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平成23年度 尼崎市立衛生研究所報第38号

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平成23年度 尼崎市立衛生研究所報第38号
CODEN : AEKEES
ISSN 0913-5146
平成23年度
尼崎市立衛生研究所報
第38号
Annual Report
of
Amagasaki City Institute of Public Health
Vol.38 2011
尼崎市立衛生研究所
はじめに
尼崎市では、平成25年度をはじめとして、これから目指していく将来のまちの姿
を、市民や事業者の皆さんと共有し、ともにまちづくりをすすめていくために総合計
画が策定されました。そのなかでは、尼崎市の将来のありたいまちの4つの姿の一つ
として、
「健康、安全・安心を実感できるまち」の実現が掲げられています。まさに、
私たち衛生研究所は市民の健康、安全・安心をサポートする役割を担っているものと
考えています。
これに先立ち、当研究所におきましは平成22年度から2ヵ年かけて所内で、これ
からの衛生研究所のめざす姿・役割等についての検討・協議を重ね、「市民の安全・
安心をまもる心強い技術集団」を目指すこととし、そのために、まずは市民に親しま
れる衛生研究所になるべく、情報発信の向上等に取り組んでいます。
平成22年度から、市内のイベントである環境フェスタや市民まつりに参画し、パ
ネル展示や、子どもたちを対象におもしろ科学実験など、毎年、企画に工夫を凝らし
た結果、リピーターも増えてきております。また、本市において平成15年度から行
っている全庁的改革改善運動にも、毎年、当研究所内の業務の改革改善を図り、庁内
外に、その成果を披瀝しております。
平成24年度は新たな試みとして、夏の電力不足が叫ばれるなか、全市的な節電の
取組みの一環としてクールスポットを提供するとともに、子どもたちの夏休みの宿題
の一助になればとの一挙両得の思いから、簡単な科学実験や観察などを行う「子ども
宿題研究所」のイベントを職員が手作りで企画し、定員を大きく上回る市民に参加い
ただき好評を博しました。
さらに、平成25年1月からは、衛生研究所の「エイケンブログ」を開始し、まず
は月1回の更新を目標に情報発信に努めていくことを始めたところであります。
近年、当研究所においても、団塊の世代の職員が多く退職し、代わりに新規採用職
員が配属されており、技術・知識・経験をいかに継承していくかが課題となっており
ます。こうした取組みは、いずれも採用後5年以下の若手職員が主体的に取り組んで
おり、時に少し遊び心を持って楽しくやることをモットーに、若手職員のやる気を高
め、人材育成に寄与しております。さらには、若手職員のやる気が、他のベテラン職
員の士気高揚につながるという相乗効果も生んでおります。
今後とも、開かれた衛生研究所づくりを目指すとともに、更なる技術の向上に努め、
市民に身近な頼りがいのある技術集団となるよう所員一丸となって取り組んでいき
たいと考えております。
このたび、平成23年度における調査研究等の事業概要をまとめた尼崎市立衛生研
究所報第38号が完成いたしました。
どうぞご高覧の上、ご忌憚のない意見を賜れば幸いです。今後とも、ご指導ご鞭撻
のほど、よろしくお願い申し上げます。
健康福祉局
次長
白畑
優
白紙
平成23年度
尼崎市立衛生研究所報
目
Ⅰ 衛生研究所の概要
第 38 号
次
---------------------------------------------------------------
1
1 沿革
---------------------------------------------------------------
3
2 施設の概要
---------------------------------------------------------------
3
3 組織と事務分掌
---------------------------------------------------------------
4
4 職員の配置
---------------------------------------------------------------
5
5 組織別職員表
---------------------------------------------------------------
6
6 主要機器
---------------------------------------------------------------
7
7 試験検査実施状況 ---------------------------------------------------------------
8
8 平面図
10
Ⅱ 事業概要
---------------------------------------------------------------
----------------------------------------------------------------------- 11
微生物担当
----------------------------------------------------------------------- 13
理化学担当
----------------------------------------------------------------------- 19
環境科学担当 ----------------------------------------------------------------------- 23
Ⅲ 資料 ------------------------------------------------------------------------------- 27
・下痢原性大腸菌検査の検討------------------- 村山 隆太郎,萩原 康裕,久保 明奈,林 千尋 29
・HIV-1 RNA定量法(KK-TaqMan法)の検討------- 久保 明奈,萩原 康裕,村山 隆太郎,林 千尋 34
・子ども宿題研究所の開催について------------------------------------------------------- 37
Ⅳ その他 ----------------------------------------------------------------------------- 43
・尼崎市立衛生研究所の設置及び管理に関する条例 --------------------------------------- 45
・尼崎市立衛生研究所の設置及び管理に関する条例施行規則 ------------------------------- 47
・検査手数料(主なもの) ------------------------------------------------------------- 50
・付近の地図
------------------------------------------------------------------------ 51
白紙
Ⅰ 衛生研究所の概要
1
白紙
2
1
沿
革
昭和26年10月
本所の母体である検査施設が尼崎市中央保健所試験検査室として発足
昭和41年12月
尼崎市立衛生研究所開設
4保健所検査室の統合強化及び市内医療機関の臨床検査を主軸として開設
した。(事務部門、疫学部、理化学部)
昭和43年 4月
臨床部発足
昭和45年 4月
理化学部の大気汚染自動測定部門を公害対策室へ移管
昭和46年 4月
公害部発足
理化学部から分離独立し水質汚濁防止法に基づく水質検査業務等を開始
昭和48年 4月
ウイルス部発足
昭和54年 4月
微生物部発足
平成 5年11月
機構改正に伴い疫学部、臨床部及び微生物部の一部を(財)尼崎健康・医
(疫学部の細菌検査業務とウイルス部を合併)
療事業財団に移管するとともに部制から係制とし、公害部を環境科学係と
名称変更。また、研究所全施設を市民健康開発センター5階へ移転
平成 7年 1月
阪神・淡路大震災により、多数の検査機器等が被害を受け、検査等業務が
一時不能になる。
平成 7年 2月
一般依頼検査業務を再開
平成11年 4月
機構改正に伴い係制から担当制になる。
平成13年 4月
特例市に指定
平成18年 8月
近畿2府7県及び8市(地方衛生研究所設置市)の間で「健康危機発生時に
おける協力に関する協定書」を締結
平成21年 4月
2
施
(1) 所
中核市に移行
設
在
の
概
要
地
661-0012
尼崎市南塚口町4丁目4番8号
市民健康開発センター
ハーティ21内
Tel
06(6426)6355
Fax
E-mail: [email protected]
(2) 建
物
鉄筋コンクリート6階建の5階部分
延面積
1,250㎡
*市民健康開発センター
敷地面積
建築延面積
ハーティ21
4,796.89㎡
10,247.54㎡
3
06(6428)2566
3
組織と事務分掌(平成24年4月1日現在)
微生物担当
(1) 所内事務の総合企画及び連絡調整
(2) 検査依頼の受理及び施設利用の許可
(3) 使用料、手数料及びその他の諸収入金の徴収
(4) 所の維持管理
(5) 統計調査及び諸報告
(6) 公衆衛生に関する情報の収集及び解析整理
(7) 食中毒菌、真菌等の感染症の検査及び研究
(8) 食品衛生及び環境衛生における細菌学的検査及び研究
(9) HIV抗体検査
所
長
(10) その他微生物部門における疫学的調査及び研究
(11) 所内の他の担当の主管に属さないこと
理化学担当
(1) 上水、井戸水及び工業用水の試験、検査及び研究
(2) 食品、添加物及び薬品の試験、検査及び研究
(3) 器具、容器、包装、おもちゃ等の試験、検査及び研究
(4) 食中毒の化学的試験、検査及び研究
(5) 食品等に係る残留有害物質の検査及び研究
(6) 公衆浴場、プール、映画館等の水及び空気の理化学的検査
(7) 家庭用品の有害物質の検査及び研究
(8) その他理化学部門における検査及び研究
環境科学担当
(1) 大気汚染、悪臭、廃液の検査及び研究
(2) 河川、港湾、浄化槽放流水、下水等の水質汚濁物質の検査及び研究
(3) 産業廃棄物の検査及び研究
(4) その他生活環境に係る汚染因子の検査及び研究
4
4
職員の配置
(平成24年4月1日現在)
技術職員
専門等
事
務
職
員
職種等
農
応
芸
用
化
化
学
学
所 長
1
課長補佐
1
薬
学
臨
生
床
物
検
工
査
学
生
物
環
境
制
御
学
生
物
資
源
科
学
合
計
3
1
係長
微
生
物
6
主任
職員
1
*
*
1
2
係長
理
化
学
1
**
(1)
3
主任
2**
職員
環
境
科
学
1
係長
(1)
主任
1
職員
2
2
8
2
6
*
1
合計
(
1
*
1
**
1
):事務取扱(再掲)
* :再任用
** :嘱
託
5
3
1
1
1
18
5
組織別職員表(平成24年4月1日)
職
所
名
氏
名
職
種
長
阪
谷
和
彦
環 境 ・ 衛
生
課長補佐
西
村
邦
子
環 境 ・ 衛
生
課長補佐
谷
口
誠
臨 床 検 査 技 師
微生物担当
係
長
林
千
尋
環
境
・
衛
生
村
山
隆太郎
環
境
・
衛
生
久
保
明
環
境
・
衛
生
西
濱
比奈子(再任用)
事
萩
原
康
臨 床 検 査 技 師
折
田
勲
(嘱
谷
口
誠
(事務取扱)
奈
裕(再任用)
託)
務
臨 床 検 査 技 師
理化学担当
係
長
臨 床 検 査 技 師
志賀谷
一
仁
環 境 ・ 衛
生
武
田
広
宣
環 境 ・ 衛
生
直
原
俊
策(嘱
環 境 ・ 衛
生
託)
環境科学担当
係
長
西
村
邦
子(事務取扱)
環 境 ・ 衛
生
主
任
後
藤
敦
子
環 境 ・ 衛
生
森
本
華
子
環 境 ・ 衛
生
松
葉
環 境 ・ 衛
生
馬
部
芳
朗(再任用)
環 境 ・ 衛
生
藤
本
文
一(再任用)
環 境 ・ 衛
