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第4報告 児童虐待とスクールソーシャルワーク

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第4報告 児童虐待とスクールソーシャルワーク
Nara Women's University Digital Information Repository
Title
第4報告 児童虐待とスクールソーシャルワーク
Author(s)
金澤, ますみ
Citation
奈良女子大学文学部研究教育年報, 第1号, pp.45-52
Issue Date
2005-03-31
Description
奈良女子大学文学部研究教育年報 第1号 特集:子ども学と虐待問
題―「子ども学」プロジェクトからの報告―より
URL
http://hdl.handle.net/10935/311
Textversion
publisher
This document is downloaded at: 2017-03-29T16:22:13Z
http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace
4
5
創刊号 (
第 1号)
奈良女子大学文学部研究教育年報
〔
第 4報告〕
児塵 虐 待 とス タ1ル ゾ- シ ャル ワ・
-タ
桃山学院大学講師
金
は じめに -
学校現場への期待 と現状のギ ャップ
津
ます み
実 は不登校 やい じめ、非行な どの従来 の学校問題 の
2
0
0
0
年 (
平成 1
2
年) に成立 した児童虐待 の防止等 に
背景 には、多 くの場合、児童虐待が一要因 と して存在
関す る法律が、 3年 の見直 し時期 を迎えて改正 され、
している。 ところが学校現場ではその ことが十分 に認
2
0
0
4
年1
0
月 1日か ら施行 された。その改正内容か らは、
識 されてお らず、 これに対す る異体的な手立てが とら
児童虐待への対応 について これまで以上 に学校現場へ
れていない。 そ うだ とすれば、 まず は児童虐待が学校
の期待が高 まっていることが見て とれ る。 学校 にかか
現場 の問題 と して どのよ うなかたちで立 ち現れて くる
わ る点 と して、改正前 に 「
学校の教職員」は 「
児童虐
かを、異体的な事例か ら確認す るところか らは じめる
待 を発見 しやすい立場 にあることを自覚 し、児童虐待
必要がある。 そ うす ることで は じめて、実際 に学校が
の早期発見 に努めなければな らない」 とあ った ものが、
取 り組んでいかなければな らない方向性 を見定 め、問
改正後 は、 これに加えて早期発見 の努力義務が、個人
題解決 に向けてのスター トライ ンにつけるか らである。
学校」に
の 「
教職員」 だけではな く、組織 と しての 「
も課せ られ ることにな った。 そ して虐待 を受 けている
1 学校の 「諸問題」 とその背景 にある 「児童虐待」
か もしれない児童 を発見 して児童相談所等 に通告 をす
最初 に、子 どもたちの行動が学校 のなかで 「問題」
るのは もちろんの こと、通告 をすればそれで終わ りと
と してあ らわれた事例 をい くつか紹介 しよ う。 いずれ
い うことではな く、 その後 の支援 に も関係機関 と して
も現実の事例か らとっているが、 プ ライバ シーの問題
かかわ らなければな らない ことが明記 された。
もあるので、必要 な範囲で ごく簡略に述べ るにとどめ
改正法がスター トした1
0
月 1日は、 2学期がスター
る。
トして 1ヶ月がす ぎ、 よ うや く通常 の授業 に子 どもた
ちが慣れて きた頃である。 と同時 に、体育祭や ら文化
学校の 「
諸問題」
祭や ら、行事への取 り組み も平行 して行わなければな
小学校 4年生 の A男 は、万弓ほ を繰 り返 していた。
らない時期である。その忙 しいさなかに、法律がかわ っ
また学校で も、友達の文房具 などを とった り、突然、
たか らとい って、学校で児童虐待への取 り組みが急 に
友達の頭をたたいた りす るとい うことが頻繁 にあった。
かわ ることはな い 。 む しろ、「また、何か学校がや ら
学校で は問題が起 きるたびに保護者 に連絡 を とり、厳
なければな らないことが増え るのか」 とか 「
学校 に責
しく指導を行 っていた。
任 を押 し付 けるのか」 とい うよ うな消極的な声が聞 こ
小学校 3年生 の B子 は、学校 に行 くと言 って家 を出
学校が組織 と して児童虐待へ取 り組 む」
えて くる。「
るが、実際 は登校 してお らず、夜遅 くまで一人暮 らし
とい って も具体的に何 をすればいいかがま った く示 さ
の老人 の家 にあが りこんでいた。 その ことが発覚 して
れて いな い か らで あ る。 それで な くとも、学校 で は
か らは登校す るよ うになるが、学校では友達を仲間 は
「不登校」、 「い じめ」、「
非行」、「
学級崩壊」 などの諸
ずれに した り、教師や友達 に嘘の情報 を流 した りして、
問題への対応 に追われている。 それに加えて 「
児童虐
しば しば トラブルを起 こした。
待」 にまで関与せ よとなると、先のよ うな声がおのず
