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(3)都市再生
②フェリービルディング(ファーマーズ・マーケット運営主体)・
フ ァ ー マ ー ズ ・ マ ー ケ ッ ト
見 学
レポート担当
品川
と
き
平成19年11月8日(木)、11月10日(土)
ろ
フェリービルディング ほか
と
応
こ
接
者
公男
議員
フェリービルディング
ジェーン・コナース氏ほか
(Ms. Jane Connors)
調査目的
1
大阪圏においては、ライフサイエンスの国際拠点形成、水
の都大阪の再生などの都市再生プロジェクトが進められてい
るが、都市の魅力と国際競争力を高めることは、引き続き大
阪の喫緊の課題である。
サンフランシスコで成功、定着しているファーマーズ・マ
ーケットの運営主体である民間会社フェリービルディングか
らヒアリングを受けるとともに、現地のファーマーズ・マー
ケットを見学し、大阪における都市再生の方策を考える上で
の参考とする。
アメリカにおけるファーマーズ・マーケット
ファーマーズ・マーケットは、17世紀、ヨーロッパからの移民によってア
メリカに持ち込まれたもので、農家が荷馬車に農産物を積んで街に行き、広場
や道路上で販売したのが起源といわれている。その後、公共や富裕層が場所の
提供をするようになり、パブリック・マーケットに発展した。しかし、20世
紀に入ると、農産物の保存・輸送手段が発達し、一方でスーパーマーケットが
台頭してきたため、農産物の工業製品化が進み、
「地産地消」的なファーマーズ・
マーケットは、衰退の道をたどる。
ただ、1960 年代になると、この工
業製品化に対する消費者の不満が高
まるとともに、工業化に成功しえなか
った小規模農家が存亡の危機に立た
される状態となった。こんな中、各地
でファーマーズ・マーケットが復興し
質疑風景
28
始める。
州政府も当初は、消費者、農業者救済の立場から支援策を打ち出すようにな
り、加えて、地域コミュニティーの再生という面にも大きく貢献することから、
都市再生を目的としたマーケットも増え始め、現在に至っている。
ファーマーズ・マーケットは、
自分が作った農産物や加工食品、
調理品を持って集まり、それぞれ
与えられたスペースに並べておの
おのが販売する場所である。専用
の建物等は持っていないのが普通
で、広場や駐車場、空き地、路上
などにテントやパラソルを広げて
販売場所としている。販売・会計
も別々で、農家にしてみると、
「出
荷」ではなく「出店」である。
2
見学したファーマーズ・マーケット風景
フェリービルディングの歴史
フェリービルディングは、イースト・ベイとを結ぶフェリーと市内を走る路
面電車のハブとして、1898年に建てられた。1930年前半までフェリー
が唯一の交通手段であり、ピーク時には一日あたり50,000人が利用する
までになった。
なお、今回訪問したフェリービルディングは、その運営主体である民間会社
である。
フェリービルディング(1898 年 )
29
しかしながら、やがて暗黒時代がやってくる。1936年にベイブリッジが、
1937年にゴールデンゲイトブリッジが続けて開通することで、自動車での
直接移動が増え、1950年代には、フェリーの利用者とともにフェリービル
ディングの利用が激減した。このため、建物は、小規模企業のオフィスとして
貸し出しを行うようになった。
さらに、1957年には、建物の正面に、2層建ての高速道路ができ、著名
な建築物であったフェリービルディングが忘れ去られるまでに至る。
フェリービルディング(1957 年 )
再び光を取り戻すのは、1970年代以降。自動車の交通量が非常に増加し、
慢性的な渋滞が生じたことから、フェリーがその代替として見直されるように
なり再開されたことに加え、1989年に発生した大地震が、フェリービルデ
ィングの正面にある高速道路に大きなダメージを与え、1991年には取り壊
されることになり、フェリービルディングとウォーターフロントが再び注目さ
れるようになった。
建物については、歴史的なもの(例えば、タイルのモザイク)を再利用しつ
つ、修復工事及び地震対策を行うなどリニューアルし、40店舗からなる常設
のマーケットプレイスを整備するとともに、建物の正面及び海に面した広場で
