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団地型公共集合住宅のトータルリモデル

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団地型公共集合住宅のトータルリモデル
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2004/06/01]
団地型公共集合住宅のトータルリモデル
A11
―多摩ニュータウンを中心として―
The Total Remodeling of Public Residential Buildings Built in the Mass Housing Era
- Focused on TAMA NEW TOWN深尾 精一(教授) 門脇 耕三(助手) 松本 真澄(助手)
阿部 順子(研究員) 井川 充司(大学院生) 和久 倫也(大学院生)
荒平 剛史(大学院生) 張 宇(大学院生) 齋藤 茂樹(研究生)
Seiichi FUKAO (Prof.), Kozo KADOWAKI (Res. Assoc.), Masumi MATSUMOTO (Res. Assoc.),
Junko ABE (COE Res.), Atsushi IKAWA (Graduate Student), Tomonari WAKU (Graduate Student),
Tsuyoshi ARAHIRA (Graduate Student), ZHANG Yu (Graduate Student) and Shigeki SAITO (Res. Student)
ABSTRACT
The public residential buildings built in the mass housing era are not satisfying the demand of new lifestyle due
to superannuation, their deteriorating interior finishings and functional systems, and the aging of residents. The
purpose of this project is to grasp the actual state of the public residential buildings and to study several ways of
improvement, making suggestions for a total remodeling which is capable of dealing with the new lifestyle flexibly.
キーワード:団地 公共集合住宅 多摩ニュータウン Keyword public residential building
1.はじめに
現在、高度成長期に大量に建設・供給された団地
型公共集合住宅は、経年による老朽化、設備や機能
の陳腐化、居住者の高齢化などにより、現代の住要
求に対応できていないのが現状である。
そこで本プロジェクトでは、団地型公共集合住宅
表1
活動内容の概要
■多摩ニュータウンにおける公共住宅ストックの分析
多摩NT全域のストックを対象としたGISデータベースの作成
■全国の公共住宅の改善実態調査
ヒアリング・改修事例調査(東京都・福島県)
■多摩ニュータウンにおける団地型公共集合住宅の設計提案
現況調査および設計提案(永山団地4街区を対象として)
の実態を把握するとともに、適切な改善方法を検討
し、今後の居住形態に柔軟に対応可能なトータルリ
モデルの提案を行う。
2.多摩NTにおける公共住宅ストックの分析
現在、多摩ニュータウン(以下多摩NTと略す)に
若葉台駅
永山駅
堀之内駅
南大沢駅
多摩
センター駅
稲城駅
唐木田駅
は、高度成長期に建設されたストックが大量に存在
する。これらは複数の事業主体によって供給された
多摩境駅
凡例
ものであるが、これまで供給主体の枠を超えた、地
域全体の視点からストックの把握・改善方法の検討
ニュータウン区域界
公共集合住宅
駅
鉄道・幹線道路
図1 多摩ニュータウン全域 配置図
は行われていない。
そこで、図1に示す多摩NT全域において、1971年
から1995年までに供給された全公共集合住宅を対象
データベース項目
・供給主体
・賃貸/分譲の別
・入居年代
・戸数
・平均専有面積
・構造形式
・階数
・アクセス方式
など
階数
に、供給主体、賃貸/分譲の別、入居年代、戸数と
いった項目ごとに、住棟単位での分類を行い、図2
に示すような2次元および3次元のGISデータベー
スを作成した。
3.全国の公共住宅の改善実態調査
全国の公共住宅における改善実態を把握するため
に、いくつかの事業主体に対してヒアリングを行い、
ストック活用の実態を把握するとともに、実際の改
修事例の調査を行った。また、2004年度から都市基
盤整備公団と共同で、ストック活用に関する研究会
を行っていく体制を構築した。
5階建
11階建
図2 2次元および3次元のGISデータベース
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
4.多摩NTにおける団地型公共集合住宅の設計提案
4.1. 調査対象の選定
[2004/06/01]
永山団地3街区(分譲、一部賃貸)
小学校
多摩NTにおけるストック調査の結果に基づき、
永山南公園
初期に建設されたストックを大量に有する永山団地
4街区を選定し、現況調査および設計提案を行った。
4.2. 現況調査
鳥瞰写真
諏訪団地
供給年月
まず図3に示すように、永山団地4街区における
配置計画などを理解し、現地調査、空き室の調査に
所在地 東京都多摩市永山4丁目
タウンハウス
戸建住宅地域
供給主体・方式
よって、現状の把握を行った。
次に、図4、5に示すように、住戸および住棟単
位での図面分析を行うとともに、オープンスペース
1971年3月 1972年3月
森林
社会教育施設
2209戸
構造形式
RC造5,11階建
S=1/10000
図3 永山団地4街区の配置図と概要
や近隣施設の配置計画および利用状況の調査、居住
浴室
者の年齢・世帯構成の全国との比較を行った。
和室(2)
押入 和室(1)
物入
6960
老朽化、近隣施設やオープンスペースが活用されて
洋室(2)
約9.7㎡
いないなどの問題が明らかになった。一方で、若年
層が多いこと、経年による緑豊かな屋外空間が多い
バルコニ-
こと、近隣に多くの公共施設があること、採光・通
6570
風に恵まれた住戸平面であることも明らかになった。
玄関
洗面
脱衣室
ダイニング
・キッチン
約7.7㎡
脱衣所
台所
ホール
玄関
7410
以上の現況調査により、狭小な住戸や画一的なプ
ランであり、居住者層の二極分化や高齢化、設備の
公団・賃貸
建設戸数
和室(1)
食堂
和室(3)
浴室
バルコニ-
7680
図4 既存住戸の平面図(2DK、3DK)S=1/250
4.3. 設計提案
以上の現況調査をもとに、この地域が秘めている
魅力をより居住者が享受できるよう考慮し、老朽化
した住宅の住水準の向上をはじめ、多様な年齢、世
図5 既存住棟の平面図(5階建階段室型)S=1/600
帯構成に対して魅力的な住環境を提供するために、
表2 設計提案の概要
表2に示すような複数の設計提案を行った。その一
例を図6に示す。
②
5.今後の展望
③
今後は、作成したGISデータベースや実態調査の
結果を活用しながら、多摩NTを中心としたストック
調査、分析を行っていくとともに、管理主体と連携し、
トータルリモデルの実施手法を探る予定である。
改修手法
名称
①
・妻面の3~5階及び北面の各階に居室を付加する。
・戸境壁、間仕切壁等を撤去して住棟の中心に中廊下
を形成し、中央の階段室を撤去してEVを新設する。
④
⑤
⑥
手法
・ 住棟1F南面に
デッキテラスを付加
バルコニー室内 ・ バルコニーを介して2戸1化
化タイプ
・ 1F部分はリビングアクセス
妻面一室増築 ・ 住棟の妻面に
タイプ
各階一室を増築
デッキタイプ
・ 3~5Fに片廊下を設置
・ 住棟間にEVを新設
・ 1F部分を高齢者施設にする
高層棟1F
高齢者施設タイプ ・ 間仕切の一部撤去
・ 妻面、北面に1室増築
中廊下タイプ
・ 中廊下をつくり、EV新設
片廊下連結タイプ
改修効果
効果
・ 公園の活性化
・ 交流の場を形成
・ 多様な居住者層の
参入を促進
・ 居ながら工事が可能
・ 断熱性の向上
・ 最小限のEVによる
快適な動線空間の確保
・ 地域内外の高齢者
の拠点を形成
・ 多様な住戸プラン
・ 屋外との繋がり
・多様なプランにより、様々な住要求に対応できる。
・増築することで、より身近に豊かな緑が感じられ、
住棟も全体として豊かな表情を持つ。
3,4,5階平面図(改修前)S=1/600
北立面図(改修後)S=1/800
短手断面図
(改修前)S=1/800
3,4,5階平面図(改修後)S=1/600
南立面図(改修後)S=1/800
短手断面図
(改修後)S=1/800
図6 設計提案(例)-中廊下タイプ-
東京都女大学21世紀CO旧プログラム
巨大都市建築ストックの賊iili・史新技術育成
DcvcloDmcmor TcchnologicsrorAcliva【1oluandRcncwalorBuildinRSlo(PksinMcRnlopolis
2001/06/01
囮…雛議鵜鰯扉繍烹…
上野淳(教授)松本真澄(助手)福本哲二(修士課程)
JunUENO(Prof),MasumiMATSUMOTO(RCS・AssocJ
andTbtsUjiFUKUMOTO(MasterCourse)
ⅥIeaimofthispaperistoob1ainfimdamentalknowIedgeofhousingrefUrbishmentbyresidenls,Wefbcusontheac【ual
stateofTamaNewTbwnaTea,developedinthel9700s・Theresearchmethodconsislsofques(ionnajresuTveycoveTingall
dwellingunitsasweⅡasoffieIdsuweyatsevelTIldwellingswboacceptediLThroughouranalysisbecomeclearl)main
characteTisticsofTefUTbishmentanddi碇renceseenbetweenrmlednatsandowneroccupiedones,2)impoTtanceof
coIwersionoffhcililiesfbrkitcbenandbathunits,3)。i箙TenceinthestateofhousingrefilrbishmentbydwellingunitaTea・
キーワード:多摩ニュータウン,集合住宅,住まい方,住戸改善
KeywoIds:TnmaNewTbwn,Housingestaにs,WaysofdweIIing,Rcfhrbishmento「dweⅡingunit
1.目的
ムの事例数は多く,リフォーム規模も大きい.また、
間取り・住戸平面を規定して供給される(規定型)
リフォームを行っている割合も分譲住宅のほうが多
公的集合住宅も,1)建設後経年とともに内装,住宅
い.
設備等が老朽化すること,2)家族構成やライフスタ
2)リフォーム内容は,a内装:壁紙,床仕上げの
イルの変化に応じて住要求が変化すること,などに
張り替えなど,b・建具:ふすま・障子,ドア,サッ
より「住宅リフォームjのニーズが顕在化する.こ
シュなどの取り替え,。設備:台所,浴室,トイレ
うしたニーズや実態を的確に把握し,これに対応す
などのリフォーム,。、間取りの変更,に分類される.
