...

2-2-4ライフライン被害

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

2-2-4ライフライン被害
ライフラインの被害想定
4
阪神・淡路大震災では、上水道,下水道,都市ガス、電力及び電話等のライフライン施
設に多くの被害が発生し、住民生活に大きな影響を与えた。
ライフラインとは、上水道,下水道、都市ガスおよび電力等の住民生活に必要不可欠な
生命線のことを指し、建物や土木構造物のように独立した構造物ではなく、ネットワーク
で機能するものであるとともに、地震時の被災は単に施設被害にとどまらず、生活支障に
直結する。
本調査では、上水道,下水道,都市ガス、電力施設および電話について、地震時におけ
る施設被害、機能・供給支障および復旧の想定を行った。また、被害額の概算も行った。
4.1 上水道の被害想定
上水道施設被害によって発生する上水道の供給支障は、住民生活への直接的影響のみな
らず、消火活動支障や他のライフライン系へも影響を及ぼすことから、地震時の施設被害
量および供給支障程度や復旧日数を事前に把握しておくことが重要である。
阪神・淡路大震災では、神戸市の水道施設は配水管および給水管に大きな被害が発生し、
広範囲かつ長期にわたって断水が生じた原因となった。この地震によって断水が発生した
地域は、神戸市をはじめ兵庫県内9市5町におよび、震災直後には全世帯数の約 85%が断
水した。基幹施設としては、貯水施設5箇所、浄水施設7箇所中2箇所、送水施設5箇所、
配水施設 13 箇所に被害を受けたが、地震規模からみれば思いのほか少なかった。神戸市に
おいては、基幹施設の一部破損等については早期に当面の機能修復が図られたが、一方管
路の被害については被害箇所が多く、漏水確認に手間取ったこと、倒壊家屋や道路陥没に
工事進捗を妨げられたこと、交通渋滞のため作業効率が上がらなかったことなどから、全
市復旧まで 90 日を要している。
本調査では、上水道施設のうち被害量が多く復旧に時間を要する配水管の被害量を想定
するとともに、施設被害から推定される地震直後および復旧期間中の供給支障、応急日数
を検討した。
4.1.1 調査対象
ここで対象とするのは、上水道とし、被害想定の対象施設は、被害量が多く復旧に時間
を要すると考えられる配水管とした。
調査にあたり、市の水道資料から、平成 21 年 3 月現在の水道施設の現況に関する資料(埋
設管の管種・管径別延長、供給区域、給水人口)を収集し、道路延長を用いて被害想定の
調査単位毎埋設管延長を把握した。また、給水人口から給水世帯数を行政人口と行政世帯
数の関係を用いて推定した。
表 4.1-1 に、上水道の給水人口、世帯および埋設管の延長を、図 4.1-1 に、メッシュ毎
の上水道延長を示す。
−98−
表 4.1-1 上水道の現況
区名
給水人口(人)
給水戸数(世帯)
水道管延長(km)
西区
83,309
33,229
373.7
北区
137,962
58,798
312.2
大宮区
108,239
48,685
219.5
見沼区
155,622
63,570
540.1
中央区
94,474
41,728
155.1
桜区
93,782
40,843
200.2
浦和区
145,804
63,599
237.1
南区
173,228
76,063
269.5
緑区
110,125
43,221
426.7
岩槻区
112,198
44,534
660.4
1,214,743
514,270
3,394.6
計
図 4.1-1 上水道管延長
−99−
4.1.2 被害想定手法
上水道の被害想定の流れは、図 4.1-2 のとおりである。
上水道施設資料
既往震災事例
地震動
液状化
物的被害確率の設定
施設の物的被害数想定
供給人口資料
断水確率の設定
供給支障の想定
復旧人員
復旧効率の設定
復旧日数の想定
要応急給水量の想定
図 4.1-2 上水道の被害想定フロー
(1) 物的被害の想定手法
埼玉県は、中央防災会議が整理した阪神・淡路大震災を含む既往の被害地震の実態から
作成した標準被害率と、液状化危険度ランクによる補正係数、および、管種・管径別の補
正係数に配水管延長を掛け合わせる式を用いて、配水管の被害を求めている。
Nh=Rfm・N
Rfm=Cp・Cd・Rf
Rf=2.4・10-3・(V−20)
ここに、Nh :埋設管被害箇所数(箇所)
Rfm:被害率(箇所/km)
N :施設量(km)
Cg :液状化危険度ランクによる補正係数
Cp :管種・管径別補正係数
Rf :標準被害率(箇所/km)
V
:地表最大速度(gal)
本調査でも、この式を用いて配水管の被害箇所数の算定を行った。
地盤係数・管種係数・管径係数についても、平成 19 年度調査で設定されている値を基本
に、表 4.1-2 のように設定した。
−100−
表 4.1-2(1) 液状化補正係数Cg
PL 値
Cg
0
1.0
0<PL≦5
1.2
5<PL≦15
1.5
15<PL
3.0
表 4.1-2(2) 管径係数 Cd
管
100mm∼
300mm∼
500mm∼
250mm
450mm
900mm
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.60
0.30
0.30
0.09
0.05
鋳鉄管
1.70
1.20
0.40
0.40
0.15
鋼管
0.84
0.42
0.24
0.24
0.24
塩化ビニール管
1.50
1.20
1.20
1.20
1.20
石綿セメント管
6.90
2.70
1.20
1.20
1.20
管
径
種
ダクタイル鋳鉄管
(耐震継手あり)
ダクタイル鋳鉄管
(耐震継手なし)
75mm 以下
※ステンレス管、ポリエチレン管は、鋼管と同程度とした
−101−
1000mm 以上
(2) 供給支障・復旧の想定方法
a) 供給支障
上水道管破損が発生すると、これに伴って供給停止が発生する。川上(1996)は、既
往地震による各市町村の配水管の物的な被害率と地震直後の断水率との関係を分析し、
以下の式を求めている。