生
岩
谷
環 境 ・ 衛
生
瞳
博
(嘱
6
託)
6
主 要 機 器
品
(100万円以上)(平成24年4月1日現在)
名
型
式
調理台(洗浄流し台)
ダルトンICU-7321
実験台(中央大型)
GA-685
たな(図書室移動棚)
コンゴー移動棚
プレハブ(クリーンルーム)
日立冷熱 SC‐B40TTS
プレハブ(安全実験室)
日本医化器械CH-P3-13(ケミカルハザード対策P3C)
遠心機(高速冷却遠心機)
国産 H‐2000C、日立 18PR‐3
電気炉(低温灰化装置)
Trapelo LTA‐302
窒素酸化物自動測定記録計
BCL-611
全有機炭素分析計(TOC分析計)
島津TOC-Vcs H
顕微鏡
オリンパスBX50、朝日光学
純水器(超純水製造装置)
ミリポアEQ-3S
自動希釈装置(自動分注希釈ノズル装置)
富士レビオ FASTEC405
水質検査測定器(重金属排出処理装置)
ダルトン MT50A‐1
粉じん流動測定器(等速吸引装置)
岡野 ESA‐302CT‐20M
ドラフトドラットチャンバー
ダルトン DN‐101K、DS‐112K、DS‐115K(4)
KZ、KZM
ダルトン DE‐271K
日立 SCV-1007ECⅡAB3、SCV‐1303ECⅡ、
SCV‐1304ECⅡB 、
日本医化器械 VH‐1300BH‐2B
クリーンベンチPAU−1900
光度計(分光、赤外分光、原子吸光、
Thermo iCE3500、トーソー MPR‐A4i
マイクロプレートリーダー)
三洋MJW-8000
試験管洗浄器
クロマットグラフ
日立 U-2810、島津 IR‐435、日立 Z‐8200、
(液体)
HPLC
HP 1090Ⅱ/M、
Agilent6430A Triple Quad LC/MS
(ガス)
HP5980GC−5971A・MS、HP6890、
島津 GC17A‐QP5050A、Agilent7890A GC/MS/MS
(イオン)
島津 HIC-20ASP
酸素濃度測定器
NGK SCP‐X
悪臭分析装置(臭気濃縮装置)
島津 VPC‐1
温度制御機
リアルタイムPCR装置
ABI−7500、ABI−7500Fast
Loopamp LA-320C
サーマルサイクラー
7
リアルタイム濁度測定装置、
ABI−Veriti
7 試験検査実施状況(平成23年度)
依頼によるもの
住民
結
核
分離・同定・検出
性
病
分離・同定・検出
保健所
化学療法剤に対する耐性検査
化学療法剤に対する耐性検査
ウイルス
リ
ケ
ッ
チ
ア
ウ
イ
ル
ス
・
自らの調査・
その他(医療 研究として行
保健所以外
機関、学校、
うもの
の行政機関
事業所等
分離・同定
抗体検査
リケッチア
クラミジア・マイコプラズマ
ウイルス
リケッチア
クラミジア・マイコプラズマ
25
5
269
50
136
134
病原微生物の動物試験
原虫
寄
原
生
虫
虫
・
等
寄生虫
そ族・節足動物
真菌・その他
食
中
毒
病原微生物検査
細菌
ウイルス
理化学的検査
その他
1
血液検査(血液一般検査)
エイズ(HIV)検査
血清等検査
465
20
HBs抗原、抗体検査
その他
臨
床
検
査
生化学検査
生化学検査
先天性代謝異常検査
尿一般
尿検査
神経芽細胞腫
その他
アレルギー(検査抗体検査・抗体検査)
その他
食
検
品
査
等
微生物学的検査
理化学的検査(残留農薬・食品添加物等)
93
12
65
101
3
その他
20
分離・同定・検出
細上
菌記
検以
査外
149
31
核酸検査
抗体検査
15
化学療法剤に対する耐性検査
* 検査件数は検体数
8
依頼によるもの
住民
自らの調査・
その他(医療 研究として行
保健所以外
機関、学校、
うもの
の行政機関
事業所等
保健所
医薬品
家
庭
用医
品薬
等品
検・
査
医薬部外品
化粧品
医療用品
毒劇物
家庭用品
その他
栄養関係検査
細菌学的検査
水
道
等
水
質
検
査
水道原水
理化学的検査
35
1
1
26
26
116
49
25
生物的検査
飲料水
細菌学的検査
理化学的検査
利用水等
細菌学的検査
(プール水等
理化学的検査
を含む)
5
29
20
92
91
180
126
113
4
92
細菌学的検査
廃
棄
物
関
係
検
査
一般廃棄物 理化学的検査
生物的検査
細菌学的検査
4
産業廃棄物 理化学的検査
生物的検査
SO2・NO2・Ox等
浮遊粒子状物質
大気検査
降下煤塵
有害化学物質・重金属等
酸性雨
環
境
・
公
害
関
係
検
査
846
672
1095
341
168
2
28
その他
257
511
49
公共用水域
水質検査
工場・事業所排水
浄化槽放流水
その他
60
40
騒音・振動
8
悪臭検査
土壌・底質検査
環境生物検 藻類・プランクトン・魚介類
査
その他
一般室内環境
その他
放
射
能
550
環境試験(雨水・空気・土壌等)
食品
46
その他
温泉(鉱泉)泉質検査
その他
* 検査件数は検体数
9
10
Ⅱ 事 業 概 要
11
白紙
12
「尼崎市立衛生研究所報第 38 号,2011」
微 生 物 担 当
平成23年度に実施した主な行政検査業務は
Ⅰ.行政依頼検査(表2)
保健所が収去した食品、飲用水、プール水、浴槽
1.食品細菌検査
水などの細菌検査、苦情品検査、腸管出血性大腸
行楽食品、夏期食品、年末食品の3大一斉取締
菌等による下痢有症患者とその接触者の病原菌検
りと学校乳等の年間収去計画に基づき149検体
査、ノロウィルス検査等と環境保全課からの依頼
の検査を実施した。
による地下水、河川水、海域水の細菌検査である。
食品衛生法で規格基準が定められている食品
また、一般依頼検査として市民及び市内事業者
17検体の検査を実施したが基準を超えるものは
からの食品、飲用水、プール水、浴槽水などの細
なかった。(表3)
規格基準が定められていない食品については
菌検査並びに保健所からのHIV抗体検査を実施
弁当、惣菜、調理パン、おにぎり、さしみなど食
した。(表1)
中毒を起こしやすいもの132検体を検査した。
表1 検査件数
行政依頼検査
一般依頼検査
検査区分
検体数
項目数
検体数
項目数
食品細菌検査
149
730
65
122
水質細菌検査
26
52
96
194
環境関係細菌検査
200
640
199
359
感染症細菌検査
289
4,052
―――
―――
ウィルス検査
161
313
―――
―――
HIV 抗体検査
―――
―――
465
934
合
825
5,787
825
1609
計
13
表2
行政依頼検査件数
検査区分
表3
検体数
項目数
品
規格検査件数
名
検査項目
検体数
不適数
食 品細 菌 検 査
行楽食品
40
211
牛乳
細菌数、大腸菌群
6
0
夏期食品
64
324
氷菓
細菌数、大腸菌群
2
0
年末食品
39
177
カキ
細菌数、 E.coli
4
0
6
18
清涼飲料水
細菌数、大腸菌群
2
0
149
730
冷凍食品
細菌数、大腸菌群、E.coli
3
0
17
0
学校乳
小
計
水質細菌検査・上水道水
26
環 境関 係 細 菌検 査
プール水
9
18
100
140
7
14
84
468
200
640
感染症細菌検査
289
4,052
ウィルス検査
161
313
825
5,787
公衆浴場水
地下水
河川水・海域水
小
合
計
計
合
52
計
さしみ等20検体について腸炎ビブリオの検
査を実施した。結果は全て不検出であった。
豆腐5検体のうち1検体からセレウス菌が検
出され、エンテロトキシン陽性であった。
腸管出血性大腸菌 O157 に係わる130検体の
検査結果は全て不検出であった。
2.水質細菌検査
水道法に基づく水質基準に関する省令の方法
に準じて上水道水質試験を26検体につき実施し
黄色ブドウ球菌の検査を125検体について
た。一般細菌数、大腸菌ともに基準を超えるもの
実施した。検出(0.01g 中)状況は表4のとおり
はなかった。また、従属栄養細菌についても検査
である。陽性4検体について毒素試験を行ったが、
し、基準(2,000 cfu/ml 以下)を超えるものはな
毒素は検出されなかった。
かった。
また鶏肉、調理パン及び卵製品17検体につい
てサルモネラ属菌等の検査をした。そのうち1検
3.環境関係細菌検査
体 か ら Salmonella Infantis が 、 2 検 体 か ら
本市における遊泳用プール水の衛生を確保す
Campylobacter jejuni が検出された。
る観点から厚生省生活衛生局長通知・尼崎市遊泳
表4
用プール指導要綱による項目を9検体につき検査
黄色ブドウ球菌検出件数
をしたが全て基準を超えるものはなかった。
品
名
検体数
検出件数
陽性率%
公衆浴場水については、浴槽水100検体を検
惣菜(加熱)
56
1
1.8
惣菜(未加熱)
24
1
4.2
浴槽水60検体についてレジオネラ属菌を検
和菓子
3
0
0
査した。7検体から L.pneumophila が検出された
洋菓子
7
1
14.3
ため市販抗血清(デンカ生研)のスライド凝集反
調理パン
2
0
0
応を用いて血清型 SG1、SG2、SG3、SG5、SG6 を同
28
1
3.6
5
0
0
125
4
3.2
おにぎり.寿司
豆腐
合
計
査し、1検体が大腸菌群の基準を超えた。
定した。
14
公害関係では本市の主要河川である庄下川、蓬
食中毒事例検査(表5)、有症苦情検査(表6)
川、神崎川、武庫川水系の11地点(66検体)、
等で、Staphylococcus aureus
及び尼崎港などの海域3地点(18検体)、公園の
(エンテロトキシンC型)がそれぞれ5件検出された。また
地下水7検体について大腸菌群(MPN法)と一
Campylobacter jejuni 5件、Campylobacter coli
般細菌数の検査を実施した。
2件が検出された。
(エンテロトキシンA型)、
下痢原性大腸菌に関しては、O1:H20、O1:HUT、
また、環境省が平成25年度から河川水におけ
る大腸菌数を新たな環境基準項目とするにあたり、 O1:HNM、O6:HNM、O8:HUT、O15:HUT、O18:H5、O18:H7、
23年度、24年度は調査のため検査を行うよう
O18:H11、O18:HUT、O25:H4、O25:HUT、O29:HUT、
依頼があった。23年度は上記河川水のうち54
O63:HUT、O74:H7、O148:HUT、O166:HUT が検出さ
検体について大腸菌の検査を検討した。
れた。
腸管出血性大腸菌については、3事例(表7)
の発生があり、その家族や接触者等の糞便15検
4.感染症細菌検査
体について検査を実施した。
食中毒及び有症苦情の原因究明のため糞便83
コレラ菌については、1事例の発生があり、そ
検体、吐物4検体、食品・食材107検体、ふき取
の家族の糞便2検体について検査を実施したが、
り75検体の検査を実施した。
いずれも不検出であった。
表5
食中毒事例検査
年月日
H23.6.12
摂食
者数
32
患者数
10
原因食品
不明
原因物質
Campylobacter
概要
市内飲食店で食事をした1グループ
(6/11 に提供 jejuni
の複数名が下痢、発熱等の症状を呈し
された食事)
ている旨の連絡があり、調査の結果、
有症者3名から Campylobacter jejuni
が検出された。
H24.1.8
5
5
鶏肉
Campylobacter
市内飲食店で食事をした大学生 1 グル
jejuni、
ープの複数名が下痢、腹痛等の症状を
Campylobacter
呈している旨連絡があり、調査の結
coli
果、Campylobacter jejuni/coli がそ
れぞれ2名から検出された。
H24.1.29
∼2.1
616
80
不明
ノロウイルス
市内飲食店で食事をした施設職員1
(1/28∼1/30
(GⅡ)
グループの複数名が嘔吐、下痢、発熱
に提供され
等の症状を呈している旨の連絡があ
た食事)
り、調査の結果、有症者及び調理従事
者計9名からノロウイルス(GⅡ)が
検出された。最終的な患者は当該施設
を利用した5グループに及ぶことが
判明した。
15
表6 有症苦情検査
NO
.