中学校 1年生 の C子 は、 2学期頃か ら遅刻や欠席が
と出て くる。 この ことを一方的に批判 して も解決の糸
増えは じめた。 たまに学校 に来て も授業 をエスケープ
口は見えて こない。
す ることが多 く、注意 をす ると激 しく反発す る。 その
4
6
特集 :子 ども学 と虐待問題一第 4報告
うち深夜排梱等で補導 され ることが多 くなった。
中学 3年生の D男は、中学 2年 まで 元
気 に学 校 に通 っ
起 こったのか。一時保護 をされて後 にわか った情報 を
もとに考えてみたい。
体調不良」 を理 由に
ていたが、 2年 の 2学期頃か ら 「
万引 きを繰 り返 した A男 は、小学校 に入学 を した頃
休むよ うにな った。1
0
月 に入 ってか らはまった く登校
か ら慢性的にネグ レク トの状態であ った。 A男 は母親
せず、担任が家庭訪問を して もなかなか会えない状態
との二人暮 らしで、 その母親 も夜遅 くまで働 いている
にな った。
ために、 なかなか A男の食事や洗濯などが行 き届かな
この 4人 のよ うな 「問題」 を抱 え る子 どもたちはど
い。 それで もA男が低学年 の頃 は、 お惣菜 などを 買 っ
の学校 に もいる。 あえて これに名前 をっ けるとす るな
て きては置 いてお くとい う程度 には食事 の用意 を して
非行」
、 B子 は 「
不登校-問題児」、 C
らば、 A男 は 「
でか けていた。 A男が 3年生 にな った頃か らは、食事
子は 「
遊 び型不登校 と非行」、 D男 は 「
不登校 」 と呼
代 と してお金を渡すよ うにな ったが、 A男がお菓子 し
べ る。 学校 はこれまで このよ うな問題 に長 く取 り組ん
か買わないため、そのことがわかると何 日問にもわたっ
で きた。 そのなかで不登校 には不登校 の手立て、 また
て食事代 を渡 さない日が続 いた。 また、 この頃か らA
非行 には非行 の手立て とい うよ うに、 それぞれの問題
男が母親 との約束、-
行動 にそれぞれ異 なる手法があるか と考え られて きた。
けるとか、 洗濯物 を取 り入 れてお くとか い った こと
しか し実際には、外形的 にはよ く似ていて同 じ名前で
-
くくられ る問題であ って も、 その背景 となる事情 はさ
の夕日こしめだ された りす るよ うにな った。 それ と平行
まざまで、 これを一律 に考え るわけにはいかない。 た
す るかのよ うに A男の万 引きはは じまっている。 その
とえば上 の 4人 の うち B子、 C子、 D男 はいずれ も
内容 は、 スナ ック菓子、パ ン、イ ンスタン トラーメ ン、
「不登校」 とい う問題 をかかえた子 ど もで ある。 けれ
ジュースとい った食料品が ほとん どであ った。
例 えば宿題 を してか ら出か
を破 ると、 フライパ ンで殴 りつ け られた り、家
ども、学校を休んでいる当の本人たちの生活状況はまっ
た く異 な っている。
コミュニケー シ ョン手段 と しての暴力
実を言えば、 この 4人の子 どもたちは、 のちにいず
学校でいっ も トラブルメーカーだ った B子の家庭で
れ も被虐待児童 と判明 し、最終的には児童相談所 に虐
は、母親が とて もま じめな人で、 B子 に対 して もまが っ
待通告 をされて、 A男、 B子、 C子 は一時保護 の後 に
た ことを許 さなか った。挨拶や食事 の仕方、 TVの内
児童養護施設-措置 された。 また D男 は、長期間にわ
容 など、生活の細部 にわた って制限を加 えていた。母
た ってネグ レク ト環境 におかれ、栄養失調 のために昏
親 の指示 の通 りにで きない と、「ど うしてそん な こと
睡状態 にな って入院 とい う事態 にな って、虐待 の事実
もで きないの」「そんな子 な らい らない」「
生 まれて こ
が露見 した。当た り前 の ことだが、表面上 どのよ うな
なければよか ったのに」 と言 って、長時間正座 をさせ
「問題」 をかかえた子 ど もであれ、 その生活状況 を見
た り、叩いた りしていた。 その母親 も実 は夫か らDV
きわめ、 それに沿 った支援 を していかなければ、 その
を受 けていた。 B子の家庭では、何か 「間違 ったこと」
不登校 」
問題 に真 の意味で触 れ ることはで きな い 。 「
があると暴力で解決をす るとい うコ ミュニケー ション
にせ よ 「
非行」にせ よ、子 どもたちの行動面だけを指
しかなか ったのである。 そのためであろう、 B子 は学
導の対象 として も、 その生活背景 を見ない限 り根本的
校 の友達 との問で も、 「いや」 とい う返事 のかわ りに
解決 にはとどかない。
す ぐに手 を出 して しまう。 そ うして友達 との関係が う
ま くいかな くな った B子 は、一時期 の間、学校 には登
空腹のはての万引 き
上記の4人の子 どもたちが虐待を受 けているとわか っ
たのは、その虐待が は じま った と推測 され る時期か ら
校せずに公園をぶ らっ くことになるのだが、 その間に
一人の老人 と出会 って、その家に上が りこむようになっ
たのである。
少な くとも 1年以上 た ってか らであ った。つま り身体
やがてその ことが親 の知 るところとな り、 B子が嘘