る構法や技術を開発することは、既存ストックを活
全体としてa・内装,。:設備の事例数が多い(図・’).
用しながら持続的な居住を図る上での重要な課題と
水廻り部分のリフォーム件数が多いことは,集合住
考える.
宅供給においてこの部分の可変性を確保しておくこ
本研究は多摩ニュータウン・初期開発団地におけ
る居住者自らの住宅リフォームの実態を克明に調査・
との重要性を示唆している.
3)間取りの変史を行う積極的なリフォーム事例は
分析し,住宅リフォームに関する計画条件を抽出す
リフォーム内■
■■爪のリフォーム
増田■りの丘Ⅱ
政バルコニーへの■低
空ロロ醤彫tza
その■
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菫
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-画
一’
11
1)賃貸住宅に比べ,分譲住宅の方が住宅リフォー
表・1国査抵要
2ヶ丘
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■
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209
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落合
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凡例:■内技・丘其のみ国90■のみ
-12-
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永山
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Ⅱ凶
。&Rや性勿S白くしたかった
□子どもの凪伍やF浪人蚊の宜化に合わせたかった
■その■
図・1住宅リフォームの内容とその理由(頁貸・分随別)
地区
四湿田遍田四
□
OmqOUD側I的
リフォームの理由凡例:
■いたみ,よごれがひgか⑥た(酉(なった)
□いたみ,よごれがひgか
ロ住い■平然■かつた
■は■OPP=■を皮えたかった
3.結果の概要
凶
ヒアリング調査(9件)を行った(表・I).
トイレのリフォーム
四
実施した.又,協力の得られた個別事例について訪問・
■■■のリフォーム
一図一
別アンケート調査(計5,137票配布・609票回収)を
臣
台研のリフォーム
-1
三
賃貸・分譲住宅に住宅リフォームの実態に関する個
ちサブシの、甘
一■■HUzZ已曰匹
回
’一
(3DK主体),落合・豊ケ丘地区(3DK,3LDK主体)の
0
■ふ宅よE2922
■内ドアのn百
日
分■台叶
■
多摩ニュータウン初期開発団地:諏訪・永山地区
天井■のユロ
庄佇+〃⑭竺竺
一
2.調査概要
■■合叶
丘■の■缶
内咳
ることを目的とするものである.
ガーー埒2 ̄
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□内装・建具・股伐□聞取り庇更
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11祭
20010601
表・2住宅リフォームに関する宜貸・分1日の比較
分纏'1舌宅では回答肴の399(,に及ぶ(図・2).50㎡
■宜団垣
区分
Iiii後:31)Kでは,DKと隣接するF1】寵をつなげて一体
分■団迪
・丘戦国■」■■n円ある
・Rn■の■民(■梓本体のエ$・竺砂
リフォームに■する 。■理主体の捻只すらもの(台研.四
田■
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化するl」)K化[居室拡大]が多く,90㎡前後:3LI)K
水W、エ卒.バルコニーの改纂.屯■
尊)は不可
ば■=可危
では,’111仕切り位置を変史して大規模にNII取りを変
・六屯■ ̄竺。、里.■■曲合の承皿が必艮
リフォーム
件敗
える[''''化切壁変更]ケースなどもみられ,住戸規
少嗽い
リフォーム
内■
模によってリフォーム内容が鍵なることなどが把握
された(図.3.4).
らい
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内ドア.■■■がロ■に行われている
。■q2国■可低な■砥やふす広の堅■
・■田主体が拉只すら位■祖■の史■
・田■リ宜只ケースが.伯4■
・100万円に=たないケー
リフォーム
内■と■■
え両面一
・100-J90万円邸G税であり.内URは内■
.RBば内堕・竺只のみ鄙2■内■。
■■・破■が5割
■且.■■26■,田取り宜只15釘
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伊立である
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田取りの皮只を伴う
リフォーム
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。■mとして不可
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・車俔も阻めて少なL、
・DKとUU■をつなげるケースがらい
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アにするため.が35缶.その他の■田
仏座色的均与'二ある
田取りの変更を伴うリフォームの内客分■
住戸田楓田符位
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回眠惣拡大のみロ凧疽極大+Q
IW1回眠壷極大+収鈷沿ロ間仕切H宜更
■匝忘拡大十収鈷滅■収lib度更
B0hlOOb
Ob
■因室分召1
口その他
2O、
40,
CDbeOh
■家目〔対応
□短き理由1
□栖合理由2
凡例
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□硬峨居住
■その他
図・3間取り変更を伴うリフォーム内容と理由の分類別内訳(住戸規模別)
分団
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分析
反■内容と理由楓屡比将■
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図・4住戸規模別に見た間取りの変更を伴うリフォームの内容と具体的耶例
-13-
Ⅱ
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東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市辿築ストックの賦活・史新技術育成
2004/06/01]
Dcvclon⑫ontof
囮欝識駕巽!?濤i繍蝿鰯
松本真澄(助手)高見沢邦郎(教授)双川華子(学部生)
MasumiMATSUMOTO(Res・Assoc.),KuniomdLKAMIZAWA(Prof)
andHanakoFUndLKAWA(Undergmduate)
ABSTRACT
Theaimofthispaperistoove「viewthegeneralstatusandtrendsofrebuiIdingprqjectsfOrpubIIcrented
housingestatesinTokyometropoIltanaJ℃aWeanaIyzefUndamentaleIementsofpmqlectspIanned、unde「tookon-8oing
anddone,studythechangingpolIcIesof肥building,andexaminetheefIbctlvecondItionsfbr泥alizin8theprqjects・We
discemfbuTdiHErentpeTiodsasregaUdsthegeneralevoIutionof肥buildingpractice
キーワード:賃貸住宅,建替え
Kcywmds:Publichousing,RcbuiId
の建替えを行っており、建設中を含めておよそ1500
戸の建替えを実施している。これまでの建替え対象
は区部に立地しており、100戸に満たない小規模な
団地が多く、住戸面積も30㎡以下の住宅である。ま
た、改修事業として「空き家リフレッシュ工事」や
増築事業が同時に実施されてきた。平成15年に「一
般賃貸住宅の再編整備計画」を策定し、昭和39年度
以前に建てられた約1万9千戸の住宅を対象に、建
替えを中心に、それぞれの住宅の特性に応じてストッ
ク活用を計画的に行うことが示されている(図2)。
4.公団賃貸住宅の建替え実態
1)蓬替え対象昭和50年代後半、公団賃貸では耐
用年数のl/2を経過した住宅を原則として建築年代
の占いものから順次建替えることが決定された。東
京圏では約8万5千戸が対象となっている。土地の
高度利用、居住水準の向上を基本方針にしている。
2)建替えの進捗状況公団賃貸を、戸数規模別
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'MII]薑mIllM山
Dfl51279
図2束京都住宅供給公社の改善●建瞥;え事薬
-14-
東京郁立大競21世紀COHプログラム
巨大部市建築ストックの賦活・史新技術育成
Devclopmcnlo「 TechnoloRicsrorActivaLionandRenc■alorBuildinjzSLocksinUcRaloDolis
200MI/O6/01
に3区分、立地により都心20km圏で2区分して整理
れた。平成8年度、多摩平団地が東京都内で大規模
した。運替えの進捗状況をみると(表1)、周辺小規模、
団地として初めて建替えに着手され、以降大規模団
周辺中規模、郊外中規模の団地で建替えが進んでい
地が次々に着手されていく。
る一方で、大規模団地は遅れていることがわかる。
・民間活力導入期行政改革により、公団の業務
3)蓮替えの時期区分建替えの変遷を4期に分
として「賃貸住宅の限定的実施」の方針が示され(平
けて整理した(図3)。
成9年)、建替えは、公団が戻り住戸分のみ住宅を建
・連替え初期着手が比較的容易な小・中規模の古
設し、その他は土地の簸渡を受けた民間企業が行う
い団地での運替えが多く、建替えにより戸数が大幅
方向で進められることになった。
に増加した団地が多い。地価高騰などにより開発適
5.まとめと繰題
地の確保が困難な時期であり、建替えによる供給戸
数の増加が求められていた。
東京都住宅供給公社と東京圏(1都3県)の公団の
賃貸住宅運替えの状況を把握できた。公社は限られ
初期の事例である亀有団地[図4A]は、高層化に
た戸数の趣替えを開始したところであり、一方公団
より戸数が約3倍になり、空地も確保されているが、
は民間への土地簸渡方式など従来と異なる手法に移
その殆どは駐車場と自動車通路になっている。
りつつある。これらを勘案したとき、かつ、今後の
・蓮替え定着期連替えが定着する中で、新しい
動きが生まれ、制度、手法が発展していった。
膨大な賃貸ストック騒を前提にすると、民間も含め
た多様な主体の参加のもと、建替えだけでなく各種
定着期の事例である武蔵野緑町団地[図4c]では、
住民の働きかけにより、都営住宅併設、従前の小道
の修復改善も織り交ぜた複合的な対応が求められる
ものと思われる。
の継承、棟当たり戸数の縮小等が実現されている。
今後はさらに公営住宅建替えに関する調査を行う
・大規模蓮替え着手期国の政策として建替えが
推進され、大規模団地達替えの本格的着手が検討さ
表1公団住宅建瞥え進捗状況
-■」 ■■色
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・亜亜 画
■■
麺癖》
■外中悠伍
鉤
32為
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Ⅱ
0
油.暁
、
堅
--
17
17.127
101
鴎9
29
8.540
ID
18.418
2,590
4
10.917
1.600
28
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14
14,222
7
27.380
0.477
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図4公団住宅建替え団地の典型事例
図3公団住宅の鰹替えの時期区分と背景
-15-
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
A14
[2004/06/01]
直交壁がRC柱の崩壊に与える影響
Effect of Transverse Side Walls on Collapse of RC Columns
中村 孝也(助手)
芳村 学(教授)
Takaya NAKAMURA (Res. Assoc.) and Manabu YOSHIMURA (Prof.)
