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第26回学術大会プログラム・抄録集 - JAOR 日本口腔リハビリテーション

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第26回学術大会プログラム・抄録集 - JAOR 日本口腔リハビリテーション
第 26 回
日本口腔リハビリテーション学会
学術大会
26th Annual Convocation of the Japan Association of
Oral Rehabilitation
「口から食べる
―多職種連携を通じて」
Theme:
プログラム・抄録集
Program and Abstracts
会期:平成 24 年 10 月 27 日(土)
,28 日(日)
会場:日本歯科大学
日本口腔リハビリテーション学会
http://www.jaor.jp
第 26 回
日本口腔リハビリテーション学会
学術大会
26th Annual Convocation of the Japan Association of
Oral Rehabilitation
Theme:
「口から食べる―多職種連携を通じて」
プログラム・抄録集
Program and Abstracts
会
期:平成 24 年 10 月 27 日(土)
,28 日(日)
会
場:日本歯科大学生命歯学部 8 階 富士見ホール
〒102-0071 東京都千代田区富士見 1-9-20
Tel: 03-3261-5706 Fax: 03-3261-5603
大会長:菊谷
武(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック
日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学
院長,
教授)
事務局:日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーションセンター
〒102-8158 東京都千代田区富士見 2-3-16
Tel: 03-3261-5706 Fax: 03-3261-5603
準備委員長:田村文誉
後
援:東京都歯科医師会,東京都言語聴覚士会
目
次
……………………………………………………………
4
………………………………………………………………
6
…………………………………………………………
8
………………………………………………………………
9
…………………………………………………………
10
……………………………………………………………
13
教育講演
………………………………………………………………
21
特別講演
………………………………………………………………
27
公開講座
………………………………………………………………
31
…………………………………………………………
35
………………………………………………………
43
…………………………………………………………
45
大会長挨拶
お知らせ
交通のご案内
大会日程
会場見取り図
プログラム
シンポジウム
認定医セミナー
一般演題抄録
……………………………………………………
73
……………………………………………………………………
78
………………………………………………………………
82
ランチョンセミナー
広告
協賛企業
3
大会長挨拶
第 26 回日本口腔リハビリテーション学会学術大会大会長
菊谷
武
(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長,
日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学 主任教授)
このたび、第 26 回日本口腔リハビリテーション学会学術大会の大会長を務めさせ
ていただくこととなりました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
本学術大会は、平成 24 年 10 月 27 日(土)、28 日(日)の 2 日間にわたり、日本歯
科大学において開催されます。多職種連携を念頭に置き、「口から食べる―多職種連
携を通じて―」をテーマとし、多くの会員にその重要性を発信することといたしまし
た。
特別講演として、静岡県立静岡がんセンター歯科口腔外科の大田洋二郎部長に「が
ん患者を支える歯科治療・口腔ケア―地域歯科診療所ががんチーム医療を担う時代に
―」をご講演いただきます。大田先生は、本年より保険医療に導入された周術期の口
腔ケアの立役者です。いま、歯科医療が取り組むべき最先端の問題についてお話をい
ただけるものと思います。また教育講演 1 として、国際医療福祉大学保健医療学部言
語聴覚学科の柴本 勇准教授に「口腔リハビリテーションと言語聴覚士の専門性」を、
教育講演 2 として、昭和大学医学部小児科の田角 勝教授に「食べる機能の障害と発
達」についてご講演いただきます。柴本先生のお話からは、リハビリテーションの考
え方や多職種との連携についての理解を深めることができるものと思います。また、
田角先生は、小児の摂食指導に長年にわたり携わっておられます。実際の臨床につい
ての興味深いお話をうかがえることと思います。
公開講座では、基調講演として、藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座の
東口髙志教授に「口から食べる~口腔リハビリテーション
多職種協働に向けて~」
と題してお話をいただきます。東口先生は、日本において NST(栄養サポートチーム)
を立ち上げ、広められた第一人者であり、大変感銘を受けるお話をいただけるものと
思います。その後のシンポジウムにて、地域栄養ケア PEACH 厚木の管理栄養士であ
4
る江頭文江先生と、いわてリハビリテーションセンターの歯科衛生士である晴山婦美
子先生、そして私・菊谷がそれぞれの立場からディスカッションをさせていただく企
画をいたしました。
一般演題も 27 題の応募をいただきました。また、認定医研修セミナーは摂食・嚥
下機能評価実習(嚥下内視鏡ハンズオンセミナー)を行い、摂食・嚥下障害のリハビ
リテーションを担える人材の育成を目指します。さらに、2 つのランチョンセミナー
もご用意いたしております。なお、1 日目の夕刻には、ラウンジの展示会場にて懇親
会のご用意もございます。各社展示ブースの最新情報を見ながら、ごゆっくり美味し
い食事を召し上がりながら、会員同士の懇親を深めていただければ幸いです。
本学術大会が会員の皆様の知識向上と技術の研鑽に資することを期待し、開催のご
挨拶とさせていただきます。最後になりましたが、本学会開催にご後援をいただきま
した東京都歯科医師会、東京都言語聴覚士会に心より感謝申し上げます。
5
お知らせ
参加者の皆さんへ
・受付は,10 月 27 日(土)は 9 時 30 分から,28 日(日)は 9 時から8階で行いま
す.事前登録をされた方は,抄録集をご持参のうえ,名札を着けてご入場ください
(名札用ホルダーは受付にご用意してあります).
・当日受付をされる方は,当日会費をお支払い後,抄録集,名札をお受け取りくださ
い.会員 10,000 円,非会員 12,000 円,大学院生 5,000 円(要学生証提示)
,臨床研
修医 5,000 円(要研修証提示),コ・デンタルスタッフ(学生含む)3,000 円です.
・名札は,大会期間中,常にお着けください.
・日本歯科医師会生涯研修カードをご持参の方は,受付でご登録ください.
・協賛業者の展示を 10 月 27 日(土)13 時から 17 時半,10 月 28 日(日)9 時から
16 時まで 8 階展示ホールで行っていますのでお立ち寄りください.
・懇親会を 10 月 27 日(土)17 時半より 8 階展示ホールで行います.当日も受付を行
いますので,多数の先生のご参加をお待ちしています.参加費は事前申込 6,000 円,
当日 8,000 円です.
・第 1 日目の認定医研修セミナーの参加には別途研修参加費(医師・歯科医師:5,000
円,当日 6,000 円,コ・デンタルスタッフ:3,000 円)が必要です.
・学会会場構内は全面禁煙です.千代田区は路上喫煙禁止条例が施行されていますの
でご注意ください.
演者の先生方へ
・発表者,共同研究者ともに会員に限りますので,未入会の方は入会手続きを行って
ください.入会されない場合には事後抄録にお名前は掲載されません.
・口演時間は 8 分,質疑応答は 2 分です.時間厳守でお願いします.
・会場に設置されるパソコンの OS は Windows XP,ソフトは Microsoft Power Point
2003,2007 とさせていただきます.
・会場には口演用 PC を 1 台用意いたします.原則として個人所有の PC の使用はご
遠慮ください.どうしても他の方法あるいは動画が必要な場合は,事前(10 月 23
日まで)に学会事務局までご相談ください.他のソフトへのリンク設定は行わない
でください.
・口演 1 時間前までに,発表データを保存した CD-R,USB フラッシュメモリーを受
付に提出してください.
6
・次演者は発表の 10 分前までに,次演者席にお着きください.
座長の先生へ
・口演時間は 8 分,質疑応答は 2 分です.受け持ちのセッションの活発な討議と時間
厳守による円滑な進行にご協力をお願いします.
・次座長の先生は受け持ちのセッションの 10 分前までに,次座長席にお着きくださ
い.
事後抄録
・シンポジウム,口演の演者の先生は,事前の発表データ提出時に事後抄録を受付に
提出してください.
・抄録は A4 用紙,1 枚目に演題番号,演題名,所属,氏名(演者に○)を,2 枚目に
内容抄録(800 字以内)を記載してください.また,同時に抄録を Word(MS-Word)
で入力した CD-R を提出してください.当日提出されない場合には,事前抄録で代
用させていただきます.
その他
・クロークは 1 階エントランスホールにご用意いたします.場所に制限がありますの
で,お預かりできない場合はご容赦ください.
7
交通のご案内
会場:
日本歯科大学 生命歯学部
〒102-0071 東京都千代田区富士見 1-9-20
受付:
(総合受付)
(公開講座受付)
懇親会会場:
日本歯科大学 生命歯学部
8階
1階
富士見ホール前
エントランス
8 階エントランスホール
アクセスマップ:
飯田橋駅: JR 総武線 ・・・ 西口より徒歩 5 分
東京メトロ
B2a 出口より徒歩 6 分
都営大江戸線
九段下駅: 東京メトロ線
1 出口より徒歩 6 分
都営新宿線
8
会場見取り図
◆1階
公開講座受付・クローク
◆2階
会議室(理事会、評議会)
◆3階
講堂(ランチョンセミナー1・2、一般演題 2)
9
大会日程
第1日目 10月27日(土)
第2日目 10月28日(日)
教育講演2 座長 田村文誉
10:00 認定医研修セミナー
(8階富士見ホール)
(本学7F講義室)
食べる機能の障害と発達
担当 菊谷 武
昭和大学医学部小児科 教授
10:30 摂食嚥下機能評価実習
内視鏡セミナーハンズオン
11:00 7F実習室
田角 勝
理事会
特別講演 座長 窪木拓男
(2階第2会議室)
(8階富士見ホール)
がん患者を支える歯科治療・口腔ケア
-地域歯科診療所ががんチーム医療を担う時代に-
静岡県立静岡がんセンター 歯科口腔外科部長
(参加費が別途必要です) 10:40~11:40
11:30
大田洋二郎
12:00
理事・評議員会
ランチョンセミナー1
(2階第1会議室)
(135講堂)
(131講堂)
広島大学大学院医歯薬保健学
日本大学松戸歯学部
研究院先端歯科補綴学研究室
有床義歯補綴学講座
吉川峰加
飯島守雄
12:00~13:00
12:30
13:00
【舌圧測定】 提供:JMS
ランチョンセミナー2
【補綴治療】 提供:T&K
総会(8階富士見ホール)
一般演題1-1(富士見ホール) 一般演題2-1(131講堂) 13:10~13:30
13:10~14:00
13:10~14:00
大会長 理事長 挨拶
演題番号1~5
演題番号18~22
13:30 教育講演1
座長 西脇恵子 (8階富士見ホール)
14:00
口腔リハビリテーションと言語聴覚士の専門性
国際医療福祉大学保健医療学部言語聴覚学科 准教授
一般演題1-2(富士見ホール) 一般演題2-2(131講堂) 柴本 勇
14:30
15:00 公開講座(8階富士見ホール)
14:10~15:00
14:10~15:00
演題番号6~10
演題番号23~27
座長 菊谷 武 口腔リハビリテーション 多職種協働に向けて
一般演題1-3(富士見ホール)
基調講演 食べて治す,食べて癒す
15:10~16:20
藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座 教授
演題番号11~17
東口髙志
16:00 シンポジウム
座長 菊谷 武 (8階富士見ホール)
16:20~ 閉会の辞
日本歯科大学大学院臨床口腔機能学 教授
業者展示は8階エントランスホールにて2日間とも行っております
菊谷 武
地域栄養ケアPEACH厚木 管理栄養士
江頭文江
いわてリハビリテーションセンター 歯科衛生士
17:00
晴山婦美子
17:30
懇親会(8階エントランスホール)
10
◆7階
講義室・実習室(認定研修セミナー、ハンズオンセミナー)
◆8階
富士見ホール(大会場、総合受付、一般演題 1、企業展示場、懇親会場)
※飲食禁止
11
第 26 回日本口腔リハビリテーション学会学術大会プログラム
10 月 27 日(土)
8 階富士見ホール
会場
10:00~12:00 認定医研修セミナー(参加費が別途必要)
摂食・嚥下機能評価実習
担当
菊谷
武
(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック
院長,
日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学
教授)
嚥下内視鏡ハンズオン
(会場は 7 階講義室・実習室です)
13:00~13:05
13:05~13:10
13:10~13:30
13:30~14:30
開会の辞
理事長挨拶
総会
大会長
理事長
菊谷 武
覚道健治
教育講演 1
座長
西脇恵子
(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック,
日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーションセンター)
口腔リハビリテーションと言語聴覚士の専門性
柴本 勇(国際医療福祉大学保健医療学部言語聴覚学科 准教授)
14:30~15:00
休憩
15:00~16:00 公開講座
口から食べる
~口腔リハビリテーション
多職種協働に向けて~
座長
菊谷
武
(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック,
日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学)
基調講演
食べて治す,食べて癒す
東口髙志(藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座 教授)
16:00~17:00 シンポジウム
江頭文江(地域栄養ケア PEACH 厚木 管理栄養士)
晴山婦美子(いわてリハビリテーションセンター 歯科衛生士)
菊谷 武(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長,
日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学
17:30~20:00 懇親会(8 階エントランスホール)
14
教授)
10 月 28 日(日)
10:00~11:00
会場
教育講演 2
座長
8 階富士見ホール
田村文誉
(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック,
日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーションセンター)
食べる機能の障害と発達
田角 勝(昭和大学医学部小児科 教授)
11:00~12:00
特別講演
座長
窪木拓男
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科インプラント再生補綴学分野)
がん患者を支える歯科治療・口腔ケア
-地域歯科診療所ががんチーム医療を担う時代に-
大田洋二郎(静岡県立静岡がんセンター歯科口腔外科 部長)
12:00~13:00
ランチョンセミナー 1(会場は講義室 135 です)
13:30~13:10 休憩
13:10~14:00
一般演題 <インプラント・診療> 座長 田中順子
(大阪歯科大学有歯補綴咬合学講座)
演題 1
口腔機能の早期付与および長期維持のためのインプラント表面ナノ構造制御
1
大阪歯科大学欠損歯列補綴咬合学講座,2 歯周病学講座,3 歯科保存学講座,4 有歯補
綴咬合学講座
○小正 聡 1,田口洋一郎 2,西田尚敬 3,藤野智子 4,中野蓉子 1,楠本哲次 4,西崎 宏
1
,田中昌博 4,岡崎定司 1
演題 2
訪問歯科診療に有用な総義歯治療の術式について
1
医療法人明貴会三条山口歯科医院, 2 大阪歯科大学口腔外科学第二講座
○山下順司 1, 山口貴史 1, 覚道健治 2
演題 3
20 年経過インプラントにおける Biological height の臨床的考察
1
医療法人白鵬会阪本歯科, 2 大阪歯科大学口腔外科第 2 講座, 3 朝日大学歯学部口腔構造
機能発育学講座小児歯科学分野
○阪本貴司 1,2,入江
舞 1, 森川紗里 1, 鶴田美緒 1, 吉川沙絵 1, 稲田明子 1, 宮本佳苗 1, 阪
本光伸 1,3, 覚道健治 2
15
10 月 28 日(日)
演題 4
会場
8 階富士見ホール
咬合挙上によるシャープネスを用いた音質評価
朝日大学歯学部口腔機能修復学講座歯科補綴学分野