発生直後 y=1/(1+0.0473x-1.61)
1日後
y=1/(1+0.307 x-1.17)
2日後
y=1/(1+0.319 x-1.18)
ここで、y:断水率
x:配水管被害率(箇所/km)
平成 19 年度調査では、停電等の配水管の被害以外の影響で断水となる場合を考慮して、
停電の影響が少なくなると考えられる地震発生1日後の回帰曲線を用いて断水率、断水
世帯数及び断水人口を予測している。本調査でも、これを参考に、1日後の回帰曲線を
用いることとした。
b) 応急復旧
供給区域内の総復旧日数がどれくらいになるかは、復旧対象被害数と投入できる復旧
人員を比較することによって求めた。
①復旧対象
これまでの震災事例からすると、拠点施設(浄水場・配水所等)の被害は比較的軽微
であり、かつ応急復旧も短期間で終了している反面、配水管路施設復旧には多大な時間
と復旧人員を要している。さらに、需要家への給水管の処理は、膨大な数量となってい
る。
これらのことから、ここで復旧日数を算定するための復旧対象被害を、次のとおりと
した。
○配水管被害箇所
○給水管被害
−102−
給水管の被害数については、物的被害想定では検討していないため、これまでの地震
被害例(図 4.1-6)を参考に、配水管被害率と給水管被害率の関係を次のように仮定した。
Bq=0.188・Rfm・Hq
ここに、Bq :給水管被害箇所数(箇所)
Rfm :配水管被害率(箇所/km)
Hq
:給水戸数(戸)
0.35
兵庫県南部地震
西宮市
給水管被害率(箇所/戸)
0.30
0.25
y = 0.188x
0.20
0.15
0.10
0.05
宮城県沖地震
仙台市
兵庫県南部地震
神戸市
0.00
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
配 水 管 被 害 率 (箇 所 /km)
1.2
1.4
図 4.1-6 配水管被害率と給水管被害率の関係
②復旧効率
神奈川県(1986)で設定されている復旧効率を参考に、水道管の口径を考慮して、表
4.1-3 の復旧効率を設定した。
表 4.1-3 水道管復旧効率
区
分
復旧効率
導・送水管
6 人日/件
配水本枝管
3 人日/件
給
水
管
1.5 人日/件
③復旧作業要員
水道の復旧作業員は、埼玉県では統計年鑑より、県内最大で 4,300 人と推定している。
本調査では、このうち本市の上水道復旧作業に従事可能な従業者を半分程度であると仮
定して、復旧作業人員を想定した。
また、埼玉県では、阪神・淡路大震災時の実績から、県外からの応援として、最大 1,000
人を考慮している。本調査では、県外からの応援は、さいたま市直下地震では、最大人
数、東京湾北部地震では、最大人数の 5 割が期待できるものとして、地震毎に次の様に
設定した。
さいたま市直下地震:1,000 人
東京湾北部地震
:
500 人
県外からの応援のうち、市内の復旧作業に従事可能な人員も県内復旧作業員と同様に
−103−
考え、半分程度であると考えた。
復旧作業は、市内の復旧作業要員、県外からの応援要員で行うものとし、各区の復旧
要員は、人口比により配分した。
④復旧経過
既往地震における水道の経過日数でみた復旧率の変化を図 4.1-7 に示す。これを、復
旧経過率(総復旧時間に対する経過時間)で正規化してまとめたのが図 4.1-8 である。
ここで、水道の復旧は復旧前期と後期では復旧率が異なることがわかる。これは、前
期は復旧効率の良い地域を中心に作業が行われ、後期は作業効率の悪い地域に至って回
復が遅くなることが影響している。
本調査では、図 4.1-8 中の破線に沿った復旧がなされるものと仮定し、供給支障復旧
経過を推定した。
100
80
80
復
旧 60
率
復
旧 60
率
︵
︵
100
︶
% 40
︶
% 40
宮城県沖地震(仙台市)
日本海中部地震(男鹿市)
日本海中部地震(能代市)
兵庫県南部地震(神戸市)
宮城県沖地震(仙台市)
日本海中部地震(男鹿市)
日本海中部地震(能代市)
20
20
兵庫県南部地震(神戸市)
兵庫県南部地震(西宮市)
採用復旧曲線
兵庫県南部地震(西宮市)
0
0
0
10
20
30
40
50
60
経過日数(日)
70
80
90
図 4.1-7 上水道の復旧事例
0
20
40
60
80
100
復旧経過率(%)=(経過時間/総復旧時間)×100
図 4.1-8 上水道の復旧曲線
c) 応急給水必要量
断水となった住民に対して、何らかの方法で応急給水を行う必要がある。ここで、応
急給水の必要量を、地震後3日までは1人当たり3㍑/日、4日目以降は 20 ㍑/日とし
て、日最大応急給水必要量を求めた。
(3) 被害額の想定方法
平成 17 年度調査では、被害額は、被害が生じた配水管の種類により大きく異なるが、上
水道施設全体の被害額の概算が過去の地震被害記録から作成された次式により求めること
ができるとしている。
y=0.4162 x1.4012
y:被害額(百万円)
x:配水管被害数(箇所)
本調査でも、この式を用いて被害額を想定した。
−104−
4.1.3 被害想定結果
表 4.1-4、表 4.1-5 に想定地震時の上水道管被害状況、支障状況および復旧状況を示す。
また、図 4.1-9、図 4.1-10 に想定地震毎にメッシュ毎の配水管被害箇所数を示す。
さいたま市直下地震では、配水管が 900 箇所以上(被害率 0.27 箇所/km)被害を受け、
50 万世帯以上(断水率 42%)で断水すると想定される。発災当日の応急給水量は 1,500t
以上必要となる。また、一日当たりの最大応急給水量は 8,100t以上が必要となる。復旧に
は、1 ヶ月程度かかると想定される。被害額は、約 24 億円と想定される。
東京湾北部地震では、配水管が約 440 箇所(被害率 0.13 箇所/km)被害を受け、27 万世
帯以上(断水率 23%)で断水すると想定される。発災当日の応急給水量は 800t 以上必要と
なる。また、一日当たりの最大応急給水量は約 2,900tが必要となる。復旧には、応援要因
