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第3節 共生社会に生きる「国際学習」 1.はじめに 人権教育の推進に向け
╙㧟▵ 㧟㧚ฦቇᐕߩቇ⠌⸘↹ ↢␠ળߦ↢߈ࠆޟ࿖㓙ቇ⠌ޠ 1年 㧝㧚ߪߓߦ 国際理解Ⅰ:飛鳥校外学習 【ねらい】 人権教育の推進に向けて,人権についての理解を深化 し,充実させると共に,生徒が人権感覚を十分に身に付け ・歴史に学び親しむ・・・飛鳥の歴史 るための指導を一層充実させていくことが必要である。 に触れ,日本文化や外国(朝鮮半島) との交流起源に触れる機会とする。 本校の人権教育の目標としては, 「一人一人の生徒が人権 の意義・内容や重要性について理解し,自分の大切さと共 ・集団を高める・・・計画,立案,ま に他の人の大切さを認めること」ができるようになり,そ とめに至るまでに,集団として協力し, れが様々な場面や状況下での具体的な態度や行動に現れる 望ましい人間関係をつくる。 とともに,人権が尊重される社会づくりに向けた行動につ 【内容】 ながるようにしていきたい。 ・奈良県明日香村で班別自主研修を行 い,歴史建造物や史跡に訪れ,日本と 上記のような目標の達成に向けて,本校生徒の実態に応 朝鮮半島との文化の交流について学 じて人権教育の充実させていきたいと考える。 ぶ。 㧞㧚ᧄᩞߩੱᮭᢎ⢒ 国際交流Ⅰ:韓国を知ろう。 本校では, 「共生社会に生きる」をキーワードとし て,各学年ごとに人としてよりよい生き方を学ぶ学 【目標】 習を実践している。以下のような内容を設定した。 ・他者との違いや異文化について考え 〈人権学習〉 ると共に,共生社会を築いていくため ◆第1学年 に,お互いに受容する心を養う。 単元①:ちがいのちがい(異文化理解) ・調べ物学習を通して,朝鮮・韓国に 内 容:あってよいちがい。あってはいけないちがい。 ついての理解を深める。特に,修学旅 行先である韓国について興味・関心を (わたしん家の食事から) ◆第2学年 持つ。 単元②:部落問題 【テーマ例】 内 容:水平社宣言の時における差別と戦ってきた人たち ・韓国の習慣・マナー ・韓国の食文化 の思いに触れ,差別と戦う態度を養う。 ◆第3学年 ・韓国の教育と中学校での様子 単元①:部落問題 ・韓国の風物,観光地 内 容:ビデオ『夢の約束』を視聴し,部落差別や就職・ ・韓国の伝統文化 ・韓国の現代文化(スポーツ,芸能, 結婚差別について考える。 ファッションなど) 〈国際理解学習〉 ◆第1学年:国際学習Ⅰ 単元①:飛鳥校外学習(国際理解Ⅰ) 2年 国際理解Ⅱ・ハングル講座 単元②:韓国を知ろう(国際交流Ⅰ) ・韓国留学生を講師として,全10時 ◆第2学年:国際学習Ⅱ 間のハングル講座を行い,ハングルの 単元①:韓国の歴史と日本と関わり(国際理解Ⅱ) 基礎や韓国の文化を学ぶ。文字や数字 内 容:朝鮮半島の歴史と日本との関わり。韓国修学旅行 だけでなく,マナーや礼儀などにも触 に向けて朝鮮半島と日本の関係を歴史的背景も含 れ,修学旅行に向けての意欲の向上を めて関係性を考える。 図る。 単元②:ハングル講座(国際理解Ⅲ) 単元③:韓国教員大学校附設美湖中学校との交流(国際交 流Ⅱ) 国際交流Ⅱ・メールでの交流 ・修学旅行で韓国教員大学校附設美湖 ◆第3学年:共生社会への参加 中学校訪問時のパートナーと事前にメ 単元①②:職場体験学習 ール交換を行い,交流を図る。修学旅 行時に出会う前に自己紹介などお互い に交流しておくことで,出会ったとき — 138 — により深みのある交流となることをね 業後には社会の一員として自覚を持ち,個々に自立して らいとする。 いく力が必要であると考える。しかし,家と学校,塾, ・修学旅行では,美湖中学校の授業に 習い事を中心とした生活を送っている生徒も多く,幅広 参加し,体験を中心とした交流をはか い世代の人と交流する機会に恵まれない生徒もいる。限 り,言葉を超えた活動を行っている。 られた範囲内での交流では,社会性が育たずコミュニケ ーションの力が成長しきっていないことも想定される。 