...

第 2 回 : 歯

by user

on
Category: Documents
41

views

Report

Comments

Transcript

第 2 回 : 歯
JOMF NEWS LETTER
No.249 (2014.10)
アメリカでの医療のかかり方
第2回 : 歯
海外出産・育児コンサルタント
Care the World 代表
ノーラ・コーリ
【 保険に入るか否か 】
前回はからだの疾患についてお話いたしました。今回は歯のお話です。歯が痛い、歯
が欠けた、詰め物がとれた、など歯に関する疾患もいつ起こるか予測がつきません。そのため、
歯においても医療保険に入っているに越したことはないのですが、大企業でも dental (歯科)
の保険には入っていないところがけっこうあります。私の勤めている会社は 500 人ほどの規模
ですが、dental の保険に入ったのはごく最近です。
保険に入っていなければ当然すべて自費で治療費を支払います。H さんのご主人は自
営業で、dental の保険は入っていませんでした。歯に関してはそうしょっちゅう困ることが起
こるわけではないので、普段は予防に心がけ、もし何か問題が起きたらその都度自費で払うよ
うにしていると話していました。しかし、自費で払っても払える額なのでしょうか。アメリカ
は基本的には自由診療ですから、ドクターの腕次第でいくらでも患者に請求できます。そのた
め、ガイドラインはないといってもいいほど以下のように幅が広いのです。
クリーニング
$66~$125
診察
$37~$108
レントゲン - 2 枚
$30~$58
銀のつめもの
$110~$208
白のつめもの
$111~$211
クラウン
$797~$1,509
根幹
$800~$1,514
このように見ていきますと、毎月掛け金を支払うよりは、問題が生じるたびに治療を
受けて自費で支払うという方法をとっている人たちがいることも納得できます。
【 保険プラン 】
それでは歯科の保険に入っている場合はどうなのでしょうか。まず医療保険の視点か
らすると歯科は独立したカテゴリーに属します。そして歯科医に関しては primary doctor を
通さず、直接歯科医に出向くことができます。それではどのように歯科医を探せばよいのでし
ょうか。まず、どのような保険のプランに入っているかによってかかることができる歯科医が
JOMF NEWS LETTER
No.249 (2014.10)
決まります。
私の勤める会社の場合はデンタルプランに関してはいくつかのオプションがありま
した。最初は DHMO というプランに入りました。これは会社が100%負担してくれるもので
した。
しかし決してよいプランではないということが実際にかかってみて初めてわかりました。
まず DHMO の問題はドクターのチョイスがほとんどないことでした。そしてチョイスのない中
で多くのドクターがよい評判を得ていませんでした。さらに治安の悪い地域にオフィスを構え
ていたり、治安のよい地域でもそのドクターは看板の名ばかりで、実際の診療は若くて経験の
浅いドクターが担当していました。
さて、このデンタルプランはどのようなプランだったのでしょうか。まず試してみよ
うと思い、クリーニング、診療とレントゲンだけの予約を入れました。多くのプランで見られ
るように、preventative という予防のための診療は全額カバーされているのが一般的です。こ
の定期健診のセットは年に 2 回保険がカバーします。そして、その DHMO のプランでは毎回クリ
ニックに出向くたびに 5 ドルの co-payment (毎回診察を受けるたびに払う定額)がありまし
たので、それだけを払えばよいとのことでした。
診察をした後、奥歯 2 本に問題があると言い渡されました。詰め物が古くなっている
と言われました。それでは保険があるうちに治療を受けた方がよいと判断し、二つの歯を治療
しました。しかし、治療に携わったドクターが経験が浅いゆえ、たいへんな思いをしました。
まず一人目のドクターは不器用のひとこと。何度もクラウンを入れては出し、出してはまた入
れ直し、どうやら型の取り方にも問題があったようで、かなり大きいものを入れるはめになり
ました。それから 1 年以上も鈍痛が消えず、ほとんど左側では噛めませんでした。
それにもこりず、
「隣の歯も状態が悪い、このまま放っておいたらひどくなる」とい
うことばに乗せられ、その歯も治療。しかし、その歯を担当した別なドクターも経験が浅く、
型にとった詰め物を床に落としてしまう始末。その時に詰め物の角が欠けたのだと思います。
詰め物を入れたものの、どうも食べかすがひっかかりました。違うドクターにセカンド・オピ
ニオンとして診てもらった結果、確かに欠けていて、しかも 2 か所も欠けていました。
この二つの経験に凝り、新しい年度からは add up plan と言って、会社が全額払う
DHMO のプランとは別に PPO というよりよいプランに差額を払って加入することにしました。
差額は給料から毎月 40 ドルほど差し引かれます。1 年間にしても 4 万円です。これを高いとみ
るか安いと見るかは判断のむずかしいところですが、自分の歯は一生モノですので、やはり信
頼できるドクターにかかれることを思えばお金の問題ではないという解釈もできます。この
PPO プランの一番の魅力はドクターの選択肢が増えることです。私も自分がかかりたいドクタ
ーがそのプランに入っているのを確かめて加入しました。それにしてもドクターを選んでその
ドクターが扱っている保険に患者が加入するというのはアメリカらしいところです。とにかく
単に dental plan に入っているからといってどのドクターにもかかることができるわけではあ
