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今、コモディティーETFがアツい! ~金・原油相場の
「今、コモディティーETFがアツい! ~金・原油相場の先を読む~」 2010年7月1日 (木) 株式会社コモディティー インテリジェンス 〒102-0079東京都中央区日本橋書蠣殻町1-11-3中銀ビル310 代表取締役社長 近藤雅世 電話番号: 03-3667-6130 メール:[email protected] 1 東シナ海ガス田の場所をご存知ですか? ※ 排他的経済水域に関わる問題 日本 = 日中中間線 中国 = 大陸棚の先端の沖縄トラフまで 日本・中国共に国連海洋法条約に批准しており 日本は国際司法裁判所や国連海洋法裁判所に 付託する事を中国に要請しているが中国は これに応じていない。 出所:Wikipediaから 2 日本近海の海底油田 尖閣列島の場所と、日本の領海 尖閣列島 出所:海上保安庁ホームページから 出所:海上保安庁ホームページから 3 もしここで、ガスではなく原油が漏れ出たら どうなるでしょう? 出所:気象庁ホームページから 4 そうした状況が、今、アメリカで起こっています。 4月20日米南部ルイジアナ州の沖合41マイル(66キロメート ル)にあるディープウォーターホライズン石油掘削リグが爆発炎上 しました。リグにいた126人は助かりましたが、11人が死亡、7 人が行方不明となりました。 このリグはスイスのトランスオーシャン社の所有で、英BPから請 け負って作業をしていました。 左上の写真は、 事故前 左下は事故後 写真はウォールトリートジャーナルから:地図はGOOGLE EARTHから 5 BPは2009年6月、トランスオーシャンの別のリグを使って同地点での掘削を始めました。ディー プウォーター・ホライゾンは今年1月に投入されました。この油井は少なくとも1万1500フィート (3500メートル)の深さに達していたといいます。 BPが権益の65%を保有する一方、独立系石油・天然ガス会社アナダルコ・ペトロリアムが25%、 三井物産が残る10%を保有しています。そのため、三井物産や三井石油開発にも今後訴訟が行われ る見込みです。 事故の原因 ウォールストリートジャーナル紙によると、BPは、この油井に 対して78日の工期で9620万ドルを投じることを承認し、事故 がおきたのは80日目に相当する。つまり相当工期が遅れてお り、一日当たり約100万ドルの損失が出ていたようです。 そのため、エンジニアはかなり焦っており、十分なガス抜きをする前に次の工程に入ろうとしたよう です。セメントを供給するハリバートン社はセメントを固定する前に鋼管が確実に油井の中央に位置す るように、21機のセンタリング装置を設置することを推奨したが、BPは6機しか設置しなかったと 言っています。 通常2本の鋼管を二重にして海底と石油鉱床をつなぐのに用いられるが、ここでは1本の鋼管だけで あったため、ガス漏れに対する防御が薄くなっていたと言います。泥をすくってガスが漏れていないか 確かめる作業も省略されたそうです。これらの手順は全て内務省の下部組織鉱物資源管理局(MMS) の認可の下に行われており、オバマ大統領は、石油会社と官庁の癒着を批判しています。 また、事故の背景には、2006年に122だったメキシコ湾での深海石油掘削事業は、2008年には 144か所で掘削が行われていました。現在、メキシコ湾の原油生産は米国内原油生産の30%に達して います。そのうち4分の3は深海での掘削となっているといいます。こうして、海外で国有化により油 田から締め出された欧米の石油会社の事情があるようです。 6 事故の余波 BPは当初、事故による原油の流出は一日当た り1360バレルだと公表しました。ところが、 ルイジアナ州南部の海岸に次々とベタベタと黒 い原油が漂着し始めました。 事故から一カ月後、米国の科学者グループは流出総量は5月17日現在で26 万~54万バレルと、1989年の原油タンカーがアラスカで座礁した事故(約 26万バレル)の最大で2倍超に達したとの推定しました。このバルディズ号の 事故は、米国史上最大規模の環境破壊をもたらしたものでした。 このころすでに原油はフロリダ半島まで達していました。 事故から2カ月後、原油の流出量は、一日当たり、3万5千バレルから7万バレ ルになると推計されました。