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☆SPECIAL REPORT(原油サーベイ)
OPEC体制「終わりの始まり」へ
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<No.9189>
2003. 4. 22 (火)
―― 日量200万バレル減産へ=イラクは波乱要因
OPEC は 24 日、ウィーン本部にて緊急総会を開催する。原油価格の下落に歯止めをかけ
るための減産協議と、戦争後の復興のため石油増産によるオイルマネーを求めるイラクの
扱いが焦点となる。イラクは OPEC 石油生産枠から現在除外されているが、イラクを OPEC
の管理下におきたい減産推進派はイラクの生産枠への復帰を求めており、生産拡大の動き
をけん制する構えを見せている。政府不在のイラクが欠席する可能性も否定できないが、
加盟国内の不協和音は OPEC の原油価格への決定力を弱めかねず、会議の行方には予断を
許さない。
イラク生産枠への復帰を要求=減産推進派
1125 億バレルとも言われる世界第2位の確認埋蔵量を誇るイラクは、現在は湾
岸戦争後国連の経済制裁によって人道支援物資購入以外の目的でしか原油輸出が
認められてはいない。OPEC 加盟 11 カ国の中ではイラクは唯一生産枠から除外さ
れており、湾岸戦争前には日量 350 万バレルあった生産量もイラク戦争前の時点で
は日量約 250 万バレル程度まで制限されていた。イラクは石油生産量を湾岸戦争前
の生産レベルまで早急に回復させ、それらの石油収入を復興資金に当てたい意向。
専門家は更に数年の内には 600 万バレル程度までの増産も可能と見ている。
それに対して、イラン、カタールといった加盟国はイラクに対して湾岸戦争前に
割り当てられた生産枠への復帰を求める模様。主要国は「無制限な生産は原油相場
に対する挑戦」(ザガネ・イラン石油相)」などと総会を前にしてイラクの増産へ
の積極姿勢をけん制している。イラクの増産に反対する加盟国にとって最悪のシナ
リオは、生産枠に縛られることを嫌うイラクが OPEC から離脱することである。
イラクの OPEC 脱退は米国にとって OPEC 内部の情報へのアクセスを失うこと
を意味し、早期に実現されるシナリオではないと見る中等専門家もある。ただ現実
化すれば石油需給を緩和させるのみではなく、他の OPEC 加盟国も生産枠を遵守
しない、「抜け駆け増産」に走る危険性もはらむだけに、OPEC の存在意義そのも
のも問われかねない。一方で、イラクの増産を支持する米国は欧米メジャーによる
油田開発の可能性を睨んで、イラクの原油生産は「年末までに日量 250 万−300 万
バレルまで達する」(チェイニー副大統領)と発言。イラク石油生産の早期回復の
見通しを加速させている。
日量200万バレルの減産予想=石油専門家
OPEC の総生産量のおよそ3割を占めるサウジアラビアを中心とする加盟国は、
総会において日量 200 万バレルの減産を打ち出すと柴田明夫・丸紅経済研究所副所
長は予想している。足元の需給状況は日量 200 万バレルの余剰であり、イラク戦争
前には 35 ドル近辺で推移していたWTI期近物もその後 30 ドルを割り込んでいた
が、減産を織り込んで 21 日には 30 ドルを回復している。OECD 加盟国の原油備
蓄量は低レベルであり、中期的に「下値リスクは限られている」(柴田氏)との指
摘もあるが、イラクの OPEC 脱退は原油価格の一段安をもたらし、OPEC の価格
影響力に著しい打撃を与えることは間違いない。
イラクが総会に参加しない可能性も否定できない。米国当局は 17 日、イラクに
政府が存在しない現状では総会には欠席するかもしれないと指摘。一方で、米国防
総省の意を受けたとされるオベイビなる人物(ズバイ・バクダッド市長の部下)が
総会に出席し、原油増産を主張するとの情報もある。米国の意向をバックにイラク
側の出席動向は不透明だ。
米国は今回の空爆で石油省の建物はあえて破壊しなかった経緯があり、「復興の
ための増産」を説く声はイラク人から上がったほうが国際世論からの理解を得られ
やすいのは言うまでもない。しかしながら、米国主導のイラク原油生産増産のシナ
リオには加盟国は警戒を強めており、イラクの政治的な安定に不確定要因をもたら
す可能性も大きい。(了)
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