ABSTRACT
The column with side walls is the typical form of RC apartment buildings. While the side walls existing for the
transverse direction is generally ignored at the seismic evaluation of old existing RC buildings, they are likely to
affect the collapse behavior of columns. Thus this research is intended to study the axial collapse of columns with
transverse side walls. Half-scale column specimens are laterally loaded until they come to be unable to sustain axial
load. The tests have revealed the general nature of the effect of transverse side walls on collapse of RC columns.
キーワード:RC柱、直交壁、崩壊
Keywords: RC Column, Transverse Side Wall, Collapse
1.はじめに
2.実験概要
本研究では、古いRCラーメン構造集合住宅を対象
2.1 試験体
とし、地震時における建物倒壊の原因となる柱の崩壊
試験体は両端固定形式の柱とし、実柱の1/2のサイ
について検討する。1995年兵庫県南部地震では多くの
ズを想定する。柱のみのものが2体、直交壁付き柱が4
建物が倒壊に至る激甚な被害を受けたのであるが、ピ
体の計6体であり、すべてせん断破壊するように設計
ロティ形式を除いた中低層RC壁付ラーメン構造の集
する。試験体諸元一覧を表1に示し、試験体概要を図1
合住宅では、大破・倒壊に至った建物がなかったこと
に示す。直交壁は偏心接合でない袖壁とし、柱の両側
1)
が報告されている 。この理由のひとつとして、この
に配置する。
ような建物では柱に壁が取り付くことが多く、これら
共通因子
が柱の崩壊を防ぐ役割を果たしたことが考えられる。
高さ(h0)を900mmとする(h0/D=3)。せん断補強筋
ところで、このような建物では、桁行方向は開口が多
比pwは0.11%とする。使用材料はすべて普通強度のも
く純ラーメンに近い構造であるのに対して、梁間方向
のを用い、鉄筋の規格はすべてSD345とする。
は戸境などにより壁が多い構造となるため、地震時に
実験パラメータ
は桁行方向の変形が大きくなることが多い。つまり、
積/柱断面積)とする。主筋比pgは2.65%と1.69%の2種
地震による振動と直交する方向に壁が取り付くことが
類とし、γはそれぞれの主筋比について、ゼロ(壁な
多い。よって振動直行方向に取り付く壁(直交壁)が
し)、33%、50%の3種類とする。
柱の崩壊に及ぼす影響を把握することが重要となる。
2.2 加力概要
2)
古い建物の耐震性能は一般的に耐震診断基準 によ
柱断面寸法(b×D)を300×300mm、内法
主筋比および壁面積比γ(壁断面
加力は一定軸力下での水平方向正負交番載荷とする。
る構造耐震指標(Is値)によって評価されるが、Is値
軸力は全試験体共通とし、軸力比η c (後の(1)式参
を算定する上で偏心接合でない直交壁は原則として無
照)で0.2とする。載荷履歴は部材角±0.5%、±1.0%、
視される。ただし、第2種構造要素の判定においては、
±2.0%の加力をそれぞれ一回行った後、軸力保持能
直交壁が負担する軸力を考慮して柱の負担軸力を評価
力を喪失して鉛直方向に崩壊するまで押し切ることを
することとされており、直交壁の影響が考慮される。
原則とする。
しかし、直交壁が柱の構造性能に与える影響が明らか
になっていないため、適切な評価ができないのが現状
である。
過去、直交壁に関する研究は曲げ破壊型柱について
は行われているが3)、旧基準建物の被害で一般的に見
られるせん断破壊型柱に関しては皆無である。そこで
本研究では、せん断破壊型直交壁付き柱に関する実験
を行い、直交壁が柱の崩壊に及ぼす影響を検討する。
3.実験結果の考察
実験結果について検討予定の項目を示す。
3.1 強度計算値と実験値の比較
診断基準に準じて計算した曲げ強度とせん断強度
を表2に示す。ここで、コンクリート強度=24(N/mm2)、
鉄筋降伏強度=394(N/mm2)を仮定して計算に用いた
(3.2節も同様)。診断基準では偏心のない直交壁は
計算上無視されるため、柱部分が同一であれば壁の
有無に関わらず強度は同一となる。しかし、強度に
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巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
表1 試験体諸元一覧
試験体名
①
示した 。ηsは、軸力保持限界時
にはせん断破壊面付近のコンクリ
柱
せん断補強 主筋比
h0/D
筋比 pw
pg ②
柱断面
b×D
D16
D16W60
300mm
D16W90
×
D13
300mm
D13W60
D13W90
3
[2004/06/01]
4)
直交壁
壁筋 壁長さ 壁厚 壁面積
(縦・横)
Lw
t
比③γ
壁なし
0%
2.65 %
60mm
33
%
(12-D16) 1-D6@80 250mm
0.11 %
90mm 50 %
(2-D6@200)
壁なし
0%
1.69 %
60mm
33
%
(12-D13) 1-D6@80 250mm
90mm 50 %
ートの圧壊が激しいために主筋に
よる軸力負担が増大すること考慮
したものである。表3にηcとηsの
計算値を示す。ηcはすべての試験
体で同一であるが、ηsは主筋比が
小さい方が大きくなる。ところで、
①試験体名中のD16は主筋D16、D13は同D13を表す。その後のW60は壁厚60mm, W90は同90mm
を表し, 無記述は壁がないことを示す。②pg=主筋総断面積/(b・D)。③γ=2・Lw・t/(b・D)
直交壁付き柱では壁が軸力の一部
を負担して変形性能が向上するこ
加力方向は紙面垂直方向
とが考えられる。そこで、直交壁を含めた
D16
b=
加力方向
D=
コンクリート軸力比ηcwを (3) 式で、直交壁
を含めた主筋軸力比ηswを (4) 式で算定し、
結果を表3に示す。ηcwは主筋比とは無関係
で、壁面積比γが小さい方が大きくなる。
D16W60
一方、ηswは主筋比が小さい方が大きく、か
h0=
Lw=
b=
Lw=
D=
t=
つ壁なし柱の方が壁付き柱よりも大きくな
る。壁付き柱では主筋および壁縦筋が同じ
場合、γに関わらず同じ値となる。これら4
つの軸力比を実験結果と比較し、直交壁付
D16W90
き柱の評価にはいずれが適しているかを検
討する。
ηc = N / ( b・D・Fc )
ηs = N / ( Ag・σy )
ηcw = N / {( b・D +2・Lw・t ) ・Fc}
ηsw = N / ( Ag・σy +2・Agw・σyw)
D16W60、D16W90
図1 試験体概要
ここで、N:軸力、Fc:コンクリート強度、Ag:主筋
総断面積、 σy:主筋降伏強度、Agw:片側壁縦筋総
断面積、σyw:壁縦筋降伏強度
直交壁が影響することが考えられるため、計算値と
実験値の比較を行う。
表3 各軸力比計算値
表2 強度計算値
せん断終局強度 せん断余裕度
試験体名 曲げ終局強度
Qmu ①(kN)
Qsu ③(kN)
Qsu/Qmu
D16
285
146
0.51
D16W60
D16W90
D13
223
138
0.62
D13W60
D13W90
①診断基準(解付1.1-1)式による値。②診断基準(付1.1-2)式による値。
3.2 限界変形
柱が軸力保持限界を超えて崩壊に至るまでに経験し
た最大の水平変形を「限界変形」と定義し、実験パラ
メータが限界変形に及ぼす影響を検討する。
RC柱の変形能力は一般的に軸力比が大きいほど低
下する。過去の実験において、限界変形の評価には、
コンクリートのみを考慮した軸力比ηc ((1) 式)よりも、
主筋のみを考慮した主筋軸力比ηs((2) 式)が適して
おり、ηsが大きいほど限界変形が小さくなることを
(1)
(2)
(3)
(4)
試験体名
D16
D16W60
D16W90
D13
D13W60
D13W90
ηc
ηs
0.46
0.20
0.72
ηcw
ηsw
0.20
0.15
0.13
0.20
0.15
0.13
0.46
0.43
0.72
0.64
4.まとめ
直交壁がRC柱の崩壊に与える影響を明らかにす
るための実験を計画した。
参考文献
1) 建築研究振興協会:(H13)国家公務員宿舎耐震診断評定そ
の他業務報告書、2002.3
2) 日本建築防災協会:既存鉄筋コンクリート造建物の耐震診
断基準・同解説、2001年度改訂版、2001.10
3) 加藤大介、大塚祐二:RC造柱にとりつく面外袖壁の軸力
負担性能の評価法、日本建築学会構造系論文集、第567号、
pp.93-99、2003.5
4) 中村孝也,芳村 学,大和征良:せん断破壊型鉄筋コンク
リート短柱の軸力保持限界に関する研究、日本建築学会構
造系論文集,第561号,pp.193-199 、2002.11
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2004/06/01]
団地型公共集合住宅の外装美観の改善手法
A15
―れんが風タイル仕上改修した永山地区団地建築物の色彩構成がエイジング評価に及ぼす影響―
The improvement technique of building facades of a housing complex type apartment
- Influence of Color Coordination on Aging Evaluation of Reformed Bricks Style Tile Building in Nagayama Area -
田村
橘高 義典(教授)
松山 祐子(研究推進者・大学院生)
雅紀(助手) 土屋 潤(研究協力者・大学院生) 岡部 由利子(研究協力者・大学院生)
Yoshinori KITSUTAKA (Prof.), Yuko MATSUYAMA (JSPS Fellow)
Masaki TAMURA (Res. Assoc.), Jun TSUCHIYA (Grad. Student), Yuriko OKABE (Grad. Student)
ABSTRACT
It is necessary to maximize the design life of buildings and take measures against the city construction stock.
Consequently, there is now a demand for the aesthetic qualities of buildings to be maintained for a long period. The
purpose of this study is to establish the improvement technique of building facades of housing complex type apartment.
The influence of color coordination on aging and desirability is clarified through the results of sensory tests and
systematized for the long-term management of building facades.