○阿座上遼子, 山村 理, 小川雅之, 藤原 周
演題 5
音声入力を用いた口腔診査記録の試み―「より」を用いた入力時間の短縮
1
大阪歯科大学総合診療・診断科, 2 同志社大学生命医科学部
○米谷裕之 1, 有田清三郎 2, 小出 武 1, 松本晃一 1, 永目誠吾 1, 辻
辰巳浩隆 1, 米田 護 1, 大西明雄 1, 樋口恭子 1
一起子 1,
14:00~14:10 休憩
14:10~15:00
一般演題 <摂食・嚥下>
座長
菅
武雄
(鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座)
演題 6
舌接触補助床により咀嚼・嚥下能力を維持できた一症例
医療法人健和会柳原歯科診療所
○古賀登志子, 清水けふ子, 清水登志子, 鈴木節子
演題 7
挺舌訓練が立位バランスに与える影響
1
玉野総合医療専門学校作業療法学科, 2 児島中央病院, 3 老人保健施設エスぺランスわけ,
4
介護老人保健施設南岡山ナーシングホーム
○井村 亘 1, 渡邊真紀 1, 佐藤仁美 2, 大森大輔 3, 大西正裕 4
演題 8
義歯が役立った摂食嚥下障害症例の特徴
広島市総合リハビリテーションセンター
○吉田光由
演題 9
在宅療養中の要介護高齢者に対して多職種支援が有効であった症例
1
三ノ輪口腔ケアセンター, 2 台東区台東歯科医師会, 3 台東区浅草歯科医師会, 4 日本歯科
大学附属病院口腔リハビリテーションセンター
○手嶋久子 1, 清水けふ子 1, 古賀登志子 1, 高橋秀直 2, 亀澤範之 3, 保母妃美子 4, 高橋
賢晃 4, 菊谷 武 4
演題 10
介護老人福祉施設において歯科衛生士と多職種が関わり有効であった一例
1
三ノ輪口腔ケアセンター, 2 台東区台東歯科医師会, 3 台東区浅草歯科医師会, 4 日本歯科
大学附属病院口腔リハビリテーションセンター
○丸山みどり 1, 清水けふ子 1, 古賀登志子 1, 高橋秀直 2, 亀澤範之 3, 保母妃美子 4, 高
橋賢晃 4, 菊谷 武 4
15:00~15:10 休憩
16
10 月 28 日(日)
15:10~16:20
会場
一般演題 <摂食・嚥下>
座長
8 階富士見ホール
吉田光由
(広島市総合リハビリテーションセンター)
演題 11
当科における訪問による摂食・嚥下リハビリテーションについて
鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座
○伊藤 彩, 菅 武雄, 飯田良平, 山本
演題 12
健, 森戸光彦
嚥下内視鏡検査の普及とシステム化の研究 第一報:検査説明書,同意書,
依頼書の整備
鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座
○菅 武雄, 飯田良平, 伊藤 彩, 池田美智子, 山本 健, 森戸光彦
演題 13
PLP 装置の適応評価、調整における歯科と言語聴覚士との協働
1
西横浜国際総合病院リハビリテーション科(言語聴覚士), 2 鶴見大学歯学部高齢者
歯科学講座, 3 芽依美会石川歯科医院 訪問診療チーム, 4 鶴見大学歯学部有床義歯補
綴学講座, 5 湘南中央病院リハビリテーション科, 訪問看護ステーション(言語聴覚士)
○森 南都美 1, 菅 武雄 2,3, 有我朋子 3,4, 高橋恭子 3, 長友 操 3, 松田奈緒美 3, 竹内み
さ子 3, 石川茂樹 2,3, 廣田加奈 1, 鈴木絵美 5, 森戸光彦 2
演題 14
在宅療養高齢者における予後関連因子についての検討
1
日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーションセンター, 2 広島市総合リハビリテー
ションセンター, 3 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学
○鈴木 亮 1, 平林正裕 1, 戸原 雄 1, 高橋賢晃 1, 福井智子 1, 田村文誉 1, 吉田光由 2,
菊谷 武 1,3
演題 15
原始反射の再出現と摂食機能の関連について―介護老人福祉施設における
3 年間の調査
1
日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーションセンター, 2 日本歯科大学大学院生命
歯学研究科臨床口腔機能学
○川瀬順子 1, 高橋賢晃 1, 平林正裕 1, 田村文誉 1, 菊谷 武 1,2
演題 16
在宅療養高齢者の栄養状態
-体組成成分を指標として-
1
日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学, 2 日本歯科大学附属病院口腔リ
ハビリテーションセンター
○佐川敬一朗 1, 田代晴基 2, 古屋裕康 1, 田村文誉 2, 菊谷 武 1,2
演題 17
歯科大学による口腔リハビリテーション専門クリニックの開設
1
日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック, 2 日本歯科大学附属病院口腔
リハビリテーションセンター, 3 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学
○菊谷 武 1,2,3,田村文誉 1,2,西脇恵子 1,2,町田麗子 1,2,高橋賢晃 1,2,松木るりこ 1,2,
戸原 雄 1,2,佐々木力丸 1,2,田代晴基 1,2,保母妃美子 1,2,須田牧夫 2
16:20~
閉会の辞
17
10 月 28 日(日)
13:10~14:00
会場
一般演題 <口腔機能>
座長
小正
講義室 131
裕
(大阪歯科大学高齢者歯科学講座)
演題 18
舌機能運動時における舌骨上下筋群の筋活動様相の検討
社会医療法人若弘会わかくさ竜間リハビリテーション病院
○貴島真佐子, 今井美季子, 糸田昌隆
演題 19
電撃様関節痛と開口障害が長期に持続した顎関節症の 1 例
1
大阪歯科大学口腔外科学第二講座, 2 大阪歯科大学歯科放射線学講座
○森 悠衣 1, 赤峯勇哲 1, 後藤基宏 1, 窪 寛仁 1, 大西祐一 1, 岩崎春美 1, 中嶋正博 1, 覚
道健治 1, 秋山広徳 2, 四井資隆 2, 清水谷公成 2
演題 20
脳血管障害患者における最大舌圧についての検討
1
社会医療法人若弘会わかくさ竜間リハビリテーション病院, 2 医療法人高田歯科医院
○今井美季子 1,貴島真佐子 1,糸田昌隆 1,高田秀秋 2
演題 21
咀嚼筋腱・腱膜過形成症患者における術後の開口量の推移について
大阪歯科大学口腔外科第二講座
○藤井智子, 西尾謙宏, 後藤基宏, 窪
覚道健治
演題 22
寛仁, 森
悠衣, 砂田典子, 中嶋正博, 岩崎春美,
超音波診断装置による米飯咀嚼時の舌運動前額断面解析
大阪歯科大学有歯補綴咬合学講座
○覺道昌樹, 糸田昌隆, 龍田光弘, 田中順子, 田中昌博
14:00~14:10 休憩
14:10~15:00
一般演題 <口腔ケア・小児>
座長
小野俊朗
(愛知学院大学歯学部小児歯科学講座)
演題 23
歯磨き動作の向上を目的としたコップ磨き訓練の効果(第二報)
~歯磨き実践訓練との比較~
玉野総合医療専門学校
○渡邊真紀, 井村 亘
演題 24
作業療法学科
救急救命センターにおける挿管チューブ周囲の細菌叢の変化について
1
東京都立多摩総合医療センター, 2 日野市立病院
○羽賀淳子 1, 兵藤朋子 2
18
10 月 28 日(日)
演題 25
会場
講義室 131
8 トリソミーモザイク症候群児の経管栄養から経口摂取確立までの経過:
症例報告
朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座小児歯科学分野
○近藤亜子, 佐野祥美, 田村康夫
演題 26
乳歯列反対咬合の機能的矯正装置による咬合改善経過と咀嚼筋筋電図変
化:症例報告
朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座小児歯科学分野
○小倉英稔, 椋代寛之, 長谷川信乃, 田村康夫
演題 27
全前脳胞症乳児の離乳移行にむけての摂食指導
1
日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学, 2 日本歯科大学附属病院口腔リハ
ビリテーションセンター
○古屋裕康 1, 田村文誉 2, 佐々木力丸 2, 佐川敬一朗 1, 菊谷 武 1,2
19
教育講演
教育講演 1
口腔リハビリテーションと言語聴覚士の専門性
国際医療福祉大学
言語聴覚学科
柴本 勇
口腔はヒトが生活する上で,食べることや話すことに密接に関わっている.これら
の機能をもつことやその程度によってヒトの生活の質はずいぶんと左右される.また
リハビリテーションは,元々いかに生活に結びつけるかという視点で活動をしてきた.
それが,機能回復に加え予防的視点や急性期/終末期での活動,より専門的なリハビ
リテーション,在宅でのリハビリテーション,福祉領域とその活動が多岐に渡ってき
ている.
言語聴覚士は,コミュニケーション障害や摂食・嚥下障害のリハビリテーションを
専門として活動をしている.また,これらに深くかかわる高次脳機能についても専門
的なリハビリテーションを提供している.言語聴覚士の活動と口腔領域については,
機能をいかに把握して高めるか,高まらない場合は代償的手段や代替的手段を用いて
いかに活動や生活に結びつけるかが重要であると考えている.具体的には,口腔内の
器質的/機能的変化の有無を確認し,その状態で発話や摂食が可能になる方法や,よ
り本人の希望や生活に合う方法を見出し体得するよう働きかけることである.運動学
や学習理論を駆使して運動の再学習を促すことや,軟口蓋挙上装置や舌接触補助床な
どの補綴物を歯科医などと連携して作製し,コミュニケーションや摂食レベルを高め
ることまで活動は多岐にわたる.特徴は,リハビリテーションの考え方に基づいた「活
動や行動」を中心に捉えていることである.
本大会のテーマである,「口から食べること」に言語聴覚士は積極的に関わってき
た.元々脳卒中による摂食・嚥下障害を基礎にリハビリテーションが発展してきた中
で,様々な疾患に対しても自身が培った経験を基に他職種と連携してリハビリテーシ
ョンを行っている.今後はこれまでの経験を基に,様々な病態に対してリハビリテー
ション指針を構築することが重要であると考えている.同時に,言語聴覚士が普段実
施する高次脳機能障害に対するリハビリテーションで得たアプローチも,「口から食
べること」に応用されることを夢見ている.本講演では,多くの職種で構成されるチ
ームや連携体で,常に同じ目標を共有し互いに理解し合って活動できるよう,言語聴
覚士の活動や考え方を紹介したい.
22
[プロフィール]
柴本
勇(しばもと
いさむ)
国際医療福祉大学 言語聴覚学科 准教授
国際医療福祉大学大学院 言語聴覚分野 准教授
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士
認定言語聴覚士(摂食・嚥下障害領域)
■主な活動
・日本言語聴覚士協会 理事
・日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 評議員/学術誌編集委員
・Asia Pacific Society of Study for Speech Language Hearing 理事/監事
・東京都摂食・嚥下研究会 世話人
・食介護研究会 世話人
・栃木摂食・嚥下研究会 世話人
■学歴
・福井医療福祉専門学校 言語療法学科 卒業
・University of Arkansas at Little Rock Dep. of Audiology and Speech Pathology 卒業
・東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 博士課程修了(学術博士)
■職歴
・中伊豆温泉病院 言語療法科
・聖隷三方原病院 リハビリテーション部
・聖隷浜松病院 リハビリテーション部
・小山市民病院 耳鼻咽喉科
・国際医療福祉大学熱海病院 リハビリテーション部(言語聴覚臨床部長兼務)
■メール
[email protected]
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教育講演 2
食べる機能の障害と発達
昭和大学
小児科
田角 勝
乳幼児期の食事は,栄養,成長,コミュニケーションなど,子どもの生活や発達の
すべてに関与する.すなわち乳幼児にとって食べることは生活の中心であり,親から
みれば食べさせることが育児の中心である.そして子どもは食事を通して,様々なこ
とを経験し学んでおり,行動発達の場所や時間として,最も重要なものの一つである.
食べることの発達は,母から母乳を与えてもらうことから,自分で食物を摂取でき
る過程である.その機能に障害を持った場合には,到達目標とその問題点の中心がど
こにあるのかを考えることが重要である.そして残された能力を最大限に引き出すた
めの摂食時の姿勢,食物形態,あるいは食具などを考慮する.
食べる機能の障害を受けた場合に,我々は機能の改善を目指して,摂食・嚥下リハ
ビリテーションを行う.子どもの摂食・嚥下リハビリテーションにおいて,食行動と
いう広い視点から食べる機能を考えねばならない.食行動からみると食べることは,
いかに意欲が重要であるかということが浮かび上がり,その意欲を引き出すことが摂
食・嚥下リハビリテーションの基盤となる.我々は,この極めて当たり前のことを十
分に理解して摂食・嚥下リハビリテーションを行っているつもりであっても,その対
応が不十分になることも少なくない.
このような視点から具体的なことをいくつか考えると,姿勢においては,摂食機能
より呼吸の安定を得られる姿勢が必要になる.呼吸の安定なしに食べる機能の向上は
考えられない.食物形態は,その児の目標がどこにあるかです.もし自分で食べる機
能の獲得を目指せるならば,乳児期から自分で食べることの楽しさを教えることが重
要である.食具においても同様であり,食べさせるのに便利な食具と自分で食べるの
に適した食具を考えねばならない.後者の場合においては,食具を考える前に,手づ
かみしやすい食物,水分においてはコップではなく自分で持ってもこぼしにくい容器
が必要である.
いくつかのことをあげたが,症例ごとの検討が必要なことはいうまでもない.摂食
嚥下障害の指導として基礎疾患,全身状態,栄養管理等のトータルケアが不可欠であ
り,同時に楽しく食べることと自分で食べることを引き出すことの重要性を再認識し
たい.
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[プロフィール]
田角
勝
(たつの
まさる)
昭和 28 年 10 月 26 日生
昭和 53 年
昭和大学医学部 卒業
昭和 53 年 5 月 昭和大学 小児科 前期助手
昭和 55 年 4 月 神奈川県立こども医療センター 神経内科
昭和 57 年 7 月 昭和大学 小児科 助手,講師
平成 9 年 4 月
せんぽ東京高輪病院 小児科 部長
平成 15 年 4 月
都立北療育医療センター 城南分園 園長
平成 17 年 1 月
昭和大学 小児科 助教授
平成 18 年 6 月
昭和大学 小児科 教授 現在に至る
日本小児科学会専門医,日本小児神経学会専門医,日本小児精神神経学会認定医
日本小児科学会代議員
日本小児神経学会評議委員
摂食嚥下リハビリテーション学会理事
摂食嚥下障害関連の著書
田角 勝,河原仁志,編著 『子どもの摂食指導-食べる機能の発達をうながす子育
て-』診断と治療社,2003.
田角 勝,向井美惠,『小児の摂食嚥下リハビリテーション』医歯薬出版,2006.
他
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特別講演
がん患者を支える歯科治療・口腔ケア
-地域歯科診療所ががんチーム医療を担う時代に-
静岡県立静岡がんセンター
歯科口腔外科
大田洋二郎
がん治療の最前線では,手術手技の向上,抗がん剤や放射線治療の進歩により,良
好な治療成績が得られるようになりました.その一方で,非常に多くの患者が,治療
で生じる口腔粘膜炎や口腔乾燥,味覚異常,さらには歯性感染症など,様々な口腔合
併症が発症し,口腔のトラブルで苦しんできた歴史があります.こうした口腔の問題
は,この 20 年間,がんの治療効果や治療成績が優先され,ほとんど注目されて来ま
せんでした.
2002 年に開院した静岡県立がんセンターでは,がんチーム医療のなかに歯科の役割
を明確に位置づけ,がん治療時の積極的な口腔ケア介入・歯科治療を実践してきまし
た.その結果,頭頚部再建外科手術の局所合併症,化学放射線療法の粘膜炎の疼痛緩
和,緩和医療を受ける患者の口腔トラブルの軽減などが図られ,がん支持療法として
歯科の果たす役割が医科側から高く評価されるようになりました.
2006 年からは,静岡県歯科医師会の協力を仰ぎ,静岡がんセンターと地域歯科医師
会の開業診療所が病診連携し地域でがん患者を支援する体制を開始しました.当初は
東部地区のモデル事業としての取り組みでした.これは,やがて 2010 年,関東 5 都
県における日歯・国がんの医療連携につながりました.
こうした地域の小さな連携事業や日本歯科医師会の全国規模の取り組みが評価さ
れたからだと思いますが,2012 年 6 月のがん対策基本計画の中には,がん専門病院と
地域の歯科が連携して「がん患者の口腔を守る」ことが明文化されました.実は,厚
生労働省や日本歯科医師会は,この法律の運用を念頭に置いて今年 4 月の診療報酬改
定で周術期口腔機能管理を導入する決定をしました.
私は,厚労省は,これにより医療における歯科の存在を明確化したと理解していま
す.それはすなわち「地域の歯科医療機関や病院歯科が行う歯科治療や口腔ケアは,
医科の疾患治療に必須のものであり,いまや連携なしに治療は完結しないと」と医療
界,または国民にアナウンスしたのに他なりません.
この次は「私たち歯科がこれにどう応えるか?」という命題を突きつけられている
と言っても過言ではないでしょう.
