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環境省サンゴ群集修復事業の今後の展開について

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環境省サンゴ群集修復事業の今後の展開について
資料3
環 境 省 サンゴ群 集 修 復 事 業 の今 後 の展 開 について
これまで、環 境 省 は着 床 具 を用 いた有 性 生 殖 法 によるサンゴ移 植 を中 心 に行 なってきた
が、更 に 効 率 的 で、 規 模 を 拡 大 した再 生 を 目 指 し、 関 係 機 関 と協 力 した事 業 も 含 め新 た
な事 業 についても検 討 を進 めているところである。
第 1 回 学 術 調 査 WG では、サンゴ移 設 ・増 殖 や基 盤 整 備 に係 る種 々の技 術 手 法 を整 理
した。環 境 省 では、それらの中 から以 下 3点 について、より掘 り下 げた検 討 を行 うことした。
1. 航 路 のサンゴ群 集 移 設
2. サンゴ礫 固 定 ネット用 いた着 床 基 盤 の創 出
3. 陸 上 種 苗 生 産
①サンゴ群集採取
②運搬
③底板の引き抜き
④側面部の引き上げ
1. 航 路 のサンゴ群 集 移 設
<手 法 概 要 >
礁 池 内 の 砂 礫 底 に 存 在 するサンゴ群 体 を 移 設 カ
ゴに収 容 し、サンゴ群 集 としてまとめて移 設 する手
法。
<事 業 の方 向 性 >
竹 富 南 航 路 周 辺 のサンゴ移 設 (H23,H24 沖 縄 総
合 事 務 局 石 垣 港 湾 事 務 所 実 施 )では、サンゴ群 集
約 2000 ㎡をこの手 法 を用 いて、航 路 の近 傍 に移 設
し た。 今 後 の 浚 渫 作 業 によ り 発 生 す る サ ン ゴ 群 集 を 、
石 垣 港 湾 事 務 所 の 協 力 を 得 て、環 境 省 事 業 にて、
産 卵 源 等 としてより重 要 な再 生 すべきエリアに移 設
する。
1
<メリット>
・ある程 度 大 きな規 模 のサンゴ群 集 の創 出 が可 能 (基 盤 に固 着 しないサンゴを群 集 のまま
移 設 できる)。
・群 体 ごとに固 定 する必 要 がないため移 設 効 率 が高 い(同 規 模 の群 体 移 設 よりも低 コス
ト)。
・低 密 度 に 破 片 化 して点 在 する不 安 定 なサンゴ群 体 を、 サンゴ群 集 として移 設 すること に
より、他 種 間 でも固 着 し合 い、面 的 に安 定 したサンゴ群 集 となる。その結 果 、移 設 群 集 自
体 による礁 池 内 の群 集 再 生 産 やマザーゾーン、幼 生 供 給 源 としての機 能 が期 待 される。
・移 設 時 に水 中 ボンド等 の接 着 剤 は使 わないため、環 境 親 和 性 に優 れた手 法 である。
<リスク>
・これまでの近 傍 への移 設 に比 べ、長 距 離 移 動 にともなうサンゴへのストレスや環 境 の変 化
によって、サンゴの定 着 ・生 育 等 に影 響 を受 ける可 能 性 がある。
・移 設 カゴを用 いた方 法 では、礁 池 内 以 外 の波 浪 が強 い海 域 での実 績 がなく、移 設 サン
ゴの定 着 が、これまで同 様 高 い確 率 でみられるか確 証 はない。そのため、適 正 な移 設 場
所 の選 定 が重 要 なポイントとなる。
・今 後 の航 路 整 備 事 業 でどの程 度 の移 設 サンゴが確 保 できるかは現 状 未 定 。
<適 用 場 所 >
(既 存 の環 境 データや空 中 写 真 等 から候 補 区 を絞 り込 み、現 地 調 査 を実 施 した後 、詳
細 な移 設 箇 所 を選 定 していく。次 頁 参 照 )
※礁 池 内 でサンゴ群 集 修 復 事 業 を展 開 する意 義
・石 西 礁 湖 のサンゴ礁 は、オニヒトデの大 発 生 や高 水 温 に伴 う白 化 により衰 退 傾 向 。
・衰 退 後 のサンゴ群 集 の回 復 については、礁 斜 面 では、場 所 による差 が大 きいものの回 復 した場 所 (北 礁 、