キーワード:エイジング,色彩特性,官能検査
1.はじめに
Keywords: aging, color properties, sensory test
表1 永山地区既存団地型公共集合住宅の実測調査結果
本研究は,都市建築ストックに関する更新技術の一
手法として既存住宅建築物の改修において単なる外壁
補修・塗替え等だけではなく,今後の長期的な建築の
維持及び景観の向上,エイジング(年月の経過に伴い
景観的な質が向上する働き)を考慮し,新たな価値を
・ほぼ全棟が単色もしくは2色の塗料仕上であり,ベースカラ
ーは薄いイエローベージュ,ベランダ側にアクセントカラー
としてライト系の色がライン状に配色
・近年における改装は見られず全体的に劣化が目立つが,部分
的な塗替えや改修が見られる
・タイル張り・塗料(ベランダ)・打放し(EV・階段)の複合
高層集合住宅 仕上であり,白色タイル・灰目地を使用し破れ目地仕上
(11階建) ・塗料部分の色彩は低層住宅使用色と類似色
・打放し部分の劣化が著しく,部分的な塗替え補修が見られる
低層集合住宅
(5階建)
創出する外装美観の改善手法を提案することを目的と
し,特に築後30年以上経過している団地型公共集合住
れんが風タイル仕上
原画像
宅を対象として外装改修計画を検討した。
本報では時間経過に伴い評価が向上する景観材料の
色彩特性を明らかにすることで建築物の寿命及び品質
向上に寄与することが可能になると考え,既存団地型
公共集合住宅の外装の特徴及び問題点に関する現状調
れんが仕上
低層集合住宅色彩情報
基調色:5Y 9 / 1
強調色:5Y 8 / 3
図1 検査用模擬試料例
査を行った。その後,既存の研究 よりエイジング効
1)
果が高いと考察された色彩構成に関して2種類の外装
料により物理量と評価尺度との関係を定量的に分析し
仕上を対象に模擬試料を作成し,建築物単体レベルで
た。同時に,既存集合住宅の外装仕上として多く使用
官能検査を行い検討した結果を報告する。
されている塗料仕上に関しても検査を行った。両仕上
2.永山地区既存団地型公共集合住宅の現状調査
の色彩構成は既存の研究 で使用した5色相(10RP~
1)
賃貸公団永山団地(東京都多摩市永山3丁目,1971
10YR)に明・彩度5段階に変化させた 25 種類とし,
年築)に対象地区を選定し,団地型公共集合住宅の外
れんが風タイル仕上に関しては目地種類を破れ目地・
装仕上に関する現状調査を実施した結果を表1に示す。 黒色で統一した。模擬試料の作成は画像処理ソフトを
使用し,まず低層集合住宅の外観写真画像より対象住
3.エイジングを考慮した外装仕上に関する官能検査
3.1 官能検査方法
宅以外の情報を排除し,集合住宅外壁面の単純化を行
既存の研究 よりエイジング効果を得やすい建築物
った。その後,既存の研究 で使用した材料レベルの
外壁仕上材料と判断され,その色彩や目地等の組合せ
れんが模擬試料(均一状態)よりれんが風タイル仕上
によりエイジング評価に様々な影響を及ぼすと考えら
のパターン画像を作成し,外壁面に貼付けた状態を模
れるれんがの色彩特性を考慮して,れんが風タイル仕
擬画像とした(図1)。塗料仕上は,外壁面を各色彩
上を対象とし前項の低層集合住宅に関して,仕上の色
構成で塗潰した状態とした。また,今回の試料は色彩
彩構成がエイジング評価に及ぼす影響について模擬試
構成の影響のみの比較検討を行うため既存集合住宅の
1)
1)
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Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
はカラーレーザープリンタで光沢紙に出力し,検査用
試料面鉛直照度が 500lx以上となるよう設定した。被
験者は本学建築学科学生(正常視力の 20 歳代男性7
2
1
0
-5
-3
- 1- 1
1
3
-2
-3
名,女性8名)とし,系列範疇法による官能検査を行
いると思われる。
落ち着き度及び好ましさの評価に関しては,両仕上
とも同明度では彩度が高いほど落ち着き度及び好まし
0
-5
-3
- 1- 1
1
3
5
-2
-3
-5
相関係数:0.76
落ち 着きがない - 落ち 着きがあ る
5
pR
R
yR
O
rY
好ましくない - 好ましい
3
2
1
0
-5
-3
- 1- 1
1
3
-2
-3
5
5
pR
R
yR
O
rY
4
3
2
1
0
-5
-3
- 1- 1
3
5
-3
-4
-4
-5
-5
古い - 新しい
1
-2
相関係数:-0.58
では,紫みが増す(pR)ほど新しく,黄みが増す
料が多く,目地の有無が古さの評価に影響を及ぼして
1
図2 れんが風タイル仕上の好ましさと古さ,好ましさと落ち着き度の関係
同彩度では明度が低いほど古いと評価される。色相別
色彩構成でも塗料仕上のほうが新しいと評価される試
2
-4
た,検査は外装仕上種類別に行った。
(rY)ほど古いと評価される。また,仕上別では同じ
3
-5
4
が増すほど高彩度でも古いと評価される傾向がある。
4
-4
評価してもらい,尺度構成理論により定量化した。ま
が高いほど新しいと評価されるが,O 及び rY の黄み
pR
R
yR
O
rY
古い - 新しい
さ,2.落ち着き度,3.好ましさを5段階の判断範疇で
古さの評価に関しては,両仕上とも同明度では彩度
5
相関係数:-0.51
った。ランダムに示した試料1枚ずつに対して,1.古
3.2 官能検査結果及び考察
5
好ましくない - 好ましい
験室とし,照明は色比較検査用D65 蛍光ランプにより
3
好ましくない - 好ましい
模擬試料(対象画像面積:A5)とした。暗室内を実
pR
R
yR
O
rY
4
好ましくない - 好ましい
外壁面における劣化・変色は対象としない。模擬画像
[2004/06/01]
5
相関係数:0.82
落ち 着きがない - 落ち 着きがあ る
図3 塗料仕上の好ましさと古さ,好ましさと落ち着き度の関係
表2 れんが風タイル仕上の検査結果のまとめ
V/C
H
紫みの赤 pR (10RP)
赤 R (5.0R)
黄みの赤 yR (10R)
黄赤 O (5.0YR)
赤みの黄 rY (10YR)
②(5/3)
③(2/3)
⑤(5/6)
⑥(3/6)
⑧(5/10)
●▲
○▲
○▲
●▲
○▲
●▲
●▲
●▲
○
○▲
●▲
●▲
●▲
○▲
:れんが風タイル仕上の評価結果と同様の塗料仕上
但し,rY の②の塗料仕上の評価のみ●▲(古く好ましい)
○:新しく好ましい,●:古く好ましい,▲:落ち着きがあり好ましい
さの評価が低い。同彩度では明度が高いほど落ち着き
度の評価は低下し,低彩度では明度が低いほど,中彩
度では rY を除いて明度が高いほど好ましさの評価が
示す。どの色相においても中明度・低彩度(②)の評
低下する。色相別では,黄みが増す(rY)ほど落ち着
価が高く,材料及び建築物単体レベルとも低明度・低
き度及び好ましさの評価が高い。また,仕上別では同
彩度及び低明度・中彩度の状態が,古く落ち着きがあ
じ色彩構成でもれんが風タイル仕上のほうが落ち着き
り好ましいことが示された。材料レベルに比べ建築物
度及び好ましさの評価が高く,評価値が0以上(好ま
単体レベルでは黄赤(5.0YR)周辺の色相の評価が全
しい)の状態の塗料仕上試料数は,れんが風タイル仕
体的に高く,赤みが強いよりも黄みが強いほうがこの
上試料の半数となっている。
レベルでは好ましいと思われる。
れんが風タイル仕上の好ましさと古さ,好ましさと
4.まとめ
落ち着き度の評価の相関結果を図2に,塗料仕上の同
エイジングを考慮した団地型公共集合住宅の外装美
評価結果を図3に示す。落ち着き度が好ましさの評価
観の改善手法の確立を目的とし,既存集合住宅現状調
に及ぼす影響は大きく,相関係数は 0.8 程度となって
査とエイジングを考慮した外装仕上に関する官能検査
いる。落ち着きはあるが好ましくないと評価される状
を行ったところ,れんが仕上及び塗料仕上において古
態は pR 及び R の低明度・低彩度であり,これらの色
く落ち着きがあり好ましいと評価される色彩構成が明
彩構成は建築外装仕上色として適さないと思われる。
らかとなった。今後は,エイジング効果を得やすい種
また,古くても好ましいと評価される色彩構成のもの
々の仕上に関して,様々な色彩状態を考慮し検討を行
が存在し,れんが風タイル仕上に関してはその領域に
う必要がある。
プロットされる試料数が最も多く,エイジングに適し
た材料であるといえる。
3.3 官能検査結果のまとめ
エイジングを考慮した官能検査結果のまとめを表2に
□参考文献
1) 松山祐子,橘高義典,田村雅紀:景観材料のエイジング評
価に及ぼす色彩特性の影響に関する研究 その1.れんが
仕上の色彩構成がエイジング評価に及ぼす影響,日本建築
学会構造系論文集,第554号,pp.15-19,2002.4
東京都立大学21世紀COEプログラム
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A16
[2004/06/01]
団地型集合住宅の構造体健全度評価
-コンクリートのひび割れ補修による靱性回復と耐久性維持効果-
The evaluations of structural body of a housing complex type apartment
-Recovery of toughness and effectiveness of durability preservation in crack repaired concrete-
田村
新井
雅紀(助手)
橘高 義典(教授)
健志(協力者,大学院生) 松沢 晃一(協力者,東急建設)
Masaki TAMURA (Res. Assoc.), Yoshinori KITSUTAKA(Prof.)
Kenji ARAI(COE Collab., Grad.Student) and Koichi MATSUZAWA (COE Collab., Tokyu Const.)
