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ボランティア養成研修 - 独立行政法人 国立青少年教育振興機構
引き出し、雰囲気が非常によい講義であった。グループでの話し合いでは、年齢層が幅広いかっ たため様々な意見が出て、合意に至らなかったところもあったが、活発にできていた。参加者か らは、“人と関わることについて考えるよいきっかけになった”、“もっと時間があればよかった” などの意見が聞かれた。短い時間であったが、内容の濃い時間となっただろう。 資料8 人と関わることを学ぶ活動 ① 講師はどれを出すのか先に言っておき、参加者 全員とジャンケンをする。参加者にどうしてそれ を出したのか、一人ひとりに尋ねていき、様々な 考え方の人がいることを理解する。 ② 2人組で向き合い、視線を合わせたままで、両 手を広げ相手の指の数を数える。早くその数を 言った人が勝ち。勝敗が決まったら組を変え、時 間内に何人に勝てるか競う。どれくらい近づいた ら見えるのかなど、人との距離を考えることで、 自分のセーフティゾーン(安心していられる相手との距離)に気づく。 ③ 2人組であいこになるまでジャンケンをする。できたら近くの2人組と一緒にやる。最後は全 員で行う。 あいこになっていくまでの過程で、相手はどう出していったのか、また自分はそれを受けて どう出していったのかに気づき、人と合わせることについて考える。 資料9 コンセンサス(合意を得ていくこと)について学ぶ活動 「危機からの脱出」 ある旅行団の一員として、旅に出たが、道に迷い仲間からはぐれた。何とか生き残るために解 決しなければならない事柄が次々出てくる。 ① まずは、個人で最善と思われるものを選ぶ。 ② 個人の作業を終えたら、グループで最善とおもわれるものを選ぶ。 集団決定の意味、あり方を学び、グループ内のコミュニケーションやリーダーシップ、合意を 得ていく課程について体験的に学んでいく。 5.講師の選定について 講師は、福岡教育大学助教授鈴木邦治氏、福岡市南区社会福祉協議機会福富佳彦氏、星野村山村留 学センター「星の自然の家」センター長石川信男氏にお願いした。青少年教育施設でのボランティア 活動という視点に、地域でのボランティア活動についても加味した本事業のねらいにつながるための 研修にという視点から、講師を選定した。 鈴木氏は、福岡教育大学で実施されている「学びと体験のパートナーシップ」事業を担当されてお ─ 156 ─ り、学校教育に関わる活動や自然体験活動の場を、積極的に学生に提供されている。また、自身も学 校教育や社会教育で数多くの実践をしている方でもあり、今、子どもたちを取り巻く環境の中で何が 起きているのかを的確に話していただけると思い講師を依頼した。 福富氏は、福岡市南区の社会福祉協議会に勤務し、ボランティア活動や地域での活動に長年携わっ てきている。こうした経験が、参加者にとって、より幅の広い見識の獲得につながると考え、同氏に 講師を依頼した。 石川氏は、山村留学センター長として一年を通して子どもたちと自然の中で生活している。以前 は、消防士をされており、応急救命の知識や技術を持ち合わせている。応急救命の基礎的な知識や 技術を教えていただけるとともに、自然の中での危険を把握する方法について話していただけると考 え、依頼した。 3名の講師とも、事業の趣旨を十分に理解していただき、講義をしてもらうことができた。鈴木氏 は、学校教育と社会教育の連携について、福富氏はボランティアの本質について、石川氏は危険との 付き合い方について、豊富な経験を活かし講義していただいた。その内容は、青少年教育施設でのボ ランティア活動に生かせるばかりでなく、地域での様々な活動にもつながる内容となっていた。 6.そ の 他(広報など) 主に、昨年度までの登録ボランティアならびに、主催事業参加者、主催事業に関わっていただいた ボランティアに要項やチラシを送った。それ以外では、福岡市NPO・ボランティア交流センター「あ すみん」のメーリングリストに事業の内容を載せてもらった。また、新聞等にも掲載してもらうこと ができた。本事業は、地域でのボランティア活動につながるようにという趣旨も盛り込んでいるた め、当施設のある筑前町の教育委員会生涯学習課でも広報をしてもらい、地元で様々なボランティア 活動をしている人やこれからしてみようと思っている人たちにも参加を呼びかけた。 その結果、昨年度の登録ボランティアをはじめ、主催事業参加者、地元筑前町の方々など10代から 70代までという幅広い年齢層の方々の参加が得られた。 事業を通して、今までにない新たなネットワークとして、NPO・ボランティアセンターや地域と連 携することができたことは新たな収穫である。今後は、当施設の取り組みをより多くの方々に伝える ことができるよう、こうしたネットワークを深めるとともに、広めていきたい。 7.事業の評価 (1)成果と課題 <成 果> 事業の趣旨として、青少年教育施設での活動とともに地域での活動も視野に入れたねらいを加 味したことで、内容の幅が広がり、参加者に対し様々な視点からボランティアについて考える機 会を提供することができた。