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超高速大容量ネットワークの実現に向けて

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超高速大容量ネットワークの実現に向けて
アクセスネットワーク
新しい時代のネットワークを目指すR&Dの取り組み
フォトニックトランスポートネットワーク
デバイス
超高速大容量ネットワークの実現に向けて
じ ん の
まさひこ†1
き む ら
ひであき†2
神野 正彦 /木村 秀明
ひ
び
の
よしのり†3
うえはら
かずひろ†1
日比野 善典 /上原 一浩
く
く
つ
な お や†4
い と う ふみひこ†2
久々津 直哉 /伊藤 文彦
まつおか
2020年ごろを想定した将来のネットワークを支える共通プラットフォーム
し ん じ†1
松岡 伸治
であるとともに,数Gbit/s∼100 Gbit/s超の大容量かつ低遅延のエンド・エン
ドパスサービス(ヒュージバンドサービス)を,オンデマンドで,経済的か
つ高信頼に提供するためのアクセスネットワーク,光コアネットワークと,
これらを支える各種デバイスに対して,要求条件と解決すべき課題,技術の
方向性について,それぞれ紹介します.
2020年に向けたネットワークへ
の要求条件
NTT未来ねっと研究所†1
NTTアクセスサービスシステム研究所†2
NTTフォトニクス研究所†3
NTTマイクロシステムインテグレーション研究所†4
ていくためには,地球環境に配慮した
グ・診断,遠隔教育,対戦型ネット
低消費電力性の確保が必須条件とな
ワークゲームなどが想定されます(図
ります.
1)
.このようなヒュージバンドサービ
近年の爆発的なインターネットトラ
サービス提供の観点からみても,企
スを提供するうえでは,距離依存の伝
フィックを支えるため,現在,NTTの
業等におけるビデオカンファレンスなど
送遅延以外の要因を極力排除した極
バックボーンネットワークは光ファイバ
のインタラクティブな高精細動画通信
低遅延性が重要になると考えられます.
1 本 当 り 1.6 Tbit/sの 大 容 量 伝 送
等は環境負荷を低減するサービスとし
(40 Gbit/s×40波長)を提供してい
て今後ますます必要性が高まると考え
ます.インターネットトラフィックが引
られます.将来の超高速大容量ネット
き続き年率1.5∼2倍で増加すると仮
ワークは,共通プラットフォーム,イ
定すると,10年後の2018年には,100
ンフラストラクチャとしてだけでなく,
量,高信頼,極低遅延なネットワーク
Tbit/s∼1 Pbit/s相当の光ファイバ
このような超広帯域サービス(ヒュー
を,経済的かつ低消費電力で提供す
当りの伝送容量が必要とされることに
ジバンドサービス)を提供するサービ
るためには,①光ファイバ伝送技術・
なります.また,現在100 Gbitイーサ
スネットワークとしての役割も果たし
無線技術の一層の高速化・大容量化,
ネット技術や100 Gbit/s級トランス
ていくことになります.ヒュージバンド
②ネットワークの効率的な運用,これ
ポート技術の標準化が進行中であり,
サービスは,サーキットスイッチベース
ら2つを両輪とした取り組みが不可欠
今後ますます高速化・大容量化が求め
の大容量で低遅延,動的な,エンド・
です.その理由には,地球環境負荷と
られると考えられます.
エンドパス提供サービスと位置付けら
経済性の観点から容量に比例した資源
れます.想定するサービス例としては,
消費がもはや許されないこと,加えて
ネットワークを考えた場合,共通プ
インタラクティブ型の双方向映像コ
近年の光伝送・転送技術の進展(1)∼(3)
ラットフォームとしての超高速大容量
ミュニケーションやストレージ間データ
に伴い,これまで無限と思えていた光
ネットワークには,年率1.5∼2倍の
転送などが挙げられます.例えばビジ
ファイバ容量の物理的上限が視野に
トラフィック増を支え得る超大容量性
ネス用途では,超高臨場感遠隔会議
入ってきたことが挙げられます.後者
と,ビジネス活動・国民生活の基盤と
システム,遠隔医療支援システム,ス
について以下で簡単に説明します.
