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日清食品・東洋水産

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日清食品・東洋水産
即席麺業界
日清食品・東洋水産
福田哲也ゼミナール
人間環境学部 4 期生
小久保
奈菜子
曽我
美千子
津山
1
剛
目次
1 はじめに………………………………………………………………………………………….3
2 業界概要 ………………………………………………………………………….……………..3
2-1
即席麺とは ………………………………………………………………….……………..3
2-2
安藤百福の生涯…………………………………………………………………………….4
2-3
即席麺の歴史…………………………………………………………………………….....6
2-4
即席麺業界の現状 ……………………………………………………………………….12
2-5
即席麺業界の動向 ……………………………………………………………………….14
2-6
即席麺のおいしさの秘密……………………………………………………………...…17
3 企業概要 ……………………………………………………………………………………….21
3-1
日清食品 ………………………………………………………………………………….23
3-2
東洋水産………………………………………………………………………………….. 26
4 財務分析 ……………………………………………………………………………………….30
4-1
成長性分析 ……………………………………………………………………………….30
4-2
収益性分析………………………………………………………………………………..38.
4-3
安全性分析 ……………………………………………………………………………….48
4-4
キャッシュフロー分析 ………………………………………………………………….51
4-5
財務分析まとめ………………………………………………………………………….. 55
5 企業分析 ……………………………………………………………………………………….56
5-1
経営理念………………………………………………………………………………….. 56
(1)日清食品
(2)東洋水産
5-2
リーダーシップ………………………………………………………………………….. 58
(1)日清食品
(2)東洋水産
5-3 経営戦略
………………………………………………………………………………….59
(1)日清食品
(2)東洋水産
6 戦略課題……………………………………………………………………………..…………61
6-1
日清食品
6-2
東洋水産
7 終わりに……………………………………………………………………………………….63
参考文献
…………………………………………………………………………………………65
2
1.
はじめに
(津山
剛)
1958 年、即席麺の歴史は始まった。安藤百福氏がほぼ一人で開発した即席麺という商品
は、2008 年現在、世界で 900 億食が消費されている。現在、即席麺は主食として、嗜好品
として、保存食として、世界中で必要とされている。即席麺市場は今では巨大だが、一人
の日本人によって開発されるまで、全く存在しない市場だった。一人の人間のアイディア
で生まれた市場が、現在どうなっているのか。参入する企業の経営戦略や、特有の課題を
明らかにするために本論文に取り組んだ。
本論文では、シェア上位 2 社である日清食品と東洋水産を取り上げる。この 2 社だけで
国内 70%に迫るシェアを持っている。日清食品は新機軸の商品を開発し、高付加価値商品
を販売する戦略をとっている。東洋水産は、従来からある市場に、価格訴求で販売する高
効率型の戦略をとっている。全く異なる戦略をとる 2 社が、市場を占有する背景を見てい
きたい。
最初に業界の持つ特徴と、現在の動向など、即席麺業界を語る上で欠かせない点を確認
する。次に取り上げる 2 社の概要や、成り立ち、特筆すべき点をまとめる。
そして財務諸表をもとに、両社の財政状態や経営状態を見ていく。それらをもとに、両社
の経営戦略をまとめ、最後に課題を示して終わりとする。
2.
業界概要
(小久保
奈菜子)
2‐1. 即席麺とは
即席麺とは、別名インスタントラーメンと呼ばれる加工食品の事である。乾燥している
麺にお湯をかけるだけで、手間をかけず簡単に食べられる。
主原料を小麦粉またはそば粉とし、加薬または薬味が添付されている。カップ麺の場合、
容器は使い捨ての場合が多い。
主食性、簡便性、保存性といった商品特性があり、比較的単価が安いので年代を問わ
ず多くの人に親しまれている。
また即席麺は食事の時だけではなく、様々な場面で利用される。例えば子供のおやつ
や夜食、仕事の合間の食事など、時間がない時もすぐに食べることが出来る為、専ら一
人暮らしの人に利用されることが多い。
3
2‐2. 安藤百福の生涯
(小久保
奈菜子)
ここでは、世界で初めて即席麺を開発した安藤百福の生涯について述べ、即席麺をどの
ような経緯で生みだしたのかをみていく。
1910 年 3 月 5 日に安藤は誕生し、幼い頃に両親を亡くしたので祖父母のもとで育てられ
た。祖父の仕事は繊維や織物を扱う呉服屋で、祖父の仕事をみながら商売に興味をもつ。
学校を卒業すると街に初めて出来た図書館の司書に就職するが、起業したいという野心を
抑えきれずに 2 年で退職する。
1932 年、資本金 19 万円で編み物のメリヤスを扱う「東洋莫大小」という会社を設立し
た。メリヤス商売は始めてからすぐ大ヒットし、仕入れを多大にしても間に合わない状況
であった。
1933 年、事業の拡大のため大阪市に「日東商会」を設立し、メリヤスの日本一のメーカ
ー「丸松」と手を組んだ。安藤は、社長を務める傍ら夜間に京都の立命館大学専門部経済
学科に通い、卒業後の 1996 年に同大学から「名誉経営学博士号」を受賞した。また、メリ
ヤス事業以外にも資本金 50 万円で蚕糸事業を始めたが、当時は太平洋戦争が真っ只中で、
戦局が悪化した為に、中止せざるをえなくなった。
一方、軌道にのっていたメリヤス事業も 1941 年に物資統制令が公布された為、自由に繊
維の仕事を打ち込める状況ではなくなったので、軍需工場で幻灯機の製造を始めた。そこ
で軍の部品横流疑惑が出た時に、安藤は被害者にもかかわらず罪をなすりつけられ、留置
所に入れられた。
留置所では不潔な食事を出され、安藤は絶食を続ける中で、食というものに突き当たり、
人間にとって食こそが最も崇高なものだと感じた。当時の食の大切さを感じた事が、即席
麺の開発の源であるといえる。その後、昔の知り合いに助けられ 45 日間の留置所生活は終
わった。
終戦後、空襲によって事務所や工場を失い、今まで取り組んできた事業は全て灰化した。
街には飢餓状態の人が溢れ、餓死者が道端で倒れていることもあった。それを見て「衣食
住というが、食がなければ衣も住も、芸術も文化もあったものではない。」と改めて食の大
切さを感じる。
1946 年、再出発として「食」に転向する決意をし、大阪府南部の泉大津市で製塩事業を
始めた。また、街には疎開先からの帰省者など短銃を持つ物騒な若者が溢れていたので、
安藤が面倒をみようと若者達に声をかけ、共に働いた。この製塩事業は、一部市販をした
がほぼ無料で配布し、企業活動ではなく社会奉仕に近かった為、一緒に働く若者達には給
料ではなく奨学金として金額を支給した。この奨学金として支給したことが、後に述べる
4
が事件となる。
1948 年には、事業を発展させようと泉大津市に中交総社を設立し、翌年の 1949 年には
「サンシー殖産」と商号を変えたが、一時事業を休止し、専門家を集めて国民栄養化学研
究所を設立した。当時、街では栄養失調の人が後を絶たなかった為、安藤は栄養食品を開
発しようとしたのである。そして牛や豚の骨からタンパク栄養食品になるエキスを抽出し、
初めての食品加工の成功となった。
しかし、1948 年に前述した製塩事業の際に若者達に支給していた奨学金が所得とみなさ
れ、二度目の留置所生活を送る。安藤は納得がいかず弁護団に頼み、処分の取り消しを求
めて裁判を進めた。しかし、訴えを取り下げれば即刻に放免すると言われ、家族の生活も
考え訴えを取り下げた。
放免された後に、信用組合の理事長に就任するが、1957 年に信用組合が倒産した事によ
り安藤は全ての負債を弁済することにより、財産を失った。この経験は借金返済の苦労を
教訓とし、後に日清食品を創業して以来、無借金経営を貫いている。
無一文になった安藤は、戦時中に食に対する強い思いを起こし、即席麺の開発を試みた。
なぜ即席麺であるかは理由が 2 つある。1 つは過去にラーメンの屋台で人々が寒さに震えな
がら並ぶ長い行列を見た時に、ラーメンという食べ物に深く関心を持ち、大きな需要があ
るのではないかと感じたからである。2 つ目は安藤が昔から日本人は麺類を好むが、粉食奨
励にないことが疑問であった。その事を厚生省に尋ねると、安藤が研究することを勧めら
れたからだ。
安藤は即席麺の開発の為に、自宅の庭に研究小屋を造り、天井から下がるたった一つの
電球の光の下で、早朝から夜中まで一日も休まず、丸一年間研究を続けた。手探りの状態
で研究を始めた為、開発するまで何度も壁にぶつかり、決して簡単なものではなかった。
それでも家族からの助けを借りながら、試行錯誤を繰り返し、1958 年 8 月 25 日に世界で
初めての即席麺「チキンラーメン」を開発することに成功した。スープをチキン味にした
のは、チキンのスープは洋の東西を問わず、古くから料理の基本となる味だからである。
戦時中の食に対する思いと、ラーメンの屋台の行列や厚生省でのやり取りが、安藤を即席
麺の開発に導かせた。
5
2‐3. 即席麺の歴史
次に、即席麺が誕生してからどのように発展していったのかをみていく。
即席麺の誕生
即席麺は、安藤百福の歴史でも触れたが、1958 年に日清食品の創業者安藤百福が世界で
初めて「チキンラーメン」を開発したことから始まる。自宅に研究小屋を設け、試行錯誤
を繰り返しながら「おいしいこと、保存できること、調理が簡単なこと、価格が適正な
こと、安全なこと、この 5 つを目標に、開発を進め、味付即席中華麺の『チキンラーメ
ン』は誕生した。」
(『即席麺家頁』
,社団法人 日本即席食品工業協会,
http://www.instantramen.or.jp/history/history01.html ,2008 年 10 月 7 日)
記念すべき第一号となるチキンラーメンは、1 食 35 円の価格をつけたものの、開発
当時は中華そばを店で食べるのと変わらない値段だった為、高すぎると問屋は扱うのを
拒んだ。そこで安藤氏自ら百貨店に出向き、直接試食販売を行ったところ、消費者から
「美味しい」と大きな支持を受け、持参した 500 食は瞬く間に売れた。こうして簡単
で便利なチキンラーメンは後に「魔法のラーメン」と呼ばれるようになり、爆発的な売
れ行きを見せた。
進化する即席麺
好評な売れ行きの為、最初は半信半疑で反応が冷たかった問屋も次々とチキンラーメン
を求めるようになった。急激な需要の増加で品不足に陥ったチキンラーメンだが、そこに
目をつけた 200 社~300 社のメーカーが市場参入を図り、1961 年には市場は 5 億 5 千万食
と多量の即席麺が出回った。ここで即席麺というだけで珍しがられる黄金時代は終わった
といえる。また、生産量が増えるにつれて、消費者から味や品質に対しての目が厳しくな
ってきたので、その改善策として、明星食品が 1962 年に味付けタイプからスープ別添えタ
イプに踏み切り、消費者の好感を得ることに成功した。スープ別添えタイプは、味付けタ
イプに比べて麺やスープに味わいを深めることができ、他の具材を加えることも可能であ
る。これを機に、スープ別添えタイプが主流となり、他社を刺激して即席麺の新しい流れ
を作りだすこととなった。
翌年には日清食品、東洋水産、エースコックの各社から焼きそば、和風麺、ワンタン麺
等の新製品が次々に登場した。サンヨー食品からは坦坦麺の新製品がブームを巻き起こし、
同社は一躍大手メーカーの仲間入りを果たした。
「1961 年の生産食数 5 億 5 千万食に対し、
1963 年には 20 億食、1965 年になると 25 億食に達した。
この 60 年代中盤は、インスタントラーメンにとって第二期黄金時代とも言える時期となり、
各メーカーとも生産の増強を図った時期である。
こうした価格競争や商品開発競争によって即席麺は大きく成長していった。」
(
『即席麺家
6
頁』
,社団法人 日本即席食品工業協会,
http://www.instantramen.or.jp/history/history02.html,2008 年 10 月 7 日)
高品質時代へ
先程も述べたが、新しく開発したスープ別添えタイプを皮切りに、1963 年から即席麺市
場は焼きそば、和風麺、ワンタン麺、坦坦麺と、多様化をみせていく。この商品の多様化
は、原材料の品質改良や加工技術の向上につながった。その具体例としてはサンヨー食品
からガーリック味、乾燥ネギ入りの「サッポロ一番」や日清食品から高品質化商品として
胡麻ラー油付きの「出前一丁」、明星食品から麺の原料の小麦粉を特等粉にした「明星チャ
ルメラ」等、少しの工夫がヒット商品となり、
「各メーカーは高品質化をキーワードに、自
社の主力商品を超える商品開発を急いだ。」(
『即席麺家頁』
,社団法人 日本即席食品工業
協会,
http://www.instantramen.or.jp/history/history03.html,2009 年 1 月 4 日)
また、1968 年には明星食品の子会社、ダイヤ食品から始めてのノンフライ麺が誕生した。
これは、油で揚げずに熱風で乾燥させた物であり、食感が生麺に近くスープの風味を生か
しているという事で業界の注目を集め、市場にノンフライ麺ブームを起こした。
カップ麺登場
1970 年は生活費に占める嗜好品費と外食費の割合が増え始め、前年にチクロショック 1で
加工食品全般が敬遠されたことや、希望小売価格の値上げ等により、初めて即席麺の販売
数量が減少した。
市場が飽和状態になった頃、発泡スチロール容器に入った味付け麺「カップヌードル」
を日清食品が開発した。100 円という高価格で売り出し、容器は包装材、調理器、食器とい
う 3 つの機能を果たす事で、今までにない商品として業界に新しい風を吹かせた。
そのことで「1973 年までにカップ麺に参入した企業は日清食品のほか 14 社、ブランド
数 27 に及び、カップ麺の成功は『カップしるこ』、
『カップコーヒー』などの登場に見られ
るように、即席麺以外の食品にも影響を与えた。」
(
『即席麺家頁 』
,社団法人 日本即席食
品工業協会,http://www.instantramen.or.jp/history/history04.html, 2008 年 10 月 7