1
検査年月日
苦情理由
検査対象品
H23.5.11
件数
1
6
7
8
9
10
腹痛、下痢 、 糞便
発熱
H 23.5.13 ∼ 下痢、血便
食品
5.15
ふきとり
糞便
H23.6.12
腹痛、下痢
ふきとり
糞便
H23.6.14
下痢、発熱
糞便
H23.6.14 ∼ 嘔吐、下痢 、 食品
6.18
ふきとり
発熱
糞便
吐物
H23.6.15
嘔吐、下痢
糞便
H23.6.16
下痢、嘔吐
糞便
H23.7.8
下痢
糞便
H23.7.12
下痢、吐気
糞便
H23.7.19
嘔吐、下痢
糞便
11
H23.7.25
糞便
2
12
13
H23.8.10
下痢
H23.8.18 ∼ 嘔吐、下痢
8.22
H23.8.28 ∼ 嘔吐、下痢
8.29
H23.8.29
下痢
糞便
糞便
1
5
ふきとり
糞便
糞便
9
2
3
16
H23.10.19∼ 嘔吐、下痢
24
食品
ふきとり
吐物
糞便
93
14
3
22
17
H23.12.15∼
12.16
H23.12.21
H24.1.17
H24.2.5
嘔吐、下痢
糞便
3
嘔吐、下痢
嘔吐
嘔吐、下痢
糞便
糞便
糞便
1
1
1
ふきとり
糞便
6
6
2
3
4
5
14
15
18
19
20
21
H24.3.8
3.9
下痢
∼ 下痢
1
8
2
4
1
1
2
1
2
1
1
1
1
1
2
検出菌等
食中毒菌:不検出
ノロウィルス(GⅡ):糞便1検体から検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:Staphylococcus aureus(エンテロトキ
シン C 型)ふきとり1検体から検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:不検出
ノロウィルス(GⅠ):糞便1検体から検出
食中毒菌:不検出
ノロウィルス:不検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:不検出
ノロウィルス:不検出
食中毒菌: Staphylococcus aureus (エンテロト
キシン A 型)糞便3検体から検出、
Staphylococcus aureus (エンテロトキシン C 型) 糞
便1検体から検出
ノロウィルス(GⅡ):糞便15検体から検出
食中毒菌:不検出
ノロウィルス(GⅡ):糞便3検体から検出
ノロウィルス(GⅡ):糞便1検体から検出
食中毒菌:不検出
食中毒菌:不検出
ノロウィルス:不検出
食中毒菌:Staphylococcus aureus(エンテロトキ
シン A 型)糞便1検体から検出
ノロウィルス(GⅡ):糞便1検体から検出
食中毒菌:S.aureus, Salmonella sp,下痢原性大腸菌, Clostridium sp, Plesiomonas shigelloides,
Shigella sp, Bacillus cereus, Campylobacter jejuni/coli, Yersinia enterocolitica,
V.parahaemolyticus, V.cholerae, V.mimicus, V. fluvialis, Aeromonas sp,
16
表7 腸管出血性大腸菌検出状況
事例
1
2
年 齢
性別
27F
63F
発症
届出
6/10
7/8
6/21
7/12
症状
備考
腹痛、下痢、血便
腹痛、発熱、下痢、
血便、HUS
58M 7/12
7/15
腹部張り、軟便
32F
11/27
3
無症状
(注 1) 国立感染症研究所実施 c:2007 年分離株
(注2) two bands diffr. From e760
散発
散発
血清型
VT1
VT2
O157:H7
O157:H7
+
+
+
+
O157:H7
散発
+
+
O157:H7
家族
+
+
e:2009 年分離株 g:2011 年分離株
TYPE No.
(注 1)
g99
e760
c148(注2)
g524
体として5検体の検査を実施したが全て WNV の
5.ウィルス検査
遺伝子は検出されなかった。
食中毒及び有症苦情の原因究明のため実施した
麻疹疑い有症者11名について、市内医療機関か
ノロウィルスの検査では、糞便70検体中33検体
ら保健所を通して検査依頼を受け、咽頭ぬぐい液及
でノロウィルス遺伝子が検出された。(表8)
ウエストナイルウィルス(WNV)に関する調査に
び尿20検体の麻疹遺伝子検査を実施した。1検体
ついては、9月に東部浄化センター、北部浄化セン
が陽性であったが、接種ワクチンを原因とする修飾
ター、動物愛護センターの3地点で実施した。アカ
麻疹と推測された。その他19検体については陰性
イエカ、ヒトスジシマカ等原則1種類50匹を1検
であった。
表8 ノロウィルス検査
事例
1
3
年月日
H23.5.11
H23.6.16
∼6.20
H23.7.8
4
H23.7.19
1 (1)
5
6
H23.7.25
H23.8.29
H23.10.19
∼10.24
H23.12.15
∼12.16
H23.12.21
H24.2.2 ∼
2.6
H24.2.5
H24.3.8 ∼
3.9
合計
)
:陽性数
2 (0)
3 (0)
2
7
8
9
10
11
12
(
糞便
1 (1)
吐物
食品
ふきとり
13 (1)
1 (0)
22 (15)
3 (0)
20 (0)
14 (0)
3 (3)
1 (1)
15 (9)
10 (0)
19 (0)
1 (1)
神戸市 飲食店食中毒の疑い
大阪市 鳥取県宿泊施設食中毒の疑い:
GⅠ検出
西宮市 飲食店食中毒の疑い
大阪府 飲食店食中毒の疑い
尼崎市 小学校給食食中毒の疑い:GⅡ
検出
姫路市 飲食店食中毒の疑い:GⅡ検出
神戸市 飲食店食中毒の疑い:GⅡ検出
尼崎市 飲食店食中毒の疑い:GⅡ検出
兵庫県 飲食店食中毒の疑い:GⅡ検出
尼崎市 ケアホーム食中毒の疑い:GⅡ
検出
6 (1)
70 (33)
概要
石川県 飲食店食中毒の疑い:GⅡ検出
尼崎市 飲食店食中毒の疑い:GⅡ検出
3 (0)
30 (0)
33 (0)
17
Ⅱ.一般依頼検査(表9)
3.環境関係細菌検査
市民、事業者などから依頼を受け、食品、上水
プール水、浴槽水など199検体の検査依頼が
道水、地下水、プール水、浴槽水などについて検
あった。プール水で一般細菌数の基準値を超える
査を実施した。
ものはなかった。浴槽水についても大腸菌群の基
腸管出血性大腸菌 O157 については食品18検
準を超えるものはなかった。
体、プール水31検体、浴槽水2検体の検査依頼
レジオネラ属菌の検査依頼は90検体あり、そ
のうち浴槽水2検体から L.pneumophila が検出さ
があった。結果は全て不検出であった。
れ、血清型は2検体とも SG1 であった。
1.食品細菌検査
4.HIV抗体検査
事業者から自主管理の目的で依頼された65検
保健所からの依頼に基づき465件の検査を
体の食品の中には規格検査に該当するものはなか
実施した。
った。
表9
2.水質細菌検査
上水道水について93検体の飲料水適否検査依
一般依頼検査
検査区分
頼があった。
食品細菌検査
上水道水以外については井戸水、湧き水等3検
体の飲料水適否検査を実施したところ3検体が一
般細菌数の基準を超えていた。また、2検体から
大腸菌が検出された。
上水道水、井戸水、湧き水等89検体の従属栄
養細菌検査を実施したところ、2検体が基準を超
えていた。
18
検体数
項目数
65
122
93
188
3
6
96
194
104
242
水質
上水道水
細菌
井戸水・湧き水
検査
小計
環境
プール水
関係
浴槽水
95
117
細菌
その他
0
0
検査
小計
199
359
HIV 抗体検査
465
934
合計
825
1,609
「尼崎市立衛生研究所報第38号,2011」
理 化 学 担 当
理化学担当において平成23年度に実施した主
ロペン、1,1,2-トリクロロエタン、テトラクロロ
な業務は食品衛生、家庭用品及び環境衛生に関す
エチレン、ジブロモクロロメタン、m-キシレン、
る試験検査と調査研究である。
p-キシレン、o-キシレン、ブロモホルム、p-ジク
Ⅰ.一般業務
ロロベンゼン)の検査を行った。(表4)
1.行政検査
(2)家庭用品検査
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する
食品、家庭用品、飲料水等について、生活衛生
課の事業実施計画に基づき、試験検査を行った。
法律」に基づき、生活衛生課が試買した家庭用品
(1)食品衛生検査
(35検体)中のホルムアルデヒド35項目の検
査を行った(表5)。
食品衛生法に基づき、各種食品に残留する汚染
物質や使用された添加物等の検査を行った(表
(3)環境衛生検査
1)。
「水道法」・「建築物における衛生的環境の確保
汚染物質については、魚介類中のPCB、総水
に関する法律」・「旅館業法」に基づく施設等の
銀、有機スズ及び野菜・果実中の農薬の検査を行
水道水、プール水及び公衆浴場の浴槽水等の水質
った。有機スズの内訳は、トリブチルスズ化合物
の検査を行った(表6)。それらのうち、水道の
及びトリフェニルスズ化合物である。
水質検査項目の内訳は、色度、濁度、臭気、pH
食品の添加物については、春の食品、夏期食品
値、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素、塩化物イオン、
及び年末食品一斉取締りに伴い、食品中の甘味料
TOC、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、
(サッカリンナトリウム)、保存料(ソルビン
ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、クロロ酢
酸・安息香酸・パラオキシ安息香酸)、発色剤
酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ホルムアル
(亜硝酸根)、漂白剤(二酸化硫黄)、着色料
デヒド、鉄、亜鉛、銅、鉛並びに蒸発残留物であ
(酸性タール系色素)の検査を行った(表2)。
る。
特定食品については、豆中のシアン等の検査を
2.一般依頼検査
行った(表3)。その他、市内の乳処理業者が学
市内の公的機関、企業、市民の依頼により、食
校に納入している牛乳の規格検査を行った。
品や飲料水等の試験検査を行った。
さらに、緊急検査として市内で販売されている
(1)食品衛生検査
ボトルドウォーター中の異臭について、臭気およ
食の安全・安心のため学校保健課、保育所の依
びVOC(1,1-ジクロロエチレン、ジクロロメタ
頼で給食用食材の残留農薬の検査を行った(表
ン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、シス-1,2-
7)。
ジクロロエチレン、クロロホルム、1,1,1-トリク
(2)環境衛生検査
ロロエタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、
市の公的機関、貯水槽清掃業者及び一般市民か
ベンゼン、トリクロロエチレン、1,2-ジクロロプ
らの依頼により、水道、井戸、プール及び浴場等
ロパン、ブロモジクロロメタン、シス-1,3-ジクロ
の水質検査を実施した(表8)。主なものは、貯水
ロプロペン、トルエン、トランス-1,3-ジクロロプ
槽清掃業者からの貯水槽水道の水質検査と公的機
19
関等からの依頼による遊泳用プールの水質検査で
ある。
表1 行政検査・食品衛生関係等全般
事
業
名
検体数
項目数
魚介類中のPCB・総水銀検査
7
14
魚介類中の有機スズ検査
14
野菜・果実中の農薬検査
