Comments
Description
Transcript
ニホンジカ高密度総則域における森林伐採10年後の埋土種子相 (緑化工
P-20-T ニホンジカ高密度生息域における森林伐採10年後の埋土種子相 ○山瀬 敬太郎 [email protected] 兵庫県立農林水産技術総合センター 結果と考察 背景 ニホンジカ(以下,シカ)の分布域の拡大と生息数の増加. シカ採食により,低木層が衰退(Fujiki et al.2010). 樹木種の実生や稚樹の更新阻害により,林床植生が衰退(Ito& Hino2004, Takatsuki&Gorai 1994). 表土の流出 伐採区域では,残存樹林と比較してA0層 表1. 表土採取場所の傾斜とA0層厚,A層厚の比較. 及びA層が薄く,特に急傾斜地で顕著(表1). ⇒表土が流出. 残存樹林 植生衰退により,土壌侵食が発生(内田ほか2012,山瀬ほか2009). 表層土壌(表土)中に含まれる種子流出(山瀬ほか2009). 遷移初期段階において,植生回復 ポテンシャルの劣化が懸念される 目的 1. 森林伐採後のシカ排除の有無により,約10年経過後に成立した植 2. ・ 藤堂 千景 ・ 柴原 隆 生を比較. 伐採区域の埋土種子相を調査し, シカ生息地における植生回復 ポテンシャルを評価. 伐採区域 シカ排除の有無による成立植生の違い(表2) 排除有:柵設置1年後(2004年)でアカメガシワ,カラスザンショウ,タラノキ,ウバメガシ,ヤマボウシ(K層)など39種, 2013年時点でアカメガシワ(S1),ヒサカキ,ヤブツバキ,ネズミモチ(S2),テイカカズラ(K)など24種が出現. 排除無:2013年時点で,植生残存区の出現種数は3種,ナルトサワギク(K)が高被度で優占(2013年). 表2. シカ排除有(左)と排除無(右)の出現植物の比較. 調査方法 調査地 1) 兵庫県南あわじ市(図1)諭鶴羽山 (標高607.9 m)の南斜面. 2) ヤブニッケイやウバメガシが優占する 常緑広葉樹林. 3) 年平均気温:15.6 ℃ 年平均降水量:1635.1 mm 伐採の時期 ・空中写真の判読(図2)から,2000年 5月29日~2003年4月16日の間に, 伐採されたと推定. 鹿排除区(左)と植生残存区(右).シカ不嗜好性で, 特定外来生物のナルトサワギクが繁茂している. 図1. 調査位置図. 埋土種子相からみた植生回復ポテンシャルの評価 図2. 空中写真(電子国土Web)による伐採時 期の推定. 未伐採区:アカメガシワ,カラスザンショウ,タラノキの発芽多(表3),埋土種子密度29.2個/L,種数13.3種(図4). 植生残存区:ナルトサワギクの発芽が大部分を占める(表3),88.1個/L,5.7種(図4). シカ排除時に多く出現した先駆性樹種は,埋土種子由来. 種子供給源があれば,ウバメガシやヤマボウシの侵入可能性あり. シカ排除しない場合,植生衰退により,土壌侵食が進行し,埋土 種子も流出.⇒植生回復ポテンシャルの劣化が顕著. 表3. 埋土種子の発芽個体数と埋土種子密度,種数. シカ密度 ・諭鶴羽山一帯はシカ密度高く,ほぼ全域が広葉樹林への影響度が顕 著(藤木2013). 図3. シカ目撃効率(2010)と その変化(2006→2010). 図4. 埋土種子密度(上)と種数(下) の比較. 出典:シカ保護管理計画(兵庫県) 植生調査 ・伐採区域に設定した鹿排除区,植生残存区,表土堆積区,表土流出 区と,残存樹林内の未伐採区の計5調査区を設定. ・階層ごとの高さと全植被率,出現種とその被度%を記録. ・2004年11月(鹿排除区のみ)と2013年11月のデータ比較. 埋土種子量の測定 ・伐採区域の植生残存区,表土堆積区, 表土流出区と,残存樹林の未伐採区の 計4調査区を対象. ・20 cm☓20 cm,深さ5 cmの表土(リター を除く)を,3地点/1調査区から,2013年 5月29日に採取. 実生出現法(浜田・倉本 ・発芽個体の種名と個数を,表土採取地 1994)による発芽試験. 点ごとに記録. 結論 1. シカ対策を実施しないと,不嗜好性植物が 優占する単純な群落が成立. 2. 対策が遅れると,植生回復に時間がかかる, あるいは十分に回復しない. 3. 確実かつ安価に,伐採前の植生を回復させる には,早い段階での対策の実施が重要. 広葉樹植栽 木柵工