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トップメッセージ
2011年は、3月に東日本大震災、10月にはタイの大洪水と、歴史的な大規模災害からの復旧、復興に奔走した1年でした。2度の災害により 四輪事業を中心に国内外で操業停止を余儀なくされ、世界中の多くのお客様や地域の方々にご迷惑をおかけしたことを、この場を借りてお 詫び申し上げます。 タイの洪水被害では、全社を挙げて急ピッチで復旧に取り組み、昨年11月末に水が引き始めてからわずか4ヵ月後の2012年3月26日に四輪 車の生産を再開することができました。震災と水害による遅延を早期に挽回し、一気呵成に成長軌道に乗せるべく積極的な取り組みを進め ていきます。 円高基調が続く為替動向や欧州金融危機による世界経済への影響など、ビジネスを取り巻く環境は厳しさを増していますが、お客様をはじ めステークホルダーの皆様に喜ばれる商品や技術はもちろん、あらゆる企業活動を通じて世界中のマーケットで存在感をさらに強めていき たいと考えています。 Hondaがやるべきこと Hondaは一昨年、2020年に向けた経営の方向性を「良いものを早く、安く、低炭素でお客様にお届けする」と定め、その方向性に基づいて、昨 年、『「自由な移動の喜び」と「豊かで持続可能な社会」の実現』をめざす「Honda環境ビジョン」を発信しました。Hondaは創業以来「自由な移 動の喜び」を実現するために「パーソナルモビリティ」の開発に取り組んできました。「移動の喜び」とは自ら操る楽しさはもちろんのこと、移動 することでさまざまな夢や感動を発見し、“ワクワクドキドキ”を感じてもらうことであると思っています。 一方、「豊かで持続可能な社会」の実現にむけては、CO2の排出量低減が、経営資源を集中させて取り組むべき最重要課題のひとつと考え ています。 Hondaは環境ビジョンで掲げたこの2つのテーマの実現にむけ、環境や安全性能だけでなく、Hondaのアイデンティティを際立たせた“ワクワク ドキドキ”する商品や技術を他に先駆けて提案していきます。 “良いもの”の実現にむけて 昨年は、ステークホルダーのニーズに応え、ビジョンを実現するために、多彩な商品と技術の提案をおこないました。四輪ではパワートレイン を刷新し、「FUN」と「環境」を高い次元で両立した次世代の四輪環境技術群「EARTH DREAMS TECHNOLOGY」を発表しました。環境負荷の さらなる低減を図るこの技術を、2011年11月に発売した新型軽自動車「N BOX」を皮切りに順次適用拡大し、3年以内に各カテゴリーで燃費 No.1をめざしていきます。 二輪においても、走る楽しさと大幅な燃費向上を実現した新型700ccエンジン搭載のニューミッドシリーズの市場投入に加え、燃費性能をさら に高めた次世代125ccスクーター用エンジンを、最大市場の東南アジアだけでなく、欧米にも展開していきます。 2011年は、汎用製品の累計生産台数が1億台を突破した年でもあります。非常時の停電等で威力を発揮するLPGを燃料とするインバーター 搭載発電機を発売、燃費性能に優れ、環境負荷の低減を図った新開発のポータブル発電機の新興国市場への投入も進めていきます。ま た、自動車業界においてはすでに国内トップとなる合計3.5メガワットの(株)ホンダソルテック製薄膜太陽電池を日本国内の各事業所に設置 しました。さらに2013年稼動予定の寄居工場では自動車工場としては最大となるメガソーラー発電システムを設置していく予定です。 昨年は、モビリティを活用しながら熱と電気といった生活エネルギーを家庭で創り家庭で消費する「家産・家消」の取り組みを紹介しました。今 年度はさらに災害時にエネルギーと移動を自前で確保できるなど、家庭のエネルギー需給を総合的にコントロールするHondaスマートホーム システムを導入した実証実験ハウスをさいたま市に完成させました。 これらの活動を基盤にすることで、電気をつくるときから車が走行するときまでのWell-to-WheelでCO2排出量が「ゼロ」、エネルギー・マネー ジメント技術によるエネルギーリスクが「ゼロ」、リデュース・リユース・リサイクルの3Rで廃棄物が「ゼロ」という「トリプルゼロ」の考え方をもと にHondaは、自らの技術と事業活動で環境負荷ゼロ社会を可能とする未来像を思い描いています。 2 Hondaだからこそのモノづくりを 環境や安全性能に優れた商品や技術で「豊かで持続可能な社会」を実現することは企業の社会的責任であるととらえる一方で、面白いモノ をつくってお客様に喜んでいただく、こうやったらもっと便利になる、人のやっていないことをやる、そのようなチャレンジ精神が、Hondaの原点 であり企業文化であると考えています。 2012年5月に発表した、さながら人の歩行のような自由自在な動き、両足の間に収まるコンパクトなサイズを両立した新たなパーソナルモビリ ティ「UNI-CUB」は、まさにその一端ということができます。そして「UNI-CUB」開発にもつながった「ASIMO」を代表とするヒューマノイドロボット 研究。ここから生まれた技術「Honda Robotics」は、「人の役に立つものをつくりたい」「技術で人を幸せにしたい」「技術は人のために」という、 Hondaが創業以来変わることのないモノづくりの思想、創業の精神の現れでもあります。 また、Hondaのアイデンティティの象徴であるスポーティな商品領域でも、次世代スーパースポーツ「NSXコンセプト」を 2012年1月発表しまし た。優れた環境・燃費性能の実現とともに、スーパースポーツならではの加速感やドライバーとマシンの一体化による「走る喜び」の提供をめ ざし国内外で発売する予定です。 Hondaは「人間尊重」と「3つの喜び」という企業理念に基づき企業活動をおこなってきた会社です。すなわち互いに尊敬しあい、認めあい、良 いものをつくって、お客様に使っていただき、喜んでいただくこと、それが我々の喜びとなり、新たな挑戦へと駆り立てる。そのようなサイクル を大切に考え、世界各地の人々とともに開発、調達、生産、販売に取り組んできました。Hondaは、これからも原点である人を中心としたモノ づくりであらゆるステークホルダーの皆様の心に響くようなワクワクする商品を生み出し「存在を期待される企業」であり続けたいと考えてい ます。 2012年7月 代表取締役 社長執行役員 伊東 孝紳 3