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[プロフィール]
大田洋二郎(おおた
ようじろう)
略歴
昭和36年
昭和61年
昭和62年
昭和63年
平成 2年
宮崎県宮崎市生まれ
北海道大学歯学部卒業,昭和61年同大学第一口腔外科講座入局
国立がんセンター病院頭頚部外科任意研修
国立がんセンター病院歯科医員
西ドイツStuttgart:Katharinen Hospital(スツットガルト市カタリネン病院短
期留学)
平成 4年 国立がんセンター中央病院・東病院(千葉県柏市)歯科併任
平成13年 国立がんセンター中央病院歯科口腔科医長
平成14年 静岡県立静岡がんセンター歯科・口腔外科部長
研究歴
平成15年~18年 厚生労働省がん研究助成金による研究「がん治療に伴う口腔合併症
の実態調査とその予防方法の確立」大田班主任研究者
平成18年~20年 厚生労働科学研究 がん臨床研究事業による研究 研究分担員
平成19年~21年 厚生労働省がん研究助成金による研究19-20班 分担研究員
平成21年~22年 がん研究開発費による研究 21分指-9-3班 分担研究員
平成22年~ がん研究開発費による研究52「食道がんの外科治療における口腔ケア・
栄養管理・リハビリの役割に関する研究」大田班主任研究者
平成23年~ がん研究開発費による研究23-A-29班、23-A-30班分担研究員
平成24年~ がん研究開発費による研究54分担研究員
役歴
平成15年~ 東京医科歯科大学歯学部非常勤講師(高齢者歯科)
平成18年~ 北海道大学歯学部非常勤講師(第一口腔外科)
平成20年~ 日本緩和医療学会代議員、日本口腔ケア学会評議員、日本有病者歯科医
療学会評議員
平成21年~ 日本大学歯学部非常勤講師(口腔細菌学)
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公開講座
基調講演
『食べて治す,食べて癒す』
藤田保健衛生大学医学部 外科・緩和医療学講座 教授
東口 髙志
がんによる死亡は年間 30 万人を超え,現在わが国の死因の第一位を占めており,
今後も増加の一途を辿ると考えられる.2006 年 6 月,わが国で初めて緩和ケアに関す
る条文が盛り込まれた法律「がん対策基本法」が制定され,その基本理念には,①が
んに対する研究の推進,②がん医療の均てん化の促進,③がん患者の意向を十分に尊
重したがん医療提供体制の整備などが盛り込まれた.このようにがん医療体制の早急
な構築が必須の現況の中で,最も重視すべきことは,がん患者に対する全人的医療の
確立である.特に,身体に直接侵襲を加える医療である外科治療や化学療法,放射線
療法においては,同時に侵襲から生体を守るという矛盾した医療を展開せねばならな
い.すなわち,がん治療としての外科治療,化学療法,放射線療法などは,いずれも
少なからずの生体侵襲を伴っており,そのために発症する副作用や有害事象によって
医原性の種々の障害を引き起こす可能性がある.中でも代謝・栄養学的障害は,免疫
能の低下や臓器障害を惹起することになり,その結果,さらに副作用・有害事象を生
じやすくなり,また,治療への耐用性を低下させる.さらに終末期になると悪液質を
発症し,これは通常の栄養管理にても反応せず,衰弱が進行する複雑な病態である.
したがって,がん患者の治療に際しては,例え根治的治療が困難ながん患者であろう
ともがん以外の健常な生体機能の向上に努め,精神的ケアにも十分な配慮を行って,
身体(からだ)と精神(こころ)にも優しいがん治療を,がんの診断とともに開始す
ることが肝要である.
一方,わが国の人口動態をみるとこの栄養サポートチーム(NST)の稼働施設数は
決して十分とは言えない.すなわち,わが国の 2010 年の推定死亡者数はおよそ 120
万人であるが,20~30 年後には 170 万人に膨れ上がる.これに対してわが国の病床数
は減少の一途をたどっている.要するにおよそ『50 万人の患者の命』が路頭に迷うこ
とになる.このような将来の危惧すべき事態に対する対策のひとつが適正栄養管理の
普及である.すなわち,栄養管理を駆使した社会福祉体制を如何に早く構築するかが
重点課題となる.その意味で診療報酬としての「栄養管理実施加算」や「NST 加算」
はその大きな問題点を解決する第一歩であり,決してこの灯を消してはならず,この
期にわが国の栄養管理を基盤とした医療体制を確立させることが必要である.
したがって,将来のわが国の医療および福祉の方向は,①患者中心の医療,②チー
ム医療,③高齢者医療や福祉の確立,④地域連携の重視,⑤医療費削減に集約される.
それを達成するためには,『食べて治す,食べて癒す』をキーワードとする病院自宅
32
化および自宅病院化プロジェクト(在宅-訪問看護-長期療養施設―回復期施設-病院医
療の一本化)が必須であり,そのためにはまずは食べるためのお口のケア(口腔ケア)
の徹底から一歩ずつ進めていかねばならない.これは今世紀最大の医療改革である.
[プロフィール]
東口髙志(ひがしぐち たかし)
略歴
1981. 3
1981. 7
1987. 7
1987. 7
1990. 1
三重大学医学部卒業
三重大学医学部第一外科入局
三重大学大学院医学研究科修了(医学博士号取得)
三重大学医学部第一外科助手
米国オハイオ州シンシナティー大学外科学講座(J.E.Fischer 教授)Research
fellow
1994.11 三重大学医学部第一外科講師
1996.11 厚生連鈴鹿中央総合病院外科医長
2000. 1 尾鷲総合病院外科・手術室部長
2003. 4 尾鷲総合病院副院長・外科部長
2003.10 藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座教授
2009. 2 藤田保健衛生大学七栗サナトリウム副院長(兼任)
2010. 3 藤田保健衛生大学第一教育病院緩和ケアセンター長(兼任)
2012. 4 藤田保健衛生大学第一教育病院食養部部長(兼任)
認定医・専門医資格
日本外科学会指導医・専門医,日本消化器外科学会指導医・専門医,日本消化器病学
会指導医・専門医,日本緩和医療学会暫定指導医,他
所属学会・役職
日本静脈経腸栄養学会理事長(2012.2.25~),日本栄養療法推進協議会理事,日本外
科代謝栄養学会理事・評議員,日本緩和医療学会理事・代議員,NPO 法人 PEG ドク
ターズネットワーク理事,日本外科学会代議員,日本肝胆膵外科学会評議員,日本臨
床外科学会評議員,日本クリニカルパス学会評議員,日本死の臨床研究会世話人,日
本栄養材形状機能研究会世話人,三重緩和医療研究会代表世話人,三重中勢緩和ケア
研究会代表世話人,
愛知緩和医療研究会代表世話人,
豊明緩和医療研究会代表世話人,
NPO 法人キャンサーリボンズ委員,他
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シンポジウム
テーマ:
口から食べる~口腔リハビリテーション 多職種協働に向けて~
1. 口から食べる~口腔リハビリテーション 多職種協働に向けて
江頭文江
地域栄養ケア PEACH 厚木 代表 管理栄養士
2. 口腔リハビリテーション 多職種協働に向けての歯科の役割について
晴山婦美子
いわてリハビリテーションセンター 歯科衛生士
3. 在宅・施設における摂食・嚥下リハビリテーション
菊谷 武
日本歯科大学 教授
口腔リハビリテーション多摩クリニック
大学院生命歯学研究科 臨床口腔機能学
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口から食べる ~口腔リハビリテーション 多職種協働に向けて~
地域栄養ケア PEACH 厚木 代表 管理栄養士
江頭文江
摂食・嚥下障害とはまさに「口から食べることの障害」であり,食べるということ
に関わる職種として,管理栄養士は大きな役割を担っている.
「口から食べる」という
ことは,生命維持のための栄養・水分の補給手段でもあり,かつ生きがいある生活を
送るための楽しみのひとつにもなる.
低栄養状態は体力の低下や感染症のリスクを高め,誤嚥性肺炎予防には良好な栄養
状態を保つことは,非常に重要である.摂食・嚥下障害への栄養管理は,決して特別
なことではなく,誤嚥性肺炎予防のための全身管理のひとつと考え,全職種が念頭に
おき,対応していくべきものとも考えている.
一方で,食歴は個々により異なるが,その食嗜好を考慮し,見た目や匂いなど五感
を刺激できる食事を提供し,食を楽しむという,ということも重要である.
さらに,誤嚥予防のための安全な食事形態の決定のプロセスでは,他職種からの嚥
下評価を受けて,食材の特徴の理解し,調理の工夫を行い提供する.管理栄養士であ
っても,食事形態やとろみの程度を助言するためには,ある程度患者(利用者)の機
能評価ができないと,その食形態を決定することは難しい.多職種で相互に評価し,
どのような条件でどんなものならば食べられるか,ということをディスカッションし
ていくプロセスは非常に大切である.
また栄養・食支援は,病院や施設という単一組織の中で完結はせず,地域一体型 NST
(栄養サポートチーム)として,退院(退所)後の在宅における栄養ケアも注目され
ている.訪問栄養指導は 7 割以上が摂食・嚥下困難に関する依頼であり,摂食・嚥下
機能に関する栄養ケアのニーズは高い.病院でも,施設でも,在宅でのシームレスな
食支援を行うために,それぞれの環境での人材育成,スキルアップ,ネットワーク作
りが重要となる.
36
[プロフィール]
江頭文江(えがしら ふみえ)
福井県生まれ
1992 年 静岡県立大学短期大学部食物栄養学科卒業
社会福祉法人聖隷福祉事業団 聖隷三方原病院栄養科
1999 年 ピーチサポート代表
2003 年 地域栄養ケア PEACH 厚木代表
所属学会
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会評議員,日本褥瘡学会関東甲信越地方会神奈
川県支部世話人,日本栄養改善学会,日本静脈・経腸栄養学会,日本病態栄養学会,
神奈川摂食・嚥下リハビリテーション研究会世話人,神奈川 PDN 世話人
著書
「チームで実践 高齢者の栄養ケア・マネジメント」
(著)中央法規出版
「在宅生活を支える!これからの新しい嚥下食レシピ」
(著)三輪書店
「嚥下食ピラミッドによる嚥下食レシピ 125」(編著)医歯薬出版
「まるわかり!高齢者栄養ケア・マネジメント」
(編著)日総研
「ベッドサイドから在宅で使える嚥下食のすべて」
(共著)医歯薬出版
「わかる!摂食・嚥下リハビリテーションⅢ~栄養管理と障害へのアプローチ」
「わかる!摂食・嚥下リハビリテーションⅠ~評価法と対処法」
(共著)医歯薬出版
「誤嚥を防ぐケアとリハビリテーション」
(共著)日本看護協会出版部
「ナースのための摂食・嚥下障害ガイドブック」
(共著)中央法規出版
「在宅医療実践マニュアル第 2 版」(共著)医歯薬出版
「脳損傷に伴う摂食・嚥下障害標準化ガイド」(共著)
「がんばらないで家庭介護」
(分担監修)がんばらない介護生活を考える会
「かみにくい・飲み込みにくい人の食事」
(料理監修)主婦と生活社
「高齢者の疾病と栄養改善へのストラテジー」(共著)第一出版,他
受賞
第 27 回神奈川県栄養改善学会賞
「開業医との連携による地域栄養サポート活動」
(2003
年),第 32 回神奈川県歯科保健賞(2006 年)
,第 76 回日本栄養改善学会奨励賞「訪問
栄養指導対象者の現状分析と転帰に関する研究」
(2010 年)
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口腔リハビリテーション 多職種協働に向けての歯科の役割について
いわてリハビリテーションセンター 歯科衛生士
晴山婦美子
リハビリテーションプログラムにおいて,
「歩行や日常生活動作の習得は最も優先さ
れるが,顔や口の問題はしばしば見逃されて治療の対象とされず,治療されずに放置
された障害は,患者の生活の質を低下させる」1 と言われております.
「口が動かない」などの症状は,口腔や顔面などの局所的なものだけでなく,全身的
な筋の過剰な緊張と異常姿勢が関連して出現する 2 ことから,口腔リハビリテーショ
ンは,多職種によるチームアプローチが重要であり,看護師,理学療法士,作業療法
士および言語聴覚士(ST)などの協力を得ながら,治療プログラムに取り込んでいく
ことで効果的な改善が期待されます.
当センターは,回復期病床 100 床のリハビリテーション病院です.歯科は非常勤の
歯科医師により週 2 回の診療を行っており,歯科疾患の治療の他に,主治医や ST と
連携し,軟口蓋挙上装置(PLP)の作製や口唇閉鎖・舌の筋力向上を目的とした訓練
器具の作製も行っています.その際,製作から調整や評価の場面において担当 ST と
情報を密にして行っており,調整の場面に ST が立ち会うこともあります.この ST と
の連携を通して,
「話すことを改善するための治療・訓練は,食べるための動きの改善
にもつながり,同様に正しく食べる動きは,話すためにも有益になる」1)ということ
に気づく機会となりました.
一方,病棟における口腔ケアは看護師が中心に行っておりますが,実施に際して困
難な症状が見られる場合は,歯科衛生士が手技および口腔ケア用品についての指導を
しております.そして,快適な口腔ケアの提供のために,理学療法士,作業療法士に
よるリラクセーションやポジショニングも重要なポイントとなることから,歯科衛生
士は口腔の健康の専門家としていち早く口腔と全身状態の問題を把握して専門的な治
療を行う以外に,
多職種との連携のコーディネーターとしての役割が求められており,
この点についても述べさせていただきます.
1
P・M・デービス著 冨田昌夫 訳「Steps To Follow-ボバース概念に基づく片麻痺
の治療法」1987 年
2
晴山 婦美子他「看護に役立つ口腔ケアテクニック」2008 年
38
[プロフィール]
晴山婦美子(はれやま ふみこ)
学歴
昭和 50 年 岩手県立衛生学院 歯科衛生士科卒業
職歴
昭和 50~63 年
平成 10~21 年
平成 14~17 年
平成 5 年~
開業医勤務
遠野市宮守歯科診療所 非常勤(訪問口腔ケア)
盛岡市佐藤たもつ歯科医院 非常勤(在宅訪問口腔ケア)
(財)いわてリハビリテーションセンター
社会活動
昭和 61~平成 13 年(社)岩手県歯科衛生士会役員
平成 11~12 年(社)日本歯科衛生士会理事,介護保険対策委員
平成 14~15 年(社)日本歯科衛生士会,高齢者歯の健康づくり事業委員
平成 16 年
(社)日本歯科衛生士会,痴呆高齢者の口腔ケアに関する調査事業委員
平成 16~19 年(社)岩手県歯科衛生士会研修委員
平成 20 年~現在 (社)岩手県歯科衛生士会副会長
平成 21 年~
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会評議員,認定士
共著
「おとなのための歯と口の健康づくり」医歯薬出版,2000
「多職種のための口腔ケア-期待される介護-」口腔保健協会,2001
「プロフェショナル・オーラル・ヘルス・ケア~多くの方へ口腔ケアを」医歯薬出版,
2002
「器材からみるオーラルケア-私はこの製品をこう使っています-2005」ヒョーロ
ン・パブリッシャーズ
「看護に役立つ口腔ケアテクニック」医歯薬出版,2008
39
在宅・施設における摂食・嚥下リハビリテーション
日本歯科大学 教授
口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長
大学院生命歯学研究科 臨床口腔機能学
菊谷 武
患者は地域の中に暮らし,家族やフォーマルまたはインフォーマルなサービスの支
援を受けながら生活している.在宅・施設における摂食・嚥下障害患者に対するリハ
ビリテーションにおいては,これらの支援の中で患者を支えることになる.患者の食
べることの可否やどの程度までの食形態が安全に食べることができるかということに
ついては,患者本人の摂食機能にのみ左右されるものではない.患者の摂食機能は,
それを決定する一つの指標に過ぎなく,むしろ,患者を支える環境因子こそがこれを
決定する際に大きな影響を与えるともいえる.すなわち,患者の咀嚼機能や嚥下機能
が大きく障害されていても,患者の機能に適した食形態を提供できる体制であれば,
さらには,食事の介助場面においても適正な食事姿勢をとることができ,十分な見守
りのもと介助できる環境であれば,患者は安全に食べることができる.
一方,患者の咀嚼機能や嚥下機能がたとえ十分に備わっていたとしても,患者を支
える体制がとれない環境においては,いつ何時,窒息事故や誤嚥事故が発生してもお
かしくはない.摂食・嚥下リハビリテーションを実施する際に,評価者は,患者のも
つ摂食機能と同時に,患者を支える環境因子について十分に評価することが求められ
ることになる.在宅で療養し通院が不可能な患者は,総じて ADL,認知機能ともに著
しく低下している場合が多い.これらの患者には,嚥下機能を高める訓練等は無効で
ある場合が多く,安全にかつ十分な食事をするには,摂食嚥下機能にあわせた食環境
や食内容の改善が必要となる.