この時点で当初の見込みの20倍以上になってい ました。 (写真の出所はすべてウォールストリートジャーナルから) 7 事故の対策 5月10日、BPは箱状構造物を沈めて原油流出箇所にふたを しようとしましたが、失敗しました。 5月19日までに、海岸と野生生物を保護するために2万人が動員 され、138万フィート(約420キロメートル)超のオイルフェ ンスが設置されました。さらに、石油を分解するため65万 5000ガロンの溶剤が湾に投入されました。 BPは、油井に大量の泥に加えセメントを注入して流出を食い止める「トップキル」と呼 ばれる作業に着手しました。流出箇所をセメントで固めてしまう常用手段でした。しかし、海底 1600mの深海では思うようにコントロールできず、結局これも失敗しました。 現在二隻の原油回収船が現地で一日各1万バレルの原油を回収していますが、衝突したりして、 なかなかうまく稼働していません。更に1隻投入される予定です。 今後の二つの問題 今後二つの問題が想定されます。 ① ひとつは、メキシコ湾流や海底海流に乗って、原油が大西洋に流れ出す可能性。 ② もうひとつは、ハリケーンシーズンの到来により、更に被害が拡大し、 原油流出量が増えたり、原油が上昇気流で巻き上げられ穀倉地帯や 内陸部に降り注ぐ事態になる恐れです。 8 メキシコ湾流 メキシコ湾流は、南米からメキシコ 湾を回流して、フロリダ半島を抜け、 米国東海岸を北上して遠くイギリスま で流れています。 このままではカリブ海、フロリダ半 島東岸、米国東海岸等が汚染される可 能性があります。 (写真の出所はすべてウォール ストリートジャーナルから) 出所:Wikipediaから 9 ハリケーン 米国気象庁は、今年はハリケーンの発生が多く、6月~11月の間に 14~23個の名前のついたストームが向こう6カ月以内に発生し、その うち8~14個はハリケーンに拡大し、中でも3~7個は巨大化すると予想しています。下左の図は過去 のハリケーンが通った進路です。下右の図は2005年8月末ニューオリンズを襲ったハリケーンカト リーナの衛星写真です。まさに今回のBPのDeepwater Horisonの真上を通っています。(出所:米 国気象庁) 上左のグラフは、ハリケーン(赤色)が襲来した1910年以来の月です(出所米国気象庁)。上右は、 米国の原油生産基地、石油精製基地の地図です(出所:米国エネルギー情報局) 10 BPの株価 6月25日終値 26.97ドル 1年のレンジ 27ドル~62ドル BPは当初7億ドルと見積もっていた被害総額が現在200億ドルに及び、その資金を集めるために50億 ドルの借入枠を数行の銀行と締結しました。BPの格付けはAAからBBBに、6段階引き下げられ、株 価は暴落しています。英国のトヨタの立場を担うトップ企業が、今や経営さえ危うくなっています。 (チャートはADVFNより) 11 原油価格への影響 3月31日 オバマ大統領は、大西洋岸とメキシコ湾東部海岸、アラスカ北部海岸沖での石油・ 天然ガス探査を拡大する沖合い掘削に関する新方針を発表しました。 当時オバマ米大統領はこれは広範なエネルギー戦略の一環だとし、米議員らに対して 温暖化ガスの抑制を目指す包括エネルギー・気候変動法案の可決を呼びかけました。 中東からの原油輸入依存度を減らすために、メキシコ湾等での海底油田掘削を許可した のです。 しかし、未曾有の大事故にあい、ブッシュ政権から引き継ぎ、海底油田開発は安全だと説明を受けて いたオバマ大統領は窮地に陥っています。このため、5月27日沖合掘削事業の6カ月停止を命じまし た。この政策に対してはその撤回を巡って裁判所に訴えられています。 しかし、BPの石油リグ炎上とそれに起因する原油流出による環境汚染を見れば、どの為政者も海底 油田の許可を見直したくなると思います。 仮に中国の企業が東シナ海に穴を開けてしまったら、一体だれが補償してくれるのでしょうか? 今後海底油田の開発は慎重にならざるを得ません。その分だけ石油供給量は減少するでしょう。 そして、 ハリケーンが発生すれば、原油価格は高騰する可能性があります。 