日)
高度経済成長時代の終わり
1972 年の秋から、石油ショックにより日本の経済は深刻なインフレに陥った。即席麺は
小麦、油脂類、包装資材類などの値上げが響き大きなコストアップとなった。
石油ショックは約半年で終わったが、「世界は深刻な景気の落ち込みに見舞われ、日本の
1.チクロショックとは、1969 年にアメリカでチクロ(人工甘味料)に発がん性の疑いが発覚した為、それを機に日本では
チクロを使用した食品は一切販売せず、使用禁止となること。
7
高度成長時代はにわかに低成長時代へと移行していった。その経験から、日本人は考える
消費生活者へと変わり、より厳しい商品選択の目をもつようになった。」よって大手食品メ
ーカーは即席麺業界など新たな市場へ新規参入に踏み切る傾向が見られる。
(『即席麺家頁 』,社団法人 日本即席食品工業協会,
http://www.instantramen.or.jp/history/history04.html,2008 年 10 月 7 日)
大手食品メーカーの市場参入
1973 年にはハウス食品、カネボウフーズ、丸大食品など大手食品メーカーが即席麺市場
の参入を果たした。その中でもハウス食品の「ハウスシャンメンしょうゆ味」は好調な売
上で、翌年には塩味、みそ味を加え、売上げ 100 億円の大台に乗せる勢いであった。
このことは即席麺業界に良い刺激を与え、後に競って新商品を開発することになる。大
手食品メーカーが発売したつけ麺や、明星食品が発売したノンフライ麺「明星ラーメンめ
ん吉」が再び消費者からの人気を呼んだ。
続々と新商品発売
その後、
「カップ麺の総生産量は、
『カップヌードル』が発売された翌年 1972 年には 1 億
食、順調に伸び続け、3 年後の 1975 年には 11 億食と、驚異的な伸びを示した。
1974 年、恵比寿産業が『エビスカップ焼そば』を出し、引き続きエースコックが『カッ
プ焼きそばバンバン』を出した。1975 年、まるか食品が初めて四角い容器に入れた『ペヤ
ングソース焼きそば』を発売、そして 1976 年には日清食品の『焼きそば UFO』が登場し
カップ焼きそばは、全てヒットした。
和風麺では、1975 年に日清食品の『カップヌードル天そば』に続いて、東洋水産の『マ
ルちゃん・きつねうどん』、
『マルちゃん・天ぷらそば』、エースコックの『きつねうどん』、
サンヨー食品の『カップスターきつねうどん』、カネボウフーズ『もち入りきつねうどん』、
翌年に日清食品の『きつねどん兵衛』などが出揃った。」
(『即席麺家頁』,社団法人 日本
即席食品工業協会,http://www.instantramen.or.jp/history/history04.html,2008 年
10 月 7 日)
カップ麺の売れ行きは特に焼きそばと和風麺が目立ち、1976 年にはカネボウフーズから
中華麺の初めてのカップ入りノンフライ麺が誕生した。1977 年には明星食品が初めて丼ぶ
り型容器に入ったカップ麺を発売した。その後の第二次石油ショックと、後述する海外進
出によって、消費者の選択の目が厳しくなった。そうした消費者に選ばれるため、今まで
のような画一的な商品展開だけでなく、商品の差別化や高級化の傾向がみられるようにな
った。
差別化の例としてエリア限定商品が挙げられる。九州独特のとんこつ味や、北海道や関
西向けの地域限定商品を発売し、や自社商品のミニサイズ化により消費者の興味を引いた。
次に高級化の例として、
1980 年から一食 300 円のカップ麺を発売したことが挙げられる。
8
以来、続々と高級価格の商品が発売され、即席麺は安いというイメージをくつがえした。
1980 年の一般的な小売価格は、袋麺 70 円、カップ麺 130 円だったが、
「1983 年 2 月に小
麦の政府売り渡し価格が 8.7%引き上げられたことにより、各社は一般の袋麺を 80 円、カ
ップ麺を 140 円に改定した。」(即席麺家頁 ,社団法人 日本即席食品工業協会,
http://www.instantramen.or.jp/history/history05.html,2008 年 10 月 7 日)
また、1991 年に市場に新しい商品明星食品から初めて生タイプ即席麺「食亭」が誕生し、
続いて翌年に日清食品から「日清ラ王」が生タイプ即席麺が発売された。
即席麺市場に新しい「生タイプ麺」が登場して売上げが伸び、1955 年には総生産量
を袋麺、カップ麺と合わせると、51 億 9000 万食となった。
また、1993 年から比べると約 4.74%の伸びであり、初めて 50 億を超えた。
(図 2-3-1
を参照)
図 2-3-1
即席麺市場の総生産量の推移
生産量
千万食
600.0
500.0
400.0
300.0
200.0
100.0
年次
9
20
06
20
03
20
00
19
97
19
94
19
91
19
88
19
85
19
82
19
79
19
76
19
73
19
70
19
67
19
64
19
61
19
58
0.0
海外進出
この後、新製品が続々と登場し、国内即席麺市場は飽和状態となったのをきっかけに、
1970 年に即席麺メーカー各社の本格的な海外進出が始まる。
日本企業による海外進出は、国内商社や海外企業をパートナーとして、技術提携、技術
供与などさまざまな形で相次ぎ、全世界へと広がりを見せる。その後も時代の変化に対応
し、グルメ嗜好への対応などをしてきた即席麺業界に大きな動きが見られた。1990 年代に
農林水産省や厚生省が日本型食生活の再評価を提言したこともあり、健康志向が高まる
中、1993(平成 5)年1月1日から、即席麺類の「栄養成分表示に関する基準」に基づ
いて、エネルギー、たんぱく質、脂肪、炭水化物、食塩の5項目については表示を義務付
けたり、「第1回世界ラーメンサミット」の開催、世界ラーメン協会 2の設立など大きな動
きが見られた。
この世界ラーメン協会や日本即席食品工業協会、日本ラーメン公正取引協議会などの設立
で、即席麺業界は、情報収集や課題について議論する場が設けられた。
以下は、世界ラーメン協会に参加している国別のメーカーである。
ベトナム「Acecook Vietnam Co., Ltd.」,
フィリピン「Monde Nissin Corporation」,
マレーシア「Nestle Products Sdn. Bhd」,
ブラジル「Nissin-Ajinomoto Alimentos Ltda.」,
日本「日清食品ホールディングス株式会社」,
韓国「Nong Shim Co., Ltd」,
インドネシア「PT. Indofood Sukses Makmur Tbk.」,
タイ「Thai President Foods P.C.L.」,
中国「Tingyi (Cayman Islands)Holding Corporation」,
台湾地区「Uni-President Enterprises Corporation」
2005 年には、日清食品が即席麺を宇宙食として開発した。また 2008 年 4 月からはカッ
プヌードルの発泡スチロール容器が紙製の容器に変わり、エコロジーに取り組む面もみら
れる。
即席麺が開発された当初は、問屋に高いと拒まれ消費者からも半信半疑の目で見られた
世界ラーメン協会とは、1977 年 3 月に海外 9 ヶ国を代表するメーカー10 社が、「第 1 回世界ラーメンサミット」を
2
開催した時に設立された。これは国際食として即席麺の「共通する環境的な問題や、技術的な問題などについて世界中
のメーカーが話し合い、情報交換をはかっていくことを目的としたものである。」
(即席麺家頁,社団法人 日本即席食品工業協会,http://www.instantramen.or.jp/history/history06.html,2008 年 10
月 7 日)
10
が、簡便性が高く単価が安くて安全面にも気を使い、改良を重ねたところ、事態は好転し、
即席麺はまたたく間に人気が出た。
前述したように、即席麺は、一種類しかなかった味が各メーカーにより次々と開発され、
生産方法・工程も変わり、今までの常識を壊してきた。その後、種類が多様化し数が豊富
になっていく中、競争はますます激しくなった。今では国内だけでなく、海外にも宇宙に
も進出している。このような歴史を経て、今では即席麺は国民にとってなくてはならない
存在となっている。
ここまで即席麺業界の歴史をみてきた。次に、即席麺業界の現状をみていく。
11
2‐4.即席麺業界の現状
4 社による寡占市場
図 2-4-1.
平成18年度即席めん市場シェア
10%
7%
日清食品
12%
51%
東洋水産
サンヨー食品
エースコック
その他
20%
現在の国内の即席麺業界は上位4社で全体のほぼ 51%を占め、寡占化状態にある。図
2-4-1 のように、平成 18 年度即席麺業界市場シェアは 1 位の日清食品に続き、2 位が東洋
水産、3 位がサンヨー食品、4 位がエースコックで占め、大手メーカーによる寡占状態が揺
ぎないものになっている。
しかし、昨年までの即席麺市場シェアは 4 社ではなく 5 社で占めており、前述した会社
の他に、4 位に明星食品がランクインしていた。その明星食品を同年 3 月に日清食品が買収
し、完全子会社化した。その結果、日清食品は明星食品が持っていたシェアを合わせて市
場シェアの半分以上を独占し、2 位以下を大きく引き離す結果となった。
前述したように、5 社から 4 社に減り寡占化が続く即席麺市場だが、寡占市場になるま
では厳しい競争が背景にあった。即席麺の歴史に述べたように、即席麺が開発された翌年
1959 年からたくさんのメーカーが即席麺市場に参入してきたことが原因である。その数は
200 社から 300 社と言われ、東洋水産、サンヨー食品、明星食品、エースコックが参入し
たのもこの時期である。前述したが、メーカーが増えたことにより即席麺は多量に生産さ
れ、市場に出回った。売り出された当時は消費者にめずらしがられ好調な売れ行きをみせ
ていたが、そのうち商品を差別化しなくては売れなくなった。その為、各メーカーは市場
の中で生き残る為に、激しい競争をみせる。研究を重ねより良い物を生み出そうとし、「カ
ップヌードル」
(日清食品)、
「赤いきつね」
(東洋水産)、
「サッポロ一番」
(サンヨー食品)、
「スーパーカップ」(エースコック)等、自社のブランド商品となる商品を作り出した。消
費者の興味をひく為、各メーカーは競争しながら品質・価格面での多数の改良等を行った。
その結果、厳しい企業間戦争により撤退した企業も多く、勝ち残ったメーカーで市場を寡
12
占し現在までに至る。この競争があったからこそ、スープ別添えタイプ、ノンフライ麺の
開発など製造技術の発達が伺える。
また、競争する一方で協調する面もみられる。1964 年に日本即席食品工業協会、1966 年
に日本即席食品工業公正取引協議会、1997 年に世界ラーメン協会が設立した。この協会は
即席食品の品質向上や製造技術改善に関する調査研究、消費者に対する広報宣伝活動や情
報の提供等を目的としている。つまり情報と意見を交換、共有し合い、競争しながらも助
け合うという環境が出来上がったのがこの時代であった。これにより、現在まで企業間の
生き残りをかけた競争の激化を協会が管理することによって、バランスを取りながら成長
してきたといえる。
原材料価格高騰
図 2-4-2.
燃料及び包装資材の企業物価指数の推移
「小麦の政府売渡価格は、国際価格の上昇を反映して、2007 年 4 月から前年度比平均
1.3%の引上げ。10 月からは前期比平均 10%の引上げを行った。これを受けて、製粉各社
はそれぞれ値上げを実施している。
」
(資料:『最近の農産物・食品価格の動向について』
,平成 20 年 1 月農林水産省 ,
http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_mirai/04/pdf/ref_data2.pdf ,2008 年 10 月 30 日)
上記で述べたように、輸入小麦の価格が上昇して食品業界は苦しい状況にある。その中
13
でも主原料を小麦粉とする即席麺業界は、厳しい状況に陥っている。図 2-4-2 のように、主
原料の小麦粉だけにとどまらず、商品を輸送する際に関わってくる重油・ガソリン等の燃
料費、容器に関わってくるポリスチレン等が上がっていることが起因している。原材料価
格高騰により麺の主原料の小麦粉、容器、重油など必要な原材料価格が全て上がった。
原材料価格高騰の事実を踏まえて、これからの即席麺業界の動向を見ていく。
2‐5. 即席麺業界の動向
商品の価格改定
前章で述べた原材料価格高騰の影響で、加工食品業界は小麦製品の価格改定を平成 19 年
から始めた。国内即席麺業界の各メーカーも 20 年 1 月出荷分から商品を価格改定した。
(図
2-5-1 参照)
図 2-5-1. 大手加工食品企業の小麦製品の価格改定
(資料:『最近の農産物・食品価格の動向について』
,平成 20 年 1 月農林水産省 ,
http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_mirai/04/pdf/ref_data2.pdf ,2008 年 10 月 30 日)
14
即席麺商品の価格改定は、業界1位の日清食品の商品を例にあげてみると具体的に分か
る。各商品が約 7~11%値上がりしている。(図 2-5-2 参照)
図 2-5-2. 日清食品の引き上げ価格一覧
(
資料:『Garbagenews.com』,http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/09/17_5.html,
2008 年 10 月 29 日)
即席麺は低価格というイメージが定着しているので、業界を取り巻く環境は一層厳しい。
しかし、2008 年度末にかけて原材料価格高騰は収束し、それに伴い即席麺の小売単価の上
昇も終えた。原材料価格が製品小売単価に反映されるには時間差があるが、即席麺の小売
単価に下落圧力がかかっていると言える。
消費者離れの対策
2008 年の原料価格高騰は短期に収束したが、今後も加工食品メーカーにとって看過でき
ないリスクである。その対策として経営の多角化が挙げられる。
値上げによる消費者離れを防ぐために、業界では総合食品メーカーに向けての経営の多
角化がみられる。即席麺のみの販売は原材料を小麦にのみ依存し、経営に不利になる。そ
こで即席麺以外の新たな経営に乗り出し、市場開拓を行うことで、価格改定による消費者
離れを補う事で経営の多角化を狙う。また、即席麺の高度な技術を他の分野に活かすとい
う目的も考えられる。
15
海外進出
国内だけでなく、海外進出の動きがみられる。業界は飽和状態で市場拡大は厳しい上に
少子高齢化の影響により今後も国内人口の減少が予測できる。図 2-5-3 をみて分かるように
平成 15 年(2003 年)から 62 年(2050 年)に生まれてくる子供の数が約7分の 5 に減少
している。
図 2-5-3.
