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Today`s Agenda 狭義の「デジタルデバイド」問題 社会内デジタル
日本社会情報学会研究会 11/27/2001 日本社会情報学会 第81回定例研究会 Today’s Agenda デジタルデバイドとは何か ∼PACSとしての情報ネットワーク PACSとしての情報ネットワーク 社会を構想する問い∼ 1. 狭義のデジタルデバイドと広義のデジタ ルデバイド 2. アメリカ型情報化と北欧型情報化:「サー 2001年 2001年11月 11月27日 27日 木村忠正 早稲田大学理工学部 http://www.ne.jp/asahi/kiitos/tdms/hp.j.html http://www.ne.jp/asahi/kiitos/tdms/pdf/20011127JASI.pdf ビス経済トリレンマ」への対応による違い 3. デジタル経済の成長・世界システム再編 成と日本社会が抱える構造上の課題 11/27/2001 狭義の「デジタルデバイド」問題 2 社会内デジタルデバイド問題 「情報ネットワークへのアクセスのある・なし」(=「デ ジタルデバイド」)が社会経済的階層により大きく異 なり、その階層間格差が拡大しつつある(社会内) 南北間(先発国ー後発国間)の情報ネットワーク普 及・アクセスの格差と社会経済的格差の拡大 ユニバーサルデザインとの関連(身障者の方々に情 報ネットワークが利用しやすくすること)(e.g., 報ネットワークが利用しやすくすること)(e.g., Web Accessibility) Accessibility) (c) Tadamasa Kimura デジタルデバイドを社会的問題とする問題意識 『情報ネットワークへのアクセスを「もつ」「もた ない」が、社会階層により大きく異なり(つまり 「デジタルデバイド」が社会階層と密接にリン クしており)、しかも、そうした階層間の経済 的格差、社会的格差が拡大する傾向にある』 的格差、社会的格差が拡大する傾向にある』 80年代にあった「情報格差」は大都市への情報の一極集 80年代にあった「情報格差」は大都市への情報の一極集 中への懸念 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 3 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 4 70 IT化に伴い広がる所得格差 $60,000 $50,000 $40,000 $30,000 IT産業平均 私企業平均 $20,000 デジタル経済の発 展にともない、IT 産 展にともない、IT産 業従事者とそれ以 外との所得格差は 拡大傾向にある デジタルデバイ ドはアメリカだ けではない 60 50 40 30 20 10 0 世帯パソコン保有率 AB 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 出典:米商務省「デジタル経済2000 」 出典:米商務省「デジタル経済2000」 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 5 C2 DE 上は英における 年収によるデバ イド、左はカナダ における教育歴 によるデバイド $10,000 $0 インターネット利用率 C1 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 6 1 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 「ネットワークから零れ落ちる」 格差拡大への懸念 日本社会でのデジタルデバイド 大学(院)卒(97) 12.9 ヒスパニック系 大学(院)卒(98) 8.7 短大卒(97) 11.7 黒人系 短大卒(98) 98年 97年 7.7 専門学校卒(97) 専門学校卒(98) 高卒(97) 32.4 白人(除ヒスパニック系) 高卒(98) 21.2 0 5 10 15 20 中卒(97) 25 30 中卒(98) 35 0% データ:アメリカ商務省FTTN データ:アメリカ商務省FTTN (Falling Through The Net) Net)(1999年 (1999年7月) 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 20% 現在利用 40% 過去利用 60% 利用意向有 80% 100% 利用意向無 Source: NTT Data・ Data・RISS( RISS(Research Institute of System Science) Science) 7 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 8 急速な「日用品化」 「デジタルデバイド」への疑問 0.6 60代女 0.0 0.0 7.4 50代女 0.0 1.8 情報ネットワークへのアクセスのある・なし が経済的格差、社会的格差を生み出すわ けではない 普及の初期段階では、社会経済的地位の 高い階層、若年層が情報ネットワークにア クセスする 政治的パフォーマンスの要素(ユニバーサ ル・サービス、NII との関連) ル・サービス、NIIとの関連) 40代女 30代女 20代女 60代男 50代男 1.9 17.6 5.4 3.0 27.8 8.0 1.7 0.5 23.8 11.3 31.6 14.8 7.0 30代男 20代男 37.7 25.9 9.5 48.5 26.2 9.1 0.0 00調査 98調査 97調査 6.1 1.8 40代男 41.9 12.9 2.7 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 Source: NTT Data・ Data・RISS( RISS(Research Institute of System Science) Science) 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 9 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 10 所得分配格差は80年代から 経済力がデバイドに 160,000 140,000 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 11 93 95 96 97 98 0.440 99 0.420 出典:アメリカ統計局 0.400 0.380 (c) Tadamasa Kimura 99 97 0.340 11/27/2001 95 0.360 93 CPS1998.10 11/27/2001 90 91 ヒスパニック系 85 89 その他 80 87 黒人系 75 85 白人系 75,000+ 70 83 35,000-74999 0.460 0 81 0.0 20,000 79 10.0 世帯ジニ係数 0.480 77 20.0 40,000 75 30.0 60,000 73 40.0 80,000 71 50.0 第五分位 第四分位 第三分位 第二分位 第一分位 100,000 69 60.0 120,000 67 70.0 年収75000 ドル以 年収75000ドル以 上のヒスパニック 系世帯は、年収 35000ドル以上 35000ドル以上 75000ドル未満の 75000ドル未満の 白人系世帯よりも インターネット利用 度が高い。つまり、 民族集団よりも年 収がデジタルデバ イドと大きな相関性 を持つ 12 2 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 クリントン政権の政治的パフォー マンスと「デジタルデバイド問題」 米商務省NTIA報告書 1995 Falling Through the Net: A Survey of the "Have Nots" Nots" in Rural and Urban America. 1998 Falling Through the Net II: New Data on the Digital Divide. 1999 Falling Through the Net: Defining the Digital Divide. 2000 Falling Through the Net: Toward Digital Inclusion. National Telecommunications and Information Administration (NTIA) 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 13 Plugged In に見る アメリカ社会の断層 (c) Tadamasa Kimura 15 分断されるアメリカ社会(2) アジア太平洋地 域 4% 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura Palo Alto East Palo Alto 58,598 29,506 2,722 17,346 1,184 6,796 合計 ヒスパニック系 黒人系 アジア系 10,090 657 白人(除ヒスパニック系) 42,682 1,930 East Palo Alto・ Alto・Palo Altoの主要民族集団別人口 Altoの主要民族集団別人口 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 16 分断されるアメリカ社会(3) ヒスパニック系 11% 0.90%12.30% 3.60% 12.50% 全米0.10% 0.40% 15.90% ニューヨーク0.00% アメリカ原住民 1% 5.50% 1.00% 6.70% 10.90% カリフォルニア0.30% 黒人 13% 14 分断されるアメリカ社会(1) Plugged In <www.pluggedin.org> www.pluggedin.org> z1992年設立 1992年設立 zEast Palo Altoに所在 Altoに所在 zcommunity technology center zフルタイムスタッフ13 人 フルタイムスタッフ13人 zパートタイムが4 パートタイムが4人 z40台の PC 40台のPC 11/27/2001 93年 (全米情報基盤) 93年1月 クリントン政権誕生。NII クリントン政権誕生。