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CIRCUITS Arduinoクローンを作る
DIY CIRCUITS Arduinoクローンを作る 秋葉原で部品を買って自分の目的に合ったArduinoを作る。 文:畑山 裕貴 私は昨年(2007年)9月まで慶應義塾大学の奥出研究 れば材料は手に入るだろう。記事の最後にリストを示 使っていた。奥出研究室でプロトタイプを製作する場 サイトがあるので通販を利用してもよいかもしれない。 合、Arduinoを用いることが多い*1。工作技術とインタ ーネットに代表される情報技術の両方をラピットプロト タイピングできる道具としてArduinoはうってつけだ。 す。秋葉原へ行くことが難しい場合は各店舗ともウェブ その他に必要なハンダごてやハンダなどの道具はそれぞ れ用意してほしい。 しかしArduinoを実際に使ってみると、サイズや細か 組み立て 題になる。そこで奥出研究室ではオープンソースである が少ない。回路図(図1)に1 〜 4まで番号を振ってあ な仕様が問題になったり、大量に使う場合はコストが問 Arduinoの特徴を生かし、自作やカスタマイズを行うこ とで、さまざまな状況に対応してきた。この記事では Arduinoを秋葉原で買えるパーツを使って自作する方法 を紹介する。 部品の購入 Make: Volume 04 るのでその順番に部品を取り付けていこう。 電源回路を作る まず(1)の部分から始めよう。基板を用意したらま ずは、電源コネクタを基板に取りつける。今回使用した DCコネクタはそのままでは基板に取り付けることがで 秋葉原で材料を購入する。基本的には3つのお店を回 144 組み立ては電源回路から作っていくとミスやトラブル きないので、穴同士をつなげてDCコネクタが入るよう に基板を加工した(図2)。コネクタを取り付けたら他 *1 奥出研では現在、他にもWiringやKMDが開発中のXtelなども使用している。 Photography by Hirotaka Hatayama 室に所属し、プロトタイピングの道具としてArduinoを 1 4 2 3 1 図1:回路図。オリジナルはwww.hatayan.org/make/index. htmlから入手可能。図の(1)は電源回路。 (2)は、USB部 分の回路。(3)はマイコン周辺の回路である。 (4)はマイコ ンのI/Oピン、電源とGNDピンになる。 の電源回路用の部品も取り付けていく。取り付けが完了 マイコン回路を作る したら、ACアダプターをつないで、三端子レギュレー (3)ではマイコン周辺の回路を作る。マイコンに電源 で確認する。図3はここまでが終了したところだ。 最後にモジュールと接続しよう。ハンダ作業中はモ ターから出力される電圧が5Vになっているかテスター USB回路を作る マイコンをArduinoのようにUSBに接続するために はUSBシリアル変換回路を実装しなければならず大変 だ。しかし秋月のFT232Rモジュールを使えば簡単に実 装できる。今回はこのFT232Rのモジュールを使って USB部 分 の 回 路 を 作 る。 図1で は(2) の 部 分 だ。 モ とクロック回路、リセット回路、ISP端子をつないで、 ジュールをICソケットから抜いておこう。電源をジャン パーピンの真ん中のピンから接続し、クロック回路とリ セット回路をつなぐ。ISP端子との接続は間違いやすい ので注意が必要だ。回路図をよく読もう。マイコンとモ ジュールを I C ソケットに挿したら完成だ(図6) 。 ジュールは、直付けせずICソケットに差し込む形にして Bootloaderの書き込み 給をUSBとACアダプターから行えるようにするために Arduinoとして機能する。回路がきちんと動いているか いる。今回はオリジナルのArduinoと同じように電源供 モジュールのVIO(4pin)から5Vを引き出す。電源回 路からの出力とキットからの出力をジャンパーピン(図 4)につないで電源を選べるようにした後、モジュール のUSB部分をPCにつないでJP1の3番端子から5Vの出 力が出ているか確認する。この際ドライバのインストー ルが必要だが、モジュールの説明書の手順に従ってドラ イバをインストールする。最後に電源確認用のLEDの回 路を接続する(図5)。私はLEDがあまり明るくならな いようにLEDの抵抗に1kΩを選んだが、もっとLEDを 明るく光らせたい場合はより抵抗値が少ない抵抗を接続 する(図5)。 Arduinoの回路はBootloaderを書き込むことで初めて 確かめる意味も含めてBootloaderを書き込んでみよう。 AVRライターを用意する 今 回 は ラ イ タ ー に 比 較 的 入 手 が 楽 なAVRISPmkⅡ (図7)を利用し、Arduino IDE(www.arduino.cc/en/ Main/Software)に付属のavrdudeというプログラム をつかってBootloaderを書き込む方法を紹介する。 AVRISPmkⅡはUSBに接続するAtmel社純正のAVR ライターだ。これをArduino付属のavrdudeで使うに は、Atmel純正のドライバではなくArduino IDEに付属 す るAVRISPmkⅡ の ド ラ イ バ を 使 う。 そ の た め に Windows XPでは、AVRISPmkⅡをPCにつなぐと開始 Make: 145 図2. 図3. 図4. 図5. 2 3 4 5 基盤を加工したところ。右側は裏面。 電源回路の取り付けが完了。左側は表、右側は裏面。 