的症状が見えない段階で被虐待 を疑 い、早期発見 につ
をっいていたとい うことで、 これまで以上 の罰が与え
なげるとい う視点が、学校 に も地域 に も不十分だ った
られた。 その後、両親か ら叱 られ ることを恐れて学校
とい うことになる。 では、 どのよ うな背景か ら虐待が
へは登校 をす るよ うにはな ったが、学校での トラブル
4
7
奈良女子大学文学部研究教育年報 創刊号 (
第 1号)
はな くなることはない。友達の教科書 や文房具を隠 し
が まま遊 びに出か け、父親が帰 って きて も家 にいない
て は人 のせ いに した り
、「
○○君 に叩かれた」 と嘘 を
ことが増 えた。父親 は叱責 したが、叱 られれば叱 られ
言 った りして、教師を混乱 させた。教師が二人だけで
るほど、 C子 の夜遊 びはひど くな っていった。 やがて
話 をす ると 「
本当はたたかれていない」 と認 めるのだ
C子 は外泊を繰 り返 し、弟、妹 に食事 をとらせ ること
が、 その後 も同 じことを繰 り返 して しま う。 教師は学
も怠 るよ うにな った。
校での状況 を B子 の両親 に も伝えたが、 B子 は 「そん
」
な こと して いない 「先生 は私 の言 うことだ けを信用
誰 も会えないままに
して くれない」 と言 い、両親 もB子 の話 を信用 したた
こうしてみ ると、学校 の側 に見えて くる問題 は、実
めに、学校 との問には亀裂が生 じることになって しまっ
は子 どもたちの抱 えている問題 のほんの一部 にす ぎな
ていた。
い ことがわか る。 表面 に見えたその一部か ら問題 の全
B子 にとって、 この嘘の塗 り重ねは 「たたかれない」
容 をどのよ うに見つ けて、対処 してい くのか。 それは
ための手段だ ったか もしれない。暴力 を振 るった り人
けっして容易 な ことではな い
を困 らせ るとい うかたちで しか コ ミュニケー ションの
れれば決定的な危機 を迎え ることもあ りうる。 D男の
とれなか った B子 は、 いっ も結果 と して親 に連絡 を入
例 はその不幸 な例の一つであるo
。
そ して問題 の把握が遅
れ られ るよ うな事態 を招 き、 そ うして親 に知 られては
D男 は申2の 2学期か ら学校 を休みは じめた。1
0
月
また怒 られて しまう。 生活のなかで B子が身 につ けた
か らは完全 に不登校状態 にな り、担任 は足 しげ く家庭
コ ミュニケー ションスタイルが、結局 はさ らなる悪循
訪問を行 ったのだが、 D男 とは会えず、父親 の内縁 の
環 を生んで しま うのである。
妻 との電話連絡 だけにな って しまった。 3年生 にな っ
てか らも家庭訪問 は断 られ、つ いに中 3の1
1
月、 D男
小 さな手 に家事をまかされて
は極度 の栄養失調の状態で昏睡状態 に陥 り、救急車で
不登校 の うえ深夜排桐で補導 された C子 の場合 は父
病院 に搬送 された。 それまでの問、担任 をは じめ多 く
子家庭で、小学校 1年 の弟 と保育所 に通 う妹がいた。
の大人 たちが D男の心配 を していたに もかかわ らず、
この弟妹 の面倒 をみ るのが C子 の役割だ った。父親 は
D男 には誰 も会えなか った。
岸和田児童虐待事件」
この D男 は、 じっはいわゆる 「
仕事で朝 は早 くに出か け、夜遅 くに帰宅す る。 そのた
め C子 は妹を保育所 にお迎えに行 き、家の掃除や洗濯、
の
それに食事の用意 もしなければな らなか った。小学校
待 によ って男児が衰弱 し、病院 に搬送 された と して、
5年生 までは、父方 の祖母が過 に 2- 3回家事 を手伝
一時マスコ ミで大 きく取 り上 げ られたあの事件である。
いに来て くれていたのだが、 5年生 の秋 に祖母が亡 く
学校で 「問題行動」を起 こす子 どもたちの背景 を見
な ってか らは、誰 も手伝 っては くれず、すべてを一人
てい くと、 このよ うに虐待環境 に置かれている事実が
でや らなければな らなか った。
見えて くることが少 な くない。 もちろんすべてのケー
被害者 である。 大阪府南部 の岸和 田市で保護者 の虐
祖母 のや り方 を見 よ う見 まねでなん とか こな してい
スがそ うい うわ けで はないが、非行行為 のために児童
た C子だが、家事 の負担 は相当な ものだ った。 もちろ
0
%が、
自立支援施設 に入所 した子 どもたちの うち約6
ん完壁 にで きるわけはな く、父親 は帰 って きて家 の中
かって は被虐待児童で あ った とのデー タもあ る(
往1
)
。
が片付 いていないことにイライラし、 C子 にあた った。
そ うしてみ ると学校のなかで 「問題行動」 を示す子 ど
中学生 にな った C子 はバ スケ ッ トボール部 に入 り、
もたちに対 しては、 その背景 に 「
児童虐待」があるか
帰宅時問が小学校 の頃よ りもず っと遅 くな り、勉強 も
もしれないという視点でかかわ ることが必要であろう。
ハ ー ドにな った。 に もかかわ らず家事 の負担 はかわ ら
ない。 その頃か ら、 クラブの先輩 や卒業生 たちが学校
2 岸和 日児童虐待事件か ら考える
の帰 りに C子 の家 にあが りこむよ うにな った。 いわゆ