ABSTRACT
The performances of recovery of toughness and effectiveness of durability preservation in crack repaired concrete
were investigated. Affects of the air content, matrix strength, fiber properties, an extent of crack repair and an extent
of loading forces of freezing and melting on fracture toughness were tested by using tension softening evaluation
system. The specimen of non-fiber concrete repaired the crack mouth by epoxy resin showed toughness failure by
loading forces of freezing and melting. Toughness and durable performance of specimen were improved by vinylon
fiber, because of the effect of receiving a part of inner pressure. Important information on improving fracture
toughness and effectiveness of durability preservation of crack-repaired concrete was obtained.
キーワード:ひび割れ補修, 靱性, 耐久性維持
1.はじめに
Keywords: crack repair, toughness, durability preservation
さ・量・径の影響を考慮した上で, コンクリートの靱
現在, 国内の既存都市建築ストックに内在する問題
性回復と耐久性維持効果に対する適性を検討する。そ
として, 材料劣化した構造物の補修が,構造安全性に支
れらによる原コンクリートは, 高強度・普通強度で構
障のない状態で長期に渡り維持されるかというものが
成され, ひび割れを発生させた後に, エポキシ補修を
ある。ちなみに補修・補強の実行価値がないと判断さ
実施したものをひび割れ補修コンクリートとした。
れた場合は, 合理的な再資源化手法により, 最終的には
荷重
荷重
P
P
再び構造用コンクリートの原料として使用するための
検討が必要となる。本プロジェクトではその検討も実
施している。現状においては, 構造物補修の実行価値
があると判断された場合, 劣化程度に応じた適切な補
修・補強方法1)が選定・実施されることになるが, 昨今
荷重伝達用
くさび型治具
15度
開口変形制御用
クリップゲージ
引張
引張
切欠き長さ50mm
試験体
(100mm×100mm×120mm)
では, 躯体の劣化を未然防止する観点から, コンクリー
[側面]
[正面]
ト材料に短繊維を導入し, ひび割れ発生を予め低減す
クローズドループシステム
油圧式サーボバルブ
る手法などが積極的に検討される状況にある。
本研究は, 上記内容を鑑み,団地型住宅の躯体材料な
処理装置
らびにその補修材料として, 使用が想定されるような
荷重
制御
荷重-開口変位曲線
短繊維を混入したコンクリートを中心に, 外部により
一定の開口幅を有するひび割れを発生させて, そのひ
び割れをエポキシ注入工法により補修し, コンクリー
開口変位
トの靱性回復性を破壊力学的に検討する。また凍結融
解による劣化外力を与えた場合の耐久性維持効果につ
引張軟化曲線
くさび割裂試験
P
制御装置
ひび割れ
発生
樹脂
注入
劣化外力
(凍結融解)
P
いても検討する(図1参照)。
2.研究概要
2.1 使用材料
表1に使用材料を, 表2に実験要因を示す。短繊維
は, 付着ならびに変形追随性に優れる性質を有し, 長
~120サイクル
ひび割れ抵抗性
の評価
原コンクリート
靱性回復性
の評価
耐久性維持効果
の評価
ひび割れ補修コンクリート
図1 靱性回復性ならびに耐久性維持効果の評価システム
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
表1 使用材料
材料
セメント
細骨材
4
種類
普通セメント
硬質砂岩砕砂
記号
物性
C
密度3.16(g/cm3)
S
絶乾密度2.58(g/cm3),吸水率1.71(%)
V
密度1.30(g/cm3)
直径μm
40
200
400
660
短繊維
ビニロン繊維
長さ12mm
Sss
Ss
Sm
Sl
長さ30mm
----Lm
--混和剤 高性能AE減水剤 SP
ポリカルボン酸エーテル系 密度1.0(g/cm3)
補修材
エポキシ樹脂
E
超低粘度130(mPa/s), 引張20(N/mm2)以上
表2 実験要因
項目
水セメント比
短繊維含有率
原コンクリート
補修コンクリート
Lm2-補0c
Lm2-原コン
Lm2-補60c
3
2.2 実験方法
表3に試験項目を示す。原コンクリートの破壊靱性
Lm2-補0c
Lm2-原コン
Lm2-補60c
Lm1-補0c
Lm1-原コン
Lm1-補60c
6
Lm1-補0c
1
3
Lm1-原コン
Lm1-補60c
0
0.5
2
1
1.5
開口変位 (mm)
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
開口変位 (mm)
0.5
図2 靱性回復性(荷重-ひび割れ開口変位曲線と引張軟化曲線)
4
20
1)普通強度シリーズ(N-)
3
普通強度シリーズ(N-)
Lm原コン
L-series
S-series
L-series
S-series
15
Lm補Oc
Sm補0c
Lm原コン
Sm原コン
2
10
Sm原コン
00原コン基準
(1倍=3.4MPa)
1
Sm補0c
5
Lm補60c
Lm補6Oc
Sm補60c
00原コン基準
(1倍=68N/m)
Sm補60c
Lm補0c
Sm+Lm補120cはゼロ
0
0
1
繊維混入率(%)
Sm+Lm補120cはゼロ
0
0
2
1
繊維混入率(%)
2
図3 靱性回復性(初期結合応力と有効破壊エネルギー)
サイクル数
100
0
30
60
90
120
0
150
30
サイクル数
60
90
0
H-Lm02
H-Sm02
80
を評価すると共に, ひび割れ補修コンクリートに, 所
H-Lm01
H-Sm01
60
定回数の劣化外力(凍結融解0-120cycle)を加え, 再度靱
性と耐久性を評価し, 靱性回復ならびに耐久性維持効
1)普通強度シリーズ(N -)
9
2
表3 試験項目
項目
内容
フレッシュ性状 空気量(JIS A 1116), スランプ値(JIS A 1101)
原コンクリート
荷重開口変位曲線(L-CMOD), 引張軟化曲線(TSD)
破壊特性
有効破壊エネルギー(Gfu), 初期結合応力(σ)
凍結融解試験(JIS A 1148) サイクル数(0, 30, 60, 90, 120)
劣化外力
サイクル数:補修後20年程度の供用を想定(6回/年)
ひび割れ 破壊特性 荷重開口変位曲線(L-CMOD), 引張軟化曲線(TSD)
(0,60,120
補修
有効破壊エネルギー(Gfu), 初期結合応力(σ)
サイクル)
コンクリート
耐久性状 一次共振振動数(Hz)
(0,30,60,90 相対動弾性係数(%)
120サイクル) 質量変化率(%)
12
1)普通強度シリーズ(N -)
0
要因
0.6 (N-series), 0.3 ( H-series)
0%, 1%, 2% (体積比)
N –(00 / Sm01, Lm01 / Sm02, Lm01 / Sss01, Ss01, Sl01)
H –(00 / Sm01, Lm01 / Sm02, Lm02 )
[2004/06/01]
40
果を検証した。なお破壊特性は, くさび割裂試験によ
20
る荷重開口変位曲線, 多直線近似逆解析による引張軟
0
-10
120
150
H-Lm
H-Sm
N-Sm1
N-Sm2
-20
N-Sm01
N-Sm02
N-Lm1
-30
-40
N-Lm2
N-Lm01,02
-50
化曲線 2), 初期結合応力, ならびに有効ひび割れ幅
図4 耐久性維持効果(左:相対動弾性係数, 右:質量損失率)
0.5mmまでの有効破壊エネルギーにより, 耐久性は相
を基準値とした場合, 全試料において, 補修後の初期結
対動弾性係数ならびに質量損失により評価した。
合応力が増大している。また, 劣化外力を加えた後で
2.3 結果および考察
も, 繊維混入の場合は, 無混入の場合のように値が急激
図2および3に靱性回復性を, 図4に耐久性維持効
に低下することはなく, 繊維量, 繊維長に比例して靱性
果の結果を示す。なお, 本論文では, 既存住宅の躯体
回復効果が維持されることが確認された。これは有効
と同程度の強度を有する普通強度シリーズの結果を中
破壊エネルギーの結果からも同様に示されるといえる。
心にその結果を紹介する。
凍結融解作用による耐久性維持効果に関しては, 高
ひび割れに注入したエポキシ樹脂は, その基本特性
強度である場合, 繊維長, 繊維量に比例して, 維持効果
により, 初期剛性の回復に寄与するものと考えられる。
が増大し, 普通強度の場合は, その逆の性質を持つこと
荷重開口変位曲線と引張軟化曲線の履歴より, 原コン
が特徴ある結果として示されるといえる。
クリートにひび割れ補修を行うと, 降伏荷重が増大す
3 まとめ
る傾向が, 繊維混入の有無に関わらず確認された。凍
対象となる躯体および補修材における構成材料と,
結融解による劣化外力を受けた後は, 全体的に耐力は
その強度要因により, ひび割れ補修による靱性回復性
低下するといえるが, 繊維無混入の場合は, 劣化外力を
の評価に基づく補修工法の適否の評価および, 特定の
受けた時点で補修界面で試験体が破断し, 耐久性維持
劣化機構に対する耐久性維持効果の具現する仕組みの
効果は完全に消失するため, 短繊維が耐久性維持効果
概要を把握することができた。
に大きく影響することが確かめられた。
参考文献
1)コンクリートのひび割れ調査,補修・補強指針,2003
2)橘高義典ほか:コンクリートの引張軟化曲線の多直線
近似解析,日本建築学会構造系論文報告集,No453,1993
引張軟化曲線を推定する過程で導かれる初期結合応
力に関しては, 繊維無混入の原コンクリートの強度値
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
A21
[2004/06/01]
建物改修時の耐震補強技術に関する調査・研究
Investigation on Seismic Retrofit Methods for Rehabilitation Buildings
芳村 学(教授)
北山 和宏(助教授)
森田 真司(研究員(RA))
荒木 玄之( 協力者, 建築業協会)
梅野 岳( 協力者, 日本建築構造技術者協会 )
藤村 勝( 協力者, 建築業協会 )
Manabu YOSHIMURA (Prof.), Kazuhiro KITAYAMA (Assoc. Prof.),
Shinji MORITA (COE Res.(RA)), Tsuneyuki ARAKI (COE Collab., BCS)
Takashi UMENO (COE Collab., JSCA) And Masaru FUJIMURA (COE Collab., BCS)
ABSTRACT
Various techniques and methods have been developed for seismic retrofit of existent buildings since HyogokenNanbu Earthquake in 1995. The retrofit methods, however, are not always employed appropriately on the basis of
those structural characteristics and mechanics. The project investigated properties of many seismic retrofit methods
through questionnaire to construction companies, such as advantages, earthquake resistant performance, the duration
and cost of specific construction work and the possibility of successive occupation of the building during retrofitting
works. Evaluation of respective methods contributes to optimum application of the method which is suitable to
strengthen each existent building.
