Comments
Description
Transcript
平成21年度 戦略的基盤技術高度化支援事業 「高
平成21年度 戦略的基盤技術高度化支援事業 「高機能、高感性を有するスポーツ衣料素材の開発」 研究開発成果等報告書 平成22年 3月 委託者 中部経済産業局 委託先 財団法人科学技術交流財団 目 次 第1章 研究開発の概要 ......................................................................................................... 1 1-1 研究開発の背景・研究目的及び目標 .................................................................... 1 1-2 研究体制(研究組織・管理体制、研究者氏名、協力者) .................................. 2 1-3 成果概要 ................................................................................................................. 6 1-4 当該研究開発の連絡窓口....................................................................................... 7 第2章 本論 ............................................................................................................................ 8 2-1 抜蝕加工に適したストレッチ生地の開発 ............................................................ 8 2-2 抜蝕加工剤・抜蝕加工条件の検討...................................................................... 12 2-3 基材前処理条件の検討及びプラズマ処理条件の検討........................................ 17 2-4 アンダーコーティングとプラズマ処理を組み合わせることによる洗濯耐久性向 上検討 .................................................................................................................. 18 2-5 第3章 優位性の確認 ....................................................................................................... 20 全体総括 .................................................................................................................. 22 3-1 成果の総括 ........................................................................................................... 22 3-2 産業所有権の取得状況及び対外発表等の状況 ................................................... 23 3-3 今後の事業化に向けた取り組み ......................................................................... 23 第1章 1-1 (1 ) 研究開発の概要 研究開発の背景・研究目的及び目標 研究開発の背景 健 康 志 向 の 高 ま り を 背 景 に 、ス ポ ー ツ 衣 料 市 場 は 今 後 更 な る 市 場 拡 大 が 期 待されており、消費者はより感性の高い商品を求めている。 ■ 2008 年 の 北 京 の オ リ ン ピ ッ ク に お け る “高 速 水 着 ”、2010 年 バ ン ク ー バ ー オ リ ン ピ ッ ク に お け る 機 能 性 競 技 ウ エ ア 等 、各 国 が 次 々 と 新 し い 発 想 に よ る ス ポ ー ツ ウ ェ ア を 開 発 し て い る 。こ の 開 発 コ ン セ プ ト 、技 術 ポ イ ン ト は 機 能 、効 果 、着 用 感 を 中 心 に ハ イ テ ク 素 材 、技 術 を 応 用 し て い る こ と に あ り 、ス ポ ー ツ 用 素 材 と し て 今 後 こ の 傾 向 が更に加速されると思われる。 ■ 国 内 の 一 般 ス ポ ー ツ ウ ェ ア 分 野 で も 、健 康 志 向 、女 性 や 高 齢 者 の ス ポーツ人口の増加等を反映してランニングやウォーキング用品の 市場が拡大している キ ー ワ ー ド : 無縫製ボディスーツ、極薄、超軽量、コアスタビライザー(体を 支えるコルセット) 、全身の圧縮システム、部位別着圧、高伸縮(締め付け効果)、 おしゃれ感、筋肉の部位毎に異なる衣服圧、補整、通気性、保温性、吸汗性、着圧、 ストレッチ (2) 研究目的 本 研 究 開 発 で は 高 機 能 、 高 感 性 を 有 す る ス ポ ー ツ 衣 料 素 材 を 開 発 し 、当該 素材を使用した高付加価値製品により、スポーツアパレル市場拡大及び新 し い ス ポ ー ツ ウェア分野の開拓を行うことを目的とする。 (3) 研究目標 具体的には次の 2 つの素材を開発することによりスポーツウェア市場に 参入することを目標とする。 1) 複 合 素 材 の 生 地 と 抜 蝕 加 工 技 術 の 組 み 合 わ せ に よ り 部 位 別 に ス ト レ ッチ性と通気性をコントロール出来るファション性に優れたストレ ッチ素材の開発。 2) ハ イ テ ク 素 材 で あ る ス パ ッ タ リ ン グ 加 工 繊 維 を 更 に 高 度 化 し 、 耐 久 性(耐洗濯)に優れた高機能性を有する素材の開発。 本 開 発 素 材 で ス ポ ー ツ 市 場 に 参 入 す る こ と に よ り 、素 材 開 発 及 び 加 工 技 術 が 「 ス マ ー ト テ キ ス タ イ ル 」「 E-テ キ ス タ イ ル 」 等 の 機 能 性 テ キ ス タ イ ル 分 野 に 応 用 さ れ 、そ の 他 市 場 へ の 参 入 を よ り 容 易 な も の と し 、将 来 の 市 場 拡大に寄与出来る。 1 2)管理体制 ①事業管理者 [財団法人科学技術交流財団] 理事長 事務局長 研究開発委員会 総務部 総務課 業務部 中小企業課 再委託 株式会社鈴寅 株式会社ヴィオレッタ 有限会社メイユー 愛知県産業技術研究所 三河繊維技術センター 国立大学法人 豊橋技術科学大学 2 ②(再委託先) 株式会社鈴寅 総務部 代表取締役社長 テキスタイル事業部 薄膜事業部 技術開発部 開発部 品質保証室 株式会社ヴィオレッタ 代表取締役社長 総務部 取締役統括 部長 技術開発部 有限会社メイユー 商品開発課 経理課 代表取締役 技術開発部 愛知県産業技術研究所三河繊維技術センター 知事 産業労働部長 所長 副所長 三河繊維技術センター 総務課 開発技術室 国立大学法人豊橋技術科学大学 学長 工学部 事務局 電気・電子工学系 会計課 研究協力課 3 滝川研究室 (2) 管理員及び研究員 【事業管理者】 財団法人 科学技術交流財団 ①管理員 氏 名 所属・役職 本間 重満 専務理事兼事務局長 橋村 靖彦 総務部長件業務部長 相澤 久志 業務部中小企業課長 本夛 康信 業務部中小企業課係長 【再委託先】※研究員のみ 株式会社鈴寅 氏 名 所属・役職 中村 幸正 テキスタイル事業部・監査役 高須 健一郎 テキスタイル事業部技術開発部・部長代理 主任研究員 田中 薄膜事業部開発部・部長 治 主任研究員 加々田 剛 薄膜事業部開発部 副主任研究員 澤田石 哲郎 薄膜事業部開発部 研究員 閑田 瑞恵 テキスタイル事業部技術開発部・副主任研究員 相川 明弘 薄膜事業部品質保証室・研究員 柏野 陽子 薄膜事業部品質保証室・研究員 村岡 信吾 テキスタイル事業部技術開発部・研究員 石井 紀行 テキスタイル事業部技術開発部・研究員 株式会社ヴィオレッタ 氏 名 所属・役職 上原 健司 技術開発部商品開発課・研究員 津田 哲也 技術開発部商品開発課・研究員 有限会社メイユー 氏 伊勢 名 紀彦 所属・役職 取締役 4 愛知県産業技術研究所三河繊維技術センター 氏 名 所属・役職 加藤 和美 加工技術室・主任研究員 山本 周治 開発技術室・主任研究員 小林 孝行 開発技術室・主任 近藤 温子 開発技術室・技師 国立大学法人豊橋技術科学大学 氏 名 滝川 (3) 所属・役職 浩史 工学部電気・電子工学系 教授 経理担当者及び業務管理者の所属、氏名 (事業管理者) 財団法人科学技術交流財団 (経理担当者) 総務部 総務課 係長 平野 (業務管理者) 業務部 中小企業課 係長 大輔 本夛 康信 (再委託先) 株式会社鈴寅 (経理担当者) 総務部 総務部長 壁谷 (業務管理者) 監査役 中村 幸正 木村 加壽子 隆 株式会社ヴィオレッタ (経理担当者) 総務部 (業務管理者) 取締役統括部長 長曽 得也 有限会社メイユー (経理担当者) 代表取締役 (業務管理者) 取締役 前岡 弘三 伊勢 紀彦 愛知県産業技術研究所三河繊維技術センター (経理担当者) 総務課 総務課長 (業務管理者) センター長 杉浦 稲吉 吉生 清治 国立大学法人 豊橋技術科学大学 (経理担当者) 会計課契約係長 (業務管理者) 工学部 大宮 伸夫 電気・電子工学系 5 教授 滝川 浩史 1-3 成果概要 ①新しい感性を有するストレッチ素材の開発 ■ス ポ ー ツ 衣 料 素 材 と し て 、近 年 急 速 に 新 し い カ テ ゴ リ ー を 築 き 上 げ つ つ あ るアイテムとして伸縮系(スパンデックス糸)を用いたストレッチ素材、 いわゆる「着圧」といわれるスポーツ衣料が拡大している。本研究はこの ストレッチ素材に抜蝕加工を組み合わせることにより身体の部位別に着圧 性能が異なり、かつ感性豊かなスポーツ素材を提供することにある。 ( 1) 3 年 間 の 検 討 の 結 果 、 ス ポ ー ツ イ ン ナ ー 用 と し て 抜 蝕 加 工 に 適 し 、 か つスポーツメーカーが要求する品質特性を満たす事が出来る編地を 開発した。 ( 2) 一 部 の メ ー カ ー に お い て 、 試 作 品 に よ る 着 用 試 験 も 終 了 し た 。 現 在 、 実用化に向け拡大試験を実施中である。 ( 3) 得 ら れ た 成 果 ・ スポーツインナー用として抜蝕加工性及び品質特性を満たす編地 (編組織及び使用素材構成)を開発した。 ・ 本編地に適した抜蝕加工条件及び染色加工条件を確立した。 ・ 本編地で抜蝕柄変更による伸縮特性及び強力特性を検討し、抜蝕 柄と着圧性の関係を把握、最終製品での商品化(デザイン設計) に役立てた。 ( 4) 今 後 の 課 題 ・ 生産設備での拡大試作による安定加工条件の確立。 ・ 抜蝕加工条件、染色加工条件の安定化による品質歩留の向上。 ・ トータルコストの低減:現状、加工歩留が悪く、素材のコストが 高い編地、染色加工を含めた歩留の向上によるコストの低減が必 要。 ・ スポーツインナー以外のスポーツ衣料素材の開発:現在、繊維素 材の変更によるその他のスポーツ衣料用途向けの素材を検討中。 ②高い機能性を有する素材の開発 ■国 内 及 び 、海 外 を 含 む 各 種 展 示 会 へ の 出 展 に よ っ て 、ス パ ッ タ リ ン グ 繊 維 加 工 品( ブ ラ ン ド masa)の 機 能 性 が 認 め ら れ 、各 種 用 途 が 広 が り つ つ あ る 。 現 在 、 ス ポ ー ツ 用 途 向 け 素 材 と し て は 、 銀 /チ タ ン を ス パ ッ タ リ ン グ 加 工 し たウインタースポーツ向け機能性裏材(保温性、制電性、抗菌、防臭性) が主であるが、市場はまだ小さい。 スパッタリング加工商品は機能性に優れているものの、繊維に付着したナ ノメタルの耐洗濯性に難点があり、過酷な洗濯が必要とされる用途に使用 できない為、この用途向けの素材を開発する。 6 ( 1) 3 年 間 の 検 討 の 結 果 、 プ ラ ズ マ 前 処 理 、 及 び プ ラ ズ マ 前 処 理 +樹 脂 加 工 に よ り そ の 耐 洗 濯 性 が 向 上 す る こ と を 確 認 し た 。但 し 、現 在 の レ ベ ルでは過酷な洗濯を実施する分野向けとして不十分と判断される為、 更 な る 検 討 を 実 施 す る 。( 現 在 の レ ベ ル 90% ) ( 2) 上 記 レ ベ ル で の 製 品 化 は 困 難 と 判 断 さ れ る こ と か ら 、実 用 化 に 向 け 更 な る 向 上 を 検 討 す る と 共 に 、従 来 レ ベ ル で の 商 品 に よ る ス ポ ー ツ 市 場 で の 市 場 調 査 を 実 施 し 、商 品 開 発 で の 実 用 化 時 期 に つ き 検 討 し て 行 く 。 ( 3) 得 ら れ た 成 果 ・ 前処理方法として大気圧プラズマ処理及び低圧プラズマ処理が適 している。プラズマ処理によって繊維表面の濡れ性(親水性)が 向上すること、付着金属の耐洗濯性が向上する。 ・ スパッタリング出力を上げることにより、耐洗濯性は向上する。 ・ スパッタリングによりポリエステル基布上に作製された金属膜は メッキや蒸着により形成した金属膜に比べ耐洗濯性が高い。 ・ 樹脂加工とプラズ処理により高い耐洗濯性が得られた。特にフッ 素 系 樹 脂 が 優 れ た 効 果 を 出 し た 。 又 、 UV 効 果 樹 脂 の コ ー テ ィ ン グでも耐洗濯性の向上が認められた。 ・ スパッタリング加工布の耐洗濯性評価方法として洗濯処理前後を 蛍 光 X 線 装 置 で 測 定 し 、ス パ ッ タ リ ン グ 金 属 量 を 評 価 す る 方 法 を 確立した。 ・ スパッタリング加工布の保温性(断熱効果)が優れることを確認 し た ( サ ー モ グ ラ フ ィ に よ る 画 像 で 販 売 促 進 PR 資 料 作 成 ) ( 4) 今 後 の 課 題 ・ 前処理方法(条件)の更なる詳細な検討を実施する。 ・ 現行品(従来の生産品)でのスポーツ用途向け販売の拡大と情報 収集(営業活動)により開発商品での実用化の可否及び時期を判 断する。 ・ プラズマ前処理機(広幅実機)の導入検討。 ・ スパッタリング加工布の機能性について多くの機能性を評価し、スポーツ衣 料分野以外の市場を探索する。 1-4 当該研究開発の連絡窓口 財団法人科学技術交流財団 担当者:本夛 〒460-0002 名古屋市中区丸の内二丁目4-7 電 愛知県産業貿易館西館内 話 052-231-1477 FAX 052-231-5658 7 第2章 本論 複合素材の生地と抜蝕加工技術の開発及び部位別に着圧と通気性をコントロールで きるファッション性に優れたストレッチ素材の開発【新しい感性を有するストレッチ 素材の開発】 2-1 抜蝕加工に適したストレッチ生地の開発 ポリエステル、ナイロン、ポリウレタンの糸番手、編組織を検討し、スポーツ衣料用途の 物性値(破裂・引裂強度)をクリアし、抜蝕加工を可能とする編地を作り上げることができ た。 しかしながら、基準となる物性値を満たすことはできたが、十分な物性値を満たしてはい ない。また、抜蝕部と非抜蝕部との着圧差についても十分な着圧差を満たしていない。加え て、抜蝕加工の品質の観点から編組織をさらに検討する必要がある等の問題があった。 スポーツ衣料用途に応じた編組織、糸使いを検討し、抜蝕部と非抜蝕部との着圧差及び物 性値(破裂、引裂強度)を満たす品質の高い編地を作成する。また、トリスキン編地、ラセ ット編地を検討したところ抜蝕が可能であるという結果が出た。しかし、抜蝕部、非抜蝕部 とも引裂強度、破裂強度で十分な物性値が得られなかった。また、この編組織はインナー用 途向けが中心の為、スポーツ用途に適した編地の試作検討が必要であった。 (1)実施内容及び結果 前年度成果 試編みの研究:VI380 (VI380A/VI380B/VI380C/VI380D/VI380E/VI380F/VI380G/VI380H/VI380I/VI380J /VI380K/VI380L) 物性強度については充分な値を得る事が出来たが、ポリエステル糸の溶け残りが見られた。 既存生地をベースに生地物性を保ちつつ抜蝕加工がし易い、つまり減量加工が強化できる編 み生地を研究する必要があった。糸種及び番手を変更せず、抜蝕加工の品位を上げるには組 織の開発しかなく、全ての組織について研究し試編みした。 8 (1)-1 物性試験の測定 試作編地 12 サンプルの内、抜蝕加工が可能であったサンプル(VI380A・C・G・L) に対し各種物性強度試験を測定した。 【結果】 表 1-1:VI380 物性試験結果一覧 品番 VI380A VI380C VI380G 品名 オパール 交差 無し ラセット ハーフ;AHY Ny デンビ;PU 有り 仕上幅 伸長性(%) 伸長応力 仕上確認 破裂 緊迫力(cN) 経/緯 (cN) 引裂(cN) 30%経/緯 ウェルコー (Kpa) 9.8N/14.7N/ (Max/Min) 30%経/緯 3回目 (Max/Min) ス 22.1N 3回目 巾 164cm W/in 52/53 459/453 2340/1644 C/in 90/91 50/51 359/335 1420/1111 交差 無し ラセット ハーフ;Ny デンビ;AHY PU有り 巾 164cm W/in C/in 巾 183cmW/in C/in 巾 183cm W/in 交差 ラセット デンビ;All 917/760 89 46 80 506/504 2020/1798 46/47 427/385 1312/1205 無し C/in 78/79 巾 164cm W/in 52/53 328/318 C/in 92/93 1291/1214 有り 巾 164cm W/in 50/51 238/232 無し 巾 182cm W/in 46/47 370/367 1141/896 有り C/in 93/94 巾 182cm W/in 43/45 268/258 869/806 C/in 91/92 VI380L 交差 ラセット デンビ;All C/in 93/94 114/116 73/75 65/67 43/44 148/151 157/160 70/72 78/79 120/122 66/67 70/71 46/47 113/116 39/39 45/46 19/20 55/56 25/25 42/43 20/20 55/56 32/32 34/35 20/20 75/77 35/35 44/45 22/22 104/106 31/31 40/40 17/17 103/132/156 74/83/92 204/222/237 111/125/138 58/70/82 56/66/75 137/150/162 75/85/96 90/103/115 145/169/191 15/147/160 189/219/251 71/81/90 82/96/109 114/123/134 158/184/208 ・G と L は破裂強度が目標値(≧500kpa)よりも格段に低い数値で強度不足。 ・C は基布表面にザラザラ感が発生してしまった。 ・A の破裂強度が目標値を満たないまでも、近似値まで近づける結果を得られた。 (1)-2 ポリウレタン糸種の検討 (1)-1の結果を受けて VI380A の組織構成で破裂強度物性値が向上できる=耐薬品性 の素材について試編研究を実施した。 【結果】 糸種を変更したことにより、抜蝕加工後において基布自体の品位が低下。生地が黄色く変 色してしまった。 ⇒抜蝕加工の薬剤・処理条件等を調整することで、生地への負荷度合いを軽減できるように 検討していく。 (1)-3ナイロンの糸番手 UP による編組織の検証 (1)-2の結果を受けて、今回ナイロンの糸の番手(太さ)を変更し、試編研究を実施 した。 ナイロンの糸の太さを 44T から 56T へ変更した。 【結果】 9 ・VI501:ポリエステル(AHY)+ナイロンがハーフ組織 ポリウレタンのみデンビ 組織 ・VI502:ポリレステル(AHY)+ナイロン+ポリウレタン 全てハーフ組織 ⇒VI502 条件の組織構成及び、糸の種類を選定することにより非抜蝕部の破裂強度の物性値 が目標数値(≧500kpa)を満たすことができた。 (1)-4 市場性商材とのマッチングを検証 ①破裂物性強度を満たした VI502 以上に抜蝕部分と非抜蝕部分の着圧差をより大きくしたい との要望を受け、下記 VI511 を試編研究した。 ②機能性スポーツインナーとしてナイロン糸をマイクロファイバー糸に変更し、肌触り感を 向上させる。(VI506D) ナイロン糸を吸水速乾糸に変更し蒸れ感を低減させる=履き心地感の向上を狙い(VI507D) 下記、2 種類の試編研究を実施した。 【結果】 ① VI511 については基布表面に桃の毛のような繊維断面が現われてしまい、伸縮性が弱い結 果となり、VI502 以上の品位をだすことができなかった。 ② VI506、VI507 の機能性糸仕様の比較に関しては、ユーザー評価により VI506D(マイク ロファイバー糸使い)の方がシャリ感の風合いが良いと評価が得られた。 (1)-5 組織違いによるストレッチ性能を検証 破裂強度物性を満たした VI502 からより一層の着圧差(抜蝕部と非抜蝕部とのパワー落差) を得る為に、組織について下記 9 種類を試編した。 また、伸縮物性をより強化した素材を開発する為、構成使用糸の3種類は今までの研究成 果を反映させ、同じ糸種・糸番手を使用した。 