12 原油価格と株価の関係 NY原油価格と 東京原油価格と日 NY金価格と 東京金価格と日経 NYDOW平均株価 経平均株価の相関 NYDOW平均株価 平均株価の相関係 の相関係数 係数 の相関係数 数 2009年1月 ~10年6月28日 2010年1月 ~6月28日 0.89 0.94 0.84 0.59 0.81 0.82 -0.07 -0.15 (コモディティーインテリジェンス作成) 原油価格は米国も日本も株価との相関関係が強いのが特徴です。金は昨年から今年にかけては0.84 でしたが、今年だけだと無相関です。一方原油は昨年からも今年だけでもかなり高い正の相関関係に あります。 13 NY原油のファンドの建て玉 原油 日付 原油のファンドのネット買い残は、4月から5月に かけて減少し、この2週間は再び増加しています。 ネット買い残は10万6千枚と比較的小規模であり、 金と違って、手じまい売りするような状況ではあり ません。まだまだ増加する余地があります。 取組高 買い残 売り残 買-売 増減 2010/1/5 2,514,518 284,666 102,218 182,448 +19,708 2010/1/12 2,587,154 304,271 95,538 208,733 +26,285 2010/1/19 2,540,116 295,218 88,466 206,752 ▲1,981 2010/1/26 2,585,721 259,101 91,971 167,130 ▲39,622 2010/2/2 2,645,582 253,222 92,990 160,232 ▲6,898 2010/2/9 2,642,832 235,333 106,133 129,200 ▲31,032 2010/2/16 2,616,426 246,681 98,499 148,182 +18,982 2010/2/23 2,517,994 257,105 96,618 160,487 +12,305 2010/3/2 2,580,257 265,830 94,041 171,789 +11,302 2010/3/9 2,649,787 282,427 91,803 190,624 +18,835 2010/3/16 2,675,782 295,371 86,846 208,525 +17,901 2010/3/23 2,582,395 284,939 90,496 194,443 ▲14,082 2010/3/30 2,572,830 293,063 88,326 204,737 +10,294 2010/4/6 2,719,825 324,338 104,618 219,720 +14,983 2010/4/13 2,783,222 312,303 102,072 210,231 ▲9,489 2010/4/20 2,724,270 300,421 91,855 208,566 ▲1,665 2010/4/27 2,779,554 289,342 99,579 189,763 ▲18,803 2010/5/4 2,865,316 299,870 109,179 190,691 +928 2010/5/11 2,942,038 290,983 120,956 170,027 ▲20,664 2010/5/18 2,693,820 281,094 146,241 134,853 ▲35,174 2010/5/25 2,764,954 258,862 149,330 109,532 ▲25,321 2010/6/1 2,785,745 264,587 162,860 101,727 ▲7,805 2010/6/8 2,781,085 260,237 157,235 103,002 +1,275 2010/6/15 2,743,670 264,418 149,738 114,680 +11,678 2010/6/22 2,571,859 255,404 148,594 106,810 ▲7,870 (CFTC:米国商品先物取引委員会データよ りコモディティーインテリジェンス作成) 14 原油価格が上がる時と下がる時 今後原油価格が上がるとするなら ① BPの事故が長引き、原油がフロリダ半島を回り込み大西洋に流れ出すなど 被害が世界的に拡大したり、ハリケーンにより内陸部に原油の雨が降る等 世紀の災害に発展することにより、世界的に海底油田開発にブレーキがかかる。 ② 自動車需要の増加など、景気の回復が明らかとなり、原油需要が増加するとの 予測がIEA(国際エネルギー機関)やOPEC(石油輸出国機構)等のレポートに 書かれるようになる。 