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資料5 (5)(PDF形式:987KB)
B
小型民間輸送機等開発調査
目
次
頁
Ⅰ.P-X、C-X 民間転用
1. 事業の目的・政策的位置付け………………………………………… 1
2. 研究開発目標…………………………………………………………… 3
3. 成果、目標の達成度…………………………………………………… 6
4. 事業化、波及効果………………………………………………………55
5. 研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等………………59
Ⅱ.US-2 民間転用
1. 事業の目的・政策的位置付け………………………………………… 1
2. 研究開発目標…………………………………………………………… 4
3. 成果、目標の達成度…………………………………………………… 6
4. 事業化、波及効果………………………………………………………87
5. 研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等………………89
1. 事業の目的・政策的位置付け
航空機産業は、先端技術や高度な素材・部品のシステム統合(摺り合わせ)を行
い、他産業を含めた広い技術波及をもたらすものであり、多大な部品点数と広い裾
野産業を有することから雇用吸収力も大きい等の特色を持ち、産業政策上極めて重
要な産業である。また、安全保障上も重要な技術基盤となる。
そのため、各国とも積極的な開発支援に取り組んでおり、我が国においても航空
機産業の自立的発展基盤の確保及び一層の高度化推進の観点から、我が国主導の航
空機開発の実現を図ることが重要な課題であり、その一環として小型民間輸送機等
開発調査事業を実施するものである。
1-1 事業目的・政策的位置付け
小型民間輸送機等開発調査は、
「機体・エンジンの完成機開発能力の獲得」を目
的とし、国の補助事業として実施されている。
これにより、我が国航空機産業の生産・技術基盤を強固なものにすると共に、
戦略的な研究開発を通じて、我が国航空機産業の基盤技術力の強化を達成するこ
ととなる。
また、航空機産業の持つ軽量化技術、全機インテグレーション技術、低コスト化
技術等の関連技術は、その波及効果によって環境をはじめ、情報、材料等の他産
業分野の発展に寄与することが期待されている。
1-2 国の関与の必要性
航空機産業は、その時代の最先端の技術をシステム統合するハイテク産業であ
ることから、広範かつ高度な技術力を有する限られた国においてのみ自国産業と
して成立が可能であり又、技術的困難性に加え、巨額の開発・販売コスト、長期
の開発期間及び、資金の回収期間を必要とし、開発・事業コストが極めて高いと
いう特徴がある。また、防衛産業・技術基盤としての側面を有しており、安全保
障の観点からも維持・育成が重要である。
このため各国は、航空機産業を戦略産業として位置付け、直接・間接に積極的
な支援を行っている。
欧米では、冷戦崩壊後の軍事支出縮減傾向に伴い、防衛依存度が低下する一方、
民需分野における技術の更なる高度化、機体開発費の高騰等を背景として、企業
体力・技術開発力の強化を目指した大規模な合併や買収による企業統合に進展し
ている。その結果、中・大型機分野(大手エアライン機)では米国と欧州の巨大
メーカー2 社が市場を2分している状況である。また、小型機分野(リージョナ
ル・エアライン機)では 90 年代の激しい競争を経て、カナダ及びブラジルの有力
企業が急激に成長した。航空機用エンジンについては、欧米の有力企業が市場の
7 割を占めている状況である。
3-B-I-1
即ち、世界の航空機市場では、これら少数の大企業が激しい国際競争を展開し
ているところである。加えて、欧米等先行諸国のみならず、ロシア及び、中国を
はじめとしたアジア諸国においても航空機産業を強化する動きが見られ、今後一
層の競争激化が見込まれており、今後 10 年のうちに世界の航空機産業の地勢図
が固まると懸念される。
このような状況の下、各国・企業は、リスク回避の観点から国際共同開発方式
が世界的趨勢になっている航空機開発市場において、開発プロジェクトを主導し
又は、高いレベルで参画していくために、一層の高度な技術力やリスク分担能力
を獲得することが課題となっている。
以上のような航空機産業の特徴及び背景を踏まえ、他の先進国と比べて後発で
ある我が国航空機産業が、先行諸国と伍しつつ途上国の追い上げにも対応し得る
基盤技術力を強化していくためには、技術の優位性を確保し、我が国主導の機体
開発の実現を目指すことが必要である。
そのため、「中核的要素技術力の保持」、「機体・エンジンの完成機開発能力の
獲得」及び、「国際共同開発への参画」に対し官民が一体となって取り組むこと
が必要である。
3-B-I-2
2. 研究開発目標
2-1 研究開発目標
市場動向調査や防民スペックの差異を踏まえた機体構想検討等を行うことによ
り、防衛省機の民間転用を効率的に行い、我が国主導の低コストでの国産民間機開
発を実現するとともに、将来的に我が国として実績の乏しい型式証明の取得、販売、
プロダクトサポート等につながる経験蓄積を図ることを目標として事業を実施し
ている。
2-2 全体の目標の設定
平成 14 年度から防衛省で開発中の次期固定翼哨戒機(P-X)を活用した 100∼150
席クラスの官需機活用民間航空機(以降 YPX と称する)を開発対象としたフィジ
ビリティスタディを開始した。
平成 18 年度からは同じく防衛省で開発中の次期輸送機(C-X)を活用した民間
貨物輸送機(以降 YCX と称する)を開発対象に加えてフィジビリティスタディを
行っている。
目標・指標
(事後評価時点)
目標・指標
(中間評価時点)
設定理由・根拠等
官需機活用民間航空機
YPX 及び YCX に関して、
市場要求を調査・確認する
と共に、その機体構想、要
素技術、型式証明の取得、
事業性等の調査検討を行
い、当該航空機の開発開始
の可能性を確認する。
官需機活用民間航空機
YPX 及び YCX に関して、
市場要求を調査・確認する
と共に、その機体構想、要
素技術、型式証明の取得、
事業性等の調査検討を行
って、当該航空機のプロジ
ェクトの成立性を評価す
る。
100∼150 席クラスの旅客
機市場及びオーバーサイ
ズ貨物市場のニーズが見
込まれており、現在防衛省
において開発中の国産大
型官需機の成果を活用す
ることにより効率的な民
間航空機の開発が可能と
なる。
3-B-I-3
2-3 個別要素技術の目標設定
(1) YPX
要素技術
目標・指標
(事後評価時点)
目標・指標
(中間評価時点)
設定理由・根拠等
市場調査
世界のエアライン
等及びその動向を
調査して、市場要求
等を確認すると共
に、目標とする市場
が存在することを
確認する。
世界のエアライン
等及びその動向を
調査して目標とす
る市場の存在の可
能性を確認すると
共に、市場要求等を
調査して機体計画
等に反映する。
目標とする市場の
存在の確認と、マー
ケットニーズの把
握は最も重要なも
のである。
機体計画
目標機体の市場設
計要求を設定し、そ
れに基づく機体構
想計画をまとめる。
目標機体の市場設 ニーズに合致した
計要求を見直し、そ 魅力ある機体計画
れに基づく機体構 を行う必要がある。
想計画をまとめる。
適用可能技術の調
査研究
(YPX 及び YCX
共通)
目標とする機体構
想を実現するため
に必要な適用技術
に係わる研究を実
施する。
目標とする機体構
想を実現するため
に必要な適用技術
に係わる研究を実
施する。
魅力ある機体を実
現するために、革新
的な技術、将来を見
据えた技術研究が
必要である。
プログラムの事業
計画、事業性、それ
に係わる必要事項
について検討する。
技術的な面のみで
なく、事業としての
成立性が重要であ
る。
総合調査研究
プログラムの事業
(YPX 及び YCX 計画、事業性、それ
共通)
に係わる必要事項
について検討し評
価する。
3-B-I-4
(2) YCX
要素技術
目標・指標
(事後評価時点)
目標・指標
(中間評価時点)
設定理由・根拠等
市場調査
世界の貨物エアラ
イン等及びその動
向を調査して、市場
要求等を確認する
と共に、目標とする
市場が存在するこ
とを確認する。
世界の貨物エアラ
イン等及びその動
向を調査して目標
とする市場の存在
の可能性を確認す
ると共に、市場要求
等を調査して機体
計画等に反映する。
目標とする市場の
存在の確認と、マー
ケットニーズの確
認は最も重要なも
のである。
機体計画
目標機体の市場設
計要求を設定し、そ
れに基づく機体構
想計画をまとめる。
目標機体の市場設 ニーズに合致した
計要求を見直し、そ 魅力ある機体計画
れに基づく機体構 を行う必要がある。
想計画をまとめる。
3-B-I-5
3. 成果、目標の達成度
3-1 成果
3-1-1 全体成果
平成 14 年度から YPX を開発対象として、市場動向調査、機体仕様・機体各部構
想の検討、基礎評価試験及び、事業計画検討等のプログラム調査研究を実施してい
る。また、要素技術及び、設計/製造プロセスに関する適用可能技術の調査研究等
も実施しており、具体的には機体仕様設定/概念設計、機体構造、機体システム、
機体組立等に関する検討も実施した。
更に、近年の経済危機や燃料高騰の状況を踏まえて、目標機体仕様についても
COC 低減ターゲットを大きなものに代えて、それを実現できる機体計画に見直し
を行った。
平成 18 年度からは YCX を開発対象に加えて主体的に検討を進め、その市場動向
調査、要求仕様の検討、貨物室内仕様案の検討、搭載貨物の検討等について検討を
実施した。オーバーサイズ貨物市場はニッチな市場ではあるが通常貨物よりも大き
な伸びが予測されており、また市場ニーズに合致するように様々な貨物室仕様等の
検討を実施した。
3-1-2 個別要素技術成果
(1) YPX
要素技術
成果の概要
市場調査
世界的な経済危機により旅客市場は落ち込んでいるが、長期的
には年率 5%弱の伸びを示すものと予測されており、YPX クラ
スの市場についても今後 20 年間で約 9400 機の新規需要が見込
まれている。その中で YPX の販売機数については約 800 機程度
見込めるものと予想している。
市場のニーズとしては、燃料の高騰、経済危機等の影響から燃
費/運航コストの良い機体が望まれている。
機体計画
市場の要求を鑑みて、YPX の形態としては 5 列座席の胴体で 100
∼150 席クラスの双発エンジン搭載の機体を設定した。また、
