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『エネルギー自治』の確立に向けた制度設計、合意
第3回アドバイザリーボード会合 2015年11月26日 資料2 「エネルギー自治」の確立に向けた 制度設計、合意形成手法の検証 名古屋大学大学院環境学研究科 竹内 恒夫 谷川 寛樹 杉山 範子 松野 正太郎 奥岡 桂次郎 1 エネルギー分野のリスク・取組み IPCC第5次評価報告書(第2作業部会) (気候変動に伴う8つのリスクの3つ目) 極端な気象事象によるシステミック・リスク(電気、電気を使う水供給・医療・緊 急サービスなどのインフラネットワークと重要なサービスの機能停止のリスク) ドイツの適応策(ドイツ連邦環境庁 KomPass)エネルギー分野でのリスク・課題 ①汽力発電所に冷却水を供給する河川の水量の低下・水温の上昇 ②洪水に伴う発電所の冠水 ③舟運による燃料輸送への影響 ④太陽光発電等への影響 ⑤送配電網などのネットワークの安全性への影響 ⑥エネルギー需要への影響(夏季の冷房需要の増加) 「国土強靭化基本計画」(2014年6月閣議決定)におけるエネルギー分野の取組み ①個々の設備等の災害対応力の強化 ②地域内のエネルギー自給力の強化 ③地域間相互融通能力の強化 ④エネルギーサプライチェーン全体の強靭化 2 ネットワーク/ サプライチェーン へのリスク システミック・リスク (域外の)発電所等 へのリスク ネットワーク/ サプライチェーン の強靭化 (予防) (域外の)発電所等の 早期復旧 (順応) 地域内のエネルギー 自給力の強化 (転換) 3 施策分類 施策の内容 ①配電多重化などによって停電90%復旧日数を1日短縮(5日→4日) 予防 順応 ②PE管導入などによって都市ガス停止復旧日数を5日短縮(25日→20日) ③ 火 力 発 電 所 復 旧 日 数 を 127 日 →90 日 ( 計 画 停 電 時 間 を 10h(2.5 回 ×4h)→7h) ④家庭・業務総電力消費量の4割を分散型電源(コジェネ・自家発・太陽光 等)からの小売りで賄うことによって送電線破損に伴う停電復旧日数を2 日短縮(5日→3日) 転換 ⑤家庭・業務総電力消費量の4割を分散型電源からの小売りで賄うことに よって計画停電時間を10h(2.5回×4h)→5h ⑥家庭・業務総給湯用エネルギー量に相当する熱量を、水道管を経て工 場・ごみ焼却場・コジェネの排熱から賄う(断水復旧期間(14日間)を除く) 4 (参考)エネルギーレジリエンス施策の評価に用いた東日本大震災時の復旧日数など 項目 火力発電所復旧日数(復旧月数の合計を発電所数で除した日数) ※1 東日本大震災:停電90%復旧日数(東北電力管内) 東日本大震災:断水復旧日数(仙台市水道局) 東日本大震災:都市ガス停止復旧日数 (仙台市ガス局)(パイプライン・主要導管網の被害は軽微) 東日本大震災:1家庭当たり計画停電回数(東京電力) データ 127日 5日 16日 25日 2.5日 東日本大震災:計画停電1回当たり時間(東京電力) 4時間 計画停電対応コスト(大口)※2 1,919円/kWh 計画停電対応コスト(中小事業者)※2 7,497円/kWh 計画停電対応コスト(個人)※2 1,431円/kWh 東北電力22-24年度 災害復旧設備投資額 2,120億円 ※1:平成25年2月土木学会エネルギー委員会 ※2:「停電コストに関する調査報告書」(平成26年1月電力系統利用協議会) 5 レジリエンス価値 (回避される停電コスト等(億円)) 二酸化炭素削減量(万トン) レジリエンス設備投資額(億円) 6 現行体制維持 ×△地域 CO2削減量: 248万トン △○電力 産業 △○電力管内全体の再エネを 買い上げるとCO2排出係数は 0.093 kg/kWh下がる 家 庭 業務 電力量 268億kWh(家庭26億kWh) 電力料金 3,693億円(家庭662億円) 固定価格 買取制度 (FIT) 再エネ電力20億kWh 域内(①)への還流額 179億円 域内還流額 = 179億円 太陽光設置家庭+域 内再エネ投資家へ ①太陽光設置家庭+域内再エネ 投資家 ②×△地域に投資する域外の再 エネ投資家(再エネ投資家の1/2) 地域の電力小売事業の参入 CO2削減量:384万トン △○電力 小売電力量 234億kWh ×△地域以外 の△○電力管 内の再エネ買 上 小売電力料金 2803億円 託送料272億円 地域電力 小売事業者 小売電力量 34億kWh 小売電力料金 760億円 再エネ電力20億kWh 再エネ・コジェネ調達費 608億円 コジェネ電力14億kWh 小売収入 760億円 域外再エネ投資家②へ 179億円 ×△地域 域内残留額 