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コンピテンシー理論に基づく保育士養成教育の研究 高山 静子 (東洋大学

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コンピテンシー理論に基づく保育士養成教育の研究 高山 静子 (東洋大学
コンピテンシー理論に基づく保育士養成教育の研究
高山 静子
(東洋大学/准教授)
( 平 成 23 年 12 月 取 得 )
【章構成】
序章 研究課題の設定と方法
第1節 研究の課題と背景
第2節 研究の方法と本論の展開
第一章 保育士を巡る諸問題と保育士養成教育の課題
第1節 保育所における人権侵害
第2節 誤解が招く構造の質の低下
第3節 保育士養成教育の歴史的経緯
第4節 保育士養成教育の現状と課題
第5節 小括
第二章 コンピテンシー理論に基く専門職の養成教育と保育士養成教育
第1節 コンピテンシー理論の概要
第2節 コンピテンシー理論を養成に用いる効果と限界
第3節 専門職養成におけるコンピテンシー理論導入の経緯
第4節 コンピテンシー理論の導入による力量確保
第5節 小括
第三章 保育士のコンピテンシーの析出とリスト化
第1節 コンピテンシーリストの構造の検討
第2節 生活の場面におけるコンピテンシーの析出
第3節 遊びの場面におけるコンピテンシーの析出
第4節 コンピテンシー項目の精選と決定
第5節 子どもの保育に関する技術目標のリスト化
第6節 小括
第四章 コンピテンシー理論に基づく保育士養成教育の方向性
第1節 析出されたコンピテンシーと新・旧養成課程の比較
第2節 析出されたコンピテンシーと先行研究との比較
第3節 コンピテンシーに基づく養成教育の仕組み
第4節 コンピテンシーを養成する教員の質の確保
第5節 当事者学の構築による教育内容の確保
第6節 小括
終章 本研究の成果と課題
第1節 本研究の要約
第2節 研究の知見
第3節 研究の限界と残された課題
参考文献一覧
資料編
【概要】
本 研 究 は ,現 行 の 保 育 士 養 成 課 程 に は 保 育 所 の 保 育 士 に 求 め ら れ る 専 門 性 の 高 さ と 養 成 の 仕
組 み に 乖 離 が あ る ,養 成 す る 力 量 が 不 明 確 で あ る と い う 二 つ の 問 題 意 識 か ら ,保 育 士 の 力 量 を
確 保 す る 養 成 方 法 と し て コ ン ピ テ ン シ ー 理 論 に 着 目 し ,コ ン ピ テ ン シ ー 理 論 に 基 づ く 保 育 士 養
成 教 育 を 研 究 す る も の で あ る .保 育 士 は 保 育 所 以 外 の 児 童 福 祉 施 設 に も 勤 務 し ,職 務 に 必 要 な
力 量 は 生 涯 に 渡 っ て 獲 得 す る も の で あ る が ,本 研 究 で は 保 育 所 の 保 育 士 が 職 務 に 携 わ る 時 点 に
お い て ,子 ど も の 生 命 を 守 り 人 権 を 侵 害 し な い 最 低 限 度 の 力 量 を 検 討 す る こ と を 研 究 の 範 囲 と
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した.
第 一 章 で は 保 育 士 を 巡 る 諸 問 題 と 養 成 教 育 の 課 題 の 整 理 を 行 っ た .保 育 士 に は 国 家 試 験 が な
く 課 程 の 修 了 に よ っ て 資 格 取 得 が 可 能 で あ る .し か し 職 務 の 性 質 上 ,個 々 の 保 育 士 の 力 量 の 不
足 は 子 ど も へ の 人 権 侵 害 と 事 故 を 招 く 可 能 性 が あ り ,職 務 に 就 く 段 階 で 一 定 の 力 量 確 保 が 不 可
欠 で あ る こ と を 論 じ た .保 育 所 は 開 設 当 初 生 活 困 窮 者 の た め の 福 祉 施 設 と し て 開 設 さ れ ,児 童
養 護 施 設 と 機 能 が 近 い 施 設 で あ っ た . 保 育 士 は 半 世 紀 以 上 無 資 格 で あ り , 平 成 15 年 に 保 育 士
資 格 が 法 律 に 位 置 づ け ら れ る な ど 法 整 備 が 遅 れ て い る .こ れ ま で 保 育 士 の 専 門 性 の 確 保 や 国 家
資格の検討が行われなかった背景として保育士養成と検討における当事者の不在を要因とし
て指摘した.