で は、 これまであげたよ うな子 どもたちの 「問題行
る非行 グループである。 とは言 って も、 C子 にとって
動 」 が児童虐待 のサイ ンと してあ らわれた時 に、学校
は大切 な仲間、 これまで家事 に追われていた C子 に友
はどのよ うに動 くことがで きるのだろうか。 あ らため
達がで きたのである。 夏休みに入 ると C子 は誘われ る
て岸和 田事件 を紹介 し、 これを整理 しなが ら考えてみ
4
8
特集 :子 ども学 と虐待問題-第 4報告
よ う。
けている。ただ、それか らD男が 3年生 にあが るまで、
特 に新 しい動 きはなか った。
報道 された事件
2
0
0
3
年1
1
月 2日、岸和 田市で中学 3年生男児 (
D男)
D男が中学 3年生 にな った 4月、前年度か ら担任 に
よる家庭訪問は継続 されたが、 D男 とは会えない状況
が保護者か ら虐待 を受 け、衰弱 した状態で病院に搬送
が続 いた。別の児童や弟の状況 について児童相談所 と
され、 その 日の うちに警察か ら岸和 田子 ども家庭 セ ン
学校が協議 の場 を もったさい、児童相談所が D男 とそ
ター (
児童相談所) に虐待通告があ った。 D男 は命 の
0月
の家庭状況 につ いて学校 に聞 いた ところ、 「昨年 1
危機 は脱 していた ものの、意識不明の状態が続 いた。
よ り不登校 の状態」、 「
休 み始 め る前 は痩せていた」、
2
0
0
4
年 1月2
5日、警察 は父親 とその内縁 の妻 を殺人未
「
虐待 の
6日に起訴 した。 D男が搬送 され
遂容疑で逮捕、 2月1
男 ともの会えない」 と報告 を うけた。
0
歳、父親の内縁の妻3
8
歳、
た当時の家族構成 は、実父4
疑
い
が ある」、 「家庭訪問 して も、保護者 や D
その後、児童相談所が弟の件で内縁の妻 と話をす る。
内縁の妻 の実子 1
5
歳、そ して D男 1
5
歳の 4人であ った。
その中で D男 につ いて尋 ねた ところ 「
(
D男 は) 不
D男の実父 と実母 は 8年前 に離婚 している。 また、 D
校だが、時々出歩 いている」 と話 を聞いた。児童相談
男 には中学 2年生 の弟がお り、 その弟 は2
0
0
3
年 の 6月
所 はこの言葉をそのまま うけとり、虐待 を受 けている
頃までは一緒 に暮 らしていたが、 その後実母 の元 に身
との認識 には至 らなか った とい う。 5月、補導連絡会
を寄せていた。
が開催 されたさいに、児童相談所が内縁 の妻か ら聞い
登
新聞報道 によると、 D男 は水 も満足 に飲 ませて もら
た D男の状況を生徒指導担当に伝えたのが、児童相談
えず、食べ物 も 3日∼ 7日に一度、 ス-パ ーの惣菜 な
所 と学校 の問でかわ された D男 に関す る最後 の情報交
どを与 え られ るだけであ った。保護 され る直前 の 3ヶ
換であ った。 6月 には、弟が実父の家 を出て、実母 の
月間についてはほとん ど何 も与 え られていなか った。
もとへ身を寄せている。
D男 は食べ物 を与え られな くな って しば らくす ると、
2学期 に入 って も担任 は家庭訪問や電話連絡 を試み
ほぼ寝 たきりの状態 にな った らしい 。 自 ら逃 げる気力
たが、すべて断 られ続 けていた。 そ して1
1
月、父親 は
す ら失 っていた と考え られ る。 このよ うな深刻 なネグ
衰弱 して動かな くな った D男 を見て、死んだ と思 って
0
0
3
年1
1
月 に保護 され るまで
レク トの状態 は、 D男が2
救急車 を呼 び、 D男を病院 に搬送。救急隊員が警察 に
約 1年半 にわた って続 いた とい う。
連絡 を し、警察か ら児童相談所 に虐待通告があ り事件
が発覚 したのである。
学校か ら見た D男の状況
事件発覚後、大阪府 は 「
大阪府児童虐待問題緊急対
D男 は中学 1年生 の問 は特 に欠席 もな く、生徒会役
以下、大阪府 チーム) を設置 して、
策検討 チーム」(
員などを務 める活発 な生徒であ った とい う。 中学入学
この事件 の検証 を行 っている。 児童相談所 の対応 につ
後、父方祖父母宅 よ り父親 と内縁 の妻 の もとに引 き取
いて指摘 された問題点 はその報告 レポー トを参照 され
られている。
たいは2
)
。 ここで は主 に学校 内部 か らこの事件 をふ り
中学 2年生 にな って 1学期の間 は欠席 もな く学校 に
通 っていた。 それが、夏休みがあけて 9月 に登校 した
かえ り、児童虐待 の早期発見 と早期対応 に必要 な視点
を探 りたいと思 う。
ときには痩せて きてお り、1
0月 に入 って、 D男 はまっ
た く登校 しな くなる。担任 は、家庭訪問を繰 り返 した
虐待通告の時期
が、内縁 の妻が玄関で応対す るのみで D男 とは会えな
児童相談所 と学校が D男の件で連絡 を とったのは、
か ったとい う。 1
1
月、実父 よ り児童相談所 に弟 につい
D男が中学 2年 の1
1
月が最初である ただ、 この とき
ての相談があ った。 この時点では弟 も同居 していたの
は弟の非行 についての話が メイ ンであ ったため、 D男
である。 この時には じめて児童相談所に D男の家庭が
については協議の姐上に上が っていない。いま振 り返 っ