NII(全米情報基盤) 構築を主要政策に 93年 』(National Information 93年9月『NII行動アジェンダ NII行動アジェンダ』 Infrastructure: Agenda for Action) Action) 99年 99年12月「デジタルデバイドサミット」 12月「デジタルデバイドサミット」 “digitaldivide.gov” digitaldivide.gov” (デジタルデバイド問題専用 ウェブサイト)開設 2000年 2000年4月、 “From Digital Divide to Digital Opportunity” Opportunity” キャンペーン 民主党の支持基盤には、社会的弱者(貧困層、黒 人系、ヒスパニック系、少数民族集団)が多い 白人(除ヒスパ ニック系) 71% 0% 太平洋地域 10% 69.10% 15.10% 62.00% 32.40% 20% アメリカ原住民系 30% 黒人系 40% 46.70% 50% アジア系 60% 70% ヒスパニック系 80% 90% 100% 白人(除ヒスパニック系) 全米・NY 州・CA CA州における民族集団別人口構成( 州における民族集団別人口構成(2000 2000年推計値) 年推計値) 全米・NY州・ アメリカの民族集団別人口構成比(2000 年推計値による) アメリカの民族集団別人口構成比(2000年推計値による) 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 17 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 18 3 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 南北格差としての デジタルデバイド 分断されるアメリカ社会(4) 分断されるアメリカ社会(4) 世界の人口(1998) その他 5% 日・豪・NZ 6% ヨーロッパ 12% オセアニア 0% アフリカ 13% 北米 5% 欧州 24% ラテンアメリカ 8% 北米 65% アジア 62% 左図:インターネット接続ホストコンピュータ数の世界地域による分布(99 年 左図:インターネット接続ホストコンピュータ数の世界地域による分布(99年 1月現在、NW 社) 月現在、NW社) 右図:世界の人口の地域別分布(1998 年、データ出典:国連) 右図:世界の人口の地域別分布(1998年、データ出典:国連) 不均衡なヒスパニック系人口の地理的分布 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 19 11/27/2001 冷徹な世界システム(1) (c) Tadamasa Kimura 21 識字率 40000 600 32000 500 28000 人口1000人あたり 一人あたりGNP(米ドル) 36000 24000 20000 16000 12000 8000 400 300 200 100 4000 0 0 0 20 40 60 80 0 20 国数 40 60 国数 左図:一人あたりGNP による国数の分布、右図:千人あたりの 左図:一人あたりGNPによる国数の分布、右図:千人あたりの 電話回線数よる国数の分布、これをみると、いかに世界にお ける富の分配が不均衡かわかるだろう 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 22 個人の情報行動と組織の競争力 ∼デジタルデバイド論の二枚舌∼ 冷徹な世界システム(3) 平均寿命 20 冷徹な世界システム(2) 世界システム上位国に属する6 世界システム上位国に属する6分の1 分の1の人々が 世界全体の収入における78 %(平均日給70 70ド ド 世界全体の収入における78%(平均日給 ル)を得る ⇔最貧国61 カ国に属する5 5分の3 最貧国61カ国に属する 分の3の人々はわずか 6%(平均日給 2ドルに満たない)の富 6%(平均日給2 Forbes誌による世界の億万長者上位200 人の Forbes誌による世界の億万長者上位200人の 所得合計 94年 ⇒98年 94年4400億ドル 4400億ドル⇒ 98年1兆ドル超(1 兆ドル超(1秒間に 500ドルの所得) 500ドルの所得) 世界のトップ3 カ国 世界のトップ3人の資産だけで、最貧国61 人の資産だけで、最貧国61カ国 の国民総生産(GNP )を凌駕 の国民総生産(GNP)を凌駕 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 情報ネットワーク へのアクセス 初等・中等・高 国民一人あた 等教育合わせ り実質GDP り実質GDP た就学率 後進国平均 51.7 50.7 37 992 途上国平均 64.4 71.4 59 3,240 産業国平均 77.7 98.7 92 23,741 世界平均 66.7 78.0 63 6,332 情報ネットワーク 高い相関性 競争優位性 を生み出す 学歴・収入・社会的 地位・年代・地域・ 技術への親和性・情 報を取り扱う能力な どによる社会階層 個人レベルでの消費性 向・情報行動の問題 経済的格差が生 まれ、拡大する 企業・組織・社会レベルでの産業 経済活動の問題 異なる水準の議論が接木される 「情報ネットワークへのアクセスをもつ(固定した)社会階層(国) が競争優位性を獲得し、もたざる階層(国)との経済的格差、社会的 格差が広がる」という問題意識=デジタルデバイド 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 23 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 24 4 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 デジタルデバイドを定義する PACS(ポスト高度消費社会)として の情報ネットワーク社会 実態論と構成論を区別すべき。その上で、 <狭義のデジタルデバイド問題> ある社会内のデバイド 南北関係としてのデバイド <広義のデジタルデバイド問題> 「サービス経済」「脱工業化」の進展とデジタル経 済とが結びつくことによる、労働・雇用・富とリス クの産出と分配の変化。それに伴う新たな社会 階層編成に伴うデバイド=ピオリ・セーブルのい う「第二の産業分水嶺」に対応する歴史的画期 としてのデジタル分水嶺(デバイド) 情報ネットワーク、デジタル経済の内在的特性 高度消費社会が飽和した段階における産業経 済の特性 PACS (Post Advanced Consumer Society) においてどのような社会を目指すの かに関する社会的意思決定 ⇒以上の3 以上の3つが組み合わされることにより、「情報 ネットワーク社会」が生成する 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 25 産業構造におけるサービス業の拡大、製造業、農林 水産業の均衡あるいは減少 パートタイム、派遣社員、アルバイトなど、非正規雇 用形態の大幅な増加 若年層を中心にした失業の深刻化 一方で多国籍企業を初めとする企業の巨大化、合 併・買収がありながら、他方で、企業組織のフラット 化、ネットワーク型組織、ベンチャー、SME (小規模・ 化、ネットワーク型組織、ベンチャー、SME(小規模・ 中規模企業)の重要性 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 26 「高度消費社会」の成熟と消費・ 雇用の危機 主要先進国に共通する課題 11/27/2001 11/27/2001 27 OECD諸国における「サービ ス経済化」の進展 モノ・サービスは多様化し、消費が成熟化 技術的革新や新たな機能、より優れた機能の研 究開発を絶えず追求し、新たな記号化、情報環 境の構築を不断に模索することで、ようやく生産 に見合う需要が生じる 日本経済は、既存の様々な産業分野において、 強力な生産技術、商品開発力、販売力をもって いるが、それでも消費の成熟化、飽和を乗り越え 成長と雇用を生み出すまでの強さはない 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 28 深刻化する若年層の失業 イタリア スペイン オーストラリア アメリカ フランス イギリス フィンランド カナダ スウェーデン スウェーデン 韓国 フランス カナダ デンマーク 1998 1993 1988 ドイツ 55 to 64 25 to 54 15 to 24 オーストラリア イギリス フィンランド アメリカ イタリア 日本 日本 ドイツ 韓国 アイルランド メキシコ 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 オランダ 80.0 EU平均 OECD諸国労働者に占めるサービス業従事者の割合 OECD諸国労働者に占めるサービス業従事者の割合 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 0.0 29 11/27/2001 5.0 10.0 15.0 20.0 (c) Tadamasa Kimura 25.0 30.0 35.0 30 5 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 サービス産業こそ雇用創出力 サービス産業の分類 120,000 (A)プロデューサーサービス (B)分配・運搬サービス (C)個人向けサービス (D)社会的サービス(集合的サービス) 100,000 80,000 農業 第二次産業 第三次産業 60,000 40,000 分配サービス二割、社会的サービス三割で平衡 プロデューサー・サービスと個人向けサービスは、 一割ずつ(成長の余地あり) 20,000 0 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 1998 アメリカにおける産業分野別就労人口(実数)の推移 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 31 1. サービスそのものは、その存在をモノのように 触って確かめることはできない 2. 生産物と異なり在庫として蓄えることはできな い 3. 