浦 底 湾 等 )もある。
・一 方 、礁 池 内 については、過 去 に被 度 50%以 上 の枝 状 サンゴ群 集 が広 範 囲 にみられたものの、1980 年
代 のオニヒトデ大 発 生 により大 半 が失 われ、その多 くは砂 地 や礫 地 となり、未 だに回 復 していない。
・このような枝 状 サンゴ群 集 は、かつてはハタ類 やブダイ類 の漁 場 として重 要 な場 所 であったが、今 では漁
場 として使 われなくなり、八 重 山 におけるこれらの漁 獲 量 減 少 もこれらが一 因 となっている可 能 性 が指 摘 さ
れている。
2
移 設 先 選 定 の流 れ
STEP1
・既 存 データや空 中 写 真 等 を活 用 して、本 手 法 の適 用 可 能 な候 補 区 を抽 出 。
この図 面 は暫 定
小 林 さんの作 成 図 面 と差 替 える予 定
シモビシ
図 航 路 のサンゴ群 集 移 設 候 補 区 (案 )
STEP2
・候 補 区 に対 して表 1 に示 す事 前 調 査 を実 施 。
表 1 事 前 調 査 の内 容
調査方法
マンタ法
調査目的
調査内容
海 底 概 況 からみた移 設 候 移 設 候 補 地 において、評 価 基 準 1,2の条 件 を満
補 地 の選 定
たす場 所 の抽 出
潜 水 観 察 による移 設 候 補
ス ポ ッ ト チ ェ ッ 地 の詳 細 評 価
ク法
(各 移 設 候 補 地 に最 低 1ヵ
所 は調 査 点 を設 ける。)
マンタ法 では確 認 できない、採 取 元 の優 占 種 の有
無 や、オニヒ トデ幼 体 等 を含 めた食 害 生 物 の有 無
、サンゴの病 気 発 生 状 況 を観 察 し、最 終 的 な候
補 地 を評 価 する上 での結 果 を得 る。
3
STEP3
・候 補 区 における事 前 調 査 結 果 をもとに、表 2 の評 価 基 準 で具 体 的 な移 設 適 地 を選
定 する。
表 2 移 設 候 補 地 の評 価 基 準
評価基準1
波 浪 の影 響 を受 け難 く、移 設 に適 した底 質 が存 在 し(礫 地 や岩 礁 域 )、自
然 に加 入 しているサンゴが少 なく、移 設 できる裸 地 がある。
評価基準2
オ ニヒトデやシ ロレイシガイ ダマシ等 の食 害 生 物 の食 痕 が 目 立 たず 、食 害 生
物 が少 ない。
評価基準3
採 取 元 のサンゴが生 息 できる環 境 条 件 が整 っている。
(水 深 、採 取 元 の優 占 種 の有 無 、食 害 生 物 の詳 細 観 察 (食 痕 が目 立 たな
いこと)、サンゴの病 気 発 生 状 況 )
4
※竹 富 南 航 路 におけるサンゴ群 集 移 設 について
【概 要 】
竹 富 南 航 路 の整 備 にあたっては、ルート及 び規 模 の検 討 を重 ね、竹 富 島 南 西 部 のサン
ゴ高 被 度 域 への配 慮 や浚 渫 量 低 減 によりサンゴ類 への影 響 を低 減 してきたが、一 部 のサ
ンゴについては、航 路 浚 渫 区 域 上 に分 布 するため、 実 行 可 能 な範 囲 で、 サンゴの移 設 を
行 っている。(移 設 面 積 平 成 23 年 度 :約 750m 2 、平 成 24 年 度 :1,000m 2 (計 画 ))
【経 過 】
・移 設 直 後 、サンゴ類 の生 存 被 度 は 65~75%であり、出 現 種 類 数 は 27~60 種 。
・移 設 後 7 ヵ月 を経 過 して、出 現 種 類 数 に大 きな変 化 はみられないものの、生 存 被 度 が
増 加 している地 点 も見 られている。
3-1-①
2-5-①
平 成 23 年 度 の群 集 移 設 実 施 箇 所
7-2-①
5
・移 設 後 のサンゴ群 集 内 では、近 傍 のサンゴ群 体 同 士 が固 着 する状 況 が確 認 され、全
体 的 にサンゴ群 集 が安 定 化 傾 向 にあると考 えられた。
・移 設 したサンゴにおいて産 卵 を確 認 した。
サンンゴゴ群
群集
集内
内でで進