が他都県、他市町村にも回ることも想定されるが、半月程度であると想定される。被害額
は、約 9 億円と想定される。
本調査で想定した供給支障(断水率および断水戸数)は、既往地震における管路被害率
と断水率の関係を平均化した式から求めたものであり、誤差を多分に含んでいる。また、
取水場,浄水場および導・送水管等の基幹施設に著しい被害が生じた場合には、全戸断水
となる可能性もある。
復旧については、市内の復旧要員が推定値であること、復旧要員・車両の移動に関する
障害や復旧応援など不確実性があることから、復旧日数は概ねの目安として捉えておく必
要がある。
本調査結果から、大規模地震時には大量の応急給水が必要であることがわかった。配水
管を初め水道供給施設の耐震化の促進や、耐震貯水槽、給水車、応急給水施設等の整備を
図るとともに、緊急時の効果的な応急給水計画を事前に策定しておく必要がある。特に大
規模地震では市単独では対処しきれないケースが多く、広域的な復旧計画・応急給水計画
の検討も望まれる。
また、何より重要なのは、住民や企業が自分達の使用する水を備蓄しておくといった、
個人レベルや地域ぐるみでの防災活動を日常的に意識し実施することである。
−105−
区名
表 4.1-4 上水道の被害想定結果(さいたま市直下地震)
物的被害
支障
復旧
配水管
1 日後
1 ヶ月後
最 大
被害額
給水管
要復旧 要復旧
要応急
被害
(百万円)
被害
日
数
作業量
被害率
断水人口 断水率 断水人口 断水率
給水量
箇所数
(箇所/km) (件)
(%) (人) (%) (人日) (日)
(人)
(t)
(箇所)
西区
153
0.41
2,550
44,409 53.3
0
0.0
4,284
25.5
784
477
北区
64
0.20
2,255
46,424 33.7
0
0.0
3,574
12.0
656
140
大宮区
61
0.28
2,527
45,405 41.9
0
0.0
3,973
16.0
738
131
見沼区
97
0.18
2,145
47,296 30.4
0
0.0
3,510
11.0
628
253
中央区
49
0.31
2,463
43,130 45.7
0
0.0
3,842
18.0
719
96
107
0.54
4,123
57,341 61.1
25
0.0
6,508
31.0
1,036
292
61
0.26
3,098
58,538 40.1
0
0.0
4,832
15.0
937
133
南区
117
0.43
6,220
95,540 55.2
0
0.0
9,682
25.0
1,682
330
緑区
91
0.21
1,740
38,469 34.9
0
0.0
2,885
13.0
571
233
岩槻区
101
0.15
1,283
29,879 26.6
0
0.0
2,230
10.0
366
269
計
901
0.27 28,404 506,431 41.7
25
0.0 45,320
31.0
8,115
2,355
桜区
浦和区
区名
表 4.1-5 上水道の被害想定結果(東京湾北部地震)
物的被害
支障
復旧
配水管
1 日後
1 ヶ月後
最 大
被害額
給水管
要復旧 要復旧
要応急
被害
(百万円)
被害率 被害 断水人口 断水率 断水人口 断水率 作業量 日 数
給水量
箇所数
(人)
(箇所/km) (件)
(%) (人) (%) (人日) (日)
(t)
(箇所)
西区
41
0.11
683
16,373 19.7
0
0.0
1,148
7.5
139
75
北区
22
0.07
776
17,529 12.7
0
0.0
1,230
4.5
53
31
大宮区
20
0.09
846
18,112 16.7
0
0.0
1,330
6.0
86
28
見沼区
54
0.10
1,199
28,178 18.1
0
0.0
1,962
7.0
209
112
中央区
16
0.10
804
17,453 18.5
0
0.0
1,254
6.5
108
20
桜区
35
0.18
1,354
28,090 30.0
0
0.0
2,138
11.5
385
61
浦和区
25
0.11
1,266
27,795 19.1
0
0.0
1,975
7.0
206
38
南区
58
0.22
3,097
61,023 35.2
0
0.0
4,821
14.0
944
124
緑区
71
0.17
1,351
31,425 28.5
0
0.0
2,240
11.5
431
163
岩槻区
93
0.14
1,184
27,861 24.8
0
0.0
2,057
10.0
341
240
計
436
0.13 12,560 273,839 22.5
0
0.0 20,155
14.0
2,865
894
−106−
図 4.1-9 上水道被害想定結果(さいたま市直下地震)
図 4.1-10 上水道被害想定結果(東京湾北部地震)
−107−
4.2 下水道の被害想定
阪神・淡路大震災は、処理場・管渠などの下水道施設に多大な被害をもたらした。処理
場・ポンプ場はこれまでの地震にない大きな被害を被っており、3府県の 102 処理場のう
ち 43 処理場が被災し、このうち兵庫県内の8処理場では、処理機能に影響を及ぼす深刻な
被害があったとともに、管路施設の被害も甚大であった。
都市化が進んだ地域においては、下水道に対する依存度が高く、被害が発生すれば復旧
に相当の時間がかかることが予想され、社会的影響も大きい。
本調査では、地震時の下水道施設の被害を予測するとともに、復旧にどの程度の日数が
かかるかを想定した。また、被害額の概算も行った。
4.2.1 調査対象
ここで対象とする下水道施設は、汚水管および雨水管である。
下水道施設は、処理場・ポンプ場といった拠点施設と、対象流域から拠点施設までを結
ぶ管路施設とからなり、それらは基本的に樹枝状のネットワークを形成している。
想定地震時に拠点施設に被害が発生するかどうかは、個々の施設の耐震性と立地条件に
よって異なり、詳細な検討を要するが、本調査では定性的判断を越える被害想定は困難で
ある。