また、図 2-5-4 の即席麺消費量の多い国をみると中国が他の国を大きく引き離してトップで
ある。日本は年間に 54.6 億食を消費しているのに対して、新興国は 978.7 億食消費してお
り、その差は約 18 倍である。現在の日清食品、東洋水産の売上高に占める海外の輸出比率
は 16%前後である。少子高齢化、中国の消費量の多さの 2 つの点を踏まえて、これからは
更なる海外進出が必要となってくる。
16
図 2-5-4. 即席麺消費量の国際比較
2‐6. 即席麺のおいしさの秘密
(曽我
美千子)
即席麺は当初、お湯をかけて三分待てばすぐにおいしいラーメンを食べることができる
と言う点から、「魔法のラーメン」と呼ばれていた。魔法と呼ばれた即席麺も、消費者のニ
ーズに合わせて現在では味、種類、形態ともにバリエーションが増え、更なる進化を遂げ
てきた。その即席麺の歴史のスタートとなるチキンラーメンを元に、カップ麺のカップヌ
ードルを開発した過程は創始者安藤百福をはじめとした研究者たちのさまざまな工夫と知
恵が詰まっている。ここでは日清食品の代表商品であるチキンラーメン、カップヌードル
の開発過程を追いながら、おいしさの秘密に迫ってゆく。
1、おいしさをそのままに保存する秘密
チキンラーメンは今から 40 年以上も前に、世界初の即席麺として日清食品の創始者であ
る、安藤百福が開発したものである。おいしさの秘密は開発において最も苦労した点に集
約されていると考えられる。チキンラーメンの場合、それは「保存方法」であった。チキ
ンラーメンの保存方法は「瞬間湯熱乾燥法」と言われるものであるが、これは創始者安藤
が夕飯のてんぷらを揚げている時、
「材料を熱い油におとすと水分が蒸発してコロモにたく
さんの穴があく。麺も同じでは?」とひらめいたことがきっかけである。ひらめきを実際
に麺に応用してみたところ、予想通り麺の中にたくさんの穴ができた。お湯を注ぐとその
17
穴から水分がラーメン全体に行き渡って元の状態に戻り、目指していたラーメンが完成し
た。「瞬間油熱乾燥法」こそ、おいしさを損なわず保存できる方法であった。
また、この「瞬間湯熱乾燥法」と、味付けに関する「味付乾麺の製法」は日清食品が特
許を取得している。
1、「即席ラーメンの製造法」の特許(油熱乾燥が特徴)
1959 年1月出願⇒1962 年 6 月 12 日登録
特許 299524 号
発明の名称:即席ラーメンの製造法
2、「味付乾麺の製法」の特許
1958 年 12 月出願⇒1962 年 6 月 12 日登録
特許 299525 号
発明の名称:味付乾麺の製法
2、即席麺の国際化
チキンラーメンは誕生してから、そのおいしさ、手軽さで、日本では爆破的人気を記録
したが成長期に入り、生産量の伸びが鈍化した。しかし、チキンラーメンをアメリカに送
ってみたところ合理性と将来性が評価され、期待以上の評価を受けた。袋麺の伸びの鈍化
と、即席麺の国際化を目指す気持ちが契機となって、新商品開発のために、安藤百福は 1961
年研究所を開設し研究体制を整えた後、1966 年に欧米視察に旅立った。その結果生まれた
新商品がカップ麺の代表的商品であるカップヌードルである。
カップ麺の国際化にあたり、創始者安藤が重視したことは味覚の国際化、より迅速な即
席性、新しい包装容器の開発の三点である。
アメリカでチキンラーメンを紹介した際、アメリカ人バイヤーが即席麺をフォークで食
したこと、町を歩く人々がサンドウィッチなどを歩きながら食べる姿などにインスピレー
ションを受け、味覚・即効性・包装容器ともに向上させる新しいアイディアが次々と登場
した。アメリカ視察で刺激を受けたことが現在のカップラーメンのおいしさを作るのに役
立ったのである。
3、カップヌードルの開発と味の改良
アメリカ視察から帰った安藤氏は味の向上を目指し、具と添加物にこだわった。フリー
ズドライ製法を取り入れることにより、食管や栄養素を生の状態と同じようにそっくりそ
のまま生かすことに成功した。また、具材の水分を 15%以下に抑えたことにより、長期保
存が可能になった。防腐剤、合成保存料、合成着色料などを一切使用しないことで、味の
向上に加え、健康や安全性にも配慮した。
18
4、麺の戻りの即効性の追求
次に、より早く麺を戻すために工夫をした。容器の中に麺をつめる際、下はまばら、上
にいくほどぎっしり詰め、宙づり状態になるようにした。これにより、熱湯が下からも麺
全体を包み込み、素早く麺を戻すことに成功した。
また、麺の戻りを早くするためには、容器の工夫も不可欠であった。
「新しいインスタント
ラーメンを入れる容器は、お湯がさめにくく手に持ってもあつくないものでなければなら
ない。そして片手で持てて座りが良く、手から滑り落ちない形を」との安藤の要望で、欧
米視察から帰国した研究チームでは約 40 種類ものカップの試作品を用意した。その中から
選び出されたのが発泡スチロールだった。形は紙コップをやや大きくしたような形で決定
した。発泡スチロールを食品容器として登用するのはこれが初めてであった。
この発泡スチロールを登用した即席麺の容器は「知恵のかたまり」と呼ばれるほどさま
ざまな工夫がなされている。その理由としてあがるのはこのカップが 3 役をこなすところ
にある。1 つ目は麺を保護する包装材料、2 つ目は麺をゆでるおなべの役割、3 つ目は食器
の役割である。その素材についても、詳しく説明すると、ふたはアルミキャップで密閉さ
れ、衛生的で長持ちさせることに役立っている。カップ全体を覆う外装フィルムはシュク
包装になっており、ポリプロピレンのフィルムを熱風で縮めてぴっちり包んでいる。底部
のタックシールは熱湯を注いだあともう一度ふたを閉じるのに再利用できる。パッケージ
のデザインは 1970 年日本万博のシンボルマークを考えた有名デザイナー大高猛さんである。
このように、国際化を目指し、海外の文化を取り入れたアイディアを採用することによ
り、即席麺はカップ麺へと更なる進化を成し遂げたのである。
図 2-6-1
5、アイディアの源、安藤百福
ここまで、カップラーメンの製造の秘密や製造工程を追っていくことによってそのおい
しさに迫っていったのだが、前述した様々なアイディアや発想はすべて日清食品創始者で
ある安藤百福が生み出したものである。安藤は多忙な生活の中どのようにしてアイディア
を生み出していたのだろうか。その秘密は郷土料理にあった。
安藤は即席麺開発のためのアイディアを練るために郷土料理食べ歩くことがあるそうだ。
一見すると「食生活の簡便性を極めた即席商品と、手作りの最たるものである郷土料理と
は、食文化の対極に位置する」
(出典:安藤百福,『食の未来を考える』, 日 清 食 品 総 務 部
19
広 報 課 ,1986 年発行,25 頁
)と考えることもできるが、郷土料理の中には即席麺に通ず
るヒントが数多く隠されているのだ。代表例を挙げると、長野県の松本市にある「凍豆腐」
が挙げられる。豆腐を氷点下の野外につるしておくと、豆腐の水分が抜け、多孔質を形成
し、保存が効く状態になる。この保存が効く状態になったものを凍豆腐というのだが、こ
の作り方が即席麺の製造方法にそっくりなのである。他にも、直接即席麺の製造方法には
結びつかなくとも、様々な土地を訪ね、「訪れた土地の郷土料理の起源や、歴史、風土との
関わりなどを調べ、加工食品や保存の方法などを色々な人から勉強」
(出典:安藤百福,『食
の未来を考える』, 日 清 食 品 総 務 部 広 報 課 ,1986 年発行,18 ページ)することが、安藤の
アイディアや発想のヒントとなり、やがては即席麺のおいしさの秘密へと変貌するのであ
る。
20
3. 企業概要
(曽我
美千子)
ここでは企業概要を受けて、本論分で取り上げる日清食品ホールディングスと東洋水産
の概要の比較とこれまでの歩みを見ていく。
即席麺業界のシェア順位について述べる。業界 1 位は日清食品ホールディングスで全体
シェアのうち 50.1%を保有している。日清食品は 2008 年から明星食品を買収し、日清食品
ホールディングスと名称を変更した。これによって元々日清食品が持つシェアに明星食品
が保有していたシェアが加わって業界全体の約半分を占めるようになった。
2 位は東洋水産で、20.2%のシェアを保有している。続いて、3 位がサンヨー食品で 12.0%、
4 位がエースコックで 7.4%のシェアを保有している。業界全体で見ると日清食品が他四社
を大きく引き離し、独走状態にある。続く東洋水産は、日清食品ホールディングスが明星
食品を買収してからは約 30%も大きく引き離されたが、買収以前の日清食品のシェア占有
率が 39.3%であったことを考慮すると、日清食品ホールディングスに続いて即席麺業界を
リードする企業であると言える。
ここでは企業概要を受けて、即席麺業界をリードする日清食品ホールディングスと東洋
水産の概要の比較とこれまでの歩みを見ていく。
(出展:日経ナビシェア調査
2009,
http://job.nikkei.co.jp/2009/contents/business/share/share06.html,2009/1/29
21
日清食品ホールディングス
東洋水産
社名
日清食品ホールディングス株式会社
東洋水産株式会社
創立
1948年9月4日
1953年3月25日
本社所在地
大阪本社淀川区、東京本社新宿区
東京都港区
代表者
安藤宏基(あんどう こうき)
深川清司(ふかがわ きよし)
従業員数
7,203名
3,407名
資本金
251億2,271万8,774円
160億2,232万円
売上高
3,854億69百万円
3,147億44百万円
持株会社として、グループ全体の経営戦略の策
定・推進、グループ経営の監査、その他経営管
理など。
日清食品グループが手がける事業内容は以下。
1. 即席麺の製造および販売
加工食品事業、水産事業、冷蔵事業など
2. チルド食品の製造および販売
3. 冷凍食品の製造および販売
4. 菓子、シリアル食品の製造および販売
5. 乳製品、清涼飲料、チルドデザート等の製造
及び販売
国内関連会社・・・23社
国内関連会社・・・16社
事業内容
グループ企業
売上構成比
海外関連会社・・・27社
海外関連会社・・・6社
即席麺類事業…78.5%
即席麺類事業…46.6%
チルド・冷凍食品事業…11.5%
生麺類事業…19.4%
その他の事業…10.0%
魚介類事業…10.4%
その他加工食品事業…9.1%
チルド・冷凍食品事業…7.8%
冷蔵庫…5.9%
その他の事業…0.8%
即席麺ブランド
カップヌードル、チキンラーメン、
赤いきつね、緑のたぬき
ラ王、出前一丁、UFO
ホットヌードル
日清食品の前身は中交総社である。日清食品と東洋水産を比較する。
設立は業界第 1 位の日清食品の方が 5 年早い。
安藤百福の歴史の部分でも述べたとおり、
日清食品は、即席麺業界を切り開いた会社である。前述したが、前身は中交総社であり、
2008 年に代表的商品であるチキンラーメンが発売 50 周年を迎えている。東洋水産の前身
は横須賀水産で、元は水産加工業者として創設された。
本社所在地に注目すると、東洋水産が東京 1 箇所のみに本社を置いているのに対し、日
清食品ホールディングスは東京と大阪の 2 箇所に本社を置いている。
両社の違いとして最も顕著な違いが現れているのは、事業内容である。上記の表を見て
もわかるように、日清食品は自社の売上のうち 79.5%が即席麺類事業であるのに対し、東
洋水産は 65% 3と日清食品より 15%近く低い。これは、前述した東洋水産が元は水産加工
を主な事業としていたことが関係する。このように、近年までは日清食品は主に即席麺事
業に力を入れ、一方、東洋水産は即席麺事業の他に魚介類事業、チルド・冷凍食品事業、
冷蔵庫事業など多角的な経営を行っており、両社の経営方針は異なるものであった。しか
3
東洋水産の場合、即席麺と生麺の割合を合算して 65%と記した。
22
し、2008 年に日清食品が日清食品ホールディングスと名前を変えた。これは、日清食品が
今までの即席麺事業中心の経営から、「食」の創造グループとしてより多角的な事業展開を
目指すようになったことを示す。以下より両社の歴史を追っていく。
3-1. 日清食品
以下は日清食品年表の中で特筆すべき事柄をまとめたものである。
1958年
安藤百福が世界初インスタントラーメン「チキンラーメン」を 35 円で発売
1959年
大阪府高槻市に工場竣工
1963年
袋入りやきそば「日清焼きそば」発売
1968年
袋入りラーメン「出前一丁」発売
1971年
世界初のカップラーメン「カップヌードル」発売
1976 年
カップ焼きそば「UFO」、カップうどん「どん兵衛」発売
1990 年
ブランド・マネージャー制度導入
1997年
「サイリウムシリーズ」厚生省(当時)から「特定保健用食品」の認可取得
2000年
直轄 4 工場が ISO14001 認証取得
2003 年
カップヌードル全世界販売累計 200 億食達成
2007年
世界初宇宙食ラーメン「スペース・ラム」がスペースシャトルに搭載
2008年
10 月 1 日 - 旧・日清食品株式会社が持株会社制移行に伴い「日清食品ホール
ディングス株式会社」へ社名変更。
2009年
「グループ会社として新会社「日清食品株式会社」設立、同時に新会社 2 社(日
清食品冷凍株式会社(冷凍食品製造・販売)、日清食品チルド株式会社(チル
ド食品製造・販売))も設立される。
」(出展:Wikipedia,