しての高信頼性を,いかに経済的に提
トレージ間ミラーリングなどが,コン
物理制限の第1は,光ファイバの帯
供するかということが重要です.また,
シューマ用途では,バーチャル対面販
域です.長距離伝送が必要なコアネッ
持続的なトラフィックの成長を実現し
売によるeコマース,遠隔カウンセリン
トワークに対して利用可能な光ファイ
したがって,2020年ごろの将来の
54
NTT技術ジャーナル 2008.11
超高速大容量ネットワークの
方向性
将来のネットワークを支える超大容
ブロードバンド性の追求
アジリティの追求
特
集
企業向けVPN
超高精細ビデオカンファレンス
OE
データミラーリング
OE
OE
OE
Optical
Node
Optical
Node
オンラインビデオ編集
OE
Optical
Node
OE
Optical
Node
Optical
Node
OE
OE
Optical
Node
Optical
Node
仮想対面販売
遠隔カウンセリング,遠隔診断
OE
OE
高品質ビデオ配信
図1 ヒュージバンドサービスの提供イメージ
バの波長領域は,1 450∼1 650 nm
と,必要な送信光パワーは数 Wにもな
の低損失波長領域です.光周波数で
ります.この数値は,光ファイバコア
は約25 THzの帯域に相当します.今
が溶融に至るファイバフューズという
超高速大容量ネットワークのアーキ
後の技術革新により周波数利用効率
現 象 が発 生 するしきい値 ( 1 . 5 ∼ 2
テクチャとして,NTT研究所では次の
が現在の0.4 bit/s/Hzから10倍向上
W)を超えてしまいます.
3つの観点が重要と考えています.
ネットワークアーキテクチャ
させることができ,かつすべての低損
したがって,年率1.5∼2倍のトラ
失波長領域を利用しつくして,漸く光
フィック増を支えるためには,光ファ
ファイバ1本で送ることができる最大
イバのポテンシャルを利用し尽くす光
サービスノードは集約し,光のポテ
伝送容量が100 Tbit/sに届く計算に
ファイバ伝送技術の一層の高速化・大
ンシャルを最大限に活かし,サービス
なります.
容量化と,従来ファイバの限界を打破
ノード間 を高 速 大 容 量 光 転 送 技 術
物理制限の第2は光ファイバに入力
する新ファイバ技術の探求の2つが必
で光信号のまま転送する,アクセス
可能な光パワーです.光ファイバの伝
須なのはもちろんですが,ネットワーク
ネットワークの広 域 化 とコアネット
送容量の増加に伴い,光ファイバ中の
全体のアーキテクチャを見直し,アク
ワークのトランスペアレント化を進めます
光パワーが増加します.現状の光ファ
セスとコアのネットワーク資 源 を無
イバ伝送システムにおける伝送容量当
駄なく効率的に利用し尽くして,同じ
り の 送 信 光 パ ワ ー は 数 10 mW/
ネットワーク資源で数倍以上の効用を
数 kbit/sから100 Gbit/s超といっ
(Tbit/s)のオーダーであり,これを
提供するための取り組みも欠かせませ
た,ユーザごとの幅広い帯域要求に柔
ん(図2).
軟に対応可能,ユーザごとにカスタマ
単純に100 Tbit/s伝送に当てはめる
(1) 光技術のポテンシャルを活かし
たネットワークのシンプル化
(図3).
(2) アダプティブアクセス
NTT技術ジャーナル 2008.11
55
新しい時代のネットワークを目指すR&Dの取り組み
連携させる,などの効率的ネットワー
キングを進めます.
2020年の
ネットワークを
支える共通プラット
フォーム
超高速
大容量
光・無線技術
=
×
高効率
ネットワーキング
技術
次にこのような将来の超高速大容量
ネットワークを支える基盤である,光
コアネットワーク技術,光アクセス
100∼1 000倍相当
光ファイバ能力を利用し尽くす
の効用を提供
10∼100倍の容量拡大
(ファイバ当りPeta bit/s相当)(ファイバ当り10∼100 T bit/s)
ネットワーク資源を
無駄なく利用し尽くす
2∼10倍の利用効率向上
(bit/s)
1P
年
率
1.