市場要求に応えるためにも、販売機数を確保するためにもファ
ミリー化が必須であり、胴体長さについては基本型とストレッ
チ型とシュリンク型の3種類、また長距離バージョンを2機種
加えて、全体で5機種とするファミリー化を考えた。
更に近年のニーズに合わせて、COC 低減目標を 20%に引き上げ
て、それを実現可能な機体構想について検討を行った。
3-B-I-6
要素技術
成果の概要
適用可能技術の調 開発時の機体に盛り込むべき、空力設計、構造設計、システム
査研究
設計並びに製造組立技術に関わる各種研究を実施した。
(YPX 及び YCX 共
通)
総合調査研究
事業化に向けて、その前提、事業立上げのシナリオ、開発計画
(YPX 及び YCX 共 等の初期の事業計画について検討を実施した。また、型式証明
通)
取得のための検討や COC 低減に関わる調査検討やメンテナン
スコスト低減に関わる調査検討を実施した。
(2) YCX
要素技術
成果の概要
市場調査
航空貨物市場については、旅客よりも伸びが大きいと予測され
ており、中でもオーバーサイズ貨物市場はニッチな市場ではあ
るが更なる伸びが予測されている。
現状のオーバーサイズ貨物機としては新規開発の計画がなく、
今後の新規の貨物機が期待されている。
機体計画
市場ニーズを盛り込んで機体構想を設定、見直しを行うと共
に、様々な搭載貨物の検討、また貨物室のオプション装備につ
いても検討を実施した。
3-1-2-1 YPX
(1) 旅客予測
(財)日本航空機開発協会では年毎の最新データに基づき需要予測を毎年実施し
ており、小型民間輸送機等の市場予測はこの需要予測をベースに実施している。以
下は、平成 20 年度の調査結果についてまとめる。
世界のエアラインが運航している 20 席以上のジェット機(貨物専用機は除く)を
対象として、今後 20 年間(2007∼2027 年)の航空旅客及び航空機の需要予測を行
った。
需要予測は、世界を 10 地域(北米、中南米、西欧、東欧、中東、アフリカ、日
本、中国、その他アジア、オセアニア)に分け、地域毎に、過去の実績をベースに
経済成長と航空運賃の将来見通しから航空旅客を予測し、この旅客需要を輸送する
ために必要な機材を予測するマクロ的手法で実施している。
3-B-I-7
世界の航空旅客輸送量(RPK:有償旅客キロ)は、過去 20 年間年平均 4.8%で
伸びてきたが、今後 20 年間は平均 4.9%で成長し、2027 年には 11 兆 7320 億人キ
ロと 2007 年の 2.6 倍の旅客規模となる。(図 3-1-2-1-1)
世界の航空旅客予測
有償旅客キロ
(10億人・キロ)
2027年(シェア)
世界合計 11732
12000
実 績
その他
(CIS含む)
1901
(16%)
予 測
11000
年平均伸び率(%)
1988-2007 2008-2027
北米
3.6
3.7
欧州
5.9
4.7
アジア/太平洋
7.7
6.0
その他(CIS含む)
2.7
5.8
世界合計
4.8
4.9
10000
9000
8000
7000
アジア/太平洋
3593
(31%)
2007年(シェア)
6000
欧州
3251
(28%)
4475
5000
617 (13%)
4000
1127 (25%)
3000
2000
1987年
1740
1000
0
1987
1992
1997
2002
1287 (29%)
北米
1443 (32%)
2986
(25%)
2007
2012
2017
2022
2027
図 3-1-2-1-1 世界の航空旅客予測
地域別にみると現在三大市場の内、北米と欧州は、今後 20 年もほぼ過去と同じ年
平均伸び率 3.7%および 4.7%を続けるが、世界平均の伸びより低いため、その市場
シェアは北米が 32%から 25%へ、欧州が 29%から 28%に縮小する。一方、アジア
/太平洋は、中国、東南アジアの経済発展を背景に、年平均 6.0%と大きな伸びを
示し、そのシェアを現在の 25%から 31%へ拡大して、世界最大の市場に成長する。
3-B-I-8
(2) 機材需要予測
過去 20 年間で航空旅客輸送量が 2.6 倍の 4 兆 4750 億人キロとなる間、世界の航
空会社で運航される 20 席以上のジェット旅客機は 2.3 倍の 15,900 機(2007 年末)
に増加した。 20 年後の 2027 年には旅客が現在の 2.6 倍の 11 兆 7320 億人キロに
なるのに対して、ロードファクターの向上や、一機当たりの年間飛行距離の伸びに
より機材の生産性が向上し、運航機材は 2.3 倍の 36,600 機となる。
(図 3-1-2-1-2)
ジェット機の運航機材構成予測
機数
CISを除く
40000
実 績
36628
400席以上
予 測
A380
35000
747
777
A340
787
767
A350
A330
737-900
A321
30000
25200
25000
20000
15000
DC8,707
10606
10000
6984
767
A330
A310
757
A300 A321
C-Series 100-119席
737-600, A318
残存機
A320,MD80/MD90
727-200,737-300/400
ARJ21,SSJ100, MRJ
ERJ170/190, CRJ700/900/1000
717,727-100,737-100/200/500,TRIDENT,DC9S
BAC111,F28/F70/F100,DC9
1992
1997
2002
170-229席
新規需要
747
5000
0
1987
230-309席
120-169席
A319/A320
737-700/800
15929
DC10,MD11
L1011
310-399席
328JET,ERJ135/145,CRJ200
2007
2012
2017
2022
60-99席
20-59席
2027
図 3-1-2-1-2 ジェット機の運航機材構成予測
運航機材をサイズ別に見ると、現在 7,280 機と最も多い 120∼169 席クラスが、
2027 年に於いても引き続き 13,200 機の大量の機材を必要とし、次いで 100∼119
席の 5,000 機である。(図 3-1-2-1-3)
99 席以下のリージョナル・ジェット機の市場では、経済性の良いジェット機の出
現で、ターボプロップ機からの代替需要と、メインラインの低需要路線の移行や新
規開拓路線の需要がある。20∼59 席クラスでは CRJ や ERJ による市場拡大が一段
落し、現在の 1,900 機から 1.3 倍の 2,400 機に増加が鈍り、現在開発中の機材が主
体の 60∼99 席クラスは、1,300 機から 4.1 倍に増加して 5,100 機となる。
メインラインの最小機材と考えられる 717 や派生短胴型の A318 や 737-600 の
100∼119 席クラスは、Bombardier が C-Series、Boeing/Airbus もリージョナル・
ジェット機の拡大を阻止する目的もあって効率の良い小型機を検討しており、経済
3-B-I-9
性の良い機体が出現すれば、現在の 1,100 機が 2027 年において 4.4 倍の 5,100 機
となる。
細胴型の最大サイズである 170∼229 席クラスは、大量に運航されている下のク
ラスの市場を大型化する機材として、現在は 1,300 機程度であるが、2027 年には
3,100 機(2.4 倍)となる。
広胴型では 767 クラスの 230∼309 席は現在 1,500 機、777 や A340 の 310∼399
席クラスは 1,100 機あるが、今後、国内幹線や国際線用の主力機として大きな伸び
を示し、2027 年には 4,100 機(2.8 倍)、3,000 機(2.8 倍)となり、両クラス共、
経済性の良い新機材で既存 747 路線の代替や新しい長距離路線の開拓で伸びが大き
い。
747−8 を含む超大型機の 400 席以上のクラス市場は、太平洋線やアジア−欧州間
の高需要路線で運航されるが、現在の 500 機が 700 機(1.2 倍)と、それほど大き
な増加は見込めない。
サイズ別ジェット機運航機数および需要予測
機数
CISを除く
14000
13244
細胴機
12000
広胴機
合計運航機数
2007年末:
15,929 機
2027年末::
36,628 機
2008-2027年需要機数:
29,528 機
10000
新規需要
8000
9892
7284
リージョナル・ジェット機
6000
5140
5060
4061
4000
7284
1875
2000
1875
4475
2401
1268
1264
1133
1264
0
2007 2027
20-59席
2007 2027
60-99席
2989
4835
1142
665
3065
残存機
3352
1287 2578
225
2007 2027
100-119席
1073 2388
538 668
1466
1287
1142
3530
1466
487
531
2007 2027
2007 2027
2007 2027
120-169席
170-229席
230-309席
1073
601
2007 2027
310-399席
図 3-1-2-1-3 サイズ別ジェット機運航機数および需要予測
3-B-I-10
538 562
106
2007 2027
400席以上
(3) YPX 需要予測
YPX の販売機数を計算するために、YPX の機種を次の様に想定した。
機種
座席数(2-クラス)
航続距離
就航年
YPX-16
93 席
2,800 nm
2021 年
YPX-17
YPX-18
113 席
135 席
2,800 nm
2,300 nm
2019 年
2020 年
販売予測に大きく影響するファクターとして、①旅客の伸び、②機材の大型化あ
るいは小型化の傾向、③日本の販売力、④競合機の出現動向、が考えられる。
今回の予測に当たっては、①∼③については下記の通りとし、④については既存
機種、および Embraer170/175/190/195、SSJ、ARJ、MRJ、C-Series 等の出現を
考慮する。
①旅客の伸び
4.9%
②機材サイズの変化
過去 10 年の傾向
③日本の販売力 ボンバルディアの 80% (日本国内のみ 100%)
④競合機の出現動向
・A318、A319、737-600/700、CRJ700/900、Embraer170/175/190/195 等既
存機種の全て
・SSJ95
EIS 2009
・ARJ21
EIS 2010
・ARJ21Str.
