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世界の医薬品メーカーランキング 2010 決算期版
2011年6月30日 セジデム・ストラテジックデータ株式会社 世界の医薬品メーカーランキング 2010 決算期版 大阪、2011年6月24日-セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部 (CSD_Uto Brain Div.)では、毎年恒例の「世界の医薬品メーカーランキング2010-決算期 版」をまとめた。原則としてメーカー各社の公表した医療用医薬品売上高のランキングで、 ワクチンや造影剤を含んでいるが、一部のメーカー(主に非上場メーカー)は詳細非公表 のためOTCや検査薬などを含んでいる。為替レートは2010年、2009年とも年末の換算値 を使用しており、2010年は1ユーロ=1.3252ドル、100円=1.2262ドル(1ドル=81.55円) の換算となっている。前期比の数字は決算通貨に基づいており、為替レートは毎年異なる ため、ドル換算値とは一致しない。なお、このランキングでは、社名に「Pharmaceuticals」 とあれば「製薬」としており、テバ製薬工業は「Teva Pharmaceutical Industries」の訳で ある。 1.100億ドル超は19社で、2009年の17社から2社増加 100億ドル以上のいわゆる「100億ドルクラブ」に入るメーカーは、2009年の17 社から、2010年には19社へ増加した。2008年のランキングでは、2009年に買収さ れて消えたワイス、シェリング・プラウ、ジェネンテックの3社が100億ドル超で ランキングに入っており、2010年に17位のアステラス製薬は100億ドルに達してい なかったため、2008年も100億ドル超のメーカーは19社であった。 2010年のランキングでは、買収したワイスの売上が年間で加わった1位のファイ ザーと、シェリング・プラウが加わった3位のメルク、ベルギーのソルベイの医薬 品事業を買収した10位のアボット・ラボラトリーズ、ドイツのジェネリックメー カーであるラチオファームを買収した12位のテバ製薬工業はいずれも大幅増とな っているが、100億ドル超の19社のうちの6社はマイナスだった。5位のロシュは、 スイスフラン高に加え、新型インフルエンザの各国政府の備蓄用の需要によって 2009年に米ドル換算で30億ドルを超えたタミフルが、9億ドル強まで減少した影響 が大きい。ロシュの医薬品売上には、医薬品事業で製品売上とは別に計上されて いるロイヤルティ収入を加えているが、2010年にはロイヤルティも21%減で大幅 に減少した。 ロシュ以外で医薬品売上が減収となった100億ドル超の5社は、いずれも製品の パテント切れが影響している。 日本のメーカーでは、米国で2010年にアステラス製薬の前立腺肥大症薬「フロ ーマックス(ハルナール)」、エーザイのアルツハイマー病薬「アリセプト」の 1 パテント切れが大きな影響を与えたが、2011年にはイーライリリーのトップ製品 である統合失調症薬「ジプレキサ」、世界最大の医薬品であるファイザーの高脂 血症薬「リピトール」のパテントが切れる。2012年にもメルクのトップ製品であ る抗喘息薬「シングレア」、世界2位の医薬品であるブリストル・マイヤーズスク イブの抗血小板薬「プラビックス」のパテントが切れるため、今後も欧米では大 型品のジェネリックへの切り替えが進み、大手メーカーは大きな影響を受ける。 2.あまり伸びていない世界の医薬品市場 現在、世界の医薬品市場は5%前後の伸びと言われ、欧米先進国はジェネリック 増の影響で伸びが限られるため、市場の伸びの多くは新興国が占めると言われて いる。 そのため、大手医薬品メーカーでは新興国のメーカーを買収するなどして新興 国の売上増を図っているが、ここでは表にある大手21社の2008年の医薬品売上高 を計算してみた(表では2009年の売上のみ掲載)。