38
6,200
春の食品一斉取締りに伴う検査
8
25
夏期食品一斉取締りに伴う検査
14
49
年末食品一斉取締りに伴う検査
15
40
特定食品検査
4
4
牛乳検査
6
24
緊急依頼検査
1
24
計
93
6,394
不適件数
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
表2 食品一斉取締りに伴う検査
品 名
検 査 項 目
魚介乾製品・加工品
甘味料・保存料・漂白剤・着色料
えび
漂白剤
たらこ
発色剤・着色料
食肉製品
練り製品
春の食品
項目
検体
数
数
4
20
夏期食品
検体
項目
数
数
年末食品
検体
項目
数
数
5
0
0
0
0
甘味料・保存料・発色剤
0
0
甘味料・保存料・漂白剤・着色料
0
0
チーズ
保存料
0
0
油
酸価・過酸化物価
0
0
野菜加工品
甘味料・保存料・漂白剤・着色料
0
0
マーガリン
保存料
0
0
漬物
甘味料・保存料・漂白剤・着色料
0
0
ソース・醤油・だし
甘味料・保存料
ぽんず・つゆ
甘味料・保存料
清涼飲料水
規格
アイスクリーム
乳脂肪分・乳固形分
5
4
10
5
5
5
1
5
不適件数
検体
数
項目数
0
0
15
25
3
12
0
0
2
8
0
0
6
0
0
0
0
フラワーペースト
甘味料・保存料
0
0
油菓子
酸価・過酸化物価
0
0
氷菓
着色料
0
0
ミネラルウォーター
規格
0
0
0
0
計
2
8
25
2
1
6
14
49
15
40
表3 特定食品検査
品
名
生あん・シアン豆
検 査 項 目
シアン化水素
計
20
検体数
項目数
不適件数
4
4
4
4
0
0
表4 緊急検査
品
名
検 査 項 目
ボトルドウォーター
検体数
項目数
1
24
1
24
臭気およびVOC※
計
※VOCの項目 :1,1-ジクロロエチレン、ジクロロメタン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、クロロホルム、
1,1,1-トリクロロエタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン、トリクロロエチレン、1,2-ジクロロプロパン、ブロモジクロロメタ
ン、シス-1,3-ジクロロプロペン、トルエン、トランス-1,3-ジクロロプロペン、1,1,2-トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジブロモクロロメタ
ン、m-キシレン、p-キシレン、o-キシレン、ブロモホルム、p-ジクロロベンゼン
表5 行政検査・家庭用品
品
名
検 査 項 目
衣料(寝具・寝衣・よだれかけ・下着・くつ下)
検体数
ホルムアルデヒド
計
項目数
不適件数
35
35
0
35
35
0
表6 行政検査・環境衛生関係全般
事
業
名
検 査 項 目
水道水質検査
検体数 項目数 不適件数 不適項目
基本項目※・総トリハロメタン※・消毒副生成物※
26
392
0
0
重金属※・蒸発残留物
プール水質検査
濁度・pH値・KMnO4消費量等
9
27
公衆浴場浴槽水質検査
濁度・KMnO4消費量
40
80
計
※ 基本項目
75
499
:色度、濁度、臭気、pH値、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素、塩化物イオン、TOC、鉄
※ 総トリハロメタン
:クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム
0
0
※ 消毒副生成物 :クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ホルムアルデヒト
※ 重金属
:亜鉛、銅、鉛
表7 一般依頼検査(食品衛生検査)
品
名
検 査 項 目
野菜・果実
残留農薬
野菜加工品
残留農薬
検体数
9
計
項目数
不適件数
1416
0
3
486
0
12
1902
0
表8 一般依頼検査・環境衛生
事
検体数
項目数
不適件数
不適項目
水道水
業
色度・濁度・pH値・TOC等
93
778
1
色度・残留塩素
井戸水
色度・濁度・pH値・TOC等
2
16
2
外観・色度・濁度
その他の飲料水
色度・濁度・pH値・TOC等
2
9
1
外観・色度
プール水
濁度・pH値・KMnO4消費量
トリハロメタン等
121
369
7
KMnO4消費量・pH値
浴槽水
濁度・KMnO4消費量
25
50
0
243
1222
11
計
名
検 査 項 目
21
3.分析法の検討
Ⅱ.調査研究
昨年度に引き続き、食品中の残留農薬の試験方
1.共同研究
法についての一斉分析法の検討を行った。
(1)食品汚染物の実態に関する調査研究:食品汚
染物モニタリング
平成23年度における魚介類中のPCB、総水
銀、有機スズ及び農産物中の農薬のデータを国立
医薬品食品衛生研究所に送付した。同所により日
本の食品汚染物データとしてまとめられる予定で
ある。
(2) 健康危機事象模擬訓練の参加
前年度に引き続き平成 23 年度地域保健総合推進
事業に係る近畿ブロック「健康危機事象模擬訓
練」(平成 23 年度は地震発生を想定した訓練)に
参加した。
2.信頼性確保業務
(1)食品検査施設の業務管理基準(GLP)の導入
平成9年4月より食品検査の信頼性を確保する
ための業務管理基準が導入された。昨年度に引き
続き、「検査実施標準作業書」、「機械器具保守
管理標準作業書」等の標準作業書の作成、内部精
度管理の実施及び外部精度管理調査への参加など
信頼性確保の体制の整備を図った。なお、外部精
度管理調査については、食品添加物の着色料(酸
性タール色素)、保存料(ソルビン酸)及び残留
農薬(チオベンカルブ、テルブホス、クロルピリ
ホス、マラチオン、フルシトリネート)検査に参
加した。
(2)兵庫県における水道水質検査の外部精度管理
兵庫県水道水質管理連絡協議会精度管理委員会
主催の平成23年度外部精度管理調査において、
(セレン、塩化物イオン)の検査に参加した 。
22
「尼崎市立衛生研究所報第38号,2011」
環 境 科 学 担 当
表1 水質関係事業内容
環境科学担当においては、水質汚濁防止法、大
気汚染防止法等環境保全関係法令に基づき、水質
事 業 名
検体数
項目数
239
8
8
452
23
3,742
112
269
1,873
230
157
1,130
39
−
−
−
−
1
673
777
362
78
46
2
927
9,294
汚濁、大気汚染、悪臭、産業廃棄物等に係る汚染
因子についての行政検査をはじめ、それに関連す
る調査・研究業務を行っている。
Ⅰ.水質関係
公共用水域(河川・海域)の水質・底質、地下
水、工場・事業場等の排出水及び当研究所の放流
水等の水質検査を行った。
平成23年度の事業内容を表1に示し、次にそ
の概略を述べる。
1.行政依頼検査
(1)公共用水域水質調査(表2)
公共用水域の常時監視に係る調査は、海域5定点、
河川11定点(神崎川水系3定点、庄下川水系4
1.行政依頼検査
(1) 公共用水域水質調査
(2) 公共用水域底質調査
(3) 地下水質調査
(4) 工場等の水質調査
(5) その他の調査
2.一般依頼検査
(1) 工場等の水質検査
3.自主検査
(1) 放流水自主検査
(2) 公共用水域等水質調査
(3) 地下水質調査
(4) 工場等の水質調査
(5) その他の調査
4. 精度管理
合
計
定点、蓬川水系2定点、武庫川水系2定点)につ
いて行った。
健康項目の環境基準値及び要監視項目の指針値
視調査4地点等について調査を行ったところ、塩
を超えるものはなかった。
化ビニルモノマーについて環境基準値を超えると
生活環境項目では、大腸菌、pH及び溶存酸素
ころがあった。
量が環境基準値及び「尼崎市の環境をまもる条例」
(4)工場等の水質調査(表4)
の基準値を超えるものがあり、また、全窒素、全リ
工場・事業場等の排出水の汚濁状況を監視し、排
ンについても環境基準値を超えるものがあった。
水基準、総量規制基準等の遵守状況をチェックし、
(2)公共用水域底質調査(表2)
また、有機スズ化合物の排出状況等や土壌汚染対
公共用水域に係る底質調査は、海域3定点、河川
策法に基づく地下水調査等について把握するため、
5定点(神崎川水系1定点、庄下川水系3定点、
延べ1,873項目について検査を行った。
蓬川水系1定点)について行った。
2.一般依頼検査(表1)
暫定除去基準が定められている水銀及びPCB
(1)工場等の水質検査
については全定点が基準値を下回っていた。
事業場の排出水等157検体延べ1,130項目
(3)地下水質調査(表3)
について検査を行った。
概況調査4地点、トリクロロエチレン等の継続監
3.自主検査(表1)
(1)放流水自主検査
23
するため、地下水質調査を実施した。
当衛生研究所の排出水は雨水も含め公共下水道
に放流しており、下水道法に基づく基準の遵守状
4.精度管理(表1)
況をチェックするため放流水の自主検査を39検
環境測定分析統一精度管理調査に係る分析を
実施した。
体延べ673項目について行った。
(2)公共用水域等水質調査
行政依頼調査以外の項目についてモニタリング
するため、公共用水域等水質調査を実施した。
(3)地下水質調査
行政依頼調査以外の項目についてモニタリング
表2 公共用水域水質底質調査
項
目
数
検体数
水質
底質
一般項目
生活環境項目
健康項目
要監視項目
特殊・その他
の項目
計
海域
87
124
261
219
72
270
946
河川
152
441
1,017
697
154
487
2,796
小計
239
565
1,278
916
226
757
3,742
海域
3
9
3
15
0
15
42
河川
5
15
5
25
0
25
70
小計
8
24
8
40
0
40
112
247
589
1,286
924
226
797
3,854
計
一般項目:
外観、臭気、透視度
生活環境項目: 水質汚濁に係る環境基準について(環境庁告示第59号)別表2に定める項目
健康項目:
水質汚濁に係る環境基準について(環境庁告示第59号)別表1に定める項目
要監視項目:
水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件及び地下水の水質汚濁に係
る環境基準についての一部を改正する件の施行について
(平成 21 年 11 月 30 日付け通知)別表に定める項目
その他の項目: 上記以外の項目
表3 地下水等の行政依頼水質調査
項
検体数
一般項目
環境基準項目
目 数
要監視項目
その他の項目
計
地下水質調査
8
24
134
84
46
264
そ の 他 調 査
13
9
135
20
3
167
計
21
33
269
104
49
431
環境基準項目:地下水の水質汚濁に係る環境基準について(環境庁告示第 10 号)別表に定める項目
一般項目、要監視項目、その他の項目については、表2と同じ
24
表4 工場等の水質調査
項
検体数
有害物質
目 数
その他の物質
有機すず等
計
工 場 排 水 調 査
77
703
416
0
1119
総 量 規 制 調 査
311
0
463
0
463
有機すず化合物調査
1
0
0
2
2
地 下 水 調
査
46
251
0
0
251
苦 情 等 調
査
17
35
3
0
38
合
計
452
989
882
2
1,873
有 害 物 質: 排水基準を定める省令(総理府令第 35 号)別表第一に定める項目
その他の物質: 排水基準を定める省令(総理府令第 35 号)別表第二に定める項目
有機すず等:
トリブチルスズ、トリフェニルスズ等、上記以外の項目