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%B8%85%E9%A3%9F%E5%93%81, 2008
年 12 月 5 日)
創業期
~日清食品創業~
日清食品は「革新者」という言葉がぴったり当てはまる企業である。
即席麺は日清食品の創始者である安藤百福により開発されたものであり、開発から現在
に至るまで、宇宙、健康、環境など、即席麺事業をさまざまな分野と結びつけ、一企業と
しての成長にとどまらず業界全体を進化・発展させてきたからである。その日清食品が誕
生したときから現在に至るまでの歴史を大まかに振り返ってみたいと思う。
23
~即席麺の誕生~
日清食品の創始者であり、即席麺の生みの親でもあるのが安藤百福である。
安藤が終戦直後にラーメン屋台に並ぶ行列を見て、
「もっと手軽にラーメンが食べられれ
ば」と言う思いを抱いたことが、開発のきっかけとなった。当時の社名はサンシー殖産で
ある。工場は大阪市淀川区に残されていた自動車部品工場の倉庫を改造して工場とし、そ
こで、1958 年 8 月チキンラーメンとして世界初の即席麺を開発することに成功した。
また、「もはや戦後ではない。」と経済白書が示すように、日本の生活水準も向上してい
た。
成長期
~6 事業 4 軸体制~
日清食品は 1989 年初頭に 6 事業 4 軸体制という構想を打ち出し、経営の多角化を狙い始
めた。この構想の実行として、乳製品メーカーのヨーク社、シリアルフーズメーカーのシ
スコ社をはじめとして多様な分野の企業を傘下に収めた。上記した動きはすべて、後に予
測される即席麺市場成熟化による企業成長の停滞を防ぐためと、将来性が期待できる新し
い分野への積極的な進出をし、経営の多角化を図ることで、更なる企業発展へのステップ
とすることが目的である。
~バラエティーに富んだ商品展開~
日清食品はチキンラーメンを皮切りに様々な即席麺を発売し、業界を切り開いてきたが、
注目すべきはその多様性にある。焼きそばやうどん、後にはスパゲッティーに至るまで、
ラーメンにこだわることなく、次々と常に時代をリードする新しい商品を開発していった。
上記製品に見られるように、日清食品は新製品の開発に力を入れ、「従来にはなかった新し
いタイプの画期的な新製品開発を目指し、新しいコンセプトの元に新しい製品カテゴリー
を創造するという、正に『製品革新』に相応しい新製品の開発」(木島 実,
『食品企業の
発展と企業者活動』
,筑波書房,1999 年発行,57 頁)を目指したのである。
~世代交代と、カップヌードルを超える商品開発~
1985 年、安藤百福の息子である安藤広基が取締役社長に就任した。新生日清食品の合言
葉は「打倒!カップヌードル」であり、カップヌードルを超える新たな大ブランドを作り
出すため、ブランドマネージャー制度を設けた。ブランドマネージャー制度の概要は経営
戦略分析の箇所で後述する。
24
成熟期
~即席麺の種類の多様化~
サイリウムシリーズ(即席麺のイメージ改革)
1997 年、サイリウムシリーズを発売した。これは消費者の「即席麺は健康に良くない。」
という認識を取り払うため、厚生省から特定健康保険用食品の認可を受けて発売したもの
である。
同社は広告や包装で即席麺の栄養面の充実と安全性をアピールしたが、消費者の「即席
麺=体に悪い」と言う認識が根付いている消費者、特に主婦層の意識は変化しなかった。
それならばむしろ、体に良いことを売りにした即席麺を作ってしまおうということで発売
されたのがサイリウムシリーズである。
スペース・ラム(即席麺技術の応用)
2007 年、世界初の宇宙食ラーメン「スペース・ラム」がスペースシャトルに搭載された。
「2001 年の 8 月 24 日には安藤百福が「宇宙食ラーメンを作りたい」と発案し、2002 年 1
月に宇宙食ラーメンの開発を本格的に開始した。同年、日本や米国、ロシアなど 15 ヵ国で
建設を進めている「国際宇宙ステーション」に組み立て予定の日本実験棟「きぼう」で、
JAXA(当時 NASDA)が推進する「きぼう利用フィジビリティスタディ(可能性調査)」の活動を
行う間、飛行士の滞在中の食事用として提案、採用に至った。また、NASA(米航空宇宙局)
の厳しい安全・品質基準にも合格した。
2002 年 8 月には、しょうゆとみそ、カレー味の開発を完了し、2003 年にディスカバリー
に搭乗している野口聡一氏からリクエストを受け、みそ味とカレー味に加えて、とんこつ
味も開発を開始し、2005 年 1 月に完成した」。
(出典:『ライブドア・ニュース』,http://news.livedoor.com/article/detail/1307166/,2008
年 5 月 14 日)この商品名はスペース・ラムと言う。上記のように、即席麺の技術をさまざ
まな分野に生かしていることがわかる。
まとめ
様々な段階を経て、現在即席麺市場は成熟期に入り、市場は完全なる寡占状態となった。
この状況の中、日清食品は 2008 年 10 月 1 日に完全持ち株会社制へ移行することを発表し、
社名も日清食品から日清食品ホールディングスへと変更した。前述したとおり、日清食品
は 1989 年初頭から経営の多角化に乗り出し、様々な分野の企業を傘下に収めていたが、
2008 年に入り、会社の体制を変えることにより、総合食品メーカーを目指す新たなる意気
込みを表明したのである。
それでは次に東洋水産について見ていく。
25
3-2. 東洋水産
以下は東洋水産年表の中で特筆すべき事柄をまとめたものである。
1953年
横須賀水産(株)として築地市場内にて創業。
(冷凍マグロの輸出、国内水産物の取り扱いを開始)
1956年
社名を東洋水産(株)に改称
1962年
マルちゃんマーク誕生
ハイラーメン発売
1966年
品川・天王洲に大型冷蔵庫を建設
冷蔵庫事業の開始
1969年
だしの素発売
1970年
福島東洋(株)設立、関係会社となる
(現、フクシマフーズ)
1973 年
1975 年
ホットワンタン発売
即席和風麺「マルちゃん・きつねうどん」発売
(赤いきつねうどんの前身)
1976 年
豊醤油(株)関係会社となる
(現、ユタカフーズ)
1978 年
赤いきつねうどん発売
1980 年
緑のたぬき天そば発売
1981 年
白米(レトルトパウチ)発売
1982年
餃子(チルド品)発売。
1987年
シュウマイ(チルド品)発売
1992 年
麺づくり発売
創業期
~東洋水産誕生~
1953 年 3 月に冷凍マグロの輸出や水産物を取り扱う会社として、横須賀水産株式会社と
いう名で築地市場で創業した。
「当初は水産物の取引および輸出と加工食品(魚肉ハム・魚肉ソーセージなど)の製造・
販売が主体であり設立当初はインスタントラーメンの製造は行っていなかった」
。
(出典:『Wikipedia』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B4%8B%E6%B0%B4%E7%94%A3,2008
年 5 月 21 日)
1956 年 7 月に東洋水産株式会社へと商号を変更した。以前は横須賀冷蔵庫という名前で
事業を行っていたため、それを引き継ぐ形で横須賀水産と名乗っていたが、事業が拡大す
26
るにつれ、周囲から横須賀という限定されたイメージの社名はよくないとの声が上がり、
改名をする流れとなった。その際、日本を飛び出し「東洋一の会社になるように」との思
いも込められ、現在の社名に改名した。
革命期
~即席麺事業への参入~
東洋水産が即席麺分野に参入したのは、1961 年である。この年、小田原に即席麺生産の
ためにラーメン工場を設立し、生産を開始した。
東洋水産での即席麺事業への参入の決定は、社内の情報収集力と創始者である森和夫の
決断力によるものであった。社内の営業日報と国内食品加工物の売れ筋に常に目を配って
いた森氏は、
「巷で即席麺が売れている。」という情報をいち早くつかむことができた。
1950 年台以降、業種を問わず多くの会社が即席麺事業に参入していたが、その後水産会
社で生き残れたのは東洋水産のみである。
成長期
~独自ブランドの誕生~
東洋水産が発売した最初の即席麺は 1962 年マルちゃんブランドとして発売した「ハイラ
ーメン」である。赤いきつねシリーズの方が有名なイメージがあるが、実はこのハイラー
メンは現在でも静岡限定で発売されているロングセラー商品である。
1975 年 9 月に即席ラーメン業界の他社に先駆けて、和風即席麺の「マルちゃんのたぬき
そば」を発売した。
当時の即席ラーメンスープは、「醤油味」「しお味」「みそ味」が主流であったが、この製
品は「粉末そばつゆ付即席麺」であり、この粉末そばつゆのスープ味は消費者からの非常
に高い支持を得ている。
東洋水産は、和風そばの開発と「マルちゃん」ブランドの確立によってこの即席麺を 1963
年の総売上で 39 億 7 千万円のうち、そばやラーメン類が 40%の約 16 億円を記録し、1964
年には売上高 60 億円計画でラーメン類 50%を目標とするほどの売上高とした。特にこの和
風そばにマッチしたカツオだしスープの開発は、その原料を取り扱う水産加工業者ならで
はのアイディアであり、このような企業努力が、市場の拡大や業界の発展に大きく貢献し
たものであるといえる。その後 1978 年に「マルちゃんのたぬきそば」をリニューアルさせ、
「赤いきつねうどん」を発売し、大ヒットとなり「マルちゃん」の名前が広く一般に浸透
する事になった。
東洋水産の商品の歴史をたどってみると、「ハイラーメン」を皮切りとして、その後「イ
ンスタントの冷やしラーメン(中華)や天ぷらそば(カップ・袋麺ともに)、カレーうどん
(カップ・袋麺ともに)
、即席ワンタンなど個性的な商品も登場させ、チルド・レトルト食
品なども製造・販売しており、」
27
日清食品と比較するとラーメン等の中華麺よりもうどん、そば等の和風麺の分野で自社
カラーを発揮できていることがわかる。
展開期
~生き残った東洋水産とその理由~
1958 年に日清食品が発売したチキンラーメンが、爆発的なヒットを記録すると同時に、
その売行きの良さと消費者の需要の大きさを感じ、即席麺業界に参入する企業の数はとて
も多かった。もその流れを受け宝幸水産など大手水産会社が続々と即席麺分野に参入して
いたが、現在水産会社で生き残っているのは東洋水産だけである。数ある参入企業の中で
東洋水産が生き残れたのは偶然ではなく、森氏の指導力とこだわりによるところが大きい。
森氏は常に誠実に品質にこだわり続けることを絶えず支持し続け、スタッフもそれに忠実
に従った。このリーダーである森氏の指導力とスタッフの間にある信頼関係こそが、東洋
水産が生き残るための基盤を築きあげたのだ。また、他の水産会社が即席麺の製造を下請
け会社に頼っていたのに対し、東洋水産は自社工場で製造をスタートしたことが成果を挙
げたことも要因であったといえる。森氏は、誠実に品質にこだわり続けることを絶えずス
タッフに指示し続け、スタッフはその指示に忠実に従った。この森氏とスタッフの連携は
自社工場で製造をスタートしなければ成し得なかったことである。
こうした背景の下、上記のヒット商品が生まれたことで経営が安定し、ますます東洋水
産の事業は拡大し、相次ぎ、焼津・埼玉県飯高町・札幌・伊勢原に工場を設立するにいた
った。前述したが、設立当初資本金 1 億円ほどだった会社が短期間に次々と工場を作れた
のは、即席麺のヒットに乗っていたことと、前述した水産加工業時代から培ったリーダー
の指導力、スタッフ間の信頼、営業力などをはじめとする会社全体としてのパワーがつい
ていたからであった。
成熟期
~冷蔵庫事業の開始~
東洋水産が、冷蔵庫事業を始めたのは 1966 年の 7 月品川・天王洲に約 5,000 トンもの大
型冷蔵庫を建設したことがきっかけであった。元々海苔組合が海苔干し場として使用して
いた土地で、譲ってもらったことが場所を天王洲にした理由だった。一度に大量に保管で
きる冷蔵庫を所有していることが会社としての大きな信用につながり、その後事業が軌道
に乗るきっかけとなった。設備も当時としては最新鋭の冷蔵庫で、顧客からの評判も良好
であった。この天王洲の冷蔵庫は都営住宅建設を承諾する形で 1991 年には売却したが、こ
の土地が高く売れたことで、代替地を購入することもできた。この売却が契機となり、事
業規模が拡大し、冷蔵庫事業は現在の東洋水産を支える事業へと成長していった。
28
海外進出
東洋水産は 2006 年の時点で、メキシコで約 85%のシェアを保有している。東洋水産が即
席麺の輸出を開始したのは 1986 年頃からであった。地元の企業との厳しい競争の中で高い
シェアを獲得できたのは 1994 年に発生したメキシコ・ペソの大暴落によりライバル企業が
撤退する中で販売を継続したことが理由である。
まとめ
日清食品と東洋水産の違いが顕著に現れている部分として、商品展開が挙げられる。日
清食品が基本的に即席麺を中心に展開しているのに対し、東洋水産は上記年表にもあるよ
うに白米、シュウマイ、餃子などを発売していることから水産加工業やチルド・冷凍食品
にも力を入れていることがわかる。これは、東洋水産がユタカフーズやフクシマフーズな
ど自社と異なる分野の会社との関係を持つことで成し得た結果である。この多角化経営に
より、即席麺以外からも売り上げが得られ、安定した経営につながっていることがわかる。
以上 2 つの会社の企業概要とこれまでの歩みをみてきた。
互いの企業の成長発展は少なからず互いに影響を与えてきたはずである。それではこれま
での成長を踏まえ、財務面の分析に移る。
29
4.