EIS 2011
・MRJ
EIS 2013
・CSeries110
EIS 2013
・CSeries130
EIS 2014
・A320X
EIS 2019
・737X
EIS 2019
上記条件での計算結果は以下の通りとなった。
100-150 席クラスの販売機数は全体で 9,391 機となり、その内 YPX が 2019−2027
年の9年間で8%の 796 機を占める。
主要な販売先は北米に次いで、欧州とアジア/太平洋となっている。
(図 3-1-2-1-4)
3-B-I-11
地域別YPX(100-150席)クラス販売機数(2008-2027年)
ただし、YPX販売期間(2019-2027年:9年間)
3000
2892
2740
2500
YPX以外 (8595機)
YPX
( 796機)
合計
(9391機)
2484
2000
販
売
1500
機
数
2178
2711
2527
1160
1000
1119
500
60
306
213
北米
欧州
0
55
日本
アジア/太平洋
図 3-1-2-1-4 YPX 販売機数需要予測
3-B-I-12
41
181
その他
(4) YPX エアライン調査
エアライン調査として、欧州、北米、アジア・オセアニア及び国内エアラインを
毎年訪問し、YPX の現況を提示して、100 席クラス機及び YPX に対する要求仕様
及びコメントを頂いた。
調査結果概要(表 3-1-2-1-1)及び、年度別訪問社数(表 3-1-2-1-2)を下表に示す。
表 3-1-2-1-1 エアライン調査結果概要
コ メ ン ト
全般
・ 新規機材採用にあたり、最も重要なのは経済性と考えているALが多い。
・ 北米では、trans continental能力があるERバージョン(3,200NM)が好まれる。
航続距離
・ アジアでは、ERバージョンは長すぎ、ベーシックバージョン(2,300NM)で十分という意見が多い。
・
欧州では、ERバージョンは長すぎ、欧州域内の運航ではベーシックバージョン(2,300NM)、または1,600∼2,000NMの
航続距離で十分という意見多い。
・
エアバス、ボーイングはA320/737の後継機を150∼200席クラスにシフトさせると考えられるため、100∼150席を狙う
のは良い。
座席数
・ ストレッチ機とシュリンク機のどちらを好むかは各ALにより異なるが、ファミリー構想は好評であった。
速度
・ 巡航速度は多少速くしても時間短縮には効果が小さいので、マッハ0.79で十分との意見が多い。
・ エコノミー席のシート・ピッチは32インチあれば十分という意見が多い。
シートピッチ
・ 欧州では、スリムシートを採用すれば31インチでも良いという意見あり。
・ OHBを大きくして欲しいという要望が強く、キャリーバッグを人数分収容できるYPXの大型OHBは好評であった。
OHB
・ LCCからOHBを大きくするとターンアラウンドタイムが長くなるので良くないという意見もあり。
・ キャビンクロスセクション、機内配置は現状で特に問題なし。
・
ビジネス4列、エコノミー5列の席配置で良いという意見が多いが、一部エコノミーでも4列や6列を希望する意見もあ
り。
・ シート幅、通路幅は、現状で特に問題なし。
・ 短・中距離路線でも、YPX-11のsingle class 123席でトイレ2個は少なく、3個必要との指摘あり。
座席配置
・
中距離路線では、機内エンターテインメントシステム(EIS)は不要との意見が多いが、差別化のため全席に In-seatVideoを搭載するというALもあり。
・
ギャレーは、ただの食事サービスを止めているので必要性小さいという意見と、2-3時間の路線でもhot mealが必要
であり、ギャレーの配慮が必要との両者の意見あり。
・ 貨物室には人が入って作業するので、高さがあったほうが良いとの意見が多い。
貨物室
・ バルクタイプで良いが、作業性向上のためスライディングカーペットが必要という指摘が多数あり。
経済性
・ 現有機に対しCOC20%向上の目標は非常に良い。
・ 北米のAL2社から、ETOPSは不要だが、over water capabilityが必要との意見あり。
その他
・ アジアのALからETOPSが必要との意見あり。
・ 複合材の修理方法について不安を抱いているALがある。
・ 最新技術を盛り込んだ新型エンジンを期待されているが、YPX用のエンジンとして新規開発できるかが疑問。
3-B-I-13
表 3-1-2-1-2
YPXエアライン調査年度別訪問社数
欧州
北米
アジア・
オセアニア
国内
合計
平成 14 年度
8社
5社
−
2社
15 社
平成 15 年度
9社
8社
8社
2社
27 社
平成 16 年度
10 社
6社
6社
2社
24 社
平成 17 年度
8社
6社
8社
2社
24 社
平成 18 年度
8社
8社
10 社
2社
28 社
平成 19 年度
9社
8社
7社
2社
26 社
平成 20 年度
6社
6社
9社
2社
23 社
3-B-I-14
(5)機体計画
ア.機体構想
開発中の次期固定翼哨戒機(P-X)は公表された写真等から、胴体の巾は民間航
空機に活用するとすれば 5 列座席の民間機に相当すると推定される。5 列座席の民
間機(例えば DC-9/MD-80/MD-90 シリーズ)の機体サイズは 70∼160 席(2
クラス仕様)である。
販売機数をある程度確保するにはファミリー化が必須となり、これらを勘案し、
3つの機体でファミリーを構成するものとし、対象とする機体サイズを 100∼150
席機(1 クラス仕様、2 クラス仕様換算では 90∼140 席機に相当)と設定し、これ
を YPX と称することとした。
これらに加え、機材需要予測結果や機体仕様を決めるためのエアライン調査結果
等の諸要求を盛込み YPX の主要諸元としてまとめた。(表 3-1-2-1-3)
表 3-1-2-1-3
YPX主要諸元
3-B-I-15
機体計画の作業の流れを図 3-1-2-1-5 に示す。本作業は、前年度に設定され
た機体に対するエアライン評価及び、下記の調査研究、試験結果を反映し、毎
年見直しを行っている。
機体構想検討の一環として、全機構想検討,基本仕様の検討、エンジン概念
設計等の機体仕様設定に関する調査研究も行ってきた。
YPX の全機構想検討では、CFD による主翼設計、デジタルモックアップに
よる客室内配置検討等を実施した。
事業企画
耐空性審査要領
市場調査
航空機製造実績
市場要求
製造要求
市場設計要求
適用技術
形態設定のための要素
低コスト化、軽量化、高度化
室内配置/装備配置/構造様式
形態解析用プログラム(CAD)
主要形態
性能値
各種要求への適合性評価
競争力解析
民間輸送機形態の設定
図 3-1-2-1-5
機体計画作業流れ図
3-B-I-16
YPX の基本機体構想を以下に示す。
・ターゲット市場
図 3-1-2-1-6
・基本構想
図 3-1-2-1-7
・ファミリー化構想 図 3-1-2-1-8
・三面図
図 3-1-2-1-9
・客室断面形
図 3-1-2-1-10
・客室配置
図 3-1-2-1-11
・官需機活用範囲
図 3-1-2-1-12
3-B-I-17
ターゲット市場
メジャーエアライン機(6列席)とリージョナル機(4列席)の間の市場を狙う。
なお、この市場を目指した機体で現在製造中のものはない。
180
B737-800
座席数
(2クラス, 36-/32-in. ピッチ)
160
A320
140
ターゲット市場
(5列席)
120
B717-200
ERJ 195 LR
メジャーエアライン機
(6列席) B737-700
A319
A318
B737-600
100
リージョナル機 ERJ 190 LR
(4列席)
CRJ 900 LR
80
ERJ 175 LR
ERJ 170 LR
60
1,000
1,500
2,000
CRJ700 Series 705ER
2,500
最大航続距離 (nm)
Ⅰ-18
図 3-1-2-1-6 YPX のターゲット市場
3,000
3,500
▲市 場 : 互いに広がりつつある リージョナルジェット機市場と 大手エアライン用ジェット機市場の、
両方の重なり合う部分を狙う。(100∼150人クラス)
▲競 争 力 : 中核的要素技術の開発成果等を取込み、省エネルギー且つ先進性を有し、国際競争力のあ
る機体とする。
▲低コスト化 : 開発中の官需機の開発成果を活用し、短期間の開発/低コストを目指す。
▲ファミリー化 : 胴体短縮/延長型のファミリー化機体を検討し、運用の柔軟性、共用性のメリットを活かす。
Ad. Al / Composite
Airframe
Composite Tail
Composite Wing
Optimum Design
20% lower Cash
Advanced Avionics
More Space
O2Rich Air
Future Electric Sys
Future Flight Control Sys
New Engine
Inert Fuel Tank Sys
図 3-1-2-1-7 YPX の特徴
Operating Cost
More comfortable
cabin
Ⅰ-19
多くの顧客の幅広い要求にこたえるために、高いコモナリティを有したシリーズ機(ファミリー機)を前提とし
た開発が重要である。
YPXでは3種の機体サイズ及び、それらの長距離型を検討している。
なお、どの機体をどのような順序で開発するかについては、今後の市場動向調査等により決定する。
YPX-16 (シュリンク)
160
93席 (2クラス 仕様)
YPX-18
(stretch)
Seats (Single class)
105席 (1クラス 仕様)
YPX-17 (基本モデル)
113席 (2クラス 仕様)
125席 (1クラス 仕様)
140
120
100
YPX-17
(baseline)
YPX-17ER
YPX-16
(shrink)
YPX-16ER
80
1,500
YPX-18 (ストレッ チ)
2,000
2,500
Range (nm)
135席 (2クラス 仕様)
148席 (1クラス 仕様)
ファミリー間で主翼、 尾翼、胴体断面形は、同一形状。
コックピット、システム機器(大部分)等も共通とし、高いコモ ナリティ
メリットを確保する。
図 3-1-2-1-8 ファミリー機構想
3,000
3,500
Ⅰ-20
YPX-17
Seats (1 Class)
125Y
Range
[nm]
2,300
Maximum Takeoff Weight
[kg]
52,850
Maximum Takeoff Thrust
[kg]
9,700
Takeoff Field Length (S/L, 30℃, MTOW)
[m]
1,500
Landing Field Length (S/L, 30℃, MLW, Wet) [m]
1,660
3.5m
Wing Area(trap)