今後原油価格が下がるとするなら ① 欧州の緊縮財政などの影響により、補助金の無くなった自動車販売などが 減退し、中国やインド等の新興諸国の景気にも翳りがみられるようになる。 ② 新興諸国等がバブル崩壊を危惧して金利を引き上げ、金融引き締めを行い、 世界的に株価が下落する。 15 原油の結論 5月20日以降原油価格は上昇しています。これを過去1年間で見ると現在 の原油価格は80ドル辺りを目指して上昇中で、一つのレンジの中にあると 思われます。下値は65ドル、上値は87ドル前後の約20ドルの範囲内です。 今後の動きとしては、何といってもBPの事故の影響が大きいので、海底油 田開発の認可が世界的に慎重になるものと思われます。従って原油価格は 景気の動向次第ですが、景気回復の兆しが出れば上がりやすい環境にある と思われます。 16 2007年以降のNY金価格の動き 第4波 第3波 第2波 第1波 10/5/6ギリシャ危 機による欧州金融不安 17 09/06/01GM連邦倒 産法第 条適用申請) ドル安・金高 09/11/25ドバイ によるソブリンリスク インテリジェンス作成) (チャートはコモディティー 08/0 3/17ベアス ターンズ証券JPモルガ ンチェースに吸収合併 08/0 9/15メリル リンチ・バンクオ部アメ リカに吸収合併 08/09/15リーマ ンブラザーズ倒産 11 債券を保証入した 金融機関の倒産 政府系住宅ローン専 門会社の経営危機 住宅ローンを組成し た金融機関の倒産 住宅ローン返却 米国のサブプライムローン問題 住宅価格の下落 住宅ローン借り換え不能 住宅ローンの返済遅延 大量の担保住宅の返却 住宅ローンを組み込んだ債 券価格の下落 債券を保有した 金融機関の倒産 米国の金融不安 18 ユーロ危 機により ドル高 個人消費 の回復? ファニーメ イ・フレ ディーマック は上場廃止 ( 1/6) 月18日ま での米国金融 機関の倒産件 数は、69行 6 商業不動産価格下落 失業者の増加 個人消費の低迷 ドル安ユーロ高 実体経済 への波及 実体経済の悪化 ショッピングモールやホテル の倒産 商業不動産担保ローンを組 成した金融機関の倒産 6 GM/フォードの倒産 低金利・金融緩和政策 財政投資・補助金政策 現在 19 米国の金融不安の元凶 ① 住宅価格の下落 米国の金融不安の元凶 ② 住宅在庫の増加 S&P/Case-Siller Home Price Indices 250 2006年5月 206.47 米国の中古住宅在庫数 2010年3月 145.93 200 5,000,000戸 2009年5月 140.77 150 2010年4月404万戸 4,000,000戸 100 50 出典: Standard '& Poors 米国住宅価格は、2006年5月ピー クに達し、2009年5月までの3年 間で約32%下落した。2010年3 月には4%ほど回復している。 2011年1月 2010年12月 2010年11月 2010年10月 2010年9月 2010年8月 2010年7月 2010年6月 2010年5月 2010年4月 2010年3月 2010年2月 2010年1月 2009年 2008年 2010年07月 2009年12月 2009年05月 2008年10月 2008年03月 2007年08月 2007年01月 2006年06月 2005年11月 2005年04月 2004年09月 2004年02月 2003年07月 2002年12月 2002年05月 2001年10月 2001年03月 2000年08月 2000年01月 0 2007年 3,000,000戸 出典: Realtor(米国不動産協会) 米国の中古住宅在庫は全米不動産協 会によれば400万戸であるという。 しかし、これ以外に米国金融機関が 担保流れで保有する在庫が300万 ~500万戸あるという。 20 米国の金融不安の元凶 ③ 中小金融機関の倒産 米 国 中 小 金 融 機 関 倒 産 件 数 米国の金融機関倒産件数は、2008年26行 だったものが、2009年には140行になり、 今年は6月25日までに95行が倒産した。昨年 以上のペースである。 