フ
ァ 10 T
イ
バ
当 1T
り
の 100 G
総
伝
送 10 G
容
量 1G
TDM×WDM
クセス技術,デバイス技術の方向性に
ついて紹介します.
5∼
2
倍
100 T
ネットワーク技術,高速ワイヤレスア
・高度変復調技術
・コヒーレント技術
・DSP技術
・空間多重技術
・超広帯域光増幅技術
TDM
・トランスペアレント
ネットワーク技術
・アダプティブアクセス
技術
・エラスティック光パス・
OLT技術
・オンデマンド・スケ
ジュールド技術
・光マルチキャスト技術
光コアネットワーク技術
(1) 高度光伝送技術
波長当り4 0 G b i t / s を超える伝送
レートとファイバ当り10 Tbit/s以上
の総伝送容量を確保するためには,占
100 M
有スペクトル幅の小さい変復調・多重
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020(年)
商用導入の年
図2 ∼1 000倍相当の効用を提供する超高速大容量ネットワークの方向性
化方式を実現していく必要があります.
このため,従来の光強度のオンオフ変
調方式ではなく,
・光信号の位相と強度の両方で情
報を運ぶ多値変調方式
Optical
Node
光伝送技術
光スイッチ技術
の革新
Optical
OEO Node OEO
EO Optical
Node OEO
Optical
OEO Node OE
・光ファイバ内の複数の偏波モード
トランスペアレント
コアネットワーク
Optical
OEO Node OEO
や伝搬モードを利用する空間多重
伝送方式
Optical
Node
・直交した複数サブキャリアを高密
従来技術の電気再生中継に
基づくコアネットワーク
広域・アダプティブ光アクセス
度 に多 重 化 する光 O F D M
(Orthogonal Frequency Divi-
図3 広域光アクセスとトランスペアレントコアネットワーク
sion Multiplexing)方式
などの高度な変復調・多重化方式が
イズ可能な光・無線アクセスネット
(3) ネットワーク資源の効率運用
有望です.光コヒーレント検波方式は,
ワークを目指します.この中で,個々
必要なときだけ接続性を確保(オン
信号光と局部発信光のビートを受信す
のビットレートは低速ですが,数が膨
デマンド・スケジュール),必要な帯域
ることで,光信号の強度だけでなく位
大なセンサやモノ間通信を支えるアク
だけを割 り当 てる, サービスごとに
相情報も,電気信号に変換できるの
セス技術については,本特集『多様な
ネットワーク収容装置を柔軟に変更す
で,受信感度の向上だけでなく,デジ
モノのネットワーク化に向けて』で扱
る(Elastic OLT)
(図4)
,サーバやス
タル信号処理技術を駆使した多値や偏
うこととし,本稿では,高速大容量な
トレージなど他のICT(Information
波多重信号の復調,各種伝送歪の等
アクセスネットワーク技術について説
and
化が期待されます.
明します.
gy)資源とネットワーク資源を動的に
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NTT技術ジャーナル 2008.11
Communication
Technolo-
特
集
として,光パス容量を自在に調整可能
なエラスティック光パスネットワークの
研究に取り組んでいきます(図4(a)).
Optical
Node
波長A:30 Gbit/s
波長B:10 Gbit/s Optical
波長C:60 Gbit/s Node
Optical
Node
Optical
Node
Optical
Node
エラスティック光パスネットワークで
は, 光 パスの容 量 は固 定 ではなく,
ユーザ信号の必要帯域に応じて(例え
Optical
Node
(a) エラスティック光パスコア網
ば30 Gbit/s,70 Gbit/sなど)割り
(b) エラスティックアクセス網
図4 ネットワークリソースを効率的に利用する
エラスティック光ネットワーク技術
当てます.光クロスコネクトでは,光
パスの帯域に合わせてスイッチング窓
を開け,光パスを切り替えます.この
ように,電気TDMクロスコネクトの細
(2) 光 トランスペアレントネット
ワーク
上記の高度な光伝送技術は高速大
的・低消費エネルギーの分配にも有効
かい粒度の編集機能を光領域で実現す
です.このような光ネットワークの動
ることで,一層の低消費電力化,省ス
的制御にはGMPLS(Generalized
ペース化,経済化が期待できます.