[m2]
34.3m
104
31.4m(YPX-16 シュリ
34.4m(YPX-17 基本モ
図 3-1-2-1-9 YPX 三面図
)
)
Ⅰ-21
図 3-1-2-1-10 客室断面図
Ⅰ-22
図 3-1-2-1-11
客室配置図
Ⅰ-23
構造の活用可能率:約10∼15%
・主翼外翼部桁間
・胴体上面
・水平尾翼、垂直尾翼
 装備品活用可能率:約35%
(活用部位: )
図 3-1-2-1-10 客室断面図
Ⅰ-24
イ. 基礎評価試験
機体構想検討の一環として、基礎評価試験(客室モックアップ試験、基礎風
洞試験)を実施した。客室のエンジニアリング・モックアップ(部分実大モデ
ル)を製作し、快適性や作業性に関する評価を行うとともに、データの整備を
行った。基礎風洞試験(高速及び低速)を実施し、離着陸時特性及び巡航特性
を明らかにするための空力データを取得した。成果は、(1)機体構想へ活用され
ている。
実施された試験項目を下表に示す。
表 3-1-2-1-4 YPX 基礎評価試験一覧表
実施年度
作
業 名 称
担当会社
H17
官需機を活用した民間機の全機風洞試験
KHI
H17
官需機を活用した民間機の客室モックアップ試験
KHI
風洞試験模型
キャビンモックアップ
Ⅰ-25
3-1-2-2 YCX
(1) YCX 需要分析
YCX が適した特殊大型貨物の市場(HOM)は一般貨物市場に比べて小さく、特
殊である。そのため、需要を予測するのは難しいが、以下の 2 つの方法で需要の予
測を試みた。
(1-1)旅客機型貨物機の需要分析
一般貨物市場のマクロ予測(旅客機の市場予測と同様な手法)により、旅
客機型(ジェット)貨物機の予測を行った。
(1-2)特殊大型貨物機の需要分析
運航中の特殊大型貨物機に、市場の成長率を見込んで必要機材の予測を行
った。
Ⅰ-26
(1-2) 旅客機型貨物機の需要分析
ア.貨物予測
CIS を除く世界のエアラインが運航している貨物専用ジェット機を対象として、
今後 20 年間(2008∼2027 年)の貨物輸送量及び貨物機の需要予測を行った。
過去 20 年、CIS を除く世界の貨物輸送量は年平均 5.6%で伸びて、2007 年には
1,586 億トンキロになった。
今後の GDP の成長率(3.1%)及び貨物運賃の低減(-2.0%)予測に基づく 2008-2027
年の世界の貨物輸送量は、年平均 5.6%で伸び、2027 年には現在の 2.9 倍の 4,670
億トンキロになると予測される。(図 3-1-2-2-1)
世界の貨物輸送量の予測
有償Ton-km(10億)
500.0
予 測
実 績
450.0
400.0
350.0
予測機関
JADC(2008)
Boeing(2007)
Airbus(2007)
予測期間
2008-2027
2007-2026
2007-2026
2008-2027年平均伸び率
5.6%
年平均伸び率
5.6%
6.1%
5.8%
300.0
250.0
200.0
1988-2007年平均伸び率
5.6%
150.0
100.0
50.0
0.0
1987年
1992年
1997年
2002年
図 3-1-2-2-1
2007年
暦年
2012年
2017年
2022年
2027年
世界の貨物輸送量の予測
Ⅰ-27
イ.機材需要予測
旅客機型貨物専用ジェット機は、現在(2007 年末)1,705 機が運航されているが、
今後 10 年で 1.5 倍の 2,557 機、20 年後には 2.2 倍の 3,719 機となる。
小型機、中型細胴機は 2007 年の 1.7 倍の増加となるのに対し、中型広胴機、大型
機は 2007 年の 2.5 倍となり、広胴機の運航機数の増加が著しい。(図 3-1-2-2-2)
機数
旅客機型貨物専用ジェット機の運航機数予測 (CISを除く)
4000
3719
3500
3101
予 測
実 績
3000
1327
2557
2500
1074
2119
1705
1500
1434
1213
705
1000
517
258
1000
YCXが該当するクラス
882
2000
大型機
ペイロード65ton以上
(747, MD-11等)
中型広胴機
ペイロード30∼65ton
(767, A300等)
779
624
187
359
507
385
500
604
274
213
240
577
441
311
622
716
820
2017
2022
2027
中型細胴機
ペイロード30∼50ton
(757, DC-8等)
小型機
ペイロード30ton以下
(737, DC-9等)
0
1997
2007
2012
暦 年 末
図 3-1-2-2-2
旅客型貨物専用ジェット機の運航機数予測(CIS 除く)
Ⅰ-28
2008∼2027 年の貨物機の需要は 3,117 機となるが、旅客機からの改造貨物機で
2,250 機が賄われ、2027 年までに必要となる新製貨物機は 867 機と少ない。
新製貨物機の内訳は、小型機が 0 機(0%)、中型細胴機が 7 機(2%)、中型広胴
機が 269 機(27%)、大型機が 591 機(56%)で、中型以下は殆ど中古改造貨物機
で補われ、大型機の方に新製貨物機の需要が多い。(図 3-1-2-2-3)
貨物専用ジェット機の販売予測
機数
(CISを除く、旅客形貨物機のみ)
1200
2008∼2027年合計
1000
改造貨物機:
2,250機
新製貨物機:
867機
合計:
YCXが該当するクラス
大型機
ペイロード65ton以上
(747, MD-11等)
3,117機
448
800
738
中型細胴機
ペイロード30∼50ton
(757, DC-8等)
600
400
780
591
200
0
小型機
小型機
ペイロード30ton以下
(737, DC-9等)
改造貨物機
284
0
中型広胴機
ペイロード30∼65ton
(767, A300等)
269
7
中型細胴機
中型広胴機
新製貨物機
大型機
機材サイズ
図 3-1-2-2-3
貨物専用ジェット機の販売予測(CIS 除く
旅客方貨物機のみ)
Ⅰ-29
(1-2)特殊大型貨物機の需要分析
ア.貨物予測
特殊大型貨物機の 2001 年から 2007 年までの運航機数は約 280∼340 機でそのう
ち約 200∼260 機が Il-76 である。その他旧東側諸国の機材は、An-124 が 19∼26
機、An-225 が 1 機。
西側の機材は、C-130/L-100 が 40∼50 機、SC5/Guppy/B747LCF が各 1 機程度、
Beluga が 5 機となっている。(図 3-1-2-2-4)
特殊大型貨物機の運航機数の変遷
400
350
342
341
51
49
318
300
318
302
296
45
49
278
45
40
41
250
L100/C130
IL76
SC5
AN22
AN225
AN124
A300-600Beluga
B747LCF
Guppy
機
200
数
150
263
261
228
241
238
222
200
100
50
0
1
19
51
2001年
1
23
51
2002年
1
19
51
2003年
図 3-1-2-2-4
1
23
51
2004年
1
23
51
2005年
1
25
51
2006年
1
26
521
2007年
特殊大型貨物機の運航機数の変遷
特殊大型貨物の輸送量は、今後とも経済成長に伴い、旅客機・半導体などの製造
が増加するとともに国際分業が更に進み大型製造部品、大型製造装置等の輸送が増
加し、また発展途上国の経済成長や資源確保のため、交通機関の整備されていない
地域の開発が更に進むと考えられる。
従って、特殊大型貨物機も、通常の旅客機ベースの貨物専用機と同等かそれ以上
の成長が見込めると考えられる。
RTK の成長率は、Air Cargo World 誌(2007 年 4 月)に記載された約 7%のほか、
Volga-Dnepr を訪問時の 8%程度とのコメント等があるが、ここでは旅客機の床下
貨物室を含めた貨物全体の成長率の予測値である 5.6%と ACW 誌の 7%の範囲で予
測するものとする。
Ⅰ-30
イ.機材需要予測
現在運航中の機材の大部分は機齢 15∼30 年の Il-76 である。
今後、20 年の間に Il-76、L-100 を中心に退役し、運航機数は約 35%程度まで減
少すると予測される。(図 3-1-2-2-5)
特殊大型貨物機の運航機数予測
300
Hercules
Il-76
SC.5 Belfast
An-22
An-225
An-124
A300-600ST
747-400LCF
Guppy
250
200
機
150
数
100
50
図 3-1-2-2-5
2027年
2026年
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
0
現在運航中の特殊大型貨物機の退役による運航機数予測
この退役分と需要増加分が新規特殊大型貨物機の需要となる。
なお、特殊大型貨物機の予測は、Il-76 と C-130/L-100 を含めるか否かの 3 ケース
について行った。
その理由は以下のとおりである。
・L-100/C-130:貨物扉は B747 より小さいがランプ扉付の西側で代表的な機
種
・Il-76 :
貨物扉の高さは B747 より大きいが、幅は狭い。また、旧東
側諸国で最も多く運航され、また定期運航にも使われており、
必ずしも大型扉、ランプ扉を必須としていない運航も含まれ
ていると考えられる。
Ⅰ-31
予測結果は以下の通りである。(表 3-1-2-2-1)
表 3-1-2-2-1 特殊大型貨物機需要予測
ケース
L-100
Il-76
主要運航機種
2007年
運航機数
2027年までに
退役する機数
2027年
運航機数
2027年までの
新規需要機数
A
不含
不含
An-124
37
13
78∼102
54∼ 78
B
含
不含
An-124、L-100
78
51
165∼215
138∼188
C
含
含
An-124、L-100 、Il-76
278
176
590∼767
488∼665
ケース A は厳しすぎ、ケース C は甘すぎ、ケース B とケース C の間のどこかが
妥当であると考えられる。従って、特殊大型貨物機の販売機数 190 機程度と予測す
る。
Ⅰ-32
(2) YCX エアライン等調査
エアライン調査として、世界各地及び国内のエアライン、フォワーダー、ブロー
カー等を訪問し、YCX の現況を提示して要求仕様及びコメントを頂いた。
調査結果概要及び、年度別訪問社数を下表に示す。
表 3-1-2-2-2 エアライン等調査結果概要
コ メ ン ト
全般
・ 大きな貨物室断面積を生かしてOutsized Cargoの輸送に適しているとの意見が多い。
・ 南米では高地空港が多いため、高地での運航能力が評定となりやすい。
飛行性能
・
