業者、畜産農家等 の連携体制を構築することが必要である。また、県産飼料を給与した特徴ある畜産物の 生産のため、流通体制を検討する必要がある。 ○ たい肥を利用した飼料用米の生産などの耕畜連携の取組を一層拡大していく必要がある。 - 60 - ○ 臭気改善対策のため、市町村と連携して畜産農家に対する指導を強化していく必要が ある。 ○ 口蹄疫及び高病原性鳥インフルエンザの発生防止対策や万が一の発生に備えた危機管理 体制を更に強化するため、畜産農家等への啓発指導及び防疫演習等の継続的な実施が必 要である。 指標項目 実 平成21年 粗飼料自給率(%) 績 目 平成22年 (平成24年) 44(79%) 60 44(81%) 54:目標値 56:目標値 にいがた和牛規格牛出荷額(億円) 17(100%) − (品質規格3等級以上) 17:目標値 18:目標値 ※実績欄の( 標 20 )は達成率。下段は当該年度の目標値。 トピックス 「高病原性鳥インフルエンザ等の防疫訓練を実施」 平成22年度は宮崎県で口蹄疫が猛威をふるい、島根県・宮 崎県等の養鶏場では高病原性鳥インフルエンザが発生した。 さらに全国各地で野鳥等から高病原性鳥インフルエンザウイ ルスが検出された。 当県では、口蹄疫や、高病原性鳥インフルエンザが発生し た場合に、迅速な防疫対応による早期の封じ込めとまん延防 止が図られるよう、各地域振興局で防疫訓練を実施した。 <防疫訓練の風景> - 61 - 第2−2−(4)県産農林水産物の多様な販売戦略の推進 1 動向 (1) ブランド品目の販売状況 【ブランド品目の首都圏出荷状況】 ブランド化を進めているル レクチエ・え 単位:t、%、千円 H18 だまめについては、気象条件等による年次 H21 ( 取組開始) 出荷量 148 199 149 出荷割合 15.4 20.4 17.7 販売額 83,069 111,572 104,848 出荷量 281 339 435 変動はあるものの、品質管理の徹底や大手 ル レクチエ 飲食店との連携、首都圏での販売プロモー ションなどにより、首都圏への出荷量や販 えだまめ 売額は増加傾向にある。 出荷割合 35.8 42.2 43.2 販売額 191,847 263,744 245,447 9.2 越後姫は、首都圏の大手量販店との取引 が物流上の課題により停止したこともあり、 越後姫 出荷量 8.1 3.2 出荷割合 1.3 0.5 1.4 販売額 7,695 3,648 10,463 一時的に首都圏出荷量が減少したが、高級 果物店など新たな販路開拓が進んでいる。 H22 資料:全農にいがた提供 越後姫は年産値、他は年度の数値 【 農産物の輸出実績】 (2) 輸出の取組 円高等の影響により輸出環境が厳しいも のの、米輸出は中国、欧州、オーストラリ アなどの増加で前年比2倍超と大きく伸び た。果物等の輸出についても香港やシンガ ポール向け輸出等が継続している。 なお、平成22年12月には農林水産省と中 国の国営企業との間で日本産農産物・食品 の中国向け輸出拡大の覚書が締結されてい る。 平成21年度 平成22年度※ 輸出量 相手国数 輸出量 相手国数 米 152.3t 8 312.1t 10 なし 8.3t 4 3.3t 4 かき 2.0t 1 1.2t 1 もも 6.7t 5 5.0t 3 越後姫 0.8t 2 0.4t 2 チューリップ 30.3千本 1 6.0千本 1 品目 資料:食品・流通課調査 ※平成22年度実績は平成23年3月9日現在 (3) 食品産業との契約取引数量(平成22年産) 【契約数量の推移】 (単位:トン、%) 米粉用米は、国の戸別所得補償モデル対 策による支援の充実や、大手実需との契約 主要品目 米粉用米(新規需要米) の進展等により、前年比163%と大幅に増 加工用米 加し、9,574トンとなった。 H20年産 H21年産 H22年産 対前年比 313 3,642 9,574 162.9 3,039 14,490 393.3 - もち米 8,830 9,280 9,350 また、加工用米についても同様に支援が 酒米 9,900 8,910 8,440 △5.3 充実したことと併せ、県内米加工業者と県 大豆 3,525 3,033 2,691 △11.3 内生産者団体等との流通契約が拡大したこ 加工用だいこん 17,504 13,749 △21.5 とから、前年比393.3%増加し14,490トン 加工用トマト となった。 もち米は、県内餅製造業者による県産米 13,880 1,348 1,244 1,129 0.8 △9.2 資料:米粉用米・加工用米は農林水産省、もち米・酒米 ・大豆・加工用トマトはJA全農にいがた、加工 用だいこんは食品・流通課調査 を原料とした商品開発が進んだことから、 契約数量は増加傾向にある。 酒米は、清酒の消費量が減少しているため、契約数量は縮小傾向にある。 大豆は、市場における大豆使用商品の需要が縮小している影響から、契約数量は縮小傾向 にある。 - 62 - 加工用だいこんは、初期発芽不良と肥大不良により収量が減少したため、契約数量は 前年に比べ21.5%の減と大幅に縮小し、13,749トンとなった 。 以上、減少した品目もあるが、米粉用米・加工用米の増加により、全体では契約数量は 前年に比べ増加した。 2 施策の取組状況と成果 (1) 県産農林水産物のブランド戦略の推進 ○ ブランド戦略を策定した8品目について、生産者団体等実践組織による品質管理の 徹底や販売促進活動などを支援した。また、首都圏の情報発信力の高い飲食店等のバ イヤーを対象とした産地見学交流会を開催し、県内各地域の旬の食材について売り込 みを図った。産地見学交流会を契機とした新規取扱いが進むなど県産農林水産物の首 都圏での取扱は着実に拡大している。 ○ 首都圏において、県産農林水産物を取り扱い、消費者へ積極的に情報発信する店舗 を「にいがた食のパートナーショップ」として関係強化を図り、県産品の情報提供や 産地とのマッチング等の支援を行うとともに、店舗と連携した消費者への情報発信を 行った。これまでに28店舗がパートナーショップとなり、県産食材の新規取扱の増加 や喫食機会の増加が図られた。 (2) 県産農産物の輸出促進 ○ 中国への新潟米の輸出拡大を図るため、北京、上海等での試食宣伝会の開催や、業 務需要の開拓に向けたレストラン関係者の招へいを行った。これらの取組による認知 度向上等により、新潟米の輸出は前年比2.6倍の77トンとなった。 ○ ロシアでは極東地域における果物等の輸出定着に向け、ハバロフスク市に設置して いる「新潟おもてなし館」などでの試食宣伝会の開催や、モスクワ等での国際見本市 への出展等に取り組んだ。その結果、現地の新たな商社と連携し、いちごのほか、す いかやもも、なしなど多品目を輸出することができた。 ○ 香港やシンガポール等への輸出を促進するため、新潟フェア(物産展)の開催やバ イヤーの新潟招へいに取り組んだ。 (3) 食品産業との連携強化による契約取引の推進 ○ 県内食品関連企業が産地と取引契約等を結び、連携して行う県産農林水産物を主原 料とした商品開発を支援した。22年度は米粉を使用したたこ焼きや、ル レクチエの アルコール飲料など4件の新たな商品が開発された。 ○ 実需者と産地、行政が一体となった県産加工用こんにゃくの活用促進や、原料の安 定供給体制づくりに向け、推進会議の開催及び現地研修会の開催や、現地栽培実証を 実施し、契約栽培面積の拡大が図られた。 ○ 実需者から要望の多い加工用トマトの産地育成と契約栽培推進のため、加工メーカ ー及び関係機関による次年度対策会議を開催した。 (4) にいがた発「R10プロジェクト」の推進 ○ にいがた発「R10(アールテン)プロジェクト(※)」の一層の普及・拡大を図るた め、企業が取り組む商品開発等による米粉ビジネスモデルの創出や、米粉メニューを 提供するフェアの開催等を通じた米粉関連情報の発信に取り組んだ。 - 63 - 新たな米粉ビジネスの創出に向け、22年度は大手食品メーカーによる県産米粉を使 用したヒット商品が生まれる等、新たな米粉ビジネスモデルの創出が図られた。 ○ R10プロジェクトを積極的に推進する企業・団体のネットワーク化に向けて「R10 プロジェクト応援企業制度」を創設し、米粉利用の促進や情報発信力の強化を図ると ともに、米粉料理コンテストや料理教室等を開催した。消費者が米粉商品を手にする 機会の増加や、R10プロジェクトに賛同する団体等による様々な情報発信により、R 10プロジェクトの理念の普及は着実に進んでいる。 ○ 有識者による『うまさぎっしり新潟「食のプロデュース会議」』を設置し、今後の 米粉普及推進に係る政策の方向性を明確にした。 ○ 「米粉プラント集積構想に関する調査」を実施し、国が進める港の拠点化と絡めて 米粉プラントの新潟東港への将来的な集積に向けた構想策定に取り組んだ。 ※にいがた発「R10プロジェクト(Rice Flour 10% Project)」 食料自給率向上のため、小麦粉消費量の10%以上を国産の米粉に置き換える国民的なプロジェクト。 3 今後の課題 「ブランド」にふさわしい品質と 、 需要に応じた量の確保の両面からマーケットの ○ 信頼を高めていくことが必要である。 ○ パートナーショップなど首都圏実需者との連携を拡大し、首都圏での喫食・購入機 会の拡大を図るとともに、口コミ発信源となりうる首都圏消費者への対策を強化する 必要がある。 ○ 輸出については、これまで構築した輸出入商社等との結びつきを強化し、既存の輸 出ルートにおいて品目や輸出頻度等の量的拡大を図るとともに、新たに海外で業務需 要を喚起するなどにより、年間を通じた販路開拓に取り組む必要がある。 ○ 『うまさぎっしり新潟「食のプロデュース会議」』の米粉分科会における提言を踏 まえ、米粉の一層の需要拡大に向け、大手食品メーカー等の大口需要者の獲得、幅広 い分野・業態での需要の開拓、家庭での普及のための使いやすい米粉商品の開発や調 理方法(レシピ)の普及等に取り組む必要がある。 ○ 米粉プラントの集積に向け、大手企業の投資を引き出すため、一層の需要拡大を図 るとともに「米粉の規格化」や「各種プレミックス粉の開発」が必要である。 指標項目 実績 平 成 21年 目標 平 成 22年 主 要 県 産 農 産 物 の 輸 出 額( 千 円 ) 73,263( 70) 113,623 ( 84) 目 標 : 105,000 目 標 : 136,000 ※実績欄の( )は達成率。下段は当該年次の目標値。 ※平成22年度実績値については2月18日現在。 - 64 - ( 平 成 24年 ) 200,000 トピックス「米粉使用の即席麺発売」 平 成 2 2年 9 月 、 エ ー ス コ ッ ク ㈱ ( 大 阪 府 ) で は 、 新 潟県産コシヒカリの米粉を使用した即席袋めん「お米 でもちもちラーメン新麺組」を発売した。 この商品は、県が県外食品メーカーを県内に招へい し、原料米生産者や米粉製粉企業とのマッチングを行 った「米粉産地プレゼンテーション」を契機に開発さ れたもの。 当初は県内限定発売であったが、米粉を使用した新 食感が消費者に高く評価され、予定を大幅に上回る売 り 上 げ を 記 録 。 平 成 2 3年 2 月 か ら は 関 東 甲 信 地 方 に 販 売区域を拡大するなど、にいがた発の米粉ビジネスモ デルの成功事例として期待されている。 トピックス「上海万博 <お米でもちもちラーメン新麺組> 新潟フェアで米宣伝」 新 潟 県 や 新 潟 市 等 で 組 織 す る 実 行 委 員 会 は 、 平 成 2 2 年 1 0月 1 3 日 か ら 1 5 日 ま で 、 上海万博博覧会会場内の日本館イベントブ ースにて新潟の食や観光等をアピールする 「新潟フェア」を行った。 この「新潟フェア」開催に併せて、JA 全農にいがたや新潟県、新潟市等で構成す る「中国向け新潟米輸出促進協議会」では、 上海市内の高級百貨店にて新潟県産コシヒ カリの試食宣伝会を実施し、新潟の酒や菓 子とともに新潟県産コシヒカリを販売した。 新潟県産コシヒカリは、検疫や流通等に係 <新潟県産コシヒカリ試食宣伝会> る コ ス ト の た め 小 売 価 格 が 2 ㎏ の 精 米 袋 で 1 9 8元 ( 日 本 円 で 約 2, 6 0 0 円 ) と 高 価 格 で あ る が 、現 地 小 売 店 の 担 当 者 に よ る と「 新 潟 県 産 コ シ ヒ カ リ は 主 に 贈 答 用 だ が 、 家庭で食べるお客も増えている」とのこと。 試食宣伝会ではごはんの試食のほか、ちらし寿司等の調理実演や、中国語の新 潟米PRパンフレットの配布等を行い、立ち寄ったお客からは「日本のコシヒカ リ は 中 国 で も 有 名 」、「 お い し い 」 等 の 感 想 が あ っ た 。 - 65 - 第2−3 1 森林資源の利用促進による林業の振興 動向 (1) 県産材供給割合30.3% 新設住宅着工戸数の低迷に伴う製材品及び合板生産量の減少や景気減退等の影響により、 木材全体の需要量は減少傾向が続いており、平成21年の木材需要量は前年から16.3%減少 し40万m3となった。 供給別にみると、外材が26万5千m 3で対前年比22.5%減と大幅に減少したのに対し、県 産材は2千m 3増加して12万1千m 3となった。これは、北洋材丸太の段階的な関税引上げ や、新興経済国における木材需要の急増の影響等により、外材輸入量が減少した一方で、 県産材供給体制の整備が進み県産材供給量が微増したことによる。この結果、県産材の供 給率は5.4ポイント増加し30.3%となり、2年連続の上昇となった。 【県産材供給量と県産材割合の推移】 資料:農林水産省大臣官房統計部「木材統計」 (2) 木材価格は下落傾向 木材需要の減退等の影響で市況の軟化は一段と進行しており、平成21年のスギ中丸太1 m 3の卸売価格は、前年より1,300円安の12,100円で下落傾向が続いている。外材において は、為替レートの変動や産地国の状況等を反映し、短期的な上下動がみられる。 この間、森林所有者の収入となる山元立木価格も下げ止まりがみられず、平成21年は前 年の83.6%に当たる3,451円/m3まで値を下げている。 【木材(丸太)価格の推移(新潟県)】 資料:山元立木価格:(財)日本不動産研究所調査 その他価格:農林水産省統計部調査 - 66 - (3) 間伐の推進状況 地球温暖化防止森林吸収源対策として間伐の推進に重点的に取り組んでおり、間伐実績 は平成17年度以降増加している。平成21年度は、所有者負担を求めない定額助成事業の積 極的な活用を進めたこと等により、間伐実績は前年度から926ha増の3,817haとなり、間伐 整備率は54%となった。 