ケースと して入 った ことになる。 児童相談所 はこの弟
てみれば、 この時点で児童相談所が もっと踏み込んで
の件で中学校 に連絡 を とり、家庭 の状況 を確認 し、 そ
D男 に も焦点 をあてて調査 を行 うことは可能だ った。
の話 のなかで D男 については 「
不登校」 との報告 を受
しか し学校 の側の問題 と して、 それ以前 の段階で児
。
奈良女子大学文学部研究教育年報
4
9
創刊号 (
第 1号)
童相談所 に相談 を もちか けることはで きなか ったのだ
神科医などで構成 され る危機介入援助 チームと、虐待
ろ うか。 1学期 までは元気 に登校 していたのに、 9月
対応 の専門家 チームを各子 ども家庭 セ ンターに設置 し
に入 って欠席が 目立 ちは じめ、 しか も身体が痩せ は じ
て いる(
注3
)
。 このよ うな専 門のチームがあ りなが ら、
めていた というだけで も、何かあ ったのではないか と
なぜ岸和 田事件 はお こって しまったのだろうか。
い う疑問 は生 じる。 児童虐待 の問題 に積極的に取 り組
D男のケースは家庭支援課で対応が行 われていた。
んでいるある中学校では、連続欠席が 3日続 いた ら各
それ も、 もともとは D男の弟 についての相談か らケー
担任 と生徒指導担当が連絡 を とりあい、電話連絡 の方
スがスター トしていた こともあ って、 D男が虐待環境
法や家庭訪問の 日程 などを検討す るとい う体制 を作 っ
にあるとい う情報 を虐待対応課 につな ぐとい うことが
ている。 これほどまでに早 い対応がで きないに して も、
なか った。虐待対応課 にケースがあが っていれば、 そ
「9月 は休 みが ちにな った こと」、「登校 した ときには
の時点での調査 はなされただろ うと言 われている。 こ
「
1
0
月に入 っ
の ことは児童相談所内部 の重大 な問題点 と して指摘 さ
痩せているのが確認 されたこと」
、 さらに
て完全 に登校 しな くな った こと」、「
家庭訪問を して も
D男 には一度 も会えないとい うこと」を理 由に、虐待
れている。
児童相談所の内部 の問題 は もちろん改善 していかな
通告 として児童相談所 に連絡を入れることはで きた し、
ければな らない。 ただ、 それだけで問題が解決す るわ
またその必要があ ったといってよい。
けではけっしてない。 ケース ワーカーの数 は全国的に
次のポイ ン トとなる時期 は、 D男が 3年生 にな った
少ない し、都道府県 によっては、その少ないケースワー
4月である。 少 な くともこの段階では、学校 は児童相
カーです ら福祉 の専門職が配置 されていない自治体 も
談所 に 「
虐待 の疑 いがある」 との情報提供 を行 ってい
多数 ある。 そのよ うな現状 のなかでは、学校が虐待通
る。 ただ、残念 な ことは児童相談所が この情報 を 「
学
告 を行 った と して も 「様子 を見 ま しょう」の一言 で終
校 と しての虐待通告」 と受 け取 らなか った ことだ。 そ
わ って しま う場合が少 な くな い
。
のために児童相談所 は機関 と してのケース受理 を した
では学校 はこのよ うな現状 に甘ん じる以外 にないの
かたちにな っていない。学校が正式 に虐待通告で きな
だろ うか。 それでは子 どもたちの虐待状況が悪化 して
か った理 由は、虐待 の確証がなか ったか らだ とい う。
い くのを座視す ることになる。 そ うな らないために必
新虐待防止法 で は、「児童虐待 を受 けた と思 われ る
要 な ことは、虐待通告 と同時に、 そののち学校が しな
児童 を発見 した」 ときは児童虐待 の通告 を行わなけれ
ければな らないことをはっきりさせ、 その対応 に向け
ばな らないと規定 している。 しか しD男の場合のよ う
て役割分担す ることである。 か りにケースワーカーが
に、 それが虐待通告 なのか、何か心配 な子 どもにつ い
「
様子 を見 ま しょう」 とい った とすれば、誰 が何 をす
ての情報提供 なのか、区別が はっきりしないケースが
ることが 「
様子 を見 ること」 になるのかを具体的につ
起 こりうる。 この点 について大阪府では、通告機関 と
めなければな らない。 そ うしなければ虐待通告が虐待
児童相談所 のズ レを防止す るために、児童虐待通告書
対応 に向けての次のステ ップにつなが ることはない。
の フォーマ ッ トを作成 し、単 なる情報提供 との区別 を
この役割分担 については児童相談所だけでな く、家庭
0
0
4
年 (
平成 1
6
年)
明確 に した。 このフォーマ ッ トは、2
児童相談室や保健所、民生委員 などケースに応 じた関
6月に 「児童虐待における学校園 と子 ども家庭セ ンター
係機関を含めて考え る必要があるだろ う。
一通告等 に関す る基本的ルール 」 と
学校 は虐待通告 を行 ったところでその役割が終わ る
して各学校園 に通知 された。 これは大阪府健康福祉部
のではない。今回の法改正 の趣 旨に沿えば、学校 は虐
と大阪府教育委員会が共同で作成 した ものである。
待通告 を行 った時点か ら、多機関で構成 され るチーム
の連携 について
の一機関 と して問題の対応 にかかわ ることが求め られ
虐待通告後の学校 は ?