財務分析
(津山
剛)
財務分析とは、企業の経営成績、並びに財政状態を把握するため行う。
ここでは、企業の開示資料を基にする。分析手法は、期間比較や企業間の比較を主とし、
実数分析、比率分析の両方を用いる。分析項目を、成長性、収益性、安全性に分けて分析
し、最後に財務分析を総括する。
4‐1
成長性分析
成長性分析では、企業の売上高や利益の期間ごとの推移を見る。期間を追うごとに売上
高、利益が増加する速度が成長性である。
売上高推移
百万円
400,000
380,000
360,000
340,000
320,000
300,000
280,000
260,000
240,000
220,000
200,000
日清食品
東洋水産
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
315,279
319,373
320,032
310,292
316,972
307,561
321,700
325,679
358,238
321,356
385,469
314,744
図は、日清食品と東洋水産の直近 6 ヵ年の売上高推移をまとめたものである。
日清食品は平成 18 年以降に売上高を伸ばしている。明星食品を完全子会社化したことが
要因である。これに対し、東洋水産は 6 か年で見るとマイナス成長をしている。平成 14 年
と平成 19 年の売上高を比較すると、日清食品は 22.26%の成長、東洋水産は-1.44%のマイ
ナス成長となっている。
日清食品は、同業者である明星食品に投資をしている。市場の成長性が乏しくても、収
益を拡大させる事が出来る。日清食品が売上高拡大のための投資に積極的な事を示してい
る。東洋水産の売上高が伸びていないのは、東洋水産が収益拡大のための投資を控えてい
るからである。東洋水産はここ 6 年で、M&A や生産設備の増強を行っていない。むしろ、
生産設備を減少させる傾向にある。
30
増収率
30.00%
20.00%
10.00%
0.00%
-10.00%
-20.00%
日清食品
東洋水産
平成15年
1.51%
-2.84%
平成16年
-0.96%
-0.88%
平成17年
1.49%
5.89%
平成18年
11.36%
-1.33%
平成19年
7.60%
-2.06%
増収率とは、売上高が前年度と比べてどれだけ増加しているかを表す。企業の売上高の
変化がどう推移しているかを確認できる。
日清食品の増収率は、平成 17 年までは、-1~2%の間を横ばいで推移していた。しかし、
平成 18 年に入ると約 10%の伸びを見せる。これは、日清食品が明星食品を買収したことと
関連する。平成 18 年 11 月の時点で日清食品は明星食品の株式を約 86.32%を所有し、将来
的に完全子会社化を目指すことを表明している。そして、実際に平成 19 年 3 月に完全子会
社化を実現した。このことから、平成 17 年以降、徐々に所有株式の割合を増やしているこ
とが読みとれる。
東洋水産は平成 17 年に売上高が約 6%増収した。理由として、当年の気候の寒暖が激し
く、全体として商品が売れやすい状態にあったこと、また、新商品・リニューアル品の売
れ行きが好調だったことが挙げられる。商品の具体例としては、新製品が即席麺の山菜乱
切りそば、リニューアル品が、ノンフライ麺の主力商品である「麺づくり」が挙げられる。
また、その他加工食品のスープ事業においてはカップ入りスープの市場拡大を理由に、「も
ずく・めかぶ・野菜卵」のカップ入りスープを新たにコンビニエンスストア向けに導入す
ることに成功し、これも増収につながった。
(参照:東洋水産HP,『2007 年連結財務諸表』,3.経営成績および財政状態,2008 年 10 月 14
日 http://www.maruchan.co.jp/company/ir/tanshin/documents/0603renketsu.pdf)
しかし、平成 18 年には減収に転じた。その主な理由は魚介類部門、即席麺部門と 2 つに分
けて考えられる。まず、魚介類部門だが、中国・ロシア・欧米諸国が旺盛な買い付け意欲
を見せたこと、水産資源の減少に伴い価格が高騰したこと、また、国内水産事情が低迷し、
取扱高が減少したこと、
以上 3 つの理由が重なり、
魚介部門の売上高は前年度に比べ約 1.3%
の減収となった。次に、即席麺部門であるが、新製品を発売したり、映画とのタイアップ
31
商品である「UDON
讃岐風うどん」を発売するなど、積極的な姿勢を見せたものの、暖冬
が影響し、全体として前年度よりやや減少した売上となった。(参照:東洋水産 HP,『2008
年連結財務諸表』,1.経営成績,2008 年 10 月 14 日
http://www.maruchan.co.jp/company/ir/tanshin/documents/070514kessantanshin.pdf)
総括すると、両社の変化の時期は平成 18 年に集中している。この年、シェアの拡大を大
きな目的とし、明星食品の買収を進めた日清食品はその後も高い増収率を維持した。一方
東洋水産は既存の自社商品を積極的にアピールしてゆく戦略をとったが増収率は低下した。
現時点の結果だけを見れば日清食品が東洋水産に差をつけた形になるが、日清食品の明星
食品の買収が成功したといえるかどうかは、現時点ではなんとも言えない。平成 18 年をき
っかけに両社の戦略の違いが明確化してきたといえるであろう。
32
総資産推移
百万円
450,000
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
日清食品 331,994
東洋水産 224,791
343,644
222,379
361,104
220,191
366,801
223,306
410,417
219,852
392,694
206,043
図は総資産の推移である。総資産は企業の所有している資産すべてを表している。資産
は付加価値を産み出す源泉である。
日清食品の総資産は年々増加し、平成 18 年には前年度比 11.89%増加している。平成 18
年は明星食品を連結子会社にした年であるため、そのための増加と見える。平成 19 年に減
少しているのは明星食品株式の投資有価証券評価損を計上したことによる。日清食品の総
資産が増加傾向にあるのは、その戦略に関係がある。日清食品は、即席麺メーカーから総
合食品メーカーへの転換を以下のように標榜している。
即席めんの最大手であり、パイオニアとしての地位を確立してきた日清食品は、
設立以来 50 年間、様々な「食」の可能性を追求してきましたが、
これからの 50 年で「総合めんメーカー」から「総合食品メーカー」を目指します。
日清食品 求人情報から抜粋
また、明星食品の子会社化からも、規模の経済のメリットを享受しようとしていること
がわかる。総合食品メーカーとなるため、また、規模の経済のメリットを供するために、
総資産を増加させる傾向にある。
東洋水産は、日清食品とは対極的に、総資産を圧縮させる傾向にある。製造拠点の統廃
合などにより、固定資産、特に有形固定資産を削減したからである。負債の部から見ると、
有利子負債が圧縮されている。つまり、東洋水産はここ 6 年で、収益を拡大するための投
資を控え、今の収益を維持しつつ生産費用を削減する事で増益を達成した。さらに、利益
とキャッシュフローの大部分を有利子負債圧縮に費やし財務体質を健全化する戦略をとっ
ていたと言える。東洋水産の有利子負債圧縮については、安全性分析で、キャッシュフロ
ーの観点からは、キャッシュフロー分析で後述する。
33
営業利益推移
百万円
40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
日清食品
東洋水産
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
26,400
19,395
23,203
18,644
28,962
20,245
31,979
19,935
33,734
19,570
27,671
20,222
図は両社の営業利益の推移である。日清食品は、営業利益が平成 16 年に増大し、平成 19
年に大きく減少している。これは平成 15 年と平成 19 年に退職給付金を計上のしたためで
ある。また、平成 18 年と平成 19 年に売上高が増えているにもかかわらず、営業利益が増
えていない。これは完全子会社化した明星食品の売上高利益率が低いためである。明星食
品については後述する。東洋水産は年々緩やかに成長している。
34
経常利益推移
百万円
45,000
40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
日清食品
東洋水産
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
28,676
18,971
25,620
18,117
33,183
20,259
39,526
21,151
37,843
21,546
32,798
22,623
図は両社の経常利益の推移である。両社とも経常利益は営業利益よりも全般的に高い。
これは、受取利息と受取配当金の収益が要因である。東洋水産は受取配当金を増加させて
いる。東洋水産の平成 19 年の受取配当金は、1,684 百万円、投資有価証券残高は 11,200 百
万円である。東洋水産は、食品メーカーや金融会社の株式を 10,000 百万円程保有している
が、そこから支払われる配当金は受取配当金の中で占める割合は金額的に多くないと見ら
れる。東洋水産の子会社や関連会社の中には貸借対照表掲載額よりも、価値の高い会社が
ある。実際に平成 19 年時点で、時価のある子会社や関連会社の株式の含み益が 5,687 百万
円ある。時価の無い子会社や関連会社も含めると、東洋水産の投資有価証券の価値は貸借
対照表掲載額との差が年々広がっていると考えられる。そのため投資有価証券や売買目的
有価証券の額と比較して、受取配当の額が高いとと考えられる。
35
経常増益率
35.00%
30.00%
25.00%
20.00%
15.00%
10.00%
5.00%
0.00%
-5.00%
-10.00%
-15.00%
-20.00%
日清食品
東洋水産
平成15年
-10.66%
-4.50%
平成16年
29.52%
11.82%
平成17年
19.12%
4.40%
平成18年
-4.26%
1.87%
平成19年
-13.33%
5.00%
経常増益率とは、経常利益が前年度よりも何%増加したかを示す。経常利益とは、企業
の本業に関わる営業損益に、財務活動などの経常的に発生する営業外損益を加えたもので
ある。経常増益率推移は、企業の経常的に発生する損益が、前年度と比べてどのように変
化しているかを連年で確認するものである。これにより企業が資本に分配される付加価値
を産み出す力がどう推移しているかを確認できる。
日清食品の平成 16 年の経常増益率は高い。そのため平成 15 年に退職給付金が連年より
も多く計上された事による。これは、日清食品が退職給付金を発生した翌期に一括計上し
ているためである。続いて平成 17 年も高い増益率であるが、これは平成 17 年に有価証券
売却益が 3,072 百万円計上された事が要因である。順調に増益していたが、平成 18、19 年
には経常増益率はマイナスとなった。この平成 18 年の減益の要因は、先程の有価証券売却
益が無くなった事による。また、平成 19 年には退職金の数理計算上の問題で減益があった。
具体的な金額は現在調査中である。なお、平成 18、19 年に明星食品の連結子会社化による
増収があったが、明星食品の売上高経常利益率は極めて低いため、増益には寄与していな
い。詳しくは収益性分析で後述する。
総括すると、日清食品は、退職給付金の数理計算上の差異や有価証券の売却など、営業
損益区分や営業外損益区分に属しながら、経常的に発生しない損益が大きく変化していた。
それを除くと、変化は少ないといえる。
東洋水産は平成 16 年の経常増益率が高くなっている。この年、減収となったが売上原価
の低下が営業利益を押し上げた。なお、営業外損益区分に大きな変化はないため、売上原
価の低下が経常利益増益の要因と言える。
総括すると、東洋水産は、年によって幅があるが年々増益している。原価の低下や、配
36
当金の増加によるものであり、付加価値の生産力が増加しているといえる。
成長性分析まとめ
売上高は、日清食品が明星食品の連結分だけ増している。しかし明星食品の利益率が低
いため、利益の成長を果たせていない。平成 19 年時点で即席麺市場における日清食品と東
洋水産の合計シェアは全体の 70%を占める事を考えると、即席麺市場は拡大していない事
がわかる。なお、東洋水産は売上高の成長はマイナスだが、営業利益、経常利益がプラス
成長している。これは売上高経常利益率の増加を示している。売上高経常利益率について
は収益性で後述する。
37
4-2 収益性分析
収益性分析では、企業に投入されている資産がどれだけ売上高や利益に結びついている
かを分析する。また、売上高に占める費用や利益の割合など、どのような収益構造をして
いるかを見る。また、従業員がどれだけ利益に貢献しているかも見る
従業員推移
(人)
8,000
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
日清食品
東洋水産
平成15年
6,176
3,798
平成16年
6,186
3,680
平成17年
6,216
3,597
平成18年
6,955
3,454
平成19年
6,914
3,407
従業員一人当たり経常利益
百万円
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
平成15年
4.1
日清食品
4.8
東洋水産
平成16年
5.4
5.5
38
平成17年
6.4
5.9
平成18年
5.4
6.2
平成19年
4.7
6.6
従業員数は、日清食品が東洋水産の 2 倍弱である。総資産の規模、利益の額でも同程度の
差がある。従業員が利益を産み出す効率を見るために、従業員一人当たり経常利益を分析
する。図を見ると、日清食品は平成 18 年からマイナス成長に転じている事がわかる。この
年、日清食品は明星食品買収のため従業員数を約 10%増やしている。しかし、明星食品の
経常利益が少ないため、従業員一人当たり経常利益を低下させている。明星食品の収益性
の改善が、日清食品の課題である事が分かる。一方、東洋水産は伸びた。従業員が経常利
益を生み出す効率が高まっている。
39
総資産経常利益率
12.00%
10.00%
8.00%
6.00%
4.00%
2.00%
0.00%
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
7.46%
9.19%
10.78%
9.22%
8.35%
日清食品 8.64%
8.44%
8.15%
9.20%
9.47%
9.80%
10.98%
東洋水産
図は総資産経常利益率の推移である。総資産経常利益率は総資産をどれだけ効率よく経
常利益に結び付けているかを示している。企業の総合的な収益性の指標といえる。両社の
数値は接近している。日清食品は平成 18 年以降数値を落としている。これは完全子会社化
した明星食品の収益性の低さが要因である。東洋水産の総資産経常利益率は年を追うごと
に改善されている。売上原価削減の影響が大きい。売上高原価率で詳しく後述する。平成
19 年には、前述した受取配当金の増加も寄与している。
40
総資産回転率
1.80
1.60
1.40
1.20
1.00
0.80
0.60
0.40
0.20
0.00
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
0.95
0.93
0.88
0.88
0.87
0.98
日清食品
1.42
1.40
1.40
1.46
1.46
1.53
東洋水産
図は総資産回転率の推移である。経常利益を総資産で除した値である。総資産をどれだ
け効率よく売上高に結び付けているかを示している。両社を比較すると、東洋水産の方が
高い。資産を売上高に結びつける効率は東洋水産の方が高いと言える。また両社とも近年
数値を上げている。日清食品の総資産回転率が高まっているのは、明星食品が日清食品よ
りも総資産回転率が高いからである。東洋水産は資産を圧縮させる傾向にあるため、年々
数値が改善されている。
41
売上高営業利益率
12.00%
10.00%
8.00%
6.00%
4.00%
2.00%
0.00%
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
8.37%
7.25%
9.14%
9.94%
9.42%
7.18%
日清食品
6.07%
6.01%
6.58%
6.12%
6.09%
6.42%
東洋水産
図は売上高営業利益率の推移である。売上高経常利益率と近い値を示しているので、
売上高経常利益率の項目で詳しく説明する。
42
売上高経常利益率
14.00%
12.00%
10.00%
8.00%
6.00%
4.00%
2.00%
0.00%
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
9.10%
8.01%
10.47%
12.29%
10.56%
8.51%
日清食品
5.94%
5.84%
6.59%
6.49%
6.70%
7.19%
東洋水産
図は売上高経常利益率の推移である。売上高経常利益率は売上高のうち、経常利益がど
れだけあるかを示している。売上高のうちその企業が産み出した付加価値を確かめるため
の指標である。両社を比較すると日清食品が東洋水産を上回っていることがわかる。日清
食品の方が高付加価値型の収益構造をしていると言える。しかし日清食品は近年数値を落
としている。東洋水産は数値を上げている。両社とも、売上高営業利益率よりもおおむね
高いのは、配当金による所が大きい。
43
売上高原価率
70.00%
60.00%
50.00%
40.00%
30.00%
20.00%
10.00%
0.00%
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
50.61%
49.49%
49.18%
48.93%
50.76%
日清食品 50.83%
65.66%
64.30%
63.84%
63.91%
63.28%
東洋水産 66.65%
図は売上高に占める原価の割合である。製造業の場合、売上原価率が低いほど製造工程
において高い付加価値をつける事が出来ていると言える。この付加価値とは資本に分配さ