2007年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2008年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2009年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2010年1月 2010年2月 2010年3月 2010年4月 2010年5月 2010年6月 0行 1行 0行 0行 0行 0行 0行 0行 1行 1行 0行 0行 1行 0行 1行 0行 2行 0行 3行 3行 4行 4行 5行 3行 6行 10行 5行 8行 7行 9行 24行 15行 11行 20行 9行 16行 15行 8行 23行 29行 13行 8行 3行 26行 140行 15行 23行 46行 75行 87行 95行 21 ④ 米国の金融不安の元凶 フレディーマックとファニーメイ 2007年夏から始まった米国のサブプライムローン問題は、住宅ローンを組み込んだ多くの 債券が、住宅ローンの返済不能により紙くず同然となり、それを発行していた証券会社やそれを 買いこんでいた銀行等金融機関の経営を圧迫し、ベアスターンズ証券、メリルリンチ、ワコビア 等の吸収合併を経て、米国金融界が再編成されることとなった。その後金融危機は消費の低迷と 言う形で米国の実体経済に及び、GMやクライスラーといった米国を代表する企業の倒産劇に発 展しました。 このサブプライムローン問題は、プライムローンの返済遅延にまで及び、現在でも米国に火 種を抱えさせています。具体的には、ファニーメイとフレディーマックという二つの半官半民の GSE(Government Sponsored Enterprises:政府支援法人)の財政悪化とそれによる政府 による補てん金額が青天井となっていること、両社が発行している住宅ローン担保証券(RMB S:Residential Mortgage-Backed Securities)の価格が下落し、返済や発行が困難になって いること、住宅ローン返済の滞納の急増や、商業不動産ローンの返済不履行による米国銀行の倒 産という形で未だ余韻が残っています。 米連邦住宅金融局(FHFA)は6月16日、米政府系住宅金融機関(GSE)の連邦住宅抵当金 庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を上場廃止にすると発表しまし た。株価がニューヨーク証券取引所の基準を満たさなくなったため。今後は店頭市場で取引され ることになります。上場廃止はまだしも、倒産となれば世界中の金融機関どころか、世界中の中 央銀行が大量の不良資産を抱えることになります。 22 この背景には、米国銀行が住宅ローンを組む場合にノンリコースローンという形を採っている ことが挙げられる。つまり、住宅価格の下落により、住宅の担保価値が下がると返済が可能な住宅 ローン借入者も、住宅を銀行に返却して住宅ローンを解消してしまった方が得だということになり ます。 米国の金融危機は、米国の住宅価格が下げ止まるまでは収まらない。その住宅価格はどうかと いうと、2006年5月にピークに達し、2009年5月までの3年間で約36%下落しました。現在は 少し回復してきて4%ほど上がっていますが、大量の在庫を抱えた金融機関が担保物件を売りに出 せば、当分住宅価格は上昇できないと思われます。 米国の住宅減税措置は4月で終了しました。 つまり、米国の金融危機は、未だ火種が残っているということです。 23 ソブリンリスク ① 中東のバブル崩壊 金融機関の倒産不安に続いて起きてきたのが、ソブリンリスクでした。 2009年11月25日ドバイ政庁がアラブ首長国連邦のドバイ政府が、政府系持株会社ドバイワールド の債務返済繰り延べを要請すると発表したことが始まり。 日経平均株価は11月27日に9081円 52銭まで下落。当時の最安値を記録しました。 (チャートはコモディティー インテリジェンス作成) 24 ソブリンリスク ② 欧州の財政危機 2010年2月の段階で、ギリシャは過去に発行した国債の償還ができなくなることはわかってい た。財政赤字が増加し、借金を返すどころか更に借金をして前の借金を返す体質になっていたが、誰 もギリシャには資金を貸そうとしなくなりつつありました。 やり玉に挙がったドイツは最初は、国民の反対によりギリシャ支援を拒否していた。