そこで,摂食・嚥下リハビリテーションを実施する私たちには,患者を支える環境
に即した指導が求められることになり,さらには,環境の改善を誘導することが必須
となる.一方,患者本人や家族の食べることや食形態へのこだわりの中で,それらを
実現したいとする想いを尊重しつつ,窒息や誤嚥を起こす可能性を示し,経口摂取の
禁止や食形態の変更を提案する医療者としての立場との狭間で日々悩んでいる.
本講演では,
「口から食べる」を支えるために,私たちが行っている在宅歯科診療に
おける摂食支援,栄養支援について紹介する.
40
[プロフィール]
菊谷 武(きくたに たけし)
日本歯科大学 教授
口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長
大学院生命歯学研究科 臨床口腔機能学
東京医科大学兼任教授
岡山大学,広島大学,九州歯科大学,琉球大学,徳島大学 非常勤講師
平成元年 歯学部附属病院高齢者歯科診療科入局
平成 13 年 10 月 附属病院 口腔介護・リハビリテーションセンター センター長
平成 17 年 4 月 助教授
平成 19 年 4 月 准教授
平成 22 年 4 月 教授
平成 22 年 6 月 大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学教授
平成 24 年 1 月 東京医科大学兼任教授
平成 24 年 4 月 口腔リハビリテーションセンター(名称変更)
平成 24 年 10 月 口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長
日本老年歯科医学会 理事・評議員,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 理事・
評議員,日本障害者歯科学会 評議員
平成 21~23 年度厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)「介護予防にお
ける口腔機能向上・維持管理の推進に関する研究」主任研究者
平成 24~26 年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総
合研究事業)
「歯科介入型の新たな口腔管理法の開発及び介入効果の検証等に関する研
究」主任研究者
著書
『高齢者の口腔機能評価 NAVI』医歯薬出版,
『図解 介護のための口腔ケア』講談社,
『ベッドサイドの高齢者の診かた』南山堂,
『基礎から学ぶ口腔ケア』学研,
『在宅歯
科診療実践マニュアル』厚友出版,
『介護予防のための 口腔機能向上マニュアル』建
帛社,『かむのみこむが困難な人の食事』女子栄養大学出版,
『介護予防と口腔機能の
『新しい介護』講談社,
『医療連携による在宅歯科医療』ヒョ
向上 Q&A』医歯薬出版,
ーロン,他
41
認定医研修セミナー
摂食・嚥下機能評価実習
ハンズオンセミナー
~基礎からの摂食・嚥下評価~
日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長
日本歯科大学大学院生命歯学研究科 臨床口腔機能学 教授
菊谷 武
摂食・嚥下障害は様々な原因によって起こることが報告されています。また,嚥下
障害が重篤化した場合,免疫機能の低下に伴う低栄養,脱水,窒息および誤嚥性肺炎
を引き起こすことが知られています。よって,摂食・嚥下障害に関わる医療従事者は,
摂食・嚥下障害の病態を早期に評価・判定し,摂食・嚥下リハビリテーションの計画,
実施を行うことが重要です。
現在,摂食・嚥下評価の精密検査として,嚥下造影検査(VF 検査)と嚥下内視鏡
検査(VE 検査)があげられます。VF 検査は,摂食・嚥下評価のゴールドスタンダー
ドとしてその有用性について多く報告されています。しかし,検査には大型の X 線装
置が必要なため,在宅および施設における評価には困難であります。一方で,VE 検
査は持ち運びが可能であり,また,モニターを通して家族や施設職員と伴に,嚥下機
能の確認が可能であり,その後の食形態の調整や代償姿勢などの食事の環境整備の重
要性についても情報の共有が可能であるため,多職種による連携もとりやすく,在宅
および施設での摂食・嚥下評価に非常に有効であります。しかし,嚥下の瞬間は観察
ができないこと,咽頭期の評価が中心であり,食道期の評価が困難である欠点もあり
ます。
摂食・嚥下障害は様々な原因によって引き起こされるため,適切な診断のためには
VE 検査から得られる情報だけでは限界があります。よって,摂食・嚥下評価時の問
診(医療面接),嚥下スクリーニング検査から得られる情報は診断を行う上で非常に
重要であると考えます。
よって,本セミナーでは,VE 検査の手技だけでなく,スクリーニング検査から嚥
下内視鏡検査に至る一連の評価システム,内視鏡検査時の器質的な疾患,嚥下障害の
徴候を早期に発見するための特徴的な所見および代償法について,座学と実習を合わ
せて学習することを目的とします。
本セミナーが、皆様の摂食・嚥下評価におけるスキルアップにつながっていただけ
れば幸いであります。
44
一般演題
演題 1
口腔機能の早期付与および長期維持のためのインプラント表面ナノ構造制御
Implant surface control the nano structure for early stage endowment and long-term
maintenance of oral function
○小正 聡 1,田口洋一郎 2,西田尚敬 3,藤野智子 4,中野蓉子 1,楠本哲次 4,西崎 宏 1,
田中昌博 4,岡崎定司 1
○Satoshi Komasa1, Yoichiro Taguchi2, Hisataka Nishida3, Tomoko Fujino4, Yoko Nakano1,
Tetsuji Kusumoto4, Hiroshi Nishizaki1, Masahiro Tanaka4, Joji Okazaki1
大阪歯科大学
1
欠損歯列補綴咬合学講座,2 歯周病学講座,3 歯科保存学講座,4 有歯
補綴咬合学講座
Osaka Dental University,
2
1
Department of Removable Prosthodontics and Occlusion,
3
Periodontology, Operative Dentistry, 4Fixed Prosthodontics and Occlusion
インプラント治療は補綴治療において欠かせない選択肢の一つであり,良好な口
腔機能を維持するためにはオッセオインテグレーション獲得の短縮化が必要となる.
我々は室温での濃アルカリ水溶液中下で純チタン金属表面上にナノシート構造
(TNS)が析出し,細胞の骨分化誘導能に影響することを報告した.今回のような
表面制御がチタン合金にも応用できれば,どのインプラント材料においてもオッセ
オインテグレーションを短縮することが可能となる.そこで,本研究ではインプラ
ント材料として使用される代表的なチタン合金の一つであるTi-6Al-4V表面上にTNS
を形成し,骨髄細胞の分化誘導について比較,検討を行った.
実験材料として水酸化ナトリウム水溶液による濃アルカリ修飾によりTNSを析出
させた市販のTi-6Al-4V合金を使用し,対照群として#2000まで研磨した同材料を使
用した.ウシ血清アルブミンとウシ血清フィブロネクチンを用いてタンパク質の吸
着試験を行った.
次に,生後7週齢のSD系雄性ラットの両側大腿骨から骨髄間葉細胞を採取し初代
培養を確立し,その3代目を実験に供した.細胞を1穴あたり4×104個ずつ各試料上
に播種し,培地に10 mM β-グリセロン酸ナトリウム,82μg/mL アスコルビン酸お
よび10Mデキサメタゾン含有の分化誘導培地を用い,培養後14,21日後のALP活性
および28日後のオステオカルシン量およびCa量を測定した.蛍光顕微鏡の所見では,
実験群,対照群ともに細胞の接着像が認められた.14,21日後のALP活性,28日後
のオステオカルシンの産生量およびCaの析出量はすべて実験群で対照群と比較して
有意に高かった.
この結果から,チタン合金においてもナノレベルでの表面改質が骨髄細胞の接着に
影響を及ぼし,更に硬組織への分化誘導の向上に有用であるという可能性の一端が示
唆された.
46
演題 2
訪問歯科診療に有用な総義歯治療の術式について
The method of effective complete denture in visiting dental treatment
○山下順司 1,山口貴史 1,覚道健治 2
○Junji Yamashita 1,Takashi Yamaguchi 1,Kenji Kakudo 2
1
医療法人明貴会 三条山口歯科医院
2
大阪歯科大学口腔外科学第二講座
1
Meikikai Health Care Corporation Sanjyoyamaguchi Dental Office
2
Second Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Osaka Dental University
高齢化社会に伴い,歯科における訪問診療の需要は年々大きくなっている.特に高
齢者の総義歯治療は,顎堤の高度吸収やフラビーガムなど難症例に遭遇することが多
くなり,対応が難しくなってきている.
このような難症例における総義歯では辺縁封鎖が悪く,不安定になるため歯槽堤粘
膜に疼痛を起こしやすく,結果として咀嚼しにくいものとなりやすい.しかも,咬合
調整に長時間を要し,患者に身体的な負担を強いやすいと考えられる.
我々は,調整を少なくした総義歯治療の新しい術式の開発に着手し,訪問診療に有
用であることを実証したので,ここに報告する.
この総義歯は不安定になりがちな下顎を安定化させるために,試適の際にシリコン
片を咬ませ転覆するようなら,人工歯の歯軸の角度を変え安定化を図るものである.
その際にモンソンカーブ他 3 タイプの咬合関係を設定する.
なお現在,独自の口腔ケアシステムとともに,この総義歯で患者の生活の質を向上
させるため,日々の診療に当たっている.
47
演題 3
20 年経過インプラントにおける Biological height の臨床的考察
Clinical study of biological height in implant of passage of 20 years
○阪本貴司 1, 2,入江 舞 1,森川紗里 1,鶴田美緒 1,吉川沙絵 1,稲田明子 1,
宮本佳苗 1,阪本光伸 1, 3,覚道健治 2
○Takashi Sakamoto1, 2, Mai Irie1, Sari Morikawa1, Mio Tsuruta1, Sae Yoshikawa1,
Mitsunobu Sakamoto1, 3, Kenji Kakudo2
1
医療法人白鵬会 阪本歯科,2 大阪歯科大学 口腔外科第 2 講座
3
朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座小児歯科学分野
1
Sakamoto Dental Clinic
2
Second Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Osaka Dental University
3
Department of Pediatric Dentistry, Division of Oral Structure, Function and Development,
Asahi University School of Dentistry
Ⅰ目的:
インプラント歯頸部周囲組織は,天然歯の Biologic Width と同様に一定の高さを保
って治癒する.その付着部軟組織の高さは約 3mm で Biological height と呼ばれる.二
回法インプラントの接合部では,歯槽骨頂部の骨吸収によってこの高さが確保されて
いることが多い.今回、20 年以上経過した二回法チタンインプラント(I.M.Z.)のレ
ントゲンから Biological height の変化を経年的に検討した.
Ⅱ方法:
測定に使用したインプラントは,1992 年に下顎左右 6,7 部遊離端欠損部に 2 本ず
つ埋入され,上部構造物は左右とも連結固定された.一次手術から 3 カ月後に二次手
術を施行し,その直後から左右 6 番 7 番の近心および遠心部の計 8 カ所のフィクスチ
ャー・アバットメント接合部(以下 FA-Junction)から歯槽骨底部までの距離をデンタ
ルレントゲンにて測定した.
Ⅲ結果:
二次手術後からすべての計測部位において 3~4mm の歯槽骨の急速な吸収が見ら
れた.しかし,6 カ月目以降は著名な吸収像は認めなかった.以後 20 年間の計測にお
いてすべての部位で 5mm 以上の骨吸収は認めていない.いずれの部位の吸収も杯状
を呈し,炎症所見はまったく見られていない.
Ⅳ考察および結論:
Biological height による骨吸収は,二次手術後 6 カ月~1 年の間に生じる骨吸収で,
Biologic Width 原理によって正しく治癒した結果であり異常像ではない.その吸収は,
FA-Junction の存在する二回法インプラントの特有の吸収像であり,接合部のない一回
法インプラントには認められない.収像は杯状を呈することが多く,インプラント周
囲炎のナイフ状の吸収像とは区別される.
20 年経過インプラントの Biological height の経年的変化を計測し予後の評価につい
て考察した.
48
演題 4
咬合挙上によるシャープネスを用いた音質評価
Sound quality evaluation about sharpness by bite rising
○阿座上遼子,山村 理,小川雅之,藤原 周
○Ryoko Azakami, Osamu Yamamura, Masayuki Ogawa, Shuu Fujiwara
朝日大学歯学部口腔機能修復学講座歯科補綴学分野
Division of Oral Functional Science and Rehabilitation, Asahi University, School of Dentistry
【目的】
これまでに我々は新たな音声検査方法とその利用法の確立を目的とした基礎的研
究を行い報告してきた.現在歯科分野で用いられる音声評価法は,不特定の人間によ
る主観に頼った試験方法が主であるため,検査を行う人間によっては結果に差異が生
じる可能性が指摘されている.そこで着眼したのは,近年,車や電化製品の音響設計
に用いられている音質評価である.音質評価とは,人間が聞いた時にどう感じるかを
定量化したもので,種々の音質量が存在する.音質評価を新たな音声評価法として使
用するにあたり,本講座では統計学的な有意差をもって歯科補綴物を口腔内に装着し
た際の変化を確認してきた.本研究では歯科補綴物による咬合挙上を想定し,音質評
価を用いた音声検査を行ったので報告する.
【研究方法】
対象被験者は歯の欠損が無く個性正常咬合を有し,顎口腔機能に異常の無いボラン
ティアを選択した.被験語は,あ行~わ行までの清音 50 音に濁音,半濁音を加えた
計 75 音を被験語として選択した.咬合挙上床の製作は,被験者の上下顎模型を松風
社製プロアーチⅡG 咬合器に装着,4mm 挙上し,下顎模型上で松風社製オーソパレッ
ト歯科用レジンを用いて行った.対象被験者には朝日大学附属病院,顎機能検査施設
内の無響音室にて,コントロールとして制作した咬合挙上床を未装着の状態で被験語
を発音させ,小野測器社製高機能騒音計 LA-5560 に録音・記録し,その後,各被験者
に咬合挙上床を装着させ同様に記録した.得られた音声サンプルを,小野測器社製
OSCOPE2 を用いた音質評価指標のうち,ラウドネス,シャープネスの 2 項目につい
て解析し,多重比較検定にて統計処理を行った.
【結果・考察】
咬合挙上床の装着によってラウドネス,シャープネス,それぞれの音質評価に変化
が認められた.咬合挙上床を装着することで口腔内環境の変化,つまりは音響の変化
が引き起こされたことが新たな検査法を用い確認された.これにより今後,音質評価
が音声評価法として確立されることが示唆された.
49
演題 5
音声入力を用いた口腔診査記録の試み ―「より」を用いた入力時間の短縮 ―
New trial of direct speech input for oral examination records
― Shortening of input time using “yori” ―
○米谷裕之 1 ,有田清三郎 2,小出 武 1,松本晃一 1,永目誠吾 1,
辻 一起子 1,辰巳浩隆 1,米田 護 1 ,大西明雄 1 ,樋口恭子 1
○ Hiroyuki Kometani1, Seizaburo Arita2, Takeshi Koide1, Koichi Matsumoto1, Seigo
Nagame1, Ikiko Tsuji1, Hirotaka Tatsumi1, Mamoru Komeda1, Akio Ohnishi1, Kyoko Higuchi1
1
大阪歯科大学
総合診療・診断科
2
同志社大学 生命医科学部
1
Department of Interdisciplinary Dentistry and Oral Diagnosis,
2
Faculty of Life and Medical Sciences, Doshisha University
われわれは初診患者に対する口腔診査で,歯科医の診査する音声をマイクでひろい,
音声認識ソフトにより文字に変換し,診査記録を直接コンピュータに入力するシステ
ムを開発してきた.本システムで一歯単位の入力を行っているが,中切歯から第二小
臼歯まで連続して欠損している場合には,一歯ずつの入力では手間がかかる.そこで
われわれは「1 より 5Mis」というように「より」という用語を用いて入力時間を短縮
している.
今回,本システムで「より」を用いることにより,どの程度の時間短縮になるのか
を検討した.一歯ずつの入力法(A 法)と「より」を用いた入力法(Y 法)で音声入
力を行い,時間の比較を行った.その結果,各欠損症例で Y 法の入力時間が A 法に
比べて短かった.
50
演題 6
舌接触補助床により咀嚼・嚥下能力を維持できた一症例
Which the palatal augmentation prosthesis it has maintained ingestion and swallowing
capability. A case report.