進む
むサ
サンンゴゴ同
同士
士の
の固
固着
着
サ
①でで確
確認
認さされ
れたたススギ
ギノノキ
キミミドドリリイイシシの
の産
産卵
卵
77--22--①
資 料 :第 5 回 石 西 礁 湖 における航 路 整 備 技 術 検 討 委 員 会 (資 料 6 移 設 サンゴの状 況 )
【成 果 】
表 サンゴ群 集 移 設 法 による成 果
資 料 :第 4 回 石 西 礁 湖 における航 路 整 備 技 術 検 討 委 員 会 (資 料 9 サンゴの移 設 とモニタリングの状 況 )
6
2. サンゴ礫 固 定 ネットを用 いた着 床 基 盤 の創 出
<手 法 概 要 >
礁 池 内 の 砂 礫 底 (サンゴ礫 帯 ) で、ネット等 を設 置 し、 サンゴ礫 を 固 定 ・安 定 化 させ、 サ
ンゴの着 床 基 盤 を創 出 する。
<事 業 の方 向 性 >
礁 地 内 で、サンゴの回 復 が進 まない原 因 の一 つに、サンゴ礫 による自 然 着 床 阻 害 や巻
上 げによるサンゴの破 壊 があげられる。そのため、サンゴの着 床 基 盤 となる安 定 したサンゴ
礫 底 の形 成 が必 要 と考 えられる。
本 手 法 は、平 成 21 年 度 に北 礁 において試 験 を実 施 し、その後 モニタリングを実 施 して
いる ※ 。
上 述 の試 験 では一 定 程 度 の効 果 がみられたものの、小 規 模 試 験 (5×5m)であったため、
今 後 も小 規 模 に実 施 しつつ、様 子 を見 ながら順 次 広 域 に展 開 していくことを基 本 とする。
※ネット固 定 試 験
【概 要 】
サンゴ礫 対 策 としては、平 成 21 年 度 から環 境 省 事 業 において、サンゴ礫 を固 定 し、サン
ゴの新 規 加 入 と再 生 を促 進 することを目 的 とした試 験 が行 われている。
具 体 的 には、 礁 池 内 の砂 礫 底 ( サンゴ礫 帯 )で、 ネット等 を 設 置 し、サンゴ礫 を固 定 ・ 安
定 化 させ、サンゴの着 床 基 盤 を創 出 している。
試験実施場所
サンゴ礫 の堆 積 状 況
ネット設 置 前
ネット設 置 後
7
【成 果 】
上 記 したサンゴ礫 対 策 では、ネットで固 定 したサンゴ礫 に サンゴ群 体 が着 床 し、 成 長 す
る様 子 が観 察 された。また、ネット自 体 にも稚 サンゴが着 床 し、サンゴ群 体 の成 長 と新 規 加
入 を 促 進 する基 盤 としての 効 果 が みられた。 したがって、ネットの押 さえつけによる礫 固 定
は、礫 底 のサンゴ基 盤 を創 出 する上 で有 効 な手 法 と考 えられた。
また、 サン ゴ群 集 の 顕 著 な 増 加 に は時 間 がか かるため、 着 床 具 で 採 苗 したサ ンゴ群 体
の補 助 具 による移 植 も併 用 することも検 討 する。
2010年3月
50
40
※2010 年
3 月 ,11 月
は 1%未 満
2010年11月
800
600
30
2012年3月
50
50
40
40
30
30
400
20
20
20
10
200
10
10
0
0
0
被度(%)
稚サンゴ密度
(群体数/m2)
0
群体数
種数
2010 年 3 月 のネット設 置 から 2012 年 3 月 までの
被 度 、群 体 数 、種 数 、稚 サンゴ密 度
サンゴ礫 固 定 ネットの隙 間 から
成 長 するサンゴ群 体
<メリット>
・ ネッ ト 設 置 時 に、 サ ン ゴ礫 に 着 床 し て いる 稚 サ ンゴ や、 そ の 後 の 新 規 加 入 サン ゴによ り、
被 度 増 加 が期 待 される。
・一 度 、ネットを設 置 すると、その後 の管 理 はいらない。
・コストが低 く抑 えられ、大 規 模 に実 施 可 能 。
<リスク>
・景 観 上 、人 工 的 な印 象 を与 える可 能 性 がある。
<適 用 場 所 >
礁 池 内 の再 生 候 補 地 より選 定 することを基 本 とする。
具 体 的 な実 施 場 所 については、p.3 に示 す STEP1~STEP3 と同 様 の手 順 で実 施 。
