...

「退職給付会計改正」の貸借対照表への影響

by user

on
Category: Documents
9

views

Report

Comments

Transcript

「退職給付会計改正」の貸借対照表への影響
年金コンサルティングニュース
みずほ総合研究所株式会社
年金コンサルティング部
03-3591-8933
CopyrightⒸみずほ総合研究所 2011
無断転載を禁ず
2011.3-①
「退職給付会計改正」の貸借対照表への影響
IFRS(国際財務報告基準)の導入に伴い、来年度末の決算から退職給付会計の改正が実施される予定です。改正のポ
イントは(1)未認識項目の貸借対照表への反映、(2)退職給付債務や勤務費用の計算方法の見直し、の2点です。
今回は、こうした退職給付会計の改正が会計の現場にもたらすインパクトについて、具体的に解説します。
(1) 未認識項目の貸借対照表への反映
従来、数理計算上の差異や過去勤務債務は遅延処理が
認められおり、貸借対照表に反映されず未認識となって
いることがありました。今回の改正では、このような未
認識項目が全て貸借対照表に反映されるようになります。
新しい基準が適用される初年度の年度末にどのような
変化が起こるのか、下図を例として解説します。
<改正前の状態>
【貸借対照表】
資産
負債
退職給付引当金
500
純資産
株主資本
繰延税金資産 ・利益剰余金
20,000
200
【退職給付会計】
過去勤務債務 会計基準
300 変更時差異
200
数理差異
1,400 退職給付債務
退職給付引当金
10,000
500
年金資産
8,000
※法定実効税率を40%としました
<改正後の変化>
【貸借対照表】
資産
【退職給付会計】
負債
退職給付に係る負債
2,000
純資産
株主資本
20,000
繰延税金資産 ・利益剰余金
・その他包括利益累計額
800
(退職給付に係る調整額)
△900
退職給付に 退職給付
債務
係る負債
2,000 10,000
年金資産
8,000
解説 改正前の未認識項目は1,500(数理差異1,400+過去
勤務債務300-会計基準変更時差異200)です。この未認
識項目を認識するため負債が1,500増加し、繰延税金資産
(負債の40%を計上)が600(1,500の40%)増加します。
その結果、資産の増加額600から負債の増加額1,500を
差し引いた△900が、損益計算書を経由せずに退職給付に
係る調整額として純資産の部に計上されます。
2010年3月末の一般事業法人(東証一部上場1165社)
の未認識額の平均は約80億円であり、改正により税効果
後で純資産が約50億円減少することとなります。
(2) 退職給付債務および勤務費用の計算方法の見直し
退職給付を退職までの期間に帰属させる方法と、割引
率が見直されます。期間帰属は、勤続年数で按分して帰
属させる期間定額基準に加え、給付算定式に従って帰属
させる方法も認められます。また、割引率は、給付見込
み期間ごとの給付金額を反映させた単一あるいは複数の
割引率が使用されるようになります。
これら計算方法の見直しは、適用初年度の翌期首から
適用されます。計算方法の見直しによるインパクトは、
制度の内容、退職給付のカーブの形状、人員構成、債券
の利回り曲線などによっても異なりますが、シミュレー
ションでは退職給付債務が1割以上変化する場合もあり、
慎重な対応が必要でしょう。
解説 下図の例では、退職給付債務が(1)の例の 10,000
から1割増加して 11,000 となった場合を表しています。
退職給付に係る負債が 1,000 増加し、それに伴って繰延
税金資産が 400 増加します。その差額である△600 は、損
益計算書を経由せずに、直接、利益剰余金に加減されま
す。
【貸借対照表】
資産
【退職給付会計】
負債
退職給付に係る負債
3,000
純資産
株主資本
繰延税金資産 ・利益剰余金
19,400
1,200 ・その他包括利益累計額
(退職給付に係る調整額)
△900
退職給付に 退職給付
係る負債 債務
3,000
11,000
年金資産
8,000
中小企業については、中小企業団体と財務会計基準機
構が中小企業向けの新たな会計ルールの作成に着手しま
した。2011 年の夏までには草案が公表される予定であり、
こちらの動向にも注意が必要です。
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断し
た各種データに基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更
されることもあります。
本件に関してご不明点等ございましたら、ご遠慮なく下記電話番号までお問い合わせください。
みずほ総合研究所株式会社 年金コンサルティング部 ℡.03-3591-8933
Fly UP