しかし、ユー ロが統一されて独り勝ちになっているのはドイツであり、輸出立国ドイツの7割がユーロ向けである ことから、本来ならギリシャ等の経済弱小国は為替の変動により輸入が調節させる仕組みになってい るところが、統一通貨のため為替による経済調整機能がありません。したがって、ユーロ圏にとどま る限り、ギリシャは為替による調整を享受できません。 一方ドイツは、ユーロに統一通貨ユーロを採用するときに、マーストリヒト条約により、加盟国は 財政赤字はGDPの3%以内に抑えることとされていました。しかし、ギリシャも加盟の時にはデリ バティブ取引をゴールドマンサックスとの間に行うことにより、借金を資産にみせかけて、いわば嘘 をついて財政赤字はGDPの3%以内に収まっていると述べていた。同様なことがポルトガルやスペ イン、ハンガリーでも行われていました。 ギリシャには、ユーロから出て自国通貨を再び採用するか、借金を踏み倒すか、誰かから資金を借 り入れるかの三択しかなくなりました。 当初は、ドイツやフランス、米国は、だれも資金を供給しようとはしなかった。そのためギリシャ が借り入れる資金は年率14%にも上昇しました。 ギリシャはのんびりした国で、人口1100万人の中で公務員は110万人もいる。赤ん坊も含め た人口10人に1人が公務員である。また税金は3分の1は払うが、残りの3分の1は徴税官吏に支 払い、最後の3分の1は懐に入れると言われます。ギリシャにおける最大の産業である海運業に対す る法人税は無税となっているなど税金天国である。また、年金は55歳から支給され、警察官等は更 に早い。この年金資金だけでも2015年には財政が破たんすると言われていました。 25 こうした豊か(?)な国に対して、身を粉にして働いているドイツ国民はお金を貸すことを渋り、また フランスは、ドイツが出さなければ金は出さないという態度を取りました。 しかし、5月19日に満期を迎える85億ユーロのギリシャ国債の償還資金が不足していることがわか り、タイムリミットが近づいてきた。2003年アルゼンチンがデフォルト(国債償還の債務不履行) を行った時は、債務は7割棒引きとなり、残った3割は30年割賦となりました。 こうした事態になれば、ギリシャに貸し込んでいる欧州の銀行は倒産してしまいます。 4月11日、欧州理事会はようやく300億ユーロ、IMFが150億ユーロ合計450億ユーロを3 年間5%で貸し付けることを表明しました。しかし、市場は、それだけでは足りないと評価した。ドイ ツのメルケル首相は5月9日に地方選挙を控えていました。 5月2日欧州連合と、国際通貨基金は、1100億ユーロ の支援を行うことを表明。それでも市場は間に合わないと 感じた。5%の金利支払いだけで、GDPの7%の負担と なる。そのため5月6日NY株価は暴落しました。 そこでついに欧州政府は7500億ユーロの支援策を発表 した。欧州政府が4400億ユーロ残りがIMFです。 具体的には、ユーロ圏16カ国が所有する6月7日投資 目的事業体(SPV)が同諸国の保証を背景に資金を調達、 調達金利より高い金利で問題国に融資するというもの。 この基金はギリシャ向けの1100億ユーロとは別物。 こうして欧州のソブリンリスクは1件落着の様相となって います。 (コモディティー インテリジェンス作成) 26 ソブリンリスク ③ 世界的な財政悪化と金融不安 世界主要国の、政府債務残高の対GDP比率 (IMFによる) PIIGS(ポルトガル・イタリ ア・アイルランド・ギリシャ・ス ペイン)5カ国に対する主要国銀 行の保有している債券額 (BISによる) 2007年 2010年 増加率 フランス 8948億ドル フランス 63.8% 84.2% +20.4% ドイツ 7037億ドル ドイツ 63.4% 76.7% +13.3% 英国 4000億ドル 英国 44.1% 78.2% +34.1% オランダ 2433億ドル 米国 61.9% 91.6% +29.7% 米国 1895億ドル 日本 187.8% 227.3% +39.5% 日本 1155億ドル 各国共悪化しており、日本はその中でも突出している。 欧州諸国が多い。 (コモディティー インテリジェンス作成) 27 ユーロ安と金の関係 ユーロドルとNY金価格は、08年や09年には かなり正の相関関係にあったが、2010年3月 以降は明らかに逆相関となっています。 