...

OTC 店頭デリバティブ規制改革 - 国際的な議論を中心に

by user

on
Category: Documents
28

views

Report

Comments

Transcript

OTC 店頭デリバティブ規制改革 - 国際的な議論を中心に
OTC 店頭デリバティブ規制改革
- 国際的な議論を中心に平成27年6月12日
金融庁 総務企画局 参事官
白川 俊介
* 本資料において、意見にわたる部分は、説明者の個人的な見解であり、金融庁の公式見解を
示すものではない。
1. 背景
1
G20 ピッツバーグ・サミット (2009年9月)
1. 標準化されたすべての店頭(OTC)デリバティブ契約は、
適当な場合には、
a) 取引所又は電子取引基盤を通じて取引され、
b) 中央清算機関(CCP)を通じて決済されるべきである。
2. 店頭デリバティブ契約は、取引情報蓄積機関(TR)に報告
されるべきである。
2
G20 カンヌ・サミット最終宣言
(2011年11月) (抜粋)
●店頭デリバティブ市場の改革は,より強じんな金融システムを構築するために非常に
重要である。2012年末までに,標準化されたすべての店頭デリバティブ契約は,適当な
場合には取引所又は電子取引基盤を通じて取引され,中央清算されるべきである。店頭
デリバティブ契約は,取引情報蓄積機関に報告され,中央清算されない契約は,より高
い自己資本賦課の対象とされるべきである。・・・我々は,バーゼル銀行監督委員会
(BCBS)及びIOSCOに対して,他の関係機関とともに,2012年6月までに,中央清算さ
れない店頭デリバティブに対する証拠金に係る基準を市中協議用に策定するよう求める
とともに,FSBに対して,店頭デリバティブに関する我々のコミットメントの達成に向けた進
ちょく状況の報告を継続するよう求める。
3
G20 サンクトペテルブルグ・サミット
(2013年9月) (抜粋)
● 我々は,合意されたOTCデリバティブ改革を実施すべく加盟国が確認した行動やコミットしたス
ケジュールを含め,OTCデリバティブ改革の進捗状況をまとめたFSB報告書を歓迎する。我々は,
残る規制の抵触,不整合,ギャップ及び重複の解決に向けた大きくかつ建設的な一歩として,OTC
デリバティブ改革に係るクロスボーダー問題に関する,主要当局による直近の一連の合意を歓迎し,
枠組みが整備され評価が可能となった時点で,これらの合意が早急に実施されることを期待する。
我々は,国・地域及び規制当局が,本国の規制枠組みを十分尊重しつつ,効果の類似性に基づい
て,国によって差別されることなく相互の規制及び執行枠組みの質により正当化されるときは,相
互の規制に委ねることを可能とすべきとの見解で一致する。我々は規制当局に対して,FSBおよび
OTCデリバティブ規制当局者グループと協力して,クロスボーダー規制枠組みの重複や規制回避
に関する残る問題を解決するためのスケジュールを報告するよう求める。
4
G20 ブリスベン・サミット 首脳コミュニケ
(2014年11月) (抜粋)
●世界経済の強じん性及び金融システムの安定性の強化は,成長及び発展を支える上
で極めて重要である。我々は,金融危機に対応して我々が行った中核的なコミットメント
の重要な面を達成した。銀行の資本及び流動性ポジションを改善し,デリバティブ市場を
より安全にするための我々の改革は,金融システムにおけるリスクを低減させる。・・・し
かし,より強固で,より強じんな金融システムを構築するため,決定的に重要な作業は
残っている。現下の課題は,新たなリスクに引き続き注意を払いつつ,我々の政策枠組
みの残っている要素を最終化することであり,また,合意した金融規制改革を完全に実
施することである。我々は,規制当局に対し,合意されたG20のデリバティブ改革の迅速
な実施における更なる具体的な進展の達成を要請する。我々は,国・地域が,サンクトペ
テルブルク宣言に則り,正当化されるときには,相互の規制に委ねることを奨励する。
我々は,これらの改革の実施及び効果について報告するというFSBの計画,FSBの今後