○古賀登志子,清水けふ子,清水登志子, 鈴木節子
○Toshiko Koga,Kyouko shimizu,Toshiko Shimizu, Sethuko Shuzuki
医療法人健和会 柳原歯科診療所
Medical Corporation Kenwa Meeting Yanagihara Dental Clinic
【目的】長期にわたって形成された障害者の咀嚼機能は,加齢による歯牙喪失に伴い,
義歯使用となった場合,咀嚼困難となりうることがある.現状では,通常の健常者に
対する義歯形態で使いこなすことができない場合,義歯は未使用となる場合が多い.
今回,義歯の形態を変えることにより,義歯使用可能となり,咀嚼機能,嚥下機能を
回復することができ,1 口大の経口摂取を維持することができたのでここに報告する.
【対象】年齢:65 歳
女性
要介護 5
現病名:脳性小児麻痺の後遺症による手指四
肢変形,変形性頚椎症,両変形性膝関節症、心不全,狭心症,肺炎の既往歴無.障害
老人の日常生活自立度:B1,認知症老人の日常生活自立度:Ⅰ,食事摂取状況は,常
食 1 口大をスプーン・フォークにより自食,口腔内状況:上顎前歯 2 本重度歯周病,
残存歯 21 本,義歯無.
【経過】2012.4 重度歯周病により 1
1 抜歯.5 月 1
1 部分床義歯作成するが,食
事中に義歯脱落の訴え有り.食事観察により,舌尖が口蓋に押しつけ前噛み傾向とな
るため脱落することが解り,奥舌の力も弱いことから,嚥下しやすいように舌接触補
助床を再製する.義歯完成までの間,口腔ケア時,舌の左右運動,頬の膨らましなど
による頬筋の強化運動を取り入れた.5 月義歯装着。
【結果と考察】義歯装着後において舌突出がみられなくなり,食べこぼしや嚥下もス
ムーズにできるようになった.脳性小児麻痺のため,長期にわたり,異常の獲得した
方法で摂食・咀嚼・嚥下されていたと考えられる.歯牙喪失となり口腔内状況が変化
することで摂食・嚥下が妨げられ,栄養摂取困難になることも十分考慮しなければな
らない.高齢になってからではなく,小児脳性麻痺による咀嚼運動障害は,早期に摂
食・咀嚼・嚥下の訓練を行うことも必要ではないかと考える.
51
演題 7
挺舌訓練が立位バランスに与える影響
Effect of extrusion tongue movement standing balance
○井村 亘 1, 渡邊真紀 1, 佐藤仁美 2, 大森大輔 3, 大西正裕 4
○Wataru Imura 1 , Maki Watanabe 1, Hitomi Satou 2, Daisuke Oomori 3, Masahiro Oonisi 4
1
玉野総合医療専門学校 作業療法学科, 2 児島中央病院,
老人保健施設エスぺランスわけ, 4 介護老人保健施設南岡山ナーシングホーム
1
Tamano Institute of Health and Human Services, 2 Kojima Central Hospital, 3 Geriatric
Health-Care Facility:,Esperance Wake, 4 Geriatric Health-Care Facility:, Minamiokayama
Nursing Home
3
【目的】
立位バランス不良により日常生活活動に制限が生じている対象者は多く,作業療法
においても立位バランスの向上を目的とした訓練への関心は高い.口腔と立位バラン
スとの関係において,咬合の影響に関する報告は多くなされている.しかし,舌運動
と立位バランスとの関係についての報告は少ない.今回は立位バランス機能の向上を
目的とした挺舌訓練を提案し,その効果を検証した.
【対象と方法】
被験者は健常者 19 名(平均年齢 19.9±3.9 歳)を対象とした.立位バランス機能に
ついては重心動揺計を用い,開眼片脚立位の重心動揺を計測した.計測姿勢は,右片
脚立位,開眼で両上肢は腰につけた状態とし,挙上側の下肢は支持側の下肢に接触さ
せず,自然な状態で浮かせるように指示した.また,視線は 2m前方の目の高さの視
標を注視させた.測定項目は総軌跡長,単位軌跡長,外周面積,矩形面積とした.手
順は 1)30 秒間の重心動揺を計測した.2)数日後,挺舌訓練を1セット施行した.3)
その直後,30 秒間の重心動揺を計測し,1)と比較した.挺舌訓練方法は舌の前方突
出運動 10 秒間×20 回,左右運動 10 秒間×10 往復とし,それぞれ最大可動域までの
運動を指示した.
【結果と考察】
総軌跡長,単位軌跡長は有意な減少が認められた(p<0.01)
.外周面積,矩形面積
に有意な差は認められなかった.以上のことから,挺舌訓練は重心動揺距離・速度の
減少に貢献できることが証明された.
中心軸を安定させることは立位バランスの向上につながる.挺舌訓練は,舌筋の収
縮により直接頸部,肩甲骨の筋に緊張を伝え,また,人体の筋筋膜線の中心軸をなす
深前線を適切に機能させたと考えられる.今回の研究により,挺舌訓練は立位バラン
ス向上の一つの手段になりうることが示唆された.
52
演題 8
義歯が役立った摂食嚥下障害症例の特徴
Characteristics of swallowing disorder cases helped removable denture
○吉田光由
○Mitsuyoshi Yoshida
広島市総合リハビリテーションセンター
Hiroshima City General Rehabilitation Center
演者は平成 20 年 4 月より新設された広島市総合リハビリテーションセンターに勤
務している.その傍ら依頼により平成 21 年 5 月より,広島県の西部にある 60 床の回
復期リハビリテーション病床と 60 床の療養型病床をもつ某病院で月 1 回行われてい
る嚥下外来にチームの一員として参画している.ここでは本院に通院,入院されてい
る患者や関連の介護保険施設の入所者で主治医から摂食嚥下障害の評価を依頼され
た者に対し,耳鼻科医を中心に嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)を実施、
姿勢調整や食形態,訓練方法の決定等を行い,月に 1 回ということもあり,ST はも
ちろん,PT や OT への訓練処方をはじめ,看護師への指示まで検査日当日に可能な限
りのことが行えるような体制をとっている.
演者は,摂食嚥下障害の診断に加わるのはもちろん,検査日当日の義歯の修理や次
回の検査までの期間での義歯新製治療などを行っている.このような取り組みの中か
ら,義歯により摂食嚥下機能の改善につながった症例をいくつか経験した.このよう
な症例を振り返ってみると,①通常の義歯の修理もしくは新製により義歯が安定し舌
による送り込み運動が安定した場合や②舌接触補助床など嚥下を補助するための口
腔内装置の作製することで食塊の送りこみを改善できた場合などがあった.
そこで今回、このような症例を紹介しながら,義歯が摂食嚥下障害の改善に役立っ
た症例の特徴をまとめることで,歯科との連携が有効と思われる症例について検討し
た.このような歯科に依頼した方がよい症例が明らかになることは,訪問診療での対
応となることが多い歯科が摂食嚥下障害患者のチーム医療の一員となっていくため
の一助になりえるものと思われる.
53
演題 9
在宅療養中の要介護高齢者に対して多職種支援が有効であった症例
A case report: effect of support among multi-profession in the elderly patient
○手嶋久子 1,清水けふ子 1,古賀登志子 1,高橋秀直 2,亀澤範之 3,保母妃美子 4,
高橋賢晃 4,菊谷 武 4
○Hisako Teshima1, Kyouko Shimizu1, Toshiko Koga1, Hidenao Takahashi2, Noriyuki
Kamezawa3, Kimiko Hobo 4, Noriaki Takahashi4, Takeshi Kikutani4
1
三ノ輪口腔ケアセンター,2 台東区台東歯科医師会,3 台東区浅草歯科医師会,4 日本
歯科大学附属病院 口腔リハビリテーションセンター
1
Taito Minowa Oral Care Center,2 Taito Dental Association,3 Asakusa Dental Association,
4
Rehabilitation Clinic for Speech and Swallowing Disorders, The Nippon Dental University
School of Life Dentistry at Tokyo, Dental Hospital
【目的】今回,要介護高齢者に対して,歯科から介護支援専門員に問題提示を行い,
多職種連携で,環境改善に取り組んだのでここに報告する.
【対象】84 歳,女性,要介護 1,原疾患は脳血管障害,認知症であった.障害老人の
日常生活自立度は A1,認知症老人の日常生活自立はⅡb,食事摂取状況は常食を経口
摂取していた.身長 147cm,体重 39kg,BMI18 であった.
【経過】今年 4 月,
(外国から帰国した)娘からの電話相談で「3 年も義歯を外してな
いので,口の中を診て欲しい」とのことで,三ノ輪口腔センターに来所となった.口
腔内状況は.現在歯 21 本、機能歯 23 本,う蝕 7 本,歯周病を有していた.口腔内乾
燥あり,口腔内清掃不良であった.娘不在の 3 年間で体重が 20kg 減り,食事中と食
後にムセが認められた.また,水分摂取量が 1 日 300cc 程度であることが,問題点と
して挙がった.当センター歯科医師の勧めで,今年 6 月,VE 検査を実施した.水分
に誤嚥が認められ,水分トロミを提案するが,独居状態のため,環境改善が必要な状
況であった.介護支援専門員と連携して,体重維持の面から,食事摂取量の確保,脱
水予防の 2 点を目標とした.週 4 回の訪問介護の際に,声かけにより,本人に義歯を
外させてから,口腔清掃をすること,夕食時用にお茶トロミ 200cc と牛乳カップ 1 杯
を食卓に置いてくることとした.また,週 3 回の通所介護施設利用時に,水分トロミ
摂取 600cc を目標とした.娘不在の 1 カ月間は週 1 回の訪問口腔ケアと水分摂取の確
認,帰国後,当センターで通院治療することとした.水分摂取は在宅,通所施設にお
いて,施設では 600cc 摂取できている.今後,発熱状況,体重の変化を確認しながら
口腔ケアに関わることとする.
【まとめ】高齢者が安心して在宅で生活していくためには,多職種が連携を取り支援
していくことが有効であることが示された.
54
演題 10
介護老人福祉施設において歯科衛生士と多職種が関わり有効であった一例
A case report: Effect of cooperation among multi-profession in nursing care facility for the
elderly
○丸山みどり1,清水けふ子1,古賀登志子1,高橋秀直2,亀澤範之3,保母妃美子4,
高橋賢晃4,菊谷 武4
○Midori Maruyama1, Kyouko Shimizu1, Toshiko Koga1, Hidenao Takahasi2, Noriyuki
Kamezawa3, Kimiko Hobo4, Noriaki Takahashi4, Takeshi Kikutani4
1
三ノ輪口腔ケアセンター,2 台東区台東歯科医師会,3 台東区浅草歯科医師会,4 日本
歯科大学附属病院 口腔リハビリテーションセンター
1
Taito Minowa Oral Care Center, 2 Taito Dental Association , 3 Asakusa Dental Association,
4
Rehabilitation Clinic for Speech and Swallowing Disorders, The Nippon Dental University
School of Life Dentistry at Tokyo, Dental Hospital
【目的】施設に入居者する高齢者は,老化による心身の機能低下に伴い摂食・嚥下障
害に陥りやすいことが知られている.摂食・嚥下障害に伴う食欲の低下は,低栄養・
脱水・誤嚥性肺炎を併発しやすい.よって,摂食・嚥下機能を考慮し,安全で美味し
い食事の提供は必要である.三ノ輪口腔ケアセンターでは,口腔機能維持体制加算に
よる歯科衛生士の月 2 回の施設介入を行っている.また,看護師,管理栄養士,施設
職員,相談員を含めたケアカンファレンスに参加している.今回,カンファレンス時,
摂食・嚥下機能に問題のある入居者に対し,摂食・嚥下機能評価を行い多職種による
連携が有効であった症例を報告する.
【症例】95 歳,女性,要介護度は要介護 4 であった.基礎疾患は,アルツハイマー型
認知症,肺炎既往があった.障害老人の日常生活自立度 C2,認知症老人の日常生活
自立度Ⅳであった.意思疎通は困難であり,口腔内状況は下顎残存歯 5 本,義歯は使
用していなかった.
【経過】初回評価時,粥・ソフト食を自力摂取,食事量は 7 割であった.その後,咀
嚼力が低下し,食事時間が延長,口腔内食物残渣が見られるために,粥・なめらかゼ
リー食に変更,全介助で摂取とした.数カ月後,食事時ムセが見られ吸引が必要にな
ったため誤嚥リスクを減らすため食事量を 1/2 にして補食を加えた.さらに,摂食・
嚥下機能評価のため嚥下内視鏡検査を歯科に依頼した.
【結果と考察】粥からスベラカーゼ粥に変更とトロミの調整,交互嚥下を指導し,入
院もなく全身状態が安定している.歯科衛生士がカンファレンスに参加することで,
口腔内の状態や口腔機能についての問題点を提示でき,多職種と入居者の状態に対す
る認識を統一することで,効果的な食環境整備に繋げられると考えられた.
55
演題 11
当科における訪問による摂食・嚥下リハビリテーションについて
Current Situation about Dysphagia Rehabilitation by Visiting: Activities in the Department of
Geriatric Dentistry
○伊藤 彩, 菅 武雄, 飯田良平, 山本 健, 森戸光彦
○Aya Ito, Takeo Suga, Ryohei Iida, Ken Yamamoto, Mitsuhiko Morito
鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座
Department of Geriatric Dentistry, Tsurumi University School of Dental Medicine
【緒言】
近年,摂食・嚥下リハビリテーション関連の訪問依頼が増加している.嚥下機能評
価そして代償的介入方法や訓練の依頼である.訪問における当科の対応の現状の対応
について報告する.
【方法】
調査対象は平成 24 年 1 月 1 日から 7 月 20 日の間に対応した,摂食・嚥下障害につ
いての依頼を受け,訪問対応した患者とした.
【結果】
期間中の患者数は 41 名(男性 14 名, 女性 27 名)で,年齢は 19 歳から 95 歳(平均
78.1 歳)であった.摂食・嚥下障害の基礎疾患は脳梗塞 19,脳出血 5,脳挫傷 2,ALS
2,MSA 2,パーキンソン病 2,認知症 3,その他 16 であった.
依頼元は主治医(医科,歯科含む)29 が最多で,次いで看護師 8,家族 7,管理栄
養士 3,介護支援専門員 2,歯科衛生士 2 であった.訪問先は在宅 21,介護施設 18,
病院 3 であり,訪問回数はのべ 66 回であった.紹介率は 82.9%であった.移動方法
は自動車 40,徒歩 1 であった.平均移動距離は 11.2km で,総移動距離は 668.1km
であった.
患者の栄養方法は経口 32,胃瘻 10,経管 2,胃瘻と経口の併用 2 であった.経口
摂取していない患者で経口摂取の可能性を評価して欲しい,との依頼が 12 件あり,
そのうち 6 例が経口摂取可能であった.経口摂取している患者では,適切な食事介助
方法 30,食事形態の相談 29,適切な食事姿勢の相談 26 などが多かった.
嚥下内視鏡検査は期間内に 30 回実施されており,摂食機能療法の算定は 19 件.診
療に要した時間は平均で 55 分であった.
【まとめ】
今後の課題として,大学病院の機能としての窓口の明確化や対応のシステムなどの
構築や,対応できる歯科医師の養成,移動に関わる費用の医局員負担の解決(車,高
速代金,駐車代金の医局員個人負担),評価や訓練に必須と考えられている言語聴覚
士の雇用などについて報告する.
56
演題 12
嚥下内視鏡検査の普及とシステム化の研究
第一報:検査説明書、同意書、依頼書の整備
Study of Construction of system and the dissemination of endoscopic examination of
swallowing
○菅 武雄, 飯田良平, 伊藤 彩, 池田美智子, 山本 健, 森戸光彦
○Takeo Suga, Ryohei Iida, Aya Ito, Michiko Ikeda, Ken Yamamoto, Mitsuhiko Morito
鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座
Department of Geriatric Dentistry, Tsurumi University School of Dental Medicine
【緒言】
嚥下内視鏡検査の件数が増加しており,これまで以上にシステムとしての構築が急
務となっている.特に検査に関わる説明書と同意書の整備は必須であり,また依頼す
る側との連携を向上させる必要がある.今回,嚥下内視鏡検査の適正な普及と法的整
備も含めた書式の開発を進めている内容について報告する.