一方、間伐材を搬出して活用する利用間伐は年々増加しているものの、間伐全体の1割 程度の面積となっている。 【間伐の実施状況】 資料:林政課調査 (4) 担い手の動向 森林組合に雇用される森林技術員は減少が続いていたが、近年は「緑の雇用」制度等に より新たな就業者は増加しており、平成21年度は新規就業者が離職者数を上回り、前年度 から38人増の651人となった。 しかしながら、60才以上の高齢者の比率は依然として減少しておらず、35%程度と横ば いである。 【森林組合技術員数の推移】 資料:森林組合一斉調査、認定事業体調査 - 67 - (5) 県産きのこの生産動向 県産きのこの生産量はほぼ横ばいで推移しており、平成 21 年は 88 千トンとなった。 また、平成 21 年の市場価格は、前年から1 kg 当たり 10 円値を下げ、479 円となった。 これは、需給バランスや産地間競争の激化による価格競争等の結果とみられる。 【主要きのこ生産量と価格の推移】 資料:林政課調査 2 施策の取組状況と成果 (1) 越後杉の利用促進 ○ 「ふるさと越後の家づくり事業」は、平 成21年度特別募集を3月から先行して実施 し、平成22年度の募集枠と合せ561棟の越後 杉使用住宅の建設を支援した。 ○ モデル性の高い公共的施設について、県 産材による木造・木質化を支援し、施設利 用者に対する「地域の木材を利用すること の意義」や「木の良さ」の理解の促進を図 った。 ○ トキめきファニチャー (県産材家具) を活用した木質空間づくりを進め、建材以 <建設中の越後杉住宅(胎内市)> 外での県産材の利用拡大に努めた。 ○ 県民への越後杉の普及啓発については、 解説PR資料を作成・配布するとともに、 「リフォームフェア」 「もくわくフェスタ(上 越)」の開催を支援し、理解促進を図った。 また、「木づかいキャラバン」では保育園を 巡回訪問して木育を行った。 <木質空間づくりの取組(新潟市)> - 68 - (2) 越後杉の安定供給体制づくり ○ 集落座談会や間伐研修会により、森林整備の必要性や団地化のメリット、県の施策等 を紹介し、森林所有者の意識の醸成を図り、素材生産重点地区(ユニット流域)を中心 とした素材生産の団地化に取り組んだ。 ○ 伐出道の開設と再造林を支援し、車両系高性能林業機械を活用した効率的な木材搬出 システムの定着により、越後杉素材の安定供給と越後杉の再生・循環を図った。また、 木材の利用率を高めるため、B材の大ロット運搬等を支援するとともに、県産材安定供 給協議会、越後杉素材需給調整会議等を開催し、大口需要に対する需給調整を行った。 ○ 大震災の復興資材として県産材活用を図るため、森林・林業関係者が協働するとと も に、素材運搬や製品乾燥費に対する支援を行った。この取組を進めるなかで、越後杉ブ ランドを年間500m 3以上生産するトップランナー事業所が増加し(H21:7事業所)、生 産量も飛躍的に増加した(H16→H21:9倍)。また、越後杉使用住宅を手がける大工・工 務店についても増加し、「越後杉」の浸透につながっている。 (3) 健全で多様な森林づくりの推進 ○ 間伐を中心に森林整備を推進し、健全で 多様な森林づくりを進め、森林の多面的機 能の維持・増進に努めた。 ○ 施業コストを低減し、経費負担を軽減す ることにより利用間伐を推進するため、施 業の集約化を進めるとともに、路網整備や 林業機械の導入を支援した。特に、効率的 施業の基盤となる路網整備については、作 業道 51,536m の開設を支援した。 ○ <プロセッサによる造材作業(糸魚川市)> これらの取組により間伐面積は大きく増加し、平成21年度は過去最高の3,817haとなっ た。また、間伐材利用材積も、合板や木質ペレットへの利用促進などにより増加してお り、平成21年は対前年度135%にあたる29,721㎥となった。 (4) 森林整備担い手の確保・育成 ○ 緑の雇用対策を活用し、平成22年度は96名の研修生が集合研修及び各事業体での OJT研修を行い、林業への就業に必要な基礎的技術を習得した。 ○ 路網作設オペレーターを養成する研修を実施し、低コストで耐久性のある作業路を作 設するオペレーター指導者3名(上級1名、中級2名)とオペレーター4名の技術者育 成を図った。 ○ 集約化施業を推進する新潟県独自の森林施業プランナーである「にいがたフォレスト プランナー」の養成研修を平成22年度から開始し、県内林業事業体から10名が参加。2 年間にわたる研修をスタートした。 - 69 - (5) きのこ等の生産振興 ○ 食の安全・安心の確保を推進するため、き のこ生産者への GAP(食品の安全衛生のため の生産工程管理)の普及・定着に取り組んだ ほか、施設・機械整備を支援し、高品質なき のこを低コストで安定的に生産する体制づく りの促進を図った。また、害菌によるトラブ ル対応について林業普及指導員研修を実施し、 的確で迅速な対応に努めた。 ○ 県産きのこのPR活動として、若者のきのこ <きのこ料理出前授業の様子(南魚沼市)> 離れを防止するため 小学校向けの料理出前授業 を開催した。また、昨年に引き続き、 県と関係団体が連携し、新潟ふるさと村などできのこ料理のレシピ紹介・試食等を行っ た。 ○ 県開発種菌の「雪ぼうし」(えのきたけ)は、消費動向調査で全体の8割を超える消 費者から「食べたい」「購入したい」など好評を得たほか、太田市場等で実施した関東 圏での販売宣伝PRでも、高評価を得た。 (6) カーボンオフセットの取組 ○ 森林整備(間伐)を行った箇所を対象に、 森林が吸収した二酸化炭素をクレジット化 プロジェクト名 する「新潟県オフセット・クレジット制度」 代表事業者 の活用を促進した。 ○ 【新潟県オフセット・クレジット登録案件】 吸収量見込み 「トキの森」 これまでに、森林整備事業者などに対し て、セミナーや研修、助成事業などにより 新たなプロジェクト事業者の参入への呼び (社)新潟県農林公社 「阿賀悠久の森」 阿賀町 1,337 t-CO2/年 644 t-CO2/年 かけを行った。 ○ その結果、これまでに2件のプロジェク トが登録されている。 また、平成22年度は、国際会議(COP10) やプロ野球などのイベント、印刷物や有料 レジ袋など、さまざまな商品・用途でクレ ジットが利用された。 <新潟県オフセット・クレジットシンボルマーク> ※ (7) 新潟県オフセット・クレジット制度: 個人や企業がオフセット・クレジットやオフセット商品の購入を通じて、商品の生産・利用などに伴う二 酸化炭素排出量を、森林の二酸化炭素吸収量(クレジット)で相殺(オフセット)する仕組 越後杉環境貢献度の「見える化」 ○ 県民の環境に対する意識が高まりつつあるなか、地産地消に基づき県産材を使用した 住宅がCO2排出をどれだけ削減し、環境負荷の軽減にどの程度貢献するかについて、数値 化し評価する制度を引き続き検討した。 - 70 - 3 今後の課題 ○ 越後杉ブランド等県産材製品の一層の利用拡大を図るため、県産材製品の流通の効率化 ・コストの低減と、望まれる製品を即納できる安定供給・流通体制の整備が必要である。 さらに、越後杉の良さについて消費者へのPR強化と工務店への浸透を図り、県民に選ばれ る越後杉に向けて継続した取組が必要である。 ○ 間伐の採算性向上を図るため、施業の集約化や路網整備、機械化の推進により、施業の 効率化をさらに進めていく必要がある。 ○ 「にいがたフォレストプランナー」が、各事業体でその能力を十分に発揮できるよう、 提案型集約化施業を中心とした組織体制を確立することが必要である。 ○ 他県との競争に打ち勝つきのこ産地形成に向け、きのこGAPを実践する生産者の拡大や、 さらなるコスト削減、作業の省力化に取り組む必要がある。また、新たなきのこ加工品等 の商品化をサポートすることにより、需要の拡大と所得確保を図っていく必要がある。 指標項目 県産材供給率(%) 実績 平成 21 年 30.3 (103) 29.5:目標値 越後杉ブランド出荷額(百万円) 962 (109) 880:目標値 間伐整備率(%) 54 (113) 48:目標値 ※実績値の( 目 標 平成 22 年 - (-) 31.0:目標値 - 34.0 (-) 920:目標値 - (平成 24 年) 1,000 (-) 50:目標値 52 )は達成率。下段は当該年度の目標値。 トピックス「県初! 県産材を中国へ輸出」 県産材の販路拡大に向け、新潟県森林組合連 合会(事務局)が商社と契約し、8月 27 日、新 潟東港から中国江蘇省へ新潟県として初めて木 材を輸出した。 輸出量は約 1,500 m (16 事業体が出材)で、今回の材は、 3 主に建設工事用足場丸太や一般建築用材に利用された。 <新潟東港での記念式典の模様> - 71 - 第2−4 1 資源の適切・有効利用による水産業の振興 動向 【漁獲量の推移(まき網除く)】 (1) 漁 獲 量 ( 漁 業 生 産 量 ) は 減 少 傾 向 (t) 30,000 平 成 21年 の 漁 獲 量 ( 属 地 ) は 25,737 25,216 18,653ト ン で 前 年 比 97.0% と 、 減 少 22,581 21,584 25,000 24,492 傾向が続いている。 漁 獲 量 資源管理対象種では、ハタハタの 漁獲が増加したが、エビ類やタコ類 20,666 23,001 23,271 20,000 15,000 19,220 20,065 18,653 10,000 5,000 は減少した。 0 その他の主要魚種では、前年と比 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 資料:新潟県農林水産統計年報 べブリ類やサバ類が減少し、マダラ やホッケが増加した。 【魚価の推移】 2,000 (2) 魚価は低下傾向 1,774 魚価は全体としては横ばい又は 単価(円/kg) 1,500 低下傾向にあるが、サケなど一部 の魚種では中国等への輸出の増加 1,681 1,498 1,492 1,457 1,488 1,227 1,287 1,427 1,279 1,186 1,287 1,314 1,000 500 389 から全国的な傾向として価格の上 321 300 225 160 244 1,283 1,263 1,213 1,060 958 331 300 1,107 966 433 340 0 昇が見られる。 H12 H13 H14 H15 サケ H16 H17 H18 ヒラメ H19 H20 H21 エビ 資料:新潟県農林水産統計年報 (3) 漁業就業者は減少傾向 【漁業就業者数の推移】 平 成 20年 の 漁 業 就 業 者 は 3,211人 で 10,000 平 成 15年 の 91.7% と 、 長 期 的 な 減 少 傾 8,303 7,131 6,640 6,513 6,262 5,355 4,546 8,000 また、佐渡地域の大型定置網等で 乗組員の世代交代がある程度進んだこ (人) 向が続いている。 と な ど か ら 求 人 が 減 少 し 、 平 成 22年 は 6,000 3,960 3,501 4,000 3,211 2,000 中 核 的 漁 業 ※へ の 新 規 就 業 者 が 減 少 し 0 た。 S38 s43 S48 S53 S58 S63 H5 H10 H15 H20 資料 : 漁 業 セ ン サ ス ※ 中核的漁業:3トン以上の漁船を使用して行う定置網、底びき網、いか釣り、知事認可の刺網、 かご漁業を指す。 年 H11 H12 71 97 新規就業者数 うち中核的漁業* 15 17 割合(%) 21% 18% H13 92 12 13% H14 104 20 19% H15 90 23 26% 資料:水産課調査 - 72 - H16 107 23 21% H17 101 22 22% H18 85 20 24% H19 90 24 27% H20 68 23 34% H21 68 27 40% H22 49 10 20% 2 施策の取組状況と成果 (1) 販売力の強化 ○ 佐渡寒ブリ、南蛮エビ及びヤナギガレイに ついて、県外客及び県民へのPRと供給体制 の整備を目的に、協議会組織を中心として料 理コンクールを開催し、また、飲食店との連 携強化に努めた。 取組の結果、県内における「佐渡寒ブリの おいしい店」登録店数が9店舗となった。 また、南蛮エビ及びヤナギガレイについて は商品PRを重点的に行い、漁協直売体制の 〈ブランド魚料理コンクール(長岡市)〉 整備が図られた。 (2) 経 営 体 質 の 強 化 ○ 漁 協 合 併 に 参 加 し な か っ た 13漁 協 ( 本 土 5 、 佐 渡 8 ) の う ち 、 合 併 を 検 討 し ている佐渡の3漁協(内海府・高千・相川)に対して、佐渡漁協との合併につ いて指導した。 (3) 担い手の確保育成 ○ 県漁連が実施する漁業就業のための研修活動を支援し、小型底びき網などの中核的 漁業において8名が研修を受講し、7名が就業した。 ○ 県立青少年研修センターと連携し、一般県民を対象に漁業就業促進交流会を実施し、 漁業に対する理解促進を図った。 (4) つくり・育て・管理する漁業の推進 ○ 磯焼け海域において囲い網を用いた藻場回復技術開発に取り組むほか、佐渡地区で 1.7haの藻場造成を、下越地区で4基の高層魚礁と7,422haの海底清掃を実施し、漁場 生産力の向上を図った。 ○ 「 に い が た 海 づ く り 推 進 協 議 会 」( 平 成 21年 設 立 ) が 支 援 す る 海 づ く り 活 動 に、累計で3万人が参加した。 ○ 底 び き 網 の 一 種 で あ る 板 び き 網 漁 業 が 15日 間 の 休 漁 を 継 続 実 施 し ( 平 成 16 年 ∼ )、 ヒ ラ メ や ヤ ナ ギ ム シ ガ レ イ な ど の 資 源 増 大 に 寄 与 し て い る 。 ○ 新資源管理制度検討委員会において、より効果的な資源の回復と漁家経営の改善を 図るため、佐渡地区の南蛮エビを対象に、個別漁獲割当制度をモデル的に実施し、そ の効果を検証することが提案された。 (5) 漁港等の生産基盤の整備 ○ 県管理拠点漁港8漁港を含む県内16漁港で防波堤や防暑施設等の施設整備を行い、 生産力の向上を図るとともに、新潟港では高度衛生管理型荷捌き施設が導入され、漁 獲物の鮮度向上と安全・安心な水産物の管理体制が構築された。 ○ 両津漁港では、防暑施設の完成を契機に市場関係者の衛生管理意識が向上し、異物 - 73 - 混入リスク軽減のための車両動線の改善などと合わせ、出荷時の水産物の取扱方法の 改善など付加価値向上に向けた取組が行われるようになった。 ○ 漁港施設の長寿命化と更新コストの平準化・縮減を図るため、水産物供給基盤機能 保全事業基本計画に基づき、寝屋、粟島、市振、浦本、白瀬、小木、稲鯨の各漁港の 機能保全計画策定に係る調査を実施した。平成24年度までに県管理拠点漁港の機能保 全計画を策定し、保全工事を実施していく。 (6) 内水面漁業の活性化と生態系の保全 ○ サケ資源の安定確保と増殖事業の効率化のため、種苗の大型化及び適期放流を推進 した。平成22年度のサケの来遊尾数は265千尾で、前年比90%であった。 ○ 未利用サケ資源の有効活用を図るため、釣りによる有効利用調査事業を推進した。 荒川における釣獲調査では1,803人が参加し、うち約4割の参加者が地域に宿泊する など地域活性化の一助となっており、他地域の参考事例となっている。 ○ 錦鯉のKHV病やアユの冷水病について、診断、予防方法やまん延防止の普及を行 うとともに、県内未発生疾病の監視を行い、錦鯉のSVCやアユのエドワジエラ感染 症は未侵入であることを確認した。 ○ ニジマスの新品種である「魚沼美雪ます」の発眼卵及び稚魚を生産し、生産者に供給 した。魚沼地域を中心としたホテル、旅館等で利用されてきており、地域の活性化に貢 献している。 ○ ブラックバス等外来魚対策として、漁協や市民団体と連携しながら、新たに開発され た電気ショッカーボート等を活用し、平成22年度は外来魚39千尾(卵を含む)を駆除し た。また、NPO法人と連携した駆除活動も定着した取組となってきている。 ○ 中越大震災等で被災した養鯉業者の復興について、水質検査や防疫などの巡回指導 を行った。 3 今後の課題 ○ 県産水産物の認知度向上と消費拡大に向け、直売事業等を支援することで漁協の販売 力の強化を図り、ブランド産地としてのイメージ定着を推進する必要がある。 ○ 新潟県漁協合併基本計画に基づき、上越地区、中下越地区及び佐渡地区での地区内 1漁協を目指した更なる合併を推進するほか、合併漁協の経営体質の強化を図る必要が ある。 ○ 本県の水産業の維持に必要な中核的漁業者数を維持するために、漁業技術の修得支 援などにより、新規就業者の確保が必要である。 ○ 藻場の回復のため、磯焼け海域における藻場造成技術の低コスト化が必要である。 また、資源の持続的利用を図るため、国が実施する資源管理・漁業所得補償対策と連携 し、新たな資源管理手法をモデル的に実施し、その効果を検証していく必要がある。 ○ 今後も豊かな海づくりの重要性についての啓発を継続し、漁業者と県民が協働で行う 海づくり活動を定着させる必要がある。 ○ 水産物の取扱量が事業採択基準以下の市場を有する漁港に関しても衛生管理施設の整 備が行えるよう国に対して事業採択基準を見直すよう働きかける。さらに、衛生管理施 - 74 - 設の整備が完了した漁港においても県内外に情報発信を行うことで所得向上に結びつけ るなど、水産物の高付加価値化に向けた取組を推進する。 ○ 内水面漁協の経営安定のため、サケ・マス資源の有効利用や放流事業の効率化に向け た検討を行う必要がある。 実 指 標 項 目 績(5カ年平均値) 平 成 16∼ 20年 平 成 17∼ 21年 目 標 ( 平 成 24年 ) ブランド化を 佐渡寒ブリ 8.09 7.12 12.58 目指す魚種の 南蛮エビ 6.14 6.00 7.28 生 産 額 (億 円 ) ヤナギガレイ 1.02 0.98 0.68 15.25(74) 14.10(69) 20.54 目 標 値 : 20.54 目 標 値 : 20.54 計 ※ 実績欄の( )は達成率。下段は当該年次の目標値。 指 標 項 目 新規就業者数(人/年) (中核的漁業者) ※ 実績欄の( 実 績 目 平成21年 平成22年 25 (83) 10(33) 30:目標値 30:目標値 標 (平成24年) 30 )は達成率。下段は当該年次の目標値。 トピックス「新しい水産資源の管理手法の検討」 水産物の安定供給のため、これまでにも体長制限や休漁などの資源管理が行われてきた が、より効果的な水産資源の持続的利用と漁業経営の安定、流通・消費の円滑化の両立を 図るため、漁獲量を個別に割り当てる新しい資源管理制度(個別漁獲量割当制度:IQ制 度)の導入等を検討するための委員会を設置し、学識者や漁業者代表等による検討を開始 した。 委員会では、実施対象種を選定(南蛮エビ)し、これまでの資源管理の評価、市場の状 況、海外の取組事例等を踏まえ、新しい資源管理手法の内容について検討が行われた。ま た、その検討内容について漁業者を対象とした現地意 見交換会を行うとともに、新しい資源管理制度につい て県民の理解促進を図るためシンポジウムを開催した ほか、水産海洋研究所ではIQ制度の資源管理効果を 高めるため、小型魚保護のための漁具改良試験を行った。 平成23年度は南蛮エビを対象にモデル的にIQ制度に よる資源管理を開始し、効果の検証を行う。 - 75 - <南蛮エビ(ホッコクアカエビ)> 第2−5 1 農地・農業用水等の生産基盤の確保・保全 (1)優良農地の確保 動向 (1) 農地面積は減少傾向 平 成 22年 度 の 農 地 面 積 は 、 前 年 よ り 500ha減の17万4,400haとなった。 平 成 12年 度 か ら 宅 地 等 へ の 農 地 転 用 や耕作放棄等による「かい廃」は、中 越 大 震 災 の あ っ た 平 成 17年 を 除 き 、 年 に 500∼ 900ha程 度 で 推 移 し 、 10か 年 の 合 計 で は 、 7,100haの 農 地 が 減 少 し て いる。 資料: 農林 水産 統計 耕地 面積 調査 (農林水 産省 ) (2) 生産性の高い水田 ※ の整備は着実に進展 平 成 19年 度 の 整 備 済 み 水 田 面 積 は 、 8万 7,850haで 平 成 18年 度 に 比 べ て 940 ha増加している。 平 成 12年 度 か ら の 7 年 間 で は 7.2ポ イント上昇し56.1%となっている。 ※ 生産 性の高い 水田 : 区 画が 30a程 度以 上で 耕作 のた めの道路 や用排水路が整備され、中・大型機械の 利用 が可 能な水田 。 資料:農 業農村 整備長 期計画 進捗状 況調査 ・速報 値(農 地計画課 ) (3) 畑作可能な水田※面積の割合は4割に上昇 平成19年度の畑作可能な水田面積 は 6万 5,590haで 、 前 年 に 比 べ て 870ha 増加している。 平 成 12年 度 か ら の 7 年 間 で は 6.7ポ イント上昇し41.9%となっている。 ※ 畑作 可能な水 田( 汎用化水 田): 地 下水 位が低く 、降 雨時の地 表水 排除が 良好 で、 水稲また は麦 大豆等の 畑作物 栽 培が 可能な水 田。 資料:農 業農村 整備長 期計画 進捗状 況調査 ・速報 値(農 地計画課 ) - 76 - 2 施策の取組状況と成果 (1) 生産性の高い優良農地の確保と農地利用集積の促進 平成22年度には経営体育成基盤整備事業を89地区で実施し、約970haの優良農地を整備す る見込みである。 ほ場整備 の実施 地区では 、経営体 の育成に 向け、規 模拡大や 農業経 営の複合 化など の 取 組 が 図 ら れ 、 平 成 21年 度 ま で の 事 業 完 了 地 区 ( 106地 区 、 受 益 面 積 1万 9,130ha) では、整備された優良農地の72%が担い手に集積され、前年度に比べ1ポイント向上した。 【経営体育成基盤整備事業の実施状況】 H21年度 集積計画のある完了地区に おける集積シェアの推移 面積(ha) H22年度 集積シェア 74% 20,000 未集積面積 実施地区数 優良農地の整備面積 93地区 89地区 870ha 970ha 72% 集積面積 集積率 70% 15,000 68% ※ 整備面積は予算上の整備面積で、繰越工事を考慮していない。 66% 10,000 64% ※ 平成22年度の整備面積は補正予算を含めた整備見込み。 62% 5,000 60% H17末 H18末 H19末 H20末 H21末 (2) 多様な農産物の生産による農業経営の安定化 ほ場整備 により、 大型機 械の導入 が実現し 、作業効 率が大幅 に向上。 これにより創 出 された時 間を活用 し、多 様な農作 物の生産 を進め農 業経営の 安定化を 図っている。 【北鯖石東部地区(柏崎市) H12∼H21 A=109.2ha】 大型機械による田植え作業 3 大型機械による大豆の収穫作業 今後の課題 本県が、我が国の食料供給基地として十分な役割を果たしていくためには、意欲と能力の ある経営体を育成し、他産業並の所得を確保することが必要である。このため、高品質で多 様な農産物を効率的かつ安定的に生産できる農地の整備を進めるとともに、経営体への農地 利用集積を一層進め、経営基盤の強化を図る必要がある。 指標項目 実績 平成21年度 平成22年度 174,900 ha(101%) 174,400 ha(101%) 農地面積の確保 173,500 ha;目標値 172,600 ha;目標値 − (−) − (−) 畑作可能な水田の割合 43 %;目標値 44 %;目標値 ※実績欄の( )は達成率。下段は当該年度の目標値。 - 77 - 目標 (平成24年) 170,700 ha 46% トピックス「面的集積の推進に向けて」 経営体育成基盤整備事業は、平成21年度に一般型、農業生産法人等育成型、面的集積型に再 編された。 このうち、面的集積型は、担い手への面的集積(1ha以上及び2ha以上の連坦した集積)を一 定以上増加させることを要件としており、新潟県では平成21年度から取り組んでいる。 面的集積を推進することで分散したほ場がまとまり、一層効率的な営農が実現し担い手の経 営規模の更なる拡大が期待される。 現在、面的集積型に取り組んでいる2地区の概要は以下のとおりである。 地区名 採択年度 受益面積 総事業費 目標面的集積率 備考 滝谷 H 20 36.1 ha 468,000 千 円 82.5% H 21よ り 面 的 集 積 型 善根 H 22 34.8 ha 516,000 千 円 80.2% 面的集積のイメージ図 経営体A 経営体B ・担い手に連坦化し た農地を集積し、よ り一層効率的な営農 を実現します。 経営体C トピックス「平成22年度ほ場整備地区農業・農村活性化研修会を開催」 平成23年1月20日(木)に新潟テルサ(新潟市中央区)において、「平成22年度ほ場整備地 区農業・農村活性化研修会」を開催した。 ほ場整備に関係する土地改良区等の関係機関や地区のリーダー等約1,000人が参加し、ほ場 整備地区の優位性を活かした地域農業の活性化方策等を探った。 新潟大学農学部の清野誠喜准教授からは 「新たな施策を踏まえた地域農業ビジネス の創造∼ほ場整備による農業・農村の活性 化∼」と題し講演を頂き、その後(株)月岡 わくわくファームの長井俊郎代表からは、 「消費者と共に喜び、農家と共に繁栄を!」 を基本理念とした地産地消による直売所や 農家レストラン等との連携活動事例を学び、 今後の地域農業活性化へ参考とした。 - 78 - 講演いただいた新潟大学 の 清 野 准 教 授 (左 )と (株 ) 月岡わくわくファームの 長 井 俊 郎 代 表 (右 ) 第2−5−(2)農業生産を支える用排水機能の確保 1 動向 (1) 更新時期を迎える農業水利施設の増大 本県 では、用 排水路、 用排水機 場など、 1,833ヶ所( 受益面積 100ha以上)の農業 水利施設により、約18万haにもおよぶ農地の用水と排水が確保されている。 中で も、新潟 平野の農 地約10万haの約6 割は機械 排水によ り維持 されてお り、海 抜 ゼロメー トル以下 の地域は 約1万haも存 在してい る。新潟 平野で は都市化 が進ん で おり、農 地ばかり でなく宅 地等への 浸水防止 など防災 上にお いても、 農業水利 施 設の役割は増してきている。 一 方 、 こ れ ら の 施 設 は 老 朽 化 が 進 み 、 平 成 30年 度 末 に は 約 6 割 に 当 た る 1,055ヶ 所が標準耐用年数を迎えることから、機能保全対策が急務となっている。 資料:農業基盤整備基礎調査(農林水産省) ※ 標準耐用年数:減価償却の耐用年数を基に、農林水産省が供用目標期間として定めたもの (2) 農業水利施設の機能低下 農 業水利施 設の老朽 化が進 みポンプ の能力の 低下や除 塵機等の 緊急停止、管水路 の破損による漏水被害等が発生している。 <水中軸受部が摩耗損傷し 作動不能となった排水ポンプ> - 79 - <腐食が進み穴があいた 管水路の付帯構造物> (3) 中山間地域での農業水利施設の状況 中 山 間地 域 では 、 過 疎化 ・ 高 齢化 の 進 行に よ る 集 落 機能 の 低下 や 未 整備 等 が 原因 で 、 農業 水 利施設の保全管理が困難になっている。 ま た 、老 朽 化し た 農 業水 利 施 設は 、 集 中豪 雨 や 地 震 等に よ り甚 大 な 被災 が 発 生す る 恐 れが あ る た め 、優 先 度の 高 い 施設 を 的 確に 選 定 し、 効 率的に整備を進めている。 <山腹水 路の 維持管理 状況 (糸魚川 市) > 2 施策の取組状況と成果 (1) 農業水利施設の長寿命化に対する取組 ○ 平 成 21年 度 ま で に 681施 設 の 機 能 保 全 計 画 の 策 定 を 行 い 、 37施 設 で 対 策 工 事 が 実 施されているほか、平成22年度は新たに5施設で対策事業に着手した。 (2) 用水の安定的な確保や防災・減災に向けた排水機能の確保 ○ 安定的な農業生産のための用水確保や豪雨か ら農用地等の湛水被害を軽減するため、かんが い排水事業等により機能低下した農業水利施設 の改修などを行い、農用地等の自然災害による 被害の未然防止を図った。 平 成22年 度に は 、新川 河口排水 機場のポ ンプ の更新事業などが実施されている。 ○ 農地の湛水被害や住宅地などでの浸水被害を 軽減するためには、水田の持つ貯留機能の積極 <新川河口排水機場ポンプの 的な活用が効果的であることから、水田の排水 分解点検整備> 量 を 調 整 す る 取 組 ( 通 称 「 田 ん ぼ ダ ム 」) を 推 進している。 平成22年度は県内10市村52地域で取り組まれた 。 (3) 中山間地域における山腹水路等の整備 ○ 漏水量 が多く維 持管理 が困難な 状況を改 善すると ともに、 用水の安 定供給を図る ため、中 山間地域 総合農 地防災事 業におい て、平成 22年 度までに 、23地区(継続7 地区、完了16地区)で、L=30kmの山腹水路整備を行った。 3 今後の課題 ○ 今後、老朽化が進む農業水利施設が増加するため、機能診断結果に基づいた施設の整備 補修による長寿命化や、新たな技術の活用等によるコスト縮減を図る必要がある。 ○ 近年多発する自然災害から農用地等を守り、農業の持続的発展や農業経営の安定化を図 るとともに、県民の生命・財産を守り、安全で安心できる県土を保全するため、農業水利 施設等の機能保全に努めていく必要がある。 - 80 - トピックス「西蒲原よりみちマップの取組み」 ◆背 景◆ 農村地域では、非農家の混住する割合が高くなり、特に都市近郊で 顕著になっている。このため、非農家からも土地改良施設や農業農村 整備事業の役割や重要性等を広く知ってもらう必要がある。 また、インターネットや携帯電話の普及により、誰もが手軽に様々 な情報を受発信できる環境が整ってきた。 このため、広く県民に土地改良施設の歴史やその役割等をPRする手 段として、従来のチラシ等の紙ベースでの情報提供に加え、携帯電話か らも関連した情報が見られるよう電子データでの情報も提供する取組を モデル的に行い、西蒲原地域において、 「西蒲原よりみちマップ」を作 成した。 < 表紙:A3-八つ折 > ◆取組の状況◆ 7月下旬から西蒲原地域の地域振興局や市・区役所の公的機関の他、コンビニ等に約2,400部の マップを配布し、不特定多数の方に無償提供を行った。 マップにあるQRコードを携帯電話で読み取ると、土地改良施設の新川河口排水機場、新川右岸 排水機場、新々樋曽山隧道、国上隧道と西蒲原土地改良事業展示室の概要が紹介される。 土地改良を PRするぞ! これが、 QRコード! < 西蒲原エリア図 > < 内容の一部紹介 > - 81 - 第2−5−(3) 1 農地・水・農村環境の保全 動向 近年の農村では、過疎化・高齢化・混住化等の進展により、農家戸数が減少する一方、非農 家が増加している。このため、農業や農村の基盤となる水田・畑や水路・農道等の資源は、集 落機能の低下によって、その適切な保全管理が困難になってきたことから、平成19年度より農 地・水・環境保全向上対策が実施され、非農家と一体となった保全管理を実施している。活動 参加者は年々増加しており、中でも非農家の参加割合が増加している。 2 施策の取組状況と成果(農地・水・環境保全向上対策(共同活動支援)について) (1) 活動状況 平成22年度は、県内27市町村において884組織が農地・水・環境保全向上対策の共同活動 に取り組んだ。その取組は約56,800haと全国4位の実施面積である。 【平成22年度の状況取組】 27 884 56,837ha <平成22年度の取組状況> ○ 活動への参加計画では、個人で約51,000人、団体で約8,200余りが参加 ・農家:個人で約47,000人、農事組合法人等の団体で約1,300団体が参加 ・非農家:個人で約4,200人、自治会や婦人会等の約7,000団体が参加 ・前年度と比較すると全体で個人で約2,000人、団体で約500の増 ○ 今年度中間実績で非農家の参加は約215,000人と昨年度と比べ17,000人の増 資料:農地建設課調査 - 82 - ○ 共同活動を通じて、約4割の活動組織が前年度と比べ担い手農家の負担が軽減したと考 えているが、約6割が昨年度と変わらないとの回答。非農家を含む更なる活動参加者の拡 大を図り、担い手農家の負担軽減を図る必要がある。 ○ 約9割の活動組織が「地域コミュニティの活性化」に有効と考えている。 【担い手農家の負担軽減】 ○ 【地域コミュニティの活性化】 県内14カ所で63活動組織及び市町村担当者と意見交換会を開催し、地域での活動の実情 や問題点等を聞き取り、第三者委員会に報告した。 ○ 活動組織に対し、NPOの活動状況や、県内の優良活動事例等を紹介し、今後の活動の参 考としてもらうため、研修会を開催した。 3 今後の課題 共同活動の取組が、農家だけでなく地域一体となった自立的かつ継続した取組となること が重要である。活動組織に対し優良活動事例や組織が作成した体制整備構想の事例等の情報 発信を行い、対策の着実な推進を図る必要がある。 トピックス「にいがた田んぼの生きものハンドブック」 にいがた田んぼの生きものハンドブックは、新潟の自然豊かな美 しい農村環境を守るために、地域の豊かな生態系を把握する手助け となるよう、新潟県内の田んぼや周辺の水路に多く見られる生きも のを掲載している。 今年度は「ハンドブック」を新潟県下の全小学校に約8,000部配 布するとともに小学校の先生に授業等で活用可能かアンケート調査 をお願いした。 アンケートの回答として、ハンドブックの内容は小学校高学年が 使用するには「ちょうど良い」との意見が多い。一方で「漢字にふ りがなをふってほしい」「田んぼの益虫・害虫が載っているとより 授業で使いやすい」との意見もあった。 今後、寄せられた意見を参考にハンドブックの充実を図りたい。 - 83 - <ハンドブック表紙> 第3 多面的機能を発揮する農山漁村の維持発展 - 85 - 第3-1 1 農山漁村の活性化 動向 (1) 農 業 就 業 人 口 が 減 少 、 平 均 年 齢 は 上 昇 農業就業人口は、農地集約や集落営農 【農業就業人口・基幹的農業従事者数の推移】 組織等への委託に伴う離農などから、 (千人) 80 基 基幹的農業従 79 幹 事者数 的 78 農 129 77 業 従 76 事 75 75 者 数 99 74 74 農業就業人口 160 5年前と比較して3万人以上減少し、平 148 150 均 年 齢 は 67.7歳 と 2 歳 以 上 上 昇 す る な ど 農 業 就 業 人 口 高齢化が進行している。 また、基幹的農業従事者数は高齢階層 で増加している。高齢化が進行する中、 146 140 130 120 76 77 110 100 農村の活性化を図っていくためには高齢 90 73 1995年 者の持つ経験と技能を活用していくこと が必要である。 2000年 2005年 2010年 資料:2010年農林業センサス 【農業就業人口の高齢化の状況】 65歳以上の割合 農業就業人口の平均年齢 新潟県 65.6% 67.7歳 全国 61.6% 66.1歳 資料:2010年農林業センサス (2) 地 域 の 方 針 決 定 の 場 へ 参 画 す る 女 性 は 徐 々 に 増 加 地域農業の方針決定の場である農業委 員 会 へ の 女 性 の 参 画 は 、 平 成 22年 度 農 業 委 員 会 改 選 に よ り 、 現 在 52人 の 女 性 農 業 委員が選出され、農業委員に占める女性 の割合も増加した。また、複数の女性委 【農業委員に占める女性割合の推移】 女 性 委 員 の 割 合 6 5 ︶ % 4.3 4 ︵ 員 が い る 委 員 会 数 は 20に 増 え 全 体 の 約 3.3 3 3 3 2 1 57% と な っ た 。 0 H15 【複数の女性委員のいる農業委員会数】 複数の女性委員のいる 農業委員会数 5.5 5.3 4.9 4.8 現在 目標(H24) 20 35(全委員会) H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 資料:新潟県農業会議調査 ※目標は「にいがた農山漁村男女平等推進ビジョン」目標 2 施策の取組状況と主な成果 (1) 農 業 や 地 域 の 資 源 を 活 か し た 多 様 な 就 業 機 会 の 創 出 直売所、農家レストラン及び農業・農産加工体験施設の運営等について、地域 資源の活用に女性や高齢者の持つ知識や技術を活かせるよう活動を支援した結 果、女性グループ等が運営する施設等が増加するなど、地域の活性化や就業機会 の創出に貢献している。 - 87 - (2) 女 性 の 社 会 参 画 の 促 進 農村女性リーダーである農村地域生活アドバイザ ーや若い世代の女性農業者に対する研修を実施し、 社会参画に対する理解を深めた。 また、農村女性の方針決定の場への参画を進める ため、農村女性組織等と連携し、市町村、農業委員 会等と女性の登用促進について意見交換を実施し た。 <女性農業委員の活動について農村 地域生活アドバイザーが研修> 高齢者の経験と技能の発揮を支援 (3) 農山漁村で培われた技術・技能を活用し、小中学校等の体験活動の受入を拡大 するため、技術・技能所有者を「なりわいの匠」として認定するとともに、活動 機 会 の 拡 大 に 向 け た P R 等 を 行 い 、 指 導 者 と し て の 活 動 を 支 援 し た 。 平 成 23年 2 月 末 現 在 、 2,204人 が 「 な り わ い の 匠 」 と し て 認 定 さ れ て い る 。 また、地域の小中学校等における農林漁業体験学習や都市と農山魚村との交流 におけるインストラクターなどに多くの「なりわいの匠」が携わり、農山漁村の 活性化に貢献している。 <小学生のそば打ち体験指導> 3 <都市住民のきのこ採り体験指導> 今後の課題 ○ 地域資源を活かした商品開発により、農産物や農産加工品の販売等を支援 するとともに、就業の場となるような運営指導が必要である。 ○ 女性の社会参画促進に向け、地域における若い世代の女性農業者に対し社会 参画に関する意識啓発に取り組む必要がある。 ○ 「なりわいの匠」については、施策目標の達成に向けて新規認定を継続するとともに、 地域において有効活用されるようPRを強化していく必要がある。 指標項目 実績 目標 平成21年度 平成22年度 (平成24年度) 1,053人 1,061人 1,200人 バイザー認定数 (87.8%) (88.4%) なりわいの匠認定 2,103 (100) 2,204 (100) 目標値:2,100 目標値:2,200 農村地域生活アド (人) ※実績欄の( )は達成率。下段は当該年度の目標値。 - 88 - 2,400 第3−2 1 バイオマス利活用の推進 動向 (1) 国のバイオマス活用推進基本計画の策定 国ではバイオマス活用推進基本法(H21.9.12 施行)に基づき、これまで推進してきたバイ オマス・ニッポン総合戦略を総括するとともに、バイオマスの活用促進に関する施策につい ての基本的な方針、国が達成すべき目標、技術の研究開発に関する事項などについて定めた バイオマス活用推進基本計画を平成 22 年 12 月に策定した。 (2) 県内におけるバイオマスの利活用状況 県内では300万トンを超えるバイオマスが発生し、そのうち 218 万 トンが利用され て いる。利 用率は、 家畜排せ つ物の 堆肥化や 間伐等の 木質ペレ ット化な どにより、前 年に比べて2ポイント高い 69 % となった。 【平成 22 年度(直近)新潟県バイオマス利活用の状況】 区 農・水産系 バイオマス 木質系 バイオマス 食品産業系 バイオマス 生活系 バイオマス 合 計 平成 21 年度 分 利用量 1, 569(85) 発生量 1,837 利用量 137(44) 発生量 311 利用量 61(82) 発生量 74 利用量 356(38) 発生量 937 123(67) 利用量 2, 発生量 3,158 資料:農業総務課調査 (単位:千トン) 平成 22 年度 バイオマス資源の例 1,632(87) 稲わら、もみ殻、米ぬか、果樹剪定枝、 1,879 家畜排せつ物、水産廃棄物 144(47) 樹皮、木くず、間伐材等、建築発生木材 308 61(82) 食品事業系廃棄物 74 344(38) 集落排水汚泥、生ごみ、し尿汚泥、 911 下水汚泥 2,182(69) 3,172 注:利用量の( )は利用率 (3) 県内におけるバイオ燃料の生産・利用 ○ 平成22年度、新発田市と柏崎市に新たに木質ペレット製造施設が整備され、県内の木 質ペレット供給可能な製造施設は9カ所となり、年間供給可能量は1万トンを超えた。 需要面では、平成21年度までに温泉施設・給湯施設等10施設においてペレットボイラー が導入されたほか、ペレットストーブについては一般住宅での利用を含め440台程度が導 入されているものとみられ、木質ペレットの利用施設数・需要量ともに増加傾向にある。 ○ 長岡市の企業では使用済み食用油から作るバイオディーゼル燃料(BDF)を軽油に 5%混ぜる混合油を県内で初めて開発した。月産1万㍑で 23 年2月より本格的に製造販 売が開始された。 (4) バイオエタノール原料用イネの生産 ○ 県内8 JA でバイオエタノール原料用イネが約 316ha 作付けされ、2,135t が収穫された。 ○ これらを原料に新潟東港にあるプラントで、バイオエタノールが継続生産され、県内 19 のJAスタンドでグリーンガソリン(3%以内混合)として年間約3万8千㌔㍑が販売 されている。 - 89 - 2 施策の取組状況と成果 (1) 各種啓発活動の推進 ○ 県産 eco 飼料のうちエコフィードの更なる生産拡大と、エコフィードを給与した畜産物 の生産に向けて、食品産業関係者、飼料製造業者、畜産農家等を対象に研修会を開催し啓 発するとともに、食品残さ飼料化状況の把握や飼料安全法の概要について、飼料製造業者 や畜産農家等に資料配付を行い、周知を図った。その結果、平成 21 年度の飼料製造業者 のおける食品残さを利用した飼料生産量は、平成 20 年度より 1,331 t増加し、8,024t とな った。 ○ バイオマス利活用の促進や市町村の相互交流を図るため、北陸農政局と連携し「バイオ マス利活用促進セミナー」を開催し、バイオマス活用推進基本計画の概要やバイオマス先 進事例などの情報交換を図った。 (2) バイオエタノール原料用イネ実証ほの設置 ○ バ イオエタ ノール原 料用イ ネについて、北陸193号といもち病感受性の高い品種 との混播栽培実証を県下4地区で行った。 (3) 木質系バイオマスの取組 ○ 間伐材等の利活用率向上を図るため、搬 出・運搬システムの構築に向けた調査検討 や、木質ペレットなどの原料への安定供給 【林地残材を活用した木質ペレットの 利用量・生産量の推移】 支援を行った。 併せて、化石燃料から木質バイオマス燃 料への転換を図るため、木質ペレット等の 需要を開拓し、ペレットボイラーやペレッ トストーブの導入を推進した。 ○ バイオマス利用施設の導入が進んだこと により、ほとんど利用されていなかった間 伐等における林地残材の木質ペレット等へ の利用量は、前年の5倍に増加した。また、 県内に9か所ある木質ペレット製造施設に おける生産量も増加している。 (4) 水産系バイオマスの取組 ○ 3 資料:林政課調査 規格外のニギス等を活用した低残さ処理技術を開発中であり、中間素材(すり身)の試 作品を製造した。 今後の課題 ○ 平成 24 年のバイオマス利用率の目標 75 %に向けて、バイオマスの総合的な利活用を進 める必要がある。 ○ バイオマスを利用することは、社会の持続的な発展のために重要であり、そのコストを 社会全体で負担していくコンセンサスづくりが必要である。 ○ さらなる林地残材の利活用に向け、路網整備や搬出システムの確立等による生産コスト の低減を図る必要がある。 - 90 - ○ 食品製造業者、飼料製造業者、畜産農家等の連携を支援し、エコフィード生産・利用拡大や エコフィードを給与した特徴ある畜産物の流通体制の構築に向けた検討が必要である。 ○ 魚介類の栄養・機能性成分を維持し、さらに汎用性の高い中間素材が製造可能な簡便 な技術を開発し、普及を図る必要がある。 実績 目標 平成 21 年 平成 22 年 (平成 24 年) 2,123(100%) 2,182(100%) 2,197 バイオマス利用量(千t) 2,120:目標値 2,146:目標値 67(94%) 69(96%) 75 バイオマス利用率(%) 71:目標値 72:目標値 指標項目 ※実績欄の( )は達成率。下段は当該年度の目標値。 トピックス「木質バイオマスの取組事例」 新潟市秋葉区では、地域で生産される間伐材で作る木 質ペレットを用いて、地場産業である花の加温栽培を行 っており、環境に優しい栽培方法として付加価値を高め ることにより新たな市場開拓に取り組んでいる。 さらに、この取組を通じて削減されたCO2は、木質ペレ ット推進協議会※がオフセットクレジット(J-VER)※とし て登録し、これを一般社団法人more treesと連携して企 業等へ販売することにより、その収益を地域の森林整備 に還元する、という循環型の仕組みを構築している。 ※ 木質ペレット推進協議会:5社からなる合同会社。木質ペレットの普及や流通整備、木質ペレットストーブ等 の販売などを手掛け、カーボンオフセット(排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの 削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせること)のコーディネート事業などを展 開。 ※ オフセットクレジット(J-VER):直接削減できないCO2の排出分を、植林やクリーンエネルギー関連の事業など で相殺するカーボンオフセットに用いるために発行されるクレジットのこと。 - 91 - 第3−3 中山間地域の維持発展 (1)中山間地域の活性化 1 動向 (1) 中山間地域の動向 本県における中山間地域は、県土の69%、耕地面積では県全体の41%を占めている。 総農家数は県全体の48%、農業産出額も41%を占め、農業生産はもとより水資源のかん養 や国土の保全等の多面的機能の確保に重要な役割を果たしているが、地形的な耕作条件の不 利性等から、平場地域に比べて耕作放棄が進んでいる。 農業構造面では、中山間地域の認定農業者数は県全体の44%を占めているが、1戸当たり 生産農業所得は857千円と平場地域の2/3程度と低く、また、農業就業人口に占める65歳以上 の割合は69%と平場地域に比べて11ポイント高いなど、若い担い手の確保が困難な状況にあ る。 経 営 耕 地 面 積 (ha) 2 1.8 1.6 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 1戸当たり経営耕地面積・生産農業所得 1,356 農業就業人口、65歳以上割合 1,600 8.0 1,400 7.0 70 58 1,200 857 1.78 0.95 中山間 生 農 6.0 産 業 1,000 5.0 農 就 業 800 業 4.0 所 人 600 3.0 得 口 400 (千円) (万人) 2.0 80 69 200 1.0 0 0.0 7.6 5.3 10 0 中山間 平場 平場 (2005農林業センサス) (2005農林業センサス、H18生産農業所得統計) 地域区分 県全体 60 65 歳 50 以 40 上 割 30 合 20 (%) 【耕作放棄地の状況】 (単位:ha) 2005年センサス ほ場整備完了地区内 経営耕地 耕作放棄 耕作放棄 ほ場整備 耕作放棄 耕作放棄 面積 地面積 率 面積 地面積 率 ②/(①+②) ③ ④ ④/③ ① ② 146,907 9,179 5.9% 53,046 26.8 0.051% 平場地域 95,959 3,720 3.7% 25,968 3.3 0.013% 中山間地域 50,948 5,459 9.7% 27,078 23.5 0.087% 資料:ほ場整備完了地区内の数値は、農地計画課「耕作放棄地実態調査(H17)」 (2) 中山間地域等直接支払制度を活用した地域の動き ア 第2期対策の総括 平成17年度から21年度までの第2期対策では、21市町村で1,007協定(集落協定996、個 別協定11)が締結され、16,323haの条件不利農地が維持された。 制度実施地域では、適正な農業生産活動等による耕作放棄の発生防止に加え、制度実施 集落の約半数で生産組織が設立され、持続的な営農体制づくりが進んだ。また、農産物の 直接販売や加工、都市住民等との交流による集落の活性化等の取組も進みつつある。 - 92 - 【第2期対策における集落協定の主な取組実績】 区分 取組内容 協定数 割合 農地の法面管理 790 79% 耕作放棄防 賃借権設定・農作業委託 594 60% 止活動 簡易な基盤整備 193 19% 周辺林地の下草刈り 601 60% 多面的機能 景観作物の作付け 441 44% 増進活動 体験民宿(グリーン・ツーリズム) 50 5% 機械・農作業の共同化 423 42% 農業生産体 認定農業者の育成 264 27% 制整備 非農家・他集落との連携 373 37% 資料:地域農政推進課「平成21年度中山間地域等直接支払制度の実 施状況」(H22.6月) イ 第3期対策への移行状況 平成22年度からの第3期対策の協定締結に向けた話し合いが各地で行われ、第2期対策 の996集落協定のうち協定を継続しなかった協定が60ある一方で、新規取組が43協定あり、 また、協定の広域再編が進んだことから集落協定数は873となった。個別協定は15で、集 落協定と合わせて計888協定が締結された。 【2期対策から3期対策への集落協定の移行状況(H22年度)】 未締結 継続協定の動向 第2期対策 第2期対策 継続協定 協定広域 協定分割 新規協定 第3期対策 (第2期対策 協定数 から継続 締結数 協定締結数 から継続し 化による による増 締結数 ていない) 減 ① ② ③=②-④+⑤ 集落協定 996 936 830 個別協定 11 10 10 1,007 946 840 合計 ④ ⑤ ▲ 109 ⑥ 3 ▲ 109 3 ③+⑥ 43 873 60 5 15 1 48 888 61 (3) 野生鳥獣による農作物への被害金額は、約4億6千万円 平成21年度の野生鳥獣による農作物の被害額 【野生鳥獣による被害金額の年次推移】 は約4億6千万円で、前年と比較して約1億円 減少した。これは、鳥類の被害金額の減少によ るところが大きい。 被害金額の内訳は、約55%が鳥類、約45%が 獣類によるもので、鳥類ではカラス、獣類では サルによる被害が多い。 (百万円) 800 鳥類 700 獣類 600 500 400 近年は、県南部を中心にイノシシによる被害 300 が増加傾向にあり、被害金額は前年比193%とな 200 った。 100 0 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 被害金額の推移 資料:市町村調べ農産園芸課とりまとめ - 93 - 2 施策の取組状況と主な成果 (1) 中山間地域等直接支払制度による耕作放棄防止等の取組推進 ○ 第3期対策は、高齢化の進行にも配慮した、より取り組みやすい仕組みに見直されたこ とから、市町村と連携して制度内容の周知に努めるとともに、協定締結までの進行管理や 協定締結が困難な集落に対する重点的な支援等を行った。 その結果、第2期対策の集落協定のうち再締結に至らなかった協定は6%、協定農用地 面積は約5%の減少に止まるなど、制度実施集落及び協定面積の維持が図られた。 ○ 中山間地域総合整備事業等で、農業生産基盤の整備を行った地域では、耕作条件の改善 や担い手の確保などにより、耕作放棄率は中山間地域平均より低くなっている。 (2) 持続可能な営農体制整備等への支援 ○ 集落協定の締結推進と併せて、単独では組織化が困難な小規模集落等を含め、旧村等の 広域的な範囲による推進体制づくりを推進した結果、制度実施地域における稲作生産組織 数は516組織(H22.3月末現在)と、2期対策開始前(平成16年度:239組織)から倍増した。 ○ 農業生産法人に雇用された企画・販売ノウハウを有する新規就農者等の所得保障を4地 区でモデル的に実施し、農産物の高付加価値化による所得向上等の効果検証を行った。 (3) 地域資源を活用したビジネス化の推進 ○ 「中山間地域豊かな村づくり推進事業」の継続実施9地区において、外部専門家や普及 指導センターによる助言指導等により、独自ブランドによる棚田米の直接販売、新規作物 の導入、加工・直売施設の設置、都市住民等との交流など、地域の創意工夫による取組成 果が現れている。 (4) 鳥獣被害防止対策に対する支援 ○ 農業者等に対し、先進事例等有効な被害防止技術の情報提供を行った。 ○ また、市町村に対し、「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関 する法律(平成20年2月21日施行)」に基づく被害防止計画作成の推進・支援を行い、14市 (平成23年1月末)で計画が作成された。また、モンキードッグ(猿追い払い犬)や発信器 を活用した追い払い活動、研修会の開催、緩衝地帯の整備及び電気柵の設置など、被害防止 計画に基づいた地域の被害防止対策を支援した。 3 今後の課題 ○ 今年度、中山間地域等直接支払制度の集落協定の再締結に至らなかった集落は、高齢化 による営農継続への不安や取りまとめ役の不在などが主な要因であることから、できるだ け多くの集落や農業者が制度に参加できるよう、近隣集落等との連携による広域的な営農 体制の整備等を市町村と連携して進めていくことが必要である。 ○ 中山間地域の持続的発展に向けた営農体制の強化や、地域資源を活かしたビジネス化の 取組を進めるためには、意欲ある若者・女性の参画促進や、企業・大学等の外部団体との 連携による新たな人材の確保・育成を進めていくことが必要である。 ○ 鳥獣害対策は地域ぐるみで実践していくことが重要であることから、引き続き住民の意 識啓発をしていくことが必要である。 - 94 - 指 標 項 目 中山間地域(直払地域)の 生産組織数(組織数) ※実績欄の( 実 績 目 標 平成21年 平成22年 (平成24年) 516 (110) − 500 目標値:470 目標値:480 )は達成率。下段は当該年度の目標値。 ※平成22年度の生産組織数は、取りまとめ中 トピックス「 鳥獣被害防止対策の取組事例」 新発田市ニホンザル被害防止対策協議会では、サ ルによる農作物被害を軽減するため、国交付金等を 活用して総合的な対策を実施しており、被害の軽減 に効果を上げている。 <取組事例> 1 モンキードッグの育成 モンキードッグ(サル追い払い犬)を育成し、 里に下りてきたサルを山に追い返している。 2 <発信機を装着したサル> テレメトリーによる遊動域調査 サルに発信機を装着し、テレメトリー(遠隔測 定)によりサルの遊動域を調査し、里に近づいたら追い払う等、被害防止に活用し ている。 3 放任果樹の除去 放任果樹はサルを里に引きよせる誘因物となるため、果実の除去や果樹を伐採 し、サルにとって魅力のない環境を整備している。 - 95 - 第3−3−(2)都市と農山漁村の交流促進 1 動向 (1) グリーン・ツーリズムの動向 ○ ふるさとへの回帰志向の高まり、豊かな自然や田園風景に潤いや安らぎを求める人々 の増加などから、中山間地域を中心に地域資源を活用したグリーン・ツーリズム等、都 市と農山漁村の交流が行われている。 ○ 県内のグリーン・ツーリズムを推進する地域組織の数は、農山漁村の活性化を図る趣 旨から増加傾向にあり、平成22年度は19組織で、平成19年度に比べ5組織増加している。 ○ 県内のグリーン・ツーリズム誘客数(学童等農林漁業体験活動参加者数)は、学童等 を中心に年々増加しており、平成21年度は170,838人・日で、前年度に比べ約26,000人・ 日増加している。 【学童等体験活動参加者数】 (単位:人・日) H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 73,953 87,418 118,776 129,198 123,306 144,426 170,838 資料:地域農政推進課調査 (2) 「子ども農山漁村交流プロジェクト」の受入地域の動向 ○ 平成20年度から始まった「子ども農山漁村交流プロジェクト」に対応するため、県内 各地域で受入体制の整備が進められている。 ○ 県内の小中学生の農泊(農林漁業体験民宿への宿泊または農家民泊)を伴う体験活動 に参加する学校数・人数は増加傾向にあり、平成22年度は144校・約1万4千人を受け入 れている。 ○ 小中学生の体験活動の受入希望地域は平成22年度は前年度に比べ4地域増加し17地域 に拡大した。 【小中学生の農泊を伴う体験活動参加者数】 H20 学校数 小学生 53 H21 人 数 学校数 2,692 人 (単位:校、人) H22 数 学校数 人 数 63 3,494 75 4,312 中学生 − − 43 7,029 69 9,832 合 − − 106 10,523 144 14,144 計 資料:地域農政推進課調査 (3) 防災グリーンツーリズム※の動向 ○ 知事の防災グリーンツーリズム宣言(平成20年10月)以降これまで、首都圏及び県内 の地域・団体・市町村への呼びかけや、県内での全体交流会の開催等により防災グリー ンツーリズムを推進してきたことから、首都圏と本県の地域・団体間で交流が徐々に始 まっている。 ※ 防災グリーンツーリズムとは、首都圏等において災害が発生した際に、被災の経験で得られたノウハウ を活かして、都市住民の方々から安心して本県に避難していただけるように、日頃からの交流を通じて顔 の見える関係づくりを進める取組である。 - 96 - 2 施策の取組状況と主な成果 (1) グリーン・ツーリズム ○ 県内では、市町村が参画した地域ぐるみの受入体制の整備が進められてきており、これ ら受入組織や学校関係者等で構成される「新潟県グリーン・ツーリズム推進協議会」にお いて、県全体でのPR活動や地域間の連携等を進めている。 ○ グリーン・ツーリズム推進に関する総合窓口として、社団法人新潟県農林公社に「都 市農村共生・交流支援センター」を設置し、専門指導員を配置して、受入地域と旅行業 者等との結び付け活動、受入地域の体制整備やPR活動を支援している。 同センターのホームページの全面リニューアルやガイドブック配布による広報活動の 強化、観光業者等との連携推進による誘致活動を支援している。 ○ これらの取組の結果、学童等体験活動参加者数は順調に増加している。 (2) 「子ども農山漁村交流プロジェクト」 ○ 「新潟県グリーン・ツーリズム推進協議会」では、教育体験旅行部会を設置し、小中 学校等の体験活動の受入拡大を図るため、学校や旅行者等への広報活動を進めている。 ・県内外の小学校の担当者を対象としたモニターツアーの実施 ・ガイドブックの配布やホームページの充実 ・「子ども農山漁村交流プロジェクト」研修会の開催 ○ 等 これらの取組の結果、受入希望地域が拡大するとともに、農林漁業体験活動に参加す る学校数、小中学生数は増加している。 (3) 防災グリーンツーリズム ○ 防災グリーンツーリズムの取組を推進するため、本県と首都圏の自治体が窓口となり、 交流を行う地域や団体の活動をコーディネートするプラットフォームを構築し、持続的 な交流に結びつくようサポートしている。 ○ 川崎市や蓮田市等のNPOや自主防災組織等を対象に、柏崎市及び小千谷市で全体交 流会を開催し、福祉避難所の設置事例の紹介や県内受入団体の交流企画提案等を通じて、 首都圏と本県の団体間の結びつけを推進しており、首都圏と本県の地域・団体間で交流 が徐々に始まっている。 3 今後の課題 ○ 本県のグリーン・ツーリズムはこれまで、自然、景観、伝統・文化、農林業体験等新 潟の豊かな「緑資源」を主体に誘客を推進してきたが、本県はこれに加え、おいしい農 産物や郷土料理など都市住民にアピールできる「食資源」も豊かであることから、「食」 を活かした交流・体験・宿泊等を通じて交流人口を一層拡大していく必要がある。 ○ 防災グリーンツーリズムの動きを加速するため、取組に合意した川崎市・蓮田市に加 え、県内市町村と連携し友好都市等の関係にある首都圏自治体等にも交流を拡大してい く必要がある。 また、これまでの地域・団体に加えて、県内へのバックアップセンター設置の検討な ど、いざというときに備えBCM ※の体制整備に取り組む首都圏企業を対象にし、その従 - 97 - 業員や家族とも交流を進めていく必要がある。 ※ BCMとは、ビジネス・コンティニュイティ・マネジメントの略で、日本語では事業継続マネジメント。 企業が緊急事態に遭遇した場合に、事業を継続的に行うため、以下のことを繰り返すもの。 ① 経営者が方針を立てる ② 計画(事業継続計画:BCP)を立案する ③ 日常業務として実施・運用する ④ 従業員の教育・訓練を行う ⑤ 結果を点検・是正し、経営層が見直す 指 標 項 目 学童等体験活動参加者数(人・日) 防災グリーンツーリズム交流組織 実 績 目 標 平成21年 平成22年 (平成24年) 170,838 (129) - 200,000 目標値:132,500 目標値:155,000 − − 50,000 員数(人) ※実績欄の( )は達成率。下段は当該年度の目標値。 トピックス 「グリーン・ツーリズムサミット糸魚川大会」 平成22年度で8回目となる新潟県グリーン・ツーリズムサミットを、平成22年10月27日か ら28日の日程で糸魚川市で開催した。 テーマを「夢は大きく日本一!地域資源を活かす糸魚川ジオパーク」として開催したとこ ろ、県内をはじめ、北陸管内のグリーン・ツーリズム関係者を含め約400人が参加した。 初日は、糸魚川市長とフォッサマグナミュージアム学芸員から糸魚川ジオパークを紹介い ただくとともに、参加者でグリーン・ツーリズムの推進方策に関する分科会をテーマ別に実 施した。 2日目は、はちみつ採取体験や笹寿司づくり体験など、8コースに分かれて自然・景観散 策や郷土料理作り体験等を行った。 <糸魚川市長の講演> <推進方策に関する分科会> - 98 - トピックス 「防災グリーンツーリズム全体交流会」 首都圏のNPO団体等と本県の受け入れ団体との結びつけを図る防災グリーンツーリズム 全体交流会を平成22年度は2回実施した。 1回目は、平成22年5月27日から28日の日程で柏崎市で開催したところ、川崎市・蓮田市 から19団体・34人の参加があった。 初日は、中越沖地震の際に福祉避難所となった障害者福祉施設「元気館」や自主防災の取 組で消防庁長官賞を受賞した北条地区コミュニティー振興協議会を視察研修した。2日目は、 高柳地区で棚田の散策や紙すき体験を行った。 2回目は、平成22年11月21日から22日の日程で小千谷市で開催したところ、川崎市・蓮田 市から18団体・39人の参加があるとともに、県内市町村と友好都市等の関係にあるさいたま 市・深谷市・国分寺市からも参加があった。 初日は、パネルディスカッションに引き続き参加者でグループ討議を行い、震災及び復興 時における自主防災組織等の役割を研修した。2日目は、中越大地震の際に自主的福祉避難 所となった福祉施設「小千谷さくら」や中越大震災妙見崩落現場を視察するとともに、笹団 子作り体験等を行った。 <福祉避難所「元気館」の視察> <自主防災組織等に係るグループ討議> - 99 - 第3−4 1 森林・農地・海岸の保全と景観等に配慮した生活環境の整備 (1)美しく住み良い農山漁村の整備 動向 (1) 農 業 や 農 村 の 持 つ 役 割 県民は、農業や農村に対して食料生産する役割以外に、自然環境、国土を保全 す る 役 割 な ど の 多 面 的 な 機 能 に 期 待 し て い る 。特 に 、「 自 然 環 境 を 保 全 す る 役 割 」 が8割を超え、次いで「国土保全の役割」が5割程度と高くなっている。 【食料生産以外に農業・農村に期待する役割について】 (2) 農 山 漁 村 と 都 市 と の 生 活 環 境 の 格 差 農山漁村の下水道や道路舗装など、生活環境の整備率は都市と比べて下回って おり、特に下水道については都市との間に格差がある。 【生活環境の整備状況】 市部 73 .7 % 道路舗装率 町村部 7 0 .4 % 農振地域外 8 6 .4 % 下水道整備率 6 6 .1% 農振地域内 0% 20 % 40% 6 0% 80 % 100% 資 料 : 道 路 舗 装 率 は 新 潟 県 土 木 部 ( H 2 2 .3 ) 下 水 道 整 備 率 は 新 潟 県 農 地 部 ( H 21 . 3 ) - 100 - 2 施策の取組状況と成果 (1) 豊 か な 自 然 環 境 を 活 か し た 魅 力 あ る 森 林 ・ 田 園 ・ 海 岸 空 間 の 整 備 促 進 ア 生態系や景観の保全・形成、文化の伝承 五泉市では田園自然環境保全整備事業、新発田市で は村づくり交付金により、豊かな自然環境や美しい景 観・形成を図り、ホタルや魚類などの生き物に配慮し た水路の整備が行われた。 イ 地域住民のコミュニティの醸成 新発田市では、村づくり交付金により、農業を通じ <生態系等に配慮した水路> た都市住民との交流活動及び都市住民が農業に親しむことのできる機会の場 と し て 、集落農園や憩いの場が整備された。 ウ トキの餌場づくりの取組について 平 成 20年 度 か ら 県 営 生 物 多 様 性 対 応 基 盤 整 備 促 進 パ イロット事業で実施している佐渡市正明寺地内におい て 、ト キ の 餌 と な る ド ジ ョ ウ な ど が 生 息 す る た め の「 江 ( 水 田 内 に 設 け た 深 み )」 や 「 ビ オ ト ー プ 」、 ド ジ ョ ウ などが水田と水路を移動するための「水田魚道」等の 整備と併せ、生き物のモニタリング調査を実施してい <通年で水を溜める「江」> る。 (2) 農山漁村の生活環境の整備促進 ア 排水路の機能維持、水質保全の向上 集落内や農地の湛水被害の防止、維持管理費の低減、水質 保全を図るため、集落内の排水路の整備を行う新潟市他3市 に対し支援した。 イ 安全で雪にも強い集落づくり 集落内の安全な通行を確保するため、集落道の整備を行う <安全が確保された集落道> 柏崎市他2市に対し支援した。 ウ 集落排水施設整備の向上 農山漁村の生活環境の改善と公共用水域の水質保全を図るため、村上市他7市 町 に お い て 、 し尿や生活排水等の汚水を処理する施設の整備が進み、新たに24集落で供用 が開始され、処理対象人口が20万600人となった。 3 今後の課題 美しく住み良い農山漁村の整備は、農村部の定住化促進に不可欠であることから、今後 も、地域の特色を活かした魅力あるむらづくりと快適で安全な生活環境の整備を進める必 要がある。 - 101 - 第3−4−(2)森林・農地・海岸の保全 1 動向 (1) 農 地 や 林 地 の 被 災 状 況 平 成 22年 は 、 融 雪 に よ る 大 規 模 な 地 す べ り 災 害 が 多 発 し た 。 ま た 、 秋 雨 前 線 等 により小規模ではあるが、豪雨災害が多数発生した。 こ の ほ か に 、8 月 か ら 9 月 に か け て 、上 越 地 域 を 中 心 に 干 ば つ 被 害 が 発 生 し た 。 【農地、林地等の災害発生状況】 年次 平 成 21年 件数 種別 農 地 農業用施設 林 (金額:千円) 地 計 平 成 22年 被害額 件数 被害額 8 23,000 168 343,429 11 44,000 62 403,000 51 582,900 59 2,054,463 70 649,900 221 2,768,463 資料:農地建設課、治山課調査 < 融 雪 に よ り 地 す べ り 発 生 ( H2 2. 4月 妙 高 市 上 平 丸 ) > (2) 災 害 危 険 箇 所 の 状 況 県内には土砂災害やなだれ災害が発生する危険のある「災害危険箇所」が多く 存 在 し 、 平 成 22年 3月 末 現 在 で 8,329箇 所 と な っ て い る 。 【災害危険箇所の状況】 種 別 地すべり 農地関係 治山関係 600 529 箇 所 数 ( H22.3.31現 在 ) 山腹崩壊 崩壊土砂流出 なだれ 計 (土 石 流 ) 2,447 2,943 1,810 8,329 資料:農地建設課、治山課調査 (3) 松 く い 虫 と ナ ラ 枯 れ の 被 害 状 況 松くい虫被害は、昭和52年に初めて県内で発生して以降、昭和63年に年間4万m3を超える 被害となったが、その後の防除効果により減少し、平成21年は、7,198m3となった。しかし、 局所的な被害が広がっている箇所もある。 ナラ枯れ被害は、平成14年頃から急激に被害が拡大し、平成16年には被害木が10万本を 超える被害となった。その後、一旦は被害が減少したが、再び増加し、平成22年は、11万 4千本の被害となった。 【松くい虫の被害推移(被害材積)】 区 分 被害量 (単位:m3) 昭和52年 昭和63年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 50 40,459 9,001 8,004 7,120 7,198 資料:治山課調査 【 ナ ラ 枯 れ の 被 害 推 移 ( 被 害 本 数 )】 区 (単位:本) 分 平 成 14年 平 成 16年 平 成 18年 平 成 19年 平 成 20年 平 成 21年 平 成 22年 被害量 50,340 109,581 33,692 54,750 67,861 95,863 114,050 資料:治山課調査 - 102 - 2 施策の取組状況と成果 (1) 災 害 危 険 箇 所 の 整 備 治 山 事 業 で は 、 災 害 危 険 箇 所 お よ び 災 害 発 生 箇 所 へ の 防 災 施 設 等 の 整 備 を 平 成 22 年 度 に 164箇 所 ( 約 51億 円 ) 実 施 し た 。 ま た 、 農 村 振 興 局 所 管 の 地 す べ り 危 険 箇 所 に お い て は 、 対 策 事 業 を 平 成 22年 度 に 95箇 所 ( 約 13億 円 ) 実 施 し た 。これにより山 地災害防止機能が確保された集落数が昨年度までの2年間に36箇所増加した。 (2) 災 害 危 険 箇 所 情 報 の 発 信 ○ 県民に土砂災害が発生する危険性のある地点をあ らかじめ周知し、防災に役立ててもらうため、平成 20年 度 か ら 、 県 ホ ー ム ペ ー ジ で 危 険 箇 所 情 報 を 公 表 している。 ○ 危険箇所とあわせて、治山施設の効率的な管理 や 災 害 時 の 活 用 に 備 え 、 G ISを 活 用 し た 治 山 台 帳 <ホームページ上の危険箇所情報> 管理システムを整備し運用を開始している。 (3) 森 林 整 備 の 状 況 ○ 治 山 事 業 で は 防 災 施 設 の 設 置 と 併 せ て 、 平 成 22年 度 に 本 数 調 整 伐 等 に よ る 森 林 整 備 を 814ha 実 施 し た 。 ○ 松くい虫防除では、海岸保安林などの重要な松林を中心に、薬剤の地上散布 等による予防措置のほか、拡大を防止するための徹底的な伐倒駆除を継続的に 実施した。 ( 4) ナ ラ 枯 れ の 被 害 対 策 ○ 生活環境の保全や保健休養の場として重要な森林公園やキャンプ場のナラ林を中心に、 被害木を伐倒しビニールで被覆することにより殺虫する駆除事業や、健全なナラの木に 殺菌剤を注入して枯死を防ぐ予防事業等を平成22年度は19ヶ所で実施した。 (5) 海 岸 保 全 の 推 進 状 況 ○ 治 山 事 業 で 海 岸 保 安 林 の 侵 食 対 策 と し て 、 平 成 22 年 度 海 岸 防 災 林 造 成 事 業 等 に よ り 、 防 潮 工 を 250m 設置している。 ○ 漁港海岸では新潟北沿岸、富山湾沿岸、佐渡沿岸 の3沿岸について海岸保全基本計画に基づき、計画 的に事業を実施している。 ○ <防潮工の設置状況(新潟市西区上新栄町)> 日本海側特有の厳しい冬期風浪等から海岸背後の集落等を守るため、県内の 海 岸 保 安 林 延 長 85 kmと 漁 港 海 岸 延 長 108 km に つ い て 侵 食 ・ 高 潮 対 策 を 進 め て い る。 ○ 海岸護岸・離岸堤等を計画的に整備した結果、整備箇所では越波による浸水 被害から背後集落を防護した。 - 103 - 3 今後の課題 ○ 危険箇所対策の進捗を図るため、計画的な防災施設の整備が必要である。 ○ 治山施設の定期的な点検を実施し、維持管理及び修繕等を計画的に実施してい く必要がある。 ○ 海岸保全については、今後も地元住民の要望把握を的確に行い、被害リスク等 を評価した中で、被害解消に向けた対策を着実に進めていく必要がある。 ○ 広範囲のナラ枯れの防除を目的に、集合フェロモンを利用する面的な防除法 を確立する必要がある。 トピックス「干ばつ対策について」 【干ばつの状況】 平成22年8月15日から9月6日の少雨、干天により、 上越を中心に中山間地域の一部水田で、農地にひび割 れ等の被害が発生した。 9月8日時点で調査を行った結果、上越市、妙高市、 糸魚川市の合計240haの水田で、深さ50cm∼70cm程度 のひび割れが確認された。 このような広範囲の地域で干ばつ被害が生じたの は、平成6年以来16年ぶりのことである。 <干ばつ被害の状況> 【復旧への対応】 ひび割れの拡大による漏水や畦畔の崩壊、地すべりなどの被害を防止するとともに、次年度の 作付けに影響を与えないよう、降雪前に復旧を図る必要があることから、農地部では「県単干ば つ災害復旧事業」を創設し、干ばつによる農地被害に緊急に取り組んだ。本事業に取り組んだ被 災農地の全てで、降雪前に復旧を終えた。 - 104 - 第3−4−(3)県民参加による多面的機能の維持と理解の促進 1 動向 (1) 棚田サポーターの活動状況 【ECHIGO棚田サポーター】 農道・水路の補修や草刈りなど、棚田の保全 活動を通じて地域の農業生産活動を支援するボ 活動回数 H19 H20 H21 H22 36 33 36 31 1,022 980 1,118 ランティア組織「ECHIGO棚田サポーター」 延べ参加人数 1,131 は、活動開始から12年目を迎え、平成 22 年度は 資料:農村環境課調査 県内14地区で計31回の活動を実施した。 (2) 森林ボランティア活動の動向 【森林ボランティア団体】 地球温暖化をはじめとする環境問題に関心が 高まる中、近年は、毎年5,000名を超える人が森 団体数 林 整 備 に 参 加 す る な ど 、 各 地 で 森 林 ボ ラ ン テ ィ 参加者数 H19 H20 H21 H22 46 51 51 51 3,795 5,291 5,261 ― ア活動が行われている。 資料:治山課調査 (3) 魚の森づくり活動の動向 【魚の森づくり協議会】 魚の森づくり活動は、3地区で地域主体の広 葉樹の植栽などの活動が行われている。 H19 H20 H21 H22 実施地区 4 4 3 3 参加人数 395 392 324 373 資料:水産課調査 (4) 森林・林業教育の現状 【森林・林業教育受講者(県主催)】 地域の実情に即した森林・林業教育の推進体 制整備を図るため、県主導で実施していた森林 H19 受講者 H20 H21 H22 5,039 4,136 3,658 2,297 ・ 林 業 教 育 を 、 ボ ラ ン テ ィ ア 団 体 や 地 域 推 進 員 資料:林政課調査 などによる 地域指導者主導の活動 に移行を 進めている。 2 施策の取組状況と成果 (1 ) 棚田等の保全活動 ○ CSR(企業の社会的責任)の観点から社会貢献活 動を希望する企業と、人手不足に悩む中山間地域を仲 介し 、 棚田等の保全活動を行う取組は、前年度を上回 る計3回の活動を実施。県内企業延べ5社が参加し、 田植えや稲刈りなどを行った。 また、学生ボランティアによる中山間地域支援の取 組を実施し、新潟大学生の参加により、山腹水路の江 ざらいや草刈りを行った。 ○ <作業後に記念撮影> 企業と学生ボランティアを合わせた延べ参加者数は前年度の約2倍の72名に増加し、 - 105 - 活動の拡大が図られた。 (2) 森林ボランティア活動 ○ 県民参加の森づくりを進めるため、CSR活動として 行う森林整備やボランティア団体が行う森林保全活動、 県民が広く参加する植樹祭などについて支援を行った。 ○ 森林ボランティア団体や地域住民が企業のCSR活動 と連携し、企業の森づくりに参加した企業が9社から14 社に増加するなど、新たな地域の森づくり活動の拡大が 図られた。 <森林ボランティア活動> (3) 魚の森づくり活動 桑取川魚の森づくり(上越市)、谷根川さけの森づく り(柏崎市)、さけの森林づくり(村上市)の3地区の協 議会において、ブナなどの広葉樹の植栽や下刈りなど を実施した。 <谷根川さけの森づくり> 3 今後の課題 ○ ボランティアによる棚田等の保全については、現在進めているCSR活動の定着と実 施地域の拡大を図るとともに、学生など多様な主体の参加促進や、地域の営農支援を行 うNPO等との連携により、取組の輪を広げていくことが重要である。 ○ 森林ボランティア団体に対し、緑の募金を支援する団体である「にいがた緑の百年物 語緑化推進委員会」と連携しつつ、技術支援や総合的な森づくりの普及啓発活動、安全 指導等を引き続き支援していく必要がある。 ○ 魚の森づくり活動については、引き続き取組を推進するとともに、森林整備の重要性 について普及啓発を強化し、広く一般県民の活動へと広げていくことが重要である。 トピックス「企業の森など多様な主体による森づくり」 県では、企業やボランティア団体等が実施する多 様な主体による森づくり活動をサポートしている。 平 成 22年 は 、 14企 業 が 地 域 に お い て 企 業 の 森 づ く り 活 動 を 実 践 し た 。 特 に 7 月 25日 (日 )に は 、 日 本 野 球機構と協定を結び、新潟市四ツ郷屋地区において プロ野球選手と地元小学生が一緒に「プロ野球の森 づくり」を行った。 また、地域の保安林を守り育てて行くため、地元 の ボ ラ ン テ ィ ア 団 体 、 20団 体 が 林 内 整 理 や 遊 歩 道 の 整備などを行っている。 今後も多様な主体による森づくり活動の定着化を支 援していく予定である。 - 106 - <プロ野球の森づくり活動> トピックス「企業や学生ボランティアによる 中山間地域支援の取組を実施 」 ○CSRによる棚田等の保全活動 10月 2 日 、 日 本 精 機 株 式 会 社 の 新 人 社 員 が 、 柏 崎 市 石黒地区の「花坂の棚田」で稲刈り作業を行った。 今回のボランティア活動が同社の新人研修の一環に 位置づけられたもので、参加した8名は秋晴れの中、 慣れない作業にとまどいながらも熱心に取り組んだ。 10月 9 日 に は 、 株 式 会 社 北 越 銀 行 お よ び 株 式 会 社 大 光銀行の社員とその御家族が、十日町市浦田(新田) 地区の棚田で、昨年に引き続き稲刈り作業を行った。 両 行 は 、 6 月 に も 同 じ 棚 田 で 田 植 え 作 業 に 参 加 し て <稲の縛り方を教わる> おり、自分たちの手で植えた稲を自分たちの手で収穫した。 ○学生ボランティアによる中山間地域振興 農村ボランティアの拡大に向けた試みとして、学生 ボランティアによる農地等の保全活動を実施した。 新 潟 大 学 生 延 べ 18名 が 参 加 し 、 7 月 と 10月 の 2 回 に 渡り、糸魚川市見滝地区で、山腹水路の江ざらいや草 刈りを行った。 また、作業後には地域住民との交流会が設けられ、 中山間地域の農業について意見を交わした。 <水路を塞ぐ倒木を撤去> - 107 - 第4 中越大震災・中越沖地震からの復旧・復興 - 109 - 第4 1 中越大震災・中越沖地震からの復旧・復興 中越大震災・中越沖地震の動向 (1) 復旧は全て完了 中越大震災及び中越沖地震で発生した農地・林地被害や施設被害は災害復旧事 業 等 に よ り 、 平 成 21年 度 に 全 箇 所 の 復 旧 が 完 了 し た 。 2 施策の取組状況 (1) 復興に向けた新たな取組 農地や住宅の復旧が一段落したことに伴い、被災地域では新規作物の導入や農 産物・農産加工品のブランド化、都市との交流などの取組が始まり、地域の活性 化に効果をあげつつある。 【震災地域での新たな取組事例】 取 組 事 例 名 (地 域 ) 伝統野菜の漬物の販売 取組の概要 地元の女性グループにより柏崎市の伝統野菜「刈羽節 を開始 成りきゅうり」の漬物の製造が始まった。専門家等の指 (柏 崎 市 ) 導を受けながら、販売促進活動にも取り組んでいる。 ユリ切り花の創造的復 魚沼市堀之内地区で、ユリ切り花の共同出荷調整施設 興に向けた取組 及び耐雪型栽培施設が完成し、販売量の拡大に向けた創 (魚沼市堀之内地区) 造的復興が始まった。 水沢生産組合 (魚沼市水沢集落) 古民家民宿「おっこの 平 成 21年 に 生 産 組 合 を 設 立 。 こ だ わ り 米 に 商 標 登 録 を 取得して付加価値を高め、販路拡大を図っている。 ま ち お こ し 団 体「 わ か と ち 未 来 会 議 」が 主 体 と な っ て 、 木」 古 民 家 を 改 修 し た 民 宿 が 平 成 22年 6 月 に 竣 工 。 民 泊 ・ 体 (小千谷市若栃) 験・交流の拠点として営業を開始。 防災グリーンツーリズ 東京都杉並区のNPO法人MAT(子育て支援団体) ムの地域交流 と小千谷市被災地住民との間で、震災体験談・河岸段丘 (小千谷市) 視察・稲刈り体験等、防災グリーンツーリズムの地域交 流が始まった。 山古志に体験交流牛舎 中越大震災で倒壊し8頭が犠牲となった旧山古志村の が完成 牛 舎 跡 地 に 、「 牛 の 角 突 き の 闘 牛 」 と 触 れ 合 え る 体 験 交 (長 岡 市 山 古 志 東 竹 沢 ) 流を目的とした新牛舎が9月に完成した。 アルパカ牧場 (長 岡 市 山 古 志 地 区 ) 平 成 21年 11月 、 米 国 コ ロ ラ ド 州 で 牧 場 を 経 営 す る 女 性 から油夫集落にアルパカが寄贈され、地元有志で「アル パカ飼育組合」を設立して管理にあたっている。 ア ル パ カ 牧 場 で は 現 在 17頭 が 飼 育 さ れ て お り 、 多 数 の 観光客が来場する人気スポットとなっている。 ホンモロコの養殖 (長岡市山古志地区) 長 岡 市 の 建 設 業 者 6 社 が 、「 や ま こ し モ ロ コ 組 合 」 を 結成し、ホンモロコの養殖を開始。長岡市内のホテルや 卸売業者等に出荷している。 - 111 - (2) 営農体制の再編と強化 中越大震災で被災程度が大きい166の集落を対象に、県、市町及び農業団体が連携し て生産の組織化等の営農体制づくりの話し合いを支援した。 その結果、72集落で生産組織を設立又は設立に合意し、うち29集落で法人組織が設立 されたほか、84集落で担い手を中心とした生産体制が確立し、組織化に合意した集落 を含めると94%の集落で営農体制が整った。 【中越大震災指導対象166集落の営農体制の整備状況】 (平成23年1月末現在) 区分 集落数 生産組織を設立(合意を含む) 72集落 (うち法人化29集落) 担い手を中心とした生産体制確立 84集落 組織設立に向けた話し合い中 2集落 営農再建の話し合い中※ 8集落 資料:経営普及課調査 ※ 営農再建の話し合いを継続して行ってきているが、これまでの ところ具体的な組織化に至っていない。 また、中越沖地震の被災集落においては、意向調査を踏まえ、担い手の確保や営農体 制の再編に向けた話し合いを進め、合意形成を図るための支援を実施した。 特に被災程度が大きい64集落においては、62集落で営農体制が確立し、残り2集落に おいても営農体制の方向付けができており、組織化に向けた支援を継続している。 【中越沖地震指導対象64集落の営農体制の整備状況】 (平成23年1月末現在) 区分 集落数 生産組織を核とした体制確立 29集落 担い手農家を中心とした営農体制確立 33集落 組織化に向けて検討中 2集落 資料:経営普及課調査 (3) ア 県産材による住宅再建の取組 住宅の再建について 【基金事業による越後杉を使った住宅再建数】 中越大震災による住宅への被害 区分 は121,604棟、中越沖地震によるも H17 392 − の は 43,990棟 に の ぼ り 、 被 災 地 に H18 391 − 甚大な被害を及ぼした。 H19 358 19 住宅復興に際しては、品質・性 H20 233 210 能の明確な建築資材であり、さら H21 261 299 には県産材の利用促進を図る観点 H22 から「越後杉ブランド」を利用し 計 中越大震災 − 中越沖地震 76 1,635 604 た住宅に支援した。 これまでの支援数は、中越大震 災被災地に1,635棟(H17∼21)、中越沖地震被災地では604棟(H19∼22)の計2,239棟と なっている。 - 112 - イ 越後杉の安定供給体制づくり 「越後杉ブランド」を大震災の復興資材として県民から利用してもらうため、森林 ・林業関係者が協働しながら、素材の運搬や、製品の乾燥費を県が一部助成する等安 定供給体制の構築を進めた。 これらの震災対策を契機に「越後杉ブランド」の出荷量が拡大し、平成14年度のブ ランド材認証制度の発足当時は1,000m 3台だったものが、平成21年度には15,392m 3と なり、出荷額は962百万円に達する規模となった。 3 今後の課題 ○ 復興に向けた新たな取組については、異業種も含めて地域内外の連携を強化し、地 域の新たな産業として発展するよう、関係機関が一体となって支援していく必要があ る。 ○ 新規組織の設立や、既に設立した組織の経営体質強化を図るためには、組織のリー ダー育成、農地の集積、新規作物の導入等の取組が必要である。 ○ このため、地元市町等と連携し、地域の実態に即した営農体制の構築や、複合化な ど経営発展に向けた支援を行うとともに、農産物の直接販売や特産化・商品化の取組 等を支援していく必要がある。 ○ 交流人口の一層の拡大を図るため、地域資源を活用したグリーン・ツーリズムや首 都圏住民との「心の絆」でつながる防災グリーンツーリズムの取組等に支援していく 必要がある。 トピックス「新しい日常の創出へ∼中越大震災第三次復興計画策定」 平成16年に発生した中越大震災は、中山間地を襲った未曾有の大災害となり、大規模な 地盤災害からの復興をはじめ、中山間地特有の課題にも直面した。 県では、平成17年に「中越大震災復興計画」を策定し、復旧・復興のステージに合わせ て見直しを加えながら、震災からの復旧・復興を支援してきた。 