容量化だけでなく,光伝送距離の長延
Multi Protocol Label Switching)
化も可能にします.長距離光伝送技術
技術等のコントロールプレーンを導入
と低損失広帯域な光クロスコネクト
した標準的な手法が適用可能です.さ
( OXC: Optical Cross Connect) 等
らに,サーバやストレージなど他のICT
現 在 , FTTH( Fiber To The
の光ノード技術とを組み合わせること
資源とネットワーク資源の動的連携に
Home)の急速な普及に伴う通信トラ
で,電気的再生中継器(OEO: Opti-
より,ICT資源全体の仮想化と効率的
フィックの増加は著しく,今後も高
cal to Electrical to Optical) を介
な利用も期待されます.
速・広帯域化ニーズは加速的に増加
することなく,光信号のまま(トラン
スペアレントに)エンド・エンドの光
パスを提供できるようになります.
(3) エラスティック光パス
ヒュージバンドサービスは,当初,
アクセスネットワーク技術
(1) 光アクセスネットワーク技術
すると考えられます.FTTHの普及は,
ユーザニーズの多種・多様化を招くと
光クロスコネクトと電気TDM(Time
考えられ,例えば,ユーザごとの利用
光トランスペアレントネットワークで
Division Multiplexing)クロスコネ
帯 域 も最 低 数 k b i t / s から最 大 1 0 0
は,装置コストと,局舎スペース,電
クトを最適に組み合わせて提供するこ
Gbit/s超へと拡大していくと予想され
力消費の主要部分を占める電気的再
とを想定しています.すなわち,超大
ます.さらに,最近の環境意識への高
生中継器を大幅に削減できるので,大
容量パスが必要なユーザ向けには,固
まりを背景に,通信システムの低消費
容量化と低消費電力化,経済化を両
定帯域の光パス(例えば100 Gbit/s)
電力化への取り組みがますます重要な
立することが可能と期待されます.ま
を提供し,これより細かいパス(例え
項目となるものと考えられます.特に,
た,途中局舎での人手を介した電気再
ば10 Gbit/s)が必要なユーザには,
数千万台のONU(Optical Network
生中継器の設置作業が不要になるの
電気TDMクロスコネクトで光パスの中
U n i t ), 数 十 万 台 のO L T ( O p t i c a l
で,遠隔操作により,必要なときに必
の帯域を編集し,他のユーザと光帯域
Line Terminal)から構成されるアク
要な期間だけ光パスを提供することが
を共有した電気パスを提供することで,
セスネットワークの低消費電力化を
可能になります.光信号のコピーは単
ネットワークの利用効率の向上を図り
ネットワーク全体の省電力化に向けた
純な光パワー分岐で実現可能なため,
ます.
重要な研究課題と位置付けています.
マルチキャストによる光 信 号 の経 済
NTT研究所では,その次のステップ
研究所では,将来のアクセスネット
NTT技術ジャーナル 2008.11
57
新しい時代のネットワークを目指すR&Dの取り組み
ワーク構築において重要な検討項目と
失性,広帯域性を最大限に利用した
して,高速・広帯域化・帯域ワイド
アクセスネットワークの広域化を実現
(3) 超高速ワイヤレスアクセス技術
ダイナミックレンジ化と相反する低消
する技術の検討を行っています.その
NTT研究所ではミリ波帯(60 GHz
費電力化の課題を挙げ,それらを解決
中の1つとして,サービスごとにネッ
帯 および120 GHz帯 ) を用 いた数
すべく,基本技術の確立を目指してい
トワーク収容装置を仮想的に変更する
Gbit/sから10 Gbit/s超の伝送速度
く予定です.
E-OLT(Elastic OLT)技術により
を実現する超高速ワイヤレスアクセス
収容効率向上を図る技術があります
技術の研究開発を行っています.60
過去,ネットワークの超高速・広帯
域化技術に関しては,電気デバイスの
(図4(b)).
れることを想定しています.