れる付加価値である。両社を比較すると日清食品が東洋水産よりも低い。つまり日清食品
は東洋水産よりも、製造工程において高い付加価値をつける事が出来る。売上高原価率の
高低は、製造工程の合理化の度合いが要因となる場合が多い。しかし、この両社の場合は
むしろその戦略の違いにより高低が出ている。
日清食品は新機軸の商品を開発し、高い価格で販売する戦略をとっている。開発費がか
さむ一方、製造コストに比べて、高い単価で売る事が出来る。広告費も多く必要だが、そ
れは販管費に計上される。それが低い売上高原価率につながっている可能性が高い。一方、
東洋水産は既存の市場に価格を抑えた商品を投入する戦略を採っているため、日清食品よ
りも原価率が高くなっている。しかし、近年になるにつれ、改善傾向である。
東洋水産が総資産経常利益率や売上高経常利益率を改善させている事を前述したが、そ
の要因に売上高原価率の低下がある事がわかる。製造工程の合理化が進んでいると考えら
れる。
44
売上高販管費率
45.00%
40.00%
35.00%
30.00%
25.00%
20.00%
15.00%
10.00%
5.00%
0.00%
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
42.14%
41.37%
40.88%
41.65%
42.06%
日清食品 40.80%
28.33%
29.11%
30.04%
30.00%
30.30%
東洋水産 27.28%
図は売上高に占める販売費及び一般管理費の割合である。両社を比較すると、日清食品
の方が東洋水産よりも高い事がわかる。それには従業員数の影響が大きい。前述の通り日
清食品は東洋水産よりも従業員数が多いが、売上高は接近している。そのため売上高に占
める人件費の割合が東洋水産よりも高くなる。しかし、売上高販管費率が高い要因は従業
員数だけではない。両社の戦略にも関係がある。日清食品は新機軸の商品を販売するため、
広告費を多く使う必要がある。また、日清食品は自社ブランドの価値を向上させる事にも
重きを置いているため、さらに広告費が必要である。東洋水産もブランド価値向上や商品
の認知度の向上を決して軽視しているわけではない。しかし、価格訴求を中心とした戦略
のため日清食品のそれと比べて、かかる費用は小さい。
45
SPM
13.00%
売 12.00%
上 11.00%
高 10.00%
経 9.00%
常
8.00%
利
益 7.00%
率 6.00%
5.00%
0.80
日清食品
東洋水産
0.90
1.00
1.10
1.20
1.30
1.40
1.50
1.60
総資産回転率
SPM は、両社の収益構造を視覚的に把握するものである。日清食品は左上の高付加価値
ポジション、東洋水産は右下の高効率ポジションにいる。両社の収益構造の違いがはっき
りと見て取れる。しかし、直近では売上高経常利益率が近くなっている。日清食品は明星
食品の収益性を改善出来ていないのが、収益性の悪化要因である。
46
収益性分析まとめ。
日清食品は売上高経常利益率の高い高付加価値型、東洋水産は総資産回転率が高い高効
率型の収益構造をしている。総資産経常利益率は連年拮抗していたが、近年において東洋
水産が日清食品を上回るようになっている。日清食品の収益性の低下と、東洋水産の上昇
が同時進行しているためである。
日清食品は総資産回転率を上げたが、売上高経常利益率を大きく低下させている。これ
は、日清食品が明星食品を連結対象に入れ始めた平成 18 年から起こっている。この事から
明星食品は総資産回転率では日清食品よりも高いが、極端に売上高経常利益率の低い企業
である事がわかる。
※平成 15 年の売上高経常利益率が低いのは退職給付金の計上のためである。
次の表は明星食品の収益性と明星食品を含まない日清食品の収益性を表している。
売上高、営業利益、経常利益の単位は(百万円)
明星食品(平成18年度)
売上高
62,204
営業利益
534
経常利益
796
総資産経常利益率
2.13%
総資本回転率
1.66
売上高経常利益率
1.28%
日清-明星(平成18年度)
売上高
296,034
営業利益
33,200
経常利益
37,047
総資産経常利益率
9.93%
総資本回転率
0.79
売上高経常利益率 12.51%
明星食品を除いた日清食品は、平成 18 年以前と似た収益構造をしている。この事から日
清食品の収益性の変化及び悪化は、明星食品の収益性を改善できていないからと見て間違
いない。
東洋水産は、総資産回転率も売上高経常利益率も上げ、収益性向上を果たしている。売
上高経常利益率の上昇要因は、売上高原価率の低下から読み取れる。加工食品部門のコス
ト削減が利益増加に寄与している。また、受取配当金の増加や、水産部門の高付加価値商
品の好調等も要因として挙げられる。さらに総資産、特に有形固定資産の圧縮も進み、総
資産回転率が改善された。総資産回転率、売上高経常利益率の両面から改善が進み、総資
産経常利益率は高まった。
47
4‐3 安全性分析
安全性分析では、資本構成のバランスや、支払い能力を見る。
自己資本比率
80.00%
70.00%
60.00%
50.00%
40.00%
30.00%
20.00%
10.00%
0.00%
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
71.13%
71.49%
71.76%
70.29%
73.55%
日清食品 70.39%
49.12%
54.70%
61.60%
67.09%
72.36%
東洋水産 46.49%
図は自己資本比率の推移である。自己資本比率とは、自己資本を総資産で除した値であ
る。返済義務の無い自己資本が総資産のうちどの程度を占めているかを見ることで、財務
の安定性を分析できる。平成 19 年の時点で両社の自己資本比率は安全と言える基準の 50%
を上回っており、安全性に問題は無いといえる。特に東洋水産は、近年数値を大きく改善
させている。利益の多くを負債の圧縮に費やしたためである。
48
当座比率
200.00%
180.00%
160.00%
140.00%
120.00%
100.00%
80.00%
60.00%
40.00%
20.00%
0.00%
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
日清食品 153.31% 154.94% 147.07% 178.98% 142.60% 167.27%
東洋水産 119.07% 142.96% 113.42% 163.57% 145.16% 187.08%
図は両社の当座比率の推移である。当座比率とは、当座資産を流動負債で除した値であ
る。現金化が容易な当座資産と、早期に支払期限が到来する流動負債との比を見る事で、
短期的な支払能力を分析できる。平成 19 年の時点で両社とも安全と言える基準の 100%を
上回っており、安全性に問題はないといえる。東洋水産は近年数値を上げている。
東洋水産が平成 16 年、18 年に値を下落させているのは、長期借入金の返済期限が 1 年を
切ったため、流動負債に振り替えられたためである。日清食品が平成 18 年に下落している
のは仕入債務の増加による。以下の図は平成 18 年の、日清食品の当座資産、流動負債、仕
入債務に、明星食品が占めている割合をまとめたものである。明星食品は当座資産よりも、
流動負債が占めている割合が大きいため、日清食品の当座比率の低下は明星食品と見て間
違いない。特に仕入債務の影響が大きい事も分かる。
当座資産
流動負債
仕入債務
日清+明星
136,663
95,837
43,324
明星
明星の割合
7,130
5.22%
13,270
13.85%
6,897
15.92% 単位:百万円
49
固定比率
140.00%
120.00%
100.00%
80.00%
60.00%
40.00%
20.00%
0.00%
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
83.98%
88.31%
78.38%
86.96%
81.38%
日清食品 82.27%
99.00%
87.40%
77.81%
70.78%
東洋水産 122.12% 114.38%
両社の固定比率の推移である。平成 19 年時点で両社とも 100%を下回っており安全性に
問題はないといえる。東洋水産は固定資産の圧縮が進むと共に、純資産を増加させ数値を
改善させている。
安全性分析まとめ
平成 19 年時点で両社とも安全性に問題は見られない。東洋水産は利益の多くを有利子負債
の圧縮に費やしたため、安全性が高まっている。
50
4‐4 キャッシュフロー分析
キャッシュフロー分析とは、現金の流出や流入を分析する手法である。以下ではキャッシ
ュフローを CF と略す事にする。CF 分析の目的は、企業の資金需要の程度や、現金を得る
能力を確認するためである。用語解説の後に、日清食品と東洋水産の CF を見ていく。
日清食品CF
百万円
40,000
30,000
20,000
10,000
0
-10,000
-20,000
-30,000
-40,000
営業CF
投資CF
財務CF
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
23,027
-29,030
-10,374
22,213
-20,453
-3,813
30,259
-30,348
-5,708
26,635
-20,068
-12,940
26,974
-4,770
-7,421
25,875
-16,600
-6,827
東洋水産CF
百万円
40,000
30,000
20,000
10,000
0
-10,000
-20,000
-30,000
-40,000
営業CF
投資CF
財務CF
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
21,859
-13,759
-5,490
29,812
-9,312
-7,998
17,108
-6,390
-6,470
51
23,865
2,238
-23,557
20,706
-8,554
-8,172
25,432
-6,518
-7,427
営業 CF、投資 CF、財務 CF は、それぞれ営業活動による CF、投資活動による CF、財
務活動による CF の略である。
営業 CF は純利益に減価償却や、売上債権、仕入債務、棚卸資産、各種引当金等の増減を
加えたものである。これらは営業活動に関係した勘定科目である。なお、本項では支払利
息、受取利息、受取配当金、法人税等の支払等も含んでいる。投資 CF は、資産の取得や売
却によって生じる CF である。有価証券や貸付金などの金融資産、土地や設備などの有形固
定資産などがその典型である。資産の中でも、前述した営業 CF に属するものは投資 CF に
は含めない。財務 CF は、負債や資本の増減による CF である。借入金元本の返済や配当金
の支払いや増資による収入などである。営業 CF に属する仕入債務の増減は含まない。
両社の CF を見ていく。両社とも営業 CF は全ての期間において黒字である。成長も衰退
もせずに現状維持の様相である。これは、前述の成長性分析の結論とも一致する。また、
日清食品は東洋水産よりも経常利益が 1.5~2 倍程多いが、平成 18 年以降の営業 CF は接近
しており、平成 19 年では東洋水産が若干上回っている。これには、両社の売上債権と棚卸
資産の残高の推移が影響している。以下に棚卸資産と売上債権残高のグラフを示す。
52
棚卸資産+売上債権残高
百万円
70,000
65,000
60,000
55,000
50,000
45,000
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
日清食品
東洋水産
49,104
65,312
51,696
61,410
51,245
63,128
50,362
64,823
67,847
63,397
56,084
58,207
日清食品は、平成 18 年以降に棚卸資産と売上債権残高を増加させている。明星食品の影
響が大きい。仕入債務は両社とも変化は少ない。
投資 CF は日清食品の方が東洋水産よりも、おおむね赤字幅が大きい。これは日清食品が
資産の取得に積極的である事を示している。平成 18 年より減少している事については後述
する。東洋水産は有形固定資産の売却により赤字幅縮小や黒字化している期がある。
財務 CF は、平成 17 年の東洋水産の数字が目立つ。これは社債の償還によるものである。
財務分析の項で、東洋水産が有利子負債の圧縮に多くの CF と利益を費やしていると前述し
た。この社債償還がそれである。その他の期にも借入金を圧縮している。
次にフリーCF とネット CF を見る。
53
日清食品CF
百万円
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
-5,000
-10,000
-15,000
-20,000
フリーCF
ネットCF
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
-6,003
-16,377
1,760
-2,053
-89
-5,797
6,567
-6,373
22,204
14,783
9,275
2,448
東洋水産CF
百万円
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
-5,000
-10,000
-15,000
-20,000
フリーCF
ネットCF
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
8,100
2,610
20,500
12,502
10,718
4,248
26,103
2,546
12,152
3,980
フリーCF とは、営業 CF と投資 CF の合計であり、株主や投資目的の債権者から見て、
自由になる CF である。ネット CF とは全ての CF の合計である。
日清食品は平成 18 年からフリーCF、ネット CF が増加している。これは投資 CF の赤字
幅縮小のためである。有価証券、及び投資有価証券を償還あるいは売却したためである。
同時に投資有価証券を取得してもいる。これは明星食品の株式であると考えられる。日清
食品は明星食品の株式を取得する資金を捻出するために、他の投資有価証券や有価証券を
54
売却したと見られる。なお、平成 18 年以前に日清食品が所有していた有価証券は投資組合
等の証券であり、大部分が純粋な利殖目的であると考えられる。東洋水産は全ての期でフ
リーCF、ネット CF が黒字である。東洋水産の資金需要が継続的に低い事を示している。
財務分析で前述したように、東洋水産が投資を控えているのが CF の面からも伺える。
4-5 財務分析まとめ
財務分析をまとめる。両社の売上高推移を見ると、日清食品が明星食品を完全子会社化
した事による増加以外、顕著な成長は見られない。完全子会社化による売上高の増加は市
場の拡大とはならない。そのため、即席麺市場は拡大が難しい状況である事がわかる。
両社とも利益やキャッシュフローは安定している。そのキャッシュの使い道は、日清食
品は明星食品への M&A、東洋水産は負債の圧縮に回している。安全性は両社とも極めて高
い。利益が安定している一方、市場拡大への投資が出来ないでいるからである。特に有形
固定資産への投資は目立って少ない。東洋水産は削減する傾向にある。
日清食品は明星食品の買収をしてから、収益性が落ち込んでいる。明星食品の収益性の
改善が当面の課題である。東洋水産は収益性を高めている。生産拠点の統廃合により、有
形固定資産を圧縮するとともに売上原価を低下させた。それにより、収益拡大が望めない
中で総資産経常利益率を改善させる事が出来た。利益を有利子負債の圧縮に費やしたため
安全性に関する指標は健全といえる。CF 分析においても、東洋水産が社債の償還に多くの
キャッシュを割いている事がわかる。利益を有利子負債の圧縮だけでなく、将来の収益に
つながる投資にする事、そのための投資先を見つけることが当面の課題である。
55
5. 企業分析
5‐1. 経営理念
(曽我
美千子)
ここでは日清食品と東洋水産の経営理念について見てゆく。「経営理念」とは、英語では
「ミッション」と呼ばれるものに相当し、経営トップの交代や環境変化があっても簡単に
変更されることのない企業の長期的・普遍的な価値観や存在理由を体現するものである。
経営理念を示すことによって、企業は長期的な目標を明確にでき、社員は働く目的を共有
できるようになる。
(抜粋:
SBIホールディングス「http://www.sbigroup.co.jp/company/information/concept.html」
)
日清食品
日清食品の経営理念の基本は食足世平、美健賢食、食創為世の三つから成っている。この
言葉は全て日清食品の創始者である安藤百福により提唱されたもので、それぞれに込めら
れた思いがある。
食足世平は「食が足りてこそ世の中が平和になる」と言う意味、美健賢食は「美しく健
康な体は賢い食生活から」と言う思い、食創為世は「世の中のために食を創造する」と言
う姿勢を表している。この 3 つの言葉の背景には百福が目の当たりにした、戦後の日本の
状況がある。戦後、空腹で食べ物に困っていた時代、闇市で売られているラーメン一杯で
満ち足り、幸せそうな顔になった人達。そんな幸せをもっと手軽に得られるようにしたい
との思いから即席麺の歴史は始まり、日清食品のロングセラー商品「チキンラーメン」が
誕生した。チキンラーメンの開発過程においてもっとも大切にしていたのは、「おいしさの
未来」であった。おいしさを支える安全、安心、さらにその先にある健康や平和、幸福を
見つめ続けてきた結果として、チキンラーメンが生まれ、現在の日清食品が存在していた。
これからの50年も「おいしい、のその先へ。
」をスローガンに、消費者の「おいしい」が
未来にとっても「おいしい」になることを目指す。
東洋水産
東洋水産は顧客第一主義のもと「お客様により良い商品、サービスを提供することによ
り喜びと満足のある生活に貢献する」ことを経営理念としている。
この経営理念に基づき、創業時の水産物に始まり、1956 年の魚肉ハム、ソーセージ、1962
年のインスタント袋麺、1975 年の生麺「3 食入り焼そば」、1978 年の「赤いきつね」並びに
1980 年の「緑のたぬき」の発売などマルちゃんブランドのもと、
「
「安全でおいしい商品」
「確
