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少なくとも1つのマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸含有
JP 2007-505906 A 2007.3.15 (57)【 要 約 】 少なくとも1つのマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸含有眼用溶液は 、抗炎症作用、抗細胞増殖作用、抗細胞遊走作用、抗血管新生作用、抗菌作用、及び抗真 菌作用をもたらす。該溶液は、白内障手術後で代用眼内レンズの挿入前に、眼内投与され る。本溶液は、例えば、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、シクロスポリン、及 びアスコマイシン等のマクロライド系抗生物質、又はミコフェノール酸の少なくとも1つ を含む灌流液、又は体積置換液として侵襲的投与される。本溶液は、滴、軟膏、ゲル、ク リーム等として非侵襲的すなわち局所投与され、かつ、眼潤滑薬及びコンタクトレンズ溶 液を含む。本溶液は、治療量超過濃度の作用物質を含むため、疾病の治療に十分な局所投 与溶液の治療濃度で眼の病変組織内に蓄積する。該作用物質は、持続放出すなわち徐放す るためにポリマー又は他の成分と配合され、治癒期間中ほぼ一定の濃度で提供される。 【選択図】なし 10 (2) JP 2007-505906 A 2007.3.15 【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも1つのマクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸を約1ng/ml∼約 200μg/mlの濃度で含む眼内投与用溶液を、眼液又は手術液の代用として含むこと を特徴とする組成物。 【請求項2】 前記マクロライド系抗生物質は、濃度が約1μg/mlである請求項1に記載の組成物 。 【請求項3】 前記マクロライド系抗生物質は、濃度が約1μg/ml∼約20μg/mlである請求 10 項1に記載の組成物。 【請求項4】 前記マクロライド系抗生物質は、濃度が約20μg/ml∼約200μg/mlである 請求項1に記載の組成物。 【請求項5】 前記溶液は、灌流液、体積置換液、及び洗浄液から選択される少なくとも1つである請 求項1に記載の組成物。 【請求項6】 前記マクロライド系抗生物質は、タクロリムス、シクロスポリン、シロリムス、エベロ リムス、アスコマイシン、エリスロマイシンアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ク 20 リンダマイシン、リンコマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン 、ジアセチル−ミデカマイシン、チロシン、ロキシスロマイシン、ABT−773、テリ スロマイシン、ロイコマイシン、及びリンコサミドの少なくとも1つである請求項1に記 載の組成物。 【請求項7】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、マイクロカプセル、マイクロス フェア、微小胞、及びリポソームの少なくとも1つとして製剤される請求項1に記載の組 成物。 【請求項8】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、調製された眼用溶液に提供され 30 る請求項1に記載の組成物。 【請求項9】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、眼用溶液の作製時に提供される 請求項1に記載の組成物。 【請求項10】 治療方法であって、 眼用溶液を患者の眼へ提供する工程 を含み、前記眼用溶液は、 少なくとも1つのマクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸を約1ng/ml∼約 200μg/mlの濃度で含んで治療効果を与えることを特徴とする治療方法。 40 【請求項11】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、抗炎症作用、抗細胞増殖作用、 抗細胞遊走作用、抗血管新生作用、抗菌作用、及び抗真菌作用の少なくとも1つを提供す る請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、眼内圧を上昇させずに抗炎症作 用を提供する請求項10に記載の方法。 【請求項13】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、眼に腫瘍がある患者、糖尿病患 者、又は鎌状赤血球貧血患者に抗血管新生作用を提供する請求項10に記載の方法。 50 (3) JP 2007-505906 A 2007.3.15 【請求項14】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、濃度が約1μg/mlである請 求項10に記載の方法。 【請求項15】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、濃度が約1ng/ml∼約20 μg/mlである請求項10に記載の方法。 【請求項16】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、濃度が約20μg/ml∼約2 00μg/mlである請求項10に記載の方法。 【請求項17】 10 治療方法であって、 眼用溶液を、白内障手術中の患者に対して代用眼内レンズを挿入する前に水晶体嚢内へ 眼内投与する工程を含み、 該眼用溶液は、少なくとも1つのマクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸を約2 0μg/ml∼約200μg/mlの濃度で含むことを特徴とする治療方法。 【請求項18】 前記溶液は、後嚢の混濁を緩和する請求項17に記載の方法。 【請求項19】 前記マクロライド系抗生物質は、リポソーム、マクロスフェア、マイクロスフェア、マ クロカプセル、マイクロカプセル、大型小胞(macrovesicle)及び微小胞の 20 少なくとも1つとして製剤される請求項17に記載の方法。 【請求項20】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、濃度が約20μg/ml∼約2 00μg/mlである請求項17に記載の方法。 【請求項21】 前記マクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸は、前記嚢内に注入される請求項1 9に記載の方法。 【請求項22】 抗細胞増殖作用、抗細胞遊走作用、抗炎症作用、抗血管新生作用、抗菌作用、及び抗真 菌作用から選択される少なくとも1つをレンズに提供するのに十分な濃度のマクロライド 30 系抗生物質又はミコフェノール酸を含む溶液内に、眼用移植レンズを含むことを特徴とす る物品。 【請求項23】 少なくとも1つのマクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸を含有する眼用移植レ ンズを含むことを特徴とする物品。 【請求項24】 前記抗生物質又はミコフェノール酸は、前記レンズが収容される溶液内に存在する請求 項23に記載の物品。 【請求項25】 前記レンズは多孔質ヒドロゲルであり、該ヒドロゲルレンズの孔内に抗生物質又はミコ 40 フェノール酸が存在する請求項23に記載の物品。 【請求項26】 前記抗生物質又はミコフェノール酸は、少なくとも1つのレンズ面上の被覆内に存在す る請求項23に記載の物品。 【請求項27】 前記レンズは、水晶体嚢内に移植され、該移植されたレンズは該水晶体嚢内で前記抗生 物質又はミコフェノール酸を放出する請求項23に記載の物品。 【請求項28】 物品であって、 眼科的に許容される媒体内に眼用移植レンズ 50 (4) JP 2007-505906 A 2007.3.15 を含み、 該媒体は、少なくとも1つのマクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸を、抗細胞 増殖又は抗細胞遊走に効果的な濃度で更に含むことを特徴とする物品。 【請求項29】 前 記 濃 度 が 、 約 2 0 μ g / m l ∼ 約 2 ,0 0 0 μ g / m l で あ る 請 求 項 2 2 又 は 2 8 の いずれかに記載の物品。 【請求項30】 前 記 濃 度 が 、 約 2 0 0 μ g / m l ∼ 約 2 ,0 0 0 μ g / m l で あ る 請 求 項 2 2 又 は 2 8 のいずれかに記載の物品。 