震災から6年が経過し、被災地では高齢化・過疎化が進んでいるものの、地域住民の努 力や各種行政施策、復興基金による支援等により、これまで復興は概ね順調に進んできた。 22年度は、これまで生まれてきた復興の芽を育み、さらなる発展を目指すために、第三 次の計画の見直しが行われた。 第三次復興計画では、これまでの被災地における持続可能な地域社会づくりへの支援を 継続・定着させるとともに、持続的に地域コミュニティが成り立つ「新しい日常」の創造 を目指して、中山間地域に存在する様々な地域資源を活用し、地域に新たなビジネスの創 出を目指すこととしており、その具体化に向け、検討が開始された。 - 113 - 第5 研究開発の推進 - 115 - 第5 1 研究開発の推進 研究の概要 本県の農林水産関係研究機関には、農業総合研究所(長岡市ほか)、水産海洋研究所(新 潟市ほか)、内水面水産試験場(長岡市ほか)、森林研究所(村上市)があり、本県農林水 産業の持続的な発展と農山漁村の振興に向けて、①産地間競争に打ち勝つ戦略的技術開発、 ②地域ニーズを踏まえた技術開発、③高度先端技術の活用による技術開発を基本として、 以下の研究開発に取り組んでいる。 【平成22年度の主な研究テーマ】 農業部門 ○ 米の品質低下を防止する栽培技術の開発 ○ 水稲晩生新品種の開発 農業総合研究所 計79課題 ○ 「青いユリ」等の新潟県オリジナル品種の育成 ○ 飼料イネを活用した「にいがた和牛」の効率的肥育技 術の開発 ○ 施設園芸の省エネルギー栽培技術の開発 ○ 水稲・野菜の有機栽培技術の体系化 ○ 米粉の消費拡大に係る利用技術の開発 水産業部門 ほか ○ 底魚類(マダラ・マガレイ等)の漁況予報手法の開発 ○ サワラ資源の実態解明と加工利用に関する研究 水産海洋研究所 内水面水産試験場 計38課題 ○ 有用魚介藻類(アカモク、モズク、ナマコ)の増養殖技術の 開発 ○ 省エネ型漁具漁法の開発 ○ 穴あき病に強いニシキゴイの新品種開発 ○ ニジマス異種間交雑魚の実用化試験 ○ ブラックバス等外来魚を駆除する管理技術の開発 林業部門 ほか ○ 県産材・木質バイオマスの生産・利用技術の開発 ○ 森林の多面的機能発揮のための技術開発 森林研究所 計19課題 ○ きのこ・山菜の新品種の開発と低コスト栽培技術の確立 ○ 花粉ができないスギ品種の育成 - 117 - ほか 2 主な研究成果 毎 年、県内 の農業関 係者等 に向けて 、研究成 果を公表 している 。平成22年度の公表成 果は 46件 で、うち 生産現場 等で有 益な実用 技術であ る「普及 技術」は 19件 、現場指導に 利用できる技術である「活用技術」は27件であった。 (1) 農業 【成果名】コシヒカリにおけるアカヒゲホソミドリカスミカメの薬剤防除不要のめやす <開発のねらい> 減農薬栽培の推進とコスト低減を図るため、アカヒゲホソミド リカスミカメの薬剤防除が不要となる(ほぼ確実に斑点米率が0.1% 以下になる)めやすを設定する。 <成果の内容> ・出穂期にフェロモントラップを水田内に設置し、5日後に トラップを回収して虫数を調査する。 ・誘殺数が20頭以下であれば、アカヒゲホソミドリカスミカメ の薬剤防除は不要。 <普及への取組> フェロモントラップはすでに県内に普及しており、減化学農薬栽培の基準として今後の活用 が期待される。 【成果名】いちご「越後姫」の10月出荷開始技術 <開発のねらい> いちご「越後姫」を消費者が求める秋季から供給するため、 10月出荷開始作型を開発する。 <成果の内容> ・定植する前年の10月中下旬に採苗した苗を7月下旬に 12℃で25日間の暗黒低温処理を行う。 ・8月20から25日の間に定植すると、10月中旬に 収穫できる。 <普及への取組> 普及指導機関等を通じ普及を図る。すでに県北地域の一部で栽培されている。 【成果名】 「にいがた地鶏」の母方種鶏の系統変更による増体向上と出荷日齢の短縮 <開発のねらい> 「にいがた地鶏」の高品質な特性を維持したまま、増体量の向上と出荷体重の均一化を図る。 <成果の内容> 「にいがた地鶏」の母方種鶏(横斑プリマスロック)を従 来のXS系統から新しい88系統に変更することにより、 ・地鶏の増体が向上 ・出荷日齢が20日程度短縮可能 ・旨味成分の遊離グルタミン酸量が増加 する。 <普及への取組> 普及指導機関等を通じ、中山間地域等の生産者に普及 を図る。 - 118 - 【成果名】 「こしのめんじまん」を使用した米粉麺の製造法 <開発のねらい> グルテン等のつなぎを使用しない米粉のみで高品質な麺を作る 技術を開発する。 <成果の内容> ・「こしのめんじまん」を澱粉損傷度:1∼7%に粉砕。 ・水分を40∼45%、酸溶解度を45∼50%に調製。 ・押し出し式で製麺すると、伸びにくい、切れにくい、 さばけが良い高品質な米粉麺を製造できる。 <普及への取組> 平成22年4月に特許取得。県内食品企業で実用化。 (2) 水産業 【成果名】低油量乳化による軟らかく滑らかな中間素材の開発 <開発のねらい> 平成18年に開発した嚥下困難者や高齢者向けの水産物中間素材(とろけるお魚)製造技 術を応用し、幅広い年齢層が利用できる低油量で軟らかく滑らかな食感を持つ乳化性食品を 開発する。 <成果の内容> ・魚介類のすり身等を乳化する時に、キサンタンガム(増粘 多糖類)を0.5%添加することで、従来の約1/3の低油 量で軟らかく滑らかな食感を有する中間素材が製造でき る。 <普及への取組> 練り製品業界の研修会等を活用し、技術の普及を図って <とろけるお魚> いる。 【成果名】複数の手法を組み合わせたコクチバスの駆除 <開発のねらい> 水産資源に甚大な被害をおよぼすコクチバスの生息個体数を抑制するために、様々な生活段 階や体サイズのコクチバスを駆除できる手法を開発する。 <成果の内容> ・コクチバスの年齢に応じて、吸引装置による吸い込み法、 電気ショッカーボート、刺し網を使い分けることにより、 コクチバスの効率的な駆除ができる。 ・透明度が1.5m以上のダム湖やため池での駆除が可能。 <普及への取り組み> 内水面漁連やNPO等を通じて、技術の活用をが図られて いる。 - 119 - <電気ショッカーボート> (3) 林業 【成果名】スギ樹皮ペレット製造に適した原料の含水率 <開発のねらい> 産業廃棄物として処理されるスギ樹皮を、木質ペレットと して利用する。 <成果の内容> 原料含水率を15%程度に調整すると、 「木質ペレット品質 規格原案」の含水率・かさ密度・粉化度に適したペレットが 製造できる。 <普及への取り組み> 新潟県主催の「木質ペレット等活用促進に関する意見交換 <スギ樹皮から製造したペレット> 会」で、情報提供している。 トピックス 「コシヒカリ新潟BLシリーズ」の開発で日本育種学会賞受賞 ○作物研究センターではコシヒカリにいもち病抵抗性 遺伝子を導入してコシヒカリBLシリーズを開発し、 これを全県下へ普及した。 ○この成果は今後の稲育種の方向を示す上で重要な取 り組みであり、学会からも高い評価を得て、平成22 年3月に日本育種学会賞を受賞した。 ○このコシヒカリ新潟BLシリーズの普及により、いもち 病に対する農薬散布量は普及前に比べ1/4程度になっ いる。 < コシヒカリBL1号(左)と 従来コシヒカリ> - 120 - にいがた農林水産ビジョン指標項目進捗状況 位置付け 「 政策目標 」→成果指標 施策指標 ビジョン策 左記の 定時 使用年 (H18.3) (度) 直近の実 績 年度 年 目標 (度 達成 ) 率% 目標値 (平成24 年) 実績の 発表 時期 第1 安全・安心で豊かな食の提供 特別栽培農産物等面積(ha) H16年 65,848 (101) H22 55000* 3月 500 H16年度 15,115 (101) H22 16,000 3月 2,200程度 H16年度 2,369 (90) H21 3,000 8月 99 - H20 109 4月 111 - H20 139 4月 8.4 (84) H21 10.3 1月 1,123 (90) H22 2,500 5月 6,259 エコファーマーの確保数 第2 産業として成り立つ魅力ある農林水産業の実現 「担い手の育成」→1経営体当たりの売上額(万円) H16年度 概算値 H15年度 131 確定値 カロリーベース自給率(%) 89 生産額ベース自給率(%) 新潟米の産出額シェア(%) 8.9 H16年 不作付地等を活用した新規需要米等の作付 拡大(ha) − - 116 主にH16 年 135 (97) H21 145 1月 26 H16年 29 (94) H21 37 6月 ブランド農林水産物の産出額(億円) (えだまめ、いちご、西洋なし、ユリ切り花、にいがた和牛、佐渡寒ブリ、南蛮エビ、ヤナ ギガレイ、越後杉ブランド) 越後姫、えだまめ、にいがた和牛の販売額 (億円) 12,613 H17年 113,623 (84) H22 200,000 5月 農地面積 (ha) 177,100 H17年 174,400 (101) H22 170,700 12月 うち水田面積(ha) 157,300 H17年 154,400 (100) H22 152,900 12月 うち畑面積(ha) 19,700 主要県産農産物の輸出額(千円) 畑作可能な水田の割合(水田汎用化率)(%) 40 H17年 19,900 (108) H22 17,800 12月 (100) H20 46 8月 H16年 42 H16年 度 H16年 度 H16年 度 3,551 (90) H21 5,000 8月 3,185 (88) H21 4,500 8月 366 (105) H21 500 8月 経営体数 2,502 うち個別経営体 2,390 うち組織経営体 112 新規就農者数(年間確保数) 187 H16年 245 (88) H22 280 3月 19 H16年 10 (33) H22 30 3月 ※41 H16年 度 22.1 (92) H21 33 8月 89,302 H16年 83,389 - H21 68,530 1月 粗飼料自給率(%) 39 H16年 44 (79) H22 60 4月 間伐整備率(%) 38 H16年 54 (107) H21 52 8月 20.1 H16年 30.3 34.0 4月 新規漁業就業者数(中核的漁業 年間確保 数) 経営体耕地面積シェア(%)※経営体候補 である認定農業者等の面積を含む 水稲生産コスト低減(5ha以上層)(円/10a) 県産材供給率(%) (89) H21 第3 多面的機能を発揮する農山漁村の維持発展 「優れた資源を活かした交流の推進」→ 学童等体験活動参加者数(グリーン・ツーリズム誘客数) 87,418 H16年度 170,838 防災グリーンツーリズムによる交流組織員 数(人) − 中山間地域(直払地域)の稲作生産組織数 239 なりわいの匠の認定 バイオマスの利用量(千t) H16年 − (129) H21 200,000 6月 50,000 6月 - 516 (103) H21 500 6月 2,204 (100) H22 2,400 3月 (100) H22 2,197 2,050 H17年 2,182 63 H17年 69 (96) H22 75 987 H17年 1,061 (93) H22 1,200 2月 (利用率:%) 農村地域生活アドバイザーの認定数 1月 * 特別栽培農産物等面積の24年目標値は今後見直し予定 -121- 平成23年度の基本方針 1 (1) 産業として成り立つ魅力ある農林水産業の展開 水田農業経営の確立による食料自給力の強化 他産業並みの所得が確保できる所得政策の構築に向けた検証を行います。 水田を最大限活用した米粉用米、加工用米等の非主食用米の安定供給体制の構築を推進し ます。 ○ 米粉の需要喚起と米粉ビジネスモデルの創出に向けた拠点整備を推進します。 ○ ○ (2) ○ ○ ○ ○ 6次産業化の推進や企画・販売力の強化等による「儲かる経営体」の育成 生産に加え、加工・流通・販売を取り込んだ農業の6次産業化を推進します。 経営体等への園芸導入対策の強化による複合化を推進します。 東アジア地域等への県産農産物の輸出拡大を推進します。 農産物直売所の販売拡大に向けた情報発信等の取組を推進します。 ○ ○ ○ 「新潟米」のブランド力強化・米王国新潟の復活 米の品質に関する研究会の報告を踏まえた品質向上対策等の強化に取り組みます。 区分集荷・販売によるブランド管理の徹底と付加価値確保の取組を推進します。 温暖化に対応した晩生品種の育成の加速化と育種等の水稲基盤技術研究を強化します。 ○ ○ 園芸・畜産等における「にいがたブランド」の確立 ブランドにふさわしい品質の確保と需要に応じた生産拡大の取組を推進します。 首都圏の実需者とのネットワークを活用した知名度や評価の向上に取り組みます。 (3) (4) (5) 「越後杉ブランド」を中心とした県産材の利用促進 ○ 安定供給体制の整備による県産材の利用促進に取り組みます。 ○ 持続可能な林業経営の構築に向けた取組を強化します。 (6) ○ ○ 適切な資源管理による県産水産物の安定供給 新資源管理(個別漁獲割当)のモデル実施による資源回復効果を検証します。 経営体質の強化と担い手の確保・育成に取り組みます。 ○ ○ 食料供給基地を支える優良農地の確保 農地の整備や水田の排水対策を推進し、経営基盤の強化に向けた農地集積を進めます。 老朽化した農業水利施設の計画的な補修・更新を進め、安定的な用排水機能を確保します。 (7) 2 多面的機能を発揮する農山漁村の維持発展 (1) ○ ○ 地域資源を活用した都市と農山漁村の交流促進 食を通じたグリーン・ツーリズムの推進による交流人口の拡大を図ります。 いざというときに都市住民に安心してきていただける防災グリーンツーリズムの取組を推 進します。 ○ ○ 中山間地域の活性化 企画販売力を有する新規就農者の確保・育成に取り組みます。 広域連携等による営農体制の強化と地域資源を活用したビジネスの拡大等の取組を推進し ます。 (2) (3) ○ ○ 3 住み良い農山漁村環境の確保 農地や農村を浸水被害や地すべり等から守るための取組を推進します。 定住条件の改善に向け、農村地域の快適な生活基盤の充実を図ります。 安全・安心で豊かな食の提供 ○ 消費者に求められる安全・安心な農産物供給体制の整備を推進します。 - 122 - 平成22年度 新潟県の農林水産業 新潟県農林水産部・農地部 住所:〒950-8570 新潟市中央区新光町4-1 電話:025-285-5511(代表) FAX:025-285-9452 http://www.pref.niigata.lg.jp/nogyosomu/index.html