760(地域電力小売料金) -272(△○電力への託送料) -179(域外投資家へ) =309億円 +130(△○電力より安い小売料金) =439億円 ①太陽光設置家庭+域内再エネ 投資家+コジェネ事業者 ②×△地域に投資する域外の再 7 エネ投資家(再エネ投資家の1/2) 資源循環レジリエンス:施策の分類 予防 (強靭化) 排出者対応 生ごみの分別 収集・運搬 中間処理 最終処分 順応 (回復を早める) 転換 (システム転換) 可燃・不燃の分別排出 災害時のステーション 位置の想定 災害時の収集ルート の想定 一廃・産廃の合わせ処 理 収集車の広域融通 収集車の業種間融通 収集車車庫の高台移 転 施設(リサイクル・破 砕・焼却)の耐震化 施設の防水化 一廃・産廃の合わせ処 理 合併浄化槽の復旧 移動式破砕機の調達 廃棄物仮置場の確保 仮設処理施設の設置 施設の高台移転 広域処理の推進 メタン発酵処理施設 設置(生ごみ・し尿) 防災拠点の非常用電 源設置 有害物質を使わない 一廃・産廃の合わせ処 理 ガレキ選別の厳格化 ガレキのかさ上げ利用 広域処理の推進 有害物質を使わない 大規模災害時における市民のごみ処理の対応 単位:% 0.6 16.0 自分でゴミの焼却場など に持って行く 10.9 26.2 家に分別保管し、生ごみ は埋めたり、堆肥にする 2015年3月調査 ゴミができるだけ出ないよ う気をつける 46.3 その他 特に何もしない 単位:% 24.6 0.6 自分でゴミの焼却場などに持っ て行く 16.6 20.8 家に分別保管し、生ごみは埋め たり、堆肥にする ゴミができるだけ出ないよう気を つける 2015年8月調査 37.5 その他 特に何もしない 自治体における災害時の廃棄物処理の状況① ●全国の市町村1,741自治体のうち、289自治体を対象 ①収集機能の確保 収集場所 確保 非該当 該当 無回答 ルート 確保 合わせ 処理 広域 融通 他業種 間融通 車庫の 高台確保 85.1% 96.9% 95.2% 81.7% 86.9% 14.2% 2.4% 4.2% 17.6% 12.5% 0.7% 0.7% 0.7% 0.7% 0.7% 対策なし 95.8% 55.4% 3.5% 43.9% 0.7% 0.7% ②中間処理機能の確保 耐震化 耐水化 仮置場 確保 仮設処 理施設 高台移 転 広域処 理 メタン 発酵 リース・ レンタル 対策な し 非該当 86.2% 97.2% 59.5% 96.5% 98.3% 72.0% 98.3% 98.6% 65.7% 該当 12.8% 1.7% 39.4% 2.4% 0.7% 27.0% 0.7% 0.3% 33.2% 無回答 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 自治体における災害時の廃棄物処理の状況② ③最終処分機能の確保 耐震化 非該当 該当 無回答 93.1% 3.5% 3.5% 耐水化 95.5% 1.0% 3.5% 高台移転 95.2% 1.4% 3.5% 広域処理 78.5% 18.0% 3.5% 機能分散化 対策なし 88.9% 7.6% 3.5% ④大規模自然災害時に予想される廃棄物処理途絶日数の平均 収集・運搬の途絶日数 6.67日 焼却処理施設の途絶日数 6.71日 39.8% 56.7% 3.5% 廃棄物処理機能喪失時における処理経費支払意志額 平均金額 粗大ごみ等 (生ごみ以外) 生ごみ 災害経験有 災害経験無 41,388円 51,947円 40,056円 4,093円 4,670円 4,021円 1世帯当たりの支払意志額は、生ごみと生ごみ以外の粗大 ごみでは、粗大ごみの方が、約10倍の金額となっている。 災害経験がある人とない人では、生ごみ、粗大ごみのそれ ぞれにおいて支払意志額にかなりの開きがある。 廃棄物処理の途絶による経済的・社会的損失 ●名古屋市における廃棄物処理経費(2013年度) 396億円、うち、焼却処理経費:142億円 廃棄物処理の途絶によるサービスの損失:6.76億円 収集運搬等(焼却処理以外):(369-142)/365=0.62億円/日・・・① ①×6.67日(収集途絶日数)=4.14億円 焼却処理:142/365=0.39億円/日 ・・・② ②×6.71日(焼却処理施設停止日数)=2.62億円 廃棄物処理機能が失われてしまった場合の損失: 111億円 粗大ごみ等生ごみ以外の廃棄物:41,388円×1,056,917世帯=437億円・・・① 生ごみ:4,093×1,056,917世帯=43億円 ・・・② ①+②=480億円 ・・・③ ③-369億円=111億円 健康レジリエンスの検討(熱中症対策実施状況) 全国1782地方自治体を対象にアンケート調査を実施(調査票郵送法、2015年8月~9月)。 