【請求項31】 10 前記濃度が、約20μg/ml∼約200μg/mlである請求項22又は28のいず れかに記載の物品。 【請求項32】 前記マクロライド系抗生物質は、タクロリムス、シクロスポリン、シロリムス、エベロ リムス、アスコマイシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、 クリンダマイシン、リンコマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシ ン、ジアセチル−ミデカマイシン、チロシン、ロキシスロマイシン、ABT−773、テ リスロマイシン、ロイコマイシン、及びリンコサミドの少なくとも1つである請求項22 、23又は28のいずれかに記載の物品。 【請求項33】 20 患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法であって、 薬学的に許容される局所製剤中にマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸 を 約 0 .5 % w / w ∼約10% w / w の濃度で含む組成物を、該マクロライド系抗生物質 及び/又はミコフェノール酸が病変組織内において眼疾患の治療に十分な濃度に達する期 間、患者へ局所投与する工程を含むことを特徴とする患者の眼疾患を治療する非侵襲的方 法。 【請求項34】 前記眼の病変組織は、脈絡膜、網膜、又はブドウ膜の少なくとも1つである請求項33 に記載の方法。 【請求項35】 30 前記マクロライド系抗生物質は、タクロリムス、シクロスポリンA、シロリムス、アス コマイシン、及びエベロリムスから選択される少なくとも1つである請求項33に記載の 方法。 【請求項36】 前記マクロライド系抗生物質は、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマ イシン、リンコマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、ジアセ チル−ミデカマイシン、チロシン、トロレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、ABT −773、テリスロマイシン、マクロライド系のロイコマイシン、及びリンコサミドから 選択される少なくとも1つである請求項33に記載の方法。 【請求項37】 40 前記組成物は、持続放出性製剤である請求項33に記載の方法。 【請求項38】 前記組成物は、コンタクトレンズ又は眼内レンズ上に提供される請求項37に記載の方 法。 【請求項39】 前記組成物は、ポリマー、マイクロカプセル、マイクロスフェア、微小胞、及びリポソ ームの少なくとも1つとして製剤される請求項33に記載の方法。 【請求項40】 網膜症、網膜色素変性、加齢性黄斑変性、強膜炎、ブドウ膜炎、脈管炎、網膜芽細胞腫 、脈絡膜黒色腫、結膜悪性黒色腫の前癌状態、及び結膜悪性黒色腫の少なくとも1つを治 50 (5) JP 2007-505906 A 2007.3.15 療するための請求項33に記載の方法。 【請求項41】 眼の粘膜面、又は結膜の少なくとも1つに投与するための請求項33に記載の方法。 【請求項42】 前 記 マ ク ロ ラ イ ド 系 抗 生 物 質 及 び / 又 は ミ コ フ ェ ノ ー ル 酸 の 濃 度 は 、 約 0 .5 % ∼約3% % w / v w / v 、約3% ∼約10% w / v w / v ∼約5% w / v 、約5% w / v ∼約10% w / v w / v 又は約3 の少なくとも1つである請求項33に記載の方法。 【請求項43】 前記組成物は、シクロオキシゲナーゼ阻害薬を更に含む加齢性黄斑変性を治療するため の請求項33に記載の方法。 10 【請求項44】 患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法であって、 薬 学 的 に 許 容 さ れ る 製 剤 中 0 .5 % w / v ∼約10% w / v の濃度のタクロリムスから 本質的になる組成物を、眼内組織内において組織の治療に十分な濃度に達する期間、眼へ 局所投与する工程 を含むことを特徴とする患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法。 【請求項45】 患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法であって、 薬 学 的 に 許 容 さ れ る 製 剤 中 0 .5 % w / v ∼約10% w / v の濃度のシクロスポリンA から本質的になる組成物を、眼内組織内において組織の治療に十分な濃度に達する期間、 20 眼へ局所投与する工程 を含むことを特徴とする患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法。 【請求項46】 患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法であって、 薬 学 的 に 許 容 さ れ る 製 剤 中 0 .5 % w / v ∼約10% w / v の濃度のシロリムスから本 質的になる組成物を、眼内組織内において組織の治療に十分な濃度に達する期間、眼へ局 所投与する工程 を含むことを特徴とする患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法。 【請求項47】 患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法であって、 薬 学 的 に 許 容 さ れ る 製 剤 中 0 .5 % w / v ∼約10% 30 w / v の濃度のアスコマイシンか ら本質的になる組成物を、眼内組織内において組織の治療に十分な濃度に達する期間、眼 へ局所投与する工程 を含むことを特徴とする患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法。 【請求項48】 患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法であって、 薬 学 的 に 許 容 さ れ る 製 剤 中 0 .5 % w / v ∼約10% w / v の濃度のエベロリムスから 本質的になる組成物を、眼内組織内において組織の治療に十分な濃度に達する期間、眼へ 局所投与する工程 を含むことを特徴とする患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法。 40 【請求項49】 網膜症、網膜色素変性、加齢性黄斑変性、ブドウ膜炎、脈管炎、網膜芽細胞腫、脈絡膜 黒色腫、結膜悪性黒色腫の前癌状態、及び結膜悪性黒色腫の少なくとも1つを治療するた めの請求項44、45、46、47又は48のいずれかに記載の方法。 【請求項50】 眼用局所組成物であって、 薬学的に許容される徐放性の眼用局所製剤中に、 少 な く と も 1 つ の 約 0 .5 % w / v ∼約10% w / v 濃度のマクロライド系抗生物質及 び/又はミコフェノール酸と、ポリマー、リポソーム、マイクロカプセル、及びマイクロ フェアの少なくとも一つと 50 (6) JP 2007-505906 A 2007.3.15 を含むことを特徴とする眼用局所組成物。 【請求項51】 前記マクロライド系抗生物質は、タクロリムス、シクロスポリン、シロリムス、エベロ リムス、アスコマイシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、 クリンダマイシン、リンコマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシ ン、ジアセチル−ミデカマイシン、チロシン、ロキシスロマイシン、ABT−773、テ リスロマイシン、ロイコマイシン、及びリンコサミドの少なくとも1つである請求項50 に記載の組成物。 【請求項52】 コンタクトレンズ又は眼内レンズと一緒に提供される請求項50に記載の組成物。 10 【請求項53】 前記組成物は、レンズ表面上に存在する請求項52に記載の組成物。 【請求項54】 前記組成物は、多孔質レンズの孔に含有される請求項52に記載の組成物。 【請求項55】 シクロオキシゲナーゼ阻害薬、又は化学療法薬の少なくとも1つを更に含む請求項50 に記載の組成物。 