の優先事項を歓迎する。我々は,国家債務再編のプロセスの秩序及び予見可能性を強
化するためになされた進展を歓迎する。
5
FSB - 店頭デリバティブ規制改革 1)- 中央清算機関(CCP)を通じた清算集中の促進
2)- 電子取引基盤(ETP)を通じた取引の促進
3)-資本規制及び証拠金規制の実施
4)- 金融市場インフラ(FMI)の破綻・再建処理計画の策定
5)- クロスボーダー取引に対する規制の適用における相互依拠
6)- 規制の明確化
7)- 取引情報蓄積機関(TR)への報告の促進
6
店頭デリバティブ主要規制当局者会合(ODRG):
クロスボーダー規制の抵触・重複等への対処に関する報告書(2013年9月)
OTCデリバティブ改革に係るクロスボーダー問題に関する、店頭デリバティ
ブ主要規制当局者会合(ODRG)による合意の主な内容(2013年9月)は、
下記の通り。
①同等性や代替的コンプライアンス評価を行うに当たって、対象当局等との協議・
コミュニケーションは不可欠である。
②柔軟で規制の効果に着目したアプローチが同等性等の最終評価の基本となる
べき。
③電子取引基盤の利用義務又は清算集中義務に係る当局間の規制ギャップに
対しては、より厳しいルールを適用。
④(1)取引情報蓄積機関への報告(特に取引相手情報に関する報告)及び
(2)当局による取引情報蓄積機関保有データへのアクセス
に対する障害は除去されるべき。
⑤外国業者に対して、適切な移行措置及び合理的で限定的な移行期間が
設置されるべき。
7
2. 日本における実施
8
我が国における店頭デリバティブ規制改革
2010
2012
5月
9月
11月
・清算集中義務
2012年11月より施行
・取引情報保存・
報告義務
・電子取引基盤の
利用義務
改正金商法の
公布(1)
2012年11月より施行(注)
改正金商法の
公布(2)
2015年9月1日より施行予定
(注)2012年11月より保存義務を実施(報告は2013年4月より開始)
2014年5月より金融商品取引業者等から報告を受けた店頭デリバティブ取引情報の集計結果を公表
9
証拠金規制と清算集中義務
① 標準化された店頭デリバティブ取引については、中央清算機関を利用(清算集中義務)。
② 中央清算機関を利用しない店頭デリバティブ取引については、取引参加者が証拠金(担保)を授受
(証拠金規制)。
①清算集中義務
A
金融危機時のデリバティブ
市場の問題点
A
B
中央清算機関
B
C
D
中央清算機関の利用が促進され影響の波及を遮断
C
市場の誰かが破綻した場合、
取引相手を通じてその影響が
伝播する可能性(
)
D
②証拠金規制
(日本の規制案は2014年7月に公表)
A
C
B
証拠金
証拠金
D
市場の誰かが破綻しても、取引相手は証拠金を受領し
ているため、取引相手を通じた影響の伝播は回避
10
中央清算機関 (CCP)を通じた清算集中
対象商品
○ 円建て金利スワップ(プレーンバニラ型で変動金
利の対象指標をLIBORとするもの)
○ CDSの指数銘柄であるiTraxx Japan(国内清
算集中)
⇒今後他の金利スワップ等への拡大も検討予定
11月
2012年
○ 信託勘定に属するものとして経理される
取引を追加
7月
清算集中第1段階
2013年
○ 円建て金利スワップ(変動金利の対象指標
をTIBORとするもの)を追加
2014年
対象者
○ 清算集中対象商品を清算する清算機関の
直接参加者である大手証券会社などの金融
商品取引業者等(金商業者等)
12月
12月
12月
清算集中第2段階
2015年
2016年
2017年
○ 店頭デリバティブ取引残高3000億
円以上の金商業者等を追加
○ 保険会社を追加
○ 店頭デリバティブ取引残高1兆円以上の
金商業者等を追加
11
取引情報蓄積機関 (TR)への報告
目的=店頭デリバティブ取引の情報の集約
当局
※我が国では、JPXにおいて、2014年8月1日よりLEI(Legal
Entity identifier:取引主体識別子付番を開始。
TR
取引情報
取引情報
取引情報
取引情報
取引情報の保存・報告の対象