不整地離着陸能力については、あれば望ましいという意見と、不具合及び重量増加の原因となりうるので必要ない
との意見があった。
・
航続距離についてはC-17並でありOKという意見と、最大ペイロードで米国東海岸からヨーロッパ本土まで、あるい
は米国西海岸から日本までノンストップでいける能力がほしいという声がある。
・
グランド設備が十分でない所もあるため、クレーン装備は良いオプションである。
ただ、クレーンの能力については現状の計画よりも高い能力が望ましいという意見もある。
・ ペイロードはIL-76に近く、貨物室の高さはAn-124に相当するため、両者のマーケットをカバーできる。
貨物室
・
Outsized Cargoは重量密度が大きいものもあるので、貨物室の床強度に配慮すべきとの意見がある。
2
(747Fの要求値は400lb/ft であるが、もっと高い床強度があったほうがよい)
・ 馬などを輸送する場合を考えて、貨物室内に人員のための座席・酸素等を装備するオプションも考慮して欲しい。
・ ダブルデッキ搭載システムは一般に好評であった。
・ 大きな貨物室と双発エンジンで燃費性能も良く魅力ある機体である。
経済性
・ 燃料消費率は5ton/h以下との要求を出したオペレータがあった。(IL-76TD-90は6∼7ton/h)
・ Volga-DneprやPolet Airlinesでは、今後のオーバーサイズ貨物の伸びは年率8∼10%と予想している。
・ 西側のTCを取得した機体、高効率の最新の機体の登場を期待している。
その他
・ Crew Restは必要である。
・ リース等により機体購入のリスクを軽減できるような枠組みを望むオペレータが複数ある。
・ 最大ペイロードの増加や胴体の延長を望む声もあった。
表 3-1-2-2-3 年度別訪問社数
欧州・中東
・アフリカ
北米
アジア
国内
合計
平成 18 年度
6社
3社
−
3社
12 社
平成 19 年度
7社
5社
5社
6社
23 社
平成 20 年度
7社
4社
−
−
11 社
Ⅰ-33
(3) 機体の特徴と用途
防衛省が現在開発中の次期大型輸送機(C-X)を活用した民間貨物輸送機(YCX)
は、以下の特徴を有する。
・C-X からの改修は最小限
・ランプ扉と大型の貨物室(搭載可能な貨物サイズは 747 以上)
・ランプ扉からの貨物搭載方式(地上支援設備が不要)
これらの特徴を活かし、YCX の狙う市場は、特殊大型貨物市場(HOM:Heavy
Outsized cargo Market)を主要な狙いとし、以下の用途に適する。
・大型機械、ジェットエンジン、石油採掘機械等の空輸
・地上輸送が困難な内陸地への空輸
・人道支援や災害派遣活動
・消火活動や研究機
Ⅰ-34
(4) 機体諸元・性能
YCX の機体仕様、性能等を図 3-1-2-2-6 及び図 3-1-2-2-7 に示す。
主要諸元
最大離陸重量 :
141.1 ton
運用空虚重量 :
60.8 ton
最大ペイロード重量 :
37.6 ton
運用高度 :
12,200 m(40,000 ft)
巡航速度 :
0.8 Mach
2,300 m(7,500 ft)
着陸距離 :
2,400 m (7,900 ft)
エンジン :
CF6-80C2 × 2 (baseline)
貨物室 :
4×4×16 m(+ランプ長5.5m)
14.2 m
離陸距離 :
4m
44.4 m
43.9 m
4m
図 3-1-2-2-6
三面図及び主要諸元
:YCX
東京
Max
Payload
12 ton
Payload
Ferry
ペイロード
航続距離
Ferry
10,000 km
(5,400 NM)
12 ton
8,900 km
(4,800 NM)
37.6 ton
(Max Payload)
5,600 km
(3,000 NM)
In range definition, reserves as per
MIL-C-5011A : C-X
ATA rules
: Boeing’s freighters
図 3-1-2-2-7
航続性能
Ⅰ-35
(5) 貨物室仕様
市場調査結果等にもとづいて貨物室仕様に対するエアラインの要求を整理した
結果、YCX の貨物室仕様に関しては、大型貨物等の特殊なミッションへの対応性
は重視されるが、一般の規格貨物(コンテナやパレット)への対応も同時に望ま
れるという要望が多かった。
YCX の競合他機の貨物室仕様を調査した結果、以下のことが分かった。
・旅客機型機(747F、767F 等)は、規格貨物を大量に搭載することに適している。
・ランプ・ロード機(An-124、IL-76、C-130 等)は、特殊大型貨物の搭載に適
しており、搬送支援装置(機内クレーン、ウインチ等)が充実している。
・大型貨物機では、車輌積載時の貨物密度を高めるために二段ラックを使用す
る。
また、貨物の二段搭載及び機内クレーンの運用例として、以下の例について調
査した。
・規格品の自動車用二段ラックを用いた 747 による自動車の二段搭載
・An-124 専用の自動車用二段ラックを用いた自動車の二段搭載
・An-124 及び IL-76 の機内クレーン
YCX の仕様検討に反映すべき要求事項は、エアラインの要求レベル、改修程度、
その他の情報を考慮して、それぞれの要求の採否を判定した。開発コンセプトと
して、C-X 開発成果を最大限活用しながら、競合機に対して十分な市場性を確保
するために必要な改修を実施することを意識して採否の判定を実施した。
採否の判定結果及び競合他機の仕様調査結果に基づいて、YCX 貨物室の改修案
として民間貨物搭載能力の追加、二段式貨物搭載方法、機内クレーンの追加につ
いて検討した。
Ⅰ-36
ア.民間貨物搭載能力の追加
民間貨物搭載能力を追加するための機体改修案を検討するにあたり、母機 C-X
ならびに他の貨物機の仕様を考慮しながら、想定される民間貨物の種類、配置と
数量、貨物拘束装置、貨物床改修方法について検討した。
航空機で輸送される民間貨物の大半を ULD(民間パレット、コンテナ)が占め
ることから、エアラインが求めるのは一般的な ULD の搭載能力である。ULD 以
外で YCX への搭載を想定している民間貨物は、YCX の搭載能力を生かした大型
の民間車輌ならびに大型貨物である。製品が高価で、迅速な輸送が要求される大
型貨物の例として、GE90 に代表される大型航空機用エンジンがある。
検討の結果から、ULD 搭載のための貨物床の改修案を以下の通り設定した。
・収納式の 125 幅のガイドを追加する。
・取外し可能かつ可倒式の 2 幅センター・ガイドを追加する。
・取外し可能かつ可倒式の 4 幅センター・ガイドを追加する。
・取外し可能かつ可倒式の ULD 用ロックを追加する。
これらの ULD 拘束装置を収納式または取外し式とすることで、民間車輌及び不
定形貨物を搭載する時に用いる貨物床の平床化に対応する。
民間車輌の搭載は、地上まで下ろしたランプ扉と補助ランプを用いて自走させ
て機内に搬入する。搬入の際に問題となるのは、車輌と機体との干渉、特に機体
貨物室天井及び貨物室後端の干渉である。本検討では、長さ・重量ともに YCX の
最大搭載能力に近いセミトレーラーの搭載について検討した結果、YCX に搭載可
能であることを、CATIA を用いて検証した。
不定形貨物の搭載検討として、GE90 に代表される大型航空機エンジンの搭載
についても搭載性を確認した。
検討の結果得られた規格貨物搭載図、民間車輌搭載例、特殊大型貨物搭載例を
図 3-1-2-2-8∼-10 に示す。
LD-3 コンテナ x 23
図 3-1-2-2-8
96“ x 125” パレット x 7
規格貨物搭載例
Ⅰ-37
図 3-1-2-2-9
図 3-1-2-2-10
民間車輌搭載例(セミトレーラー)
特殊大型貨物搭載例(大型航空機エンジン)
Ⅰ-38
イ.二段式貨物搭載方法
二段式貨物搭載方法の検討は、二段目に搭載する貨物、二階床に要求される剛
性・強度、二階床の機体への固定方法、効率的な運用方法、等を考慮しながら検
討を進めた。検討の結果、二段搭載が想定される貨物は自動車及び規格貨物であ
り、その搭載方法として 747 及び An-124 で採用されている二段ラック式を選択
した。運用性を考慮して、二段ラックを前後に三分割して車輪をつけること、貨
物を二段目に持ち上げるためのリフトを追加することも仕様として設定した。
二段ラックを用いた搭載例を図 3-1-2-2-11 に示す。
LD-3 コンテナ x 23
LD-3 コンテナ x 30
二段ラック
(固定式)
二段ラック
(リフト内蔵)
搬入用タイヤ
(収納式)
96“ x 125” パレット x 7
96“ x 125” パレット x 13
図 3-1-2-2-11
二段貨物搭載例
Ⅰ-39
ウ.機内クレーン
機内クレーンの仕様を検討するにあたり、クレーンを使用する代表的な貨物、想
定する機内クレーンの使用方法、クレーンに要求される懸吊能力、機体への固定方
法、効率的な運用方法、等を考慮しながら検討を進めた。機内クレーンの機能は、
トラック等から直接貨物を懸吊して貨物室内に搬入することであり、機内クレーン
が必要な貨物は主として不定形貨物及び海上コンテナである。想定する能力は、最
大搭載重量の 1/3 が懸吊できる An-124、最大搭載重量の 1/5 が懸吊できる IL-76
の例を考慮して、最大搭載重量の 1/4 強である 10 ton に設定した。
ランプ扉の後に駐車したトラックから直接貨物を懸吊するためには、クレーンが
カーゴ扉の下を通過する必要がある。これを考慮してクレーン用レールの配置を考
慮した結果、海上コンテナの懸吊に必要な 2.8 m のクレーン下高さが確保できる目
処が得られた。
図 3-1-2-2-12 に機内クレーンの構想図を示す。
図 3-1-2-2-12
機内クレーン構想図
Ⅰ-40
3-1-2-3
適用可能技術の調査研究
開発が計画される航空機に適用する新技術は、図 3-1-2-3-1 に示すステップを踏
んで評価され採用されていく。小型民間輸送機等開発調査の中では、ニーズやシー
ズから調査研究すべき新技術を設定し、新技術への要求明確化や課題抽出などの基
礎的研究を主に推進している。この結果、供試体や試行による技術確認を含むより
高度な研究が必要と判断された研究の幾つかは、経済産業省が別途推進する中核的
要素技術の研究に引継がれ、実機適用へ向けた調査研究が実施されている。尚、将
来予定されている実機開発プログラムでは、実機適用に際して認証や試験データが
必要となる新技術に対しては、実機レベルの試験を行い、型式証明の取得を念頭に
おいた設計/製造/メンテナンス等のためのデータ取得を行うことになる。
調査研究項目の設定にあたっては、将来小型民間輸送機への適用有効性、技術的
成立性、他分野での技術動向等の観点から本事業での研究の必要性の高い項目を選
択した。
将来の小型民間輸送機に対する主要なニーズとしては、経済性向上、安全性向上、