地下水調査:
土壌汚染対策法施行令第一条に定める項目(特定有害物質)、及び排水基準を定
める省令(総理府令第 35 号)別表第一に定める項目(有害物質)
表5 産業廃棄物関係
種類
項
検体数
生活環境項目
目
有害項目
数
その他の項目
計
汚 泥 等
4
0
4
0
4
合
4
0
4
0
4
計
生活環境項目
pH
有害項目
Al-Hg、T-Hg、Cd、Pb、Cr6+、As、CN、PCB、Se、VOC 等
その他の項目
H2O、Oil、IL
(1)特定粉じん排出作業に係る調査
Ⅱ.産業廃棄物関係(表5)
市内事業場から発生する産業廃棄物の重金属等
特定建築材料が使用されている建築物、その
の溶出・含有の濃度を把握するとともに、事業者
他工作物を解体し、改造し、又は補修する作業
に指導・助言を行い、生活環境の保全に資するこ
の際、大気汚染防止法では飛散防止の作業基準
とを目的として、4検体について検査を行った。
が定められていることから、市としても作業基
準の遵守状況を把握するため、大気中のアスベ
スト調査を行った。
Ⅲ.大気関係(表6)
工場・事業場の排出ガス、環境大気、酸性雨、
(2)環境大気の調査(表7)
主要幹線道路周辺の窒素酸化物、放射線量率等の
浮遊粒子状物質中の9成分(Cd、Co、Cu、
調査を行った。
Fe、Mn、Ni、Pb、V、Zn)、デポジッ
平成23年度の事業概要を表6に示し、その概
トゲージによる降下ばいじん中の10項目(降下
略を述べる。
ばいじん総量、可溶性成分のpH、硫酸根、硝酸根、
1.行政依頼調査
タール分、炭素分、灰分、不溶解性の灰分、灼熱
25
減量、貯水量)について毎月測定を実施し、また
(4)主要幹線道路周辺の窒素酸化物調査(表
アスベストの2項目(総繊維数濃度、アスベスト
8)
国道43号線等主要幹線道路周辺の窒素酸化物
数濃度)について年3回環境大気のモニタリング
濃度を詳細に把握するためPTIO法により年2
を行った。
回延べ846検体について測定を実施した。
また、東日本大震災後の国の環境調査の一環と
(5)放射線量率測定
して、本市は福島県のアスベスト環境調査に協力
産業廃棄物汚泥の適正管理確認のため放射線量
し、平成23年5月から平成24年3月までで計
率の測定を行った。
165検体を検査した。
また、平成23年6月から東日本大震災による
(3)酸性雨に係る調査
環境省委託業務として降雨日に一日毎の湿性降
福島第1原子力発電所からの放射能漏洩事故によ
下物を採取し、降水重量を測定するとともに月曜
る影響を調査するため、当該研究所の屋上等で一
日から次の日曜日までの一週間分を全量混合し、
般環境大気中の測定を行った。
−
pH、導電率、陰イオン3成分(NO3 、SO4
−
2
(6)精度管理
、Cl − )、陽イオン5成分(NH 4 + 、Ca 2+ 、
+
K 、Mg
2+
酸性雨分析等の精度管理を実施した。
+
、Na )を測定した。
表6 大気関係事業内容
事
業
名
検体数
1.行政依頼検査
(1)特定粉じん排出作業に係る調査
(2)環境大気の調査
(3)酸性雨に係る調査
(4)主要幹線道路周辺の窒素酸化物調査
(5)放射線量率測定
(6)福島県アスベスト環境調査
(7)精度管理
計
項目数
51
1,803
144
846
642
165
2
102
17,070
1,160
2,538
642
330
20
3,635
21,842
表7 環境大気の調査
事
業
名
検体数
浮遊粒子状物質中の重金属調査*
降下ばいじん測定*
アスベスト等モニタリング
合
計
項目数
672
1,095
36
6,048
10,950
72
1,803
17,070
*厚生労働省報告要領に基づき算出
表8 主要幹線道路周辺の窒素酸化物調査
実施年月
検体数
項目数
平成23年5月
426
1,278
平成24年1月
420
1,260
846
2,538
合
計
26
Ⅲ 資 料
27
白紙
28
「尼崎市立衛生研究所報第 38 号、2011」
下痢原性大腸菌検査の検討
微生物担当 村 山 隆 太 郎
萩 原 康 裕
RYUTARO MURAYAMA YASUHIRO HAGIHARA
久 保 明 奈
AKINA KUBO
林 千 尋
CHIHIRO HAYASHI
遺伝子検査法の実験書5)に準ずる。
Ⅰ はじめに
下痢原性大腸菌は発症機序の違いにより腸管病原
性大腸菌(Enteropathogenic Escherichia coli:EPEC)
、
Ⅱ 試薬及び検体
腸管侵入性大腸菌(Enteroinvasive Escherichia coli:
1 試薬等
EIEC )、 腸 管 毒 素 原 性 大 腸 菌 ( Enterotoxigenic
培地は日水製薬株式会社の DHL 寒天培地、極東
Escherichia coli:ETEC )、志賀毒素産生性大腸菌
製 薬工業株 式会社 のマッ コンキー 寒天培 地及び
(Shiga toxin-producing Escherichia coli:STEC)及び
mEC 培地を用いた。PCR 試薬はタカラバイオ株式会
腸管凝集付着性大腸菌(Enteroaggregative adherent
社 TaKaRa ExTaq 及び Promega 社 Go Taq® Green
Escherichia coli:EAggEC)の5つのカテゴリーに分
Hotstart Master Mix を用いた。各種プライマーはタカ
けられる。
ラバイオ株式会社で合成したものを用いた。
分散付着性大腸菌(DAEC)、EAggEC 耐熱性毒素
(EAST1、遺伝子は astA )
、細胞毒性壊死因子(CNF)、
2 検体
各病原因子の陽性株として、2011 年 11 月に国立
細胞壊死性膨化毒素(CDT)などの病原因子を持つ
大腸菌を下痢原性大腸菌に加えている場合もある。
感染症研究所より分与された、O169:H41(STIa),
ETEC と STEC は毒素産生性、EIEC は細胞侵入性、
O6:H16(STIb+LT),O157:H7(stx1+stx2,eae),O63:H6(stx
EPEC と EAggEC は細胞付着性を確認する必要があ
2f,eae),O28:HNM(invE),O142:H6(eae,bfpA),O44:H18(a
るが、細胞侵入性と細胞付着性は手技や判定に熟練
ggR,aafA,astA),O25:H4(afaD)の 8 菌株を用いた。
を要する。そこで侵入性や付着性に関連する遺伝子
また、食中毒疑いで搬入された検体から分離され
を検出する方法が用いられる。
た大腸菌の 5 菌株を用いた。
現在、毒素遺伝子を含め、侵入性や付着性に関連
する遺伝子数種類の病原因子を検出するマルチプレ
ックス PCR が数多く報告されている
Ⅲ 試験操作
1)2)
。
1 抽出
下痢原性大腸菌の培養検査は DHL やマッコンキ
被検菌を分離培地等に形成したコロニーから直接
ー寒天培地などで大腸菌を疑うコロニーを釣菌し、
1.5 mL チューブの DDW100 µL に懸濁し、ボルテッ
生化学的性状や血清型を確認し、その後毒素産生性
クスした後 94℃10 分間加熱し、12,000 rpm,10 分間
を調べる。また、EPEC は特定の血清型を示すこと
遠心し、その上清を検体とした。液体増菌培地は、
が発見のきっかけでもあり、鑑別に血清型が用いら
培養後、500 µL を 1.5 mL チューブに採取し、上記
れるが、H 抗原の型別も必要な上、日本で分離され
同様の操作により作製したものを検体とした。
る EPEC は古典的血清型には属さないことが多く、
細胞付着性試験が必要となる3)4)。
2 マルチプレックス PCR 反応
これらのことから当所では迅速に大腸菌の病原因
(1)病原因子の探索には 11 種類のプライマーセッ
子を特定するためにマルチプレックス PCR による
トを用い、7 種類のプライマーセットと 4 種
下痢原性大腸菌検査の検討を行うことにした。検査
類のプライマーセットを 1 組とし二つの反応
方法は平成 23 年度国立保健医療科学院「細菌研修」
系 A と B を作成した(表1)。
29
(2)PCR 試薬 12.5 µL にプライマーミックス溶液
Ⅴ 結果
(反応系 A の場合 0.4 µL のプライマーミック
検討事項1について、各病原因子の陽性株をモノ
ス溶液、反応系 B の場合 0.2 µL のプライマー
プレックス PCR により検査し、すべてのプライマー
ミックス溶液)を加え、そこに DNA テンプ
が正常に働くことを確認した。確認後、プライマー
レート 2.4 µL を加え DDW で調製し、25 µL
ミックスを作成し、各病原因子の陽性株をマルチプ
の反応系にした。
レックス PCR により検査した結果、良好な増幅産物
バンドが確認できた(図2)
。
(3)反応条件は 94℃,5 分間の後、94℃,30 秒→
50℃,30 秒(反応系 A)
、55℃,30 秒(反応系 B)
検討事項2について、食中毒疑いで搬入された検
→72℃,60 秒の 30 サイクル後、72℃,10 分で最
体から分離された大腸菌をマルチプレックス PCR
。
終伸展させ 4℃で保存した(図1)
により検査した結果、1 検体からバンド(stx1,stx2)が
確認できた(図3)
。
(4)2%アガロースによるアガロースゲル電気泳動
100V,30 分間により、
DNA を分離し確認した。
図2 マルチプレックス PCR による各病原因子陽
性株検査
表1 11 種のプライマーセット
カテ ゴリー
ETEC
ETEC
ETEC
EHEC
EHEC
EHEC
EIEC
EAggEC
DAEC
EPEC
EAggEC
標的遺伝子 増幅産物サイズ(bp)
反応系A
elt
123
estA1
179
estA2
179
stx1
234
stx2
234
stx2f
296
invE
379
反応系B
astA
109
afaD
207
eae
310
aggR
254
M : 100bp サイズマーカー
図1 マルチプレックス PCR 反応条件
レーン 1, O6:H16(STIb+LT)
estA2 : 179bp + elt : 123bp
94℃
94℃
50℃
72℃
72℃
4℃
5 min
30 sec
30 sec
60 sec
10 min
∞
30 cycle
94℃
94℃
55℃
72℃
72℃
4℃
5 min
30 sec
30 sec
60 sec
10 min
∞
レーン 2, O157:H7(stx1+stx2,eae)
30 cycle
stx1 + stx2 : 234bp
レーン 3, O63:H6(stx2f,eae)
stx2f : 296bp
レーン 4, O28:HNM(invE)
Ⅳ 検討事項
1
invE : 379bp
モノプレックス PCR によるプライマーの確認
レーン 5, negative control
後、マルチプレックス PCR により菌株の病原因
レーン 6, O142:H6(eae,bfpA)
子検出を検討
2
eae : 310bp
各コロニー及び増菌培地からの病原因子検出の
レーン 7, O44:H18(aggR,aafA,astA)
検討
3
aggR : 254bp + astA : 109bp
標準作業書(別紙1)を作成し、微生物担当職
レーン 8, O25:H4(afaD)
員全員が検査できるようにした。
afaD : 207 bp
レーン 9, negative control
30
図3 食中毒疑い検体から分離された大腸菌で確認
ドを得ることができた。バンドを得ることができな
できたバンド
かった 2 種(STIa,astA)については、プライマーが働
いていないのか使用した菌株が病原遺伝子を保有し
ていないのかを確認する必要があった。astA につい