実なサービス」を届け、消費者の支持を得ることによって、信頼される企業グループを目
56
指してきた。また、この経営理念に沿って企業価値を高めることが、顧客満足のみならず
会社、株主、従業員等全ての利益増大につながると認識している。
具体的には今後、消費者ニーズにマッチした新商品の開発並びに育成、生産・販売・物
流体制の効率化など「将来の収益確保」「経営効率の向上」を中心に取り組んでゆく。
参照:日清食品 HP http://www.nissinfoods.co.jp/com/corporate/
東洋水産HP http://www.maruchan.co.jp/company/ir/index.html
57
5‐2.リーダーシップ
ここでは各企業のリーダーはどのような人物なのかを見ていく。
(1) 日清食品
日清食品ホールディングスの現社長は安藤宏基(あんどう・こうき)であり、1985 年に
社長に就任した。日清食品の創始者である安藤百福を父にもつ。宏基氏は 1971 年 3 月に慶
応義塾大学を卒業した後、米コロンビア大学に留学、翌年 7 月米国日清食品取締代表役を
経験した後、1973 年 7 月に日清食品株式会社に入社した。1983 年 7 月に副社長を経験し
た後、1985 年取締役社長に就任した。マーケティング部長時代には「日清焼そば U.F.O.」
「どん兵衛」
「ラ王」の開発を手がけた。
1981 年先代社長の安藤百福は経営陣の若返りを図るため、副社長の座にあった安藤宏寿
に社長の座を譲り渡したが、宏寿氏は自らの申し出によってこれを拒否した。よって、当
時専務取締役東京支社長であった宏基氏を副社長に昇格させたのであった。
社長に就任し「創業者精神の継承」と「長期安定成長のための基礎作り」を提言し、イ
ノベーションとマーケティングが経営の鍵を握ると述べた。その言葉通り、宏基氏は米国
留学時代に学んだマーケティング技術を生かし、平成 2 年にはマーケティング部を一新し、
それまで採用されていたプロダクトマネージャー制をブランドマネージャー制に移行させ
た。経営に対する積極的な姿勢は実績に反映され、約 30%の大幅減益を余儀なくされた 1977
年を除き、就任してから 11 期連続増益を記録した。
(2)東洋水産
森和夫
ここでは東洋水産の創始者である森和夫ついて述べていく。森和夫は 1953 年 3 月に東
洋水産の前身である横須賀水産株式会社として築地市場で創業した男である。森氏の経
営姿勢はとにかく「社員を大切にする」ことである。東洋水産は創業から現在の大企業
に成長するまで様々な場面に直面した。創業したばかりのころたった一人の社員が激務
と薄給のため辞めてしまったり、商品を取引する際、会社の規模や実力の差から見下さ
れ、不当な条件を突きつけられ、涙を呑んで悔しがった場面もたくさんあった。しかし、
どんな場面でも森氏は常に社員を大切にし、
「僕の自慢は社員です。
」と胸を張った。信
頼性と社員を大切にするこの姿勢があったからこそ現在の東洋水産があると言える。
58
5‐2. 経営戦略
(津山
剛)
経営資源の運用指針の中でも、長期的、総合的なものを経営戦略と言う。全般的な経営
戦略と、個々の事業において競争力を高めるための指針としての事業戦略とに分けて考え
られる。それらを合わせて見ていく事とする。
(1)日清食品
新規開拓戦略
商品戦略の面では、日清食品は、創業当時から一貫して、新規市場を開拓する戦略をと
っている。市場調査と研究開発に多くの経営資源を投下し、新規開拓により先行者利益を
獲得する戦略である。また、新規開拓は商品開発だけで終わりではない。消費者に認知し
てもらうために、時間と広告費をかけて育てる事も必要である。そこに多くの経営資源を
投入するのも日清食品の戦略の特徴である。
ブランド間の競争
同じ市場に複数のブランドを展開する企業にとって悩ましいのがカニバリゼーションで
ある。カニバリゼーションとは、自社ブランド同士がシェアを奪い合うことによって、経
営資源の運用効率の低下を招く事である。対策として、カニバリゼーションが起きない様
に、ブランドの個性が重複しないよう調整していく方法がある。しかし、これに対し日清
食品はブランド間の競争を全面的に許容する戦略をとっている。ブランドごとに企画から
販売まで一つのチームに責任を負わせる事で、各ブランド同士が企業間の競争の様な厳し
い競争をする事になる。そのためには、それぞれのブランドを担当するチームが極めて高
い独立性を持つ組織形態が必要である。日清食品では、ブランドマネージャーと称される
責任者が、担当するブランドに全面的に責任を負う事となっている。そのブランドマネー
ジャーを中心とした企業内の組織が、高い独立性と外部に対する秘匿性を持って、商品を
企画販売する仕組みである。これをブランドマネージャー制と呼んでいる。カニバリゼー
ションを恐れず、あえて社内競争をさせる事で、競争力の高い商品開発を促進するのが狙
いである。
拡大戦略
日清食品は、即席麺メーカーから総合食品メーカーへの転換を目指している。それは、
生産技術や設備、ブランドなどの経営資源を他分野で活用し、効率を高めるためである。
冷凍食品業界にはすでに参入を果している。また、明星食品の買収から見て取れるように、
シェアの拡大も重視している。買収はシェアを拡大するだけでなく、経営資源の共有によ
る効率化も目的である。日清食品は「範囲の経済」と「規模の経済」の考え方で経営資源
を運用する拡大戦略が顕著である。
59
(2)東洋水産
フォロワー戦略
商品戦略の面では、東洋水産は即席麺市場ではフォロワー戦略をとる事が多い。フォロ
ワー戦略とは先行する企業の後を追う戦略である。模倣する戦略とも言える。市場開拓の
コストがかからず、開拓失敗のリスクを負う事も無いのがこの戦略の特徴である。価格訴
求で販売する事が多く、売上高営業利益率は先行企業に比べ低くなりがちである。しかし、
先行者利益を得られる事は無い。東洋水産が後を追う企業は、日清食品である事が多い。
積極的に新規開拓を行う日清食品がいてこそ成り立つ戦略である。
合理化、健全化
財務分析で前述したように、東洋水産は、収益も総資産も拡大していない。拡大傾向に
ある日清食品とは対極的である。近年、東洋水産には、有形固定資産の削減、売上原価率
の低下が見られる。これらは生産拠点の統廃合によるものである。収益拡大のための投資
を控え、生産の合理化により収益性を改善する戦略をとっている。
また、東洋水産は財務分析で前述したように、利益の大部分を有利子負債圧縮に費やし
ている。合理化により収益性を改善するとともに、キャッシュフローを投資ではなく、有
利子負債の圧縮に回し、財務体質を強化するのが東洋水産の戦略である。
60
6. 戦略課題
(小久保
奈菜子)
これまで即席麺業界の特徴や動向、財務面からみた日清食品と東洋水産の異なる経営戦
略を分析してきた。ここでは両社の共通の課題をあげてから、各社の経営戦略をまとめ、
それぞれの課題をあげる。
まず、日清食品と東洋水産の共通の課題をあげる。
第 1 に、食費が増大している新興国の市場開拓である。業界概要で述べたように、日本
と比較すると中国の即席麺の消費量は極めて高い。日本は消費高齢化の影響で年々人口が
少なくなってきている為、人口が最も多い中国やインドネシアの輸出に力を入れるべきで
ある。
また、業界概要でも述べたように、2007 年から輸入小麦価格が高騰し、即席麺の原材料
価格が上昇している。その影響で 2008 年 1 月出荷分から商品の価格を値上したが、今後も
さらに値上の可能性がある。即席麺は低価格というイメージが定着しているので、原材料
価格の高騰は即席麺業界にとってマイナスである。そこで業界動向で小麦の原材料だけに
頼らないよう、経営の多角化を挙げた。今後は総合食品メーカーとして即席麺以外の売上
を伸ばすことが第 2 の課題とする。
(1) 日清食品
経営戦略の項でも前述した通り、日清食品の経営戦略は、開発力とブランド力を高める
ことである。
日清食品の開発力は驚くべきもので、創業者兼社長を務めた安藤百福が世界が世界で初
めて即席麺を生み出した後もカップ容器に入ったカップ麺、即席麺を宇宙食として開発し
てきた。従来にない商品を市場に出すことで新たに市場を創造し、常に先頭をきって即席
麺業界をリードしている。
ブランド力だが、SPM をみると日清食品は高付加価値型のポジションにいる。つまり、
自社の商品の価値を高め、商品を高い値で売る戦略をとっている。日清食品のブランド商
品「カップヌードル」は発売当時 100 円と決して安くない価格であったが、従来にない商
品なので周りに競争相手がいない為、高い値で売る事が出来る。つまり、新しく開発した
商品は高付加価値がつくことが分かる。また、開発した商品のブランドイメージを高める
為にも宣伝や広告費を多く使っている。昔からのロングセラー商品は、世間の関心ごとや
話題にかかわった広告展開をすることで、時代の先端をいく商品のように感じる。変わら
ない美味しさの一方で、時代に先駆けるという二つの狙いがある。
研究開発とブランド価値追求を重視する日清食品だが、1992 年に業界で初めての生タイ
プ麺「ラ王」を発売して以来、目立った新市場の創造はない。そこで、新たに高付加価値
61
を持つ商品を開発することが課題にあげられる。
また、日清食品の収益性をみると平成 19 年に、売上高経常利益率を大きく低下させてい
る。これは平成 19 年 3 月に明星食品を完全子会社化した事が要因である。子会社化する前
の平成 18 年度の明星食品の経常利益は 796 百万円に対して、平成 18 年度の日清食品の経
常利益は 37,047 百万円である。よって、明星食品の売上高経常利益率は極めて低いので、
明星食品の収益性を改善しなければ日清食品の収益性の悪化は防げない。日清食品は明星
食品の収益構造の改善が課題とされる。
(2) 東洋水産
経営戦略の項でも前述したように、東洋水産は日清食品が創り出した市場を上手く利用
している。例えば 1976 年に日清食品がカップ焼きそば「UFO」を出すと東洋水産は続いて
1979 年に「焼きそばバゴォーン」を発売し、1971 年に「カップヌードル」発売したら続い
て 1992 年に「ホットヌードル」を発売するなど、日清食品が出した新商品の類似商品を出
している。このように、東洋水産はヒットした商品に追従して類似商品を市場に出すとい
うフォロワー戦略をとっている事が分かる。
また、日清食品のブランド価値を高めていく戦略とは違い、特売等の条件対応で低価格
にし、購入する数を増やす販売促進戦略をとっている。これは財務分析の SPM で、東洋水
産は高効率型のポジションにいる事からも示される。
東洋水産は日清食品の作った市場に、販売促進に力を入れて価格を抑えた類似商品を上
手く投入しているが、業界概要で述べたように原材料価格高騰の影響で、今後の低価格路
線は不利とみなす。また、売上高経常利益率はゆるやかに伸びているが、これは生産工程
の合理化のおかげだと考えられる。売上高経常利益率を日清食品に近づける為にも、東洋
水産は、価格訴求に頼らない販売戦略を課題にあげる。
さらに、東洋水産は国内の即席麺業界で 2 位にもかかわらず、シェアは日清食品の半分
以下の現状だ。これは、2007 年度の即席麺業界国内シェアで 4 位の明星食品を日清食品が
買収した為である。しかし、国内シェアでは大きく引き離されている東洋水産だが、海外
メキシコでの 2006 年度のシェアでは 85%を誇るなど、日清食品と同程度の実力をもって
いると考えられる。そこで、東洋水産は国内でのシェア獲得にさらに力を入れることが課
題とされる。
62
7.
終わりに
(津山
剛)
本論文では、即席麺の生みの親であり、育ての親である日清食品と、それに競合する東
洋水産を中心に見てきた。調べていくと、日清食品と東洋水産の商品戦略や収益構造が、
対極的である事が明らかになった。
日清食品は即席麺の生みの親であり、カップ麺やカップ生麺の開発等、新規開拓に積極
的だ。また、シェアの拡大や他分野進出を行う拡大戦略をとっている。一方、東洋水産は
新規開拓に消極的で、日清食品の作り上げた市場に参入するフォロワー戦略をとっている。
また、収益の拡大志向は低く、生産の合理化によって利益を伸ばしている。共通するのは、
両社とも財務体質が極めて健全である点だ。また、経常利益や営業 CF が著しく低迷する事
が無く、堅実な事業を行っている事も分かる。しかし、低迷する事が無い一方で、成長も
見られない。特定保健用食品として認可を受けた健康志向の即席麺の開発等、日清食品は
活発に新規開拓を行っているが、それでも市場規模が拡大しているとは言えない。日清食
品の新規開拓の実績は高いが、その日清食品でも現在の国内即席麺市場を拡大させるのに
は苦戦している。国内即席麺事業は、堅実に儲かる一方で低成長というのが現状だ。
それから、海外と日本の関係についても述べたい。日本市場において、外国企業のシェ
アが非常に少ない点は予想していたが、国内企業の海外進出が低調である点は意外であっ
た。なぜそれが意外と考えたかというと、即席麺は日本が発祥の地であるため、即席麺が
世界的に成熟市場となる前に、技術面でも設備面でも生産力で有利な立場に立てたのでは
ないかと考えたからである。しかし、現実は現地メーカーとの競争が激しく、有利な立場
とは言いがたい。特に将来性の高い中国市場では台湾企業や中国企業に押されている。日
清食品、東洋水産共に海外法人を設立し、販売に力を入れているものの海外売上高は 20%
を超える事はない。両社にとって海外進出が課題であると本文中でも述べたが、むしろ飛
躍のチャンスがまだまだあると考えたい。
つまり、国内即席麺事業は堅実で優れた事業であるが、成長機会は望めない。両社が成
長するには他の分野に経営資源を投入するしかない。具体的には海外即席麺事業と他の加
工食品事業である。国内即席麺市場で培った経営資源を最も活用し得る分野だからだ。他
の加工食品事業に関しては、生産技術や設備、ブランドの流用による相乗効果は期待でき
るが、国内市場は成熟しているため成長機会は少ない。海外即席麺事業が、市場規模、成
長性から見て有力である。海外事業の成否の分かれ目は、市場の黎明期から成長期にある
と考える。国内即席麺市場の分析において、市場が成熟期に入ると寡占化し、その寡占企
業のシェアの変化が少ない事が明らかとなった。そのため、即席麺業界においては、成熟
期となった時点の寡占企業がシェアを保ち続ける傾向が強いと言える。成熟前の市場で消
費者から受け入れられ、成熟期に入った時点で、どれ程のシェアを確保出来ているかが明
暗を分けると言える。そのためには、市場が成熟する前の国や地域への、早期参入を成功
63
させる事が肝要である。また、生産拠点の統廃合で収益性を高める東洋水産の戦略も有効
であった。ただ、製造業にとって生産の合理化は永遠の課題であるが、東洋水産が行った
ような生産拠点の統廃合が日清食品にも有効な手段とは必ずしも言えない。
結論として、既存の事業で安定成長を望める時代は終わったと言える。これからはリス
クを伴う成長戦略を練り上げなければならない。財務体質は磐石であり、優れた生産技術
を持つ両社に取って、機は熟している。
64
参考文献
著書
(安藤百福,
『魔法のラーメン発明物語』,日本経済出版社,2002 年)
(安藤百福,
『食の未来を考える:食と健康フォーラム』,1986 年)
(影山昇,『森和夫の自己実現と東洋水産』)
(木島 実,
『食品企業の発展と企業者活動』,筑波書房,1999 年)
(『食足世平:日清食品社史』,日清食品株式会社,1992 年)
(高杉良,『燃ゆるとき
会社蘇生』,1996 年 6 月)
HP
『 最 近 の 農 産 物 ・ 食 品 価 格 の 動 向 に つ い て 』, 2008 年 1 月 農 林 水 産 省 ,
http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_mirai/04/pdf/ref_data2.pdf
『即席麺家頁』
,社団法人 日本即席食品工業協会,http://www.instantramen.or.jp/
東洋水産HP http://www.maruchan.co.jp/company/ir/index.html
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http://www.instantramen.or.jp/index.html
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『会社と商品のイエローページ』http://www.yurai.jp/archives/2007/08161551.html
『ウィキペディア(Wikipedia』http://ja.wikipedia.org/wiki/?keyword=V
『SBIホールディングス』
http://www.sbigroup.co.jp/company/information/concept.html」)
日清食品ホールディングス
有価証券報告書
平成 16 年~平成 20 年
(日清食品ホールディングス
有価証券報告書
平成 16 年 3 月期有価証券報告書)
(日清食品ホールディングス
有価証券報告書
平成 17 年 3 月期有価証券報告書)
(日清食品ホールディングス
有価証券報告書
平成 18 年 3 月期有価証券報告書)
(日清食品ホールディングス
有価証券報告書
平成 19 年 3 月期有価証券報告書)
(日清食品ホールディングス
有価証券報告書
平成 20 年 3 月期有価証券報告書)
東洋水産
有価証券報告書
平成 16 年~平成 20 年
(東洋水産第 56 期有価証券報告書)
(東洋水産第 57 期有価証券報告書)
(東洋水産第 58 期有価証券報告書)
(東洋水産第 59 期有価証券報告書)
(東洋水産第 60 期有価証券報告書)
65
日清食品ホールディングス
単位:百万円
平成 14
平成 15
平成 16
平成 17
平成 18
平成 19
年
年
年
年
年
年
139,733
138,368
133,147
160,496
159,540
157,633
現金及び預金
64,264
72,024
60,957
45,116
61,688
66,739
受取手形及び売掛金
37,209
39,774
38,890
37,654
53,358
41,410
有価証券
20,697
6,496
13,127
56,994
21,617
27,230
棚卸資産
11,895
11,922
12,355
12,708
14,489
14,674
繰延税金資産
3,428
5,763
6,100
6,389
6,128
4,860
その他
2,577
2,766
2,054
1,890