「生産と消費の同時性・同所性」が必要 ⇒相対的に過剰な物的・人的供給能力の常備が 必要 ⇒労働集約的、低熟練労働が多い、非正規型就 労形態がなじみやすい (c) Tadamasa Kimura 33 Service Economy Trilemma 所得格差 社会民主主義 Torben Iversen and Anne Wren ‘Equality, Employment, and Budgetary Restraint: The Trilemma of the Service Economy’ Economy’ World Politics, July 1998 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 製造業に比べると生産性の向上が不明確 したがって、生産性の向上に比例して製造 業の賃金を上昇させることができるのに対 して、サービス産業の賃金を同様に上げよ うとすると歪みが生じる(Baumol の「コスト うとすると歪みが生じる(Baumolの「コスト 病問題(cost 病問題(cost--disease)」) disease)」) 非正規型雇用形態の増大 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 34 雇用や賃金から、保険や医療といった分野まで サービスとして市場原理にまかせる 最低賃金、医療保険などの保証もせず、単純に 労働市場での需給関係に任せる 社会扶助は極端な貧困層や弱者に限られ、しか もNGO、 NGO、NPO、寄付などに期待する NPO、寄付などに期待する 財政負担は少ない 雇用はピンからキリまで派生することで多様な雇 用機会がうみだされるが、所得格差は拡大 Christian Democrate 失業率・雇用創出 32 アメリカ型ネオ・リベラリズム 政府財政 ネオ・リベラル (c) Tadamasa Kimura サービス産業に内在する特性 サービス産業の一般的特性 11/27/2001 11/27/2001 35 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 36 6 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 ドイツ型キリスト教民主主義型 北欧型社会民主主義 産業別組合などの力が強く、生産性の向上が明 確ではないにも関わらず、賃金を比較的高い水 準に保つメカニズムが強く働く 雇用や賃金、社会保障に関して労使による自主 的管理が行われるため、有職者における所得格 差は広がらず、財政も過度に介入をしないが、 反面雇用創出力は強くないため、無職者の保護 は少なく、長期的な失業が増える 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 37 政府が社会的サービス部門を拡大し、積 極的に雇用を創出すると同時に、所得の 再分配にも関与 社会保障を市民に共通の「ユニバーサル サービス」と捉える 雇用と一定水準以上の所得が広範に確保 されるが、財政に大きな負担 11/27/2001 アメリカ社会を映す鏡としての 「デジタルデバイド」問題 (c) Tadamasa Kimura 共和党レーガン政権(81 ∼89年) 共和党レーガン政権(81∼ 89年) 大きい政府から小さい政府へ 市場原理、民間活力の重視 歳出削減と減税による貯蓄刺激策 英・サーチャー政権、日・中曽根政権 39 リストラクチャリングアメリカ 82年、失業率 10.8% % 82年、失業率10.8 大学新卒就職率、二割から四割程度 79年∼ 83年三年以上同一企業に勤めていた 年三年以上同一企業に勤めていた 79年∼83 70万人の管理職・専門職が職を失う 70万人の管理職・専門職が職を失う 85∼ 60万人の中間・上級 万人の中間・上級 85∼86年にかけてさらに 86年にかけてさらに60 管理職が解雇 フォーブス500 の企業は、70 70年民間就労者全体 年民間就労者全体 フォーブス500の企業は、 の18.9%を雇用していたのが、 86年には 年には 18.9%を雇用していたのが、86 12.2%へと激減 12.2%へと激減 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 38 レーガノミクス 80年代に「所得格差」を犠牲にし、雇用、賃金 80年代に「所得格差」を犠牲にし、雇用、賃金 体系、福祉などが流動化⇒ 体系、福祉などが流動化⇒「independent contractor」のような職種が拡大していく contractor」のような職種が拡大していく 垂直方向に社会的富とリスクの分散が拡大し たところに登場した新たな経済成長動因が「イ ンターネット」 デジタル経済の恩恵は所得上位層に偏り、ア メリカ社会固有の問題としての「デジタルデバ イド」が生成 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 41 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 40 基本的需要が満たされた社会での 過剰な生産能力 多品種少量生産にも十分に対応できる生産能 力、柔軟性の高い商品化能力、技術開発力、 流通能力、販売能力、いずれも市場に過剰に 存在 したがって、どの商機がいつ訪れるのか不確実 であり、需要が拡大したときにそれを逃さず、 ブームが去ったときに過剰生産を回避できるよ うに決断する俊敏さとそれを実行できる組織力 が求められる 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 42 7 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 高い不確実性とリスク分散 市場・ネットワーク型組織・組織 不確実性は市場環境だけでなく、技術環境 についても同様 技術革新がこれだけ速く、なおかつ巨額の 研究開発投資が必要な環境では、すべて自 前で研究研究 開発すること、あるいはすべ 前で研究研究開発すること、あるいはすべ て内製化することは実質的に不可能だし、リ スクが大きすぎる 技術革新に適切に対応し、リスクを分散させ るためには、外部との連携が必要不可欠 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 43 職務ポートフォリオ 帰属感 (高 ) 専門性 (高 ) 時期的 定型 業 務 専門業 務 (外部 調 達 型) 短 期貢 献型 帰属感 (低 ) プライ ベ ー ト重 視 (趣味 ・ 余 暇な ど を 通した 自 己 実現 ) 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 仕事 重 視( 仕事 を通 した 自 己実 現) 45 インディペンデント・コントラクター 高い教育を受け、実務経験を積んだ多くの 管理職、専門職が大企業を労働市場へ 彼らや超氷河期で就職する機会を逃した 学生たちを中心に、独立契約社員 (independent contractor)と呼ばれる contractor)と呼ばれる 新たな職種が拡大 ネットワーク型組織、戦略的アウトソーシン グといった新たなビジネス様式の担い手 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 44 情報処理をはじめ、法務、財務、経理、マーケ ティング、設計開発から、福利厚生、人事(たとえ ば海外人事)、営業販売(たとえば通信販売代 行)まで「アウトソーシング」対象領域が拡大 ビジネスアイデアと経営管理上の意思決定とい う機能を除き、製造工程に比べると生産性の向 上が明確ではない事務、管理部門はすべてアウ トソーシングの対象に 事業所向けの専門的サービス業成長の可能性 コア業 務 (社内 蓄 積 型) 専門性 (低 ) 11/27/2001 「アウトソーシング」概念の拡大 長期貢 献型 継続 的 定型業 務 80年代以前、市場と組織とが大きな二つの制 80年代以前、市場と組織とが大きな二つの制 度として存在し、その中間領域は想定しがたい 組織は、明確なメンバーシップにもとづき、長期 的な人的つながり、社会資本を形成することで 便益を高める 市場は、匿名性・一回限りの取引にもとづく交 換行為により、個々の便益を高める ところが、70 年代からの高いフレキシビリティ要 ところが、70年代からの高いフレキシビリティ要 求は、組織と市場の中間的制度を潜在的に要 請する 47 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 46 ITベンチャーを支える 99年 万人(全労 99年2月現在、独立契約社員は825 月現在、独立契約社員は825万人(全労 働人口の6 働人口の6%程度) 従事している職種は、経営・管理職20.5 %、専門 従事している職種は、経営・管理職20.5%、専門 職18.5%、精密技師 18.9%、営業職 %、営業職17.3 17.3% % 18.5%、精密技師18.9 外部調達型専門業務人材として機能 ベンチャー起業家の担い手 サン、シリコングラフィクス、コンパック、デル、ノベ ル、シスコなどは80 年代初頭にベンチャー企業と ル、シスコなどは80年代初頭にベンチャー企業と して産声をあげた アップル、マイクロソフト、オラクルなど70 年代後 アップル、マイクロソフト、オラクルなど70年代後 半に設立されたIT ベンチャー企業も、彼らに支え 半に設立されたITベンチャー企業も、彼らに支え られることにより成長 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 48 8 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 情報・知識と社会、産業経済との 関係は多錯的 社会全体は「知識社会化」しない 35.6 スウェーデン(96) 32.8 カナダ(96) 情報化=労働時間の短縮、知識、情報、 余暇を扱う職種の増大、「誰もが生きがい を追求し、自己実現の喜びを享受する高 度な知的創造社会」(増田米二)の到来、 とはいかない イギリス(93) 19.1 アメリカ(96) 17.9 12.4 日本(96) 0% 15.5 9.5 10% 49 「デジタル経済」も工業化モデル にしたがう SCM、 SCM、ECなどはこれまでの情報技術と産業経済 ECなどはこれまでの情報技術と産業経済 活動の関係の拡張(「コントロール・制御」の思想) 90年代後半におけるデジタル経済の発展は工業 90年代後半におけるデジタル経済の発展は工業 化モデルの教科書にしたがう ⇒「大量生産して単価を下げ、それによって需要を 拡大すると同時に就労者一人あたりの生産性を 上げる。