その結果、本事業への満足度は高かった。参加者の中には、様々な 場所でボランティア活動を日常的に行っているものも少なくない。公立青少年施設や、地域の公 民館で活動をしている方もいた。こうした方たちに聞くと、実際に活動を実施しているものの、 ボランティアについて講義を受けたり、様々な人たちとボランティアについて考えたりする機会 ─ 157 ─ はそれほど多くないということであった。地域の中核施設としての機能を期待されている本施設 のような青少年教育施設において、こうした幅の広い視野からボランティアについて学ぶ機会 を提供することは、その役割の範疇にあてはまるだろう。こうしたねらいを持った事業であった が、参加者からはいい感触を得られることができた。来年度以降も、こうした結果をよりよい事 業のために生かしたい。 参加者が積極的に研修に望むように、講義の手法として参加型学習法を多く取り入れたことは 有効であった。また、10代から70代という幅広い年齢層の参加者が集まったことで、様々な経験 や立場からの面白い意見が多く出ていた。そのため、参加型学習法がより深いものになったよう である。参加者からも、“息子のような年代の子たちと話せたことがよかった”、“年配の方のい ろいろな経験を聞くことができた”などの声が聞かれた。 事業で本施設の職員が担当したコマは「出会いのつどい」と「青少年教育施設でのボランティ ア」の2つあった。そのいずれのコマでも意図開きを実施した。「出会いのつどい」では、活動 がすべて終わったあとに実施した。そうすることで、参加者は自分たちがどのようにして緊張 を解していったのか、ふりかえることができたようである。初めから活動のねらいを知ってい たら、参加者が自然な流れでアイスブレイキングに取り組むことができなかっただろう。また、 「青少年教育施設でのボランティア」では講義に入る前に行った。これから行う活動を説明し、 そこから学んでもらいたい内容をあらかじめ把握することで、参加者の意識を学ばせたい部分に 集中させることができた。その結果、短時間でも効果的な活動が行なうことができたのだろう。 この2つのコマでの取り組みから、活動のねらいや活動の内容により、意図開きのタイミングを 計画的に仕組むことで、より効果的な活動がきたいできることに気づいた。今後も、こうした試 みを続け、よりよい研修事業のあり方について検討し、参加者の学びにつなげていきたい。 <課 題> 1泊2日の日程の中に、講義が多く組み込まれていたため、一つ一つが消化不良になってし まったという参加者の声が多く聞かれた。1泊2日では、内容が過密になってしまい、講師への 質問や、講義内容をまとめることができないまま事業を終えることとなってしまった。今後は、 共通カリキュラムを一度に終わらせてしまうのではなく、カリキュラムを数回に分けて実施し、 ゆとりを持って取り組むことができるような日程を検討していくことも考えられよう。また、年 間を通し、計画的にボランティアを養成する仕組みを考えるようにしたい。 本事業を終えて、企画事業にボランティアとして参加した者が少なく、ボランティア養成事業 としての性格が弱かったように感じる。今後は、ボランティアについての学びを深める内容とと もに、子どもたちとの接し方やボランティアマインドの育成なども講義の内容に取り入れ、今後 ボランティアをしたいと思わせるように参加者の意識を高めることが必要である。そうすること で、ボランティアに関する理論と実践のバランスが取れた研修事業となるだろう。 本事業の実施前に、小学校低学年を対象とした企画事業「夜須高原キッズレンジャー」の第1 回目があった。その事業が、本年度の最初となってしまい、関わるボランティアの募集が非常に 難しく、苦労した。年間計画を立てた時点では、このような事態になることを想定しておらず、 配慮に欠けた。夜須高原キッズレンジャーでは、ボランティアの募集は、昨年度に来ていただい ていた方を中心にしたが、日程等が合わず来られる人が少なかった。そして、集まったボラン ─ 158 ─ ティアはそのほとんどがボランティア未経験者であった。講師の下見に合わせてボランティアの 事前研修を実施し、その中で、子どもたちへの関わり方やボランティアの役割について触れる機 会を設けた。そのため、養成研修を終えていないボランティアたちであったが、事業の運営に支 障はなかった。しかしながら、事前研修の内容は、ボランティア養成研修で実施する内容と重複 する部分が多くあった。様々な事業等の運営をともにしていくパートナーであるボランティアを 養成する事業は、年度当初に実施することが望ましい。そうすることで、企画事業の事前研修で は、その研修に特化した内容をすることでボランティアが事業により深く関わることができる。 本事業と同じ日程で、様々な関連団体のイベントが実施されることを、広報の段階で知ること となった。そのため講師の候補に挙げていた方や参加者の日程調整が難しく、苦労した。近隣で 実施される関連団体の事業を考慮に入れ、年度計画を立てていく必要がある。 「出会いのつどい」は、アイスブレイキングの流れに従って、組み立てた。しかしながら、講義 形式の活動が多かったと感じた。