【請求項56】 物品であって、 眼内レンズ 20 を含み、該眼内レンズは、少なくとも1つのマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェ ノール酸の濃度を製剤中に含み、約40μg/mlを超えない眼内濃度で該レンズから該 マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸が徐放されることを特徴とする物品 。 【請求項57】 前記マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸の眼内濃度は、約10μg/ ml∼約30μg/mlである請求項56に記載の物品。 【請求項58】 前記レンズはコンタクトレンズ又は眼内レンズである請求項56に記載の物品。 【請求項59】 30 糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、又は網膜色素変性を患う患者の眼疾患を治療する非 侵襲的方法であって、 薬学的に許容される局所製剤中にマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸 を 約 0 .1 % w / w ∼約10% w / w の濃度で含む組成物を、該クロライド系抗生物質及 び/又はミコフェノール酸が眼の病変組織内において眼疾患の治療に十分な濃度に達する 期間、患者へ局所投与する工程を含むことを特徴とする糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性 、又は網膜色素変性を患う患者の眼疾患を治療する非侵襲的方法。 【請求項60】 前記マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸は、徐放するように製剤され る請求項59に記載の方法。 40 【請求項61】 前記マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸は、コンタクトレンズ又は眼 内レンズと一緒に提供される請求項59に記載の方法。 【請求項62】 前記組成物は、少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ阻害薬を更に含む請求項59に 記載の方法。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本願は米国出願番号10/667,161出願日2003年9月19日の一部継続出願 50 (7) JP 2007-505906 A 2007.3.15 であり、参照することによりその全体を本願に明示的に援用する。 【0002】 本発明は、抗炎症薬及び他の有益な薬効を提供するマクロライド系抗生物質を含む眼用 溶液を対象とする。 【背景技術】 【0003】 眼は、元来、その内部及び外部が眼液に浸されている。眼の外部は涙液(涙)により潤 滑される。眼の内部は、液体を含む2つの房を有する。前房は房水すなわち水を含み、後 房は硝子体液すなわち硝子体を含む。 【0004】 10 様々な状態が、液体を眼の中に又は眼の表面上に注入することによる自然分泌液体の置 換又は補給の必要を要求する。自然分泌眼液の損失は、正常老化、病態、外科的介入等に よるものであると考えられる。例えば、眼の手術中に硝子体を取り除くことは多く、これ を置き換えなければならない。硝子体切除中に取り除かれた硝子体を置換するために注入 することで球体形状を維持する灌流液等、市販の灌流液が硝子体の一部又は全部の置換に 多用されている。これらの溶液の組成物及び他の特性は、患者の手術結果に影響を与え得 る。例えば、灌流液は、角膜及びレンズの透明度に影響を与え、視力の低下を招き得る。 更に、灌流液の成分は、硝子体切除術中の角膜の隆起に影響を与え得る。眼乾燥症等の他 の状態では、外部の潤滑が低減し、これを軽減するための点眼剤等の局所溶液が多用され る。洗浄液は眼の外面から異物を除去するために局所的に使用され、手術中には、角膜及 20 び他の組織を洗浄するために侵襲的に使用される。 【0005】 眼用溶液は、眼に注入するため及び/又は局所適用するために、改善した特性を有する ことが望ましい。本発明は、そのような組成物及び該組成物の使用方法を示す。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 眼内の灌流、洗浄の代用、又は体積置換液を開示する。この溶液は、濃度が約1ng/ ml∼約200μg/mlのマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸を含む 。これにより、術野における炎症の緩和(抗炎症作用)、細胞遊走及び細胞増殖の抑制( 30 抗増殖及び抗遊走作用)、眼の腫瘍部位における新生血管の増殖の抑制(抗血管新生作用 ) 、 バ ク テ リ ア 、 真 菌 等 の 増 殖 の 低 減 ( 抗 菌 及 び 抗 真 菌 作 用 )等 の 有 益 な 特 性 が 提 供 さ れ る。抗炎症作用は、眼の炎症を抑制するためにステロイドを投与する場合に起こり得る眼 内圧の上昇を引き起こさずに生じることが好ましい。そのような組成物は、白内障手術、 網膜治療等の眼の手術を受けている患者に使用可能である。 【0007】 マクロライド及び/又はミコフェノール酸は、市販の眼用溶液に添加可能、又は眼用溶 液に配合可能である。マクロライド系抗生物質としては、タクロリムス、シクロスポリン 、シロリムス、エベロリムス、アスコマイシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、 クラリスロマイシン、クリンダマイシン、リンコマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマ 40 イシン、スピラマイシン、ジアセチル−ミデカマイシン、チロシン、ロキシスロマイシン 、ABT−773、テリスロマイシン、ロイコマイシン、及びリンコサミドが挙げられる 。マクロライド系抗生物質は、不活性マトリックス、カプセル、リポソーム等に製剤可能 である。マクロライド系抗生物質は、眼の特定部位内(例えば、水晶体嚢内)に挿入、注 入、移植可能であり、あるいは、手術野をきれいに、すなわち洗浄するために一般的に使 用可能である。 【課題を解決するための手段】 【0008】 一実施形態において、本発明の眼用組成物は、白内障手術中の患者に対して投与される 。マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸を約20μg/ml∼約200μ 50 (8) g / m l ( 約 0 .0 0 2 % W / V ∼ 約 0 .0 2 % JP 2007-505906 A 2007.3.15 W / V )の濃度で含む該溶液は、病変した 水晶体を除去した後及び代用レンズを挿入する前に、水晶体嚢内に注入される。他の実施 形態において、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸のマイクロスフェア すなわちマイクロカプセルは、嚢内に移植可能である。これは、白内障手術後の一般的な 問題である、後嚢の混濁を緩和するために使用可能である。 【0009】 少なくとも1つのマクロライド系抗生物質又はミコフェノール酸を保持する移植レンズ も開示する。このシステムにより、白内障手術中の患者に対して、マクロライド系抗生物 質及び/又はミコフェノール酸をある濃度で含む外科移植可能な代用レンズの提供が可能 となる。該レンズが患者の眼の水晶体嚢内に移植されると、抗生物質又はミコフェノール 10 酸が放出され、嚢に治療効果(例えば、細胞増殖作用、抗炎症作用等)がもたらされる。 【0010】 他の実施形態において、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸を治療量 超過濃度に含む眼用溶液が局所投与される。局所投与された組成物は、脈絡膜、網膜、又 はブドウ膜等の眼組織内に蓄積され、それらの組織に影響する眼病状の治療に効果的な濃 度となる。該病状としては、糖尿病性網膜症、網膜色素変性、加齢性黄斑変性、強膜炎、 ブドウ膜炎、脈管炎、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、結膜悪性黒色腫の前癌状態、及び結 膜悪性黒色腫などが挙げられる。 【0011】 他の実施形態において、治療量超過濃度のマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェ 20 ノール酸が、除放出性製剤でコンタクトレンズ又は眼内器具に適用される。該作用物質は 、最大約40μg/mlの眼内最高濃度となるように放出されるように製剤される。 