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高脂血症 - 小林クリニック

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高脂血症 - 小林クリニック
小林クリニック
外来看護部
高脂血症
高脂血症とは、血液中の脂質が多すぎる状態です。特に、コレ
ステロールや中性脂肪が増えすぎた場合を言います。血液の中に
は主にコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸が含ま
れています。普通、これらの血中脂質は、体に必要な量が一定に
保たれています。ところが、何らかの原因でこの4つの脂質の内、
特にコレステロールと中性脂肪が、必要量よりも異常に増えた状
態が高脂血症です。高脂血症を放っておくと動脈硬化を起こす引
き金になったり、心臓病や脳梗塞などの命に関わる病気を招いて
しまうのです。
コレステロールとは
人間や動物の体の中にだけある脂質で植物には存在しません。
このコレステロールは、血液中だけではなく体内にも広く分布
しています。普通、成人の体内には100~150g位のコレステ
ロールがあり、このうち血液中に10g位含まれていて、その約
1/2が血球に、残り1/2が血清に入っています。健康な人であれ
ば、全体量がちょうど良い量になるように調節する仕組みが働
いています。食事から多くのコレステロールを摂ると、体内で
の合成は減り、逆にコレステロールが足らないと、肝臓その他
の細胞か、他の物質から作り出してバランスをとる仕組みにな
っています。
コレステロールの働き
コレステロールは高脂血症の原因にもなりますが、生命を維持
するのに欠かせない重要な物質です。
①細胞膜の構成成分になる
私たちの体は無数の細胞から成り立っています。細胞膜は、
コレステロールとリン脂質からできています。コレステロー
ルが足りなくなると、細胞膜が弱くなりウイルスや化学物質
などの外敵が侵入してきた時に、これらをくい止めにくくな
る事も考えられます。
②ホルモンの材料になる
副腎皮質ホルモンや性ホルモンを作るのに、コレステロー
ルを唯一の原料としています。副腎皮質ホルモンは、タンパ
ク質や糖質の代謝や炎症をコントロールしたり、ナトリウム
を体内に保ったりします。性ホルモンは男性ホルモンや女性
ホルモンで、作られなくなると男らしさや女らしさが無くな
り生殖能力も失われてしまいます。
③胆汁酸の材料になる
消化液の一つである胆汁の主成分で、コレステロールを材
料にして肝臓で合成されます。胆汁酸が不足すると食べた物
の脂肪は十分に消化されないため、下痢を起こしてしまいま
す。また、脂肪に溶けるタイプのビタミン(A、D、E、K)
の吸収が悪くなります。
善玉コレステロールと悪玉コレステロール
健康な人であれば、細胞に必要な分だけコレステロールが運
ばれ、余ったコレステロールはスムーズに回収されて、細胞に
は一定以上のコレステロールはたまらないようになっています。
ところが、LDLが増えたりHDLが減ったりすると細胞に余分な
コレステロールがたまり、この状態が血管に生じると動脈硬化
を誘発します。こうした体内での役割の違いや影響の与え方か
ら、LDLは悪玉コレステロール、HDLは善玉コレステロールと
呼ばれています。高コレステロール血症と言っても、コレステ
ロールの総量だけが問題なのではなく、むしろその内訳が問題
です。悪玉のLDLコレステロールが多すぎるせいで総量が多い
場合は治療が必要ですが、善玉のHDLコレステロールが多いの
は治療は必要とせず、むしろ望ましいとされています。
高コレステロールになる原因
・コレステロールを多く含んだ食品を食べ過ぎる事。
・飽和脂肪酸を摂り過ぎてもコレステロールを増やします。
(肉の脂身やバターなど)
・家族性高コレステロール血症は、体質的に処理機能に異常が
あるために起こります。
・甲状腺機能低下症を起こすと、コレステロール値が高くなり
ます。甲状腺ホルモンは栄養素を円滑にエネルギーに変える
作用をつかさどっています。ホルモンの分泌が減ると肝臓や
組織のLDLの受容体が少なくなり、コレステロールが組織に
取り込まれなくなり、血中にコレステロールが滞ってしまう
からです。中年以降の女性に多い病気です。
高中性脂肪症
中性脂肪上昇と、高脂血症になると急性膵炎や脂肪肝になり
易くなります。
合併症
高コレステロール血症があると、動脈硬化を著しく促進します。
動脈硬化を原因とする心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしやすくしま
す。活性酸素による酸化も動脈硬化を引き起こします。活性酸素
とは、酸素の中でも酸化させる力の強い物を指します。周りにあ
る物質を次々にサビつかせて変質させてしまうのです。活性酸素
は脂質と結び付きやすく、過酸化脂質という有害な物質になり、
細胞膜は破れやすくなって、細胞の機能を衰えさせます。血管壁
を構成する細胞にも生じて傷つけます。LDLが血管壁の傷口から
しみ込み、活性酸素によって酸化LDLになり内壁に沈着し、動脈
硬化を引き起こします。
活性酸素が多くなる原因
・たばこ ・水道水 ・紫外線 ・古い油 ・X線 ・ストレス
・過度のスポーツ ・食べ物のこげ ・排気ガス等
こうした環境や生活習慣を出来るだけ避けるようにする事です。
予防