一方、管路施設は、これまでの地震事例でも多くの被害が発生しており、また機能支障
や復旧にかかる日数に大きく影響する。また、阪神・淡路大震災では、管路施設の応急復
旧日数は、拠点施設のそれを上回っている。
これらのことから、本調査では下水道施設のうち、物的被害想定の対象として管路施設
をとりあげた。
調査にあたり、平成 21 年 10 月現在の下水道施設の現況に関する資料(埋設管の管種・
管径別データ)を収集し、道路延長を用いて被害想定を行う調査単位毎の施設分布状況を
把握した。
表 4.2-1 に、下水道の処理人口、埋設管の延長を、図 4.2-1 に、メッシュ毎の下水道延
長を示す。
−108−
表 4.2-1 下水道の現況
区名
処理人口(人)
埋設管延長(km)
西区
83,385
315.66
北区
138,087
355.33
大宮区
108,337
249.82
見沼区
155,763
499.50
中央区
94,560
176.55
桜区
93,867
211.08
浦和区
145,937
269.79
南区
173,385
306.70
緑区
110,225
409.43
岩槻区
112,300
287.82
1,215,846
3,081.66
計
図 4.2-1 下水道管延長
−109−
4.2.2 被害想定手法
下水道の被害想定の流れは、図 4.2-2 のとおりである。
下水道施設資料
既往震災事例
地震動
液状化
物的被害確率の設定
施設の物的被害数想定
復旧率の設定
復旧日数の想定
図 4.2-2 下水道の被害想定フロー
(1) 物的被害の想定手法
阪神・淡路大震災における管路(管渠およびマンホール)の被害は特に甚大であり、図
4.2-3 に示すように非常に多くの被害が発生している。仙台市(1996)は、この地震におけ
る地表最大加速度と継手部および本管部の被害率の関係をまとめており、これによると、
概ね加速度が大きくなるにつれて被害率が大きくなる傾向が伺える。本管部における円周
方向・管軸方向クラックは、ともに 500gal を越えたあたりから被害率が出始めている。こ
れらの数値は、水道管等他の埋設管と比較して数倍程度の値となっている。
20,000
15,000
10
管渠被害数
マンホール被害数
管渠被害率
被
害
箇 10,000
所
数
20
大阪市
尼崎市
伊丹市
川西市
宝塚市
西宮市
芦屋市
40
神戸市
0
明石市
30
兵庫県流域
下水道
5,000
被害数は、同一の管もしくはマンホールでの複数の被害を含む。
図 4.2-3 阪神・淡路大震災における下水道(汚水)被害
−110−
管渠被害率(箇所/km)
0
本調査では、阪神・淡路大震災の下水道被害は地表加速度と被害率に関係があること、
水道管と同様に埋設形態をとることから、久保・片山(1975、1981)の方法を適用して地
下埋設管の被害量を把握した。
Nh=Rfm・N
Rfm=Cg・Cp・Cd・Rf
Rf=1.7・A6.1・10-16
ここに、Nh :埋設管被害箇所数(箇所)
Rfm:被害率(箇所/km)
N :施設量(km)
Cg :地盤・液状化補正係数
Cp :管種係数
Cd :管径係数
Rf :標準被害率(箇所/km)(ただし、Rf≧2.0 のときRf=2.0)
A
:地表最大加速度(gal)=100.908×V1.13
V:最大速度(kine)
地盤係数・管種係数については、東京都(1991)や川崎市(1988)で実施された設定
されている値を基本に、表 4.2-2 のとおりに設定した。
表 4.2-2(1) 地盤・液状化補正係数Cg
分
類
Cg
備
表 4.2-2(2)
管
考
管種係数Cp
種
Cp
台地
0.9
コンクリート管
0.5
谷底平野
1.0
塩化ビニル管
1.5
三角州
1.0
ダクタイル鋳鉄管
0.2
自然堤防
2.0
ボックスカルバート・開渠
0.2
液 状 化*
2.9
5<PL≦15
強化プラスチック管
1.5
4.7
15<PL
陶管
2.0
管種不明
1.0
*)液状化地域では液状化係数を優先する
表 4.2-2(3)
管
管径係数 Cd
径
Cd
150mm 以下
1.2
150mm 未満∼350mm
0.6
400∼1000mm
0.4
1100mm 以上
0.2
管径不明
1.0
−111−
(2) 処理支障・応急復旧の想定手法
①処理支障の想定手法
東京都(1991)は、液状化による管渠の接合部等における損傷部からの流入により、管
渠内に土砂が堆積支線管渠の土砂堆積被害を求めている。
本調査では、この手法を用いて下水道の機能支障を想定した。
Nd=C4・R・L
Nd:支線管渠の土砂堆積延長(km)
C4 :土被り深さによる補正係数(10m 以浅 1.0、10m 以深 0.0)
R :液状化危険度ランクごとの標準被害率
L :管渠延長(km)
C4 は、土かぶり深さが不明のため、すべて 1.0 であるとした。
R は、表 4.2-3 の様に設定した。
表 4.2-3 液状化危険度ランクごとの標準被害率
液状化危険度
PL 値
標準被害率 R
かなり高い
15<PL
0.068
高い
5<PL≦15
0.019
低い
0<PL≦5
0.008
かなり低い
PL=0
0.000
また、機能支障率=(土砂堆積被害延長の和)/(管渠総延長)で表せるものとした。
以上の方法で区毎の機能支障率を求め、これに処理人口をかけ、支障人口とした。
②応急復旧の想定手法
阪神・淡路大震災では、下水道施設に多くの被害が発生し、復旧に多くの日数を要し
た。処理場は、概ね 1 ヶ月以内で応急復旧しており、ポンプ場は約半月で復旧した。し
かしながら埋設管は、神戸市で汚水・雨水管とも約 4.5 ヶ月で幹線の応急復旧がなされ
たように、非常に日数を要した(表 4.2-4)。これは、下水道管の被害数が多いことと、
他の埋設管と比較して被害の把握が困難であることが理由としてあげられる。
1983 年日本海中部地震における下水道の応急復旧状況は、表 4.2-5 のとおりである。
表 4.2-4 阪神・淡路大震災の神戸市の下水道復旧状況
汚水管延長
3,315km
雨水管延長
484km
汚水管被害箇所
16,086 箇所