さらに技術的革新により次世代に移行す ることを繰り返しながら、数多くの人々を生産― ることを繰り返しながら、数多くの人々を生産―消 費ゲームに参加させ、多様な財・サービスを生 産・消費する好循環を生み出す」 11/27/2001 16.6 14.2 10.0 15.4 7.9 12.3 9.1 14.4 管 理 40% 事 務 3.2 25.7 13.9 4.5 24.5 10.0 8.8 13.6 11.2 9.5 22.5 30% 9.4 12.2 20.9 19.5 20% 9.5 14.5 3.3 3.8 専門技術 (c) Tadamasa Kimura 0.0 14.0 17.0 ドイツ(旧西独)(91) 韓国(96) 2.6 4.9 11/27/2001 0.0 3.6 販 売 25.1 31.9 5.4 34.6 11.1 50% 22.6 2.8 37.1 60% 70% サービス 80% 農林漁業 90% 100% 生産関連 (c) Tadamasa Kimura 50 工業化モデルの教科書であるIT 船便(1 トンあた 飛 行 機 ( 乗 客 1 電話代(ニューヨコ ン ピ ュ ー タ りの平均 的な船 人・1 マイル運行 ー ク か ら ロ ン ド (1990 年を 100 と 舶貨物代と港使 あた りの 平 均収 ン、3 分間) した指数) 用料) 入) 1920 95 1930 60 0.68 245 1940 63 0.46 189 1950 34 0.30 53 1960 27 0.24 46 12500 1970 27 0.16 32 1947 1980 24 0.10 5 362 1990 29 0.11 3 100 船便、飛行機、電話代に関しては、1990 年米ドル換算 輸送、通信料の推移(出典:IMF 輸送、通信料の推移(出典:IMF World Economic Outlook 1997) 1997) 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 51 日本社会における70年代以降 の雇用創出領域 における変化(高い付加価値は、マーケティン グ、商品開発、デザイン設計、宣伝広告、販売 促進など)(⇒ 促進など)(⇒「アウトソーシング」化、事業所向 け専門サービスの拡大) 2. 多種多様な商品が流通し、購買・消費されてい く過程が重層的に広がることで、運輸業、卸売 業、小売業が拡大(⇒ 業、小売業が拡大(⇒雇用創出力は飽和か) 3. 「家族の外部化」 に関連 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 52 「家庭の外部化」における 2つの方向性 1. 製造業の「2. 製造業の「2.7次産業」化:製造業自体の内部 11/27/2001 11/27/2001 53 1. 生活していく上での安全、安心を高める医療、 保健サービスと、より高い付加価値を生み出す 人材育成を行う教育(高等教育)サービスの拡 大 2. 飲食業とレジャー、趣味、娯楽関連産業といっ た個人向け・家庭向けサービス業(個客業) ・ この分野は大きく、(1)量販店・FC ・外食産業の この分野は大きく、(1)量販店・FC・外食産業の ように工業化モデルによる規模の経済性追求 型か(2)ニッチを狙うSME 型に大別される 型か(2)ニッチを狙うSME型に大別される 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 54 9 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 「個客業」の成長と 《量販モデル⇔ 量販モデル⇔SME》 SME》への二極化 70年代こそ福祉国家が成立 60.0 50.0 量販店、スーパー、 コンビニ 小売業 40.0 日本 フランス ドイツ スウェーデン イギリス アメリカ 30.0 20.0 「個客業」 飲食業 「脱家族化」 領域 ホテル、レンタルビ デオ、 カラオケ、 塾・ 予備校など 個人向けサービス業 「アウトソーシ ング」領域 10.0 狭義のサービス 業 事業所向けサービス業 「個客業」は、1) 狭いニッ チに対応するS MEと、 2) 規模の経済性でサービス 業のコスト問題をクリアし ようとするチェーン店、大 型店に大きく分化する 0.0 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1993 社会保障給付費(年金・医療・その他の合計)の対 国民所得比の国別推移 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 55 コア人材とパート人材の二極化 マクドナルド 1994 2000 店舗数 1169 3277 オフィス 356 427 店舗 3091 4742 社員 数 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 11/27/2001 69000 社会経 済 的水準 最上位 層 時間 57 1. 「時間とコストは距離と大きさに比例する」(産 業経済活動が行われる場の特性) )流 2. 「価値や情報はモノに体化され(embodied 「価値や情報はモノに体化され(embodied)流 通する」(後者は流通する財がもつ特性) ⇒モノや情報は「地理的隣接性」にしたがって循 環し集積する傾向(「地域経済」) (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 最上位 層 最下位 層 情報ネットワーク化以前の 物理的時空間における産業経 済活動を構造化する2つの原理 11/27/2001 社会経 済 的水準 最下位 層 120000 (c) Tadamasa Kimura 56 垂直方向に格差が拡大する 可能性 工業化によ る社会発 展モデル(高度成長期) アルバイト 外食産業 59 11/27/2001 時間 サービス 産業中 心の社会発 展モデル(アメ リカ型) (c) Tadamasa Kimura 58 モノに体化され流通する必要が あった情報・知識 研究開発、マーケティング、商品開発、販売促進活 動など情報・知識集約的部門は、企業にとって「コア コンピタンス」であると同時に、高度なフレキシビリ ティもまた求められる 情報ネットワークが企業活動に十分組み込まれてい ない段階では、これらの活動は、図面、企画書、書 類、調査報告書、アンケートデータ集計表、模型、試 作品といった形で「モノに体化され流通」する必要 そのため、たとえアウトソーシングやコンサルティン グを活用するにしても、物理的な時間と距離の制約 から解放されることは困難 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 60 10 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 Proximity(隣接性)の変容と タスクモビリティ 活動形態 事 務 事 成 務 整 事 ョン 務 シ 事 ー 作 ケ 操 ニ シ ミュ コ マ 務 事 理 務 ン 生産事務 販売事務 管理事務 (マネジメントコントロール) 購買事務 経営事務 (戦略的計画) 人 事事務 作 技術事務 考 財務事務 思 目的 「Proximity (隣接性)」概念が「地理的隣 接性」から「ネットワーク隣接性」に 「ネットワーク隣接性」による産業経済集積 「タスクポータビリティ」「タスクモビリティ」 ⇒「アウトソーシング」から「オフショアソー シング」「テレトレイド・テレポーティング・ ネットワーク移民」 拡大するoffshore-sourcing ITに関する知識 CIO(情報執行役員) 非定型業務用ソ フト開発 製品開発者 情報システム 管理者 監督事務 (オペレーショナルコントロール) 部門 作業事務 (トランザクション処理) 定型問合せ窓口 プロジェクト 管理者 CFO(財務 執行役員) 定型窓口業務 ビジネス・組織運営管理 に関する知識 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 61 IT関連の知識や技術の場合、ハイエンドで は技術革新も速く、特殊な専門知識を必 要とするが、コンピュータやネットワークス キルに関しては、初級から上級まで、それ ぞれのIT水準に応じて、ある程度習熟す れば、新たな業務にも学習転移することが 可能な要素が多い。また、業種、産業分野、 国によってまったく異なるわけではなく、む しろ、文化、社会による違いは少ない。 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 62 過剰な富と拡大する分配不均衡 ITスキルと製造スキル 11/27/2001 11/27/2001 63 原材料調達⇒ 原材料調達⇒生産工程⇒ 生産工程⇒流通過程・在庫管理⇒ 流通過程・在庫管理⇒ 販売 研究開発・マーケティング(市場調査)⇒ 研究開発・マーケティング(市場調査)⇒商品開発 ⇒営業・広報・販促活動 いずれの側面においても、価値連鎖を情報ネット ワークによりコントロールするところに富が集中す る傾向 「地理的隣接性」に代わり、「ネットワーク隣接性」 (Network Proximity)により産業経済・社会文 Proximity)により産業経済・社会文 化活動が集積 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 64 インドIT産業の成長 世界システムの再編成 94年度 95 年度 96 年度 97 年度 98 年度 社会経済 的水準 ソフトウェア 産業国 社会経済 的水準 投資・技術 労働力・商 品・サービス 途上国 ワイヤード された世界 サイバー スペース オフショア ソーシング 製造業における現地生産モデル 社会経済 的水準 ハードウェア ワイヤード/アンワイヤードに よる分水嶺(デバイド) 周辺機器 産業国 産業国 仕送り 途上国 移民 途上国 アンワイヤード された世界 ネットワーク社会における世界システム再編 成の方向性 国内 350 490 670 950 輸出 485 734 1083 1750 1250 2650 小計 835 1224 1753 2700 3900 国内 590 1037 1050 1205 1026 輸出 177 35 286 201 4 小計 767 1072 1336 1406 1030 国内 148 196 181 229 329 輸出 6 6 14 19 18 小計 154 202 195 248 347 302 トレーニング 107 145 183 263 保守・管理 142 172 182 221 236 36 710 156 193 237 2041 2886 3805 5031 6052 ネットワークサービスなど 総計(単位:百万米ドル) 工業化社会における「移民」のあり方 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 65 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 66 11 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 インドSTP インド各地に展開するSTPI 86年 86年『コンピュータソフトウェア輸出、ソフト