本発明のこれら及び他の利点は、以下の図及び詳細な説明に鑑みて明らかになる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 1つ以上のマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸を含む眼用溶液を開示 する。該眼用溶液はいずれも、生理学的に適合可能な眼用溶液である。該眼用溶液は、外 部(例えば、結膜表面等への局所投与)又は内部(例えば、侵襲的投与)に使用される。 【0013】 眼用溶液は、眼手術後の患者に投与されることが多く、これらの溶液内のマクロライド 30 系抗生物質は、術後回復の一助となる抗炎症作用をもたらすことが好ましい。更に、マク ロライド系抗生物質は、手術後の患者に対する炎症を抑制するためのステロイド投与にし ばしば伴う眼内圧の上昇を引き起こさずに、これら抗炎症作用をもたらす。 【0014】 また、マクロライド系抗生物質は、細胞増殖及び細胞遊走を減少可能である。これによ り、治癒過程が促進し、また、新生血管の増殖及び/又は発達を阻止する抗血管新生効果 がもたらされる。一例として、新生血管の増殖抑制は、腫瘍細胞の増殖を抑制する一つの 方法であり、眼用溶液中のマクロライド系抗生物質は、眼の新生物すなわち腫瘍の抑制に 有用である。他の例として、該溶液は抗血管新生効果が望まれる、ある種の癌、糖尿病性 網膜症、及び鎌状赤血球網膜症等の異常な血管形成を特徴とする疾病を患う患者に使用さ 40 れ得る。マクロライド系抗生物質は、また、眼用溶液に対して抗菌性及び抗真菌性をもた らす。 【0015】 マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸は、眼疾患治療を強化するために 使用され得る。強化は概してこれらの疾患の治療として定義される。治療は疾患の完全治 癒に制限されず、病徴、発病、経過、期間、重症度等を軽減又は緩和する結果に向かう強 化又は改善を含むように広く定義される。マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノ ール酸の本発明の使用方法は、眼の悪性疾患治療用の化学療法薬、及び炎症を軽減するた めのシクロオキシゲナーゼ阻害薬等の他の作用物質と併用してもよい。急性及び慢性眼疾 患は、どちらも本発明の方法及び組成物により治療され、急性及び慢性眼疾患としては、 50 (9) JP 2007-505906 A 2007.3.15 網膜色素変性、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、強膜炎、ブドウ膜炎、及び脈管炎が挙 げられる。網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、結膜悪性黒色腫の前癌状態、及び結膜悪性黒色 腫等の眼癌もまた、本発明の方法及び組成物により治療される。 【0016】 本発明の組成物は、真溶液の物理的形状である必要はなく、代わりに、懸濁液、乳濁液 、ゲル等であり得ることは当然である。本発明の組成物は、また、高分子組成物、マイク ロスフェア、微小胞、マイクロカプセル、及び/又はリポソーム形態のマクロライド系抗 生物質及び/又はミコフェノール酸も含む。更に、局所適用のための眼用溶液は、上記の いずれかの形態はもちろん、軟膏、クリーム、ローション等の形態であってもよい。した がって、「溶液、液」という用語を便宜上使用するが、他の物理的状態も含む。当然のこ 10 とながら、マクロライド系抗生物質は、眼用溶液を調製するための製剤に含まれてもよく 、あるいは、既に調製された眼用溶液に対して乾燥形態、若しくは濃縮形態で加えられて もよい。 【0017】 眼用溶液は、眼の手術中に眼内灌流液として及び/又は体積置換液として使用し得る。 よって、眼用溶液は、眼の手術中に使用される、硝子体等の眼液の代用及び/又は市販の 灌流液の代用となる。眼用溶液は、また、局所的に使用することも可能であるため、点眼 剤、眼洗浄液、及びコンタクトレンズ液も網羅する。眼用溶液は、OTC販売されている 局所適用用眼用溶液、例えば、人工涙液又は潤滑液等の眼用溶液に使用してもよい。市販 されている眼用潤滑液の1つとして、Viva−Drops ( R ) (Vision Ph 20 armaceuticals,Inc.サウスダコタ州ミッチェル)がある。本発明は、 この特定の実施形態を含むが、これに限定されない。 【0018】 一実施形態において、眼用溶液は少なくとも1つのマクロライド系抗生物質及び/又は ミコフェノール酸を含み、眼内投与に使用される。眼内投与は、局所投与経路と比べると 侵襲的な投与経路である。本実施形態において、マクロライド系抗生物質を含む眼用溶液 は、灌流液、体積置換液、及び/又は洗浄液であり得る。 【0019】 他の実施形態において、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸含有眼用 溶液は、脈絡膜、網膜、及びブドウ膜等の眼の他の領域の疾患を治療するために、例えば 30 、結膜又は瞼の粘膜面上に局所投与される。局所投与では、眼内組織内において、これら の化合物を薬効が現れる高濃度にすることはできないと考えられていたため、該化合物の 投与は、以前までは全身経路又は侵襲的経路に限定されていた。しかし、眼内組織内に局 所投与されたマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸の治療上有効な濃度は 、病変組織内が治療濃度に達する期間、治療量超過濃度に局所投与することにより達成し 得る。 【0020】 いかなる理論的制約にもとらわれずに、この治療濃度が局所投与により達成できる理由 の1つは、脂質に対して抗生物質及び/又はミコフェノール酸が構造的親和性を有するた め、脈絡膜、網膜等の脂溶性領域に蓄積するからである。意外にも、局所投与された組成 40 物は、眼内注射又は全身投与等の侵襲的方法必要とせずに、これらの組織に影響を及ぼす 病状の治療に使用可能である。病状の例としては、糖尿病性網膜症を含む網膜症、網膜色 素変性、加齢性黄斑変性、強膜炎、ブドウ膜炎、脈管炎、並びに網膜芽細胞腫、脈絡膜黒 色腫、結膜悪性黒色腫の前癌状態及び結膜悪性黒色腫等の眼に影響を与える癌疾患が挙げ られるが、これらに限定はされない。網膜芽細胞腫は、網膜の悪性腫瘍であり、一般的に 6歳未満の子供が罹る。脈絡膜黒色腫は、脈絡膜の色素沈着した細胞の悪性腫瘍である。 結膜の黒色腫は、異型性を伴う若しくは伴わない原発性後天性メラノーシス(PAM)、 すなわち結膜黒色腫に分類される。眼癌をマクロライド系抗生物質/ミコフェノール酸で 治療すれば、抗血管新生効果がもたらされ、それにより、好ましくは、腫瘍への血液供給 が減少される。そのような治療は、特定の放射線療法及び/又は化学療法薬の効果を増大 50 (10) JP 2007-505906 A 2007.3.15 又は高め得る。例えば、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸は、局所的 化学療法の点眼剤においては、徐放性を提供するポリマー形態で、カルボプラチン、シス プラチン、メトトレキサート等に加えられる。糖尿病性網膜症、網膜色素変性、及び加齢 性黄斑変性等の疾患は、一般的に慢性であるため治療が長引くが、一方で、強膜炎、ブド ウ膜炎、及び脈管炎等の疾患は急性であり、短期間、すなわち罹患中に治療される。本発 明は、以下に説明するように、両方の種類の治療を含む。 【0021】 局所投与された組成物は、脈絡膜、網膜、及びブドウ膜等の組織に達するために結膜及 び強膜等の眼組織を通過しなければならない。組成物が通過する際、活性物質の自然勾配 が眼の中で形成され得る。強膜等の組織は、活性物質の貯蔵所すなわち集積所として機能 10 するため、活性物質は徐放される。よって、局所投与は以下に記載される徐放性の製剤に 類似する結果を提供し得る。このような製剤は、投与又は投薬の頻度を減少することが好 ましい。例えば、本発明の方法で治療される患者は、既に視力が低下しており、眼に薬を 局所投与することが困難である及び/又は不快である可能性がある。投与頻度を減らすと 、組成物の治療用量を提供しつつ、服薬順守が高まる。 【0022】 一実施形態において、薬学的に許容される局所投与溶液中のマクロライド系抗生物質及 び / 又 は ミ コ フ ェ ノ ー ル 酸 の 濃 度 は 、 約 0 .5 % w / v ∼約10% w / v である。他の実 施形態において、薬学的に許容される局所投与溶液中のマクロライド系抗生物質及び/又 はミコフェノール酸の濃度は、約3% w / v ∼約5% w / v である。他の実施形態におい 20 て、薬学的に許容される局所投与溶液中のマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノ ール酸の濃度は、約1% w / v ∼約3% w / v である。