ファーマーズ・マーケットを運営することとなった。
30
3
フェリービルディングでのファーマーズ・マーケット
(1)マーケットプレイス
店舗をリースするに際しては、地元産品を扱う企業を優先するとともに、
持続可能な農業を支援するため、適正な賃金・仕入れを行っている企業と契
約した。
テナント店舗の一例として、あるファーストフードのお店では、ゆっく
りくつろぐファーストフードというテーマで、地元産のワインも飲めるし、
メニューにあるホットドッグも地元で作られたオーガニックな材料を使っ
たものであり、包み紙も全て自然に帰る素材のものを使うなどしている。
近隣のオフィス街の人やフェリー利用客をターゲットとして商売してい
るが、オープン時から評判がよく、遠方の市民や観光客がわざわざやって
くるまでになっている。
テナント企業には、通常の販売・サービスを行うだけではなく、(3)で
述べるNPO活動への協力を通じて
地域コミュニティーに貢献してもら
っている。
フェリービルディング全体風景
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(2)ファーマーズ・マーケット
毎週火曜日と土曜日に開催しており、25,000人
の来客がある。来客者はほとんどがサンフランシスコ近
郊から来ており、近隣の住民の比率は低い。
ファーマーズ・マーケットでは、州の法律に基づき、
郡の認可を受けた州民である農業者が州内で生産したもののみ販売が可能
である。地元の農業者が地元の消費者に直接販売するので、農業者は多く
の代金を得ることができる。また、農業者と消費者の間で双方が求めてい
る情報の交換ができるメリットがあるので、農業者のオーナーには、必ず
月一回はマーケットに来るように要請している。
出展者数は、季節によって異なるが、冬だと農産品が少ないので、45
の農業者と15の製品販売者の規模だが、夏になると80の農業者と30
の製品販売者の規模になる。
フェリービルディング内部の常設マーケット
ファーマーズ・マーケット風景
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(3)持続可能な農業についての市民への教育
ファーマーズ・マーケット内では、CUESA(the
Center for Urban Education about Sustainable
Agriculture)というNPOがあり、持続可能な農業に
ついて市民に教育をしている。ここでの持続可能とは、
「経済的に成り立つ」という点のみならず「社会的に
公平である」「人道的である」「環境にもやさしい」と
いう点も含めている。
具体的な活動としては、建物内の集会場で、住民を
対象に、地元の質の高い農産物を、地元のシェフがも
っともふさわしい調理方法で調理してみせ試食させる
教室であるとか、実際に農場まで出向いて農産品の作
られ方を勉強し、どのようなコストが必要なのかを学
ぶ教室などを開催している。こうしたイベント等を通
農場でのイベントの様子
じて持続可能な農業システムについて市民に確認・勉
強してもらう。
もちろん、NPO自体は、マーケット出店料とイベント参加費で運営し
ていることから、ファーマーズ・マーケットを運営することは、持続可能
な農業のシステムを確立することに大きく貢献しており、フェリービルデ
ィングとの連携は欠かせないものである。
<質疑応答>
Q ファーマーズ・マーケットに出店している農業者の全収入に占めるこの
マーケットでの売り上げの比率はどのくらいか。
A 小規模な農業者では、全ての収入をこのマーケットからだけ得ていると
いうケースもあるが、平均的には、このマーケットで全収入の25%を得
ている。
(他の収入は、他のファーマーズ・マーケットでの販売やレストラ
ンへの販売から得ている。)
Q 海沿いに位置しながら、漁業者ではなく、農業者のマーケットを開いた
のはなぜか。
A
持続可能な農業支援のため、地産地消という考え方のもと、農業者のため
33
のマーケットとしてスタートしたため、水産物は想定していない。もちろん
近隣のフィシャーマンズワーフが商業的に成功しており、競合を避けたかっ
たという面もある。
フェリービルディング2階にて
34
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