つまり、2008年から2009年にかけてのド ル安・ユーロ高に対して金高であったが、201 0年ユーロ安・ドル高には、金高となっています。 (グラフはコモディティー インテリジェンス作成) 28 これまで述べてきたような米国や欧州の状況は一段落している。 だから、金価格も少し横ばい気味になりつつある。 (チャートはコモディティーインテリジェンス作成) 29 金価格が上がる時と、下がる時 今後金価格が上がるとするなら ① 米国の金融不安の再燃 ② インフレ懸念 ③ ハリケーンがメキシコ湾を襲うことによるBPの 原油流出被害の拡大 ④ イランや北朝鮮における地政学的リスク これらの事変が無ければ、NY金価格は調整安に入るかもしれない。 今後金価格が下がるとするなら ① 景気の回復基調が本格化し、出口政策により金利が上げられる時。 ② 買われ過ぎからファンドの手じまい売りが先行する時。 ③ 金融規制法案が強化され、各国で過剰流動性が縮小し、ファンドへの 資金の蛇口が閉まる時。 30 NY金に対するファンドの建て玉 日付 2010/1/5 2010/1/12 2010/1/19 2010/1/26 2010/2/2 2010/2/9 2010/2/16 2010/2/23 2010/3/2 2010/3/9 2010/3/16 2010/3/23 2010/3/30 2010/4/6 2010/4/13 2010/4/20 2010/4/27 2010/5/4 2010/5/11 2010/5/18 2010/5/25 2010/6/1 2010/6/8 2010/6/15 2010/6/22 取組高 691,557 709,092 722,085 651,455 638,521 632,281 609,964 630,275 657,701 666,239 675,464 665,203 603,626 648,116 696,345 682,040 701,919 735,006 828,659 836,014 776,675 751,380 787,244 782,911 825,811 買い残 268,030 277,219 268,663 251,848 252,126 227,091 226,220 238,959 248,398 248,573 244,938 226,055 213,643 253,253 273,080 256,290 278,445 288,019 303,412 297,077 279,456 279,643 288,306 288,332 297,375 金 売り残 25,622 28,859 27,048 28,918 29,844 38,446 32,875 27,138 25,493 24,936 27,658 27,827 26,859 29,401 25,801 21,712 27,000 27,028 27,103 22,308 26,126 23,448 24,838 22,349 23,173 買-売 242,408 248,360 241,615 222,930 222,282 188,645 193,345 211,821 222,905 223,637 217,280 198,228 186,784 223,852 247,279 234,578 251,445 260,991 276,309 274,769 253,330 256,195 274,202 265,983 274,202 増減 +462 +5,952 ▲6,745 ▲18,685 ▲648 ▲33,637 +4,700 +18,476 +11,084 +732 ▲6,357 ▲19,052 ▲11,444 +37,068 +23,427 ▲12,701 +16,867 +9,546 +15,318 ▲1,540 ▲21,439 +2,865 +8,219 +2,515 +8,219 金のファンドのネット買い残は27万4202枚と非常に多い水準に達している。短期的にはそろそろ 手じまい売りしてもおかしくない。 (米国CFTC(商品先物取引委員会)資料より コモディティーインテリジェンス作成) 31 金と通貨に対するファンドの建て玉 金のファンドのネット買い残が増加しているのに対 しユーロは売りが増えたままである。円はスクウェ ア、ドルは少し買い持ちであるが多くは無い。 