対象商品:
○ 金利、為替、株式に関する店頭デリバティブ取引の先渡(注1)・ オプション(注2)・スワップ、
クレジットに関する店頭デリバティブ取引(CDS等)
(注1)約定日から受渡日までの期間が2営業日以内のものを除く、(注2)権利行使期間が2営業日以内のものを除く

対象者:
○ 第一種金融商品取引業者、登録金融機関のうち銀行、商工組合中央金庫、日本政策投資銀行、
農林中央金庫及び信金中央金庫、及び保険会社
12
取引情報蓄積機関 (TR)への報告
当 局 (金融庁)
清算機関
(ⅰ) 清算集中の対象
取引情報
蓄積機関 (注)
(ⅱ) 取引情報蓄積
機関を利用して
いる場合
(ⅲ) 取引情報蓄積機関
を利用していない
場合
金融機関(金融商品取引業者等)
(注) DDRJ (DTCCデータ・レポジトリー・ジャパン/米国DTCCの子会社)を取引情報蓄積機関として指定
13
電子取引基盤(ETP)を通じた取引義務
〇 一定の店頭デリバティブ取引を行うに当たり、金商業者等に電子取引システムの
使用を義務付けることにより、取引の透明性の向上を図る。
金融
機関
金融
機関
金融
機関
第一種金商業者
電話やボイス・
ブローカーを通
じた取引
金融
機関
金融
機関
一般市場参加者・当局
取引価格等の容易かつ広範な入手が困難
金融
機関
電子取引システム
金融
機関
円金利スワップ
を想定
取引情報の公表義務
金融
機関
一般市場参加者・当局
取引価格等の容易かつ広範な入手が可能
取引の公正性・透明性の向上
(注) なお、今般の店頭デリバティブ取引規制は、海外業者との取引が相当の割合を占めていることにも鑑み、海外の電子取引
システムの提供者に対して、国内への参入を容易にする許可制度を整備。
14
電子取引基盤(ETP)を通じた取引義務
 実施時期:
・ 2015年9月1日から実施
 電子取引基盤使用義務の対象取引:
・ プレーンバニラ型の円金利スワップ(詳細は告示で規定予定)
 電子取引基盤使用義務の対象者:
・ 店頭デリバティブ取引の取引量(残高、頻度)が多い金融商品取引業者等
具体的には、店頭デリバティブ取引の残高が6兆円以上の残高を有する金融商品取引
業者等同士の取引を対象。

電子取引基盤の提供を行う者が備えるべき要件:(ブロックトレードについては適用しない)
・ 板を具備すること
・ 板又は3者以上への引合い(RFQ:Request For Quote)において取引を成立さ
せること
電子取引基盤の提供を行う者による取引情報の公表:
・ 原則として公表は、取引成立後速やかに行うこと(ブロックトレードについては、翌営業日中)

・ 公表項目は、約定日時、商品区分、取引量等(取引当事者の個別名称
といった特定の取引を容易に識別することができるような情報は除外)
15
電子取引基盤(ETP)使用義務の対象取引(告示案:5月29日公表)
 金融庁は、電子取引基盤使用義務の対象取引に関する告示案にかかるパブリックコメント手続
を実施中(コメント期限は6月29日)。
 告示案における対象取引は、固定金利と変動金利の交換を行う円金利スワップであって、日本
証券クリアリング機構が清算対象とするものとして、以下の要件を満たすもの。
対象通貨
日本円
対象金利
6か月円LIBOR
固定金利
支払周期
金利の日数計算方法
6月
利息の計算期間の実日数を365で除したもの
変動金利
支払周期
金利の日数計算方法
対象年限
6月
利息の計算期間の実日数を360で除したもの
5、7、10年
* 一部の要件は省略。
16
証拠金規制(BCBS-IOSCOにおける改訂後の枠組み)
BCBS-IOSCOは、2015年3月、証拠金規制導入に向けたスケジュールを9か月延期。金融庁は、この改訂スケジュール
を念頭に置きつつ、国内規制を最終化する予定。