ては、別の菌株を使用したことでバンドを得ること
ができた。しかしながら、STIa については、当所の
保存菌株の中に STIa 遺伝子を保有している大腸菌
がなかったことから、再度、一度目の検討と同じ菌
株を使用したがバンドは確認できなかった。ST 遺伝
子はトランスポゾンで伝達され、菌のプラスミド上
にコードされるため継代培養時に欠落することがあ
るとの報告もあり7)、今回も継代培養時に遺伝子欠
M : 100bp サイズマーカー
落したことによりバンドが出なかったものと考えら
レーン 1,8
O8 : H51
れる。
レーン 2,9
O8 : H51
そこで、STIa 遺伝子保有大腸菌の DNA テンプレ
レーン 3,10 OUT : HUT
ートをいただき、モノプレックス PCR を行った結果、
レーン 4,11 OUT : HUT
目的のバンドを得ることができた。これらのことか
レーン 5,12 OUT : HUT
らプライマーセットは正常に働いたことが確認でき
た。
(O113 : H−)感染研
レーン 5 (stx1,stx2 : 234bp)
次にプライマーを混合し陽性株をマルチプレック
ス PCR に供した。モノプレックス PCR では PCR 試
レーン 6,13 positive control
O157:H7(stx1+stx2,eae)
薬は ExTaq を使用し、マルチプレックス PCR では
レーン 6 (stx1,stx2 : 234bp)
Go Taq® Green Hotstart Master Mix を使用し、ホット
レーン 13(eae : 310bp)
スタート法を用いた。結果、すべての陽性株で良好
なバンドが得られた。
レーン 7,14 negative control
食中毒疑い事例から検出された大腸菌をマルチプ
レックス PCR に供したところ、1 検体で stx のバン
Ⅵ 考察
下痢原性大腸菌の検査について、分離菌の生化学
ドが確認できた(図3レーン5)。本来であれば、
性状、血清型別をまず行う従来法に比べ、病原因子
PCR に供しバンドが確認できた時点で病原性関連
の検索に PCR 法を用いることは、簡便な操作で検
遺伝子陽性とし血清型別を行うが、今回は検討段階
出感度も高いという利点がある。
と いうこと で血清 型別を 行ったあ との大 腸菌を
しかし、モノプレックス PCR による検索では各病
PCR に供した。また、E.coli (OUT : HUT)株について
原因子を確定するためには複数回の PCR を行う必
は、従来であれば O 血清が陰性の時点で下痢原性大
要がある。より迅速な方法が求められている場合、
腸菌陰性とするが、検討として PCR に供した。E.coli
混合プライマーを用いマルチプレックス PCR とす
(OUT : HUT)株は、ノロウイルスが原因であった食
ることで一度に複数の遺伝子の検出が可能である。
中毒事例の有症者検便から検出された E.coli であっ
マルチプレックス PCR の欠点として山内ら
6)
た。PCR の後、Loopamp を用い E.coli(OUT:HUT)
は
プライマーを混合にしていることによる干渉作用か
株の VT2 を確定させ、国立感染症研究所に送付した。
ら個々のプライマーを使用した場合より感度が落ち
血清型は(O113 : H−)と判定され、当所で保有してい
ると報告している。
る市販血清
(デンカ生研)
にはない血清型であった。
今回の検討では、まずモノプレックス PCR を行い
今回、生化学性状で E.coli と推定される菌につい
単独プライマーが働くかを確認した。一度目の検討
て、血清型を確認する前に病原因子を迅速に特定で
で 11 種のプライマーセットの内、9 種は良好なバン
きた。
31
今後は液体増菌培地から直接 PCR に供し、病原遺
Ⅸ 参考文献
伝子を検査してから血清型別を行うことを検討する
1)伊藤健一郎(2012)「下痢原性大腸菌の分類の見
ことで、さらに迅速性が増すと考える。
直しについて」IASR, 33, 5-7pp.
また、今回は検討していないが、今後は eae 遺伝
2)仲西寿男・丸山務(2009)
『食品由来感染症と食
子が陽性であった場合、追加で集束線毛の遺伝子
品微生物』, 中央法規出版, 250-251pp.
bfpA を調べる予定である。これにより EPEC を
3)勢戸和子(2009)「下痢原性大腸菌のはなし」,大
阪防疫協会, 146
typical EPEC(t-EPEC)と atypical EPEC(a-EPEC)に分
類する8)9)。
4)勢戸和子(2011)「下痢原性大腸菌」, モダンメデ
ィア, 57(1), 25-28pp.
Ⅶ まとめ
5)伊藤健一郎ら(2011)「遺伝子検査法」, 平成 23
下痢原性大腸菌の病原因子を特定するために、保
年度細菌研修
存菌株を用いマルチプレックス PCR の検討を行っ
6)山内昭則ら(2000)「大腸菌の病原因子検索のた
た。検討した 11 種すべてのプライマーで良好なバン
めの混合プライマーによる迅速検出法の研究」,
ドを得た。また、食中毒疑い事例から分離された大
三重保環研年報, 45(2), 44-47pp.
腸菌から病原性関連遺伝子を検出した。
7)櫻井純ら(2002)『細菌毒素ハンドブック』, サイ
今後の課題として、より迅速に結果を出せるよう
エンスフォーラム, 351-355 pp.
液体増菌培地からの検索及び平板コロニースイープ
8)小林一寛ら(2002)「下痢原性大腸菌における付
法での検索も検討していく。
着性因子保有状況とそれに基づく大腸菌検査法
の一考察」, 感染症誌, 76, 911-920pp.
Ⅷ 謝辞
9)伊藤健一郎(2008)「付着性大腸菌の検査法と判
定について」, IASR, 29, 224-226pp.
今回検討するにあたり DNA テンプレートを分与
していただきました兵庫県立健康生活科学研究所
健康科学研究センターの齋藤悦子先生、また貴重な
アドバイスをしていただきました大阪市立環境科学
研究所の中村寛海先生に心から感謝致します。
32
別紙1
【E.coli マルチプレック PCR】
1 抽出
(1)100 µL(コロニースイープのときは 500 µL)の滅菌蒸留水を 1.5 mL チューブに分注。
(2)菌体をチップの先などで少量取り、1.5 mL チューブ内の滅菌蒸留水に懸濁し、ボルテックス。
(3)1.5 mL チューブを 100℃で 10 分間熱し、その後 12,000 rpm, 10 分間遠心し、上清を検体とする。
2 マルチプレックス PCR 反応
(1)PCR 試薬 12.5 µL にプライマーミックス溶液(反応系 A の場合 0.4 µL のプライマーミックス溶液、反応系 B の
場合 0.2 µL のプライマーミックス溶液)を加え、そこに DNA テンプレート 2.4 µL を加え 25 µL にする。
(2)反応条件は 94℃で 5 分間の後、94℃30 秒、反応系 A では 50℃30 秒、反応系 B では 55℃秒、72℃60 秒を
30 サイクル、その後 72℃で 10 分とする。
(3)2%アガロースによるアガロースゲル電気泳動により、DNA を確認。
3 陽性の場合
(1)平板からコロニーを選択し、生化学的性状・血清型を調べる。
(2)疫学的情報を調べ、総合的に判断する。
(3)eae 遺伝子陽性の場合は bfpA 遺伝子を調べる。
Go Taq® Green
Hotstart Master
Prim er Mix(A)
DDW
Template
94℃
94℃
50℃
72℃
72℃
4℃
カテ ゴリー
ETEC
ETEC
ETEC
EHEC
EHEC
EHEC
EIEC
12.5
0.4
9.7
2.4
25.0
5 min
30 sec
30 sec
60 sec
10 min
∞
Go Taq® Green
Hotstart Master
Primer Mix(B)
DD W
Template
μL
μL
μL
μL
μL
30 cycle
94℃
94℃
55℃
72℃
72℃
4℃
カテゴリー
標的遺伝子 増幅産物サイズ(bp)
反応系A
elt
123
estA1
179
estA2
179
stx1
234
stx2
234
stx2f
296
invE
379
EAggEC
D AEC
EPEC
EAggEC
33
5 min
30 sec
30 sec
60 sec
10 min
∞
12.5
0.2
9.9
2.4
25.0
μL
μL
μL
μL
μL
30 cycle
標的遺伝子 増幅産物サイズ(bp)
反応系B
astA
109
afaD
207
eae
310
aggR
254
「尼崎市立衛生研究所報第 38 号、2011」
HIV-1 RNA 定量法(KK-TaqMan 法)の検討
微生物担当
久 保
明 奈
AKINA KUBO
萩 原 康 裕
YASUHIRO HAGIHARA
村 山
隆 太 郎
RYUTARO MURAYAMA
林
千 尋
CHIHIRO HAYASHI
感染初期で抗体が弱陽性の場合などは WB 法で
判定ができない。
したがって国立感染症研究所「病原体検出マ
ニュアル」では、確認検査として WB 法が判定
保留、または陰性であっても、感染初期が疑わ
れる場合は核酸増幅検査を行い、感染初期か否
かを確認することが記載されている。
そこで、当所においても核酸増幅検査を導入
すべく、HIV 検査体制研究班(厚生労働科学研
Ⅰ はじめに
AIDS(Acquired immunodeficiency syndrome:
後 天 性 免 疫 不 全 症 候 群 ) は HIV ( Human
immunodeficiency virus:ヒト免疫不全ウイル
ス)を病原体とする感染症であり、1981 年に最
初の症例が報告されて以来世界中に波及してい
る。2011 年末現在、世界の HIV 陽性者数は 3400
万人であると報告されている 1)。日本において
も 2011 年の HIV 感染者、AIDS 患者の新規報
告件数は合計 1529 件と、減少の兆しは見られ
ていない 2 )。 感染を早期に発見し、適切な治療
を開始することが、流行の拡大を防ぐために極
めて重要である。
HIV の検査は通常スクリーニング検査と確
認検査の2段階で行われる。当所では尼崎市保
健所から搬入された血液検体の HIV 抗体検査
を実施しており、スクリーニング検査としてジ
ェネディア HIV-1/2 ミックス PA(富士レビオ)
による凝集法(PA 法)を行い、PA 法が陽性の
場合は追加のスクリーニング検査としてエスプ
ライン HIV Ag/Ab(富士レビオ)によるイムノ
究費補助金エイズ対策研究事業)で開発された
汎用リアルタイム PCR 装置を用いた HIV-1 定
量法(KK-TaqMan 法)について検討したので
報告する。
Ⅱ 方法
1
試料
スタンダードとして、HIV-1 cell line 8E5 細胞
培養上清を用いた。市販血清により、8E5 培養上
清の希釈系列 500,000、50,000、5,000、500、150、
50 コピー/mL を作製し、標準曲線として 500,000、
5,000、150 コピー/mL の3点を、高濃度、中濃度、
クロマトグラフィー法(IC 法)を行った後、確
認検査としてラブブロット1,2(バイオ・ラ
ッド・ジャパン)によるウェスタン・ブロット
法(WB 法)を行っている。そして典型的な陽
性パターンを示す場合は HIV 感染と判定して
きた。
HIV 感染症では感染してから抗体が産生さ
れるまでに、感染を診断できない期間(ウイン
ドウ期)が存在する。WB 法は正確性が求めら
れるためスクリーニング検査に比べ感度が低く、