他の実施形態において、薬学的に 許容される局所投与溶液中のマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸は、約 3% w / v ∼約10% w / v である。他の実施形態において、糖尿病性網膜症、加齢性黄 斑変性、又は網膜色素変性を治療するための眼用局所製剤中のマクロライド系抗生物質及 び / 又 は ミ コ フ ェ ノ ー ル 酸 の 濃 度 は 、 約 0 .1 % ∼ 約 1 0 % で あ る 。 他 の 実 施 形 態 に お い て、化合物が、長期にわたり該化合物を徐放するマトリックス又はポリマーに結合する場 合、後述するように、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸は、眼内の濃 度が40μg/mlを超えない範囲において、上限約2%、上限約5%、上限約10%又 は10%を超えた濃度で製剤されて局所投与される。上記のいずれかの実施形態において 30 、患者は、一般的に、罹患中に1日1回∼1日数回程度、定期的に該溶液を投与するよう 指示される。一実施形態において、組成物は毎日就寝前に投与される。慢性疾患を患う患 者は長年にわたり継続治療を必要とすることは当然である。 【0023】 本発明の組成物は、眼用の生理灌流液中で使用し得る。一例として、塩化ナトリウム0 .6 4 % / m l 、 塩 化 カ リ ウ ム 0 .0 7 5 % / m l 、 塩 化 カ ル シ ウ ム 0 .0 4 8 % / m l 、 塩 化 マ グ ネ シ ウ ム 0 .0 3 % / m l 、 酢 酸 ナ ト リ ウ ム 0 .3 9 % / m l 及 び ク エ ン 酸 ナ ト リ ム 二 水 和 物 0 .1 7 % / m l 、 並 び に 、 p H 調 整 用 水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 及 び / 又 は 塩 化 水 素 酸及び注入用の水を含む緩衝塩類溶液(BSS ( R ) Alcon Laborator ies、南アフリカ ランドブルグ)が挙げられる。他の例は、Ocular Irri gation Solution ( R ) 40 (アラガン(株)、カリフォルニア州アーバイン )で あ る 。 他 の 例 は 、 ラ ク ト リ ン ゲ ル 液 で あ る 。 他 の 例 は 、 生 理 食 塩 水 で あ る 。 他 の 例 は 、 重 炭 酸 ナ ト リ ウ ム で p H 7 .4 に 調 整 し た 生 理 食 塩 水 で あ る 。 【0024】 本発明の組成物は、また、眼用置換液にも使用され得る。例えば、後房に注入されて、 網膜疾患の治療(硝子体切除術)中に取り除かれた硝子体と置き換えられる。 【0025】 本発明の組成物は、また、白内障手術中に水晶体嚢に注入され得る。混濁、及び変色し た水晶体は白内障と称され、視力を低下させる原因となり、治療として水晶体を摘出する 必要がある。白内障手術は、通常、嚢内の病変した水晶体の水晶体超音波乳化吸引、乳化 50 (11) JP 2007-505906 A 2007.3.15 物質の吸引、洗浄、及び嚢内への置換用眼内レンズ(IOL)の挿入を伴う。 【0026】 白内障手術後に、再び視力を減退させる後嚢の混濁がしばしば起こる。後嚢混濁を最小 限にするための手術法の成功率は変動的であり、白内障手術中の患者には、続いて起こる 嚢混濁を治癒するためのさらなる処置が必要とされる。 【0027】 IOL挿入術の厄介な問題は、術後の混濁化である。これは、後嚢の周りを遊走する水 晶体上皮細胞(LEC)により起こり、また、IOL視嚢と後嚢とが最大限に接触しない ために生じ得る。小児白内障を治療した子供においては、IOL挿入術後に無傷の後嚢を 残すことで、二次的な白内障の形成及び重度の視軸混濁(VAO)が生じやすくなる。こ 10 れには、通常、小児のIOL手術中に、VAOを防ぐための手術と、はっきりした視軸を 維持するための前部硝子体切除術を必要とする。よって、白内障手術後の細胞遊走及び/ 又は細胞増殖の程度を縮小することが望ましい。 【0028】 本発明の本実施形態において、少なくとも1つのマクロライド系抗生物質及び/又はミ コフェノール酸を含む灌流液又は体積置換液は、代用水晶体と一緒に、又は代用水晶体の 挿入前に嚢内に投与される。いかなる理論的制約にもとらわれずに、マクロライド系抗生 物質及び/又はミコフェノール酸は、眼の細胞増殖及び細胞遊走に対する抑制効果により 、後嚢混濁及び視軸混濁を軽減する。 【0029】 20 マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸は、また、眼の外面に装着するコ ンタクトレンズ、又は患者の眼内に移植するレンズ等の器具にも提供される。移植レンズ は 、 ボ シ ュ ロ ム ( 株 ) (ニ ュ ー ヨ ー ク 州 ロ チ ェ ス タ ー )、 ア ル コ ン ( 株 ) ( テ キ サ ス 州 フ ォ ートワース)、アラガン(株)(カリフォルニア州アーバイン)、及びAdvanced Medical Optics(カリフォルニア州サンタアナ)製の、白内障手術後の 患者の病変した水晶体置換用に使用されるIOLが挙げられるが、これらに限定されない 。このシステムは、外科的移植可能な治療上の代用レンズを患者に提供する。このレンズ が水晶体嚢内に移植される場合、抗生物質及び/又はミコフェノール酸は眼に治療効果( 例えば、抗細胞増殖作用、抗炎症作用等)をもたらす。 【0030】 30 嚢内のマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸の濃度が、上記の治療効果 を 達 成 す る た め に 提 供 さ れ る 。 一 実 施 形 態 に お い て 、 濃 度 は 約 2 0 μ g / m l ( 約 0 .0 02% w / v ) ∼ 約 2 ,0 0 0 μ g / m l ( 約 0 .2 % い て 、 濃 度 は 約 2 0 0 μ g / m l ( 約 0 .0 2 % .2 % w / v w / v w / v w / v )である。他の実施形態にお ) ∼ 約 2 ,0 0 0 μ g / m l ( 約 0 ) で あ る 。 他 の 実 施 形 態 に お い て 、 濃 度 は 約 2 0 μ g / m l ( 約 0 .0 0 2 % ) ∼ 約 2 0 0 μ g / m l ( 約 0 .0 2 % w / v )である。 【0031】 他の実施形態において、IOL又は器具は、眼内の濃度が常に約40μg/mlを超え ないように製剤された、上限2% v / w までの濃度のマクロライド系抗生物質及び/又は ミコフェノール酸を含む。例えば、活性物質の眼内濃度は常に、約10μg/ml∼約3 40 0μg/mlである。そのような製剤方法は、当業者には公知であり、以下に記載される 徐放性の製剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。 【0032】 コンタクトレンズ又はIOLは、疎水性又は親水性材料からなる。材料の種類が、レン ズが硬質で折り曲げることが出来ず、挿入するために大きな切開を必要とするか、あるい は、レンズが小さな切開を介して挿入するために、筒状にしたり、圧縮したり、又は折り 曲げられるように柔軟性を有するかどうかを決定する。レンズに使用される最も一般的な 材料は、ケイ素、疎水性アクリレート、疎水性アクリレート、及び材料にゲル状の特性を 与えるために水を含むヒドロゲルの、様々な化学的な変形物である。これらはそれぞれ、 マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸含有溶液を含むように構築又は処理 50 (12) JP 2007-505906 A 2007.3.15 可能である。 【0033】 一実施形態において、コンタクトレンズ又は移植IOLは、マクロライド系抗生物質及 び/又はミコフェノール酸を含む眼科的に許容される媒体内に詰められる。例えば、多孔 質ヒドロゲルレンズ(例えば、Hydroview ( R ) Bausch & Lomb S u r g i c a l 、 ロ ニ ュ ー ヨ ー ク 州 チ ェ ス タ ー )は 孔 内 に マ ク ロ ラ イ ド 系 抗 生 物 質 及 び /又はミコフェノール酸を保持する。コンタクトレンズが装着、あるいはレンズが水晶体 嚢へ挿入/移植されると、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸が放出さ れる。