【方法】
嚥下内視鏡検査については,検査説明書および検査同意書が必須であるが,これま
では担当者が個別に実施するのみで統一された書式はなかった.そこで,書式が整備
されている他大学および他施設のアドバイスを得て嚥下内視鏡検査説明書および検
査同意書を作成し,本学歯学部倫理審査委員会に諮ったうえで附属病院医療安全委員
会に依頼して書式としての審査を通過させた.
また,検査依頼書に関しては,依頼側の摂食・嚥下障害への知識のばらつきが検査
の効率を低下させることを念頭に,依頼元との研修会や連携の中で修正を加え,依頼
目的を明確にするための書式として発行した.
【結果と考察】
書式の整備は,検査実施の基本であり,事故への対応や法的な整備を視野に入れて
行うべき重要事項である.特に訪問による嚥下内視鏡検査は,その実態が見えにくく,
より安全性や妥当性のアカウンタビリティが求められる.書式整備の以前も以降も事
故などのトラブルは発生していないが,十分な準備のうえで安全で確実な検査体系と
して歯科に根付かせる必要があると考えている.
57
演題 13
PLP 装置の適応評価,調整における歯科と言語聴覚士との協働
Collaboration with ST about evaluation and adjustment of PLP
○森 南都美 1, 菅 武雄 2, 3, 有我朋子 3, 4, 高橋恭子 3, 長友 操 3, 松田奈緒美 3, 竹内み
さ子 3, 石川茂樹 2, 3, 廣田加奈 1, 鈴木絵美 5, 森戸光彦 2
○Natsumi Mori1, Takeo Suga2,3, Tomoko Ariga3,4, Kyoko Takahashi3, Misao Nagatomo3,
Naomi Matsuda3, Misako Takeuchi3, Shigeki Ishikawa2,3, Kana Hirota1, Emi Suzuki5,
Mitsuhiko Morito2
1
西横浜国際総合病院リハビリテーション科(言語聴覚士),2 鶴見大学歯学部高齢者
歯科学講座,3 芽依美会 石川歯科医院 訪問診療チーム,4 鶴見大学歯学部有床義歯
補綴学講座,5 湘南中央病院リハビリテーション科,訪問看護ステーション(言語聴
覚士)
1
Department of Rehabilitation, Nishi Yokohama International Hospital
2
Department of Geriatric Dentistry, Tsurumi University School of Dental Medicine
3
Team of Dental Visit Treatment, Meibi-kai Ishikawa Dental Clinic
4
Department of Removable Prosthodontics, Tsurumi University School of Dental Medicine
5
Rehabilitation Center, Home-visit nursing station, Shonan Central Hospital
【緒言】軟口蓋挙上装置(PLP)に関して,歯科と言語聴覚士の連携が求められるよ
うになってきた.PLP 製作の依頼元はリハビリテーション科医師や患者本人,患者家
族からの依頼が多いが,PLP の適応を評価し,その製作の必要性を最初に認識するの
は言語聴覚士(ST)である.今回,言語聴覚士から歯科に依頼があった PLP 症例 2
例を中心に,その連携について報告する.
【症例 1】47 歳女性,ALS,在宅.通院先の総合病院リハビリテーション科 ST より
PLP 製作を勧められて歯科依頼.歯科,言語聴覚士共に訪問診療にて対応.PLP 装着
にてコミュニケーションに改善が認められた.訪問による嚥下内視鏡検査の同時施行
が有効であった事例であり,言語聴覚士,歯科医師(歯科衛生士)共に訪問診療にて
対応した在宅訪問診療事例であった.
【症例 2】50 歳男性,脳出血,総合病院リハビリテーション科入院中.発語の訓練お
よび改善目的に PLP 適応を ST が指摘し歯科依頼.内視鏡を用いた挙上子の調整およ
び発音明瞭度測定などを実施しながらの協働を実施した.この事例は総合病院リハビ
リテーション科入院中に実施したリハビリテーションで,歯科が訪問診療にて参加し
たものである.
【まとめ】PLP の適応評価,訓練を実施する言語聴覚士から歯科に対して PLP の製作
と調整を依頼し,協働しながらリハビリテーションを進める事例が増えてきた.PLP
は義歯(口蓋床)の設計製作,軟口蓋挙上子の設計設置と調整が発語・嚥下訓練と同
調しなければならないので,入院中に行うリハビリテーションも退院後に在宅で実施
するリハビリテーションも,相互に情報交換し,活動可能な環境創りが必要であると
考えられた.
58
演題 14
在宅療養高齢者における予後関連因子についての検討
Prognostic factors in community-dwelling japanese frail elderly
○鈴木 亮 1, 2,平林正裕 1,戸原 雄 1, 2,高橋賢晃 1, 2,福井智子 3,吉田光由 4,田
村文誉 1, 2,菊谷 武 2, 5
○Ryo Suzuki1, 2, Masahiro Hirabayashi1, Takashi Tohara1, 2, Noriaki Takahashi1, 2, Tomoko
Fukui3, Mitsuyoshi Yoshida4, Fumiyo Tamura1, 2, Takeshi Kikutani2, 5
日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーションセンター,2 日本歯科大学 口腔リ
ハビリテーション多摩クリニック,3 杉並区歯科保健医療センター,4 広島市総合リハ
ビリテーションセンター,5 日本歯科大学大学院生命歯学研究科 臨床口腔機能学
1
Rehabilitation Clinic for Speech and Swallowing Disorders, The Nippon Dental University
School of Life Dentistry at Tokyo, Dental Hospital, 2 Tama Oral Rehabilitation Clinic, The
Nippon Dental University, 3 Suginami Dental Health and Medical Centre, 4Hiroshima City
General Rehabilitation Centre, 5 Division of Clinical Oral Rehabilitation, Graduate School of
Life Dentistry, The Nippon Dental University School of Life Dentistry at Tokyo
1
【緒言】高齢者の低栄養は健康障害を引き起こすといわれている.要介護高齢者では
低栄養リスクが高く,要因の一つに摂食・嚥下障害が挙げられ,生命予後との関連も
報告されている.そこで本研究は,在宅療養高齢者を対象とし,口腔・嚥下機能,身
体・精神機能,栄養状態と予後との関連の検討を目的とした.
【対象および方法】対象は,全国 5 都市の 65 歳以上の在宅療養要介護高齢者 511 名
(男性 162 名,女性 349 名,平均年齢 84.2±7.6 歳,経管栄養者を除く).咬合状態,
嚥下機能,認知機能,MNA®-SF を用い栄養状態,Barthel Index により日常生活動作能
力(ADL)等を評価した.1 年後に追跡調査を行い,予後との関連を検討した.
【結果】
1 年後に追跡不可能となった 35 名(6.8%)を除外した 476 名(平均年齢 84.1±7.6
歳)を検討対象とした.入院 122 名(25.6%),死亡 58 名(12.2%)であり,両者を合
わせた 180 名(37.8%)を予後不良群とした.ADL の予後への影響を考慮し Barthel Index
51 点以上を ADL 維持群,50 点以下を ADL 低下群とし統計学的解析を行った.単変
量解析では ADL 維持群で性別,年齢,基礎疾患,嚥下障害,咬合支持に,ADL 低下
群で栄養状態に予後との有意な関連を認め(p<0.05),多変量解析では ADL 維持群で
性別,年齢,基礎疾患,咬合支持に,ADL 低下群で栄養状態に予後との有意な関連
が示された(p<0.05).
【考察】在宅療養高齢者において,ADL 維持群では咬合支持,ADL 低下群では栄養
状態に予後との関連が示唆され,ADL に合わせた適切な介入の必要性が示された.
本研究の一部は,平成 24 年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「在宅療養患者の
摂食機能,栄養状態の追跡調査および予後関連因子の検討」によった.
59
演題 15
要介護高齢者における原始反射の再出現と生命予後との関連について―介護老人福
祉施設における 3 年間の調査―
Relationship between primitive reflex and life prognosis in elderly in need of care
-3 years examination at nursing home○川瀬順子 1,高橋賢晃 1,平林正裕 1,田村文誉 1,菊谷 武 1, 2
○Junko Kawase1, Noriaki Takahashi1, Hirabayashi Masahiro1, Fumiyo Tamura1, Takeshi
Kikutani1, 2
日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーションセンター,2 日本歯科大学 大学院
生命歯学研究科臨床口腔機能学
1
Rehabilitation Clinic for Speech and Swallowing Disorders, The Nippon Dental University
Hospital,2 Division of Clinical Oral Rehabilitation, The Nippon Dental University Graduate
School of Life Dentistry at Tokyo
1
【目的】原始反射は胎児期より出現し,出生後は大脳の発達とともに次第に消失する
が,認知症高齢者では前頭葉の障害により再び出現するとされている.今回演者らは,
介護老人福祉施設入居者において原始反射出現と生命予後との関連について 3 年間の
追跡調査を行ったので報告する.
【方法】介護老人福祉施設 2 施設に入居している要介護高齢者 127 名のうち,経口摂
取をしている 121 名,平均年齢 86.3±7.8 歳(男性 33 名・女性 88 名)を対象とした.
平成 21 年 4 月より 3 年間を調査期間とした.対象者に対し,吸啜反射,咬反射,口
尖らし反射の有無を調査し,原始反射出現の有無と,ADL(Barthel Index),認知機能
評価(CDR),食形態,栄養状態(体重,BMI)および生命予後との関連を検討した.
統計学的検討は,SPSS ver.18 を用い,χ二乗検定を行った.本研究は,日本歯科大学
生命歯学部倫理委員会の承認を得て行われた(2110).
【結果および考察】対象者のうち,38 名(31%)にいずれかの原始反射が認められた.
ADL,CDR,食形態と原始反射の出現との間に有意な関連が認められた(p<0.001).
新たにいずれかの反射が認められたものは,1 年後では 18 名,2 年後では 10 名,3
年後では 1 名であった.初回評価時に原始反射がなかったもののうち,1 年後の反射
の有無と 2 年後の転帰(生存対退所または死亡)で有意な関連が示された(p<0.01).
また,2 年後の反射の有無と 3 年後の転帰においても有意な関連が示された(p<0.001).
以上の結果より,原始反射の出現と生命予後との関連が示唆された.認知機能の障害
のある要介護高齢者に対し,原始反射の出現時期に適切な食事指導を行い栄養状態の
維持改善を図ること,また,口腔ケアが困難な場合においては,適切な口腔衛生管理
が肺炎発症の予防を図るために重要と考える.本研究の要旨の一部は,文部科学省研
究費補助金(若手研究(B)課題番号:22792130)によった.
60
演題 16
在宅療養高齢者の栄養状態 ―体組成成分を指標として―
Nutritional status of elderly people in home care using an index component of body
composition.○佐川敬一朗 1,田代晴基 2,古屋裕康 1,田村文誉 2,菊谷 武 1, 2
○ Keiichiro Sagawa1, Haruki Tashiro2, Hiroyasu Furuya1, Fumiyo Tamura2, Takeshi
Kikutani1,2
1
日本歯科大学大学院生命歯学研究科 臨床口腔機能学
日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック
1
Division of Clinical Oral Rehabilitation, The Nippon Dental University, Graduate School of
Life Dentistry.2 Oral Rehabilitation Tama Clinic, The Nippon Dental University
2
【目的】在宅で療養生活を送る高齢者では,口腔機能の低下に伴い栄養障害が引き起
こされ全身状態や身体活動性に影響を与えることが示唆されている.一方,健康維持
の指標となる筋肉量等の体組成を指標とした検討はされていない.本研究は在宅療養
高齢者の食支援方法確立にあたり栄養状態の評価を行うための基礎データを蓄積す
ることを目的とした.
【対象と方法】対象者は東京都西東京市に居住する在宅療養高齢者 1,008 名中,本調
査の趣旨を説明し文書にて同意が得られた者 268 名(男性 91 名,女性 177 名,平均
84.2±7.0 歳)である.対象者が利用中の通所介護施設に出向き,体組成の測定を体組
成測定装置(InBodyS10,Biospace 社製)を用いて行った.また対象者の口腔内環境,
日常生活動作能力,認知機能,Charlson Index 等を調査し,体組成との関連因子を検
討した.統計学的検討には,ピアソンの積率相関係数,一元配置分散分析を用いた.
【結果】筋肉量の平均値は 34.1±7.6kg,25 パーセンタイル値は 28.7kg,中央値 33.5kg,
75 パーセンタイル値 39.1kg であった.骨格筋量の平均値は 18.7±4.6kg,25 パーセン
タイル値 15.2kg,中央値 18.1kg,75 パーセンタイル値 21.7kg であった.体水分量の
平均値は 26.9±5.9kg,25 パーセンタイル値 22.6kg,中央値 26.4kg,75 パーセンタイ
ル値 30.7kg であった.統計学的検討により有意な関連が認められた因子としては,臼
歯部咬合支持の有無,年齢,性別,下腿周囲長,認知機能,日常生活動作能力,Charlson
Index であった.
【考察および結論】在宅療養高齢者では臼歯部咬合支持や日常生活動作能力,認知機
能等の要因が体組成に影響を及ぼし,ひいては全身状態に影響を与えている可能性が
示唆された.今後,体組成測定を用いて高齢者の健康長寿達成のために歯科的介入が
全身状態にどのように寄与するかの検討を行う予定である.本研究の要旨の一部は,
厚生労働省科学研究補助金長寿科学総合研究事業「地域・在宅高齢者における摂食嚥
下・栄養障害に関する研究」によった.また東京都西東京市歯科医師会の協力を得た.
61
演題 17
歯科大学による口腔リハビリテーション専門クリニックの開設
Establishment of a special clinic for oral rehabilitation by a dental university
○菊谷 武 1, 2, 3,田村文誉 1, 2,西脇恵子 1, 2,町田麗子 1, 2,高橋賢晃 1, 2,松木るりこ
1, 2
,戸原 雄 1, 2,佐々木力丸 1, 2,田代晴基 1, 2,保母妃美子 1, 2,須田牧夫 2
○Takeshi Kikutani1, 2, 3, Fumiyo Tamura1, 2, Keiko Nishiwaki1, 2, Reiko Machida1, 2, Noriaki
Takahashi1, 2, Ruriko Matsuki1, 2, Takashi Tohara1, 2, Rikimaru Sasaki1, 2, Haruki Tashiro1, 2,
Kimiko Hobo1, 2,Makio Suda 2
1
日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック,2 日本歯科大学附属病院口腔
リハビリテーションセンター,3 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学
1
Tama oral rehabilitation clinic, the Nippon Dental University
2
Rehabilitation Clinic for Speech and Swallowing Disorders, the Nippon Dental University at
Tokyo, Dental Hospital
3
Division of Clinical Oral Rehabilitation, the Nippon Dental University, Graduate School of
Life Dentistry
【目的】日本歯科大学では,摂食・嚥下機能障害患者のための口腔リハビリテーショ
ン専門クリニックを開設したので,その概要を報告する.
【報告】高齢化社会の急速な進行により,摂食・嚥下機能障害を有する患者も増加の
一途をたどっている.歯科医療における摂食・嚥下リハビリテーションへの期待は大
きく,その期待に応えるために口腔リハビリテーションの専門クリニックを開設した.
当クリニックでは,摂食・嚥下障害者に対するリハビリテーションのほかに,コミ
ュニケーション障害患者に対するリハビリテーション,摂食・嚥下障害者への食事指
導や口腔ケア,食支援のカンファレンスの開催を行う.リハビリテーション以外にも,
全身麻酔を使用した歯科治療や寝たきり高齢者歯科健診,口腔がん患者への歯科診療
や,そのほかのスペシャルニーズのある患者に対する歯科治療も行い,さらには「食」
の見地から,食の研究センターや食の研修センターの設立,また地域の市民向けに「食
の元気塾」
「離乳食教室」
「介護食教室」を開催し,食の健康に関する情報発信の場と
していく予定である.
外来診療のほか,居宅や施設などへの訪問診療も行う.これまで,演者らの所属す
る日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーションセンターでは,年々訪問診療件数が
増加し,現在までに年間 600 件の訪問診療を行ってきた.新規クリニックの開設は,
患者側からの需要の増加に対して体制を整えるということもひとつの理由である.
我々はこの口腔リハビリテーション専門のクリニックを通じ,地域の医療,介護,
福祉と連携して,この地域に住む人たちの口の機能を支えることをめざしている.