・1日3食をバランスよく、いつもだいたい決まった時間に、
毎日規則正しく食べる。
食事を抜くとインスリンの分泌が通常より多くなり、コ
レステロールや中性脂肪の合成を促進します。
・夕食をたっぷり摂ったり、就寝前の夜食は避けます。
副交感神経の働きで、摂った食べ物はどんどん消化吸収
されるにも関わらず体は休息しているため、エネルギーは
使われず、脂肪に変えられて体に蓄えられたり、コレステ
ロールの合成にも使われたりします。
・運動療法は高脂血症を改善してくれます。
運動で血液の流れが良くなると、中性脂肪を減らしてく
れ、中性脂肪が下がると善玉コレステロールが上がり、し
だいに悪玉コレステロールが減ります。長続きできるのは
歩行運動です。最低20分続けて歩くと効果が現れると言わ
れています。
・出来るだけストレスをためないようにしましょう。
強い精神的ストレスは血圧や血糖を上げ、脂質値も上げ
ます。ストレス反応は自律神経のバランスの崩れで起きて
きます。それを避けるには、早いうちに気分転換と心身を
リラックスさせる事です。
・体脂肪が減ると脂肪値が改善されます。
肥満が解消して体脂肪が減ると、遊離脂肪酸の放出が減
るため、総コレステロール値と中性脂肪のいずれも低くな
ります。特に中性脂肪値はかなり低下し、それに伴って、
善玉コレステロールが増加します。
・食事療法や運動療法、生活の改善を十分続けても改善しな
い場合は、医師の判断で薬物療法を始めます。医師は高脂
血症以外にどれだけ動脈硬化の危険因子を持っているかも
検討して治療を行います。自分で勝手に服薬をやめると、
薬でコントロールされていた脂質値が跳ね上がる事もあり
ます。
食事療法
栄養のバランスの良い食事を摂る事が大前提です。
コレステロール値だけが高い場合
①食事で摂るエネルギーを適正にする。
②脂肪を摂り過ぎない。
③食事で摂る油脂の種類に気を付ける
④食事で摂る1日のコレステロール量を制限する。
⑤食物繊維を十分に摂る。
⑥緑黄色野菜をたくさん食べる。
⑦大豆や大豆製品を十分に摂る。
⑧塩分を控える。
中性脂肪値だけが高い場合
①食事で摂るエネルギーを適正にする。
②糖質、特に砂糖などを摂りすぎない。
③アルコールは控えめにして飲み過ぎない。
④食事で摂る油脂の種類に気を付ける。
⑤食物繊維を十分に摂る。
⑥緑黄色野菜をたくさん食べる。
⑦大豆や大豆製品を十分に摂る。
⑧塩分を控える。
コレステロール値と中性脂肪値の両方が高い場合
①食事で摂るエネルギーを適正にする。
②脂肪を摂り過ぎない。
③食事で摂る1日のコレステロール量を制限する。
④食事で摂る油脂の種類に気を付ける。
⑤食物繊維を十分に摂る。
⑥アルコールは控えめにして飲み過ぎない。
⑦糖質、特に砂糖等を摂り過ぎない。
⑧大豆や大豆製品を十分に摂る。
⑨塩分を控える。
善玉コレステロールが低い場合
①食事で摂るエネルギーを適正にする。
②肥満を解消する。
③糖質、特に砂糖などを摂り過ぎない。
④食事で摂る油脂の種類に気を付ける。
⑤禁煙する。
コレステロール摂取量の制限
コレステロール値の高い人は、とにかく摂取量を減らします。
食事で摂る1日のコレステロール量を300mg以下にします。
コレステロールが特に多い食品は、鶏卵、鶏・牛・豚のレバー
などの内臓肉、たらこやイクラ、すじこ、かずの子、ウニ等の魚
卵類、ししゃもやしらこ等の内臓ごと食べられる小魚等がありま
す。うなぎやあなごにも多く含まれます。高コレステロール血症
の人が1日当たりの摂取量を300mg以下にしても、改善効果が
不十分な場合は1日200mg以下にする事もあります。
鶏卵1個で1回のコレステロール許容量の大部分を占めます。
いか、えび、たこ、貝類はコレステロールが多い食品とされて
いましたが、精度の高い方法で測定すると、それほど多くない
事がわかってきました。またコレステロールを抑える成分が多
く含まれている事がわかっています。牛乳は特に制限されない
限り1日200ml位は摂ってもかまいません。200ml中コレス
テロール量は約25mg、乳脂肪分は8gしか含まれていません。
食物繊維を十分に摂る
食物繊維はコレステロール値を下げる働きがあります。
コレステロールだけでなく糖質の急な吸収も抑えます。
どんなものに含まれるか
野菜、穀類、ココア、豆類、果物、こんにゃく、いも、大麦、
ライ麦、昆布・わかめ等の海草等の食物繊維を、1日に25~
30gは摂るようにしましょう。目安として、野菜を300g以上、
果物を200g前後、いも類を100g程度、野菜については生の
状態で両手一杯に乗る量が100gです。煮る、ゆでるなど加熱
するとかさが減って食べやすくなります。野菜300gで、およ
そ10gの食物線維を摂る事が出来ます。
高脂血症の食事療法
脂肪は食事のエネルギーを跳ね上げ、肥満を招きます。タン
パク質や糖質は1gがおよそ4Kcalなのに対し、脂肪は約9Kcal
と2倍以上のエネルギーを持っています。また、脂肪の摂取量
が多いと、その代謝によって血中脂質値を上げます。脂肪で摂
るエネルギーは、1日に必要なエネルギーの25%以下に抑えま
す。油脂量は肉などの動物性の脂肪だけでなく、植物油も含み
ます。
肉類は調理法を工夫して脂肪を減らします
①ゆでて脂肪を落とす工夫。
②蒸す料理を心がける。
③アルミホイルに包んで焼く。
④電子レンジ加熱を利用する。
お大事にしてください
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