ているのである。
大阪府 の子 ども家庭 セ ンター (
児童相談所)で は、
虐待対応 についての相談 の受理や調査、一時保護、施
3 スクールソーシャルワークの可能性
設入所 などにかかわ る業務 を虐待対応課が行 うとい う
虐待問題への対応 に向 けて、多機関によるチーム対
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年度か らは弁護士や精
体制 を とっている。 また、2
応 を実現す るためには、各機関内でのチーム体制がで
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0
特集 :子 ども学 と虐待問題一第 4報告
きあが っていなければな らない。 その意味でいえば児
童相談所 の組織 は、 もともとケースワーカー、心理判
現実的なかたちで調整 しよ うとい う視点である。
先 に紹介 した大阪府の 「
通告 に関す る基本的ルール」
定員、一時保護所職員 などによる役割分担 によって運
も、実 は、学校 にソー シャル ワーク的な視点 を持 ち込
営 されているのだが、学校にはこれまでそのようなチー
む ものだ った とい ってよい。 その意味で個人記録票 の
ム体制が ほとん どなか った。で は具体的にどのよ うな
作成 も、単 なる連絡記録で はな く、生活支援 の視点 を
取 り組みが学校 に求め られることになるのであろうか。
含んだケース記録でなければな らない。
ここで問題 になるのは、学校 の中で このよ うなチー
チームで動 くということ
ム体制 を作 るために、誰がその コーデ ィネー トを行 う
」によ る
大阪府 の 「
通告 に関す る基本 的ルール(
注4
)
のか とい う点である。 校務分掌か ら考え ると生徒指導
と、 これまでの虐待対応 の反省か ら、学校側の体制 と
担当や教育相談担当、養護教諭 などが現実的なのか も
しては次の 3点が重要だ と言われている。第 1に、虐
しれない。 しか しソ- シャル ワークの視点か らチーム
待か もしれない児童 を発見 した教職員 は、 その情報 を
編成 を行 い、情報 を集約 し、役割分担 を行 うとい う作
一人で抱え込 まないよ うにす る。 これはチームで動 く
業 を、教師の仕事 と して位置づ けて しまったのでは、
ための大前提である。第 2に、 そのために個人指導記
教師の仕事 の うえにコーデ ィネーターとしての仕事が
録票 (
個人 カルテ)等 を作成 し、継続的な取 り組みを
過重 されて、負担が重 くな って しまうし、深刻 なケ-
行 う。 そ して第 3に、校内チームによるケース会議 を
スになれば片手間で対応す ることはで きない。そこで、
行 う。 また必要 に応 じて関係機関 とのケース会議 を開
す ぐにとはいかないまで も将来的には、学校現場 にソー
催す ることが大切である。
シャルワークの手法を持ち込むだけでな く、実際にソー
チームアプ ローチの目的 は、 チームメ ンバーが同 じ
シャル ワークを行 い、学校か ら児童相談所へ ケースを
方向性 を もってケースにかかわ ることにある。 その中
「っ な ぐ」 スクール ソー シャル ワーカーを確保す るこ
身 は、①取 り組むべ き問題の情報を共有す る。そ して、
とが望 まれ る。
共有 した情報 に基づ いて、(
多子 どもの生活状況全般 の
現状把握 を行 い、③誰が どのよ うな対応 をす るのか、
スクールソー シャルワークを取 り巻 く現状
異体的な役割分担 を決め る。 た とえば家庭訪問には担
現在、学校現場 にはスクールカウ ンセ ラー配置が進
任 と養護教諭が一緒 に行 き、訪問先では担任が子 ども
んでいるが、子 どもたちが抱え る問題 は、 カウンセ リ
と話 を し、養護教諭が保護者 と話 をす るとい うよ うな
ング的な手法だけで解決で きない ものが少 な くない。
異体的な ことである。 この(
彰②③ を行 うために校内で
虐待問題 はその典型的な例である。 子 どもを取 り巻 く
ケース会議 を もつ ことが必要 になる。 この会議で決め
環境が問題要因 にな っているケースが、 いまはず いぶ
た役割分担を、④実際に行い、⑤その結果をさらにチー
ん と多 い。 もちろん心理的援助が必要 な子 どもたち も
ムで報告 しあ う。 場合 によっては、 そ こで役割分担 の
存在す るが、 カウンセ リングによる支援 を選択す るか
見直 しや、関係機関への援助要請 (
調整や代弁、外部
どうかの見立て も、 まず はスクール ソー シャル ワーク
機関 とのケース会議 の コーデ ィネー ト)が必要 にな っ
の中で決定 され るとい うのがほん らいのかたちである。
て くる。
スクール ソー シャル ワークは、わが国ではまだ耳新
しく、 スクールカウンセ リングと混同 されがちだが、
ソー シャルワークの視点
この両者 はその視点 も手法 もま った く異 なるものであ
ここにあげた①∼⑤ までの手順 は、①② イ ンテーク、
個 」 を扱 うのに対
る。 カウ ンセ リングは原則 と して 「
アセスメ ン ト-③ プ ランニ ング-④ イ ンターベ ンショ
し、 ソー シャル ワークは 「
人 と環境」 の双方 を扱 うと
ン-⑤モニタリング-エヴァリェエイションというソー
ころに、 まず大 きな違 いがある。人 と環境の双方 を扱
シャルワークの手法に沿 うものである。 ソーシャルワー
うとい うの は、 「
学校 で子 どもが見せ る行動 と、 その
クとい うのは、人が抱 え る問題 を解決す るために、 そ
背景 にある子 どもの環境 とが どのよ うに関係 している