キーワード:耐震補強、建物改修、工法調査
Keywords: Seismic Retrofit, Rehabilitation, Method Survey
1.はじめに
改修工事への取り組み拡大に伴い、新しい改修工法の
1.1 調査の目的
開発、また免震工法、制振工法といった新しく開発さ
兵庫県南部地震以降、耐震性能の劣った既存建物を
れた工法が適用される事例も増加している。
補強することの重要性が再認識され耐震診断および耐
本調査では耐震改修工法の調査(アンケート調査)
震補強が積極的に推進されるようになった。それにと
および工法の適用事例について取りまとめを行う。ア
もない、さまざまな耐震補強技術・工法が開発されて
ンケート調査は、現時点において開発されている工法
実用に供されているが、それぞれの力学的な特性・特
のねらい、工法の特徴等を調査し、更に居付き補強
徴に基づいた適正な使用が為されているかどうか疑わ
(対象住戸が工事中も居住可能であること)の可能性
しい事例も散見される。そこで本プロジェクトでは、
も調査することとした。工法適用事例については、①
さまざまな耐震補強技術・工法を調査し、その特徴・
強度靭性型の部材補強、②強度靭性型のフレーム補強、
利点、補強設計時に注意すべき事項および使用例を整
③制振補強、④免震補強、⑤床補強、⑥その他の工法
理する。これによって既存建物の構造特性を生かした
に分類して調査した。
最適な耐震補強工法を選定するための方法・手法を構
2.アンケート調査
築し、あわせて耐震補強技術の一層の発展に役立てる。
2.1 アンケートの方法
1.2 調査の基本方針
耐震改修工法の現状を把握するため主として建設
既存建物の耐震改修は、新たに建設する場合に比
業界を対象に耐震改修工法に関するアンケートを実
べ課せられる制約条件が多いのが一般的である。それ
施した。耐震改修工法・実施例の調査を行うにあた
だけに、改修計画、改修設計を進めるにあたっては対
り調査項目として以下の5項目を重点的に設定した。
象とする建物の構造的特徴、改修にあたっての条件等
(a)改修工法のねらい
に適した工法を採用することが、よりよい改修を行う
(b)工法・実施例の特徴等
ことの必要条件である。
・工法の概要
米国における1994年のNorthridge地震、我が国にお
・工法の性能
ける1995年の兵庫県南部地震を契機として広く既存建
・工法の仕様
等
物の耐震改修の必要性が指摘され、改修工事に対する
(c)工法・実施例の標準的な工期・工費
取り組みが開始されたのは前述のとおりである。また
(d)適用事例
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
(e)共同住宅へ適用する場合の居住者への影響
送付したアンケートのフォーマット作成にあたり静
岡県が実施した過去の調査 1)及び建築研究振興協会
の報告書2)を参考にした。
2.2 アンケート調査結果と分析
アンケート先は50社にのぼり30社(47件)の回答
を得た。アンケート調査結果をまとめて一覧表を作
成した。ここでは表-1にA社の制振ブレース工法
の例を示した。一覧表には工法の名称、提案会社名、
工法・実施例の狙い、工法・実施例の概要、標準の
工期・工費、居住者への影響を含む一覧が示されて
いる。また各工法は種類別に分類した。無回答の項
は空欄とした。
一覧表を基に改修工法・実施例の狙いの内訳を図
-1に示す。強度補強と靭性改善を狙った工法が全
体の過半数を占めた。建物の用途変更を伴う改修で
は床スラブや耐震壁の撤去が必要になることがある。
今回のアンケート結果では床スラブ撤去時に併用で
きる可能性がある工法は全体の8%程度であった。床
工法名称
制振ブレース工法
改修工法・実施例のねらい 強度補強、靭性改善
雑壁などを有して剛性の高い既存建
工法・実施例の概要
物にも有効な制震ブレースである。
1/1000rad.の小変形で降伏し、耐震
壁がせん断破壊する変形時に十分な
制震効果を発揮する
工法・実施例の特徴
1.0t/㎝2の極低降伏点鋼を用いたブ
レースで、取り付けは枠組工法のモ
ルタル接合部による
①
同じ位
標準の工期*1
②
3.5ヶ月
③
①
在来工法に比べて高い
標準の工費*2
②
一構面あたり3500千円
居付き補強の可能性
居住可能
住戸内立入り
あり(30日/戸)
住戸使用不可
あり
バルコニー立入り
補強位置による
居
居住者一時退避
あり
住
者 廊下・階段の通行支障
間取り変更
へ
居室内に壁またはブ
の
影 レース増設
響 改修後住戸使用不可
騒音・振動・塵埃
バルコニーがない部分
の外部足場
その他
*1
スラブ補強を狙った工法の中には実施例が乏しいも
のやその効果に疑問があるものが含まれていた。こ
のような工法については再度の聞き取り調査や実験
による検証が必要となる。また居付き補強が可能で
[2004/06/01]
表-1 アンケート調査結果の例
*2
①3~4階建ての学校校舎に枠付き鉄骨ブレースを適用する場合の
標準的な工期(一ヶ月程度)と比較した場合の工期
②10階建SRC造共同住宅(50m2/戸、1階当り10戸)を施工する場
合の工期
③改修に必要な概算の工期(一単位当り)
①在来工法(枠付き鉄骨ブレース工法または鋼板巻き工法)と比較
した場合の工費
②1単位あたりの工費
あると回答された工法は全体の70%にのぼった。こ
の場合も居付きの程度に認識差が生じている可能性
があるため注意が必要である。床スラブ・耐震壁撤
去に使用できる可能性及び居付きの可能性について
その他
9%
床スラブ遮
音性能向上
1%
は建物改修・耐震補強との関係が深い問題であるた
耐震改修工法に関する調査のアンケート結果につ
いては、アンケートで許可を得た範囲内で、なるべ
強度補強
33%
床スラブ
補強8%
め今後の詳細な検討が必要である。
2.3 アンケート評価の留意点
低騒音・
塵埃減少14%
エネルギー消費
を狙う制振
10%
靭性改善
23%
入力低減を狙う免震2%
く加工を加えないデータを資料としてまとめた。ア
各工法の狙
いの総件数
(91件)を母
数として計
算した
図-1 工法・実施例の狙い
ンケート先より提供された工法に関する研究論文、
パンフレット等は多数にのぼった。また、本アンケ
法を選定し、必要な場合は実験等を行い、最終的に
ート中の工期・工費などは、対象とする建物の条件
実際の改修事例に対して最適な耐震改修工法を選定
をある程度、特化する必要があること等に十分留意
するための方法・手段を提案していく予定である。
すべきである。
3.調査結果のまとめ
実務を担う建設業界に対してアンケート調査を行
謝辞
本研究は独立行政法人建築研究所及び都市基盤整備
公団と共同で行ったものである。
い、50社から47件の工法について解答を得た。この
結果、現在の耐震改修工法は強度補強、靭性改善を
狙ったものが過半数を占めていた。また床スラブ撤
去時に併用の可能性がある工法は全体の8%程度しか
なかった。今後は、これらの工法の中から有用な工
□参考文献
1) 静岡県:既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修工
法、2000.8.
2) (社)建築研究振興協会:集合住宅の耐震改修技術に
関する開発研究 報告書、1999.3.
Ⅲ〔パ(姉f【大`7:21世紀COIiプログラム
に大都市也婆ストプクの歌iiW・史新彼ihfFl戊
[20010601]
l)小・clopIncnlorTcchnoloRicsforA《、liwotionand Rcnc函1 o「BuidjnRSl()(.k爵inMpRalopolis
回…里繍lfIi;W言ii`iWiih禰誇…
松本真澄(助手)西田司(助手)
小川仁(修士課程)原浩人(修士課程)
MaSumiMATSUMOTO(ReSASsoc.).OsamuNISHlDA(Res・Assoc)
HiloshiOGAWA(MasterCou応e)andHiroloHARA(MaslerCou応e)
ABSTRACT
misisacasesludyonthep「ocessofconsemsusmakingmTenewalandrebuildingofhousingesIales・me
residenceconcemedwasbuiIlinl958inTbkyo,thediscussionofilsoore-developmentwheIdsincel974andbecoming
especiallyactivesincel995・Welracelhehislo「yo「proceedingsandanaIyzetherebuildingpIanssubmitted・Through
allendanceandobse「vationatmeelings,aswelIasintewiewingseveralresiden(stoknowtheiTopinionsonacluals【a【us
oflivingandonrebuiIding,weproposedouroriginaIpIanofrenewaland「ebuiIding.
Keywords:RebuiIdofCondminiums
キーワード:マンション建て替え
進行している。また、分譲当初より社宅が多く、個人
1はじめに
分譲集合住宅の史新には、所有者の合意形成が不可
所有者とは建替えについての意識が異なっている。ま
欠である。マンション達替え円滑化法、区分所有法、
都市計画法が整備、改正されるなど、マンション達替
えの制度面は整いつつあるが、合意形成手法、事業手
た、区分所有法が出来る以前の建物であり、土地の所
グククh
/'
法、計画手法については多くの課題を抱えている。ま
た、分譲マンションについては、連替えの成功事例は
いくつか紹介されているが、大規模な改修事例につい
ては現在ほとんど見られない。そこで、昭和30年代初
夕
期に分譲された都区部に立地するA団地を対象に、団
地の趣替え計画の参与観察を通じて、合意形成のあり
方と計画決定のプロセスについて調査を行い、全面趣
亀
露
替え計画に加えてそれ以外の史新手法として部分達替
えや改修等の具体的な提案を行う。
2.対象団地の特徴
対象団地は、住宅公団により1958年に分譲され、全
昭和49年
われ公園の様な緑豊かな住環境となっている。図1,
昭和57年
M2に示す通り、建物はテラスハウスと中層棟で構成
350脚
の砠臣
118戸
ゴーーー
テ9スハワス■
--------q
匹中垣
LX車台■合針,
23をP
的150白
669
“|跡
平成5年4月
‐|》一蠅
醗雨一厘四個
‐個一‐‐「「l「
oBmlll
臥訴”抑駆一
輻輌一一
コンクリートブロックa
、毎挺室ならびに再開兜検肘晏口金(S596~S626)
再閲発委貝会の股■(S626~Hl3)
平成元年10月
`平成7年1月
平成7年1月
△P
眺舗.