りません。
この PPO プランは DHMO とはまったくシステムが異なります。そのため、ここで再
度 PPO プランの勉強をしなくてはなりませんでした。PPO プランの場合は DHMO のプランに
あった毎回オフィスを訪れるたび払う 5 ドルの co-payment がない代わりに、自己負担分がパ
ーセンテージで出ます。たとえば、銀色の詰め物であればプランは100%カバーしますが、
白色の詰め物を選んだ場合は80%プランが払い、残り20%は自己負担というようにです。
JOMF NEWS LETTER
No.249 (2014.10)
さらに年に 2 回までかかることができる診療、クリーニング、レントゲンにおいてはプランが
100%カバーします。
ここアメリカでは医療もお金で買います。そしてドクターの選択肢はたいてい加入し
た医療保険によって決まり、よりよいドクターにかかりたい場合はその分高い premium (保険
料)の医療保険に入らないといけないということです。
【 歯科医の探し方 】
歯科医に関してはほとんどの場合、そのドクターの評判で決めるので、口コミによる
評判は大切だと思います。日本人コミュニティーを対象にした新聞にも歯科医の広告がたくさ
ん載っています。これらの新聞や雑誌に広告を載せているドクターは日本人であったり、日本
語が話せたり、日本語を話すアシスタントを雇っています。そのため、歯の痛みを伝えるにし
ても、日本語で伝えられるこれらのドクターにかかることもチョイスの一つだと思います。
しかし、一般的には medical 同様、 dental を申し込んだ医療保険会社のホームペー
ジを通じてドクターを探します。特に私が以前加入していた DHMO のプランでは選べるドクタ
ーが限られていましたので、保険会社のホームページに登録したドクターから選ぶしかチョイ
スはありませんでした。まず、歯科医の検索という項目に郵便番号を入力し、近くにオフィス
を構えているドクターを検索します。この場合、自分が加入している保険を取り扱っている歯
科医だけがあがります。たとえ家より遠くても治安のよい住居区のドクターを選ぶことをお勧
めします。そしてドクターを決めたら、そのドクターの評判を示しているホームページがあり
ますので、そこのサーチエンジンを利用して、評判を確かめることもお勧めします。またドク
ターによっては独自のウェブサイトをかかげているところもあるので、ドクターの名前をサー
チエンジンに入れて確かめるのもよいでしょう。このように腕のある評判のよいドクターを徹
底的に調べることをお勧めします。
もし医療保険会社のホームページを利用したくない場合、あるいは急いでいる場合は
直接医療保険会社に電話で問い合わせることもできます。歯科医を探している場合、dental で
あることを口頭で伝え、郵便番号を伝えれば担当者がいくつかの歯科医をあげますので、その
中から選び、電話番号と住所を教えてくれますので、その電話番号に電話をし、予約を入れま
す。予約を入れた段階で必ずどこの保険会社に加入しているかを聞かれますので、自分が加入
している保険会社と加入したプランを伝えます。さらには来院目的を聞かれたり、受付の段階
で受診当日に自己負担の支払いがあるかどうかを確認してきます。あとは予約日の予約時間に
出向きます。
【 歯科医の種類 】
虫歯程度でしたら general dentistry という一般歯科医で十分治療は可能です。ド
クターの名前の後にはたいてい DDS とか DMD というタイトルがついています。しかし、神経
治療を必要とする場合、一般歯科医は専門医である歯科神経治療専門医を紹介してくれます。
さて、この歯科神経治療専門医にかかる場合も同じ保険を取り扱っているか確かめなくてはな
りません。また子どもの場合は小児専門の歯科医にかかることをお勧めします。
JOMF NEWS LETTER
No.249 (2014.10)
【 デンタルオフィス 】
歯科医はどのような場所にオフ
ィスを構えているのでしょうか。歯科医に
限っては個人で開業しているドクターが
多いため、小さなオフィスですと自宅の一
部をオフィスとして構えているところも
あります。そのようなところでは閑静な住
宅街に小さな看板をかかげて、診療所を示
しています。
住宅街にある歯科医の看板
ほかには何人かの歯科医がグループを組んでグループ診療を行っているところもあ
ります。グループ診療の場合は多少スペースも大きくなくてはならないので、大きなビル内の
一角にあったりします。中にはショッピングセンターの一角にお店かと思うようなオフィスを
構えているところもあります。看板が出ている場合は何人かのドクターの名前が列記されてい
ます。グループ診療を行っている機関の利点は機材を維持するコストにしても、受け付けの人
や掃除をする人を雇うにしても、建物の賃貸料にしてもコストをシェアできることでもあるで
しょう。もちろんいつものドクターが不在の場合、ほかのドクターに診てもらうということも
できますが、患者側からしたら、それ
はあくまでも緊急の場合しか念頭に
はないと思います。たいていの場合は
自分が選んだドクターに診てもらう
ことにこだわると思います。
ショッピングセンターにあるオフィス
【 スタッフ 】
オフィスにはたいてい受付をする人、ドクターのアシスタントとなる人、クリーニン
グと教育を担当する歯科衛生士で構成されています。しかし、大きなオフィスですと請求、支
払いなどのお金に関するもろもろの業務に携わっている専門の人を雇っているところもありま
す。アメリカ人はオフィスのスタッフも含めてドクターを評価しますので、ドクターもどのよ
うなスタッフを雇うかたいへん気を使い、スタッフのサービス教育にも手を抜けません。
Fly UP