第 二 章 で は ,保 育 士 の 力 量 を 確 保 す る た め に コ ン ピ テ ン シ ー 理 論 の 概 要 と 専 門 職 養 成 へ の 活
用 の 具 体 的 な 方 法 を 検 討 し ,保 育 士 養 成 へ 援 用 し た 場 合 の 効 果 と 限 界 を 探 っ た .コ ン ピ テ ン シ
ー の 析 出 は 仮 説 を お か ず に 職 務 の 当 事 者 が 持 つ 力 量 を 析 出 す る 方 法 を と り ,そ の 項 目 は 行 動 で
示 し 定 義 化 の 必 要 の な い 日 常 言 語 を 使 用 す る た め 自 己 評 価 と 学 習 を 促 し や す く ,養 成 す る 力 量
の目標項目として専門職の養成で導入が行われていることを確認した.保育士養成教育では,
共有化されている専門知識と技術がほとんどなく養成する力量が不明確であるという現状と
照 ら し 合 わ せ て ,職 務 の 当 事 者 か ら 知 識 や 技 術 を 析 出 し そ れ を 教 育 目 標 と し て 用 い る こ と は 保
育 士 養 成 教 育 に 一 定 の 効 果 を も た ら す と 考 察 で き た .し か し ,コ ン ピ テ ン シ ー は ,養 成 す る 教
育内容と教育目標の検討材料として用いることや養成において個人の能力を確保することに
は 有 効 性 を 発 揮 す る が ,場 に よ っ て 個 人 の 能 力 の 発 揮 は 制 限 さ れ る た め ,コ ン ピ テ ン シ ー の 保
有が必ずしも保育所における能力の発揮にはつながらないという限界を有していた.
第 三 章 で は ,保 育 士 の 養 成 課 程 の 目 標 項 目 と な る コ ン ピ テ ン シ ー の 析 出 を 行 っ た .職 務 当 事
者 の 質 的 デ ー タ か ら コ ン ピ テ ン シ ー を 析 出 し 生 活 場 面 23, 遊 び 場 面 24 の コ ン ピ テ ン シ ー を 析
出 し た .次 に コ ン ピ テ ン シ ー リ ス ト と 技 術 リ ス ト の 作 成 を 行 い ,そ の 構 造 化 の プ ロ セ ス を 説 明
し た .コ ン ピ テ ン シ ー リ ス ト は ,コ ン ピ テ ン シ ー を 養 成 課 程 の 検 討 や 養 成 ・ 研 修 に 用 い る た め
に 活 用 が 可 能 な 形 式 に コ ン ピ テ ン シ ー 項 目 を 羅 列 す る も の で あ る .初 め に 類 似 す る 職 種 の 先 行
研 究 の 構 造 か ら リ ス ト の 構 造 を 考 察 し ,実 践 の 対 象 と プ ロ セ ス を 合 わ せ た 構 造 と し た .析 出 さ
れ た コ ン ピ テ ン シ ー に 加 え ,保 育 士 を 含 む 子 育 て 支 援 者 の コ ン ピ テ ン シ ー リ ス ト ,遊 び 場 面 に
お け る 保 育 士 の 知 識 と 技 術 ,生 活 場 面 に お け る 保 育 士 の 技 術 等 の 先 行 研 究 の 結 果 を 加 味 し そ れ
ぞ れ の 項 目 を 考 察 し た .連 携 に 関 す る コ ン ピ テ ン シ ー ,専 門 職 と し て の コ ン ピ テ ン シ ー は「 全
国 保 育 士 会 倫 理 綱 領 」 か ら 項 目 を リ ス ト に 加 え た . ま た 経 済 協 力 開 発 機 構 ( OECD) の DESECO
プ ロ ジ ェ ク ト が 開 発 し た キ ー・コ ン ピ テ ン シ ー を リ ス ト に 加 え ,保 育 士 独 自 の コ ン ピ テ ン シ ー
と ,多 様 な 職 業 に 共 通 す る コ ン ピ テ ン シ ー を 分 け て 示 し た .リ ス ト に は Ver.1 と 明 記 し 随 時 改
定する性質を持つことを示した.
第 四 章 で は 析 出 さ れ た コ ン ピ テ ン シ ー と 現 行 の 養 成 課 程 の 比 較 を 行 い ,保 育 士 養 成 課 程 の 課
題 を 明 ら か に し た . 平 成 23 年 か ら 施 行 さ れ る 新 養 成 課 程 は , 旧 保 育 士 養 成 課 程 と 比 較 し て 大
幅 に 保 育 士( 保 育 所 )の コ ン ピ テ ン シ ー と 一 致 す る 科 目 と 科 目 目 標 が 増 加 し ,コ ン ピ テ ン シ ー
と 一 致 す る 方 向 へ 改 正 が 行 わ れ て い る こ と を 確 認 し た .ま た 比 較 か ら 養 成 課 程 に 不 足 す る コ ン
ピ テ ン シ ー を 明 ら か に し た .保 育 士 養 成 課 程 は 過 密 な 課 程 と な っ て お り 本 研 究 で 析 出 さ れ た 保
育士のコンピテンシーを現行の養成課程に加えることは困難である.2年間の養成で保育士
( 保 育 所 )の コ ン ピ テ ン シ ー を 獲 得 す る た め に は ,保 育 所 の 保 育 士 と 保 育 所 以 外 の 児 童 福 祉 施
設 の 保 育 士 資 格 を 分 け る 必 要 性 が 高 く ,そ れ ら を 一 体 化 し た 資 格 と し て 養 成 す る 場 合 に は ,養
成の年数を増加する必要性があることが示唆された.