477自治体より回答を得た(26.8%)。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% リーフレットなどによる普及啓発 放送等での注意喚起 高齢者を対象とした訪問、声かけ 学校現場における注意喚起 公共施設の空調設備の設置 研修会・講習会の実施 暑さ指数(WBGT)など気象情報の提供 発生状況(被害状況)の提供 避難場所の確保 緑地を増やす取組み 給水場所の設置 ドライミスト装置の設置 事業者への指導 ヒートアイランド対策 風の道をつくる取組み 専門機関との共同による調査研究 その他 60.4% 40.3% 35.6% 実施していない 27.9% 熱中症対策を実施している 20.3% 378 99 17.8% (79%) (21%) 11.9% 9.6% 熱中症搬送者数(2000年以降) 無回答 7.3% わからない 増えている 増えていない 6.9% 142 41 285 9 5.5% (30%) (9%) (60%) 4.6% 4.0% 熱中症による死者(これまで) 2.9% 出た 出ていない 無回答 0.8% 97 296 84 (20%) (18%) (62%) 0.4% 15.5% 図 自治体で実施している熱中症対策 (N=477, 複数回答) 熱中症対策を実施している自治体は約80%であった。具体的に実施している対策は、普及啓発、注意喚起などによる予 防策が中心(ソフト対策)。公共施設の空調設備の設置は約20%実施されているが、避難場所や給水場所等は10%以 下である。ヒートアイランドの対策などハード対策は実施割合が低い。 地域エネルギー政策形成能力開発 2030年 欧州の「市長誓約」が モデル。ECが2008年 に立上げ、すでに 6,500を超える自治体 が誓約、4,900の計画 が策定されている。 現在 様々な 課題を 抱えた 地域 日本版 「首長誓約」 を誓約する アクション プランを 策定する (誓約後、 概ね1年以内) モニタリン グを実施 し、 報告 する 気候変動政策と エネルギー自治 を通じ地域創生 に貢献する。 (アクション プラン策定後、 2年ごと) 地域のエネルギーレジリエンス などの向上を目指す 日本版「首長誓約」 1.次の項目に一体として取り組むこと。 ①エネルギー地産地消 ②温室効果ガスの大幅削減 ③気候変動などへの適応 2.①~③に関する目標(2030年)、具体的な達成方策などに関する持続 可能なエネルギーアクションプランを策定すること。 3.自治体のネットワークを通じ連携して取り組むこと。 地域エネルギー政策形成能力開発 愛知県西三河地域の自治体担当者と勉強会実施 岡崎市、碧南市、 刈谷市、豊田市、 安城市、西尾市、 知立市、高浜市、 みよし市、幸田町 日本版「首長誓約」に関心を持った自治体が呼びかけて、西 三河地域の10自治体の担当者と毎月勉強会を開催した (2015年3月~11月まで11回開催)。「首長誓約」の進め方に ついて、西三河地域としての参加を検討した。 【例】・西三河地域で再生可能エネルギー等を「地産地 消」した場合の、資金還流の試算。 ・広域連携でレジリエンスを高めるためのアク ションプランのあり方。 豊田市をはじめとする6市が年内に「首長誓約」を予定。年度 内に、協議会を設立し、6市でのアクションプラン策定に向け、 準備を進める見込み(2015年11月現在)。 写真:西三河地域勉強会の様子(各 16 自治体持ち回りで実施) 地域エネルギー政策形成能力開発 「首長誓約」の世界展開 54ヶ国から約6500自治体が参加する欧州 の市長誓約の成功事例を踏まえ、欧州委員会は 世界的にこの取組を「Global Covenant of Mayors」として展開する計画。 欧州の既存機関や周辺地域のほかに世界の地域(北米、中南米、日本、中国、インド、アフ リカなど)のパートナー機関と連携する。 COP21期間中にパリ(フランス)で、サイドイベントを開 催予定。 ※「Global Covenant of Mayors」が実施される場合、日本版「首長誓約」はこれに参加する予定。 Global CoMの誓約内容 1.気候変動の緩和策 (温室効果ガスの大幅削減) 2.気候変動の適応策 3.持続可能なエネルギーの 入手 2008: Covenant of Mayors 2014: Mayors Adopt 2015: Launch of a new Covenant on Mitigation & Adaptation 図 欧州の新「市長誓約」の枠組みの背景 国の気候変動緩和策と適応策の約束 (気候変動枠組条約事務局に提出し た内容)に見合ったものが誓約される こと。 どの目標も定量化して示すこと。 長期的に、全ての目標を達成すること を誓約すること。 17