Comments
Description
Transcript
新たな自然を創出、モニタリングで検証
■TOPICS 生態系の創出 新たな自然を創出、 モニタリングで検証 アドバンテスト群馬R&Dセンタ2号館 近年、環境を大切にする企業姿勢を具現化し、地域社会や自然 との共生を図ることを目指して、 ビオトープを建設する例が増えて ビオトープが順調に機能していることを モニタリングで検証 アドバンテスト群馬R&Dセンタ2号館 います。アドバンテスト群馬R&Dセンタ2号館の建設にあたっては、 本施設は2001年4月に完成しましたが、 ビオトープは、 生き 敷地内に大規模なビオトープ導入の希望がありました。同社は計 物のすみかとして年々変化し、成長することから、工事完 測機器の先端企業としてIT社会の一翼を担っており、環境対応の 了時が実質的なスタートになります。生き物の様子を見な 面でも進歩的な取り組みを推進しています。当社は、設計当初か がら維持管理を行うことが望ましいため、以来約2年半に ら群馬大学の石川助教授のアドバイスを受け、 ビオトープ本来の わたり、 当社はお客様とともにモニタリングを継続中です。 目的である生き物の生息場としての視点に立って十分な検討を 調査項目は、生き物の生息状況をはじめ、 ビオトープ装置 行い、生態学に基づいた本格的ビオトープの創出を目指し、設計 アドバンテスト群馬R&Dセンタとビオトープ オオヨシキリの巣 の利用状況、 景観の変化、 水質など多岐にわたっています。 2 と施工を進めました。本ビオトープの総面積は約17,000m で、民 間企業では最大級のものとなります。当社は完成後もビオトープ のモニタリングを続けており、現在では多くの小動物が生息する など、 ビオトープが順調に機能していることを確認しています。 ■工事概要 ■生き物の生息状況の変化を確認 落葉樹林 修景植栽 ウスイロササキリ 2002年度調査では、 鳥類31種(前年度は17種)、 両生類2 種(同1種)、 は虫類3種(同1種)、 昆虫類154種、 魚類3種(放 草原 池 所 在 地:群馬県邑楽郡明和町 2 敷 地 面 積: 250,887.47m 2 延 床 面 積:約19,849.64m 2 ビオトープ面積:約17,000m せせらぎ 落葉樹林 流) など多様な生き物が確認されました。カモ類は多い日に 45 は100羽以上が飛来しました。それまで池にはアオミドロが発 40 生し、 水が汚れて困っていましたが、 そのカモたちがアオミド 35 ロをほとんど食べてくれたおかげで池は元に戻りました。 まさ に自然浄化機能が働いたといえます。そのほかにも群馬県 常緑広葉樹林 のレッドリスト (絶滅の恐れのある野生生物リスト) に記載され ビオトープの平面計画図 ■生態学に基づいた本格的ビオトープ創出を目指す ープ用地は、 若干草が生育している程度の裸地でした。IT先端企 結果、 右のグラフに示すとおり、 ビオトープの方が確認種類の クノロジーと自然が融合し、 人と生き物が共生できる自然のオアシス ランス良く配置し、 環境の多様性を高めました。 また植栽などで をつくり出すことを目的とし、 以下に重点を置き計画しました。 周辺の自然環境と連続させることにより、 ビオトープネットワーク た生息空間を創出し、 周辺環境との連続性とネットワーク化を図り、 水辺から順に、 水生植物→水辺林→雑木林→草地と連続的 生き物の移動経路を確保する。 に変化するエコトーン (環境の推移帯) を形成して、 より自然に 近い環境を創出し、 多様な生き物が生息できる空間を確保しま 水 辺 草 地 した。エコトーンに創出したヨシ原は、 水鳥の退避場や小動物 水 辺 計画地のビオトーブ 人と生き物の非干渉距離を確保 ・谷田川 ・利根川 ・水 田 ・計画地周辺の樹林 ・屋敷林 樹 林 2)失われつつある昔ながらの風景の再現 水田、 雑木林、 屋敷林など、 ひと昔前には関東平野北部のどこにで もあった風景の再現を目指し、 環境の記録保存を行う。 % し、 人と生き物の非干渉距離を確保しました。池と園路が近づ きすぎている箇所には目隠しとなるマウンドを設け、 生き物から 人の姿が直接見えないように配慮しています。 トンボ目 カメムシ目 数値が高いことが判明しました。こうした結果からもビオトー コチョウ目 ハエ目 5 トビゲラ目 0 1号館池 ビオトーブ池 プが順調に機能していることが分かります。 確認種数の比較 伐採材ビオトープはヘビなどの産卵場として、 また伐採竹ビオ トープは狩りバチの営巣場として利用されているのが確認さ れたほか、 数多くの生き物の餌場や越冬場として利用されて いることが判明しています。 狩りバチの巣 従業員の方々の散策の様子 変化について調査を行ってきました。 これにより、 完成当初に 比べ、 草木が繁り、 より自然な景観が形成されてきたことが分 かります。なお昼休みには、 従業員の方々が散策を楽しむなど、 ビオトープが人と自然の触れ合いの場としても機能しています。 ビオトープ装置の配置 生き物の生息場となる、 伐採竹や空石積みなどの「ビオトープ 装置」を園内の環 境 に応じて適宜配置し、 3)従業員の安らぎの場の創出 多様な生き物の生息 IT先端企業に働く従業員の方々が自然と触れ合える安らぎの場を 空間をつくりました。 創出する。 15 ビオトープ内の19地点で定期的に定点撮影を行い、 景観の 公園の池の場合は、 池の縁に沿って園路が配置されることが 鳥、昆虫類など カゲロウ目 ■自然との一体化がより明確に 多いのですが、 このビオトープの池では園路を池から十分に離 水鳥、トンボ、 カエルなど エビ目 20 ヘビの産卵場 の繁殖場などになります。 樹 林 ヨコエビ目 ■ビオトープ装置の利用状況 エコトーンを形成 鳥、チョウ、 バッタなど イシビル目 25 を形成して、 多様な生き物の生息を可能としました。 地域の多様な生き物が生息できるよう、 生態学的な知見に基づい 草 地 ウオビル目 30 います。そして隣接する1号館敷地内とビオトープを比べた 環境多様性とビオトープネットワークの形成 周辺地域の環境要素である、 水辺、 草地、 樹林を敷地内にバ ・利根川河川敷 ・谷田川南側のススキ原 ・畑 地 底 生 動 物 の 確 認 種 数 10 業の研究・開発拠点内に本格的なビオトープを導入することで、 テ 1)多様な生き物の生息空間の創出と周辺環境とのネットワーク ハマダリ目 ナガミミズ目 鳥が繁殖してヒナが無事に巣立った様子なども確認されて -主な実施策- 建設地は、 農地を造成した工業団地の一角に位置しており、 ビオト ている昆虫ウスイロササキリなどの生息や、 オオヨシキリという ニナ目 モノアラガイ目 ビオトープが心の オアシスとなっている 伐採竹 空石積み 2001年7月 2002年7月 &