電源回路用の出力とキットの出力をつなぐジャンパーピン。 電源回路を完成させ、LEDを接続したところ。 図6. マイコン周辺の回路が完成した。左側は表、右側は裏面。 図7. AVRISPmk IIは、Atmel社純正のAVRライターだ。 図8. AVRISPmkⅡを、電源に接続したArduinoのISP端子に 接続する。 6 7 146 Make: Volume 04 8 される「新しいハードウェアの検出ウィザード」で「次 の場所を含める」にチェックマークをする必要がある。 フォルダの参照が表示されたら、arduino-0010\drivers\ AVRISP mkII LibUSB Driversの中にあるドライバを指 定することでAVRISPmkⅡのドライバのインストール が始まる。 ライターと基板を接続する AVRISPmkⅡを、電源に接続したArduinoのISP端子 自作Arduinoの使用例 実際に自作のArduinoを使用した作品を見てみよう。紹介 するのは奥出研の石橋氏による音を用いて子供が公園で遊 ぶことができる「Sound Candy」 (www.sound-candy.com) という玩具だ。 「Sound Candy」は、自作Arduinoの利点 を生かし作品の実装を行っている。Arduinoを自作すること によって基板を小型化し、USB部分をBluetooth通信に置き 換えてPCとの接続を無線化しているのだ。これらの工夫に より、このプロダクトの実装が可能になっている。 につなぐと、AVRISPmkⅡのLEDが緑色に光る(図8)。 赤く光ったり点滅した場合はうまく接続できていないの で、コネクタの向きや回路を見直してほしい。 Bootloaderを書き込む 書き込むBootloaderはArduinoの種類によって異な る。今回はATmega168を使用しているので、Arduino IDEの[Tools]→[Board]から[Arduino NG or older w/ ATmega168]を選択する。次に[Tools]→[Burn Bootloader]→[ w/ AVRISPmkⅡ]と選択してBoot loaderを書き込む。書き込み中はAVRISPmkⅡのLED が赤色になり、本体の中の方にある緑色のLEDが点滅す 行ったが、もちろんブレッドボードでも自作できる。ま bootloader」とArduinoソフトウェアの下部に表示され らないI/OピンやISPコネクタを省いたり、電源、PCと る。無事に書き込みが終了した場合は「Done burning る。 足を引き出してピンヘッダにつないで完成 最後に(4)の部分では単にマイコンのI/Oピン、電源 とGNDピンを引き出すだけだが、ハンダ付けした後自 分が使いやすいようにピンには名前をふっておくといい だろう。最後にスペーサーを取り付けて完成だ。 今回はユニバーサル基盤とハンダを使って組み立てを 部品 た今回のようにすべての機能を実装するのではなく、い の通信方法を吟味すれば、よりプロダクトに組み込みや すい形になるだろう。Arduinoには、Boarduinoなどい ろいろなArduinoクローンがある。それらを参考に自分 でオリジナルな基板を作っても面白いと思う。 畑山 裕貴:慶應義塾大学 政策・メディア研究科を修了後、有 限責任事業組合ONPに所属し、オープンソースハードウェア を使ったワークショップを行っている。趣味はスキー。ブロ グはwww.hatayan.org/wablog。 分類 品名 個数 部品番号 購入店 基板 Sunhayato ICB-503 1 千石電商 ACアダプター 9v 1.2A 1 秋月電子 線材 15芯リボンケーブル (10色カラー) 1m 1 千石電商 線材 スズメッキ銅線 0.32mm 1 千石電商 ピンヘッダ 1x40 ピンヘッダ (標準ピッチ) 2 千石電商 PCBソケット 2x22 ピンヘッダ (標準ピッチ) 1 ISP用 千石電商 三端子レギュレーター TA7805S 1 IC1 千石電商 マイコン ATMEL ATMEGA168-20PU (DIPパッケージ) 1 IC2 マルツ電波 USB-シリアル変換モジュール AE-UM232R FT232RL USBシリアル変換モジュール 1 IC3 秋月電子 DCコネクタ 2.1mm標準DCジャック (基板取り付けタイプ) 1 JC1 秋月電子 電解コンデンサ 100µF 10v 1 C1 千石電商 電解コンデンサ 10µF 16v 1 C2 千石電商 積層セラミックコンデンサ 0.1µF 2 C3,4 千石電商 積層セラミックコンデンサ 22pF 2 C5,6 千石電商 ICソケット 28pin ソケット 1 IC2用 千石電商 ICソケット 24pin 幅広ソケット 1 IC3用 千石電商 ジャンパーピン ジャンパーピン (標準ピッチ10個入り) 1 JP1用 千石電商 水晶 16mhz水晶 1 Q1 千石電商 スペーサー 3×10mmスペーサー (ビス付き) 10個いり 1 千石電商 LED 5mm 緑LED (通販だと100個単位) 1 POWERLED 千石電商 抵抗器 1/4w 10kΩ 1 R1 千石電商 抵抗器 1/4w 1kΩ 1 R2 千石電商 スイッチ タクトスイッチ (高さ5mm) 1 S1 千石電商 計 マイコンライター AVRISP mkⅡ 1 マルツ電波 価格 200 600 300 180 80 80 70 525 950 30 20 15 20 20 40 40 60 150 320 10 5 5 20 3,860 5,985 Make: 147