乗客満足度向上、環境負荷軽減が挙げられる。これまでの調査研究では、民間輸送
機に特に強く求められる項目である経済性向上に寄与する研究、つまり、機体重量
軽減、省エネルギー化、設計コスト低減、製造コスト低減等に関する研究を重点的
に実施してきた。
要素技術と設計/製造プロセスに分けてこれまでに調査研究を実施してきた項
目を表 3-1-2-3-1 に示す。
これら一連の成果は官需機活用民間航空機の機体構想(機体仕様/機体各部構
想)の検討に取り込んでいる。今後も将来機への適用可能な技術の調査研究を継続
して実施し、実機開発段階で小型民間輸送機への有効性、成立性を判断した上で実
機への適用の可否判断を行う計画である。
図 3-1-2-3-2∼-5 に平成 19 年以降の適用可能技術の研究概要を示す。
Ⅰ-41
各社での試行または
中核的要素技術の研究*
小型民間輸送機等
開発調査
実機開発 プロジェクト *: 航空機用先進システム基盤技術開発や
革新軽量構造設計製造基盤技術開発など
ニーズ
シーズ
適用可能技術の
調査研究
要求仕様明確化
主要技術の開発
課題抽出
低コスト化技術
軽量化技術
信頼性向上技術
高度化技術
有効性評価
成立性評価
供試体/試行による
技術確認
実機適用に認証や
試験データが不要
新技術の実現化
効果・リスクの確認
実機レベル試験
設計データ取得
製造データ取得
コストデータ取得
本事業での取扱範囲
設計ツール認証
設計データ認証
Ⅰ-42
図 3-1-2-3-1 実機への新技術適用フロー
実機への採用可否判断
経済性向上
安全性向上
乗客満足度向上
環境負荷軽減
実
機
へ
の
適
用
表 3-1-2-3-1 適用可能技術調査研究実施項目
Ⅰ-43
テーマ
担当
「二次元コード/RFID 技術を適用したプロダクトサポート構想の研究(その 3)」
三菱重工業株式会社
日付
訂符
2008. 03. 7
研究開発の
ねらい
平成 17,18 年度の研究により、RFID を機体搭載部品に適用することによって、プロダクトサポート業務を効率的に実施することが可能であることが判明し,航空機適用に関す
る要求事項も明確にする事が出来た。
本年度の研究では、RFID の航空業界に於ける最新動向を把握し、具現化に必要な関連規格,ネットワーク構想を調査しまとめる。
さらに、UHF 帯パッシブ RFID を利用した実用化検証システムによる試行的な運用評価を実施する。
本研究によって、航空機部品のコンフィギュレーション管理への最終的な RFID 適用方法を纏めることで、プロダクトサポートの将来像を明確にすることが目的である。
成果概要及び
今後の課題
成果概要
1.最新の RFID の技術動向,規格調査及びネットワーク技術調査による活用方法の検討。
2.UHF 帯パッシブ RFID を用いた実用化検証システムによる RFID 適用効果確認
今後の課題
1.専業メーカによる航空機搭載要求を満たす RFID 開発動向に注視する事。
2.プロダクトサポート全体(エアライン/MRO/機体メーカ/サプライヤ等)を広範囲にカバーするネットワーク技術と世界標準として利用できる基準の整備の
動向を注視する必要がある。
1.航空業界に於ける RFID 活用動向の調査
航空業界の最新動向を調査,導入試験の段階的進展状況を具体的に確認した。
2.RFID 選定に必要な規格類調査及び纏め
UHF 帯 RFID の航空機に於ける規格(AS5678)を調査し,具体的に纏めた(アクティブ,セミアクティブ型を含む)。
成
3.ネットワーク技術調査及びその活用方法検討
EPC-global 及びユビキタス ID センター方式を調査し,エアライン/MRO/メーカ/サプライヤ間での
データ共有のあり方を検討した。
果
4.実用化検証システムによる評価
(a)評価方法検討
エアラインにおけるライフジャケットの日常点検/交換作業の管理実態を模擬した試験を検討した。
(b)検証システム試用による運用評価
カレンダー管理と出荷形態管理作業に RFID を適用することで、現状の管理方法に比べて作業時間
を約 60%短縮できることを評価試験によって確認した。
また、UHF 帯 RFID を適用することで、多種同時遠隔処理が可能となり,ワークロード軽減、
フールプルーフによる単純ミス防止、作業性向上が可能であることを確認した。
加えて RFID の情報をネットワークで管理する事も可能である事を確認した。
図
グローバル ネットワークによる情報共有模式図
Ⅰ-44
図 3-1-2-3-2 平成19年度 適用可能技術調査研究 成果概要(1/2)
テーマ
担当
弾性変形を考慮したウィングレット最適設計手法の研究
日付
富士重工業株式会社
訂符
2008. 3.10
研究開発 成果概要及び
のねらい
航空機へのウィングレット適用の際には、空力性能と構造質量を総合的に評価して設計を行うことが不可欠である。さらにウィングレットに作用する空力荷重等によっ
て発生する主翼弾性変形の影響も同時に評価しておく必要がある。官需活用民間機へ適用可能な技術の研究として、ウィングレットによる主翼変形量、重量影響、空
力性能の評価モデルを構築し、主翼-ウィングレット一体での空力-構造最適設計手法を構築し、ウィングレット適用による性能改善効果を評価する。
成果概要
1. CFD(Euler)と主翼構造モデルを連成させることで、空力性能、重量影響および主翼空弾変形を考慮したウィングレット効果評価モデルを構築した。
2. 構築した評価モデルを基に、主翼-ウィングレットの空力-構造最適設計を行う手法を構築した。設計変数としてウィングレットスパン、キャント角、取
付角および主翼捩り角分布を考慮、最大離陸質量を評価指標とすることで空力-構造のトレードオフを行った。最適化手法には応答曲面法を採用
し最適解探索、設計空間分析の効率化を図った。
今後の課題
3. 本研究の手法により小型民間機の主翼-ウィングレット形状の最適化を行った結果、ウィングレットを装着した最適化形状ではウィングレット無し形
状と比較し、350kg の最大離陸質量削減、9 カウントの巡航抵抗低減が得られた。
今後の課題
1. ウィングレット翼型、主翼端∼ウィングレット間のトランジションセクション等の形状を最適化することで空力干渉を抑える設計を可能にする。
2. 粘性流を模擬可能な解析コードを性能評価に適用し、設計の信頼性を向上することが必要である。
CFD と主翼構造モデルを連成させたウィングレット
評 価 モ デ ル を 多 分 野 最 適 設 計 ( MDO:Multi-Disciplinary
評価モデル
Optimization)へ発展
最適化手法の小型民間機主翼‐ウィングレット設計適用
成
Baseline
winglet
MTOW[kg]
 離陸質量 350kg 削減 (ウィングレット無し形状比)
 巡航抵抗 9ct 低減 (ウィングレット無し形状比)
果
Optimum winglet
主翼空弾変形を考慮したウィングレット評価
応答曲面法による主翼-ウィングレットの最適設計
Ⅰ-45
図 3-1-2-3-3 平成 19 年度
適用可能技術調査研究
主翼-ウィングレット最適化形状
成果概要(2/2)
テーマ
担当
「機体諸元策定に係る最適化手法の研究」
日付
三菱重工業株式会社
訂符
研究開発の
成果概要及び
ねらい 今後の課題
2009. 03. 06
全機機体計画の一環として行われる機体諸元策定作業における最適化手法について研究する。
全機機体計画にあたっては,機体の諸元をパラメトリックに振り,最適な機体諸元を探し出す作業が行われる。これはかなり大きな作業量となり,多大な工数や作業期間が
必要となっているのが現状。
高性能な機体とするため,機体計画の段階で機体諸元パラメータをあまねく振り少しでも性能に優れた機体を探し出す必要があり,このために計算機を駆使しつつ機体諸元
パラメータを自動的に最適化する手法を確立する必要がある。(近年,遺伝的アルゴリズムを用いた最適化手法の発展が目覚しく,その適用を試みる。)
成果概要
1.遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithms,GA)を利用した機体諸元自動最適化手法を構築した。
2.当該手法を単目的最適化問題に適用し,妥当な最適化結果を得た。
3.機体諸元策定最適化が短時間で実施可能となる見通しを得た。
今後の課題
1.より高度な問題への適用を狙い,当該手法の多目的最適化問題への適用を試みる。
1. 最適化手法の検討
最適化手法として,勾配法と遺伝的アルゴリズム(GA)を
調査し,GA を採用した。
2. 機体諸元策定プログラムと最適化プログラムの結合
機体諸元策定プログラムと最適化プログラムとを結合し,
自動的に最適な機体諸元が得られる手法を構築した。
図 1 GA イメージ図
成
3. 最適化計算の試行と評価
果
 YSX クラス(100-150 席)の既存機 Boeing737-200 を比較対象として機体諸元最適化
を実施した。最適化は以下の条件で試行した。計算は 1 世代あたり 16 個体とし,300
世代目まで計算した。下記以外の設計パラメータ値は,Boeing737-200 と同様とした。
目的関数; 離陸重量(最小化)
設計変数; 最大エンジン推力 / 主翼面積 / 主翼アスペクト比 / 主翼後退角 /
主翼根 翼厚比 / 尻擦角 / 離陸時フラップ舵角
制約条件; 離陸滑走距離 / 燃料タンク容積 / 上昇率(VLOF,V2) / 縦転倒角 /
横転倒角 / ピッチ・ロール・バウンダリー / 主脚スパン位置 / 主脚ストラット長
 計算結果として得られた最適解は既存機 Boeing737-200 の諸元に十分近く,本研究の最適化手法により,
妥当な最適解が得られる見通しを得た。
 本研究の手法で最適解を得るために要する時間は約 1 日(従来手法では約 1 ヶ月)であり,大幅な工数削減
効果が得られることも確認した。
図 2 最適化計算結果(進化過程)
B737-200↓
↑最適解
Ⅰ-46
図 3,表 1 最適解 vs B737-200
図 3-1-2-3-4
平成 20 年度
適用可能技術調査研究
成果概要(1/2)
テーマ
弾性変形を考慮したウィングレット最適設計手法の研究(その 2)
担当
日付
富士重工業株式会社
訂符
2008. 3.11
研 究 開発 の
ねらい
機体へのウィングレット適用の際には、空力性能と構造質量の増加を総合的に評価して設計を行うことが不可欠である。さらに、ウィングレットに作用する空力荷重等によって発生する主翼弾性変
形の影響を評価しておく必要がある。
本研究では、官需活用民間機へ適用可能な技術として、昨年度構築した主翼‐ウィングレットの空力‐構造最適設計手法に対し、ウィングレット捩り角等の設計変数および構造モデル、ウィングレッ
ト衝撃波の抑制条件を追加し、本手法による主翼‐ウィングレットの設計精度および設計品質をさらに向上させる。
成果概要及び今後の課題
成果概要
1.
2.
3.
今後の課題
1.
2.
