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実習で学生がまず戸惑うのは、
「臨床スタッフが何を
言っているのかわからない !」ということです。 申し送
りが始まると、皆の頭の中に「?」が膨らんでいきます。
日本語で話しているはずなのに、まるで別世界の言葉
を聞いているような気分になるようです。
様々な業界・職種に、それぞれ独自の言い回しや
ギョーカイ用語があるように、医療・看護の臨床現場に
もそれがあります。こうした専門用語は、一般の人に
はわからないその業界・職種ならではの文化であり、
それらを理解しないまま安易に使用してしまうと、とん
はじめに
でもない間違いを引き起こしたり、相手に不快な思い
を抱かせてしまうことがあります。その反面、上手に使
えば、効率よく物事を運ぶことができるようになります。
看護の世界の言葉が少しずつわかるようになると、
その場の状況がすばやく把握でき、患者さんに余計な
心配などを与えずに効率よく看護を行うことができま
す。たとえば、緊急連絡事項を患者さんに余計な不安
感を与えずにスタッフに確実に知らせるための略語があ
ります。また、略語を上手に使えた経験が、看護師と
しての自分の成長を実感する機会になることでしょう。
この付録では、実習で学生が「ワカラナイ !」と困る
略語や俗語、独自の言い回しなどを集めました。
略語や俗語は、正式名称や使い方を理解したうえで
使うことが基本です。これでしっかりと事前準備をして、
より学びの多い実習にしてくださいね。
シーン1
外科病棟の看護師さんたちの会話
看護師A:「全身麻酔で手術した乳がんの患者さん
じゃあケモするんだね ホウチもするのかな?
これから大変だね
ゼンマでオペした
マンマカルチの患者さん シンチでメタが
見つかったらしいよ
明日
アイシー
するってさ
シンチグラフィーで転移が見つかったらしいよ」
看護師B:「じゃあ化学療法するんだね
放射線治療もするのかな?
これから大変だね」
そうだね
看護師A:「そうだね
明日、インフォームド・コンセントするってさ」
読み解きワード
一人の看護師が、患者さんのがんが再発してしまったこと
ゼンマ ▶全麻。全身麻酔の略。
オペ ▶手術のこと。オペレーション(operation)の略。
について話しています。それを聞いたもう一人が、今後の治
マンマ ▶乳房
(ラテン語でmamma)。英語ではブレスト(breast)。
療について思いをめぐらせています。
カルチ ▶悪性腫瘍のこと。カルチノーマ(carcinoma)の略。カルテには「ca」
と記載される。
マンマカルチ ▶乳がんのこと。ブレストキャンサーとも表現される。キャン
サー
(cancer)
はがんを指す。
シンチ ▶シンチグラフィーの略。体内に放射線物質を注入し、身体から放射
治療を始めるにあたっては、患者さんにきちんと病状を説
明し、治療の同意を得る必要があるので、インフォームド・
コンセントをすると話しています。
される放射能を測定して画像として映す検査。放射性物質のことをRI(radio
isotope)
というので、RI検査ともよばれる。
メタ ▶転移(metastasis)の略。骨への転移を骨メタ、肝臓への転移を肝メ
memo
タという。
ケモ ▶化学療法
(chemotherapy)、つまり抗がん剤治療のこと。化学療法を
略して
「カリョウ
(化療)」と言うこともある。
ホウチ ▶放治。放射線治療の略。ラジエーションともいわれる。
アイシー ▶インフォームド・コンセント(IC;informed consent)のこと。
説明と同意。病状などを説明し、患者さんから治療などの同意を得ること。
シーン2
循環器病棟の看護師さんの会話
シーン3
同じことでも表現いろいろ
ヘルツの患者さん レートがタキって大変だったよ やっぱりシーエッチエフみたい
ストマックチューブ
マーゲンゾンデ
胃チューブ
胃カテ(ーテル)
の排液を観察してね
読み解きワード
ヘルツ ▶ドイツ語で心臓(Herz)のこと。
レート ▶拍数
(rate)のこと。
読み解きワード
ストマックチューブ ▶胃管を英語で表すとstomach tube。ストマック(stomach)
は胃のこと。
タキる ▶頻脈になること。頻脈はタキカルディア(tachycardia)というので、
そこから転じて頻脈になることをタキるという。一方、徐脈はブラディ(bradycardiaの略)という。ちなみに、洞調律のことはサイナスリズム(sinus
rhythm)
といい、正常な洞調律のことをサイナスと略してよぶことが多い。
シーエッチエフ ▶慢性心不全(CHF)のこと。心不全はHF(heart failure)。
マーゲンゾンデ ▶胃管をドイツ語で表すとMagen Sonde。マーゲン(Magen)は胃のこと、ゾンデ(Sonde)は管のこと。
胃チューブ ▶胃のチューブという意味。日本語の「胃」と英語の「チューブ」が
くっついてできている。
胃カテ
(ーテル)▶カテーテルとは体外と体内をつなぐ医療用の管のこと。
「〜
カテーテル」は、よく「〜カテ」と略してよばれる。
ヘルツはドイツ語で心臓という意味ですから、ヘルツの患
4人の看護師さんが、受け持ち患者さんの観察ポイントにつ
者さんと言われれば、
「心臓疾患をもつ患者さん」を意味しま
いて学生に何かアドバイスをくれました。しかし、看護師さ
す。
んによってよび方が違うので、学生は困惑しているようです。
レートは「拍数」なので脈拍数とも心拍数とも考えることが
でも、実は看護師さんたちは皆、
「胃管の排液を観察してね」
できますが、一般的には、心電図の心拍数を意味して使われ
と、アドバイスしてくれています。つまり、ストマックチュー
ます。
ブも、マーゲンゾンデも、胃チューブも、胃カテ(ーテル)も、
つまり、
「心電図上、心拍数が頻脈になって大変だったよ。
やっぱり慢性心不全みたい」と話しているのです。
すべて胃管のことなのです。同じことでも表現はいろいろな
んです。ややこしいですね。
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