34
低濃度陽性コントロールとして 50,000、500、50
コピー/mL を用いた。陰性コントロールとして希
釈用血清を用いた。
検査材料としては、当所においてスクリーニン
グ検査で陽性となったが WB 法で陽性が確定でき
なかった2検体(Sample 1、Sample 2)と、陽
性が確定された1検体(Sample 3)の血清各 500
μL を用いた(表1)。
PA法
2
IC法
WB法
抗体 抗原 HIV-1 HIV-2
Sample 1
+
−
−
−
−
Sample 2
+
+
−
±
−
Sample 3
+
+
−
+
−
表 1
45
確認検査
Threshhold cycle (CT)
スクリーニング検査
40
35
30
y = -3.30x + 45.24
2
R = 0.997
25
20
KK-TaqMan 法に用いた検査材料
1
2
3
4
5
Log (Copy number)
6
試薬
市販血清:EXA Liquid 3 Normal(エーディア
図 1
標準曲線
株式会社)、RNA 抽出キット:QIAamp UltraSens
Virus Kit(QIAGEN)、リアルタイム PCR 試薬:
2
陽性、陰性コントロールの測定
SuperScriptⅢ Platinum One-step Quantitative
HIV-1 cell line 8E5 細胞培養上清から調製した
RT-PCR System with ROX(Invitrogen)、プラ
50,000、500、50 コピー/mL をそれぞれ高濃度、
イマー、プローブ:Applied Biosystems で受注合
中濃度、低濃度コントロールとして KK-TaqMan
成、3M 酢酸ナトリウム 遺伝子検査用(Wako)
法による測定を試みた。陽性コントロールは高濃
度、中濃度では増幅が確認されたが、低濃度では
3
機器
増幅サイクル終盤にシグナルが認められただけで
リ ア ル タ イ ム PCR 装 置 7500 ( Applied
十分な増幅は確認されなかった(図2)。標準曲線
Biosystems)
より求めた定量値は、高濃度コントロールが
43,223 コピー/mL、中濃度コントロールが 364 コ
4
操作方法
ピー/mL であった。陰性コントロールではシグナ
国立感染症研究所 「病原体検出マニュアル」
エイズ/HIV 感染症
ルは見られなかった。
5. HIV-1 RNA 定量法
(KK-TaqMan 法)(p.23-26)に準ずる。
高濃度陽性コントロール
50,000 コピー/mL
Ⅲ 結果
1
標準曲線
HIV-1 cell line 8E5 細胞培養上清から調製した
中濃度陽性コントロール
500 コピー/mL
3 つの希釈系列 500,000、5,000、150 コピー/mL
を用いて標準曲線を作製した(図1)。Slope 値が
-3.30 となり、当マニュアルにおいて基準とされ
低濃度陽性コントロール
50 コピー/mL
る-3.80(増幅効率 91.5%)∼-3.32(増幅効率
100%)の範囲よりわずかに大きい値となった。
相関係数は R2=0.997 となり、良好な直線性が得
られた。
図 2
35
陽性コントロール Amplification Plot
3
の GAG バンド(P24/25)が検出されており、HIV-2
検査材料の測定
Sample 1、Sample 2、Sample 3を用いて、
については 1 本の GAG バンド(P26)が検出さ
KK-TaqMan 法による HIV-1 RNA の定量を試み
れていた。しかし、いずれも HIV 陽性基準を満た
た。結果、Sample 1では増幅が見られなかった
していなかった。そして KK-TaqMan 法による
が、Sample 2、Sample 3で増幅が確認された
HIV-1 RNA の定量を行った結果、増幅が確認さ
(図3)。標準曲線より求めた定量値は、Sample
れた。コピー数から見て陽性コントロールが十分
2が 156,035 コピー/mL、Sample 3が 281,941
に検出できていた濃度であったため、HIV-1 陽性
コピー/mL であった。
と判断した。抗体が十分に産生されていない感
染初期であったと推測される。
Sample 3については PA 法、IC 法、WB 法と
もに陽性であり、KK-TaqMan 法による HIV-1
Sample 3
RNA の定量においても陽性となった。
Sample 2
以上のことから、確認検査として核酸増幅法を
導入することは、感染の早期発見及び偽陽性の排
除のために非常に有用であることが分かった。
一方で、今回の検討でいくつか問題点もあった。
Sample 1
標準曲線の Slope 値はマニュアルに記載されてい
る範囲ではなく、また、低濃度陽性コントロール
は十分に増幅されなかった。RNA 抽出の際の前処
理が慣れない操作であったため、ここでの RNA
図 3
Sample1∼3 Amplification Plot
の損失などが考えられ、さらなる条件検討が必要
である。
Ⅳ 考察
当所ではこれまで、スクリーニング検査で陽性
Ⅴ 謝辞
となった場合、確認検査として WB 法のみを行っ
KK-TaqMan 法を検討するにあたり、HIV-1 cell
てきた。WB 法で陰性または判定保留となった場
line 8E5 細胞培養上清を送付して下さり、また、
合は、数週間後の再検査もしくは病院にて核酸増
様々なアドバイスを頂きました神奈川県衛生研究
幅検査を受けるよう勧めてきた。しかし、最近に
所の近藤真規子様に深く感謝致します。
なってそのようなケースが増えてきたため、当所
Ⅵ 参考文献
においても核酸増幅法の検討を試みた。
Sample 1については、PA 法のみ陽性で、WB
1)UNAIDS:UNAIDS レポート「2012 Report
法では明瞭なバンドは検出されなかった。そして
on the Global AIDS epidemic」
2)厚生労働省エイズ動向委員会:平成 23 年エ
イズ発生動向年報
KK-TaqMan 法による HIV-1 RNA の定量を行っ
た結果、増幅は確認されず、HIV-1 は陰性である
ことが分かった。つまり、PA 法の偽陽性であっ
たと考えられる。
Sample 2については、PA 法、IC 法における
抗体検査はともに陽性であった。また、WB 法で
は HIV-1 については1本の ENV バンド(GP160)
と 2 本の POL バンド(P68/66、P34/31)と 1 本
36
「尼崎市立衛生研究所報第38号,2011」
【体験レポート】
「子ども宿題研究所」の開催について
自宅でもできるように「子ども宿題研究所
平成24年夏、電力不足を乗り切るため、本市
記録
では、市民や事業者と一緒になって「あまがさ
ノート」を配布し、実験のやり方や記録ができる
き・みんなの節電プロジェクト」に取組み、その
ようにした。
ひとつとして、電力需要がピークとなる午後1時
【子ども宿題研究所記録ノート】
から4時の間、公共施設を「クールスポット」と
して開放した。
この取組に衛生研究所も参加し、夏休みの宿題
に役立ててもらおうと、「子ども宿題研究所」と
称して子ども向けの科学実験などを実施した(8
月13日∼17日午後2時間程度開催)。
広報は市報以外に当該研究所の校区である小学
校の5,6年生にチラシを配布したほか、本市シ
ティプロモーション推進部の協力を得て、新聞社
や地元ミニコミ紙への掲載などを行った。
開催日がお盆期間であることから、あまり多く
の人出を期待していなかったため、開催場所も図
書室で定員各日先着20名程度としていたが、い
子どもたちは実験の様子をノートにどんどん記
ざ蓋を開けてみると、保護者を合わせて各日30
録しています。
名以上の参加があり、急遽、別の実験室も開放し
た。
開催期間中行った実験内容は下記のとおりであ
る。
○
紫キャベツの色変わり実験
○
ヨウ素でんぷん反応
○
ビタミンCの酸化還元反応
○
ぷよぷよたまごを作ってみよう!
○
いろいろな微生物を観察しよう!
(パン酵母や納豆菌、乳酸菌など)
○
備長炭電池のしくみやいろいろな発電方法
○
ペーパークロマトグラフィー など
実際に実験を行う際は、夏休みの宿題として、
37
【いろいろな微生物を観察しよう!】
【ぷよぷよたまごを作ってみよう!】
パン酵母やヨーグルト、納豆など身の回りの
卵と醸造酢を使って、ぷよぷよたまごの作り方
身近な微生物を観察し、スケッチしました。
を紹介し、浸透圧のしくみも説明
子ども達はぷよぷよたまごに釘付け!
【備長炭電池のしくみ】
備長炭電池で発電の様子を観察
みんなでパン生地をさわり、自分達が普段食
べているものにも微生物が活躍してることを実
感!
電池も使わず備長炭と塩水、ホイルだけなの
にモーターが回ってみんな驚き!です。
38
【実験終了後】
【ペーパークロマトグラフィー】
実験終了後、子ども宿題研究所長(衛生研究
紙と水を使ってペンの色がどんどん分かれて
所長)にはんこを押してもらい、缶バッチをプ
いくのを体験!
レゼント!
子どもたちに自分が好きな色を紙に塗っても
「子ども宿題研究所」特製缶バッチ!
らいました。
ペンの色がみるみるうちに何色にもきれいに
分かれます。
【紫キャベツの色変わり実験】
キャベツから抽出した紫色の液にいろいろな
飲み物や洗剤などを入れると赤や青、緑、、、
といろいろな色に変化!ちょっと難しいけどア
ントシアニンについて説明。
最終日、子どもたちを見送ってから、みんな
で記念撮影!
初めての試みで職員一同、試行錯誤でしたが、
子ども達の喜ぶ笑顔で疲れも吹き飛びました!
色が変わった様子を色鉛筆などで記録ノート
に記入してもらいました。
39
○参加者年齢別
17
8月13日から17日の間、子ども130名、
14 14
保護者64名で合計194名の参加があり、今
13
13
後の事業に生かすため、アンケートを行った。
9
5
【アンケート結果】
3
7
6
7
4
2 2
1
2歳
3歳
4歳
5歳
6歳
7歳
8歳
9歳
10
歳
11
歳
12
歳
13
歳
14
歳
15
歳
不明
参加者総数は 194 人
(子ども 130 人、保護者 64 人)
そのうち、アンケート回答者数は 116 人
→アンケート回収率 89%
○参加者内訳
○子ども宿題研究所を知ったきっかけ
参加者数 内訳(人)
『子ども宿題研究所』を知ったきっかけは何ですか?(人)
市外, 不明,
2
11
その他, 3
インターネット,
9
サンケイリビン
グ, 9
ポスターやチ
ラシ, 43
友達から, 10
親から, 12
新聞, 12
市内,
103
およそ4割(43人)の子がポスターやチラシ
市内地区別参加者数(人)
大庄, 6
市報あまがさ
き, 20
を見て参加していた。
中央, 0
市内参加者の内、園田・立花・小田地区の参加
小田, 14
者が多かった要因としてハーティ等に掲示したポ
スターに効果があったものと思われる。
園田, 51
武庫, 14
※チラシはハーティの校区である上坂部小学校
の 5,6 年生の全児童に配布した。
立花, 18
参加者のうち 88%(103 世帯)が市内となって
おり、市内参加者のうち、80%(83 人)が市内北
部(武庫、立花、園田地区)在住者であった。
40
○面白かった実験は?
面白かった実験(人)
貝の浄化, 3
手洗い, 4
インク, 6
酵母, 6
ヨウ素でん
ぷん, 9
ぷよたま, 11
紫キャベツ,
73
発電, 14
紫キャベツの実験が約 60%(73 人)と圧倒に多
くなっている。
目に見えて状態や色の変化がわかるものが理由
として多かった。
高学年の子どもほど発電やヨウ素でんぷん等
様々な実験に興味を持ったようである。
○難しかった実験は?