2,517
3,276
-339
-379
-338
-258
-258
-560
192,260
205,276
227,957
206,305
250,867
235,061
有形固定資産
87,536
81,243
75,332
69,019
93,633
93,802
建物及び構築物
33,730
29,850
27,138
25,608
29,317
29,196
機械装置及び運搬具
18,858
18,762
15,982
14,848
16,287
17,675
1,243
1,248
1,319
1,375
1,740
1,449
30,783
29,010
28,545
25,881
43,834
43,810
927
377
349
720
1,836
1,054
1,991
1,993
1,995
585
616
616
984
813
771
445
5,022
4,321
4,352
3,863
670
457
貸借対照表
(資産の部)
流動資産
貸倒引当金
固定資産
工具器具及び備品
土地
建設仮勘定
その他
無形固定資産
のれん
その他
投資その他の資産
1,991
103,740
123,219
151,853
136,840
152,210
136,937
81,581
109,945
129,960
120,493
137,143
123,099
7,820
6,075
12,610
10,043
8,507
8,369
271
246
215
180
487
269
繰延税金資産
7,332
4,315
4,239
275
270
502
再評価に係る繰延税金資産
4,516
1,481
1,594
その他
2,238
1,156
3,396
6,015
5,850
4,742
-21
-2
-162
-168
-48
-45
331,994
343,644
361,104
366,801
410,407
392,694
平成 14
平成 15
平成 16
平成 17
平成 18
平成 19
投資有価証券
出資金
長期貸付金
貸倒引当金
資産合計
66
年
年
年
年
年
年
(負債の部)
流動負債
79,689
76,349
76,816
38,091
95,837
80,934
支払手形及び買掛金
35,563
34,299
33,682
34,666
43,324
38,045
5,246
5,117
3,038
2,853
3,791
2,353
20,708
21,210
19,498
19,068
26,545
20,308
6,476
3,398
7,565
8,186
7,890
6,822
その他
11,694
12,324
13,031
13,316
14,285
13,404
固定負債
11,739
16,175
19,414
18,975
26,093
22,916
10,560
7,761
3,510
3,510
3,510
短期借入金
未払金
未払法人税等
繰延税金負債
再評価に係る繰延税金負債
退職給付金引当金
9,768
14,223
13,580
11,660
8,946
8,642
役員退職慰労引当金
1,602
1,640
5,517
1,799
2,263
2,348
368
311
316
2,004
811
653
91,428
92,525
96,230
97,066
121,931
103,850
277,111
285,803
その他
負債合計
(純資産の部)
株主資本
資本金
25,122
25,122
25,122
25,122
25,122
25,122
資本剰余金
48,370
48,370
48,370
48,385
49,754
49,754
利益剰余金
175,365
180,876
193,926
203,797
216,553
225,269
4,639
-3,337
評価・換算差額等
土地再評価差額金
その他有価証券評価差額金
為替換算調整勘定
自己株式
純資産合計
少数株主持分
負債、少数株主持分及び
純資産合計
-6,699
2,192
-2,359
-7,568
-7,532
-7,532
1,406
4,631
6,114
9,899
10,921
3,589
115
-2,622
-3,282
242
1,251
605
-9,742
-9,747
-9,753
-16,679
-14,318
-14,342
233,707
244,439
258,138
263,199
288,476
288,844
6,857
6,680
6,735
6,535
6,724
6,377
331,994
343,644
361,104
366,801
410,407
392,694
負債純資産合計
連結損益計算書
平成 14
平成 15
平成 16
平成 17
平成 18
平成 19
年
年
年
年
年
年
67
売上高
315,279
320,032
316,972
321,700
358,238
385,469
売上原価
160,258
161,978
156,876
158,209
175,296
495,664
売上総利益
155,021
158,053
160,095
163,491
182,941
189,805
販管費及び一般管理費
128,620
134,850
131,133
131,512
149,207
162,133
26,400
23,203
28,962
31,979
33,734
27,671
営業外収益
3,427
3,668
4,454
7,853
4,598
5,850
受取利息
1,192
1,081
1,335
1,741
1,498
1,774
受取配当金
490
764
1,202
1,324
1,613
1,729
有価証券売却益
393
980
374
3,072
103
154
持分法による投資利益
290
317
593
485
475
1,201
その他
1,058
524
520
604
907
990
営業外費用
1,150
1,250
234
307
490
723
48
53
43
40
48
60
有価証券売却損
189
5
25
188
38
有価証券評価損
17
33
3
有価証券償還損
27
728
768
593
625
89
401
21
115
101
117
273
59
78
313
261
経常利益
28,676
25,620
33,183
39,526
37,843
32,798
特別利益
29
256
294
343
785
204
固定資産売却益
29
2
75
7
29
9
193
572
2
51
182
174
営業利益
支払利息
為替差益
営業外税金
その他
投資有価証券売却益
関係会社生産益
過年度特別退職金戻入益
138
関係会社株式売却益
112
償却再建取立益
122
貸倒引当金戻入益
18
その他
特別損失
0
0
67
80
23
0
18
3,185
1,171
6,405
10,057
5,050
5,314
2
187
8
9
7
10
304
279
379
578
5,631
1,129
2,370
424
7
1,180
2,556
1,378
固定資産売却損
固定資産廃却損
減損損失
投資有価証券評価損
155
出資金評価損
68
423
112
関係会社出資金評価損
2,649
14
1,075
772
390
関係会社株式売却損
9
318
製品自主回収費用
627
社葬関係費用
301
関係会社清算損
608
前期損益修正損
3,569
役員退職慰労引当金繰入
201
ゴルフ会員権評価損
557
84
7
0
31
貸倒損失
特別退職金
84
2
421
その他
92
86
85
381
1,135
536
255,520
24,705
27,072
29,811
33,578
27,688
10,929
8,901
11,629
141,568
11,018
11,026
法人税等調整額
-28
1,535
-1,385
2,900
3,528
3,251
少数株主利益
196
217
216
-45
62
-181
14,422
14,050
16,611
15,388
18,968
13,591
税金等長期調整前当期純利益
法人税、住民税及び事業税
当期純利益
東洋水産
貸借対照表
単位:百万円
平成 14
平成 15
平成 16
平成 17
平成 18
平成 19
年
年
年
年
年
年
(資産の部)
流動資産
現金及び預金
24,275
28,881
31,686
33,093
37,141
29,833
受取手形及び売掛金
41,669
40,568
41,468
43,086
43,271
39,276
86
8,000
有価証券
46
棚卸資産
23,643
20,842
21,660
21,737
20,126
18,931
2,013
1,976
2,163
2,106
2,991
18,931
6,270
5,494
3,106
2,991
1,670
-353
-1,096
-1,523
-62
-205
-244
97,163
97,163
100,949
103,067
105,083
100,532
繰延税金資産
その他
貸倒引当金
流動資産合計
固定資産
124,937
有形固定資産
建物及び構築物
45,138
41,499
41,549
41,416
39,936
36,314
機械装置及び運搬具
21,677
20,496
20,184
20,487
20,632
17,978
工具器具及び備品
69
土地
550
37,776
33,401
31,228
28,830
28,396
854
1,115
2,095
944
2,669
1,149
1,142
1,152
1,209
1,186
1,144
10,581
98,770
97,404
96,436
91,530
86,503
241
161
1,692
1,285
建設仮勘定
その他
有形固定資産合計
無形固定資産
のれん
ソフトウェア
999
2,058
2,204
1,928
連結調整勘定
114
18
4
38
その他
435
430
427
434
627
405
1,549
2,508
2,402
2,562
1,851
13,553
16,243
15,686
18,721
18,318
14,903
331
264
219
299
192
134
7,268
5,839
2,232
1,322
1,331
1,299
1,343
1,313
1,065
1,056
834
818
0
0
-2
0
0
0
22,496
23,658
19,202
21,399
20,676
17,155
固定資産合計
127,627
124,937
119,242
120,238
114,769
105,511
資産合計
221,791
222,379
220,191
223,306
219,852
206,043
無形固定資産合計
投資その他の資産
投資有価証券
長期貸付金
繰延税金資産
再評価に係る繰延税金資産
その他
貸倒引当金
投資その他の資産合計
平成 14
平成 15
平成 16
平成 17
平成 18
平成 19
年
年
年
年
年
年
(負債の部)
流動負債
支払手形及び買掛金
19,613
18,918
18,866
19,999
19,204
19,653
短期借入金
12,818
8,599
3,728
1,632
3,030
1,441
189
166
142
142
一年以内に返済予定の長期借入金
一年以内に償還予定の社債
20,000
10,000
未払法人税等
3,590
3,302
2,583
4,059
3,533
3,397
未払事業所税
57
56
63
66
64
64
未払消費税等
546
750
99
355
384
434
13
1
繰延税金負債
返品調整引当金
6
役員賞与引当金
6
7
8
98
70
130
未払費用
16,939
16,220
16,318
17,852
17,226
14,945
1,849
724
2,645
2,410
1,770
1,008
55,419
48,579
64,501
46,573
55,456
41,218
30,000
30,000
10,000
10,000
長期借入金
1,480
1,240
680
487
341
198
繰延税金負債
2,218
2,196
2,205
5,104
3,569
1,901
21,045
21,722
12,500
12,694
12,615
12,903
役員退職慰労引当金
1,074
613
659
710
202
175
債務保証損失引当金
1,563
816
215
129
179
196
202
544
57,596
56,718
26,227
29,194
16,894
15,724
113,016
105,297
90,728
75,767
72,351
56,943
7,265
7,856
9,014
9,972
資本金
18,969
18,969
18,969
18,969
18,969
18,969
資本剰余金
20,155
20,155
20,155
20,155
21,412
21,421
利益剰余金
68,353
75,482
86,159
98,366
101,597
110,734
為替換算調整勘定
-1,020
-3,903
-3,592
-949
2,555
-6,666
1,373
1,683
4,073
2,555
340
-2,853
-2,926
-3,049
-6,898
-7,001
その他
流動負債合計
固定負債
社債
再評価に係る繰延税金負債
退職給付金引当金
その他
固定負債合計
負債合計
(少数株主持分)
少数株主持分
(純資産の部)
株主資本
その他有価証券評価差額金
自己株式
-855
評価・換算差額等
繰延ヘッジ損益
-12
土地再評価差額金
少数株主持分
10,512
11,323
純資産合計
104,509
109,225
120,449
137,566
147,501
149,100
負債純資産合計
224,791
222,379
220,191
223,306
219,852
206,043
平成 14
平成 15
平成 16
平成 17
平成 18
平成 19
年
年
年
年
年
年
連結損益計算書
71
売上高
319,373
310,292
307,561
325,679
321,356
314,744
売上原価
212,850
203,747
197,773
207,905
205,365
199,162
売上総利益
106,522
106,545
109,787
117,774
115,991
115,581
販管費及び一般管理費
87,127
87,900
89,542
97,838
96,420
95,359
運賃保管料
18,897
18,685
18,595
20,398
19,725
19,425
宣伝広告費
2,985
2,879
3,515
3,461
3,105
3,000
販売促進費
46,492
48,291
49,317
54,846
54,988
54,441
給料手当
5,462
5,308
5,341
4,653
5,181
4,992
賞与
2,234
1,780
1,656
1,642
1,617
1,828
退職給付費用
1,625
1,483
1,053
1,187
1,390
1,400
98
130
役員賞与引当金繰入額
役員退職慰労引当金繰入額
減価償却費
111
84
97
112
51
29
1,054
1,139
1,174
1,177
1,166
1,156
1,164
38
のれん償却額
貸倒引当金繰入額
連結調整勘定償却額
12
31
27
29
262
836
850
951
1,061
1,111
1,142
7,393
7,357
7,808
9,034
7,918
7,772
19,395
18,644
20,245
19,935
19,570
20,222
1,382
1,300
1,349
2,178
2,779
3,948
受取利息
119
119
159
648
1,307
1,250
受取配当金
186
169
179
249
332
1,695
有価証券売却益
405
396
302
298
賃貸収入
671
615
334
171
43
288
37
236
179
167
638
569
618
546
研究開発費
その他
営業利益
営業外収益
持文法による投資利益
雑収入
その他
営業外費用
1,806
1,827
1,335
962
803
1,546
支払利息
795
699
610
390
267
179
賃貸原価
247
377
91
57
51
66
97
122
原材料廃棄損
有価証券評価損
有価証券償還損
棚卸資産評価損
101
為替差損
56
72
487
127
881
雑損失
706
262
505
513
285
296
経常利益
18,971
18,117
20,259
21,151
21,546
22,623
特別利益
343
1,137
8,359
5,694
1,390
943
62
26
13
5,272
67
84
334
269
282
155
605
その他
固定資産売却益
投資有価証券売却益
関係会社株式売却益
879
固定資産税環付近
212
貸倒引当金戻入益
82
148
厚生年金基金代行部分返上益
5
6,934
役員退職慰労引当金入額
80
企業立地促進事業補助金
117
債務保証損失引当金戻入額
233
747
816
30
177
133
75
20
4,622
1,919
5,538
2,050
6,040
2,051
566
586
591
1,146
534
424
投資有価証券売却損
30
24
1,337
828
47
投資有価証券評価損
3,825
288
その他
特別損失
固定資産売却損
関係会社出資金評価損
994
減損損失
1,421
過年度役員退職慰労引当金繰入額
5,229
1,361
12
債務保証損失引当金繰入額
工場閉鎖費用
123
9
119
貸倒引当金繰入額
798
855
貸倒損失
特別退職金
その他
税金等長期調整前当期純利益
法人税、住民税及び事業税
法人税等調整額
少数株主利益
当期純利益
72
152
396
75
229
142
14,692
17,336
23,080
24,795
16,896
21,515
7,591
7,447
7,995
8,741
8,673
-962
-45
9,654
1,828
1,062
308
667
852
1,458
1,157
915
1,150
7,395
9,081
11,967
13,813
6,176
11,382
73
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