【結果】 基布のタテ伸び・ヨコ伸びの伸長性を協議し、【A】【E】 【I】が選定された。 品番 品名 VI607A 交差 ラセット VI607E 交差 VI607I 交差 ラセット ラセット 糸使い ポリ エステル AHY 33-36-E318 ナイロン Nylon 56-24-208 ポリウ レタン Lycra 78-127C ポリ エステル AHY 33-36-E318 ナイロン Nylon 56-24-208 ポリウ レタン Lycra 78-127C ポ リ33-36-E318 エステル AHY ナイロン Nylon 56-24-208 ポリウ レタン Lycra 78-127C 設計仕上規格 25.1% 41.3% 33.6% 21.2% 43.2% 35.6% 24.1% 42.8% 33.1% 巾 W/in C/in 巾 W/in C/in 巾 W/in C/in 10 145cm 42 85 145cm 42 85 145cm 42 85 持掛目付 452.0g/m 428.0g/m 460.0g/m (1)-6 品番 ポリウレタン糸の変更によるストレッチ性能を検証 品名 糸 使い 設 計 仕上 規格 持掛 目付 VI608A 交ラセット 差 AHY 3 3-36-E318 ポリエステル Nylo n 56- 24-208 ナイロン Lycra 78- 906C ポリウレタン 25.1% 巾 145c m 41.3% W/ in 42 33.6% C /in 85 45 2.0 g/ m VI608E 交差 ラセット AHY 3 3-36-E318 ポリエステル Nylo n 56- 24-208 ナイロン Lycra 78- 906C ポリウレタン 21.8% 巾 145c m 42.1% W/ in 42 36.1% C /in 85 42 4.0 g/ m VI608I 交ラセット 差 AHY 3 3-36-E318 ポリエステル Nylo n 56- 24-208 ナイロン Lycra 78- 906C ポリウレタン 145c m 24.8% 巾 42.2% W/ in 42 33.0% C /in 85 46 2.0 g/ m 選定された VI607 の 3 サンプルのストレッチ性をより一層 UP させる為レギュラーポリウ レタンからストレッチポリウレタンへウレタンの糸を変更した。 【結果】 ・ (1)-5 で得られた VI607(レギュラーPU)と VI608(ストレッチ PU)を比較すると、今 回の試編した VI608 は基布全体の伸長性が増加しすぎてしまい、抜蝕部分と非抜蝕部分との 伸長落差の感覚が低減してしまう結果となった。 ・ユーザー評価により【A】【E】 【I】の 3 組織サンプルの中から【I】組織が選定された。 (1)-7ウレタン糸の変更によるストレッチ性能を検証 ウレタン糸の量によりストレッチ性能が向上することを狙い、また 2-2-6 の結果を受け、 糸の種類は変更させず糸の量のみを増加させて試編した。 品番 品名 VI607I-Z 交差 ラセット 糸使い ポリエステル AHY 33-36-E318 ナイロン Nylon 56-24-208 ポリウレタン Lycra 78-127C 設計仕上規格 135cm 24.2% 巾 41.4% W/in 42 34.4% C/in 85 持掛目付 476.0g/m 【結果】 混率の割合は 33.1%から 34.4%へ増加したことで、全体基布の生地風合い(ハリ・シャリ感) を維持させたまま伸長性能を UP することができた。 (2) ■ 研究成果 商材に合致した破裂強度物性を確保(500kpa 以上)した、スポーツ用途に適した編生地 を開発することができた。 ■ 同一基布による抜蝕部分と非抜蝕部分の着圧落差性を付与することができた。 ■ 基布全体のタテ方向とヨコ方向の伸長性(タテヨコのバランス)を向上させ、風合い(手 触り・ハリ・シャリ感)を損なうことない基布素材を作ることができた。 ■ 糸種類の混率(割合)及び糸量・糸番手(太さ)の使用糸の選定が不可欠であることが わかった。 11 2-2 抜蝕加工剤・抜蝕加工条件の検討 ポリエステル・ナイロン・ポリウレタン 3 種の生地を組み合わせた生地において、ポリエ ステルのみを抜蝕する糊剤の開発を行うと共に、抜蝕ではかかすことのできないアルカリソ ーピング条件を細かく検討することにより、非抜蝕部のポリエステル・ナイロン・ポリウレ タンのダメージを極力抑えた抜蝕加工剤、アルカリソーピング条件を選定した。この抜蝕剤、 アルカリソーピング条件を利用し、抜蝕加工を行う事で編地によりスポーツアパレルの物性 値をクリアすることに成功した。 抜蝕部と非抜蝕部との着圧差と、編地の縦方向、横方向の着圧バランスを考えた編地にて 抜蝕加工条件を検討し、より本生産に近い長さでの中量産試験を抜蝕から染色まで含めて条 件設定を行っていく。 また着圧コントロールにおいて、抜蝕部と非抜蝕部との中間の着圧をコントロールする最 適な柄を選定する。 (1) 実施内容及び結果 (1)-1 抜蝕加工と編地の相応性の検証 【 目 的 ・ 内 容 1- 1 】 従来の抜蝕加工剤、抜蝕加工条件に沿って生地の物性値を上げるためと、抜蝕部と非抜蝕部 の着圧差を表現する為に、VI501、VI502、VI511 の編地を用意し、抜蝕状態の確認を行った。 非抜蝕部の破裂強度の目標を 500kpa とした。 