ウェア開発と人材育成』 ウェア開発と人材育成』 90年から STP( (Software Technology 90年からSTP Park)というソフトウェア産業を中核としたI Park)というソフトウェア産業を中核としたI T産業集積地の開発政策 これまでにバンガロール、ハイデラバード、 プネ、チェンナイなど16 以上のSTP STP開発 開発 プネ、チェンナイなど16以上の 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 67 集積回路設計33 社、通信用ソフトウェア 集積回路設計33社、通信用ソフトウェア 70社、システムソフトウェア 65社、応用ソ 社、応用ソ 70社、システムソフトウェア65 フトウェア156 社、サービス事業者72 72社が 社が フトウェア156社、サービス事業者 集積(99 年) 集積(99年) STPでの事業に関しては、資本財、通信機 STPでの事業に関しては、資本財、通信機 器について、輸出義務なしに関税免除で の輸入が認められ、外資も100 %容認 の輸入が認められ、外資も100%容認 通信衛星、デジタル無線設備、高速LAN 通信衛星、デジタル無線設備、高速LAN を組み合わせた情報ネットワークインフラ も整備 (c) Tadamasa Kimura 11/27/2001 69 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 70 WIREDされた世界 インドの「オンサイト・サービス」(技術者が 欧米に出向いてソフトウェア開発・システ ム開発などを行う) 91年度、輸出の 95% %⇒99年度 58% % 91年度、輸出の95 99年度58 99年度の残り 42%は、「ネットワーク出稼 %は、「ネットワーク出稼 99年度の残り42 ぎ・移民」(オフショアソーシング) (c) Tadamasa Kimura 68 アメリカ連邦政府H― アメリカ連邦政府H―1Bビザ:6 1Bビザ:6年を滞 在年限とし、高度な専門的知識をもった 外国人労働者に就労を認めるビザ。もと もと1 件を上限として発給 もと1年に65000 年に65000件を上限として発給 90年代後半、海外のIT技術者を雇用す 年代後半、海外のIT技術者を雇用す 90 るためにこのビザが利用されるように ⇒申請が増え、上限にすぐ達する。しかも 97年には半数がIT関連技術者 97年には半数がIT関連技術者 ⇒H―1Bビザの上限を時限的に緩和 『ネットワーク出稼ぎ・移民』 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura H−1Bビザの政治経済学 バンガロールSTP 11/27/2001 STPI (Software Technology Park of India) が基盤作りを担 い、100%輸出指向の産 業経済活動を行う企業が 集積する 71 FIBER STP間、インドSTP間、インド-欧州間は衛星で、さらにア メリカへは光ファイバーで「ワイヤード」され ている 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 72 12 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 第三の産業分水嶺としての デジタルデバイド インドにおけるデジタルデバイド 第一の産業分水嶺=フォーディズム 2000年 3 月末現在 パソコン台数 430 万台 77 万人 インターネット接続契約者 インターネット利用者 19501950-60s 少品種大量生産にもとづ く大衆消費社会 320 万人 ケーブルテレビ加入者 3700 万人 固定電話加入回線 2600 万回線 テレビ台数 第二の産業分水嶺=Flexibility 第二の産業分水嶺=Flexibility (流動性・柔 軟性)(Post 軟性)(Post--Fordism, Fordism, NeoNeo-Fordism) Fordism) 7500 万台 情報ネットワークの恩恵を受けるのは、 WIREDされた一部の地域・階層のみ 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 19701970-80s 多品種少量生産にもとづ く高度消費社会 73 11/27/2001 産業社会における歴史的画期としての デジタル分水嶺(デジタルデバイド) (c) Tadamasa Kimura 拡大する新卒 無業者 第三の産業分水嶺=「サービス経済」「脱工業 化」の進展+デジタル経済の特性 74 死亡・不詳の 者 6% 一時的な仕事 4% 臨床研修医 1% 学歴別無業者比率の推移 35.00 25.00 高卒 高専卒 短大卒 大卒 20.00 15.00 19901990-2000s? 2000s? PACS (Post Advanced Consumer Society:ポ Society:ポ スト高度消費社会) (c) Tadamasa Kimura 80年代のつけが 80年代のつけが 21世紀初頭に 21世紀初頭に 就職者 56% 30.00 労働・雇用・富とリスクの産出と分配の変化。それ に伴う新たな社会階層編成 11/27/2001 大学院等へ の進学者 11% それ以外(無 業者) 22% 10.00 5.00 84 85 86 87 88 89 90 91 75 11/27/2001 92 93 94 95 96 97 98 99 (c) Tadamasa Kimura 76 生産年齢人口と老年人口の比(低位推計) 6.00 「曙化」する人口構成 5.00 4.00 3.00 2.00 出生率の推移 1.00 2.20 0.00 2.00 95 98 01 04 07 10 13 16 19 22 25 28 31 34 37 40 43 46 49 1.80 アメリカ スウェーデン 日本 1.60 1.40 1.20 1.00 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 77 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 78 13 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 典型的な顕示的消費財としての 「ポケベル」・「ケータイ」 ショートメッセージと着メロが 主要な利用法 プライベートでのショートメッセージ受発信 着メロダウンロード プライベートでのショートメッセージ以外のメール受発信 利用経験者割合 平均台数 待受画面ダウンロード 仕事・学業でのショートメッセージ受発信 仕事や学業でのショートメッセージ以外のメール受発信 ポケベル 31.7% 1.36 女性 男性 占い情報 上記以外有料情報提供サービス PHS 56.1% 1.71 ネットバンキング ゲームダウンロードと利用 携帯 41.0% 1.28 出会い系サイト ネット対戦型ゲームの参加 iモード系 94.2% 1.29 2001年 、男子56 56%) %) 2001年6月木村大学生調査(N=139 月木村大学生調査(N=139、男子 11/27/2001 0 (c) Tadamasa Kimura 79 11/27/2001 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 電話がかかってきたがでなかった(出ることができ なかった) MLからの受信 MLからの受信 メール作成のみ 電話をかけたが留守電で切った 着メロサイトへのアクセス (c) Tadamasa Kimura 80 i-mode系利用者で低い 情報リテラシー 44.23% 32.79% 電話がかかってきて話した 電話をかけつながって話した 11/27/2001 0.2 (c) Tadamasa Kimura メール関連が利用件数の77% メール受信確認 メール作成送信 0.1 2001年 、男子56 56%) %) 2001年6月木村大学生調査(N=139 月木村大学生調査(N=139、男子 6.00% 5.24% 3.57 どちらもなし 2.98 大学生01調査 RISS00調査 3.18 移動体inetのみ 3.83 5.18 4.97 PCinetのみ 3.20% 2.54% 1.63% 1.02% 0.56% 81 4.93 PCinet+移動体inet 0.00 5.65 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 データ出典:(株)NTTデータ・開発本部・システム科学研究 所(2000 年6月、N=2075 )、2001 2001年 年6月木村大学生調査 所(2000年 月、N=2075)、 (N=139) N=139) 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 82 高い現状満足と将来への不安 日本社会が立ち竦む理由 現状に対する高い満足感と「日本社会は 今後これ以上よくはならない」という未来に 対する悲観的予測から変化を拒む社会的 心理 再分配経済が相対的に低いという政治経 済的構造要因とそれに伴う「わ 済的構造要因とそれに伴う「わたくしごと (私事)化」「パブリックなもの(公)に対する 判断停止」という社会文化的態度の拡大 ソウル 上海 ストックホルム シリコンバレー 東京 0% 子ども世代 20% 40% 60% 80% どちらかといえば子ども世代 同じ どちらかといえば自分世代 100% 自分世代 NTTデータ・開発本部・ RISS(システム科学研究所)との (システム科学研究所)との NTTデータ・開発本部・RISS 協働調査の結果(2000 年6月) 協働調査の結果(2000年 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 83 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 84 14 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 満たされた独身生活 国民負担率国際比較 スウェーデン(94) 未婚女性 50.8 イギリス(94) 未婚男性 35.8 ドイツ(94) 既婚男性 20% 0円 40% 2万円未満 60% 2-3.9万円 4-6.9万円 80% 7-9.9万円 85 20.1 9.2 ドイツ(93) 8.7 10.8 アメリカ(92) 7.1 8.7 日本(95) 6.3 11/27/2001 5.10.1 20.0 30.0 40.0 年金 その他 50.0 20.5 16.8 0% 10% 農林水産業 鉱業 46.4 80.0 86 22.0 22.3 