21社の2008年の合計売上高は 4322.3億ドルだったが、買収で消えたワイス、シェリング・プラウ、ジョイント ベンチャーのメルク-シェリング・プラウ製薬、ソルベイ、ラチオファーム、第一 三共が買収したインドのランバクシー・ラボラトリーズの同年の売上高を加える と、4782.6億ドルとなる。21社の2010年の合計は4980.1億ドルなので、4.13%の増 加となる。2年で4.13%なので、年平均伸び率は2.05%にとどまっている。つまり、 米ドル換算値で計算すれば、大手は大型品のパテント切れの影響が大きく、新興 2 国のメーカーを買収して新興国の売上増を図っても、全体ではわずかな伸びしか 実現できていないのが現状である。 ただし、近年の円高により、ランキングにおける日本円のドル換算値は2008年 に比べて26%も増えた。日本のメーカー5社の売上合計の26%は116.6億ドルにも なり、21社合計からこれを差し引けば4863.6億ドルで、2008年と比べて21社では 1.69%しか増えていない。この円高と、ジェネリックが登場してもブランド品が 一挙に急減することがない日本市場は、欧米の世界的メーカーにとって重要性が 高まっており、欧米先進国では人を減らしても、日本市場には今まで以上に力を 入れるメーカーが増えて、ますます競争が激化する状況にある。 3.減少する研究開発費(R&D費) 表でトップのR&D費はメルクの109.9億ドルで、ファイザーの94.1億ドル、ロシ ュの86.7億ドルが続く。超大型品がある時代には、売上高の20%を超えるような R&D費を投じることも可能だったが、今後は医薬品市場の大きな伸びが見込めな くなり、ライバル品にジェネリックがあるような薬効の新製品では以前ほどの売 上を上げられない。そのため、大手の多くではR&D費を減らす方向にある。 2010年に94億ドルを使ったファイザーは、2012年には65~70億ドル程度へ減ら すと発表しており、欧米のR&Dの研究者のうち、3500人以上を減らす予定である。 特に臨床開発を担当する研究者を大幅に減らす予定で、大手CROの2社と5年間の 戦略的提携を結んでいる。もはや世界的大手といえども、利益率の高い超大型品 が減少していけば、固定費となる研究者は売上に合わせて減らさざるを得ない状 況になっている。米国のMR数も2006年には10万人を超えていたが、現在は既に8 万人を割っており、さらに減少が続く見込みである。 医薬品メーカーの世界的な成長時代は終わって『大転換期』を迎えており、急 速に変化する医薬品市場への対応が非常に重要な時代となっている。 参考:このメーカーランキングの詳細(5億ドル以上の118社の世界のメーカーラ ンキングと分析等)は、「ファルマ・フューチャー」2011年5月号に掲載していま す。 月刊誌「ファルマ・フューチャー」は、 (1)世界の医薬品業界の変化のトレンド解説、 (2)メーカーランキングや大型医薬品ランキング、薬効別ランキング等のランキ ング特集、 (3)どこよりも詳しいメーカーの決算分析、 という3つの特徴を持ち、1995年の創刊以来17年目を迎えた情報誌です。 詳細、お申込みはこちらをご覧ください。 http://www.utobrain.co.jp/seminar/periodic/pf/2008/080100/index.shtml 3 お願い:このリリースのデータ等を利用される場合は、必ず、出所(出典)とし て「セジデム・ストラテジックデータ株式会社の調査による」とご記入の上、下 記連絡先に掲載紙(誌)をお送り下さい。ホームページ等に掲載される場合は、 そのURLを下記メール宛にお送り下さい。 このランキングは毎年、日本経済新聞、朝日新聞、業界紙、週刊東洋経済、「業 界地図」(各社の出版物)、医薬品メーカー各社のリクルート用資料などで、医薬 品業界の標準的なデータとして広く使われています。厚生労働省の「新医薬品産 業ビジョン」でも使われています。 <本リリースに関する連絡先> セジデム・ストラテジックデータ株式会社 ユート・ブレーン事業部 永江研太郎 TEL 06-6202-7787/FAX 06-6202-7786 E-mail: [email protected] 〒541-0044 大阪市中央区伏見町3-2-4 淀屋橋戸田ビル4F 4