徐放される作用物質を含む眼用器具では、多孔質成分を通って活性物質が徐放され るため、長期間、例えば、手術後の治癒期間、治療が提供されることになる。徐放される 10 作用物質を含む眼用器具は、高齢患者、局所用の眼の薬剤を確実に自己投与できない患者 、長期治療を受けなければならない患者等の一部に歓迎される投与方法にもなり得る。 【0034】 他の実施形態において、コンタクトレンズ又は移植レンズを被覆してマクロライド系抗 生物質及び/又はミコフェノール酸が提供される。この実施形態では、非ヒドロゲル親水 性レンズ、疎水性レンズ、アクリル材料製レンズ(例えば、アクリソフ (株)、テキサス州フォートワース、Sensar ( R ) ( R ) アルコン Advanced Medi cal Optics、カリフォルニア州サンタアナ)、シリコーンレンズ(例えば、C eeOn ( R ) Pharmacia & Upjohn Company、オハイオ州 ピッカリング)等が使用される。使用される被覆法及び/又は混入法は、当業者に公知で 20 あり、例えば、米国特許第6238799号明細書、米国特許第6179817号明細書 、米国特許第6306422号明細書、及び米国特許第6258856号明細書に開示さ れ、それぞれ参照することにより全体を本願に援用する。マクロライド系抗生物質及び/ 又はミコフェノール酸は、レンズ包装中に保存液へ添加されるか、あるいはレンズ製品に 混入され得る。例えば、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸は、親水性 若しくはヒドロゲルレンズの形成における水和液、又は保存液のいずれか又は両方に混入 される。他の例において、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸は、ヒド ロゲルIOL中に、許容される封入形態で存在し、長期間放出される。 【0035】 本発明の組成物は、また、例えば、眼内手術中に術野をきれいにするための眼用洗浄液 30 としても使用できる。 【0036】 上記の各実施形態においては、任意のマクロライド系抗生物質を一種または併用して使 用可能である。本発明の実施形態は、抗炎症、抗増殖、抗細胞遊走、抗真菌等の作用をも たらすために十分である、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸の眼への 様々な適合濃度を含む。濃度は、当業者に公知である組成物の使用方法によって決まる。 よって、これらの実施形態において、本発明は、マクロライド系抗生物質及び/又はミコ フェノール酸の特定の濃度に限定されない。概して、マクロライド系抗生物質及び/又は ミ コ フ ェ ノ ー ル 酸 は 、 約 1 n g / m l ( 約 0 .0 0 0 0 0 0 1 % m l ( 約 0 .0 2 % w / v w / v )∼約200μg/ )の濃度で眼用溶液中に存在する。一実施形態において、マクロ ラ イ ド 系 抗 生 物 質 及 び / 又 は ミ コ フ ェ ノ ー ル 酸 は 、 約 1 μ g / m l ( 約 0 .0 0 0 1 % v 40 w / )の濃度で眼用溶液中に存在する。白内障手術後の嚢混濁を軽減するには、約1μg/ m l ( 約 0 .0 0 0 1 % w / v μ g / m l ( 約 0 .0 0 2 % ) ∼ 約 2 0 0 μ g / m l ( 約 0 .0 2 % w / v w / v ) ∼ 約 2 0 0 μ g / m l ( 約 0 .0 2 % )、又は約20 w / v )の濃度で 使用される。マクロライド及び/又はミコフェノール酸含有眼用溶液の特性は、眼組織に 適合する。 【0037】 マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール酸は、ヒアルロン酸等の粘弾性物質 と共に製剤されるか、あるいは、マイクロスフェア、マクロスフェア、微小胞、大型小胞 (macrovesicle)、マイクロカプセル、マクロカプセル、リポソーム等に含 50 (13) JP 2007-505906 A 2007.3.15 まれる。これらは同時係属中の米国出願番号10/631143に開示されており、参照 することにより全体が本願に明示的に援用される。この実施形態は、上記のとおり、白内 障手術後の嚢混濁を防ぐために投与される溶液を一緒に使用できる。 【0038】 リポソームは、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、例えば、脂質が低 温遷移性である卵ホスファチジルコリン(PC)から調製され得る。リポソームは、当業 者に公知である標準的な方法を使用して作製される。マクロライド系抗生物質は、ナノグ ラムからマイクログラム量、あるいはそれ以上の量で卵PCの溶液に添加され、親油性薬 物がリポソームに結合する。 【0039】 10 徐放性薬物送達システムでは、マクロライド系抗生物質が長期間にわたり徐放されるよ うに眼内投与される。製剤は、生体適合性ポリマーのミクロ若しくはマクロカプセル又は マトリックス等の賦形剤、あるいはマイクロスフェア又はリポソームとして製剤される脂 質の形態であり、生体適合性ポリマーとしては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリグリ コール酸、ポリ乳酸、ポリ酸無水物、乳酸グリコール酸共重合体、ポリアミノ酸、ポリエ チレンオキシド、アクリル末端ポリエチレンオキシド、ポリアミド、ポリエチレン、ポリ アクリロニトリル、ポリホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ショ糖酢酸イソ酪酸エ ステル(SAIB)、及びその他のポリマーが挙げられ、該その他のポリマーは、米国特 許第6667371号明細書、米国特許第6613355号明細書、米国特許第6596 296号明細書、米国特許第6413536号明細書、米国特許第5968543号明細 20 書、米国特許第4079038号明細書、米国特許第4093709号明細書、米国特許 第4131648号明細書、米国特許第4138344号明細書、米国特許第41806 46号明細書、米国特許第4304767号明細書、米国特許第4946931号明細書 に開示され、参照することにより全体が本願に明示的に援用される。ミクロ又はマクロ製 剤は、針を介して投与してもよいし、あるいは、眼内、例えば、水晶体嚢内に縫合するこ とで移植してもよい。実例として、シロリムスを、ポリビニルアルコール(PVA)と混 合した後、混合物を乾燥して、エチレン酢酸ビニールで被覆し、再度PVAと一緒に冷却 する。眼内投与用製剤において、細胞消化によりリポソームカプセルが分解し、徐放性薬 物送達システムが提供され、これによって、患者を長期間にわたり薬物に持続的にさらす ことが可能となる。 30 【0040】 徐放性ミクロ又はマクロ製剤もまた局所投与される。持続放出性抗生物質及び/又はミ コフェノール酸は、脈絡膜、又は網膜等の眼組織内に、これらの組織に影響を与える疾患 を治癒するのに十分な濃度で蓄積する。 【0041】 遅延、すなわち持続放出性は、賦形剤の様々な製剤形態(被覆又は非被覆マイクロスフ ェア、被覆又は非被覆カプセル、脂質又はポリマー組成物、単層又は多層構造、及び上記 の組合せ等)を介してもたらされる。他の変数としては、患者の薬物動態―薬力学的パラ メータ(例えば、体重、性別、血漿クリアランス率、肝機能等)が挙げられる。マイクロ スフェア、マイクロカプセル、リポソーム等の形成及び装填、並びにこれらの眼内移植は 40 、当業者に公知の標準的な技術であり、例えば、サイトメガロウイルス性網膜炎を治療す るためのガンシクロビルを徐放薬として移植する使用方法がVitreoretinal Surgical Techniques, Peyman他編集(Martin D u n i t z 、 ロ ン ド ン 2 0 0 1 4 5 章 ) ; H a n d b o o k o f P h a r m a ceutical Controlled Release Technology, Wise編集(Marcel Dekker、ニューヨーク 2000)に開示され、こ の関連する部分を参照することにより本願に援用する。 【0042】 眼内投与に使用されるマクロライド系抗生物質の例は、タクロリムス、シクロスポリン A、シロリムス、アスコマイシン、及びエベロリムスが挙げられるが、これらに限定され 50 (14) ない。