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女川町宿泊村協同組合理事長 佐々木 里子(ささき・さとこ)氏 新しい街づくりが進む宮城県女川町の中心街から少しだけ山間に入った ところに、グリーン、ブルー、イエローなどパステルカラーに彩られたカラ フルな建物が40戸ほど並んでいる。近づいてみると、建物の下には大き なタイヤが見える。2012年12月にオープンしたトレーラーハウス宿泊村 「El Faro」(エル ファロ)だ。 パステルカラーに彩られたトレーラーハウス 旅館を絶対に再建する 女川町宿泊村協同組合「El Faro」の理事長を務める佐々木さんは、女川で両親とともに旅館「奈々美や」を営んで いた。旅館の仕事が大好きで小学生のころから手伝いをしていた。結婚後は女川を離れたが、旅館の仕事がしたい という思いを家族が理解してくれ、家族みんなで女川に戻ることになり、再び旅館の仕事をすることとなった。しか し、2011年3月11日の東日本大震災による津波で両親を亡くし、旅館も失ってしまった。しばらくの間、仙台の姉のと ころに身を寄せながら、「女川の学校に通いたい」という子どもたちのために往復で3時間以上も掛かる距離を送り迎 えしていた。 そんな中、宿泊施設がないために、復旧・復興工事の作業員、国や県の職員、ボランティアの方々が同じように 宿泊村中央のウッドデッキ「パルケ」では、さまざまなイ ベントが開かれる 遠方から通っていることに気付く。家族・親族、友人を訪ねてくる方々も同じで、限られた大きさの仮設住宅に宿泊 することは出来ず、皆日帰りで帰らなければならない。「涙を流して別れる姿を見ることは本当につらい思いだった」 と言う。この光景を何度も目の当たりにして「旅館を絶対に再建する」と決意した。 しかし、旅館を再建するためにはいくつもの課題があった。中でも一番大きな問題は、再建する場所がないこと。 女川は中心街のほとんどを津波で失い、仮設住宅の用地でさえ確保が難しい状況だった。さらに復興計画は、まだ 検討の段階にあり、仮に建設用地が見つかり建設したとしても、嵩上げや道路工事により移設しなければならない 可能性さえあった。そんなときに出会ったのがトレーラーハウスだ。建築物ではなく車両なので建築制限区域にも設 いつも笑顔と感謝、そんなスタッフが家族のような温か さで迎えてくれる(宿泊村管理棟) 置が可能で、復興の工事の状況により移動もできる。被災地にトレーラーハウスの宿泊施設をつくるという前例のな い取り組みに、町はもちろん、県や国、地元の金融機関、ホテル旅館組合、観光協会や商工会、多くの企業の 方々、女川町復興連絡協議会などさまざまなところが手助けしてくれた。旅館を絶対に再建するうえで、何より支え になったのは、震災前に両親とともに営んでいた「奈々美や」のかつての宿泊客からの励ましだった。常連の方、一 度だけ泊まったという方、多くの方々から励ましのメールや電話、物資の支援があった。 (C)Tohoku-Electric Power Co.,Inc. All Rights Reserved. 移動も可能なトレーラーハウスとの出会いが、建築制 限区域への宿泊施設設置など多くの課題を解決してく れた 多くの方々に支えられて トレーラーハウス宿泊村「EL Faro」は、多くの方々に支えられ2012年12月に完成した。女川町で同じく被災した4 つの旅館で「女川町宿泊村協同組合」を設立し運営している。宿泊棟のトレーラーハウスは国産で、日本の気候に 合わせてつくられているため、海外製に比べ耐久性がある。外壁はグリーン、イエローなどのパステルカラーで彩ら れ、入り口には、スペインタイルを女川の新しい文化にするべく活動している「みなとまちセラミカ工房」※制作の素敵 なナンバープレートが飾られている。中に入ると広々とした空間が広がっており、ゆったりとくつろぐことができるソ ファーや仕事をする利用者のための大きなデスクが並ぶ。もちろんバス・トイレ付きだ。宿泊料金は、女川町民に加 え、町外に住む家族や親族が割引となる。佐々木さんに理由を訊ねると「仮設住宅を訪ねてきても日帰りで帰らなけ 広々とした室内に二人掛けのソファーとビジネスマン向 けのデスクも設置されている ればならないご家族やご親族の方々に宿泊してもらって、ゆっくりと過ごしていただきたいと思ったからです」。さら に「このEL Faroは多くの方々に助けられ、支えられてスタートすることができました。女川を訪ねてきた方々や復興 の工事に携わる方々の癒しの場として、助けられた私たちが今度はお返しをする番だと思います」。「EL Faro」とは スペイン語で「灯台」と言う意味。多くの方々の支援や応援という灯火に導かれ、自分たちの願いが叶えられた。「今 度は自分たちが被災地に『希望』を灯す灯台になりたい」という思いから名付けた。 女川の街は、大量にあったガレキが片付けられ、嵩上げ工事や道路・鉄道などの建設工事が進んでいる。「何も なくなってしまった女川が新しい女川に変わっていく姿を皆さんに見てもらいたい。足を運んでもらい、女川の再生を 部屋のナンバープレート(スペインタイル)は、きぼうの かね商店街にあるみなとまちセラミカ工房が制作して いる 目に焼き付けてほしいですね」と佐々木さんは話す。 またひとつ、女川を訪れる理由が増えた。 ※NPO法人 みなとまちセラミカ工房紹介記事 http://www.tohoku-epco.co.jp/fukyu/report/contents/g13_spain/index.html 女川町宿泊村協同組合 El Faro(エル ファロ) 宮城県牡鹿郡女川町清水町174,175,176,177,178 ●ご予約・お問い合わせについて 【お電話】0225-98-8703(受付時間:9~22時) 【メール】[email protected] ※詳しくは、下記ウェブサイトでご確認ください。 2013年11月取材 (C)Tohoku-Electric Power Co.,Inc. All Rights Reserved.