0.85.5 23.1 6.0 8.2 27.8 5.7 11.6 34.7 15.4 6.8 12.4 37.0 30.5 18.2 60% 老後は考えたことがない 40% 50% 60% 70% 卸売・小 運輸・ 売・飲食・ 通信 レジャー 80% 金融・保 険・不動 産・対事業 所向サービ ス 90% 100% 地域・社会・ 個人サービ ス (c) Tadamasa Kimura 12.2 27.3 4.9 7.8 7.5 9.6 80% 2.8 5.2 5.6 5.0 100% 日本(00) 1.92.02.23.2 5.1 どちらともいえない 0% 10% 人生実現の人 人生を夢見る人 電通総研「価値観国際比較調査」 17.5 88 11.8 9.0 15.9 17.3 19.3 13.0 東京(97) 4.0 3.4 4.6 4.4 東京(00) 3.22.11.12.1 5.3 40% 30% 電気・ 建設業 水道・ ガス 考えることの放棄 ストックホルム(97) 54.2 20% 製造業 11/27/2001 シリコンバレー(97) 老後の生活が不安 70.0 データ出典:OECD 87 上海(97) 3.32.0 4.2 20% 1.05.8 19.2 ソウル(97) 4.4 4.4 0% 0.5 9.8 60.0 (c) Tadamasa Kimura 99年 60.0 3.6 老後は不安か、考えなし? 98年 50.0 社会保障負担 9.1 医療 11/27/2001 40.0 (c) Tadamasa Kimura 0.5 アメリカ(98) 1.7 10.3 8.8 1.9 10.0 30.0 租税負担 0.2 スウェーデン(98) 2.6 0.0 20.0 10.2 14.3 7.3 10.0 13.3 23.3 18.4 イギリス(93) 23.3 0.0 日本(98) フランス(93) 10.6 消費欲求充足産業が大きい日本 社会保障給付国際比較 10.0 25.9 日本(95) 10万円以上 (c) Tadamasa Kimura スウェーデン(93) 25.6 100% 小遣い月額(1998 年、日経産業消費研究所調査、29 29歳 歳 小遣い月額(1998年、日経産業消費研究所調査、 までの首都圏在住社会人(親との同居率8 までの首都圏在住社会人(親との同居率8割)対象) 11/27/2001 28.7 31.4 アメリカ(93) 0% 10.3 33.5 フランス(94) 既婚女性 19.8 11.9 30.9 17.6 11.1 7.6 42.7 16.7 16.6 6.6 14.1 21.9 23.4 11.7 65.4 10.6 65.8 20% 30% 人生設計の人 分類不能 50% 16.9 41.7 9.3 40% 20.7 9.3 60% 人生プロセスを考える人 人生を考える人 70% 80% 90% 100% 人生を守る人 人生を考えない人 NTTデータ・開発本部・ RISS(システム科学研究所)との (システム科学研究所)との NTTデータ・開発本部・RISS 協働調査の結果(2000 年6月) 協働調査の結果(2000年 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 89 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 90 15 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 従来のサービス貿易 社会的ケアサービスを情報ネッ トワーク化する 輸送:船、飛行機、鉄道、自動車などによる旅客、貨物の輸送。パイプライン、導管、 導線などによるエネルギー、資源の輸送。それにかかわる事務手続きなど。 より少ない生産年齢人口でより多くの高齢 者を支えるためには、日本社会は高い付加 価値を生み出す人的資源と産業構造を必 要としており、情報ネットワークの日用品化 はそのために不可欠 「情報工業化」も必要だが、消費欲求充足 産業のIT化ではなく、EverNet による社会 産業のIT化ではなく、EverNetによる社会 的ケアサービス部門の効率性・有効性を高 めることが戦略的に重要ではないか? 旅行:業務目的と私的旅行に大きく分かれる。外国滞在中の滞在、移動、食事、余暇 活動などにかかる費用が主。 通信:国際電話、ファクス、郵便、宅配便など。 建設:外国企業が受注した建設プロジェクト。当該国の海外子会社が受注したものは 除く。 金融・保険:外国金融・保険企業により提供されるサービス。 コンピュータ・情報サービス:システムインテグレーション、ソフトウェア開発、プ ログラム作成、情報処理、データベース構築管理運営、システム等管理運営受 託、情報提供サービス、インターネットウェブサイト構築など。 ロイヤリティ、ライセンス手数料:特許、著作権、商標、フランチャイズなど無体財 産の利用料など 個人向け、文化的、娯楽的サービス:映画、テレビ番組、音楽ソフトの配給、レンタ ルなど、音楽映像関係の取引に伴い発生するサービスや手数料。美術館、図書 館、スポーツ競技などに関連して発生するサービス、手数料。 政府:外国に設置されている大使館、軍事施設などに関係する費用。国際機関への拠 出。外国の企業や機関への研究調査委託など。 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 91 11/27/2001 内弁慶からの脱却を迫られる サービス産業 コミュニティ・社会・ 個人サービス業 25% 電気・ガス・水 道業 鉱業,採石業 1% 0% 農林業,狩猟業, 漁業 5% 運輸・倉庫・通 信業 6% 金融・保険・不 動産,事業サービ ス 9% 建設業 10% 卸売・小売業, 飲食店,ホテル 23% 製造業 21% 11/27/2001 日本 GNP( GNP(97) 97) 総額 建設業 製造業 業 業・飲食店 業 5125 2811 3388 9446 4456 3066 650 392 8.8 8.9 22.1 23.0 35.7 80.3 2320 664 828 533 59.0 7.1 12.3 19.2 25.1 28.0 サービス輸出(96 ) サービス輸出(96) 647 2647 850 817 173 57 サービス輸入(96 ) サービス輸入(96) 1300 1520 1285 704 193 134 1.4 3.4 3.7 6.7 7.5 8.6 2.7 2.0 5.5 5.8 8.3 20.2 (対GNP比を除き、単位はすべて億ドル) (c) Tadamasa Kimura 94 300 427 344 273 408 338 1990 370 402 352 517 413 309 490 380 1995 409 451 391 584 454 336 541 413 1999 396 457 399 614 404 307 533 407 賃金−産業別常用労働者1人平均月間現金給与額(事業所規模 30人以上)(単位 30人以上)(単位 1,000円) 1,000円) 95 運 電 気 ・ ガ 卸 売 ・ 小 金融・ サー 輸 ・ 不動 ス ・ 熱 供 売業、飲 保 険 ビ ス 通信 産業 給・水道業 食店 業 業 業 鉱業 建設 業 製造 業 平均年齢(年) 45.1 41.5 40.4 38.9 42.4 37.6 38.7 41.2 38.8 勤続年数(年) 12.8 12.0 13.9 17.4 13.1 11.1 12.6 9.1 9.2 現金給与額(千 円) 328.5 342.2 321.2 429.0 343.6 315.3 373.1 年間賞与など (千円) 938.3 894.3 1087. 9 1911.7 959.4 1016.0 1625.7 1998年 家事サービス業) 306 (c) Tadamasa Kimura 6825 賃金水準格差(2) 317 (c) Tadamasa Kimura 23195 12202 アイル ランド 輸出額/GNP (%) 輸出額/GNP(%) 11/27/2001 1985 11/27/2001 イギリ スウェー ス デン 76901 サ ー ビ ス 輸 出 / GNP (%) サ ー ビ ス 輸 入 / GNP (%) 電気・ガス・ 運 輸 ・通 信 卸 売 ・ 小 売 金融 ・保 険 サービス業(除: 熱供給 ドイツ 4210 輸出額/GNP (%) 輸出額/GNP(%) 93 アメリカ 47723 輸出額( 97 、アメリカの み98) 98) 輸入額( 97 、アメリカの み98) 98) 賃金水準格差 年次 92 内弁慶でよかったサービス産業 これまで「内弁 慶」でよかった サービス産業 を世界に解放 する=教育、 医療、環境、 介護などのノ ウハウを知的 資源として武 器にすること が可能に (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 353. 2 316.7 1221 .4 1031. 7 96 16 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 北欧型情報化モデル 「社会」と「個人」とが直接互酬的 関係性を築く=「共創社会(コン センサス・コミュニティ)」 資産税 2% 世帯直接税 42% その他 9% 売上税 13% 社会保険料 28% z中間組織(企業・家族) の流動性が高まっている (脱家族化、脱組織化) zしかし市場の大海に個 人を裸で放り出すだけが 選択肢ではない 法人直接税 6% スウェーデンの租税収入の構成 11/27/2001 z「社会的ケア」を「脱商品 化」する社会的枠組が必 要ではないか? (c) Tadamasa Kimura 97 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 98 IT立国北欧 豊かな自然 環境 C o u n ty In d e x ,2 0 0 0 R a n k in g ,1 9 9 9 1 .S w e d e n 5 .0 6 2. 2 .U n ite d S ta te s 5 .0 4 1. 3 .F in la n d 4 .5 8 3. 4 .N o r w a y 4 .4 8 5. 5 .D e n m a rk 4 .3 4 6. 6 .C a n a d a 4 .3 2 10. 7 .N e th e r la n d s 4 .2 3 7. 8 .S w itz e r la n d 4 .1 7 − 9 .A u s tr a lia 4 .1 3 8. 