タクロリムス(プログラフ ( R ) JP 2007-505906 A 2007.3.15 Fujisawa Healthcare、イ リノイ州ディアフィールド;FK−506)はStreptomyces tsukub aensisが産生するマクロライド系免疫抑制剤であり、実質的に水不溶性のトリシク ロ疎水性化合物であるが、エタノールには溶けやすく、メタノール及びクロロホルムには 非常によく溶ける。処方の際、経口投与用カプセル又は静脈内投与用滅菌溶液のどちらか で使用可能である。溶液は、ポリオキシエチレン硬化ひまし油60(HCO−60)1m l中の無水タクロリムス5mg相当(200mg)及び無水アルコール(米国薬局方80 .0 % v / v ) を 含 み 、 使 用 前 に 塩 化 ナ ト リ ウ ム ( N a C l ) 0 .9 % 又 は デ キ ス ト ロ ー ス 5%溶液で希釈しなければならない。 【0043】 10 タクロリムスは、局所投与で使用され、様々な皮膚病を治療する。タクロリムスの0. 0 3 % ∼ 0 .3 % の 用 量 で の 局 所 投 与 で は 、 2 ∼ 3 週 間 後 に ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 の 著 し い 臨 床改善が見られるため、他の皮膚病に対するタクロリムス治療には見込みがある。タクロ リムスは、シクロスポリンのように、インターロイキン2遺伝子の発現の誘発に必要な信 号変換経路を阻害して、Tリンパ球を活性化させる。T細胞活性化の抑制に加えて、タク ロリムスは、抗IgE誘発ヒスタミン放出を阻害すると共に、ヒト皮膚肥満細胞における プロスタグランジンD2の合成を阻害する。経口投与すると、制限副作用(全身免疫抑制 、感染、神経毒性、腎毒性、及び高血圧)を生じるが、上限0.3%濃度での皮膚病治療 のための局所投与では、治療群と対照群との間で、効果に有意差はなかった。更に、タク ロリムスの忍容性は局所的に良好であり、稀に軽度の刺激を生じるのみである。 20 【0044】 眼乾燥症を含む様々な眼疾患を治療するための特効治療としてタクロリムスを使用する ことが、米国特許第6489335号明細書、及び同時係属中の米国特許出願番号10/ 2 4 7 ,2 2 0 号 明 細 書 に 開 示 さ れ 、 そ れ ぞ れ 参 照 す る こ と に よ り そ の 全 体 を 本 願 に 明 示 的に援用する。例えば、タクロリムスは、水性のクリーム賦形剤(cream exci pient)に含有されて局所適用されるか、眼内注射されるか、あるいは、眼内インプ ラントとして外科的に投与され得る。 【0045】 これらの刊行物は、本発明の方法のように、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフ ェノール酸を単独又は化学療法薬及び/又はシクロオキシゲナーゼ阻害薬等の他の作用物 30 質と共に用いて、糖尿病性網膜症、網膜色素変性、加齢性黄斑変性、ブドウ膜炎、脈管炎 、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、結膜悪性黒色腫の前癌状態、及び結膜悪性黒色腫等の眼 病状を治療するための開示された用量及び製剤で、かつ治療量超過濃度で眼への局所投与 することを開示していない。 【0046】 シクロスポリンA(cyclosporine、局所製剤Arrestase ( R ) ア ラガン(株))は、Trichoderma polysporumから生成される環状 ペプチドである。これは、例えば、シグマ−アルドリッチ(株)(ミズーリ州セントルイ ス)から市販されている。これは、免疫抑制薬であり、Tリンパ球の特定サブセットであ るヘルパーT細胞で作用する。シクロスポリンAは、サイトカインインターロイキン2の 40 産生を妨げることで免疫抑制効果を発揮する。シクロスポリンA、タクロリムス、及び他 の免疫抑制薬は、各々が全身投与される場合に深刻な肝障害及び腎臓毒性を生じる。この 毒性のため、それらは一緒に投与されない。 【0047】 シクロスポリンAは、緑内障、コルチコステロイド誘発性高眼圧症、同種移植拒絶、感 染、及び眼表面疾病等の眼の病状の治療に使用されている。また、ブドウ膜炎(ブドウ膜 の 炎 症 ) を 治 療 す る た め に 、 シ ク ロ ス ポ リ ン A を 用 量 0 .0 5 % 、 0 .1 % 及 び 0 .5 % で 局所投与、硝子体内投与、又は全身投与することが報告されている。シクロスポリンAは 、角膜には良く浸透するが前房には浸透せず、また、眼圧を上昇させたり、あるいは白内 障を引き起こしたりしない。その知られた毒性のため、他の眼疾患への使用は、以前は制 50 (15) JP 2007-505906 A 2007.3.15 限されていた。 【0048】 眼疾患の治療のための毒性の少ない特効治療としてシクロスポリンAを使用することが 、同時係属中の米国出願番号10/289772号明細書に開示されており、参照するこ とにより全体を本願に明示的に援用する。 【0049】 シロリムスは、ラパマイシン、RAPA、及びラパミューン ( R ) としても知られてお り、Streptomyces hydroscopicus由来で、抗真菌薬として本 来開発されたトリエンマクロライド抗生物質である。結果として、抗炎症性、制癌性、及 び免疫抑制性を示す。アスコマイシンは、ピメクロリムス、イムノマイシン(Immun 10 omycin)、及びFR−900520としても知られており、タクロリムスのエチル アナログであり、強力な免疫抑制性を有する。Th1及びTh2サイトカインを抑制し、 肥満細胞の活性化を優先的に抑制し、接触皮膚炎、及び他の皮膚病変を治療するために使 用 さ れ る 。 シ ロ リ ム ス 及 び ア ス コ マ イ シ ン は 、 例 え ば 、 A .G .S c i e n t i f i c ,I n c .( カ リ フ ォ ル ニ ア 州 サ ン デ ィ エ ゴ ) か ら 市 販 さ れ て い る 。 【0050】 免疫抑制能力に関して、シロリムスはシクロスポリンAとの相乗作用が多少ある。シロ リムスは、シクロスポリンA及びタクロリムスに比べて異なる作用形態を有することが報 告されている。3つの作用物質全てが免疫細胞モジュレーター(サイトカイン)の作用に 影響を及ぼす免疫抑制薬であるが、免疫細胞そのものには影響を及ぼさない。3つの作用 20 物質全てが免疫細胞モジュレーターに影響を及ぼすが、その機序は異なる。すなわち、シ クロスポリンA及びタクロリムスは、サイトカインメッセンジャー、特にインターロイキ ン2の合成を阻害し、一方シロリムスは、既に合成されたサイトカインに作用し、該サイ トカインが免疫細胞へ到達するのを防ぐ。 【0051】 シロリムスは、Tリンパ球、及び樹状細胞に作用することで炎症を抑制する。後者は、 抗原を認識する最初の細胞である。シロリムスは、樹状細胞、及び他の多くの細胞、例え ば、血管内皮増殖因子(VEGF)を放出する腫瘍細胞により活性化される腫瘍及び内皮 細胞等の成長を阻害する。VEGFは、血管新生(既存の血管から新しい血管の形成)及 び 脈 管 形 成 ( 内 皮 細 胞 分 化 、 及 び 組 織 化 へ の 影 響 に よ る 胚 血 管 系 の 発 達 )の 中 心 調 節 因 子 30 である。異常な血管新生、及び脈管形成により特徴づけられる疾病、例えば、ある種の癌 及び眼疾患等は、VEGFの異常産生を示すことがある。したがって、VEGF機能を調 整することは、これらの疾病をコントロール又は治療するための1つの手段となり得る。 シロリムスはまた、冠状動脈ステント手術後の平滑筋の増殖防止にも使用されている。眼 疾患を治療するための特効治療としてシロリムス及びアスコマイシンを使用することが、 同 時 係 属 中 の 米 国 特 許 出 願 番 号 1 0 / 6 3 1 ,1 4 3 号 明 細 書 に 開 示 さ れ 、 参 照 す る こ と によりその全体を本願に明示的に援用する。 【0052】 エベロリムスは、RAD−001、SCZ RAD、サーティカン can ( R ) ( R ) (Certi )(ノバルティス、スイス バーゼル)としても知られ、シロリムスのアナ 40 ログであるが、新規で別個の化学物質である。これは、増殖因子誘発細胞増殖を抑制する 経口免疫抑制剤であるため、急性臓器拒絶反応及び血管症を軽減し、血液供給を抑制する 、移植片の最深壁における平滑筋細胞の増殖を減少させる。 【0053】 ミコフェノール酸(MPA)は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)の投与後に形 成される活性化合物である。プロドラッグは、ミコフェノール酸のモルホリノエチルエス テルである。