<想 定 される候 補 区 (STEP1)>
場所:ミルキーウェイ、ウラビシ
規 模 : 初 年 度 100 ㎡ 程 度 、 2 年 目 以 降 は 初 年 度 の 結 果 を み て 順 次 拡 大
8
ミルキーウエイ
ウラビシ
図 サンゴ礫 固 定 ネットを用 いた着 床 基 盤 の創 出 の候 補 区 (案 )
現 地 調 査 による候 補 地 の評 価 指 標 については、以 下 ①~⑥の観 点 から具 体 的 な場 所 を
選 定 していくこととする。
①サンゴ礫 :できるだけ多 く堆 積
②地 形 :できるだけ平 坦 (サンゴ礫 流 動 の影 響 が出 やすい)
③底 質 :岩 礁 域 に礫 堆 積 (砂 底 域 に礫 堆 積 の場 合 、加 入 の成 功 が少 ない)
④水 深 :5~10m(10m 以 深 では加 入 が少 ない。5m 以 浅 では高 水 温 の影 響 を受 け易
い)
⑤波 当 たり:極 端 に強 くない(台 風 による波 浪 を直 接 受 ける場 所 では地 形 全 体 が変 化
する可 能 性 があり、また試 験 区 が破 壊 される恐 れがある)
⑥食 害 生 物 :オニヒトデ大 発 生 海 域 ではない(発 見 の場 合 駆 除 する)
9
~
礫の固定によるサンゴ移植他事例
~
(1)フィリピン、カラグカラグ海 洋 保 護 区 (図 1、フィリピン、2003-2005):ダイナマイト漁 跡 に
お け る プ ラ ス チ ッ ク 網 使 用 に よ る 礫 安 定 化 ( Edwards,A.J.(ed.)(2010).Reef
Rehabilitation Manual.Coral Reef Targeted Research&Capacity Building for
Management Program より引 用 )
図 1 調査地点位置図
①背 景 及 び目 的
海 洋 保 護 区 10.4ha(1988 年 設 定 )のサンゴ礁 は 1980 年 代 半 ばまでダイナマイト漁 により
破 壊 され、そこでは 10 年 以 上 自 然 の加 入 による回 復 がほとんどみられない。
そこで、加 入 サンゴの生 残 率 改 善 のためにプラチックネットを使 い礫 底 を安 定 させることと
サンゴが着 床 した岩 塊 を設 置 し、魚 類 の棲 みか再 構 築 を開 始 した。
③方 法
17.5 ㎡の調 査 区 3 か所 が設 定 され、2 ㎝網 目 のネットが
礫 底 に張 られた。既 存 塊 状 サンゴを固 定 に活 用 するため、
網 目 に穴 をあけ、サンゴを露 出 させた。中 空 のピラミッド型
岩 (1m高 、0.5 ㎡)が漁 民 により礁 岩 とセメントで製 作 され、
網 上 に置 かれ、網 を固 定 するとともに地 形 を複 雑 化 させ
魚 類 を集 める役 割 を持 たせた(図 2)。
移 植 サンゴは周 囲 の自 然 礁 からはがれ、再 着 定 の可
図 2 プラスチックネットと岩 塊
能 性 が低 いものを集 め、ネットにプラスチックバンドで
固 定 または岩 塊 に水 中 ボンドで固 着 した。移 植 数 は
1 調 査 区 あたりホソヅツミドリイシ等 約 75 断 片 である。
④モニタリング
調 査 場 所 を調 査 区 、周 囲 の自 然 礁 、礫 域 の 3 ゾ
ーン(図 3)に分 け、各 ゾーンにおいて、年 3-4 回 、3
年 間 及 び 2008 年 にモニタリングを行 った。
図 3 調 査 場 所 の区 分 け
10
⑤生 態 的 成 果
調 査 区 ゾーンは 500 ㎡で、8m深 の礫 域 の約 20%にあたる。2003 年 6 月 設 置 のネット上
は 3 週 間 後 、小 型 海 藻 、無 節 サンゴモで覆 われたが、
5
ら 2005 年 3 月 には 4.5/㎡となった。しかし、2003 年
10 月 設 置 のネットには 1 年 後 まで加 入 は認 められな
かった。また、加 入 数 もその後 5 ヶ月 以 上 増 加 しなか
4
加入数(個/m2)