1 0 .J a p a n 4 .0 9 9. Source:International Data Corporation(IDC)、 Corporation(IDC)、2000年 2000年2月 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 99 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 100 スウェーデンにおけるトリレンマ の克服 社会全体の情報化が進む スウェーデン 6 5 コンピュータ利用率(98 年) コンピュータ利用率(98年) 4 3 家庭での利用率52 % 家庭での利用率52% 仕事での利用率66 % 仕事での利用率66% 全体としては73 % 全体としては73% 2 失業率の推移 1 0 -1 90 91 92 94 95 96 -2 97 98 99 12 10 -3 インターネット利用率 93 スウェーデン 個人利用率55 %(99 99年) 年) 個人利用率55%( 個人利用率70 %(2000 2000年 年5月、9 歳対 個人利用率70%( 月、9歳から79 歳から79歳対 象) 経済成長率 日本 8 6 4 2 0 90 91 92 93 94 95 スウェーデン 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 101 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 96 97 98 99 日本 102 17 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 北欧型モデル 社会経済 的水準 ワイヤードされた世界 における競争と協働 1998年に実施された施策 10000人に及ぶ IT訓練プログラム 訓練プログラム 10000人に及ぶIT PC法案:企業が PCおよび周辺機器を購 および周辺機器を購 PC法案:企業がPC 入し、従業員が家庭で使えるようにリース するプログラム。 サイバー スペース アメリカのように、所得格差を拡 大させず、社会内でのデジタル デバイドを生み出さないという 「社会協約」 ワイヤード/アンワイヤード による分水嶺( デバイド) モノだけでなくサービスの分野でも国際 的な競争へと市場を開放することにより 生産性を高め、 他の社会に貢献すると同 時に、 自らの社会も豊かさを享受する 「デジタルデバイド」に対するアイルランド、 北欧型情報化モデル 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 103 11/27/2001 キロほどある 首都ヘルシンキから東に10 首都ヘルシンキから東に10キロほどある エスポール市(Espor )(ネット普及率 エスポール市(Espor)(ネット普及率 100%) 100%) ) オタニエミ(Otaniemi オタニエミ(Otaniemi) z VTT( VTT(Technical Research Center of Finland) Finland) z ノキア本社 z HUT (Helsinki University of Technology) Technology) (c) Tadamasa Kimura 105 HUTの教官たちは、民間企業や政府系研究機関 HUTの教官たちは、民間企業や政府系研究機関 などから研究委託などを受け、大学院生たちを雇 用 政府からHUT に直接割り当てられる予算は、大学 政府からHUTに直接割り当てられる予算は、大学 全体の予算のうち55 %程度。その他は研究委託 全体の予算のうち55%程度。その他は研究委託 が大きな割合を占める。 学生は委託研究、企業などで研究しながら修士号 取得を目指す。その中で、20 %程度が起業しイ 取得を目指す。その中で、20%程度が起業しイ ノーポリのような組織が受け皿となる。 工学系では約半数、フィンランドの大学生全体で も2割程度の学生はIT 関連学部に属す。 割程度の学生はIT関連学部に属す。 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 104 ¾1987年に活動を開始 1987年に活動を開始 ¾200社あまりのベンチャー企業 200社あまりのベンチャー企業 11/27/2001 107 (c) Tadamasa Kimura 106 北欧型は「外部」を要請 フィンランドにおける産官学協働 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura イノーポリ(Innopoli) フィンランドのシリコンバレー 11/27/2001 この制度で、98 年51万 (ス この制度で、98年 51万5千台のPC 千台のPC(ス ウェーデン国内年間PC 販売台数の35 35%) %) ウェーデン国内年間PC販売台数の とくにブルーカラー世帯でのPC 保有が促進 とくにブルーカラー世帯でのPC保有が促進 (97年から 98年で推計 年で推計40 40万台) 万台) 97年から98 世帯PC 保有率:48 48% %→67% 世帯PC保有率: 67% 一つ大きな問題としては、北欧型が機能する のは、岩井克人がいう「外部」があって機能す る構造ではないか? たとえば、「スウェーデンのシリコンバレー」と 称されるKista 称されるKista Sciencepark (www.kistasciencepark.org) www.kistasciencepark.org) がある Kista(シスタ)市が抱える社会分断、移民な Kista(シスタ)市が抱える社会分断、移民な どの問題をどうするか?⇒ どの問題をどうするか?⇒日本にとって切実 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 108 18 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 IT化による途上国の経済発展戦略 IT化による途上国の経済発展戦略 Kistaにおける潜在的緊張 シスタサイエンスタワー Electrum サイエンスパーク 地下鉄シスタ駅 UNDP "Creating a Development Dynamic: Final Report of the Digital Opportunity Initiative" 2001.7 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 109 11/27/2001 エストニア (c) Tadamasa Kimura 110 小国エストニア 137万人( 2000年 年1月現在、ほぼ岩手県、 137万人(2000 沖縄県程度の人口) 45000平方キロメートル(およそ、岩手県 45000平方キロメートル(およそ、岩手県 の3倍、沖縄県の20 倍、京都府の10 10倍、 倍、 倍、沖縄県の20倍、京都府の 東京都の22 倍程度) 東京都の22倍程度) 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 111 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 112 インターネット接続ホスト数(2000 ) インターネット接続ホスト数(2000) 首都Tallinn 11/27/2001 11/27/2001 113 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 114 19 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 拡大する携帯電話利用 普及するネットバンキング 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 115 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 116 “e-Cabinet” 積極的なIT 政策 積極的なIT政策 2000年 2000年5月 緊急時MPS 緊急時MPS (Mobile Positioning System)プロジェクト(世 System)プロジェクト(世 界初の実用化) 2000年 2000年8月から” 月から”eCabinet” Cabinet” 「デジタル署名法」成立(2001 年6月施行) 「デジタル署名法」成立(2001年 2000年 2000年6月 e-billing:オンライン請求 billing:オンライン請求 2000年 2000年7月 Mobile parking project:携帯電話による駐車料金決済シ project:携帯電話による駐車料金決済シ ステム(他の北欧諸国もすでに実用化している) ICカードにより個人認証 ICカードにより個人認証 をうけてネットワークにロ グイン 2000年 2000年8月 e-Government project 2000年 2000年9月 IT College 設立 2001年春 2001年春 e-Tax Board:オンライン所得税申告 Board:オンライン所得税申告 2001年 2001年 Tiger Leap Plus project(教育、人材育成の情報化に関 project(教育、人材育成の情報化に関 する包括的プログラム) 2001年 2001年 e-Citizen project 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 117 閣議の平均時間が90 分 閣議の平均時間が90分 から60 分に から60分に オンライン所得税申告: すでに37000 件以上 すでに37000件以上 (個人納税者の10 %程 (個人納税者の10%程 度) 11/27/2001 IT立国アイルランド (c) Tadamasa Kimura 118 アイルランドとは? 