規制対象の範囲:(金融庁案)
対象者は清算集中義務の対象者と同一とし、一定の取引量を有する金商業者 等同士の非清算店頭デリバティブ
取引が規制対象

証拠金の種類及び実施時期:
当初証拠金
変動証拠金
17
中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制 (各国規制案の比較)
* 下記記載は、各法域の市中協議案を元に作成
WGMR 最終報告書
(2013年9月)
対象主体
当初証拠金の
段階適用
Financial Firms and
Systemically Important Non
Financial Entities
2015年12月 3兆ユーロ
2016年12月 2.25兆ユーロ
2017年12月 1.5兆ユーロ
2018年12月 0.75兆ユーロ
2019年12月 80億ユーロ
日本規制案
(2014年7月)
欧州規制案
(2014年4月)
米国規制案
(2014年9月)
金商業者等
Financial Entity 及びNon
Financial
Entity(conditional)
Swap Entity 及び
Financial End User
2015年12月 3兆ユーロ
2016年12月 2.25兆ユーロ
2017年12月 1.5兆ユーロ
2018年12月 0.75兆ユーロ
2019年12月 80億ユーロ
2015年12月 4兆ドル
2016年12月 3兆ドル
2017年12月 2兆ドル
2018年12月 1兆ドル
2019年12月 30億ドル
2015年12月
2016年12月
2017年12月
2018年12月
2019年12月
420兆円
315兆円
210兆円
105兆円
1.1兆円
(SEは0)
変動証拠金
適格担保
現金、国債、金 等
現金、国債、金 等
現金、国債、金 等
現金
(米ドルもしくは取引の決
済通貨に限定)
8%
通貨ミスマッチ時の
追加ヘアカット
8%
8%
8%
(米ドル現金のみ、常時、
8%不要)
担保決済タイミング
-
遅滞なく
T+1
T+1
担保集中制限
過度に集中させない
―
同一発行体50%以内
―
グループ内取引
各法域の枠組みによる
対象外
当局承認により対象外
対象
18
3. 二国間での議論
19
米国CFTCとの議論
これまでの取組み
○ 同等性評価(代替的コンプライアンス措置) (2013年12月)
→企業体レベル規制において、概ね同等と評価
○ 監督協力の覚書( Memorandum of Cooperation (MOC))の締結
(2014年3月)
今後の課題
○ 代替的コンプライアンス措置 (TRへの報告義務、清算集中義務)
○ 日本証券クリアリング機構(JSCC)のDCO(Derivatives Clearing
Organization)登録 に向けた交渉
○ 電子取引基盤の利用にかかる規制の重複を避けるための早期の協議
20
欧州(EC/ESMA)との議論
欧州域内の金融機関(欧州金融機関の日本支店を含む)に清算サービス を
提供する欧州域外国清算機関(CCP)については、EC (欧州委員会)による母
国規制と欧州規制との同等性評価を前提にしたESMA(欧州証券市場監督局)
の認証が必要。
○ 2014年10月30日、ECはCCP法令等に関する同等性評価の結果を公表。
日本に対しては、「同等」の評価がなされている。
○ 2015年2月18日、ESMAと当庁との間で、CCPに関する監督協力枠組みの
MOCを締結。
○ 2015年4月29日、JSCC及びTFXがESMAから認証を取得。
21
4. 課題
22
規制の実施段階における課題
1. クロスボーダー問題の解決
- 規制の調和
- 市場の分断化のリスクの防止
- 少数の大規模金融機関・市場による支配の防止
2.規制改革の効果の評価・対応
- 規制の重複
- 意図しない結果
- 規制のずれ・矛盾 (例:清算集中義務とレバレッジ比率規制)
23
デリバティブ分野における今後の国際的な議題
1. CCPのシステミックリスクへの対応
― 頑健性
ストレス・テスト
証拠金
スキン・イン・ザ・ゲーム (参加者破綻対応財源への自己資本拠出)
― 再建計画
― 破綻処理可能性
― 相互依存性
2. 取引報告データの標準化・集約
― データの標準化 (UTI, UPI, LEI等)
― 国境を越える取引報告に対する法的障害の除去
24
Fly UP