GHz帯では,約2 GHz帯/チャネル
性能向上に依存してきました.しかし
さらに,NTT研究所では,波長に
を4チャネル多重化することにより10
ながら,数年後にはそのキー技術であ
よりアクセス系とコア系を連携した
G b i t / s 超を実現するワイヤレスシス
る電気系デバイスの性能限界が顕在化
オール光ネットワークを提案し,ネッ
テム技術,また,小型・高速・モビリ
してくると予想され,デバイス性能に
トワークトータルとして超高速・広帯
ティを同時に実現するためのアンテナ
過度に依存しないネットワーク構築技
域化,低遅延化および低消費電力化
一体化ミリ波システムインパッケージ
術が必要となると考えています.NTT
を実現する技術の研究も行っています.
(SiP)技術の研究開発を行っていま
研究所では,電気デバイスの性能と光
エンド・エンドでオール光化を実現す
す(4).本技術により1cc級の電池駆動
デバイスの性能をそれぞれ最大限に引
る本技術により数百G b i t / s クラスの
超高速ワイヤレス通信装置の実現が期
き出した多波長パラレル伝送技術によ
データを低遅延で伝送することが可能
待できます.さらに120 GHz帯では,
り,ネットワークのさらなる高速・広
となるため,本ネットワークを利用し
InP-HEMT(High Electron Mobi-
帯域化を実現していく予定です.
た過去事例のない革新的なサービスの
lity Transistor)による超高速デバ
登場が期待できます.
イスを用いた放送素材〔非圧縮HD
一方,ユーザニーズ多様化に伴う
ユーザ利用帯域差拡大に関しては,現
(2) テラビットLAN技術
(High Definition)映像〕伝送向け
在の最大利用帯域に適応したネット
将来のネットワークを支えるユーザ
ワークでは帯域利用効率,消費電力と
インタフェース技術として,テラビッ
究を放送局と連携して行っています(5).
いう点で課題があります.本課題を解
トLAN( Local Area Network) 技
現在開発中の技術を最適化,さらに
決するために,NTT研究所では,ユー
術の研究開発も進めています.波長
多値化させることにより,無線による
ザ利用帯域に柔軟に対応できるネット
当り10∼100 Gbit/sの多波長インタ
スーパーハイビジョン(24 Gbit/s)伝
ワ ー ク ( AAN: Adaptive Access
フェースを,複数の通信相手に向けて
送の実現が期待できます.
Network),さらには,ユーザごとに
自在に振り分け,オール光ネットワー
カスタマイズされたネットワーク
ク上 に仮 想 的 なL A N ( テラビット
(NOP: Network On Person)構想
LAN)が構築できるようになります.
を掲げ,そのネットワーク構築実現を
並 列 数 可 変 のパラレル伝 送 技 術 や,
目指し,基本技術確立に向けた検討
ヒュージバンドサービスの極低遅延性
当りのビットレートの増加が必須であ
を行っています.
に適したトランスポートプロトコルなど
り,100 Gbit/s級の超高速伝送用デ
また,高速化・広帯域化と相反す
が検討対象です.LANのイーサネット
バイスの開発が欠かせません.特に,
る課題であるシステム省消費電力化に
技術が今日の光アクセスネットワーク
分散耐性や受信感度の向上が求めら
関 して, N T T 研 究 所 では, 上 記 の
に利用されているように,テラビット
れるため,デジタル信号処理を前提と
AAN,NOP構想とともに,光の低損
LAN技術が将来ネットワークに利用さ
したコヒーレント送受信器等のキー部
58
NTT技術ジャーナル 2008.11
の屋外伝送用ワイヤレスシステムの研
デバイス技術
(1) 光・電子デバイス技術
超大容量伝送の実現には,1波長
特
集
品 を開 発 していく予 定 です. また,
調技術,コヒーレント技術,偏波
PLC( Planar Lightwave Circuit)
多重技術,デジタル信号処理技
技 術 や MEMS( Micro Electro
術等を駆使)
Mechanical System) 技 術 等 を発
・光技術のポテンシャルを最大限活
展させ,光トランスペアレントネット
用して,ネットワークをシンプル
ワークの核となる新しい光機能デバイ
化(広域光アクセスネットワーク,
スの研究開発を推進していきます.