雨水幹線被害箇所
6.3km
雨水枝線被害箇所
48.5km
応急
雨水幹線
5月末(4.5 ヶ月)
復旧
汚水枝線
5月末(4.5 ヶ月)
−112−
表 4.2-5 日本海中部地震における下水道の復旧
秋
田
市
能
代
管渠敷設延長(km)
282
59
管渠被害箇所数(箇所)
914
1,446
6日
14 日
市
(目地ずれ・破損)
応急復旧日数
復旧工事開始時期
約4ヶ月後
約4ヶ月後
本調査では、既往地震における被害箇所数と応急復旧および復旧工事開始時期までにか
かった日数の関係から、想定被害量に対する対応日数を求めた。
D=0.0084・Nh
M=10.24・logNh−27.25 (Nh>1000 の場合)
M=0.0034・Nh
(Nh<1000 の場合)
ここに、D :応急復旧対処日数
M :復旧工事開始月(ヶ月後、ただし半月きざみ)
Nh :下水道管の被害数(箇所)
なお、ここでの応急復旧での対象となる処置は、管渠の閉塞土および倒壊家屋の瓦礫の
撤去、破断管渠の仮工事等、緊急を要する箇所の処置をいう。この後、査定用調査→査定
設計→実施設計→本復旧工事開始となる。
(3) 被害額の想定方法
平成 17 年度調査では、被害額は、被害が生じた配水管の種類により大きく異なるが、下
水道全体の被害額の概算も、上水道の被害額概算式により求めることができるとしている。
本調査でも、この式を用いて被害額を想定した。
−113−
4.2.3 被害想定結果
表 4.2-6、表 4.2-7 に想定地震時の下水道管被害量、被害率、応急復旧日数および本復旧
開始月を示す。また、図 4.2-4、図 4.2-5 に想定地震毎にメッシュ毎の下水道管被害箇所数
を示す。
さいたま市直下地震では、4,000 箇所以上(1.31 箇所/km)の被害が想定される。応急復
旧は約 5 日、復旧工事は半月∼2 ヶ月後に開始されると想定される。被害額は、190 億円以
上になると想定される。
東京湾北部地震では、約 3,000 箇所(0.97 箇所/km)の被害が想定される。応急復旧は 3
日以上、復旧工事は半月∼1 ヶ月半後に開始されると想定される。被害額は、125 億円以上
になると想定される。
ここでの応急復旧とはあくまで仮の手当であり、流下機能を完全に失ったものは本格復
旧を待たないと機能復帰しない。下水道は他のライフラインと異なり、根幹施設が下流に
あるため、根幹施設の復旧を先行して実施する必要があり、管渠の復旧は根幹施設の処理
能力回復に併せて実施することになる。また、上水道が復旧されるに従い下水が発生し、
それに対処する必要があることからも、復旧優先度や復旧日数の判断は複雑となる。被害
が甚大な地域については、下水道被害による生活支障の回復は、復旧工事開始以後になる
と考えておく必要がある。
一方で、特にし尿処理は、下水道施設被害の有無に関わらず常に必要であり、代替手段
(仮設トイレ、バキューム車等)を予め検討しておくことが望まれる。
−114−
区名
表 4.2-6 下水道の被害想定結果(さいたま市直下地震)
物的被害
支障
応急復旧
土砂
応急復旧 復旧工事
被害箇所 被害率 土砂堆積
支障人口
堆積率
対処日数 開始月
(箇所) (箇所/km) 延長(km)
(人)
(%)
(日) (ヶ月後)
被害額
(百万円)
西区
494
1.56
2.95
0.94
780
4.1
1.5
2,476
北区
337
0.95
0.83
0.23
322
2.8
1.0
1,449
大宮区
272
1.09
0.99
0.40
430
2.3
1.0
1,073
見沼区
556
1.11
2.08
0.42
647
4.7
2.0
2,922
中央区
206
1.17
0.81
0.46
432
1.7
0.5
727
桜区
464
2.20
3.49
1.65
1,551
3.9
1.5
2,268
浦和区
261
0.97
0.71
0.26
387
2.2
1.0
1,013
南区
493
1.61
3.04
0.99
1,718
4.1
1.5
2,469
緑区
522
1.27
2.46
0.60
663
4.4
2.0
2,675
岩槻区
446
1.55
2.64
0.92
1,029
3.7
1.5
2,146
4,051
1.31
20.00
0.65
7,959
4.7
2.0
19,217
計
区名
表 4.2-7 下水道の被害想定結果(東京湾北部地震)
物的被害
支障
応急復旧
土砂
応急復旧 復旧工事
被害箇所 被害率 土砂堆積
支障人口
堆積率
対処日数 開始月
(箇所) (箇所/km) 延長(km)
(人)
(%)
(日) (ヶ月後)
被害額
(百万円)
西区
358
1.13
1.61
0.51
426
3.0
1.0
1,577
北区
285
0.80
0.23
0.06
89
2.4
1.0
1,146
大宮区
202
0.81
0.16
0.06
69
1.7
0.5
707
見沼区
408
0.82
0.57
0.11
179
3.4
1.5
1,894
中央区
141
0.80
0.09
0.05
50
1.2
0.5
427
桜区
334
1.58
2.74
1.30
1,218
2.8
1.0
1,431
浦和区
208
0.77
0.12
0.05
66
1.7
0.5
737
南区
359
1.17
3.92
1.28
2,214
3.0
1.0
1,583
緑区
377
0.92
1.24
0.30
334
3.2
1.5
1,695
岩槻区
318
1.10
1.93
0.67
753
2.7
1.0
1,336
2,990
0.97
12.61
0.41
5,398
3.4
1.5
12,533
計
−115−
図 4.2-4 下水道被害想定結果(さいたま市直下地震)
図 4.2-5 下水道被害想定結果(東京湾北部地震)
−116−
4.3 都市ガスの被害想定
阪神・淡路大震災は、ガス事業に対しても、これまでにない大規模な被害をもたらした。
中圧ガス導管については、被害程度は軽微ながらバルブ人孔内継手部の緩み漏れが最も多