62
演題 18
舌機能運動時における舌骨上下筋群の筋活動様相の検討
Study on suprahyoid and infrahyoid muscles activities during tongue movement
○貴島真佐子,今井美季子,糸田昌隆
○Masako Kishima, Mikiko Imai, Masataka Itoda
社会医療法人若弘会 わかくさ竜間リハビリテーション病院
Wakakoukai Health Care Corporation Wakakusa-Tatsuma Rehabilitation Hospital
【目的】
当院では,摂食嚥下障害患者において,準備期から口腔期の口腔機能障害の改善を
目的に舌機能を中心とした口腔リハビリテーションを実施している.特に高齢中途障
害,仮性球麻痺,廃用症候群等の患者において,舌機能訓練を行うことが多い.本研
究では,口腔リハビリテーションの一部として実施される舌機能訓練について舌骨上
下筋群の筋活動様相を観察し,効果的な舌機能訓練法について検討することを目的と
する.
【方法】
対象は,顎口腔系,嚥下機能において自他覚的に異常を認めない成人健常者 10 名
とした.被験運動は,舌挙上運動 5 秒間,頭部挙上訓練(Shaker 法)および最大舌圧
3 秒間の舌機能運動を実施した.最大舌圧の測定には,JMS 舌圧測定器を使用し,舌
と口蓋の間にバルーンをはさみ,バルーンを舌で口蓋に押し付けた時の最大圧を測定
し,約 3 秒間持続するように指示した.筋電図計測は,舌骨上下筋群相当部に表面電
極を貼付し導出される筋電位を Neuropack μ MEB-9100(日本光電社製)にて記録し
た.なお本研究は,当院倫理委員会の承認を得て行った.
【結果および考察】
舌挙上と最大舌圧の筋活動量は,ほとんどの被験者において,舌骨上筋群が最も高
く,次に舌骨下筋群,咬筋の順であった.頭部挙上訓練(Shaker 法)の筋活動量は,
舌骨上筋群の筋活動量が高いパターンと舌骨下筋群の筋活動量が高いパターンに分
別されることがわかった.個人内において最も高い筋活動量がみられる舌機能運動は,
舌圧計を用いた最大舌圧であった.
以上の結果より,舌挙上運動,頭部挙上訓練(Shaker 法),最大舌圧等の被験運動
は,舌骨上下筋群の筋活動の変化を反映することがわかった.舌を挙上し抵抗(負荷)
を加える運動は,舌圧・嚥下圧の上昇に有用な訓練方法と考えられた.
63
演題 19
電撃様関節痛と開口障害が長期に持続した顎関節症の 1 例
Temporomandibular joint arthritis with long-term shooting pain and limited mouth opening :
Case report
○森 悠衣 1,赤峯勇哲 1,後藤基宏 1,窪 寛仁 1,大西祐一 1,岩崎春美 1,中嶋正
博 1,覚道健治 1,秋山広徳 2,四井資隆 2,清水谷公成 2
○Yui Mori1, Yutetsu Akamine1, Motohiro Gotoh1, Hirohito Kubo1, Yuichi Ohnishi1, Harumi
Iwasaki1, Masahiro Nakajima1, Kenji Kakudo1, Hironori Akiyama2, Yoritaka Yotsui2,
Kimishige Shimizutani2
1
大阪歯科大学口腔外科学第二講座
大阪歯科大学歯科放射線学講座
1
Second Department of Oral and Maxillofacial Surgery ,Osaka Dental University
2
Department of Oral Radiology, Osaka Dental University
2
患者は 38 歳女性で開口障害と左側顎関節痛を主訴に来院した.MR 画像にて両側
非復位性円板前方転位,closed lock を認め,パンピングマニピュレーション施行後,
一時的には十分な開口距離を得られ関節痛も軽減したが,関節痛が増悪し,開口距離
の低下と電撃様の関節痛と前頭部の自発痛を呈した.
そこで洗浄療法,スプリントのさらなる咬合挙上,ヒアルロン酸ナトリウム連続注
入療法を施行するも奏功せず,関節円板の癒着を疑い,鏡視下剥離授動術を施行した.
両側に滑膜炎と癒着病変を認め,特に左側は著明であった.
術後開口訓練を積極的に行い,術後 1 カ月半で開口距離 53mm,術後 3 カ月には関
節痛は完全に消失した.術後より不安症状が強く,心療内科での加療後,不安症状の
軽減に伴い関節痛も軽減した.
64
演題 20
脳血管障害患者における最大舌圧についての検討
Study on maximum tongue pressure in stroke patients
○今井美季子 1,貴島真佐子 1,糸田昌隆 1,高田秀秋 2
1
1
1
2
○Mikiko Imai , Masako Kishima , Masataka Itoda , Hideaki Takada
1
社会医療法人若弘会 わかくさ竜間リハビリテーション病院
医療法人 高田歯科医院
1
Wakakoukai Health Care Corporation Wakakusa-Tatsuma Rehabilitation Hospital
2
2
Health Care Corporation Takada Dental Clinic
【目的】
当院は,回復期から慢性期に至るリハビリテーションを中心とした医療を提供して
いる療養病床である.口腔機能障害を伴った脳血管障害患者(以下,CVA 群とする)
等に対して,各種リハビリテーションの一つとして口腔諸器官を回復・改善する目的
で,舌機能の回復・向上を含めた口腔リハビリテーション(以下,口腔リハとする)
を歯科衛生士が主体となって実施している.しかしながら,舌機能リハビテーション
効果の客観的評価指標は少なく,チェアーサイドやベッドサイドで苦慮しているのが
現状である.今回,口腔リハ効果の定量的評価法を検討することを目標に脳血管障害
患者の最大舌圧を測定し,脳血管障害患者の舌機能の傾向を検討したので報告する.
【方法】
対象は,当院の同意を得られた入院加療・療養中の脳血管障害患者 30 名とした.
方法は,口腔機能評価項目については,オーラルディアドコキネシス/Pa/・/Ta/・/Ka/,
舌突出・後退運動とした.最大舌圧の測定には,JMS 舌圧測定器を使用し,舌と口蓋
の間にバルーンをはさみ,バルーンを舌で口蓋に押し付けた時の最大圧を 3 回測定し
たうち,最大値を最大舌圧とした.その他の調査項目として,日常生活自立度(ADL),
食形態等とし,最大舌圧については,成人健常者 12 名と比較・検討を行った.
なお,本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った.
【結果】
CVA 群おける最大舌圧は,成人健常者群と比較して低値を示し,最大舌圧までの所
要時間は,延長傾向が認められた.口腔機能評価項目のうち,舌突出・後退運動回数
が低い場合,最大舌圧は低値である傾向が認められた.測定時に舌圧のプローブの硬
質リング部を上下前歯部が義歯の場合,最大舌圧が低値である傾向が認められた.
65
演題 21
咀嚼筋腱・腱膜過形成症患者における術後の開口量の推移について
Transition of mouth opening range after surgery in patients with hyperplasia of the tendon and
aponeurosis of masticatory muscles
○藤井智子,西尾謙宏,後藤基宏,窪 寛仁,森 悠衣,砂田典子,中嶋正博,岩崎
春美,覚道健治
○Tomoko Fujii, Akihiro Nishio, Motohiro Gotoh, Hirohito Kubo, Yui Mori, Noriko Sunada,
Masahiro Nakajima, Harumi Iwasaki, Kenji Kakudo
大阪歯科大学口腔外科第二講座
Second Deparetment of Oral and Maxillofacial Surgery, Osaka Dental University
【目的】咀嚼筋腱・腱膜過形成症は無痛性の開口障害を呈し,顔貌は下顎角が張り出
した square mandible を呈することが多い.その治療法としては咬筋腱膜切除術や筋突
起切除,ならびに一部の例では下顎角切除術を併せて行うことにより開口障害が改善
されると言われている.しかし,術後の開口訓練は必須とされており,その開口訓練
の開始時期,訓練内容,期間などは様々である.今回われわれは当科で施行した咀嚼
筋腱・腱膜過形成症患者の治療法と治療成績につき検討したので報告する.
【対象および方法】対象は 2006 年から 2012 年 1 月本院にて咀嚼筋腱・腱膜過形成症
と診断され,手術を施行した患者 23 名のうち,術後半年以上の経過観察し,資料の
整った患者 17 名(男性 1 名,女性 16 名)とした.それぞれの施行した手術内容,治
療成績について検討した.年齢は平均 36.8 歳(20~70 歳)であった.対象例の初診
時開口量は平均 24.7mm(20~30mm)であった.
【結果】手術術式は筋突起切除術+咬筋腱膜切除術 15 例,筋突起切除術+咬筋腱膜
切除術+下顎角形成術 17 例などが施行され,全例口腔内よりアプローチされていた.
術中の開口量は平均 47.4mm(37~48mm)であった.術後の開口訓練は術後翌日以降,
術後 4 日以内に開始されており,自己による徒手的開口訓練と開口器による開口訓練
が行われていた.開口訓練開始時の開口量は平均 27.3mm(22~37mm)であった.術
後 6 カ月の開口量は平均 41.1mm(37~49mm)であった.開口器による開口訓練期間
は術後 1 カ月~3 カ月であった.
【結論】咀嚼筋腱・腱膜過形成症の治療法としての経口的外科的治療は開口量の改善
に有効であったが,術中に 37mm 以上の開口量を得た.しかし術直後は創部の痛みお
よび筋の拘縮により十分な開口量を維持できない場合が多いため,術後の開口訓練は
必須であると考える.
66
演題 22
超音波診断装置による米飯咀嚼時の舌運動前額断面解析
Frontal cross-sectional analysis of tongue movement during mastication of rice by the
ultrasonic diagnostic apparatus
○覺道昌樹,糸田昌隆,龍田光弘,田中順子,田中昌博
○Masaki Kakudo, Masataka Itoda, Mitsuhiro Tatsuta, Junko Tanaka, Masahiro Tanaka
大阪歯科大学有歯補綴咬合学講座
Department of Fixed Prosthodontics and Occlusion, Osaka Dental University
【目的】
舌運動の動態を知ることは,摂食嚥下運動を理解する上で重要である.本研究では,
超音波診断装置を用いて,前額断面における片側咀嚼時の咀嚼中における舌の左右側
での高低差の変化を検討する.
【方法】
若年者 10 名(平均年齢 27.0±2.3 歳)および高齢者 2 名(平均年齢 78.0±2.0 歳),
いずれも健常有歯顎者を被検者とした.舌運動の抽出には超音波診断装置(SSA-250A,
東芝メディカル社)を用いた.被検運動は左右側での片側咀嚼とした.嚥下は自由嚥
下および一回嚥下を指示した.被検食品には米飯 10g を用いた.咀嚼時の両側下顎第
一大臼歯相当部の前額断面画像を抽出・記録した.
咀嚼運動を M モード波形から初期・中期・終期に分類した.各期の 5 つの連続し
た M モード波形の最下点における B モード画像をトレースした.正中線から左右側
1.5 cm における舌背上の 2 点を決定し,各点と顎下部皮膚表面からの高さを計測した.
舌の左右側の高低差を算出し,各期において比較検討を行った.
統計学的解析には一元配置分散分析を行い,有意差を認めた場合,その後の検定と
して Tukey の多重比較検定を行った.有意水準はすべて 5%とした.
【結果】
若年者群において,すべての被検者において,初期では非咀嚼側に対して咀嚼側の
舌の高さは低かった.しかし,咀嚼の進行に伴い,舌の左右側の高低差は小さくなっ
た(p<0.05).
高齢者群でも,咀嚼の進行に伴い,舌の左右側の高低差は小さくなる傾向を示した.
【考察】
咀嚼初期の咀嚼側において,非咀嚼側と比較して,舌は下方に位置していることが
明らかとなった.初期から中期間での咀嚼による食品の粉砕と唾液との混和により食
品テクスチャーが軟らかくなり,健常有歯顎者の咀嚼側の舌運動は小さくなったと考
えられた.
また,高齢者において,食品の咀嚼に必要な咬合関係が確立されていたため,若年
者と同様の傾向を認めたと考えられた.
67
演題 23
歯磨き動作の向上を目的としたコップ磨き訓練の効果(第二報)
~歯磨き実践訓練との比較~
Effects of cup polishing training aimed at improving toothbrushing movement(the second
report)―a comparison with practical toothbrusihg training
○渡邊真紀,井村 亘
○Maki Watanabe,Wataru Imura
玉野総合医療専門学校 作業療法学科
Tamano Institute of Health and Human Services
【はじめに】
我々は以前,利き手交換における歯磨き動作の向上を目的としたコップ磨き訓練を
提案し,その効果を認めた.コップ磨き訓練とは,歯ブラシでコップの内側面を視覚
的に確認しながらまんべんなく磨く訓練である.この訓練により歯磨き動作の行い易
さは有意に向上し,訓練前後の重心動揺比較では,動揺が有意に減少した.そこで,
今回はコップ磨き訓練が歯磨き実践訓練と比較して有効であるかを検証した.
【対象と方法】
前回のコップ磨き訓練効果研究時と可能な限り同一条件に近づけるように設定し
た.同意を得た右利きの健常者 30 名(平均年齢 20.6±4.1 歳)を対象とした.1)重
心動揺計にて,非利き手での歯磨き時の重心動揺値を 30 秒間計測し,VAS にて行い
易さを計測した.2)休憩の後に,鏡で視覚的に確認しながら,3 分間歯磨き実践訓練
を行った.そして再び 1)を行い,歯磨き実践訓練における効果を重心動揺計測値と
VAS にて検討した.さらに,前回行ったコップ磨き訓練効果と今回の歯磨き実践訓練
効果を,重心動揺計測値および VAS の比較にて検討した.
【結果と考察】
歯磨き実践訓練前後の重心動揺計測値はすべての項目において有意差はみられな
かった.VAS においては,訓練後に有意に行い易くなった.コップ磨き訓練群と歯磨
き実践訓練群間の比較は,重心動揺計測値ではすべての項目においてコップ磨き訓練
の方が有意に減少し,VAS において有意差は認められなかった.
以上のことから,歯磨き時の重心動揺の軽減においては,実践訓練よりコップ磨き
訓練の方が効果的であることが証明された.行い難さの軽減においては,どちらの訓
練も効果的であることが証明された.歯磨き動作は立位で行うことが多いため,重心
の動揺を軽減する必要がある.その点において,歯磨き実践訓練よりもコップ磨き訓
練の方が効果的であることが示唆された.
68
演題 24
救急救命センターにおける挿管チューブ周囲の細菌叢の変化について
Changes in bacterial flora around the intubation tube at emergency medical care center
○羽賀淳子 1,兵藤朋子 2
○Junko Haga 1,Tomoko Hyodo 2
1
東京都立多摩総合医療センター,2 日野市立病院
1
Tokyo Metropolitan Tama Medical Center,2 Hino Municipal Hospital
【目的】経口挿管中の患者は物理的な口腔清掃が困難なことより人工呼吸器関連性肺
炎(以下 VAP)に罹患しやすいといわれている.これまでに口腔内細菌と VAP との
関連を指摘する報告はあるが,経時的な口腔内細菌の変化を捉えたものはない.そこ
で今回私たちは,同一患者において各時間帯における口腔内細菌の同定を行い,経時
的な細菌叢を観察することで今後の効率的な VAP 予防が確立できるのではないかと
考え本研究を行った.
【方法】多摩総合医療センター(以下当院)入院中の挿管患者において,①経口挿管
が行われている,②挿管時に肺炎の併発がない,③120 時間以上の挿管が予想される,
といった条件を満たした患者 6 名を対象とした.なお本研究は,当院倫理委員会の承
認のもと行った.
採取 3 時間前に口腔ケアは終了していることを条件とし,検体は舌根部に最も近い
挿管チューブ外周から,擦過法により採取した.採取時間は挿管後 24 時間/72 時間
/120 時間とした.採取した検体は一般細菌培養検査を行い菌種の同定・菌数を調査
した.その結果判定から 3+:3 点,2+:2 点,1+:1 点,少数:0.5 点とスコアリ
ングを行い,百分率化し検討した.