ミコフェノール酸は、癌化学療法を受けている患者及び移植者に使用する抗 白血病及び免疫抑制剤である。 【0054】 これらの作用物質を単独で、又は、併用して、あるいは化学療法薬若しくはシクロオキ 50 (16) JP 2007-505906 A 2007.3.15 シゲナーゼ阻害薬等と共に、糖尿病性網膜症、網膜色素変性、加齢性黄斑変性、ブドウ膜 炎、脈管炎、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、結膜悪性黒色腫の前癌状態、及び結膜悪性黒 色腫等の眼の病状を治療するための開示された濃度及び処方で眼への局所投与することは 報告されていない。 【0055】 これらの作用物質を単独又は併用して、侵襲的に投与される本発明の眼用溶液に加える ことで、有益な抗炎症性、抗増殖性、抗細胞遊走性、抗血管新生性、抗菌性、抗真菌性が もたらされる。 【0056】 本発明が、前記に加えて眼用溶液中で、マクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノ 10 ール酸を使用することを網羅することは当然である。これらの例としては、公知の抗生物 質であるエリスロマイシン及びその誘導体、例えばアジスロマイシン若しくはクラリスロ マイシン、リンコマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、ジア セチル−ミデカマイシン、トロレアンドマイシン、チロシン、及びロキシスロマイシン等 が挙げられる。本発明は、また、開発過程の新規のマクロライド系抗生物質の骨格及び誘 導体を含み、Schonfeld及びKirst編集によるMacrolide Ant ibiotics、Birkhauser、スイス バーゼル(2002)に記載のケト ラ イ ド A B T -7 7 3 及 び テ リ ス ロ マ イ シ ン ; E n a n t a P h a r m a c e u t i c als(マサチューセッツ州ウォータータウン)に譲渡された米国特許第6436906 号明細書、米国特許第6440942号明細書及び米国特許第6462026号明細書に 20 記載のマクロライド系のロイコマイシン;及びリンコサミドが挙げられるが、これらに限 定されない。 【0057】 上 記 の 使 用 に 加 え て 、 本 発 明 は 上 記 の ケ ト ラ イ ド A B T -7 7 3 及 び テ リ ス ロ マ イ シ ン 、マクロライド系のロイコマイシン、並びにリンコサミドが挙げられるが、これらに限定 されない開発過程の新規のマクロライド系抗生物質の骨格及び誘導体に加えて、エベロリ ムス、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、リンコマイシン、ジ リスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、ジアセチル−ミデカマイシン、チロ シン、ロキシスロマイシン、及びミコフェノール酸の眼への局所(非侵襲的)投与のため の眼用溶液を含む。 30 【0058】 マクロライド系抗生物質は、いかなる使用目的の眼用溶液と一緒に含まれる。マクロラ イド系抗生物質は、眼の悪性腫瘍、又は前癌状態の治療用化学療法薬を含む眼用局所溶液 と一緒に含まれてもよい。マクロライド系抗生物質は、眼炎症を軽減するためのシクロオ キシゲナーゼ阻害薬を含む眼用局所溶液と一緒に含まれてもよい。一実施形態において、 加齢性黄斑変性は、少なくとも1つのマクロライド系抗生物質及び/又はミコフェノール 酸と、少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ阻害薬とを含む眼用局所製剤を投与するこ と で 治 療 さ れ る 。 シ ク ロ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ 阻 害 薬 は 、 組 成 物 の 0 .5 % ∼ 2 0 % の 濃 度 で 存 在する。シクロオキシゲナーゼ阻害薬(COX阻害薬)は、公知であり(例えば、Vii ox ( R ) 、セレブレックス ( R ) )、イブプロフェン、インドメタシン、ピロキシカム 40 、及びトラニルシプロミン塩化水素が挙げられるが、これらに限定されない。マクロライ ド系抗生物質は、眼用溶液の調製時に、個別の成分として一緒に、又は別々に加えられる 。あるいは、マクロライド系抗生物質溶液を調製して、これを眼用溶液に加えてもよい。 これら溶液は、様々な陰イオン及び陽イオン、pH調製緩衝液、アデノシン、カルシウム 、グルコース、重炭酸塩、デキストロース、デキストラン40(低分子量のコロイド状浸 透物質)、ゲンタマイシン、デキサメタゾン、セレン、亜鉛、及びグルコニド等の他の公 知の成分を含む市販の灌流液であり得る。マクロライド系抗生物質は、人工涙液等の市販 の眼用潤滑液に加えてもよい。マクロライド系抗生物質は、市販の眼洗浄液と一緒に含ま れてもよい。マクロライド系抗生物質は、コンタクトレンズ洗浄液、すすぎ液、及び湿潤 液と一緒に含まれてもよい。眼の外面、又は眼の内房の内の1つのいずれかへ投与される 50 (17) JP 2007-505906 A 2007.3.15 任意の眼投与用溶液は、マクロライド系抗生物質を含み得る。 【0059】 本発明は、また、ヒトへの使用に制限されず、少なくとも1つのマクロライド系抗生物 質を含む、獣医が使用する眼用溶液の使用をも網羅する。例えば、リンコサミドは動物に 使用されている。リンコサミド含有眼用溶液は、獣医用灌流液、体積置換液、局所洗浄、 又は潤滑液等として使用され得る。 【0060】 本発明は、1つ以上の上記マクロライド系抗生物質を含む点眼剤、眼洗浄液、眼灌流液 、体積置換液、コンタクトレンズ液の形態の多目的眼用溶液を提供する。様々な実施形態 において、眼用溶液は、単回投与容器、又は複数回投与容器(例えば、10ml、20m l、30ml、500ml)内に入れられる。 【0061】 本発明の他の変形、又は他の実施形態もまた、上記の図面及び明細書から当業者にとっ て当然である。よって、前述の実施形態は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきで ない。 10 (18) 【国際調査報告】 JP 2007-505906 A 2007.3.15 (19) JP 2007-505906 A 2007.3.15 (20) JP 2007-505906 A 2007.3.15 (21) JP 2007-505906 A 2007.3.15 (22) JP 2007-505906 A 2007.3.15 (23) JP 2007-505906 A 2007.3.15 (24) JP 2007-505906 A 2007.3.15 フロントページの続き (51)Int.Cl. FI A61P 31/04 A61P 31/10 A61P 27/02 A61P 9/10 A61P 35/00 テーマコード(参考) (2006.01) (2006.01) A61P 31/04 A61P 31/10 (2006.01) (2006.01) A61P 27/02 A61P 9/10 (2006.01) A61P 35/00 (81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM), EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG, CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ, DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M A,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG ,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW (72)発明者 ゴーラム・アリ・ペイマン アメリカ合衆国 70124 ルイジアナ州 ニューオーリンズ ポンチャートレイン ブールバ ード 8654 ユニット 1 Fターム(参考) 4C076 AA11 BB24 CC04 CC10 CC27 CC29 CC32 4C084 AA17 AA19 MA02 MA17 MA58 NA05 NA14 ZA331 ZB111 ZB112 ZB211 ZB212 ZB261 ZB262 ZB351 ZB352 ZC021 ZC022 4C086 AA01 AA02 BA06 CA03 MA01 MA02 MA04 MA17 MA58 NA05 NA14 ZA33 ZB11 ZB26 ZB32 ZB35 ZC02