く、1962 年以前に用いられていた非裏波溶接法により接合したものが、液状化地区等地盤
条件の悪くかつ特殊地形要因の複合した場所において被害が生じた。
被害の大半を占めた低圧ガス導管については、「ガス導管耐震設計指針」(日本ガス協会
1982)以前に設置され、同指針を満足しないねじ接合部に被害が集中した。一方、同指針
を満足する抜け出し防止機構を有するメカニカル継手鋼管、ダクタイル鋳鉄管の被害は軽
微であり、ポリエチレン管では被害が無かった(資源エネルギー庁 ガス地震対策検討会
1996)。
これらの被害に対して、最大時約 86 万戸という大規模な供給停止措置を行い、復旧にあ
たったが、ほぼ全域供給ができたのは約 90 日後であった。
ガス事業者においては、施設の耐震化に取り組んでおり、新設導管については溶接接合
鋼管、ポリエチレン管、メカニカル接合鋼管、ダクタイル鋳鉄管を使用している。既設導
管についても、計画的に布設替えを行っているが、膨大な物量であるため、個々の設備の
耐震性向上を図るのみでなく、供給地域をブロック化して震災時の2次災害防止と供給停
止地域の供給再開の迅速化を図っている。
本調査では、都市ガス供給施設のうち中圧・低圧管の被害量を想定するとともに、施設
被害から推定される供給支障及び応急復旧日数を検討した。
4.3.1 調査対象
本調査で対象とするのは、都市ガス供給施設である。このうち物的被害想定は、被害量
が多くかつ復旧に多大な日数を必要とすると考えられる埋設管を対象とした。
調査にあたり、ガス事業者(東京瓦斯株式会社、東彩ガス株式会社)から、ガス施設の
現況(平成 20 年 3 月現在)に関する資料(埋設管の管種別延長、供給区域、供給件数)を
収集した。被害想定を行う基本単位の施設分布状況は、道路延長及び世帯数比を基に推定
した。
表 4.3-1 に区別に集計した都市ガスの現況、図 4.3-1 に都市ガス管延長の分布を示す。
−117−
表 4.3-1 都市ガスの現況
区名
需要家件数(件)
ガス管延長(km)
西区
6,742
78.45
北区
33,465
228.41
大宮区
40,942
249.35
見沼区
23,702
221.78
中央区
28,830
147.05
桜区
17,977
94.65
浦和区
62,049
299.35
南区
52,072
266.59
緑区
19,359
248.51
岩槻区
13,026
188.49
計
298,164
2,022.63
図 4.3-1 都市ガス管延長
−118−
4.3.2 被害想定手法
被害想定の流れは、図 4.3-2 のとおりである。
都市ガス施設資料
既往震災事例
地震動
液状化
物的被害確率の設定
ガス復旧計画
施設の物的被害数想定
供給戸数資料
供給停止条件の設定
供給支障の想定
復旧人員
復旧方法の検討
復旧日数の想定
図 4.3-2 都市ガスの被害想定フロー
(1) 物的被害想定手法
阪神・淡路大震災において、被害の大半を占めた低圧ガス導管については、「ガス導管耐
震設計指針」
(日本ガス協会:1982)以前に設置され、同指針を満足しないねじ接合部に被
害が集中した。一方、同指針を満足する抜け出し防止機構を有するメカニカル継手鋼管、
ダクタイル鋳鉄管の被害は軽微であり、ポリエチレン管では被害が無かった(ガス地震対
策検討会:1996)。
同検討会報告書に地震動とガス導管被害率の関係がまとめられており、これから図 4.3-3
を作成した。同図に久保・片山(1975)による水道管標準被害率曲線も合わせて示す。
−119−
3.0
継手工法
GM,GM2
ネジ
SGM
被害率(箇所/km)
2.5
本山第一小
2.0
1.5
神戸大学
1.0
0.5
福島(大阪)
0.0
0
200
400
600
800
1000
加速度(gal)
図 4.3-3 阪神・淡路大震災における最大加速度とガス導管被害率の関係
この図からわかるように、ネジ付鋼管は地表加速度が大きくなると被害率が高くなる傾向
がみられ、その関係は概ね久保・片山による水道管標準被害率式で表現される。
このことから、ガス導管被害についても下水道管と同様に、地表最大加速度から推定す
ることが可能と判断される。したがって、都市ガス被害想定においても久保・片山式を用
いて地下埋設管の被害量を把握した。
Nh=Rfm・N
Rfm=Cg・Cp・Rf
Rf=1.7・A6.1・10-16
ここに、Nh :埋設管被害箇所数(箇所)
Rfm:被害率(箇所/km)
N :施設量(km)
Cg :地盤・液状化補正係数
Cp :管種係数
Rf :標準被害率(箇所/km)(ただし、Rf≧2.0 のときRf=2.0)
A
:地表最大加速度(gal)=100.908×V1.13
V:最大速度(kine)
地盤係数・管種係数については、これまでの震災事例に基づいて設定されている値を
基本に、表 4.3-2 のとおり設定した。地盤係数Cg は、水道管と同様とした。
−120−
表 4.3-2(1) 地盤・液状化補正係数Cg
分
類
Cg
台地
0.9
谷底平野
1.0
三角州
1.0
自然堤防
2.0
液 状 化*
備
考
2.9
5<PL≦15
4.7
15<PL
*)液状化地域では液状化係数を優先する
表 4.3-2(2) 管種係数Cp
管
種
高圧管
中圧管
低圧管
鋼管
0.05
0.05
0.1
鋳鉄管
−
0.10
0.2
ポリエチレン管
−
−
0.1
(2) 供給支障・復旧の想定手法
都市ガスは、二次的な災害を防ぐ立場から、一定の地震動以上の地震が発生した場合、
強制的に供給停止する。また、日本ガス協会によれば、供給停止がなされた場合のガス
供給復旧に向けての基本フローは、復旧の基本フローは図 4.3-4 のとおりとなる。
地震発生・ガス供給停止
復旧組織の設置
復旧基本計画策定
救援の要請
広
被害調査
資機材・復旧基地
等の確保
実施計画
報
復旧
支援
導管の復旧作業
需要家設備の復旧作業
図 4.3-4 ガス復旧の基本フロー
本調査では、日本ガス協会で示される復旧対策指針に基づき、想定されるガス供給支
障並びに復旧日数を検討した。
−121−
a) 供給支障