欧州国別ITハード輸出入状況(1998)(単位:百万ドル) 人口360 万人余 人口360万人余 農業従事者10 %(90 90年代後半) 年代後半) 農業従事者10%( 主要資源:鉛、泥炭、ジャガイモ 主要産業:食品加工、織物、自動車 73年のEEC(ヨーロッパ経済共同体)加盟から、 73年のEEC(ヨーロッパ経済共同体)加盟から、 徐々に海外との競争力の低さがアイルランド経 済を悪化 80年代前半インフレが年率 20%程度 %程度 80年代前半インフレが年率20 それに反比例するように社会の雇用力は急激に 低下 イギリス オランダ アイルランド ドイツ 収支 輸入 輸出 フランス イタリア ベルギー スペイン フィンランド -15,000 -10,000 -5,000 0 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 (c) Tadamasa Kimura 119 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 120 20 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 高い失業率=低い雇用創出力 に苦しんできたアイルランド 98年、アイルランドはアメリカを凌いで世界 98年、アイルランドはアメリカを凌いで世界 第一位のソフトウェア輸出国(アメリカ30 億 第一位のソフトウェア輸出国(アメリカ30億 ドル弱VSアイルランド33 億ドル近く) ドル弱VSアイルランド33億ドル近く) 90年代 1100社以上の外資を導入すること 社以上の外資を導入すること 90年代1100 に成功 積極的情報通信政策低いインフレ率、金融 支援システム、優遇税制、低廉な操業コス ト、高いスキルを持ち、若く、相対的に低い 賃金 20.0 18.0 16.0 14.0 米 日 独 アイルランド スウェーデン 英 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 1997 1995 1993 1991 1989 1987 1985 1983 1981 1979 1977 1975 0.0 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura ソフトウェア立国(1) 121 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 主要輸出先 ソフトウェア立国(2) アイルランドソフトウェア製品輸出先割合(1998) 760社、 2万人以上の雇用を創出 760社、2 総収入74 億ドル、(製品とサービス両方 総収入74億ドル、(製品とサービス両方 を含めた)輸出は66 億ドル を含めた)輸出は66億ドル 英独仏を中心に欧州各国にとっての「オ フショアソーシング」先として成長 非OECD諸国 8% (c) Tadamasa Kimura 123 何故北欧は情報通信に強いか ¾ 地理歴史的要因 ¾ 北欧各国は日本と同様の国土面積に20 分の1 1から15 分の1 1 北欧各国は日本と同様の国土面積に20分の から15分の 程度の人口 ¾ 北極圏に入っている北部は、人口密度が著しく低く、南部の 主要都市に人口が集中している(スウェーデンでは、全人 口の半数以上が、全国土の3 口の半数以上が、全国土の3%以下の面積に住んでいると いう) ¾ 社会経済的要因 ¾ 人口の比較的少ない産業国の場合、高い生産性と生活水 準を保つためには、国際的な貿易に依存する割合が高い。 ¾ スウェーデンGDP の41%相当輸出、 35%相当輸入( %相当輸入(96 96) ) スウェーデンGDPの 41%相当輸出、35 ¾ フィンランドGDP の38%相当輸出、 30%相当輸入( %相当輸入(95 95) ) フィンランドGDPの 38%相当輸出、30 ¾ 日本対GDP 比、輸出が8.6 8.6%、輸入が %、輸入が6.0 6.0%( %(94 94) ) 日本対GDP比、輸出が 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 125 イギリス 21% 他のOECD諸国 12% 日本 3% アメリカ 2% ドイツ 18% 他のEU諸国 25% 11/27/2001 122 11/27/2001 フランス 11% (c) Tadamasa Kimura 124 エリクソン・ノキアの急激な拡大 25000 21540 18444 20000 19772 16774 15000 12427 13326 9878 8255 10000 10328 6295 8598 エリクソン ノキア 8433 5647 5000 4401 0 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 単位:エリクソンは千万スウェーデンクローネ(1 円程度) 単位:エリクソンは千万スウェーデンクローネ(1クローネ=17 クローネ=17円程度) ノキアは百万米ドル 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 126 21 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 96年IT Bill 教育の情報化 Confidence, competence, accessibility ITを以下のような目的をもち積極的に活用するこ ITを以下のような目的をもち積極的に活用するこ とを目標とする。 ¾経済成長と雇用を創出し、国際的競争力を強 化する ¾すべての人にとって、知識、民主主義、公正・ すべての人にとって、知識、民主主義、公正・ 正義を増すための道具とする ¾福祉国家を発展させ、市民の生活水準を向上 させる ¾行政府の効率性と質を向上させ、市民及び民 間部門へのサービスを改善する 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 127 ITiS(National Action Program for ICT in Schools) (c) Tadamasa Kimura 129 働組合の組織率もいまだ80 %以上を保っている 働組合の組織率もいまだ80%以上を保っている (日本は23.8 (96年)、アメリカは 14.9( (95年))。 (日本は23.8( 96年)、アメリカは14.9 95年))。 ¾ 働くことを、その人が社会の中で自分を実現する 重要な手段と見なし、賃金、雇用、社会保障の 面で、できるかぎりのセーフガードを維持しようと している。 ¾ 情報通信の革新と社会の情報化も、社会の構成 員一人一人にとって恩恵があるように推進され るべきであるとの基本的な価値観がある (c) Tadamasa Kimura 128 教員研修が、集合研修という形態をとらず、 「チーム型研修」 職場ごとにワーキンググループを作り、個々の 教師が実際にどのように使うことができるかを互 いに発見しあう研修形態 チーム制は、実際のスウェーデンにおける生徒 に対する教育方法を スウェーデンでは、94 年の教育改革により、一 スウェーデンでは、94年の教育改革により、一 人の教員が数十人からなるクラスを受け持つと いう形態ではなく、複数の教員がチームを作り、 生徒たちも数人ずつチームを構成して、「教えら れる」というよりも「学ぶ」教育形態に移行 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 130 ¾ スウェーデンの極圏北部、Pajala スウェーデンの極圏北部、Pajala の村に8000 8000人の人が住んでいる。実はこの地 人の人が住んでいる。実はこの地 ¾ ここには80 ここには80の村に ¾ 北欧は社会的平等を強く求める文化があり、労 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura Pajala リスクの社会的共有 11/27/2001 11/27/2001 ITiS研修の特徴 スウェーデン全国6000 校の小中高の教 スウェーデン全国6000校の小中高の教 員15万人のうち 6万人に無償でPC を配布 15万人のうち6 万人に無償でPCを配布 する3 する3年間のプロジェクト 17億クローネ(約 200億円)という巨額の 億円)という巨額の 17億クローネ(約200 費用 「教育の情報化を進める上で最もネックに なるは教える側だ」との認識 11/27/2001 学校でインターネットを利用している生徒 の割合(Angus の割合(Angus Reid Groupの GroupのThe Face of the Web: Youth調査、 2000年春から夏に 年春から夏に Youth調査、2000 かけて世界16 カ国) かけて世界16カ国) 第1位 スウェーデン 78% 78% 以下、カナダ74 %、台湾63 63%、イギリス、ア %、イギリス、ア 以下、カナダ74%、台湾 メリカ59 %と続き、日本は28 28%と下位に甘 %と下位に甘 メリカ59%と続き、日本は んじる 131 域こそ、スウェーデンで最もコンピュータ普及率の高い地域 人に一台の ¾ スウェーデンの他の地域では、生徒5 スウェーデンの他の地域では、生徒5人から19 人から19人に一台の 割合でパソコンが学校に設置されているが、この地域では 97年ですでに 4人に一台 97年ですでに4 ¾ Pajalaでは、コンピュータ教育は小学校に行く前からはじま Pajalaでは、コンピュータ教育は小学校に行く前からはじま る。この地域では林業が衰退しつつあり、それに代わる産業 を育てるためと、将来の人材育成のために、コンピュータと情 報通信技術のトレーニングに投資 MikroMakarna(電子部品、電子機器システ (電子部品、電子機器システ ¾ 1992年には、 1992年には、MikroMakarna ム製造)とFrontec (電子情報システム開発運用)がビジネス ム製造)とFrontec(電子情報システム開発運用)がビジネス センターを建設。これまでのところ地域に電子工業が興り 160人の雇用を創出した。 160人の雇用を創出した。 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 132 22 日本社会情報学会研究会 11/27/2001 Norrbotten郡 過疎地におけるIT化 Norrbotten郡の一部 郡の一部 ¾ Pajalaは、 Pajalaは、Norrbotten ¾ Norrbotten郡は、面積としては、スウェーデン国 Norrbotten郡は、面積としては、スウェーデン国 土の4 万6千人(ス 土の4分の1 分の1を占めるが、人口は26 を占めるが、人口は26万 ウェーデン全体の3 ウェーデン全体の3%) 年代に入って、IT ¾ 従来は、林業、鉱業に依存。90 従来は、林業、鉱業に依存。90年代に入って、IT 産業創出を推進。 )、キルナ(Kiruna Kiruna)、イェリヴァレ )、イェリヴァレ ¾ ルーレオ(Lulea ルーレオ(Lulea)、キルナ( (Gallivare)、アリエプローグ( Arjeplog)、エルブス )、エルブス Gallivare)、アリエプローグ(Arjeplog ビュン(Alvsbyn )などそれぞれの地域がIT産業を ビュン(Alvsbyn)などそれぞれの地域がIT産業を 中心としたハイテク産業(宇宙開発、天文、ロ ケット、GIS、医薬品など)を誘致。 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura (c) Tadamasa Kimura 133 11/27/2001 (c) Tadamasa Kimura 134 23