ウィングレット最適設計モデルの検討として、ウィングレットと主翼の空力干渉によって発生する衝撃波緩和を実現可能な形状自由度を得る為、ウィングレット設計変数を昨年度の 3 変
数から 7 変数へ多変数化した。又、ウィングレット空力性能-構造質量のトレードオフ、及び、形状成立性の検討を可能にする為、ウィングレット簡易構造モデルを構築した。
最適設計手法の高度化として、ウィングレット設計変数の多変数化に応じて、最適化プロセスの一部(実験計画法、応答曲面モデル、及び、最適解探索法)を更新した。又、主翼-ウィ
ングレット内舷側インターセクション部における衝撃波と境界層の干渉による剥離現象を抑制する条件(衝撃剥離抑制条件)を最適化プロセスにおける制約条件として設定した。更
に、ウィングレット評価プロセスにおいて、ウィングレット簡易構造モデルを用いた形状成立性検討、及び、重量感度評価を行った
最適設計効果の検証として、今年度構築した手法を適用した主翼-ウィングレット形状の空力-構造最適設計を行った結果、今年度の最適解は、昨年度最適解を上回るウィングレット
性能を達成した(対H19 最適解:最大離陸質量-284kg、巡航時抵抗−4counts/対ウィングレット無し形状:最大離陸質量-634kg、巡航時抵抗−4%全機抵抗)。又、最適形状に対
し、Navier-Stokes 解析を実施し、衝撃剥離抑制条件の設定により衝撃波による境界層剥離の懸念が大幅に低減されることを確認した。
主翼構造モデルを簡易梁モデルから有限要素法モデルに更新し、本最適設計手法の更なる実用性、及び、汎用性を獲得する必要がある。
主翼-ウィングレット評価にロバスト性を考慮し、設計技術として発展させる必要がある。
結果、以下の事項を確認した
 昨年度最適解を上回るウィングレット性能を達成
成
昨年度構築した主翼‐ウィングレットの空力‐構造
最適設計手法に対し、以下の作業を実施した。
 ウィングレット評価モデルを検討(設計変数
多変数化等) ⇒図1
 最適化手法を高度化(衝撃剥離抑制条件
設定等) ⇒図2
 上記内容を手法に適用した最適設計の効
果を検証 ⇒図3

・ 対H19 最適解 : 最大離陸質量-284kg、
巡航時抵抗−4counts
・ 対ウィングレット無し形状 : 最大離陸質量-634kg、
巡航時抵抗−4%全機抵抗
 衝撃剥離のリスクが大幅に低減
(a)最適化結果−H20 最適形状− (1G 巡航形状:M=0.8, CLWB=0.57)
<Cp>*
TOW[kg]
最適解
果
Cp
-1.2
(H20最適形状)
(H19最適形状)
(b)衝撃剥離の抑制
−ウィングレット内舷側
Cp分布の比較−
(a) 評価関数(最大離陸質量)
図1.ウィングレット設計モデルの検討−設計変数多変数化−
0
(b) 制約条件(衝撃剥離条件)
図2.最適設計手法の高度化−応答曲面の様子−
Ⅰ-47
図 3-2-2-3-5 平成 20 年度 適用可能技術調査研究 成果概要(2/2)
図3.最適設計効果の検証
3-1-3 特許出願状況等
平成 20 年度までに実施してきた成果の学会または雑誌への発表件数は 17 件、特
許出願件数は 1 件である。発表状況を表 3-1-3-1 に、特許出願状況を表 3-1-3-2 にま
とめる。
Ⅰ-48
表 3-1-3-1
No.
1
2
3
4
5
タイトル
発表/掲載時期
航空機主要構造の自動位置決め技術開
発
構造・空力最適化主翼に対する主翼構造
質量推算
航空機概念設計時における簡易ターボフ
ァンエンジン重量及び性能推算について
将来航空機に適用する新技術の開発に
ついて
航空機主翼構造部品 NC プログラム用
モデル自動修正システムの開発
2003 年
10 月 8 日∼10 日
2003 年
10 月 8 日∼10 日
2003 年
10 月 8 日∼10 日
2003 年
10 月 8 日∼10 日
2003 年
10 月 8 日∼10 日
2003 年
10 月 8 日∼10 日
2003 年
10 月 8 日∼10 日
2003 年
10 月 8 日∼10 日
6
VM 技術による低コスト組立手法の研究
7
民間機開発に関わるプロジェクト管理手法
の動向
8
低コスト設計生産プロセスの研究
9
10
11
航空機主要構造の自動位置決め技術開
発
機内空調/燃料タンク防爆システムの
研究
トリムを考慮した小型民間機主翼の構造・
空力最適化
2004 年 3 月
学会または雑誌による発表状況(1/2)
発表先
寄稿雑誌、
学術会議の名称 等
担当
会社
作業年度
第 41 回飛行機シンポジウム
KHI
H14 年度
第 41 回飛行機シンポジウム
FHI
H14 年度
第 41 回飛行機シンポジウム
KHI
H14 年度
第 41 回飛行機シンポジウム
−
−
第 41 回飛行機シンポジウム
FHI
H14 年度
第 41 回飛行機シンポジウム
MHI
H14 年度
第 41 回飛行機シンポジウム
JADC
H11 年度
∼14 年度
第 41 回飛行機シンポジウム
FHI
H14 年度
(社) 日本航空技術協会、
「航空技術」 2004 年 3 月号
KHI
H14 年度
KHI
H15 年度
省燃費先進空調システムの研究
FHI
H15 年度
主翼重量推算プログラムの高度化
(その4)
2004 年
第 42 回飛行機シンポジウム
10 月 8 日∼10 日
2004 年
第 42 回飛行機シンポジウム
10 月 8 日∼10 日
JADC からの外注作業
作業内容
低コスト主要構造結合法の研究
(その 3)
主翼重量推算プログラムの高度化
(その 3)
設計 エンジン概念設計技術の研究
(その 2)
−
設計 デジタル・データを活用した
設計製造プロセスの研究
VM 技術による低コスト組立手法の
研究
全機統合技術向上にかかるソフトウ
エア調査
デジタル・データを活用した設計
製造プロセスの研究
YSX 低コスト主要構造結合法の
研究 (その 3)
Ⅰ-49
表 3-1-3-1
No.
12
13
タイトル
Aero-Structural Wing Optimization for
small Civil Airplane
先進防氷システムの研究/非ブリード防氷
システムのフィジビリティスタディ
14
燃料タンク防爆システムの研究
15
塗膜表面材改質による着氷特性の影響
16
フラップスケジューリングによるミッション性
能の最適化
17
弾性変形を考慮したウィングレット最適設
計手法の研究
学会または雑誌による発表状況(2/2)
発表/掲載時期
発表先
寄稿雑誌、
学術会議の名称 等
2005年
35th AIAA Fluid Dynamics
6月6日∼9日
Conference and Exhibit
2005年
10月12日∼14日
2005年
10月12日∼14日
2006年
10月18日∼20日
2007年
10月10日∼12日
2008年
11月20日∼21日
JADC からの外注作業
担当
会社
作業年度
FHI
H15 年度
第 43 回飛行機シンポジウム
KHI
H16 年度
先進防氷システムの研究
第 43 回飛行機シンポジウム
KHI
H16 年度
燃料タンク防爆システムの研究
第 44 回飛行機シンポジウム
FHI
H17 年度
胴体着氷低減を目的とした防氷技
術の研究
第 45 回飛行機シンポジウム
FHI
H18 年度
フラップスケジューリングによるミッシ
ョン性能の最適化(その2)
第 22 回飛行機シンポジウム
国際セッション
FHI
H19 年度
弾性変形を考慮したウィングレット最
適設計手法の研究
作業内容
主翼重量推算プログラムの高度化
(その4)
Ⅰ-50
表 3-1-3-2
特許出願状況
JADC からの外注作業
No.