コ ン ピ テ ン シ ー を 用 い た 力 量 確 保 の 方 法 と し て ,国 ・ 養 成 施 設 団 体 ・ 施 設 レ ベ ル で 資 格 取 得
に 必 要 な コ ン ピ テ ン シ ー を 学 生 に 明 示 し ,学 生 の 到 達 度 を 評 価 す る 方 法 と ,卒 業 時 に コ ン ピ テ
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ンシーに基づき国家試験を行い最低限度のコンピテンシーを獲得している学生に対して資格
を 付 与 す る 方 法 の 二 つ を 考 察 し た .保 育 士 が 養 成 教 育 に お い て コ ン ピ テ ン シ ー を 獲 得 す る に は ,
保 育 の 内 容 と 方 法 を 教 授 す る 教 員 に 保 育 士 の コ ン ピ テ ン シ ー の 保 持 が 必 要 で あ り ,教 員 の 質 の
確 保 の 方 法 と し て 保 育 の 内 容 と 方 法 を 教 授 す る 教 員 に 実 務 経 験 規 定 を 設 け る こ と と ,実 務 経 験
の 有 無 に か か わ ら ず 教 員 の コ ン ピ テ ン シ ー の 自 己 評 価 に 用 い ,保 育 士 の コ ン ピ テ ン シ ー を 保 持
し な い 教 員 に は 保 育 実 習 や 研 修 の 義 務 付 け を 行 う 方 法 を 挙 げ た .同 時 に 実 務 経 験 を 持 つ 教 員 の
課 題 と そ の 質 の 確 保 を 検 討 し た .加 え て コ ン ピ テ ン シ ー リ ス ト を 保 育 士 の 実 習 に 携 わ る 施 設 長 ,
保 育 士 ,保 育 指 導 専 門 官( 指 導 主 事 )の 研 修 と 自 己 評 価 に 活 用 す る こ と に よ り 多 角 的 に 養 成 教
育の質を向上させる効果を考察した.
本 研 究 は ,職 務 当 時 者 の 力 量 か ら 析 出 し た コ ン ピ テ ン シ ー に 基 づ い て 教 育 内 容 と 方 法 を 検 討
するいわばトップダウンからボトムアップのカリキュラムへの転換の可能性を示した研究で
ある.
本 研 究 は ,保 育 士 養 成 教 育 を 保 育 所 の 保 育 士 を 養 成 す る 視 点 か ら 限 定 的 に 研 究 を 行 っ た も の
で あ り ,析 出 し た コ ン ピ テ ン シ ー は ミ ニ マ ム な コ ン ピ テ ン シ ー に 留 ま る .今 後 個 々 の コ ン ピ テ
ン シ ー 項 目 の 基 盤 と な る 知 識 と ,コ ン ピ テ ン シ ー の バ リ エ ー シ ョ ン を 明 ら か に す る 継 続 的 な 研
究が必要である.
【主要引用・参考文献】
・ 箇条書き形式で列挙をお願いします。編集規定をご参照ください。
・ 西 條 剛 央 『 構 造 構 成 主 義 と は 何 か 』 北 大 路 書 房 ,2005.
・ 高山静子「子どもの人権を尊重する保育士養成のあり方」日本子ども家庭福祉学会『子ど
も 家 庭 福 祉 学 』 第 9 号 , 39-48 頁 、 2009.
・ 高 山 静 子「 コ ン ピ テ ン シ ー 理 論 に 基 づ く 保 育 士 養 成 課 程 の 考 察 」全 国 保 育 士 養 成 協 議 会『 保
育 士 養 成 研 究 』 第 26 号 , 23-32 頁 、 2009.
・ ラ イ ル ・ M.ス ペ ン サ ー ,シ グ ネ ・ M.ス ペ ン サ ー『 コ ン ピ テ ン シ ー マ ネ ジ メ ン ト の 展 開 』翻 訳
梅 津 祐 良 ,横 山 哲 夫 ,成 田 攻 ,生 産 性 出 版 ,2001.
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