住宅・翻市旦個公団より
組合貝に対して等価交換事案提案
再開発携泄要員会の股■
再開発の樋ilt蛆也鰻宜の足非を問うアンケート実施
(阪神淡路大震災の発生〉
再閲発委貝会(現在の推迅組磁)の殴低
平成10年5月
再閲発基本相連乗の作成
再閲尭基本計画案の作成
平成12年3月
再66発基本針画室(繭2回)の作成
平成9年4月
テラスハウス仰2■
住戸■合股
昭和59年
昭和63年
餌迅丘筋コンクリート山
一一一一一一
住宅・都市塾■公団により
昭和62年
1日■・姐辺中田位■■△町
IIP
昭和58年
月月月
され、テラスハウスは個々人により増築等が行われ手
田辺鮫■コンクリート血
碑窪曇貝会の股■(S476-S493)
再開発検鮒委日会の股■(S496~S523)
1,窪惚宝改宝垂貝会の股■(S576~S596)
「改画方箪検肘頂査」実鹿
入れがなされているが、中屑棟はキ11対的に老朽化が
---------■---------
666
昭和4フ年
て設計されている。46年を経過し、成長した樹木に霜
-町1,$ ̄~.~ ̄--h36ob
-5-分随
堀
月月月
体計画は津端修一氏、住戸の一部は前川国男氏によっ
図・1現短醜過囲
平成14年10月
「マンションのR■て甘えの円滑化軒に田する法律」
に基づいて建て笹え$栞を迫めることを決める
平成15年2月
参加組合予定者を函時健会にて承座
図・3皿瞥え検肘の経過橿要
図・2土地.建物橿要及び現状写真
-24-
11〔京師京大7:21世紀COIiプログラム
巨大郁市建築ストソクのljWi・史新技術育成
DcwIopmcnloI,TcchnologlcsrorAcliwllionandRcIuPwalorBuidinIHSlo(・ksiIu1lcRalopolis
有関係は共有地の中に占有地が浮かんだような状態で
存在しているなど、連替えにあたっては法的に難しい
[2004/06/01]
て感覚の居住スタイルを維持したいとする意見も存在
する。
問題を抱えている。
これらの意見をもとに、現行の6階建て計画案とほ
ぼ同じ容積率を確保した、3階建てのタウンハウスの
提案を行った(図7)。
3.建替え検討過程と運替え案
建替えの検討については、昭和49年に再開発検討委
員会が設置されるなど比較的早い段階から意識されて
いるが、現在の再開発推進組織は阪神淡路大震災を契
機として平成7年に設置されたものである(図3)。
平成10年に区が作成した報告書の土地利用計画図にお
いて囲み型の中層棟を中心としたプランが示されてお
り(図4)、現時点での運替えプランも概ねこの計画
5.今後の進め方
今後は、部分連替えやリノベーションなどの提案を
行うとともに、地域のまちづくりNPO、JIAの地域会と
協同して、勉強会等の開催を通して居住者及び周辺住
民に対して情報提供や理解を深めるための活動を行
い、こうした活動を通して居住者の合意形成過程を明
案に沿って立案されている(図5)。この地域の都市
らかにしていく。
計画規制は、第一種低層住居専用地域、第一種高度地
区、建ぺい率50%、容積率100%となっているが、現行
計画案では地区計画をたてることにより容積率の緩和
蕊
、
を求めている。
4.住まい方調査と設計提案
現状の居住状況を把握するために、テラスハウス居
住者(4事例)に対して住まい方調査を行った。ヒア
リングと家具配置などのマッピングを行い、テラスハ
ウスの使い勝手などを抽出した(図6)。テラスハウ
ス居住者の中には、狭さ、天井高の低さ、設備などに
ついての不満は存在するものの、現在の庭がある戸建
簔藝
;
.■あるのがうれしい.
〆
,リ’没泪伯が干せる.子供も
シ’週べろo
'卜「嚇鑓W鼠雄。
’1
|・生活■紐が短い.
など
;|蝋愚iii縦'’
ツu家具が低げない、
卜・昭殿の勾田が幻で危ない‘
|・WIi鯛雛削'’
’0
的54300
擬迂E三=。I
計画案橿要(H15.10)
ガラス■uの■■
■席
■田
KtのⅢ
①
2階平面図
一難、
ご已猷&(
Bこられる
ロ圧び$でn℃
$曰がB■しE
あてて干せ&
ちび&て
1階平面図
図・6住まし1方IHI五
Iテラスハウス■・Rn1位
でぬ
■周り
・筑面研や睨衣所といった,
’ユーティリティスペース|’
l中■柱(ABC‐1C-2柾)
堅戸已辺
図・4土地利用針画室(H103)図・5
FlW脳い…
的54600m
FU5z5~百万万百戸
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東京郁立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
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回
2004/06/01
ベトナム・ハノイの近代集合住宅の改善計画
PIOjectfbrRehabilitationofModemCollectiveHousmg
mHanoi,Viemam
山田幸正(助教授)岸田慎司(助手)
西田司(助手)藤江創(IiH究員)
YUkimasaYAMADA(Assoc・Prof),ShinjiKISHIDA(Res・Assoc.)
OsamuNISHDA(ResAssoc.),SohFUJ正(COERcs.)
ABSTRACT
SinceU】el950s,thBgovenmnentofVieu凪mbasconsuucoedvmoustypesofcoUectivehousingestauesmHanoLsomeofwhich
w巳にsuppomedbythetechnicalaidsfumlheiblm2TSovietUnionandNorlhKmEasuchasplEcastconcxcにpanelslnlhesUbmpica]
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キークーパ回【#!'.謎会主義亜ii鶏AプZ/キャストコンクリート
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1.はじめに
どうかの問い合わせを行なってきた。また同時に、実現
ベトナムは1950年代以降、旧ソビエトなど社会主義諸
可能性も含め、本研究の対象としてふさわしい物件の検
国からの援助を受けながら、首都ハノイをはじめ主要都
索も進めてきた。その結果、11月末頃、ハノイ建築大学
市において、増大した都市民を対象として国営の集合住
建築学部および都市計画学部から好意的な反応が寄せ
宅団地を数多く開発してきた。高温多湿の亜熱帯性気候
られた。
のなか、四角い箱型のいわゆるモダニズム建築として現
これを受けて、本年3月末、現地ハノイ建築大学にお
在40~50年を経たこれらの集合住宅は、構造的にも、設
いて先方との打ち合わせ会合が開催された。そこでは、
備・機能的にも、また美観的にも大いに老朽化してきて
今後たがいに協力して調査研究を展開していくことが
いる。近年、資本主義的な市場経済を積極的に導入する
合意された。あわせて研究対象の候補としてベトナム側
ドイモイ政策が進展するなか、とくに都市部において各
が推薦する集合住宅地を訪れ、具体的な調査・研究の方
種の電化製品、バイクや自動車などの工業製品を大量に
法や課題について意見・情報を交わした。
消費する市民層が台頭してきている。また、個人による
住戸の改修や転売なども認められるようになったとも
3.分野ごとの目標
聞く。こうしたなか、個人の嗜好の多様化を反映して、
31良好な都心型住宅地の形成(計画)
住宅に対して改変への要求はかなり増大しているもの
70年代までに建設された集合住宅地は、すでに郊外で
と考えられる。
はなく、都市の中心的な地区にとりこまれつつある。し
そこで、本研究プロジェクトでは、1960年代から70
年代に建設され老朽化した集合住宅団地およびそれを
かし、建物の老朽化が進み、地区としてかつての社会的
榊成する各住戸に顕在化しつつある都市的・建築的な諸
盤沈下がおこりつつある。こうした現状を踏まえ、新た
問題を整理し分析するとともに、ひとつの建築ストック
な都市的魅力を創出し、地区全体の賦活・活性化をはか
としてそれを活かしながら、新たな価値や機能を付与し
るための、住宅地計画および建築計画における新たな手
なステイタスはかげりを見せはじめ、いわゆる地区の地
た都市型集合住宅に改善するための計画手法を検討し、
法を検討し、提案する。
ペトナムにおける将来あるべき都市の集住居住のあり
3.2新たな都市デザインの導入(意匠)
方を提案することをめざす。
これからのあるべき都市型集合住宅としての住戸プ
ランを提案することにより、それぞれの住戸をより快適
2.これまでの研究の経緯
で住みよいものとするだけでなく、とくに主要街路に面
ベトナムにおいて本研究プロジェクトを効果的に実
したファサードや1階部分などを大胆に改修・変更し、
施していくために、平成15年9月以降、関連するベトナ
新たな都市機能や意匠をはめ込むことにより、建物その
ムの公官庁や公的機関、大学などの研究機関などに対し
ものの価値を高めるためのデザイン手法を検討し、提案
て、調査や情報提供などの協力や助言などが得られるか
する。
-26-
東京HKiI大学21世紀COEプログラム
巨大那市述築ストックの賦活・史新技術行成
DcveIopmentoITechnoIo2iesIbrACIivalionandRencwalofBuiIdinE SlocksinMeEalopoIisIZOO4/06/011
33新たな住戸プランやデザインに対応した構造補
強法の提案(嫡造)
地震や強い台風による被害は想定したくてもよいが、
老朽化による巡物各部の補修や補強が必要である。さら
には、上述のような建築計画・意匠上の検討から提案さ
れる新たな住戸プランや建物デザインなど多様な要求
に対応した構造補強の理論や手法を検討する。狭陰な住
戸をより快適なものとするために壁や床を大胆に抜い
た住戸プラン、1階部分などを中心とした用途変更にと
もなる構造体の変更、階段やエレベーターの改修や増設、
ベランダやバルコニーの拡張や付加などが想定されよ
う。
34自然通風などによる持続的な環境維持システムの
構築(環境)
高IHI多湿なIli熱帯性気候という生活上厳しい条件下