もっと体を動かす活動や屋外での活動を多く取り入れて、参加 者同士が体を使いながら緊張をほぐせる仕組みを考えてもよかったと感じている。ある企画事業 に来られていた講師の方からアイスブレイキングは、 “体温を上げる”ことであるという話を聞い た。つまり、アイスブレイクを運動前の準備運動のように考え、体温を上げることで、体の動き をよくし、それとともに心の氷も溶けてくるのである。参加者同士やスタッフが初めて顔を合わ せるアイスブレイクは、どのような活動が有効か、実践の中で検討を深めていきたい部分である。 来年度は、本事業を3回シリーズにすることを考えている。第1回目では、ボランティア活動 の理解や応急救命法などを盛り込み、子どもたちと関わる基本的なスキルを学ぶことやボラン ティアマインドの育成をし、今後、実施される企画事業への参加を促したい。第2回目では、企 画事業でのボランティア経験を踏まえて、青少年教育施設や青少年教育について理解を深める場 としたい。また、子どもたちとの関わり方について不安や課題を共有することもしたい。そし て、第3回目では、年間を通したボランティア活動のふりかえりを実施し、ボランティアの思い を聞き、よきパートナーとして次年度の企画事業等を共に創っていく関係を築くこととしたい。 (2)参加者のアンケート <満 足 度> 本事業の内容について、事後 アンケートにて4段階で評価 し て も ら っ た。 そ の 結 果、 満 資料10 事業に対する満足度 �������������� �������������� 足、やや満足という人がすべて であり、満足度は100%であっ た。青少年教育施設のみではな ���� �� �� �� ���� ��� く、地域での活動に生かせるこ とができる講義の内容であった �� ��� ため、地域で活動をしている参 加者の満足度が高かった。参加 �� ���� ���� �� 者のうち地域での活動をしてい る方々のほとんどは本施設に来たことがなかった。そのような方々に本施設での取り組みを知っ ─ 159 ─ てもらうことができた。そして、これからもこうした研修に参加してみたいという思いを持って もらうことができた。また、従来から活躍していただいていた施設ボランティアも新たな視点を 得ることができ、満足しているとのことであった。 <ふりかえりシート> 資料11 ふりかえりシートから ① 事業を通しての一番の学びは? ○ ボランティアとしてどうあるべきか。ボランティアをしているからえらいのではなく、相手 と同じ目線になって考えることが大切だということを学んだ。(10代男性)。 ○ ボランティアをするにあたって、今では、自分が主体になっていたことに気づかされました。 (20代女性) ○ 様々なレクリエーションを通して、気持ちを互いによい方向に導かせるといった点が重視さ れていることを学んだ。(20代男性) ○ 教職生活50年になりますが、常に新しいことばかりで新鮮でした。(70代男性) ○ 新しい人と出逢え、色々な人の考えや経験を聞け、具体的な実践例など、現場で役に立つも のを楽しく学べました。(20代女性) ○ 職員の方や講師の方の進行や話し方、あともちろんワークショップなどでたくさんの人の意 見を聴けたことです。(20代女性) ○ いなかったことにチャレンジしていて、一番思ったことはレクやゲームの発想が少ないこと です。おもしろいレクやゲームの引き出しがたくさん欲しいなと思っているので知りたいです。 (20代女性) ○ 実際に行動に移すこと(支援の実践)。また、誰とでも親しく、抵抗することのない関係作り に強化する方法を知りたい。(20代男性) ② もっと知りたいことは? ○ 実際に行動に移す(支援の実践)について体験を通じてできる場があればと思いました。(20 代男性) ○ コミュニケーションスキルなど具体的な方法をもっと知りたい。(20代女性) ○ 国立青少年振興機構全体としての実績や活動状況について知りたい。(60代男性) ○ 今、初めて企画を立てています。助言者さんに会ったりと、今までやっていなかったことに チャレンジしてみて、一番思ったことはレクやゲームの発想が少ないことです。おもしろいレ クやゲームの引き出しがたくさん欲しいなと思っているので知りたいです。(20代女性) ○ 実際に行動に移す(支援の実践)、誰とでも親しく、抵抗することのない関係作りに強化する 方法をもっと知りたい。(20代男性) ③ それぞれの現場に戻って、チャレンジしたいことは? ○ 学んだことを生かせる身近なボランティア先を探したい。(20代女性) ○ 何でも相手の目線に合わせることをしようと思っています。すぐにできることはここかなと 思ったので。(20代女性) ○ 現場が学校なので、学校・学級づくり、そして子どもたちをつなぐこと(40代男性) ○ 障害者の方と接するとき、知識学習だけでなく、体験学習を取り入れながら職務にはげみた い(20代女性) ○ 「見る」という勉強がしたい。(20代男性) ○ PAに興味をもったのでいろいろ調べてみたい。またボランティア活動に参加したいと思った。 (10代男性) ─ 160 ─ 「ボランティア養成研修」 ─ 179 ─