た。加 入 数 は増 加 を続 け、2003 年 9 月 の 0.5/㎡か
3
2
1
った(図 4)。加 入 サンゴ相 (主 にキクメイシ科 、ハナヤ
設置
サイサンゴ科 、ハマサンゴ科 、ミドリイシ科 )は周 囲 の
6月
100%
長 径 は 10 ヶ月 で 6 ㎝を超 え、一 方 礫 域 のそれは摩
滅 、部 分 死 滅 し、2-4 ㎝にとどまった。岩 塊 への加 入
80%
はネットや礫 上 よりも低 かったが、移 植 したサンゴの
60%
3月
~
2005年
100%
100%
ネット
礫
40%
20%
6%
0%
加入時
が功 を奏 し、全 てのゾーンで増 加 した。調 査 区 では
周 囲 の健 全 サンゴ群 集 と同 様 になった(3 年 後 で 500
10月
2004年
63%
生存率
の中 間 くらいになった。現 存 量 は、海 洋 保 護 区 管 理
10月
図 4 ネットにおける加 入 数 変 化
が礫 域 (同 6%)よりも高 かった(図 5)。加 入 サンゴの
礫 域 の貧 弱 な魚 類 相 から健 全 サンゴ群 集 のそれと
9月
2003年
ゴの生 残 率 は有 意 にネット上 (10 ヶ月 で 63%)の方
魚 類 は数 日 内 に 岩 塊 付 近 に 出 現 し、 数 年 以 内 に
5 か月
設 置 加 入 あ り増 加 な し
0.5
0
健 全 なサンゴ群 集 の そ れを 反 映 していた。 加 入 サン
生 残 率 はネットよりも高 かった。
4.5
ネット
(2003.6設置)
ネット
(2003.10設置)
2003 年 9 月 には直 径 1 ㎝の加 入 サンゴが認 められ
10か月後
図 5 調 査 区 における生 存 率 の比 較
㎡あたり 15kg)。礫 域 では明 らかに遅 れがあり、最 終 的 には他 のゾーンの 1/3 であった。
ネット上 の海 藻 付 着 は礫 域 に比 べ明 らかに少 なかった。特 にウミウチワ類 が礫 域 で季 節
的 に繁 茂 したが、ネット上 はほとんどみられなかった。ネットは藻 類 の付 着 を阻 害 したか、草
食 動 物 が多 かったためと思 われる。
⑦500 ㎡の礫 域 安 定 化 に必 要 な資 源
a.人 的 資 源
3~4 人 のシリマン大 学 研 究 者 が事 業 に参 加 し、地 域 の代 表 1 人 が事 業 終 了 まで雇 用
さ れ た。 事 務 局 員 は 臨 時 的 に 雇 用 し 、 漁 協 員 も 支 援 し た。 環 境 天 然 資 源 省 は 調 査 に
協 力 した。
b.財 政 的 資 源
支 出 の年 次 内 訳
1 年 目 :資 材 60%、モニタリング 40%(傭 船 、器 材 レンタル、ボンベ代 含 む)
2 年 目 :資 材 40%、モニタリング 60%
3 年 目 :モニタリング 60%、ワークショップ 40%
4 年 目 :ワークショップ 30%、人 件 費 50%、モニタリング 20%
11
⑧まとめ
手 法 は 3 年 目 のサンゴ加 入 増 加 、魚 類 相 変 化 があった点 からコストにおいて効 果 的 と思
われる。ネットは 25 ㎡までが適 当 と考 えられ、特 に清 掃 等 のメンテナンスは必 要 ない。
海 洋 保 護 区 管 理 強 化 は 3 つのゾーンにおける特 定 魚 種 現 存 量 の急 激 な増 加 をもたらし
たが、調 査 区 と自 然 礁 においては礫 域 よりかなり大 きかった。
岩 塊 にセメントで固 着 したサンゴ断 片 はネットにプラスチックバンドで固 定 した断 片 より生
残 率 が高 かった。これはネット固 定 が不 十 分 で、断 片 が移 動 または摩 滅 したためである。ネ
ットで礫 を安 定 化 すれば、加 入 も多 く生 残 率 も高 いので、移 植 は必 要 なく、近 辺 に幼 生 を
供 給 できるサンゴ群 集 があればよい。
設 置 5 年 後 の観 察 では、ネットに異 常 なく、加 入 サンゴは 17 属 で、直 径 15-18 ㎝に成 長
した。岩 塊 も異 常 がなかった。
12
3. 陸 上 種 苗 生 産
<現 在 行 っている試 験 的 手 法 >