においても、過度の機械設備に頼らず、極力自然の通風
や換気を利用することによって、建物内の温熱環境を快
適なものに制御維持するシステムを検討し、提案する。
3.5若手の建築家や研究者に対する啓蒙と技術移転
(その他)
急激な経済発展にともなって、郁市の内外いたるとこ
ろで、急速かつ大規模な開発行為が計画され、大都市化
がますます進行しつつある現状を踏まえて、スクラッ
プ.アンド・ピルトによる従来からの述設のあり方や方
法とは異なる革新的な考え方や理論を、具体的な事例に
ついての調査や研究を共同して行うことを通じて構築
し、将来これを実践することをめざす。地球環境と人類
郁市文明の調和をめざしたこうした議論を次世代にお
いても大いに発展させるために、とくに若手の述築家や
研究者に参画・協働してもらいながら、新たな方向性を
模索する。
4.ハノイ建築大学での会合と現場視察(3/29)
成)を紹介した。若干の議論・検討の後、ベトナム側は
本研究プロジェクトを大筋において了解し、協力して実
施していくことに合意した。
42研究対象候補選定のための視察
昼食後の午後2時頃から4時頃まで、研究対象の候
補となる集合住宅の視察を、日越合同で行なった。
チュン・トゥ地区:ハノイ旧市街(ホアキム湖周辺)
から南に5キロほどに位置する。1974年から78年に建
設された集合住宅団地で、旧ソビエト製のプレキャス
トコンクリート板による5階建て建造物。いずれも斜
路つきの階段室に片廊下型。主要な幹線道路に面する
ブロックから団地内の街区道路沿いのブロックまで
広範囲に立地。主要道路沿いだけでなく、街区道路沿
いにも1階には店舗が並び、建物の1階から2階部分
や建物隅部分の住戸に改装・増築が著しい。街区道路
沿いの住棟の2階住戸内部を見学することができた。
入口の位置を変え、住戸奥側を墹築し、また共用通路
を挟んだ反対側、1階墹築部分の屋上部分に屋根を架
け、吹き放しの物干し兼居間に改装していた。
キムリエン地区:主要幹線道路を挟んでチュン・トゥ
地区の反対側。1958年頃北朝鮮の技術援助による小型
PC板による3階述てで、やはり片廊下型集合住宅。主
要街路沿いの住棟内部を見学。チュン・トゥ地区のも
のより階商が高く、便所は共用。見学できた2戸の住
戸ではいずれも、高い階高を利用して住戸内部に木造
で中二階を作っていた。
5.今後の予定と問題点
視察を終え、午後5時から6時半頃までホアピン・
ホテル1階において、総括の会合をもち、今後の予定
と解決すべき課題などについて話し合った。
これまでのところ、総合的に判断して、本研究プロ
ジェクトの対象は、チュン・トゥ地区の団地とするこ
4]ハノイ建築大学での会合
2004年3月29日午前9時半より12時半までの間、ハ
ノイ巡築大学柵内の会議室において、本研究プロジェ
クトの実施にかかわる打ち合わせ会合が、以下の通り
開催された。ハノイ建築大学からは、ダン・ドゥク・
クゥアン建築学部副学部長、ルオントゥ・クゥエン
都市計画学部教授、プゥ・アン・カン氏はじめ、若手
研究者4名の計7名が参加し、都立大学からは、山田
幸正、岸田慎司、西田可、藤江剣、チャン・ティ
クェハーの計5名が参加した。
ロ本側からは、都立大学21世紀COEプログラムの概要、
本研究プロジェクトの概要および分野ごとの目標、調
査・研究の実施方法とその工程などについて説明し、あ
わせて日本における集合住宅の改築事例(門脇餅三氏作
-27-
とがまず、確認された。つぎに、今後、ハノイ市にお
ける50年代以降の集合住宅団地や建設の経緯にとも
なう資料やとくにチュン・トゥ地区の建物に関する資
料を可能な限り、収集することをベトナム側に依頼し、
了解された。ただし、70年代のPC板の詳細な図面や構
造的なデータを検索できない可能性があることがベ
トナム側から示された。また、今後、調査内容や調査
工程など互いに調整しながら、適宜できるだけ柔軟に
対応していくことが確認された。
参考文献:
PiqTCClmem&N釦halicl型rT唾HaNoiC11ulO'cuanhungdDilhay;Hinh
Ihajkjmm』cvadoduioNXBKlmqlmcvakyIhuaL2003
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
A51
[2004/06/01]
木造戸建住宅活用手法・設計
―横浜市内の木造庫裡の断熱改修及び構造補強計画―
New Methods for Insulation improvement and Structural Reinforcement
of wooden Japanese traditional house in Yokohama
-
-
小泉
須永
藤江
雅生(助教授)
修通(助教授)
創(COE研究員)
藤田
永田
金箱
温春(協力者,金箱構造設計事務所)
香織(講師)
明寛(助教授)
Masao KOIZUMI (Assoc. Prof.) Kaori FUJITA (Assis. Prof.) Nobuyuki SUNAGA (Assoc. Prof.),
Akihiro NAGATA (Assoc. Prof.) So FUJIE (COE. Res.)
And Yoshiharu KANEBAKO (COE Collaborator, Kanebako Structural Engineers)
ABSTRACT
Most of Japanese houses built in 1960’s, 70’s do not have enough performance from the point of view of structure
and insulation. Two kinds of panels, one is made of expanded metal sheet and the other is of acrylic board, are
proposed for structural reinforcement. Also hybrid insulation methods, hard insulation board with foaming styrene, are
proposed for improving insulation performance.
キーワード:戸建て住宅、構造補強、断熱改修
Keywords: Detached House, Structural reinforcement, Insulation improvement
1.本研究の目的
高度経済成長期に建築された多くの木造戸建住宅は、
内・外装の老朽化に加えて、耐震性能や断熱・気密性
能の不足から建替えを検討されるケースが多い。特に
近年、要求される住宅の水準は高くなっており、新築
住宅と比較した場合の性能の不足が、旧来の住宅への
大きな不満となっている。
一方、消費社会への反省から、こうした住宅に手を
加えていくことを楽しむような傾向も現れてきている。
リセットするのではなく、既存の事物を活かすことで、
新しい空間の可能性を切り開こうという試みである。
写真1 対象木造庫裡
本研究では、こうした社会的な流れをくみながら、
構造性能や断熱気密性能を向上させつつ、既存の木造
架構を活かしデザイン的にも優れた改修空間を作り出
す設計手法を開発することを目的としている。
2.木造戸建て住宅活用の設計提案
2.1 設計対象
対象とする建築は、横浜市内に建つ木造の庫裡であ
り、昭和45年から平成2年にかけて3度にわたって増改
築が繰り返された建物である。1階和室部分の内装は
真壁造となっている。
既存建物の構造的な性状を把握するため、部分的に
図1 平面図、立面図
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2004/06/01]
仕上を撤去して軸組調査を行い、さらに微動測定を行
った(写真2)。固有周期は約4.5Hzであり、この時期
に建設された住宅として平均的な固さであった(グラ
フ1)。また、軸組模型による検討を行い、増改築を
繰り返した結果、構造的な力の流れが不自然であり、
耐力も不十分であることが判明した(写真3)。
y断熱材はGWが敷設されているものの、下屋部分
などで隙間が目立ち、又住人へのヒアリングからも十
写真2 微細動実験
グラフ1 固有振動数グラフ
分な断熱性能が確保されているとは言えない状況であ
った。
2.2 設計提案
常時微動測定本計画は、北側の棟は建替え、南側の
棟は1階和室を可能な限り現状のまま残し、2階は全
面的に改修を行うというものである。特に南棟1階の
写真3 軸組模型
真壁造部で仕上げ厚の制約のある中でいかに構造補強
・断熱改修を行うかが課題となった。
構造に関しては、エキスパンドメタルや木格子、ア
クリル板などを用いたパネルを欄間や開口部に嵌合さ
せることで、透過性・採光を保持しつつ補強を行う。
断熱に関しては、高性能の板状断熱材を既存軸組に
充填していく。既存軸組の精度や補強金物などの障害
物によって生じる断熱材周囲の隙間を充填するために、
図2 構造補強パネル試験体
板状断熱材と発泡系もしくは変形性能の大きい断熱材
とを組み合わせて、断熱改修を行う。
3.構造補強解析及び実験
想定される構造補強パネルについて、それぞれ構
造解析を行った。図2はその中の一つである。今後
作成した試験体への加力を行い、解析結果との違い
を検証する予定である。
図3 構造補強パネル配置図
4.断熱改修実験
想定される断熱改修手法について、それぞれ試験体
を作成(図4)し、人工気象室において温度変化の計
測を行った。断熱材の隙間から熱が逃げる様子をサー
モカメラで撮影したものが写真(写真4)である。
又、断熱材を充填するのにかかった時間を測定し、
施工性についての検証を行った(写真5)。
5.展望
図4 断熱改修試験体
以上の調査・実験をもとに、最終的な構造補強・断熱
改修手法を確定し、実地に施工を行い、さらに竣工後
は性能測定・検証を行う予定である。最終的には真壁
造の和風建築を対象として、デザイン性を継承しつつ、
機能面でのフレキシビリティを損なわずに、①耐震補
強、②断熱強化を行うため設計手法の開発を目指す。
写真4 サーモカメラ画像
写真5 施工風景
Fly UP