の人 とその人 を取 り巻 く環境 の相互関係 に焦点 をあて
のか」を考 えてい くとい うことである。
個 と環境 との関係 」 を見定 め、 それを
る。 つ ま り、「
学校 のなかに制度 と してスクールカウンセ ラーが導
奈良女子大学文学部研究教育年報
創刊号 (
第 1号)
5
1
入 され、現実的に種々の問題 に対応す るなかで、スクー
の活動範囲 は大阪府 を中心 とし、上記 の職種 に加 えて、
ルカウ ンセ ラーのなか には、 ソー シャル ワーク的な視
福祉事務所 (
家庭児童相談室)や児童養護施設 の職員、
点 。手法 の必要性 を認 めて、実質的 にそ うした活動 を
法務教官、 CAP トレーナー、 フ リースクールス タッ
行 っている人たちもいる。 またスクールソーシャルワー
フな ど様 々な領域 の人 たちが参加 している。
カーと して行政 に雇用 され、学校現場 で活動す る人 も
TPC教 育 サ ポー トセ ンターの主 な事 業 内容 は、
少 しずつ増 えて きた。 さ らにスクール ソー シャル ワー
(
∋学校へのケース会議 コーデ ィネーター派遣、②学校
ク活動 を学校現場 に導入 しよ うとい うNPO団体 や任
教職員 を対象 とす る研修会への講 師派遣、③学校 の要
意団体が活動 をは じめている地域 も出て きて いる。 こ
請 に応 じた専門職 (ソー シャル ワーカー ・臨床心理士 ・
のよ うな流れか らす ると、今後、学校現場 にスクール
弁護士等) の派遣、④特別支援教育への コーデ ィネー
ソー シャル ワークの視点 で関与す る、教師以外 の専 門
ター派遣 であ る。 TPCの活動 はサポー トの主 な対象
職種が広が る可能性 がある。
を 「教 師」 にお いて い る。 その理 由 は、 「その子 ど も
もっともわが国 においてス クール ソー シャル ワーク
たちに身近 にかかわ る 「お とな」 と しての 「
教 師」 の
を誰 が どのよ うに行 うのが よいのか は、今後 の動 向を
サポー トを行 うことが、保護者 や子 ど もたちへの権利
見っっ検討 しなければな らない課題 であろ う。 そのた
擁護 につなが ってい くと考 えて」 いるか らであ る。
めには、 いま少 しずっ取 り組 みが は じま っている各地
TPCの特徴 といえ るの は、学校現場 に派遣 され る
のスクール ソー シャル ワーク活動 をて いね いに検証 し
コーディネーターや 講師の共通認識 としてスクールソー
て い く作業が必要 とな る。
シャル ワークの理念 を根底 において いることであ る。
ここで最後 に、私 自身がかかわ っているNPO団体
の取 り組 みを簡単 に紹介 してお くことにす る。
ケース会議への コーデ ィネー トを行 うときには、 まず
子 ど もの生活環境 をど うみ るのか とい う視点か らアセ
スメ ン ト (
見立 て) を行 い、 その結果 と して心理療法
TPC教育サポー トセ ンター
この NPO団体 は、 あ る弁護士が イギ リスで教育 サ
ポー トシステムを学 び、 日本 に もスクール ロイヤーや
士や法律家のサポー トが必要であれば、そ こへつな ぐ。
また実際 に学校 の外部機 関への連絡 や調整 も行 ってい
る。
ス クール ソー シャル ワーカーの必要性があ ることを痛
感 した ことには じまる。 それ はわが国で学校 にスクー
TPC教育サポー トセ ンターの活動基盤
ルカ ウ ンセ ラーの導入が は じめ られたばか りの ころで
TPCが行 う活動 は、直接 的 にケースを動かす狭義
あ った。 この弁護士 は帰国後、 日本 で必要 とされ る教
の ソー シャル ワークで はないが、次 の 3点 か らみて、
育 サポー トシステムとはどのよ うな ものかを考 え るた
基本的 にスクール ソー シャル ワーク的活動 をなす もの
めに、学校 の教 師やスクールカウ ンセ ラー、児童相談
だ と言 え る。 つ ま り① ソー シャル ワークの間接的機能
所や教育委員会の職員、大学 の研究者 などに声 をか け、
を使 って、② ソー シャル ワークの視点 での アセスメ ン
自主的な勉強会 を行 う場 と して、1
9
9
9
年 に 「TPC教
トを行 い、(
診関係機関-の連絡 。調整 を行 い、必要 で
育 サ ポ ー トシス テ ム研 究 会 」 を発 足 させ た (T は
あれば外部機 関を交 えたケース会議 もコーデ ィネー ト
Te
ac
he
r
s
、 PはPa
r
e
nt
s
、 CはChi
l
dr
e
nの頭文字をとっ
す る。 ただそれ はあ くまで 「ス クール ソー シャル ワー
て いる)。 その後 この研究会で は、「
子 どもの権利擁護
ク的」であ って、厳密 な意味でのスクール ソー シャル
を行 うために学校現場 に必要 なサポー トとは何か」 を
ワークの活動 で はない。 スクール ソー シャル ワークを
テーマに、年間約 1
0
回の勉強会 と、 1年 に 1回程度 の
行 うためには、困難 を抱 え る子 ど も自身 やその保護者
公開 シンポ ジウムを開 いて きた。
に直接的 にアプ ローチで きる位置 に 「
常 に」 いなけれ
研究会 のメ ンバ ーは、 それぞれ に個 々の活動 と して
ばいけない し、 そのための常駐 ス タ ッフを配置 してい
学校現場 にかかわ って きた ものが中心 である。 そ して
なければな らない。残念 なが らNPO団体 には、 いま
2
0
0
4
年1
0
月、 たが いの専門性 を学校 のニーズに応 じて
の ところそ こまでの ことはで きない。
活用す るための組織 と して、 これを NPO法人化 し、