石西礁湖内の海域の卵・スリックの利用
スリックの探索・採取(5 月)
石西礁湖内にみられたスリック
陸上施設で卵・幼生の飼育と着床
陸上水槽施設
海域へ移設(8 月)
、中間育成(~翌年 12 月)
<事 業 の方 向 性 >
海 域 における採 苗 率 が安 定 しない現 在 、陸 上 施 設 におけるサンゴ増 殖 技 術 の確 立 は、よ
り安 定 的 で大 規 模 な種 苗 生 産 を行 う上 で重 要 と考 えられる。
現 在 、環 境 省 では平 成 22 年 度 から有 性 生 殖 による陸 上 種 苗 生 産 を試 験 的 に行 っている
が、中 間 育 成 の際 に採 苗 率 の低 下 がみられ、実 用 的 なレベルには達 していない。中 間 育 成
の 際 の 採 苗 率 低 下 に対 す る 課 題 解 決 が 必 要 であ り 、 既 存 手 法 の情 報 収 集 や、 同 じ く 陸 上
種 苗 生 産 を進 める沖 縄 県 や他 の機 関 と連 携 を通 し、手 法 の改 善 を図 る。
石 西 礁 湖 自 然 再 生 への応 用 展 開 を 図 る ために は、 ①八 重 山 で種 苗 の 安 定 飼 育 が可 能
な施 設 の 確 保 を 目 指 すととも に ②沖 縄 本 島 施 設 での種 苗 生 産 ( 石 西 礁 湖 内 にてスリ ック採
取 →陸 上 施 設 へ幼 生 を輸 送 → 着 床 ・育 成 →石 西 礁 湖 にて移 植 )も検 討 する。
<メリット>
・より安 定 的 ・効 率 的 な種 苗 生 産 を行 い、費 用 対 効 果 を向 上 させることが可 能 になる。
・海 中 での畜 養 に比 べると、基 盤 の設 置 や移 動 にかかる作 業 コストを低 減 できる。
<リスク>
陸 上 飼 育 施 設 の施 設 整 備 や管 理 、運 営 が必 要 となる。
<具 体 的 取 組 >
○実 施 場 所 の確 保 (連 携 先 の模 索 ) 例 )石 垣 市 、黒 島 等
○陸 上 飼 育 期 間 の長 短 による比 較 試 験
○通 年 飼 育 の実 施 (石 垣 、屋 我 地 (いであ㈱施 設 )
○既 往 の陸 上 種 苗 生 産 技 術 ・研 究 の情 報 収 集
13
<これまでの成 果 >
2011 年 度 及 び 2012 年 度 の移 植 前 採 苗 率 は図 1に示 すとおりである。陸 上 水 槽 における
採 苗 率 は、2011 年 度 は約 2.4%と低 かったものの、2012 年 度 は約 14.5%と増 加 した。2012 年
度 の着 床 具 タイプ別 の採 苗 率 をみると、リユース(08CR)での採 苗 率 が約 40%と高 かった。
海 域 全 体 の8 月 時 点 での 採 苗 率 は、 地 点 の選 択 等 によ り、 年 々 向 上 し て い る( 図 2 ) 。 一
方 で、2011 年 度 は台 風 の影 響 により、海 中 での採 苗 率 が下 がったことから、陸 上 種 苗 生 産
を行 なうことにより、種 苗 確 保 において、リスク分 散 を図 れると考 えられる。
現 時 点 で は、 陸 上 生 産 した 種 苗 から の 採 苗 率 は、 従 来 の海 域 で 着 床 さ せ る 方 法 に 比 べ
採 苗 率 が低 いが、今 後 、管 理 技 術 の向 上 や課 題 に対 する知 見 の蓄 積 により、改 善 されること
が期 待 される。
40%
2011年度(11月)
2012年度(10月)
採苗率
30%
18.9%
20%
14.5%
10.0%
10%
2.4%
0%
海域全体
水槽
図 1 2011 年 度 及 び 2012 年 度 の移 植 前 採 苗 率
100%
83.0%
採苗率
80%
62.5%
60%
40%
31.5%
20%
5.2%
11.3%
41.0%
49.2%
32.0%
20.1%
0%
2012年8月
2011年8月
14
2010年8月
2009年8月
2008年8月
2007年8月
2006年9月
2005年10月
2004年8月
図 2 採 苗 率 の経 年 変 化
Fly UP