3年 共生社会への参加:職場体験学習 また,学校は社会に出て働く以前の環境であるために最 【目標】 終的な責任を取る立場としての振る舞いが求められるこ ・働くことの喜びと厳しさを経験し, とは少ない。社会に出るということは学校の学習や経験 生きがいについて考える。 を活かして幅広い世代の人と人間関係を結び,個々の特 ・「働く」体験を通して,将来の進路 性を活かして責任をしっかりと果たしていくことに他の 選択に対する意識を高める。 ならない。職場体験の段階でもそれまで学んだ成果が発 ・職業に携わる人々の生き方にふれ 揮されることが望ましく,生徒にとっては学校外である る。 社会とのつながりとなる職場で適切なコミュニケーショ 【内容】 ン能力の獲得を目指す取り組みの意義は大きい。 ・大津,草津,守山市内にある38の 以上の理由より,本単元を設定した。 事業所に分かれ,3日間の職場体験学 㧔㧟㧕ቇ⠌⋡ᮡ 習を行う。 他者の個性を尊重し,自己の個性を発揮しながら, こうした取り組みを学年単位で行い,継続させて いくこと, 「共生社会に生きる」を目指した活動とな 様々な人々とコミュニケーションを図り,協力して ものごとに取り組む能力を養う。 っている。 㧔㧠㧕නరߩ⹏ଔⷙḰ 㧠㧚ታ〣 㧔㧝㧕ᢎ⑼ 単元 ・班での交流において,自分の意見を積極的に述べようと している。 ᖱႎߩᤨ㑆 【興味・意欲・態度】 ・人間関係の大切さを理解し,それぞれの職場に応じ 「社会的なコミュニケーション」 たコミュニケーション能力があることを理解でき る。 㧔㧞㧕නర⸳ቯߩℂ↱ コミュニケーションをとる力は学校生活のみでは なく,あらゆる局面で必要となる能力である。これ 【思考・判断・技能】 ・職場体験における責任の重大さを理解することが できる。 【知識・理解】 まで生徒は,各教科や総合学習,情報の時間を通し 㧔㧡㧕නర⸘↹ をしてきた。特に「情報の時間」では,1年生の段 第1次 社会的なコミュニケーションについて 1時間 階から「人とのコミュニケーション」や「メディア によるコミュニケーション」といった単元の学習を 第2次 身の回りの職業について 通して,発信者と受信者の双方の立場からよりよい 第3次 1時間 コミュニケーションの在り方ついての学習を続けて きた。また,メディアを扱ったコミュニケーション 1時間 職場体験学習先でのコミュニケーション 本時1/1 第4次 職場体験学習において注意するべきこと 1時間 の視点でその利用法について多角的・多面的に学習 を積んできた。それぞれの学級で担任が担当する「社 第5次 コミュニケーションで大切なこと 会的なコミュニケ―ション」の単元においては,こ れら3年間を通して学習してきた内容を学級での活 動を含めて,日常的に様々な場面で活用できる能力 の獲得につなげていきたいと考えた。 中学3年生は,義務教育最後の年であり,生徒によ っては,卒業後に就職するという選択もありうる。そ のために,進学や就職のいずれの進路選択をしても,卒 — 139 — 1時間 道徳・ 人権教育 て様々な角度からコミュニケーションについて学習 (�)���学習�� 学習内容・活動 指導・支援指導・評価規準(◆) 導 1. 本時の目標を知る。 1. 職場体験学習に対する意識を高め,明日から体験先での活 入 動のイメージを膨らませる。 展 2. 4人グループになり,次の場面の対 2a. それぞれの体験先での場面をイメージさせ,自分がどのよ 開 応の仕方について意見を出し合う。 うな対応をとるかを考えさせる。 ◆班での交流において,自分の意見を積極的に述べようしてい る。 【関心・意欲・態度】 (観察) 3. 班ごとに発表し,意見を交流する。 3a. 班ごとに発表させ,意見を交流させる。 3b. 実演できそうな意見については実演させる。 4. 社会的なコミュニケーションにおい 4a. それぞれの職場で働いている場面をイメージさせ,どんな て求められる力について考える。 力が必要かを思いつくだけワークシートに書かせる。 4b. それぞれの職業において対応する人の違い,扱う物の違い などから必要とされる力も違うことに気づかせる。 