資源エネルギー庁(1996)のガス地震対策検討会によれば、大規模な地震が発生した
時の即時供給停止は、地震計のSI値が 60kine 以上を記録した場合、または製造所・供
給所の送出量の大変動、主要整圧器等の圧力の大変動により供給継続が困難な場合に、
即時供給停止することとしている。
供給区域を分割してブロックを形成している事業者もあり、その場合はSI値が
60kine 以上となったブロックだけが供給停止となるが、ここでは停止の単位をガス業者
別に区とし、メッシュの最大SI値が 60kine 以上となるエリアでは、需要家すべて供給
支障となるものとした。ここで、SI値は、童・山崎(1996)の計測震度と SI 値の以下関
係式より推定した。
SI=100.5I-1.16
b) 復旧日数
日本ガス協会「地震時ガス導管復旧作業の手引き」によれば、大規模地震が発生し供
給停止措置がなされると、ただちに復旧基本計画を策定する。この段階で、目標復旧日
数を想定して、それに必要な復旧要員数、救援要員数を試算し、救援要員の受け入れ体
制等を考慮して復旧期間を策定することになる。救援については、救援要請を日本ガス
協会「地震・洪水等非常事態における救援措置要綱」に基づき行うことにより、全国規
模の救援が期待できる。
本調査では、この復旧期間・復旧要員の推定手法にしたがい、想定地震における復旧
日数を想定した。この手法は、導管・供給管・灯内外管の修繕作業と開閉栓作業、灯内
内管修繕作業毎に、被害数に作業歩掛りを乗じて延べ必要作業班(人)数を算定する方
法をとっている。復旧にかかる作業歩掛り(1班・日当たりの復旧戸数)は、阪神・淡
路大震災や宮城県沖地震などの経験から導き出されているガス導管被害率及び供給停止
件数に応じた値を用いた。
供給管・灯内外管の場合
P=n/α
α=18.6/r−1.6
(n≧100,000 の場合)
α=(18.6/r−1.6)×0.8
(100,000>n≧10,000 の場合)
α=(18.6/r−1.6)×0.6
(n<10,000 の場合)
ここに、P:必要管修繕班数(班)
n:供給停止件数(件)
α:復旧効率
r:供給管・灯内外管被害率(箇所/km)
供給管・灯内外管被害率は、先に求めた導管被害率とした。また、1班当たり7人編
成とする。
開閉栓作業は1人/班体制として、以下の班数が必要となる。
Q=n/β
ここに、Q:必要開閉栓班数(班)
β:復旧効率(=15 件/班・日)
灯内管の修繕は2人/班体制として、以下の班数が必要となる。
R=n×s/γ
−122−
ここに、R:必要灯内管修繕班数(班)
s:灯内管被害率(=阪神・淡路大震災実績 11 件/千戸)
γ:復旧効率(=2.5 件/班・日)
復旧にあたる作業人員は、平成 16 年事業所統計調査のさいたま市内のガス配管業従事
者数約 151 名のうち5割が復旧にあたるものとして、復旧作業人員を想定した。外部か
らの救援要員は、復旧基地や宿泊施設の確保など受け入れ体制によって決定されるが、
本調査では、受け入れ体制等の状況把握が困難なため、復旧人員の上限の設定は行わな
かった。
なお、供給が継続されると想定される区では、被害が発生しても供給を継続しながら
被害箇所修繕にあたることになり、復旧日数は算定しない。
(3) 被害額の想定方法
平成 17 年度調査では、被害額は、被害が生じた導管の種類により大きく異なるが、都市
ガス施設全体の被害額の概算が過去の地震被害記録から作成された次式により求めること
ができるとしている。
y=0.185 x1.431
y:被害額(百万円)
x:配管被害数(箇所)
本調査でも、この式を用いて被害額を想定した。
−123−
4.3.3 被害想定結果
表 4.3-3、表 4.3-4 に想定地震時の下水道管被害量、被害率、応急復旧日数および本復旧
開始月を示す。また、図 4.3-5、図 4.3-6 に想定地震毎にメッシュ毎の下水道管被害箇所数
を示す。
さいたま市直下地震では、約 700 箇所(0.33 箇所/km)の被害が想定される。全市で都市
ガスの供給が停止されると想定される。復旧には、1 ヶ月程度かかると想定される。被害額
は、約 8 億円になると想定される。
東京湾北部地震では、約 500 箇所(0.24 箇所/km)の被害が想定される。岩槻区の一部を
除き、ほぼ全市で都市ガスの供給が停止されると想定される。復旧には、1 ヶ月程度かかる
と想定される。被害額は、5 億円以上になると想定される。
本調査で想定したガス管被害率および被害量は資料収集時点のものであり、ガス事業者
においてガス導管等施設の耐震化が計画的に進められているため、被害率は随時低下して
いくことになる。また、それに伴い目標復旧日数も短縮が可能となる。
想定した復旧日数については、ガス供給停止措置がなされた時点から全戸復旧までの予
想日数であり、供給区域を細分した区毎に復旧作業を行うことにより、逐次供給再開でき
る地域が拡大していくことになる。既往震災の復旧過程から推測すると、復旧経過半ばで
8∼9割の地域に対して復旧再開が可能と考えられる。
大規模地震時には、被害の著しい地域においては1週間∼1ヶ月程度の供給停止が見込
まれるため、この間の代替燃料・エネルギーを事前に検討しておく必要がある。
−124−
区名
表 4.3-3 都市ガスの被害想定結果(さいたま市直下地震)
物的被害
支障
復旧
被害額
被害
被害率 供給停止 支障件数 延べ復旧 目標復旧日数(日)
(百万円)
箇所
(箇所/km)
判断
(件) 要員(人) 準備 作業 合計
(箇所)
西区
31
0.40
停止
6,742
2,260
3
27
30
25
北区
54
0.24
停止
33,465
7,698
3
27
30
56
大宮区
72
0.29
停止
40,942
10,825
3
27
30
84
見沼区
60
0.27
停止
23,702
5,983
3
27
30
65
中央区
48
0.33
停止
28,830
8,341
3
27
30
47
桜区
55
0.58
停止
17,977
8,311
3
27
30
57
浦和区
81
0.27
停止
62,049
15,663
3
27