トランスペアレント光コアネット
さらに,ネットワークの抜本的な低
ワーク)
消費電力化に向けて,光パケットを可
・光と無線による高速アクセスと,
能な限り光信号のまま転送する光パ
ユーザごとの幅広い帯域要求に
ケットスイッチングの可能性を探るた
柔軟に対応し,ユーザごとにカス
め,光電子融合型光パケットルータ要
タマイズ可能なアダプティブアク
素技術の研究開発にも積極的に取り
セス
組んでいきます.
(2) 光ファイバ技術
将来のネットワークを支える光ファ
(6)
イバ技術
として,空孔構造の導入
・柔軟な帯域制御(必要なときに
必要な帯域だけで通信)により,
ネットワーク設備量と消費電力を
抑制
(空孔アシスト光ファイバ)により曲げ
・光デバイス・光ファイバの一層の
損失特性を大幅に改良した光ファイバ
イノベーション, 光 パケットス
の研究開発を進めています.これによ
イッチングなど革新的技術への
り,光ケーブルの超細径化やクロー
チャレンジ
ジャ構造の刷新などを含め,光ケーブ
NTT研究所では,国内外の研究機
ルシステム全体を変革できる可能性が
関と連携しながら,2020年に向けた将
あります.また,フォトニック結晶構
来のネットワークを支える超高速大容
造の追及により,現行の光ファイバに
量ネットワーク技術の革新に,引き続
対してはるかに大きな光入力および超
き取り組んでいきます.
広 帯 域 な光 信 号 の伝 搬 が可 能 な光
ファイバの実現を目指しています.こ
れらは,光トランスペアレント網の実
現に大きなインパクトをもたらすと期
待されます.
今後の展開
今後目指すべき方向性としては,次
のものがあります.
・高速大容量光伝送・転送技術の
一層のイノベーション(高度変復
(5) R. Yamaguchi,A. Hirata,T. Kosugi,H.
Takahashi,N. Kukutsu,T. Nagatsuma,Y.
Kado,H. Ikegawa,H. Nishikawa,and T.
Nakayama:“10-Gbit/s MMIC Wireless Link
Exceeding 800 Meters,”2008 IEEE RWS Dig.,
pp.695-698,2008.
(6) 倉嶋:“次世代光ファイバ技術−空孔構造光
ファイバを用いた光伝送技術の動向−,”オ
プトロニクス,Vol.27,No.313,pp. 173-178,
2008.
■参考文献
(1) 特集:“フォトニックネットワークの最新技
術 動 向 ,” N T T 技 術 ジ ャ ー ナ ル , V o l . 1 9 ,
No.10,pp.8-34,2007.
(2) 特集:“光IPネットワーキング技術の展望と
最新動向,”NTT技術ジャーナル,Vol.19,
No.1,pp.8-26,2007.
(3) 築島・平野・神野:“アプリケーションと連
動したフォトニックネットワークの自律制御
技術の北米フィールドトライアル,”NTT技
術ジャーナル,Vol.19,No.2,pp.51-54,2007.
(4) T. Seki,N. Honma,K. Nishikawa,and K.
Tsunekawa:“A 60-GHz Multilayer Parasitic
Microstrip Array Antenna on LTCC Substrate
for System-on-Package,”IEEE Microwave
and Wireless Components Letters,Vol.15,
No.5,pp.339-341,2005.
(上段左から)神野 正彦/ 木村 秀明/
日比野 善典
(下段左から)上原 一浩/ 久々津 直哉/
伊藤 文彦/ 松岡 伸治
ますます増大するトラフィック需要に対
応すべく,超大容量でフレキシブルなネッ
トワークを経済的に構築するうえで,光と
無線のポテンシャルを最大限まで引き出し
ていくことが重要です.経済性と消費電力
のスケーラビリティを確保しつつ,超大容
量エンド・エンドパスを自在に提供可能な
ネットワーク実現のため,今後も世界を牽
引する技術の研究開発に取り組んでいき
ます.
◆問い合わせ先
NTT未来ねっと研究所
フォトニックトランスポートネットワーク研究部
ネットワーキング方式研究グループ
TEL 046-859-3107
FAX 046-859-5541
E-mail jinno.masahiko lab.ntt.co.jp
NTT技術ジャーナル 2008.11
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