【結果1-1】 表 2-1:相応性 抜蝕 着圧 強度 品位 評価 VI501 良好 スポーツアパレル 着圧差が物足りな 非常に綺麗な仕上 の商品としては足り い がり ない VI502 良好 着圧差が少し物足 りない 何とかクリア 綺麗な仕上がり △~○ VI511 良好 着圧差はあるが、 非抜蝕部の伸縮性 が足りない 非抜蝕部が弱い ほつれの発生 × △ 抜蝕状態としては、VI501、VI502、VI511 全ての編地において良好な抜蝕が得られた。 非抜蝕部の破裂強度が VI502 の編地でぎりぎり 500kpa クリアができた。 抜蝕部と非抜蝕部の着圧差としては、満足のいくものではなかった。 【目的・内容1-2】 抜蝕部と非抜蝕部の着圧差を表現することと、非抜蝕部の破裂強度をアップさせるために、 VI502 をベースとして、VI607A~I の編地を作成し【目的・内容1-1】同様の試験を行っ た。 VI502 においても再度確認試験を行った。 12 【結果1-2】 表 2-2:物性結果 条件設定した、加工剤、加工条件で抜蝕状態としては全ての編地とも問題がなかった。 非抜蝕部の破裂強度として、VI607A、B、E、F、G、I の編組織でクリアすることができた。 VI607A、E、I において着圧差がアップし、縦・横着圧のバランスも良くなった為中量産試験 を行っていく。 (1)-2 抜蝕柄に関しての検証 【目的・内容2】 抜蝕部と非抜蝕部の中間の着圧差を表現することで、段階的に着圧差を表現することを目的 として、どのような柄が適しているのかを検討した。 図 2-1 のようなプリント柄を柄抜蝕、地抜蝕と 2 タイプずつ作成し、どのような柄が着圧コ ントロールに適しているのか検討を行った。 図 13 2-1:着圧コントロール柄 【結果2】 感覚で伸縮性の評価を行い、蜂の巣柄(六角ドット柄)が力の逃げがないために着圧のコン トロールには適していると判断。 試作を行っていく中で、蜂の巣柄を有効に利用していく。 (1)-3 中量産試験 【目的・内容3-1】 (1)-1で試験を行った編地 VI607A~I の中から VI607A、E、I をピックアップし中量産 試験を行った。同時に更に着圧差を表現する為に、ポリウレタン糸をソフトストレッチ素材 に変更した編地 VI608A、E、I を用意し、現状の抜蝕条件で量産が可能であるか、物性がラ ボ試験同様の結果となるかを検討した。 【結果3-1】 表 2-3:中量産試験の結果 抜蝕状態:全ての編地において抜蝕性が良好であった。試験後の目付についても問題なくB P(従来生地)とさほど変化なく加工が行えた。 抜蝕物性:全ての編地において、 非抜蝕部の破裂強度 500kpa 以上クリアすることができた。 ポリウレタン:VI607、VI608 を比較してみてもポリウレタンによる物性の変化、伸び感の 差はなかった。 編み組織:A、E、I の組織の中で、I の組織が縦、横の伸びのバランスが良いと判断。 【目的・内容3-2】 中量産試験で仕上がった VI607I において、中量産試験の再現性の確認を行う。 VI607I の編組織でポリウレタンの量を若干アップさせた編地 VI607IZ を用意し、目的・内容 3-1と同様の試験条件で抜蝕性、物性の再現性確認を行った。 柄としては蜂の巣柄を利用し、トップス(上着インナー)、タイツ(下着インナー)の柄を用 意し、中量産試験同様ブラックの染色を行い染色再現性も確認する。 【結果3-2】 表 2-4:VI607I物性一覧 14 抜蝕状態:前回中量産同様に良好な抜蝕がえられた。 抜蝕物性:非抜蝕部の破裂強度が 500kpa に若干届かなかった。 着圧:VI502 と比べて、着圧差も大きく高く縦横バランスのよい着圧差が抜蝕部、蜂の巣柄 抜蝕部、非抜蝕部と3段階の表現ができた。 染色性:前回中量産同様の色(ブラック)に染色が行われた。 (1)-4 抜蝕編地の圧着試験 【目的】 抜蝕の形状は着圧感に大きな影響を与えると考えられる。このことから編地の着圧性能を 評価するため、フィットネス測定装置((株)レスカ製)を用いて、VI607I(ハニカム柄) 、VI502 (斜線柄)二種類の抜蝕加工部の比較検討を行った。 【着圧試験】 実験方法はひずみ計を細パイプ(239mm)、太パイプ(279mm)にテープで貼り付け、 その上から筒状にした試料をかぶせ、その圧力を測定した。 【結果】 VI607 は細パイプの着圧はたて 4.7 kPa、よこ 3.8 kPa であるのに対して VI502 は、たて 4.0 kPa、よこ 2.6 kPa と差があった。また太パイプも着圧はたて 6.4 kPa、よこ 5.2 kPa で あるのに対して VI502 はたて 7.0 kPa、よこ 3.7 kPa と差があった。たて、よこ方向の着圧 の結果を図 2-2、2-3 に示す。この結果、VI607は細パイプ、太パイプともたて方向、よこ 方向とも着圧値は均衡しておりバランス良く圧力が掛かっているためサポート性が良好であ ると考えられる。このことから抜蝕柄の違いによるサポート性の優位性がわかった。 (表 2-5) VI502 VI607I 図 2-2:試験抜蝕生地・柄 表 2-5:抜蝕柄の異なる生地の着圧比較 着圧(kPa) VI607I (ハニカム柄) VI502 (斜線柄) 細パイプ 太パイプ たて よこ たて よこ 未抜蝕部 6.4 6.2 12.8 8.6 抜蝕部 4.7 3.8 6.4 5.2 未抜蝕部 6.8 4.9 16.7 6.6 抜蝕部 4.0 2.6 7.0 3.7 15 (2) 研究成果 【抜蝕加工剤】 ■ 試験を行ってきた抜蝕糊 AA を使用することにより、 試編を行った VI501、VI502、VI511、 VI607A~I、VI607IZ 全ての編地において良好な抜蝕がえられた。 ■ 中量産試験においても問題がなく抜蝕が行われる剤であると検証された。 【抜蝕加工条件】 ■ VI607I の編地を使用し、試験を行って設定した、抜蝕条件(ベーキング、ソーピング) で加工を行うことで、スポーツアパレルの新素材として求められている物性値が得られ ることが検証された。 ■ プリント柄に蜂の巣柄を使用することで、非抜蝕部、蜂の巣柄抜蝕部、抜蝕部と3段階 の着圧差をバランス良く表現することができることが検証された。 図 2-3:VI607IZ トップス 16 スパッタリング加工技術を高度化し、耐洗濯性に優れた高機能性を有する素材の開発 【高い機能性を有する素材の開発】 2-3 基材前処理条件の検討及びプラズマ処理条件の検討 本研究開発により開発した基材に対し、金属膜を積層することにより、様々な高い機能性 を付与することが出来る(保温性、遮熱性、耐 UV 効果、制電性、抗菌防臭性、意匠性など) 。 しかしながら、金属加工した布は、洗濯に対する耐久性が低い。このため、本項では、スパ ッタリングによる金属加工布の耐洗濯性向上のため、プラズマ処理などによる基材の前処理 条件を検討することを目的とした。 (1) 実施内容 [試料] ポリエステル基布 [試験方法] 1. 低圧(真空)プラズマ処理:本事業において導入した真空プラズマ試験装置を用い、低 圧(活性ガスまたは不活性ガス導入下)、プラズマ処理を行った。 2. 大気圧プラズマ処理:本事業において導入した大気圧プラズマ試験機を用い、活性ガス または不活性ガスの導入下、大気圧プラズマ照射を行った。 3. UV処理:本事業において導入した卓上型光表面処理装置を用いた。 4. 親水性評価:JIS L1907 の「繊維製品の吸水性試験方法」に準じた方法を親水性評価方 法として採用した。 5. スパッタリング:前処理を行った基材に対し、本事業において導入した真空プラズマ試 験装置を用い、低圧下、ステンレスのスパッタリングを行った。 6. 洗濯耐久性試験:JIS L0217(電気洗濯機法)(洗い方 103)により 10 回洗濯を行った。 洗濯耐久性試験前後の基材表面の蛍光 X 線分析により、鉄およびクロムの量の残存量 を調べた。 (2) 研究成果 本事業により設置された真空プラズマ処理試験装置、大気圧プラズマ試験機、卓上 型光表面処理装置(UV 処理装置)により、基布の親水処理が行えることが明らか となり、特に低圧(真空)プラズマ処理・大気圧プラズマ処理により、基布表面の 親水性が大きく向上することが示された。 低圧(真空)プラズマ処理では、活性ガス導入下、大気圧プラズマ処理でも活性ガ ス導入下において高い親水性表面が得られた。 前処理を行った基布にステンレスをスパッタリングした後、耐洗濯性評価を行った 結果、特に活性ガス導入下にて低圧(真空)プラズマ及び大気圧プラズマによる前 処理を行ったスパッタリング加工布において洗濯耐久性が大きく向上することが 17 分かった(図 3)。 また、耐洗濯性を上げるためにスパッタリング条件の検討を行った結果、スパッタ リング時の出力を上げ、ガス圧を下げることで洗濯耐久性が向上することが分かっ た(図 3) (洗濯後の金属付着量)/(洗濯前の金属付着量) 1 未処理 低圧(真空) プラズマ処理 大気圧 プラズマ処理 0.9 鉄 クロム 0.8 0.7 450 W 300 W 450 W 300 W 450 W 図 3:スパッタリング加工布の洗濯耐久性(前処理条件及びスパッタリング条件の検討) 2-4 アンダーコーティングとプラズマ処理を組み合わせることによる洗濯耐久 性向上検討 前項において、プラズマ前処理により洗濯耐久性が向上することを確認したが、スポーツ の用途によってハードな洗濯を実施する分野があり、この分野向けには更なる耐久性の向上 が要求されることが分かった。この向上策として、アンダーコーティングとプラズマ処理の 組み合わせについて検討を進めた。 (1) 実施内容 [試料] ポリエステル基布 [試験方法] 1. アンダーコーティング:主として本事業で導入した装置を用いてアンダーコーテ 18 ィングを実施した。 2. 低圧(真空)プラズマ処理:1 で樹脂加工した基布に対し、本事業において導入 した真空プラズマ試験装置を用い、低圧下(活性ガスまたは不活性ガス導入下)、 プラズマ処理を行った。 3. スパッタリング:1, 2 にて前処理を行った基材に対し、本事業において導入した 真空プラズマ試験装置を用い、低圧下、ステンレスのスパッタリングを行った。 4. 洗濯耐久性試験:JIS L0217(電気洗濯機法) (洗い方 103)により 10 回洗濯を行 った。洗濯耐久性試験前後の基材表面の蛍光 X 線分析により、鉄およびクロムの 量の残存量を調べた。 (2) 研究成果 アンダーコーティングにより、スパッタリング加工布の耐洗濯性が上がることが明 らかになった。 トップコーティングによっても、スパッタリング加工布の耐洗濯性が、 アンダーコーティング同様に上がることが明らかとなった。 ア ン ダ ー コ ー テ ィ ン グ と プ ラ ズ マ 処 理 を 組 み 合 わ せ る こ と に よ り 、さ ら に 耐 洗 濯 性 が 上 が る こ と が 明 ら か と な っ た 。特 に 活 性 ガ ス 導 入 下 で の プ ラ ズ マ 処 理 に よ り 、 耐 洗 濯 性 が 向 上 し た ( 図 4)。 