4c. コミュニケーションの対象が,職場の人なのか,お客さん (園児)なのかをおさえる。 ◆人間関係の大切さを理解し,それぞれの職場に応じたコミュ ニケーションスキルが必要であることを理解できる。【思考・ 判断・技能】 (観察) ま 5. 本時のまとめをする。 5a. 企業が社員に求める力として,①挨拶②コミュニケーショ と ン能力③常識が求められていることを確認する。 め 5b. 職場体験学習でおさえておきたいことを確認させる。 ・挨拶 ・効果的なコミュニケーション ・対人関係スキル(質問する能力,聴くこと) (�)�� これまで職場体験学習の事前学習として対人スキ ルの向上やトラブル時の対処の仕方について同じよ うな授業を行ってきた。とりわけ,体験中にトラブ ルや事故などが起こった時の適切な対応について考 えさせてきた。これまでの行われてきた授業の内容 を社会的なコミュニケーションの1つのスキルと位 置づけている。生徒たちは,1年生から様々なコミ ュニケーションについて学習を積んできており,こ れまでの学習と系統立てて学習させることが大きな 意味を持つものと考える。今回の授業では,4つの 事業所について,仕事をする上で必要なコミュニケ ーション能力について考察し,意見を出し合わせた。 職場体験終了後,生徒に事後レポートを書かせた。 4つの事業所のどれにも共通する力もあれば,そう そのレポートからは本実践に沿った感想が多く見ら でない力もある。まずは,社会人として必要な力に れた。生徒は,3日間の成果として勤労の大変さを ついて考え,その上でそれぞれの職業に応じた必要 理解し,またやり甲斐も感じたようであった。普段 な力について考察した。 の学校生活にはない厳しさを肌で感じ,働くことの また,シンキングツールを使って4象限に分けて 意義を感じたようである。また,3日間の職場体験 考察させることにした。その結果として自分の考え を通して102の事業所から生徒の評価をしていた を整理して考えることができたと意見を持つ生徒が だいた。質問とアンケートの結果は以下の通りであ 多かった。 る。 ①言葉遣いやあいさつについて — 140 — いること,思っていることを肌で感じることができ, A:社会人なみにしっ かりとできた。 自分の思いもダイレクトに伝えることができる。ま さに実践的体験学習である。事前・事後学習などを 42名 通して生徒が学んでいる姿を目にしていると,生き B:中学生として期待 できる程度はできた。 生きとした実際の交流体験活動が貴重な経験となっ ている。また,今年度から学級活動に情報の時間を 59名 組み合わせて,職場体験学習の事前指導や体験活動 C:その他 を社会的なコミュニケーションとして位置づけて授 1名 業を行ったことにより,コミュニケーションの1つ の学習として系統立てることができた。義務教育の ②態度やマナーについて 終了に際し,生徒には社会人としての自覚と責任を A:十分に気をつけて 少しでも感じて欲しい。 いた。 69名 B:気をつけていた 33名 C:その他 (高橋 利彰) 0名 ③遅刻,無欠席について A:よくがんばった。 B:がんばった。 99名 3名 ④活動全体を通して A:よくがんばった。 92名 B:がんばった。 10名 各事業所からのアンケート結果からも,生徒たち は3日間の実習に一生懸命に取り組んだと思われ 事にも前向きな態度で取り組むことができる。この ことがそのために事業所からのいい評価につながっ ていると考える。少数の意見ではあるが,「声が小 さく,もっと大きな声で」とのコメントをいただく こともあった。 㧡㧚ᚑᨐߣ⺖㗴 ここ数年に渡って「共生社会を生きる」をキーワ ードに実践をしており,ある程度系統立てたカリキ ュラムになりつつある。取り組みの大きな柱は, 「国 際学習」であり,修学旅行での美湖中学校との交流 は,生徒にとって大変貴重な経験だと考える。その 経験の深みを持たすために韓国の文化を知り,ハン グル語を学ぶことの意味は大きい。また,生徒同士 の関わりを持つことによって,パートナーが感じて — 141 — 道徳・ 人権教育 る。本校には,積極的に活動できる生徒が多く,何