1
タイトル
航空機の電源システム
出願国/出願年
日本/2005 年
権利の確定
担当
会社
作業年度
特開 2007-15423
新明和
H16 年度
作業内容
将来電源システムの研究
Ⅰ-51
3-2 目標の達成度
本事業では、平成 14 年度から YPX を開発対象として、市場動向調査、機体仕様・
機体各部構想の検討、基礎評価試験及び、事業計画検討等のプログラム調査研究を
実施している。また、要素技術及び、設計/製造プロセスに関する適用可能技術の
調査研究等も実施した。更に、近年の経済危機や燃料高騰の状況も踏まえて、目標
機体仕様についても COC 低減ターゲットを見直してそれを実現できる機体計画に
見直しを行っている。
平成 18 年度からは YCX を開発対象に加えて主体的に検討を進め、その市場動向
調査、要求仕様の検討、貨物室内仕様案の検討、搭載貨物の検討等について検討を
実施した。オーバーサイズ貨物市場はニッチな市場ではあるが通常貨物よりも大き
な伸びが予測されており、また市場ニーズを反映した貨物室仕様等を検討すること
ができた。
(1) YPX
要素技術
目標・指標
(中間評価時点)
成果
達成度
市場調査
世界のエアライン
等及びその動向を
調査して目標とす
る市場の存在の可
能性を確認すると
共に、市場要求等を
調査して機体計画
等に反映する。
世界的な経済危機により旅客市場
は落ち込んでいるが、長期的には
年率 5%弱の伸びを示すものと予
測されており、YPX クラスの市場に
ついても今後 20 年間で約 9400 機
の新規需要が見込まれている。
燃料の高騰、経済危機等の影響か
ら燃費/運航コストの良い機体が
望まれている。
達成
機体計画
目標機体の市場設
計要求を見直し、そ
れに基づく機体構
想計画をまとめる。
近年のニーズに合わせて、COC 低減
目標を 20%に引き上げて、それを
実現可能な機体構想について検討
を行った。
達成
適用可能技術
の調査研究
( YPX 及 び
YCX 共通)
目標とする機体構
想を実現するため
に必要な適用技術
に係わる研究を実
施する。
開発時の機体に盛り込むべき、空
力設計、構造設計、システム設計
並びに製造組立技術に関わる各種
研究を実施した。
達成
Ⅰ-52
要素技術
目標・指標
(中間評価時点)
成果
総合調査研究 プログラムの事業 事業化に向けて、その前提、事業
( YPX 及 び 計画、事業性、それ 立上げのシナリオ、開発計画等の
YCX 共通)
に係わる必要事項 初期の事業計画について検討を実
について検討する。 施した。また、型式証明取得のた
めの検討や COC 低減に関わる調査
検討やメンテナンスコスト低減に
関わる調査検討を実施した。
達成度
達成
Ⅰ-53
(2) YCX
要素技術
目標・指標
(中間評価時点)
成果
達成度
市場調査
世界の貨物エアラ
イン等及びその動
向を調査して目標
とする市場の存在
の可能性を確認す
ると共に、市場要求
等を調査して機体
計画等に反映する。
航空貨物については、旅客量より
も伸びが大きいと予測されてお
り、中でもオーバーサイズ貨物市
場はニッチな市場ではあるが更な
る伸びが予測されている。現状の
オーバーサイズ貨物機としては新
規開発の計画がなく、今後の新規
の貨物機が期待されている。
達成
機体計画
目標機体の市場設
計要求を見直し、そ
れに基づく機体構
想計画をまとめる。
市場ニーズを盛り込んで機体構想
を設定、見直しを行うと共に、様々
な搭載貨物の検討、また貨物室の
オプション装備についても検討を
実施した。
達成
Ⅰ-54
4.事業化、波及効果
4-1. 事業化の見通し
事業化に向けて事業計画のスタディを行い、以下のような事業計画(案)を検討し
した。
 事業化前提
国内企業が主体の日の丸飛行機の開発による事業展開とする。つまり、国
内での最終組立および飛行試験、JCAB での T/C 取得(FAA での Validation)、
セールスやサポート事業の独自展開を事業化前提とする。
 事業立ち上げシナリオ
標準シナリオでは、あまり多くはないローンチ受注、ある程度の運航実績
ができてから受注/販売が伸び始めるという事業を想定とする。
 スケジュール検討
事業化決心を経て事業主体を設立、その事業主体が顧客であるエアライン
に対して ATO を行い、ローンチカスタマー契約を得てローンチに至る。ロ
ーンチを受けて T/C 申請を行い、設計→初飛行→飛行試験→T/C 取得→初号
機納入という流れでの事業スケジュールを作成した。(図 4-1-1 参照)
 人員計画
セールスおよびサポート業務で必要となる人員数を年度単位で見積もっ
た。セールス業務の人員は、EIS の数年前からローンチカスタマー候補捜し
やセールス調査の為に必要であり、ローンチ後は本格的なセールス活動を順
次に世界各地域へと展開していく中で増員していく。サポート業務の人員は、
EIS の数年前から整備&運航マニュアル作成の為に必要であり、EIS 後は世
界での運航機材数の増加に従って順次増員していく。
 受注/販売計画
緩やかに量産を立ち上げることとし、1 年目 12 機、2 年目 48 機、以後は
年間 96 機の受注/販売が継続するという計画とした。
Ⅰ-55
事業化検討
201X-8
年度
1
2
3
設計
201X-7
4
1
2
3
201X-6
4
1
2
事業化
決心
▽
3
事業主体
設立
▽
Feasibility Study
201X-5
4
1
ATO
▽
2
飛行試験
201X-4
3
4
1
T/C申請
▽
詳細仕様策定
2
3
201X-3
4
1
2
3
201X-2
4
1
2
3
仕様
確定 レイアウト図
▽
▽
製造図
▽
201X-1
4
1
2
3
201X
4
1
2
201X+1
3
4
1
2
3
201X+2
4
1
2
3
初飛行
▽
設計 ・ 試験
治工具製作/量産工場建設
飛行試験機製造
開発/製造
量産販売
初号機納入
▽
量産機製造
販売体制
立ち上げ
▽
セールス
ローンチ
カスタマー契約
セールス拠点
稼働
▽
▽
市場調査、販売計画/体制検討
T/C取得
▽
販売活動
実機飛行デモンストレーション
プロサポ体制
立ち上げ
▽
プロダクト
サポート
サポート計画、サポート体制検討
トレーニング
センター稼動
▽
整備・運航詳細仕様
(ドラフト)
▽
デリバリー
センター稼動
▽
サポート用ソフトウェア&設備開発
マニュアル製作&維持
パイロット/整備士へのトレーニング
補給/運行/整備支援/フィールドサービス
採用技術選定
▽
要素技術
研究
適用要素技術研究
適用要素技術認証用試験/製造方法確立
新技術
商品化完了
▽
改良型機/後継機適用要素技術研究
図 4-1-1: 事業スケジュール
4
Ⅰ-56
4-2
波及効果
開発調査事業で得られた個別成果は、さまざまな分野に波及している。その一
例を図 4-2-1 に示す。
波及効果については、個々の技術成果のみならず、これに携わったメンバーが
様々な分野で活躍しており、これらのメンバーを通じて開発事業の成果の波及効
果が計られていると考える。ちなみに財団法人 日本航空機開発協会及び民間航
空技術サービス株式会社にて、本事業に携わった人数のみでも延べ 60 名余りと
なる。
Ⅰ-57
胴体着氷低減
防氷技術
空力設計/
解析技術
機体胴体外板表面を改質する
ことで 氷の付着を防ぐ技術
官需機を活用した民間機の
全機構想の検討
燃料タンク防爆システムの研究
数値解析シミュレーション(CFD)を
活用した、窒素富化ガスを用い
た燃料タンク内不活性化による
防爆システムの設計ツールの整備
とその高精度化
中央翼タンク
タンク空間内酸素分布
風力ブレード
(試適用)
新幹線
解析技術
架線ビーム
(試適用)
Southwest
Windpower HP
より
リニアモーターカー先頭車両
(将来)高速鉄道車両の空力設計/解析
Ⅰ-58
図 4-2-1 研究成果の波及分野
航空機/鉄道車両客室内の温湿度、
流速、炭酸ガス等の空間分布
5.
研究開発マネージメント・体制・資金・費用対効果等
5-1 研究開発計画
本事業は、2−1 項の研究開発目標を達成すべく、年度毎に計画をたてて実施
してきた。全体実施計画を図 5-1-1 に、開発調査作業の主要な流れを図 5-1-2 に
示す。
平成 14 年度から、防衛省で開発中の次期固定翼哨戒機(P-X)を活用した 100
∼150 席クラスの YPX の開発を目指した開発調査を開始し、平成 18 年度からは、
同じく防衛省で開発中の次期輸送機(C-X)を活用した YCX の開発を目指した
開発調査を主体的に実施してきた。
項目
H14/2002
H15/2003
H16/2004
H17/2005
H18/2006
H19/2007
H20/2008
H21/2009
旅客予測/機材需要予測/エアライン調査
YPX
(米・欧・亜エアライン調査、市場動向調査等を各年度継続的に実施 )
販売予測
市場調査
(4−1−1)
貨物量・機材需要予測/貨物エアライン等調査
YCX
(米・欧・亜貨物エアライン等調査、市場動向調査等を各年度継続的に実施
)
(米・欧・亜エアライン調査、市場動向調査等を各年度継続的に実施 )
販売予測
市場設計要求
機体計画
(4−1−2)
機体構想検討
YPX
基礎評価試験
機体構想検討
YCX
適用可能技術の
調査検討
(4-1-3)
(貨物室オプション装備の検討、搭載貨物の検討、貨物室火災等級要求等の検討 )
(6件)
(7件)
(6件)
適用可能技術の調査研究
(5件)
(2件)
(2件)
(2件)
(3件)
(安全性・経済性・環境・乗客満足度・開発/製造等に関する研究を各年度実施)
事業計画検討
総合調査研究
(4-1-4)
事業化評価
事業費 (百万円)
297
246
290
300
334
244
195
(189)
補助金 (百万円)
148
123
145
150
167
122
98
(95)
図 5-1-1 作業年度展開
Ⅰ-59
旅客予測
エアライン調査
市場調査
機材需要予測
市場設計要求
販売予測
機体計画
適用可能技術の
調査研究
適用可能技術の
調査研究
機体構想検討
事業計画検討
総合調査研究
事業化評価
《 実機開発段階へ 》
Ⅰ-60
図 5-1-2 全体作業の流れ
5-2 研究開発実施者の事業体制・運営
小型民間輸送機等開発調査は、経済産業省からの補助事業であり、これまでの機
体開発等に多くの経験を有する財団法人「日本航空機開発協会」が企画開発及び設
計を行うものである。
下図に事業体制を示す。
経済産業省
補助事業
(財)日本航空機開発協会(JADC)
モニタリング
評価委員会
分科会
・企画分科会
・技術・生産分科会
・市場分科会
ワーキング・グループ
・全機統合・製造ワーキング・グループ
・市場調査ワーキング・グループ
・事業化ワーキング・グループ
三菱重工業
川崎重工業
富士重工業
日本飛行機
新明和工業
株式会社
株式会社
株式会社
株式会社
株式会社
図 5-2-1
事業体制
小型民間輸送機等開発調査を円滑且つ、確実に実施するため図 5-2-2 の流れで事
業を運営する。
各年度の事業は、企画分科会において審議、了承された計画に基づいて実施する。
開発調査を円滑に進めるための組織として、技術・生産分科会/市場分科会/ワー
キング・グループを設置し、詳細作業計画の立案、作業実施及び、報告書作成等の
本研究開発作業を実施している。作業結果は企画分科会において審議、了承され、
毎年度末に外部有識者による評価を実施(モニタリング評価委員会)し、次年度以
降の計画へ反映している。
Ⅰ-61
企画分科会
作業計画了承
技術・生産分科会/市場分科会/
ワーキング・グループ
詳細作業計画の立案
ワーキング・グループ作業及び
外注会社作業の実施
技術・生産分科会/市場分科会/
ワーキング・グループ
報告書作成
企画分科会
作業結果大要の了承
モニタリング評価委員会
事業成果をモニター/評価
図 5-2-2
事業運営フロー概要
5-3 費用対効果
旅客機、大型輸送機の開発には膨大な開発費と期間が必要となるが、官需機をベ
ースに民間転用することによって、防衛省で開発された技術やデータ、また生産の
ための製造設備の活用が可能となり、より効率的な開発が実行できると考えられる。
Ⅰ-62
5-4 変化への対応
マーケットの成長、環境への関心の高まりや燃料価格の変化など、社会情勢の変
化に伴う航空機に対するニーズの変化を調査、検討し機体形態にフィードバックす
ることで、社会により幅広く受け入れられる機体開発を目指している。
また、先進の航空機関連技術研究を行って取り入れることにより、競合他機に対
する優位性を確保すべく計画している。
Ⅰ-63
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