19 (洗濯前の鉄付着量)/(洗濯後の鉄付着量) 1 0.9 鉄 クロム 0.8 0.7 処理無し アンダー アンダー コーティング コーティング A A + プラズマ 処理 (ガス1) アンダー アンダー コーティング コーティング B A + + プラズマ プラズマ 処理 処理 (ガス2) (ガス2) 図 4:アンダーコーティングとプラズマ処理を行ったスパッタリング加工布の耐洗濯耐久性 2-5 優位性の確認 金属加工の方法は、スパッタリングに限らず、メッキや蒸着など、様々な方法があ る。本項では、特に耐洗濯性や耐擦傷性といった機能性に絞り、これに関するスパッタ リングとめっき等の金属加工法との比較検討の結果について述べる。 (1) 実施内容及び結果 [試料] ポリエステル基布 [試験方法] 1. 金属メッキ:本事業で導入したメッキ試験機中にて、銅メッキを行った。 2. スパッタリング:本事業において導入した真空プラズマ試験装置を用い、低圧下、 銅のスパッタリングを行った。 20 (洗濯後の金属付着量)/(洗濯前の金属付着量) 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 Cu (スパッタリング) Cu (メッキ) 図 5: 銅をスパッタリング処理した基布とメッキ処理した基布の洗濯耐久性 (2) 研究成果 スパッタリング加工は、メッキ加工に比べ洗濯耐久性・耐擦傷性が格段に優れてい ることがわかった(図 5)。 スパッタリング加工は、蒸着による金属積層と比べ、耐洗濯性に優れていることを 確認した。 以上のことから、特に耐洗濯性に関して、スパッタリング加工布は他の技術による 金属加工布と比べて、優れた機能性を有することが明らかとなった。 21 第3章 全体総括 3-1 成果の総括 (1)新しい感性を有するストレッチ素材の開発 ■ 国内メーカー1 社にスポーツインナー用として、編地(編組織、繊維素材構成)を検討、 この編地での加工性、品質特性を把握、着用テストの結果、実用化の目処はえられたが 実用化には至っていない。 ■ 国内の別メーカーからもスポーツインナーとしての要望が来ており、このメーカー向け に専用編組織の開発及び拡大試作を実施中である。 ■ 量的拡大を計る為には加工の安定化(歩留向上、品質の安定化)及び編地+加工を含め たトータルコストの低減が必要であり、今後、成果が出せる様に取り組む。 (2)高い機能性を有する素材の開発 ■ 本テーマで取り組んだ、繊維に付着したナノメタルの洗濯耐久性の向上方法として、プ ラズマ前処理の効果があることが確認出来た。但し、今回得られた性能では、過酷な洗 濯を必要とするスポーツ分野では未だ不安である為、実用化に至っていない。 ■ プラズマ前処理によりポリエステル繊維表面表面の濡れ性(親水性)が向上すると、ス パッタリング加工で付着した金属の耐洗濯性(耐久性)が向上することを確認した。 ■ 前処理方法としては大気圧プラズマ処理及び低圧プラズマ処理が適しており、今後この 2 種に絞り、最適条件の確立を目指し、検討を実施する。 ■ スパッタリング加工条件(出力、金属)によっても、耐洗濯性が向上することが認めら れたので更に検討を実施する。 ■ 樹脂加工とプラズマ前処理を組み合わせるとその耐洗濯性が向上することが認められた ので、樹脂加工による多機能性付与も含め、更なる高付加価値商品開発を目的として検 討を実施する。 ■ スパッタリング加工布の機能性として保温性及び遮熱性に優れることが確認できた。こ れ等のデータを数値化及び可視画像として販促資料に活用し、用途の拡大を計っている。 22 3-2 産業財産権の取得状況及び対外発表等の状況 (1)新しい感性を有するストレッチ素材の開発 特許出願済(サポイン採択前) (ア) 特願 (イ) 出願日 2006-243664 平成 18 年(2006 年)9 月 8 日 (ウ) 発明の名称 「部分的に異なるストレッチ性を有する布帛の製造方法」 (エ) 出願者(共同出願) 三菱レイヨン株式会社 三菱レイヨンテキスタイル株式会社 株式会社 鈴寅 株式会社 ヴィオレッタ (2)高い機能性を有する素材の開発(平成 22 年度中に数件の特許出願を計画中) 2009-154853 (ア) 特願 (イ) 出願日 (ウ) 発明の名称 (エ) 出願者 3-3 平成 21 年 6 月 30 日 「保温性に優れた透湿防水フィルム」 株式会社 鈴寅 今後の事業化に向けた取り組み (1)新しい感性を有するストレッチ素材の開発 ■ 平成 22 年度中にはスポーツインナー用素材として市場参入出来る様な体制作りに取り組 む。 ■ 生産化に取り組むには、現有設備の改造及び、一部新設装置も必要があるが、市場のニ ーズを見ながら順次実施していく。 ■ 市場拡大(汎用化)する為には、現状価格では用途が限られているとの評価もあり、関 連各社との連携を密にし、トータルコストの低減に取り組む。又、鈴寅においては歩留 の向上を早急に確立すべく、取り組んでいく。 ■ スポーツインナー用途以外についても順次、拡大試作→メーカー評価→実生産化に結び つける様に取り組む。 (2)高い機能性を有する素材の開発 ■ 繊維へのスパッタリング加工技術は鈴寅のオンリーワン技術であり、将来の大きな柱に 育てたい事業であり、本素材を用いた商品開発は順次実施し、市場拡大に取り組む。 ■ 引き続き性能向上を検討すると共に、現行品(従来の生産品)でのスポーツ用途向けの 販売拡大と情報収集を実施し、本開発商品での実用化の可否及び時期を判断する ■ 本加工技術(プラズマ前処理)を事業化する為には高額の投資が必要である。上記調査 結果及び市場ニーズ並びに鈴寅のスパッタリング事業の柱でもあるフィルム事業への活 用も含め検討し、事業化時期については慎重に決定したいと考えている。 23