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[特 集 ニ 第7回国際家族看護学会とカナダ家族看護研修ツアーの成果報告]
144 〔 特 家 族 看 護 学 研 究 第 11巻 第 3号 2006年 集:第 7回国際家族看護学会とカナダ家族看護研修ツアーの成果報告〕 CanuckP l a c e 大西文子 鍵小野美和 |.はじめに CanuckP l a c eは,パンクーパー郊外にある子ど ものためのホスピスとして世界で初めての施設であ 7年 5月 30日(月)に第 7回国際家族看 る.平成 1 護学会参加とカナダ家族看護研修ツアーの一行は 森山美和子氏のご尽力によって, CanuckP l a c eの 看護専門師 K r i s t i n aBoyer氏によってレクチャー . [CanuckP l a c eのエントランス] 写真 1 を受けることができ,その日のうちにこの施設を訪 れることができた.レクチャーのスライドを見たと ) ' たん, 「まあ,なんでかわいいおうち! J(写真 1 そして,施設見学の折には「まあ,なんて素晴らしい ) !Jな お庭(写真 2),遊び道具など素敵(写真 3 どの歓声が上がった.しかし我々一行は,実際の見学 では利用されている子どものプライパシーの保護と いう理由から施設内見学はできなかったことは残念 に思ったが,当然のこととして受け止めた.帰国後, 悲しい状況にある終末期の子どもとその家族だから 写真 2 .[ 庭 ] こそ, CanuckP l a c eのような素晴らしい環境が必 要であることをできるだけ多くの方に知ってもらい たい,という気持ちが強くなった.そこで,研修に参 I . CanuckP l a c eの由縁 r i s t i n a 加された翻訳家の長谷美智子氏のご協力や K Boyer氏とのメールのやりとりをはじめ,レク i l l i a mT a i t男爵が彼の故郷である この建物は, W チャ一時の記録やいただいたパンフレットおよび l e n スコットランドのお城を偲んで建てられ, G ホームページを参考にして,その素晴らしい C a- Braeというオリジナルな名前で呼ばれていたもの nuckP l a c eの目的とその役割と実際の機能および であり,パンクーパーシャフネッシイ丘にあるカナ 施設の構造・設備等について デイアンパシヒィック通りにある.かつては,私立学 まとめたので報告す る.そして今後,わが国における終末期の子どもと家 校や静養所などとして利用されていた.この町が, 族のケアに対する支援の参考にしていきたい. 1993年から G lenBraeを子どものホスピスとし て CanuckP l a c eに改名し, 50年間,無理をしない 藤田保健衛生大学衛生学部衛生看護学科小児看護学 ですむ l年に 1ドルで賃貸するようになった. C a - 家族看護学研究第 1 1巻 第 3号 2006年 145 写真 6 . [キッチン] 写真 3 . [遊び道具] 写真 4 . [大きな部屋] 写真 7 . [食堂] 写真 5 . [サンルーム] nuckP l a c eはヘルスケアの創設である. 写真 8 1 . [し、ろいろな家族室] 1. 1 CanuckPlaceの役割と実際の機能 である.その終末期ケアの役割は,専門家やボラン 子どもの緩和ケアの役割は,ケアの原理として,終 ティアなどの友愛的なセラピーと活動の連携を通し 末期の病気をもっ子どもと家族のための生活の質の て,子どもやその家族,ケア提供者,サービス提供者 魅力に焦点を当て,彼らの癒しをサポートすること を含めた学際的な協働的努力によって計画され,果 146 家族看護学研究第 1 1巻 第 3号 2006年 写真 8 2 . [し、ろいろな家族窒] 写真 1 0 . [音楽室] たされている.またそれは,「子どもが病気で死ぬ直 写真 8 3 . [し、ろいろな家族室] 前あるいは最後まで利用できるべきである.Jとして いる.実際の機能としては, 1 .子どものための詳細 な診断調整, 2 . 予後不良な子どものケア, 3 . 子ど .子どもの成長 ものケアに責任ある両親へのケア, 4 発達過程に適したコミュニケーション技術・ケア, 5 . 学校教育, 6 . 子どもの死亡統計,などいくつか 用意されており素晴らしいものがある.なお, C a - nuckP l a c eの理念は,①終末期の子ども及び家族の 生活の質の向上,②積極的かつ癒しのあるセラピー の協働,③すべての人を対象としている,④ケア提供 者およびサービス提供者による協働,を掲げている. I V . CanuckP l a c eの構造と設備 16,000平方メートルもの広大な土地にお城を思 写真 9 . [図書室] わせる CanuckP l a c eの建物は,写真 2で示したよ うな広い庭や写真 3に示した子どもの遊ぶための 遊具に囲まれており,穏やかさが漂っている.スライ ドで見せて頂いた限りでは,建物の中は,大きな柱や 家族看護学研究第 1 1巻 第 3号 2006年 147 写真 1 3 . [ V o l c a n oRoom−火山部屋] 写真 1 4 .[ S n o z e l e nRoom] 写真 1 1 . [屋内プール] ドアなどはすべて木材が使用され落ちついた雰囲気 が感じられた.その設備は終末期の子どもとその家 族が共通に利用できる「大きな部屋:写真引をはじ め,陽ざしが差し込む明るい「サンルーム:写真 5 J 「キッチン:写真 6」「食堂:写真 7 J,「家族室:写真 S J,「図書室:写真 9 J,「音楽室:写真 1O J , r 屋内 プール:写真 ll J,「砂場の部屋:写真 1 2」など生 活の質向上に繋がる,すばらしい設備がある.また, 翻訳には無理があるが,目的は子ども達のストレス を 発 散 す る 部 屋 と し て 円T o l c a n oRoom:写真 1 3 J や「 SnozelenRoom:写真 1 4 J があり,終末 期の子どもに対する配慮がうかがえたもちろん,ケ アの窓口である「ナースステーションJ では小さな子 どもでも会話ができる低いカウンター,子どもと家 族が病気と闘う「病室jにはパスもありスペースにゆ とりが感じられた. 写真 1 2 . [砂場の部屋] 148 家族看護学研究第 l l巻 第 3号 2006年 CanuckP l a c eのようにハードやソフト面で素晴ら v . 終わりに しい環境が必要であると痛感した. (なお,この記事に掲載した写真は,すべて Rob 冒頭にも述べたが,悲しい状況にある終末期の子 どもとその家族だからこそ 生活の質向上のために K r u y t氏より提供されたものである.)