日付 金 ユーロ 円 ドル 2010/1/5 242,408 ▲32,524 ▲15,125 39,418 2010/1/12 248,360 ▲15,925 ▲15,588 33,550 2010/1/19 241,615 ▲23,128 ▲16,156 29,979 2010/1/26 222,930 ▲36,397 ▲2,802 37,426 2010/2/2 222,282 ▲38,439 8,374 42,276 2010/2/9 188,645 ▲54,396 23,016 40,972 2010/2/16 193,345 ▲56,184 14,528 37,495 2010/2/23 211,821 ▲66,134 3,079 38,476 2010/3/2 222,905 ▲61,626 34,808 38,076 2010/3/9 223,637 ▲73,213 27,576 36,030 2010/3/16 217,280 ▲44,717 16,663 28,793 2010/3/23 198,228 ▲73,443 11,599 32,269 2010/3/30 186,784 ▲83,200 ▲29,440 35,288 2010/4/6 223,852 ▲64,017 ▲41,116 30,248 2010/4/13 247,279 ▲51,392 ▲54,010 27,647 2010/4/20 234,578 ▲68,318 ▲48,302 24,997 2010/4/27 251,445 ▲83,495 ▲47,846 25,935 2010/5/4 260,991 ▲92,825 ▲64,204 30,059 2010/5/11 276,309 ▲105,145 ▲33,865 26,754 2010/5/18 274,769 ▲90,682 ▲33,547 25,090 2010/5/25 253,330 ▲92,083 ▲8,380 22,537 2010/6/1 256,195 ▲79,806 ▲4,382 20,440 2010/6/8 274,202 ▲100,558 ▲11,336 20,754 2010/6/15 265,983 ▲55,099 ▲2,663 21,997 2010/6/22 274,202 ▲64,509 4,722 20,710 (米国CFTC(商品先物取引委員会)資料より コモディティーインテリジェンス作成) 32 金の結論 金価格は史上最高値を更新しています。 しかし、短期的にはそろそろ天井感があります。ファンドの建て玉も多い し、これまで金価格を押し上げてきた米国および欧州の金融不安は、根強 く残っているとはいえ、少し言い飽きた感があります。市場は新しい事態 が進展しない限り、これまでの延長線上でのニュースには次第に反応しな くなるでしょう。 利上げ等の出口政策が採られれば金価格は下落するでしょう。その前提と なるのは、景気の回復の本格化でしょう。各国政府は、景気回復のために 補助金政策や財政投融資により財政支出を多くしてきました。その結果と して世界各国で財政赤字が増大し、増税や緊縮財政を採らざるを得ない状 況に陥り始めています。これらの財政措置により景気の回復は遅れる可能 性があります。従って出口政策については非常に流動的な難しい決断とな るでしょう。 ただし、長期的には、通貨の過剰流動性という問題があり、通貨が余分に 発行された分だけ通貨価値が下がるので、安全資産と言う意味での米国債 や日本国債の魅力にも限度があり、究極的には金に対する需要は根強いも のがあるでしょう。 33 株式会社コモディティー インテリジェンス では、以下の情報を作成しています。 配信ご希望の方は以下にメールで配信希望とご記入の上ご連絡ください。 1カ月程度無料配信させていただきます。 毎週月曜日 週刊ゴールド 毎週火曜日 週刊経済指標 毎週水曜日 週刊穀物 毎週木曜日 週刊原油 毎週金曜日 週刊砂糖とコーヒー(予定) 毎週金曜日 来週の予測 メール: [email protected] 電話 03-3667-6130 ファックス: 03-3667-3692 住所:〒103-0014 東京都中央区日本橋蠣殻町1-11-3-310 34 ご注意 • 商号:岡三オンライン証券株式会社/金融商品取引業者 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