TPC教育 サポー トセ ンター代表 の峯本耕治 は、岸
名称 を 「TPC教育 サポー トセ ンター」 と した。 当面
和 田事件 を受 けて開かれ た 「第 1
5
9回国会 一青少年 問
5
2
特集 :子 ども学 と虐待問題-第 4報告
題 に関す る特別委員会 」に参考人 と して呼 ばれ たなか
のためのケース会議 が適宜 もたれ な けれ ばな らないは
で、 次 の よ うに述 べ て い る
。「学校 サ ポー トシステ ム
ずで あ る。 そのプ ロセスが児童虐待 の早期発見 につ な
とい うのが非常 に重要 だ とい うふ うに考 えて います。
が る こと もあ りうる し、 そ う した ソー シャル ワー クの
その一番 の特効薬 は、 ス クール ソー シャル ワーカーの
視点 が子 ど もたちの生活 をよ り安心 な もの に導 くこと
導入 だ と私 は思 います。 これ は欧米 で は当 た り前 の制
がで きるはずで あ る。
度 にな って います。今、 ス クール カ ウ ンセ ラーが導入
虐待 とい うか たちで焦点化 されて問題 にな るケース
されて配置 されて い って いますが、 同 じよ うな形 で、
を越 えて、 さまざまな困難 を抱 えて いる子 ど もたち-、
モデル事業 的 な ものか ら始 めて いただいて とい うこと
この視点 を さ らに広 げて いか な ければな らない と考 え
0
年
にな るんだ と思 います けれ ど も、 や は り 5年 とか 1
て いる。
ぐらいの計画 の中で、 ス クール ソー シャル ワーカーを
ぜ ひ導入 して いただ きたい と思 います」。
注
1
厚
生労働省雇 用均等 。児童家庭局 『全 国児童福
001年。
祉主 管課長会議資料』2
おわ りに -
子 どもが抱 え る問題 と しての児童虐待
これ まで、児童虐待 問題 に学校 が どのよ うに取 り組
注 2 大 阪府 児童 虐待 問題 緊急対策検討 チ ー ム 『「子
ど もの明 日を守 るために」
∼児童虐待 問題緊
め るのか とい うテーマにつ いて考 えて きた。 この こと
0
0
4
年。
急対策検討 チームか らの緊急提言 ∼ 』2
はす なわ ち、 ソー シャル ワークの視点 と手法 を学校現
注 3 許斐有他著 『子 ど もの権利 と社会的子育 て』信
場 に持 ち込 むための方法 を考 え る ことにつ なが る。 も
4
8-1
5
0
貢 、2
0
02
年。
山社 、1
ちろん、子 ど もたちが学校 で見せ る 「問題行動」 の背
注 4 大 阪府健康福祉部児童家庭室家族支援課 。大 阪
景 にすべて虐待 が あ るわ けで はない。 しか しこの 「問
府教育委員会事務局教育振興室児童生徒課 『児
題行動」 の背景 に 目を向 けるとい う視点 は虐待 にか ぎ
童虐待 にお ける学校 園 と子 ど も家庭 セ ンターの
らず、子 ど もたちが抱 えて い る問題 すべて に共通 す る
00
4
年。
連携 につ いて』2
視点 で はないか。
た とえば 「障害」 の問題 や家庭 の経済的問題 が虐待
参考文献
と結 びっ いて しま うケース もあ る。 また学校側 の体制
椎 名篤子 『凍 りつ いた瞳 』1
9
95
年 、『続凍 りつ いた瞳』
によ って は、外 国籍 の児童 の受 け入 れ、病気 な どで入
1
9
9
6年 、『新 凍 りつ いた 瞳 』2
0
0
3年 、 いず れ も集 英
院 中の児童 への教育保 障、児童 自立支援施設 や少年 院
社。漫画 で児童虐待 の現状 を訴 えて い る。
な どの施設 か らの退院児童 の受 け人 な どが スムーズに
」
」
川 崎二三彦 『子 ど ものための ソー シャル ワー ク』全 4
いかず、 「
不登校 「非行 「い じめ」 な どにつ なが って
巻、 明石書 店、1
9
9
9
年 ∼2
0
01
年。 この本 は児童相談
しま うとい うことも少 な くない。 また これ らの問題 は
所 の ケース ワーカーがかかわ った様 々な相談事例 を
普通学校 だ けでな く、盲学校、聾学校、養護学校 に も
虐待」、第 2巻 「
非行」、第
紹介 して い る。 第 1巻 「
同 じよ うに起 きて い る。 ス クールカ ウ ンセ ラーの配置
3巻 「家族危機」、第 4巻 「障害」 が テーマ。
が これ らの障害児学校 に導入 され なか った ことの背後
には、 その制度導入 の過程 で、子 ど もたちの生活 と環
境 を見っ め るソー シャル ワー ク的視点 が欠如 して いた
ことを表 す ものだ とい って よいか も しれ ない。
盲学校、聾学校、養護学校 こそは、 まさに福祉 的問
題 に直面 す る ことが もっと も多 い学校 で あ る。 この問
題 に も的確 にアプ ローチす るためには 「
個 と環境 との
関係 を ど うみ るか」 とい うソー シャル ワー クの視点 が
必須 で あ ろ う。 ここで困難 な状況 にぶつか って い る子
ど もたちに対 して は、狭 い意 味での教育 を越 えて、生
活支援 の 目を もってかかわ る ことが必要 にな る し、 そ
山下英三郎 『ス クール ソー シャル ワーク
ー学校 にお
0
03
年。
ける新 たな子 ど も支援 システムー』学苑社 、2
金滞 ますみ 「ス クール カ ウ ンセ リングとス クール ソー
3号、 花園大
シャル ワー ク」 『福 祉 と人 間科学 』 第 1
0
0
2
年。
学社会福祉学会 、2
岩 田美香 「釜困家族 とス クール 。ソー シャル ワーク」
0
0
3
年。
『現代 日本 の 「
見 えない」貧 困』 明石書店 、2
Fly UP