むずかしかった実験(人)
ヨウ素でん
ぷん, 1
インク, 2
紫キャベ
ツ, 3
発電, 9
ぷよたま,
4
酵母, 8
75%(89 人)が難しかった実験は無いと回答し
ていることから、難しかった実験は少なかったと
考えられる。
なお、難しいと回答された実験は発電と酵母で
あった。
以
上
41
白紙
42
Ⅳ そ の 他
43
白紙
44
○尼崎市立衛生研究所の設置及び管理に関する条例
昭和 41 年 10 月 4 日
条例第 36 号
(この条例の趣旨)
第 1 条 この条例は、尼崎市立衛生研究所(以下「研究所」という。)の設置及び管理につい
て必要な事項を定めるものとする。
(設置)
第 2 条 衛生に関する各種の試験、検査、研究及び調査(以下「試験等」という。)を行い、
公衆衛生の向上及び増進に寄与するため、本市に研究所を設置する。
(昭 43 条例 20・平 5 条例 45・一部改正)
(位置)
第 3 条 研究所の位置は、尼崎市南塚口町 4 丁目 4 番 8 号とする。
(昭 42 条例 33・平 5 条例 45・一部改正)
(業務)
第 4 条 研究所は、次の各号に掲げる業務を行う。
(1) 微生物等に関する試験等
(2) 公害に関する試験等
(3) 食品衛生及び環境衛生に関する試験等
(4) 前各号に掲げるもののほか、公衆衛生に関する試験等
(昭 43 条例 20・一部改正、平 5 条例 45・全改)
(使用の許可)
第 5 条 市内に居住し、又は勤務場所を有する医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他市
長が適当と認める者で衛生に関する試験等のため研究所施設を使用しようとするものは、
市長の許可を受けなければならない。
(使用料)
第 6 条 前条の規定により使用の許可を受けた者(以下「使用者」という。)は、1 回 1,000
円の範囲内で規則で定める額の使用料を納付しなければならない。
2 使用者が、研究所施設の使用に際し、特別に薬品、資材等を要した場合は、前項に定め
る使用料のほか、別にその実費を徴収する。
(試験等の依頼)
第 7 条 市内に居住する者及び市内に事務所を有する者は、衛生に関する試験等の依頼を
することができる。
2 前項の規定にかかわらず、市長が特別の理由があると認めるときは、前項に規定する者
以外の者に対しても、その依頼に応ずることがある。
(昭 43 条例 20・平 5 条例 45・一部改正)
(手数料)
45
第 8 条 前条の規定により研究所に試験等を依頼しようとする者は、別表の範囲内で規則
で定める額の手数料を納付しなければならない。
2 別表の種別に該当しない試験等に係る手数料については、その都度定める。
(昭 43 条例 20・平 5 条例 45・一部改正)
(使用料及び手数料の納付時期等)
第 9 条 使用料及び手数料は、前納しなければならない。ただし、市長が特別の理由があ
ると認めるときは、この限りでない。
2 市内に居住する者で生活保護法(昭和 25 年法律第 144 号)による保護を受けているもの
又は市長が必要があると認める者に対しては、使用料及び手数料を減免することができる。
3 既納の使用料及び手数料は、還付しない。ただし、市長が特別の理由があると認めると
きは、この限りでない。
(原状回復義務等)
第 10 条 使用者は、建物又は付属設備を損傷し、又は滅失したときは、すみやかにこれを
原状に回復し、又はその損害を賠償しなければならない。ただし、市長が特にやむを得な
い事情があると認めるときは、この限りでない。
(委任)
第 11 条 この条例に定めるもののほか、研究所の管理について必要な事項は、規則で定め
る。
(以降省略)
46
○尼崎市立衛生研究所の設置及び管理に関する条例施行規則
昭和 41 年 11 月 30 日
規則第 76 号
(この規則の趣旨)
第 1 条 この規則は、尼崎市立衛生研究所の設置及び管理に関する条例(昭和 41 年尼崎市
条例第 36 号。以下「条例」という。)第 6 条、第 8 条及び第 11 条の規定に基づき、尼崎市
立衛生研究所(以下「研究所」という。)の管理について必要な事項を定めるものとする。
(使用許可の手続)
第 2 条 条例第 5 条の規定により研究所施設の使用の許可を受けようとする者は、研究所
施設使用許可申請書(第 1 号様式)を市長に提出しなければならない。
2 市長は、研究所施設の使用を許可したときは、研究所施設使用許可書(第 2 号様式)を申
請者に交付する。
(使用料)
第 3 条 条例第 6 条第 1 項に規定する規則で定める使用料は、別表第 1 のとおりとする。
(使用の制限)
第 4 条 市長は、次の各号の一に該当すると認めるときは、研究所施設の使用を許可しな
いことができる。
(1) 営利を目的として使用しようとするとき。
(2) 公安、風俗その他公益を害するおそれがあるとき。
(3) 建物又は付属設備を損傷するおそれがあるとき。
(4) その他管理上支障があるとき。
(試験等の依頼)
第 5 条 条例第 7 条の規定により研究所に試験、検査、研究及び調査(以下「試験等」とい
う。)の依頼をしようとする者は、依頼書(第 3 号様式)を所長に提出し、その承認を受けな
ければならない。
(昭 43 規則 20・平 5 規則 56・一部改正)
(検体の提出)
第 6 条 前条の場合において、当該試験等が検体を要するものであるときは、依頼者は、
所長の指示する量の検体を提出しなければならない。
2 前項の検体は、還付しない。ただし、依頼の際、あらかじめ申出があったものについて
は、残量があった場合に限り還付することがある。
(昭 43 規則 20・平 5 規則 56・一部改正)
(成績書の交付)
第 7 条 所長は、第 5 条の規定により依頼を受けた試験等が終了したときは、成績書(第 4
号様式)を依頼者に交付する。
(昭 43 規則 20・平 5 規則 56・一部改正)
47
(手数料)
第 8 条 条例第 8 条第 1 項に規定する規則で定める手数料は、別表第 2 のとおりとする。
(使用料及び手数料の後納)
第 9 条 条例第 9 条第 1 項ただし書の規定により市長は、次の各号の一に該当するときは、
使用料及び手数料を後納させることができる。
(1) 研究所施設の使用又は依頼された試験等が終了しなければ金額の算定が困難なとき。
(2) 国又は他の地方公共団体その他公共団体の使用又は依頼によるとき。
(3) その他市長が特別の理由があると認めるとき。
2 前項の規定により使用料及び手数料を後納しようとする者は、研究所使用料・手数料後
納申請書(第 5 号様式)を市長に提出しなければならない。
(昭 43 規則 20・平 5 規則 56・一部改正)
(使用料及び手数料の減免)
第 10 条 条例第 9 条第 2 項の規定に基づき、次のいずれかに該当する者が研究所施設を使
用し、又は研究所に試験等を依頼するときは、所定の使用料及び手数料から当該号に掲げ
る率に相当する額を減免することができる。
(1) 市内に居住する者で生活保護法(昭和 25 年法律第 144 号)による保護を受けているもの
及びこれに準ずると認める者 当該手数料の 10 割
(2) その他市長が特別の理由があると認める者 市長が定める率
2 前項の規定により使用料及び手数料の減免を受けようとする者は、研究所使用料・手数
料減免申請書(第 6 号様式)を市長に提出しなければならない。
(昭 43 規則 20・平 5 規則 56・一部改正)
(使用料及び手数料の還付)
第 11 条 条例第 9 条第 3 項ただし書の規定により市長は、次の各号の一に該当するときは、
既納の使用料及び手数料から当該各号に掲げる率に相当する額を還付する。
(1)
使用の許可を受けた者の責めに帰することのできない理由によって研究所施設の使用
ができなくなったとき 当該使用料の 10 割
(2)
使用の許可を受けた者が使用の日の前日までに使用の取消しを申し出たとき
当該使
用料の 10 割
(3) その他市長が特別の理由があると認めるとき 市長が定める率
2 前項の規定により使用料及び手数料の還付を受けようとする者は、研究所使用料・手数
料還付請求書(第 7 号様式)を市長に提出しなければならない。
(使用の許可の取消し)
第 12 条 市長は、次の各号の一に該当するときは、研究所施設の使用の許可を取り消すこ
とができる。
(1) 使用者が条例又は関係例規に違反したとき。
(2) 使用者が使用の目的又は使用の許可の条件に違反したとき。
48
(3) 使用者が申請書に虚偽の事実を記載したとき。
(4) その他管理上支障があるとき。
2 前項の措置によって使用者が損害を受けても、本市は、これに対し補償の責任を負わな
い。
(使用者の遵守事項)
第 13 条 使用者は、次の各号に掲げる事項を守らなければならない。
(1) 所定の場所以外で飲食し、又は喫煙しその他火気を使用しないこと。
(2) 使用を許可されない室又は付属設備を使用しないこと。
(3)
研究所施設の使用を終わったときは、直ちに清掃のうえ原状に復し、その旨係員に報
告し、点検を受けること。
(4) その他市長の指示した事項
(施行の細目)
第 14 条 この規則に定めるもののほか、研究所の管理について必要な事項は、主管局長が
定める。
(昭 52 規則 31・一部改正)
(以降省略)
49
お 知 ら せ
検査手数料の主なものは、次のとおりです。
飲料水適否検査セット
10項目 7,800円
【化学試験 8項目 4,000円】
外観 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素
色度 塩化物イオン
濁度 有機物(TOC)
臭気
PH値
【細菌検査 2項目 3,800円】
一般細菌数
大腸菌
浴場水検査セット
3項目 5,600円
【化学試験 2項目 3,700円】
濁度
過マンガン酸カリウム消費量
【細菌検査 1項目 1,900円】
大腸菌群
プール水検査セット
5項目 7,600円
【化学試験 3項目 3,800円】
濁度
PH値
過マンガン酸カリウム消費量
【細菌検査 2項目 3,800円】
一般細菌数
大腸菌
水 質
1菌種につき 1,900円
ただし、Oー157 及びレジオネラ菌 については 各3,400円
細菌検査
食 品
1菌種につき 3,600円
ただし、Oー157 については 4,400円
検査成績書再交付手数料
300円
□ 当所では、市内在住の方又は市内事業所からの依頼のみ受付けています。
□ 検査受付けは、原則的に毎週月曜日(月曜日が休日の場合は火曜日)の午前中(9時∼12時)です。
月曜日以外の検査を希望される方は、事前にご相談ください。
□ 料金は、前払いで検査依頼書提出と同時にお支払い願います。
□ 飲料水等水質検査については、あらかじめ所定の容器をお渡しします。
月曜日∼金曜日の9時∼17時30分の間に容器を取りにお越しください。
□ 遊泳用プールには、一般細菌数の基準も設けられており、同時に検査されることをお勧めします。
ただし、プール水検査セット料金には含まれていませんので、別途1,900円の負担が生じます。
□ なお、詳細及び不明な点については職員にお問い合わせください。
661−0012
尼崎市南塚口町4丁目4番8号 ハーティ21 5階
尼崎市立衛生研究所
TEL (06)6426−6355
FAX (06)6428−2566
50
☆ 阪急バス:西坂部より徒歩4分
☆ 阪急神戸線:塚口駅より徒歩 13 分
☆ JR 宝塚線:塚口駅より徒歩 13 分
51
尼崎市立衛生研究所 第 38号
平成 25 年 3 月 1 日印刷
平成 25 年 3 月 31 日発行
発行所 尼崎市立衛生研究所
〒661-0012 尼崎市南塚口町 4 丁目 4 番 8 号
TEL 06-6426-6355 FAX 06-6428-2566
E-mail:[email protected]
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