【考察】対象症例中に VAP 発症はみられなかったものの,早期発症型,ならびに晩
期発症型 VAP 原因菌の検出とともに,経時的に球菌から桿菌の百分率が増加したと
いった細菌叢の変化を認めた.挿管後チューブ周囲の細菌叢は,デンタルプラークと
同様の成熟現象が生じているものと考えられた.挿管チューブに形成されたバイオフ
ィルムの除去は現時点では不可能である.しかしバイオフィルムが形成されていても,
必ずしも VAP が発症する訳ではないことからも,清掃効果のみではない口腔ケアの
功績について継続した研究が必要であると考える.今後,看護師への口腔ケア教育の
充実,長期挿管が予測される症例に対して挿管初期から積極的な口腔ケアの介入が望
ましいのではないかと考えられた.
69
演題 25
8 トリソミーモザイク症候群児の経管栄養から経口摂取確立までの経過:症例報告
Oral habilitation from the tube to oral feeding of an infant with the eight-trisomy mosaic
syndrome: A case report
○近藤亜子,佐野祥美,田村康夫
○Tsuguko Kondo, Yoshimi Sano, Yasuo Tamura
朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座小児歯科学分野
Department of Pediatric Dentistry Division of Oral Structure, Function and Development,
Asahi University School of Dentistry
【緒言】8トリソミーモザイク症候群は,精神遅滞,特異顔貌,骨格異常,心奇形な
どを特徴とする染色体異常症であり,発生頻度は30,000人に1人と推測され,精神遅滞
を伴う場合は退院後に摂食・嚥下の問題が生じることが多い.今回は,5カ月から経
管栄養を行い,摂食嚥下障害を主訴に来院してから経口摂取が確立できた8トリソミ
ーモザイク症候群児の症例について報告する.
【患児の概要】初診時年齢:1歳5カ月,主訴:食べ物の飲み込みが下手なのでみてほ
しい,傷病名:染色体異常(トリソミー8モザイク),精神運動発達遅滞,現症:精
神運動発達遅滞,特異顔貌,骨格異常,既往歴:2,615gで出生,3カ月で体重低下,5
カ月より鼻注栄養を行い,体重増加がみられたが,1歳過ぎより体重増加が乏しくな
っている.
【経過】1歳5カ月時はドロドロ状でも拒絶.口から食べることを認識させるために食
事するところを毎日見せ,食事に関する養育日誌を記録するよう指導した.1歳8カ月
時は9カ月児の離乳食メニューにし,食べる意欲も急速に高まってきた.そこで2歳5
カ月時に担当医師と相談し鼻注栄養を終了とした.口腔への刺激は味覚を含めゆっく
りと行い,本格的なブラッシング指導を開始した.3歳3カ月になるとストローで吸う
ことが可能となり,5歳3カ月ではスプーンやコップを自分で持って食べられるように
なった.さらに5歳10カ月で自力歩行が可能となり,6歳3カ月時にはうがいができ,
食事についても問題なくできるようになった.
【考察および結論】摂食嚥下障害の原因は個々によって異なり,発達の状態によって
取り組み方も変わってくる.家族への食物形態の指導には治療者側が望ましい実物を
用意して親に提示するか,具体的な形態を提示して親に作ってきてもらったものを使
用して指導を行い,結果をフィードバックするといった作業の繰り返しが必要である.
さらに,摂食の様子をビデオに撮影することで細かく観察し,内容を確認していく必
要があると考えられる.
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演題 26
乳歯列反対咬合の機能的矯正装置による咬合改善経過と咀嚼筋筋電図変化:症例報告
EMG changes of masticatory muscles for a child with anterior crossbite and primary dentition
treated by a functional appliance: A case report
○小倉英稔,椋代寛之,長谷川信乃,田村康夫
○Hidetoshi Ogura, Hiroyuki Mukudai, Shinobu Hasegawa, Yasuo Tamura
朝日大学歯学部 口腔構造機能発育学講座 小児歯科学分野
Department of pediatric Dentistry, Division of Oral Structure, Functin and Development,
Asahi University School of Dentistly
乳歯列期の反対咬合について,乳歯列期の反対咬合に対しては早期に対応すべきか
経過観察とするか意見の分かれるところである.そんな中,機能的矯正装置ムーシー
ルド TM が提唱され,乳歯列期反対咬合には臨床的に有効であるとの報告があるが不
明な点も多い.本報告では,スプリント効果による顎位の補正と咀嚼筋のバランスお
よび歯列・咬合に及ぼす影響から効果発現のメカニズムについて考察した.
症例:4 歳 4 カ月女児,咬合異常を主訴に来院.右側側切歯から左側第一乳臼歯に
かけて反対咬合がみられ,最大嵌合時には左方に偏位した.左右のガム咀嚼を比較す
ると,右咀嚼時に噛みにくさを訴えた.最大噛みしめ時,前歯だけが逆被蓋で強く接
触しているため,強く噛みしめることを嫌がり,力も入れられない状態であった.本
症例は歯性の反対咬合と診断し,機能的矯正装置ムーシールドによる治療を開始した.
装置装着後,前歯の被蓋は 2 カ月で改善した.しかし,この段階では,臼歯部咬合
は開咬を呈し咬合の不安定な時期が続いた.これは以前の咬合位がリセットされ始め
ているためと考えられた.それゆえ被蓋改善後も臼歯部接触を確認するまで,装置は
装着させた.
治療開始から約 8 カ月で装置は終了とし,その 3 月後に機能検査を行った.左右ガ
ム咀嚼とも,ガムを臼歯咬合面に乗せてリズミカルに噛みしめるような運動が出現し,
開閉口筋の協調も明瞭に出現していた.噛みしめ運動時も臼歯の咬合接触も回復した
ため,強く噛みしめることが可能になった.
装置装着による被蓋改善のメカニズムについて考察する.
①装置装着②咬合の挙上(スプリント効果)③機能的早期接触の解消(ロック解除)
④ロック解除により成長抑制を受けていた歯の自然移動(再成長)開始⑤前歯被蓋改
善(側方歯群は始め開咬)⑥側方歯群の咬合接触(咀嚼機能改善)と,一連の動きは
スプリント効果によるところが大きいものと考えられた.それゆえ,本装置は,幼児
期反対咬合の早期初期治療として,臨床的には有効であると考えられた.
71
演題 27
全前脳胞症乳児の離乳移行にむけての摂食指導
A case of feeding therapy for an unweaned baby with developmental disability at an infant
home
○古屋裕康 1,田村文誉 2,佐々木力丸 2,佐川敬一朗 1,菊谷 武 1,2
Hiroyasu Furuya, Fumiyo Tamura, Rikimaru Sasaki, Keiichirou Sagawa, Takeshi Kikutani
1
日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学,2 日本歯科大学口腔リハビリテ
ーション多摩クリニック
1
Division of Clinical Oral Rehabilitation, the Nippon Dental University, Graduate School of
Life Dentistry
2
Tama Oral Rehabilitation Clinic, the Nippon Dental University
【目的】哺乳,あるいは哺乳から離乳への移行が上手くいかない場合,摂食指導の対
応は多岐にわたる.また,摂食指導の内容に対して両親の同意を得られない場合,効
果的な方法を進められず,機能発達の促進がみられないこともある.演者らは,口唇
口蓋裂と内分泌疾患を原疾患とし,さらにネグレクトの経験のある発達障害を呈する
症例を経験したので報告する.
【対象】症例は初診時 0 歳 7 カ月の女児である.両側性口唇口蓋裂,中枢性副腎機能
低下症,甲状腺機能低下症と出生前に診断された.出生後,Hotz 床製作,口唇形成術
施行後,両親によるネグレクトのため都内某乳児院に入所し,担当小児科医から「哺
乳がうまくできない」と摂食指導の依頼を受けた.初診時の所見では口唇,頬の筋緊
張が弱く哺乳時の口唇閉鎖不全がみられた.経口からの栄養摂取は一日につきミルク
10~60mL 程度であり,経鼻経管での栄養摂取を主としていた.経管からの栄養は 1
日 900kcal 程度で,Hotz 床は適合が悪く普段から装着していなかった.
【経過】初診時から哺乳力を上げるための口唇訓練,頬訓練,舌訓練などの筋マッサ
ージの指導を行った.0 歳 9 カ月時に哺乳反射が消えかかり,口腔の動きも活発にな
ってきたため離乳食への移行を検討した.一般的な月齢段階より 6 カ月程度の遅れが
みられたが,経管による栄養ルートが確保されていたため,経口での離乳食へ向けて
少しずつ食形態を上げていった.
【結論および考察】発達遅延のある子どもの離乳にむけての指導は,発達段階をよく
見極め,栄養ルートを確保した上で子どものペースに合わせて摂食指導をしていく必
要があることが示された.また一方で,今回の症例では両親によるネグレクトのため
Hotz 床の再製作をすることができなかった.乳児院における治療ではこのような場合
も起こり得るので,関連職種との密接な連携を図ることの必要性が改めて示された.
72
ランチョンセミナー
ランチョンセミナー 1
JMS 舌圧測定器を用いた口腔リハビリテーションへの応用
広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 先端歯科補綴学研究室
准教授 吉川峰加
「口から食べる」ことは高齢者の自立を支える上で最も基盤となることです.摂
食・嚥下機能の維持・改善は高齢者に大きな喜びを与え,彼らが生きがいをもって,
最期まで「美味しく口から食べる」人生を送れるよう支援することは,医療者の最も
大きな責務の一つと考えます.
わが国は超高齢社会を迎え,要介護・要支援認定者数が 520 万人を突破するなど急
激な高齢化が進んでいます.とくに後期高齢者では主な死因が誤嚥性肺炎であり,彼
らの生命と QOL は摂食・嚥下機能の低下によって脅かされています.多職種連携が
基本となる摂食・嚥下リハビリテーションの分野において,歯科が肺炎や誤嚥の予
防・治療に大きく貢献できることは認識されている一方,歯科自体は未だ摂食・嚥下
障害患者に従来の治療のみで対応している現状があります.それゆえ,今後の歯科で
は,
「歯科疾患のみを予防・治療する」医療に加え,
「生理学的視点から口腔機能の障
害を予防・維持・改善する」医療を提供できるよう,この分野における研究・教育・
臨床が必要です.
私たちは,舌が単純な動作で発揮する力として「舌圧」を定義し,口腔機能の一つ
の要因としてこの舌圧を簡便に検査・評価する方法の開発を目指し,小型風船形状で
ディスポーザブルの口腔内プローブを用いる測定装置を試作しました.以来,積極的
に装置と情報を提供して他大学・施設の先生方の協力をいただき,改良とデータ収集
に努めた結果,各年代の標準値を確立し,食事形態・ADL や全身状態と関係につい
ても複数の研究機関から報告されるようになりました.
この試作測定装置の性能を継承し,医療機器としての安全性を確保して製造承認を
受けた「JMS 舌圧測定器」が漸く 2011 年 3 月より上市され,その真価を皆様に問う
とともに,さらに多くの方々によって多職種の連携に役立てていただくことを期待し
ております.
本セミナーでは,舌圧測定の特徴と限界,歯科をはじめ連携医療における役割,将
来への展望を述べさせていただきます.
74
[プロフィール]
吉川峰加(よしかわ
みねか)
広島県広島市出身
1999 年 広島大学歯学部卒業
2004 年 広島大学大学院歯学研究科修了,博士(歯学)
2004 年 (財)長寿科学振興財団在外研究員
Dept. of Communication Sciences and Disorders
Northwestern University (Evanston, IL, USA)
2005 年 広島大学病院 医員(口腔インプラント科)
2008 年 広島大学歯学部助教(先端歯科補綴学研究室)
2011 年 客員研究員
Weintraub center for reconstructive biotechnology
University of California, Los Angeles (Los Angeles, CA, USA)
2012 年 広島大学大学院医歯薬保健学研究院 准教授
所属団体
日本補綴歯科学会,日本咀嚼学会,日本顎口腔機能学会,日本老年歯科医学会,日本
摂食・嚥下リハビリテーション学会,日本嚥下医学会,日本嚥下障害臨床研究会,日
本神経筋嚥下障害研究会,Dysphagia Research Society, IADR ほか
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ランチョンセミナー 2
歯・顎欠損を有する患者の補綴治療
日本大学松戸歯学部 有床義歯補綴学講座 専任講師
飯島守雄
口腔およびその周囲に及ぶ欠損は,発音・摂食嚥下機能が障害される.腫瘍切除術
であれば切除部が欠損になり,また瘢痕形成あるいは皮弁によっても運動障害が起こ
る.一度メスの入った部位は,必ず知覚障害が生ずる.さらに放射線治療が行われれ
ば唾液腺障害による口腔乾燥が私たち補綴治療の立場にいるものを困難に陥れるこ
とになる.
リハビリテーションの一部として,私たち補綴科では欠損が生ずればその部位を可
徹性義歯として補い,失う前の形態および機能を可及的に回復することを日々考え臨
床に従事している.口腔外科からの依頼やがん専門病院,近医の先生方からの紹介に
よって患者が来院するが,形態回復だけで機能回復に至らない場合は摂食嚥下リハビ
リテーション外来に依頼することも多々ある.
補綴治療は,材料の開発や成形加工技術の進歩によって支えられてきた.一般的に
は,快適性,審美性,経済性,長期安定性,早期機能回復,安全性がどんな治療に対
しても要求されるところであるが,欠損補綴の臨床においては何を最優先するかによ
って,治療計画は変化を生じ,最終目標に違いが生じてくる.このような多様な治療
計画を患者にいかに理解させるかについても熟練を要する.これは,歯科医の努力の
みならず患者の自主努力や患者を取り巻く家族の努力なくして克服できるものでは
ないことを忘れてはいけない.
今回,私たち補綴科の歯・顎欠損を有する患者の補綴治療をご紹介し,現状の到達
点と今後の問題点を共有したいと考えている.
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[プロフィール]
飯島
守雄(いいじま
もりお)
1984 年 3 月
1986 年 4 月
2001 年
日本大学松戸歯学部卒業
日本大学助手(局部床義歯学)
日本大学歯学博士
日本大学専任講師(局部床義歯学)
2003 年 3 月 フリードリヒアレキサンダー大学留学(ドイツ)
2011 年 4 月 日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座(講座統合)
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79
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協賛企業
株式会社コナミスポーツ&ライフ
株式会社ジェイ・エム・エス
和光堂株式会社
メディカルケア事業部
展示企業
イーエヌ大塚製薬株式会社
有限会社追坂電子機器
有限会社オフィス結アジア
オリンパス株式会社
カールストルツ・エンドスコピー・ジャパン株式会社
川本産業株式会社
株式会社コナミスポーツ&ライフ
ザイコア・インターナショナル・インク
株式会社ジェイ・エム・エス
株式会社シエン社
株式会社ジーシー
ティー・アンド・ケー株式会社
パナソニックヘルスケア株式会社
株式会社フードケア
株式会社ヘルシーネットワーク
HOYA 株式会社
和光堂株式会社
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株式会社
ヘルシーネットワーク
初の介護食ショップ
JR東小金井駅南口に
オープン !!
サポートステーション
の
食
はつらつ
この度、JR 中央線 東小金井駅南口に開設された
日本歯科大学 口腔リハビリテーション 多摩クリニック内に、
2012 年 10 月 18 日、㈱ヘルシーネットワークとして
初めての介護食ショップ
「食のサポートステーション はつらつ」を
オープンいたしました。
「はつらつ食品」カタログに掲載されて
いる約 300 種類の商品を、直接手に
取ってご購入いただくことができます。
この機会にぜひお立ち寄りください。
「はつらつ食品」カタログ
咀嚼・嚥下障害や低栄養の食事に工夫された食品を掲載しています。
取り扱い商品
濃厚流動
食品
トロミ
調整食品
食のサポートステーション
2012 年 10 月
オープン !
水分補給
食品
やわらか
食品
はつらつ
〒184-0011 東京都小金井市東町 4-44-19
日本歯科大学
口腔リハビリテーション 多摩クリニック内 1F
営業時間 10:00 ∼ 17:00 ( 月∼土 )
お問合せ TEL.042-514-8233
国分寺
JR中央線
食具・書籍
東小金井
立川
吉祥寺
新宿
多摩クリニック
新宿から約 20 分
JR 東小金井駅下車 南口正面 ( 徒歩 1 分 )
ご来店の際は公共交通機関のご利用をお願いいたします。
在宅で食事療法をされる患者様へ、病院・介護施設用食品をお届けする通販会社です。
株式会社ヘルシーネットワーク
〒191-0024 東京都日野市万願寺 1-34-3
http://www.healthynetwork.co.jp
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