30
100
南区
124
0.47
停止
52,072
19,922
3
27
30
183
緑区
69
0.28
停止
19,359
4,977
3
27
30
79
岩槻区
70
0.37
停止
13,026
4,150
3
27
30
81
計
664
0.33
298,164
88,130
区名
777
表 4.3-4 都市ガスの被害想定結果(東京湾北部地震)
物的被害
支障
復旧
被害額
被害
被害率 供給停止 支障件数 延べ復旧 目標復旧日数(日)
(百万円)
箇所
(箇所/km)
判断
(件) 要員(人) 準備 作業 合計
(箇所)
西区
19
0.24
停止
6,742
1,576
3
27
30
13
北区
49
0.21
停止
33,465
7,220
3
27
30
49
大宮区
55
0.22
停止
40,942
8,995
3
27
30
57
見沼区
45
0.20
停止
23,702
4,935
3
27
30
43
中央区
31
0.21
停止
28,830
6,150
3
27
30
25
桜区
40
0.42
停止
17,977
6,359
3
27
30
36
浦和区
66
0.22
停止
62,049
13,628
3
27
30
74
南区
88
0.33
停止
52,072
15,193
3
27
30
112
緑区
51
0.21
停止
19,359
4,060
3
27
30
51
岩槻区
45
0.24
一部継続
12,975
3,006
3
27
30
43
計
489
0.24
298,113
71,123
−125−
503
図 4.3-5 都市ガス被害想定結果(さいたま市直下地震)
図 4.3-6 都市ガス被害想定結果(東京湾北部地震)
−126−
4.4 電力の被害想定
電気は住民生活の基盤となっているとともに、他のライフライン施設を含む様々な施設
の原動力となっており、地震後の停電が長引くことは、生命維持や生活困窮のみならず復
旧作業にも大きく影響することになる。
阪神・淡路大震災では、火力発電所、変電所、送電設備、配電設備のそれぞれに被害を
受けたが、とりわけ配電設備の被害量が多く、多大な復旧作業を要した。地震発生直後は
停電件数 260 万戸となったが、6日後には全域で需要家への応急送電が完了した。
本調査では、電力設備のうち配電設備(架空線)の被害を推定するとともに、地震直後
の停電および復旧日数について検討した。
4.4.1 調査対象
電力の発電・送電・配電施設は、拠点施設とそれらを結ぶケーブル施設からなるが、こ
れまでの地震事例では、特に架空配電設備被害に多大な復旧作業を要している。そこで、
本調査では物的被害想定の対象として、架空配電施設を取り上げた。
調査にあたり、東京電力株式会社より平成 21 年 3 月現在の電柱本数、架空線電線延長に
関する資料を収集した。
被害想定を行う調査単位毎の施設分布状況は道路延長を基に推定した。架空配電施設(電
線)の分布は、電柱数に比例するものとした。
表 4.4-1 に、区毎の電柱基数、電線延長を、図 4.4-1 に、メッシュ毎の電柱基数を示す。
−127−
表 4.4-1 電力の現況
区名
電柱基数(基)
電線延長(㎞)
西区
10,916
1,758.8
北区
11,645
1,879.4
大宮区
8,413
1,276.6
見沼区
18,212
2,793.4
中央区
6,065
871.2
桜区
8,318
1,245.5
浦和区
9,000
1,323.3
南区
11,318
1,648.5
緑区
13,248
2,013.4
岩槻区
20,104
3,334.7
計
117,239
18,144.8
図 4.4-1 電力現況(電柱基数)
−128−
4.4.2 被害想定手法
電力の被害想定の流れは、図 4.4-2 のとおりである。
配電施設資料
既往震災事例
地震動
建物被害
火
災
物的被害確率の設定
施設の物的被害数想定
供給戸数資料
供給支障率の設定
供給支障の想定
復旧人員
復旧効率の設定
復旧日数の想定
図 4.4-2 電力の被害想定フロー
(1) 物的被害の想定手法
電力の被害想定は、架空配電線支持物(電柱)の被害量を想定した。
中央防災会議(2004)では、架空配電線支持物の被害をゆれによる被害、建物倒壊への
巻き込まれによる被害、延焼による被害に分けて評価している。
また、資源エネルギー庁(1996)によれば、阪神・淡路大震災による電力施設である架
空配電設備のうち、焼失被害を除いた支持物の供給支障となった震度6の地域の、液状化
地域における被害率は、非液状化地域の 1.3 倍であったとしている。
そこで、本調査では、次の様に被害を想定した。
①地震動・液状化による電柱被害
地震動による電柱被害は、中央防災会議(2004)が設定している表 4.4-2 に示す被害
率を用いる。また、液状化地域は、被害が揺れによる被害の 1.3 倍になるとした。
表 4.4-2 ゆれによる電柱折損率
震度
電柱折損率(%)
4以下
0.0
5弱∼5強
0.00005
6弱∼6強
0.056
7
0.8
−129−
②建物倒壊への巻き込まれによる電柱被害
中央防災会議が設定している次式によって推定した。
電柱被害本数=電柱本数×0.17155×建物全壊率
③延焼による電柱被害
地震後の火災により市街地が延焼すれば、架空線は焼失被害を受ける。そこで、出火・
延焼被害想定で求められている延焼区域において、調査単位で焼失面積率分の支持物数
が焼損するものとした。ここでの延焼は、火災を想定した2つのケースとした。
(2) 供給支障・復旧の想定手法
a) 供給支障
電力の配電系は、各需要家が1つの配電用変電所から引き出されたいくつかの高圧配
電線に線上につながったツリー構造としてとらえられる。埼玉県(1998)は、東京都(1997)
の結果を利用し、支持物被害から機能支障を求める回帰式を作成しており、本調査では
この式により電力の機能支障を推定した。
⎧Y=3X (X≦ 5%)
⎪
⎨
6
75
⎪Y= 7 X+ 7 (5%<X)
⎩
ここに、Y:機能支障率(%)
X:架空線の被害率(%)
架空線の被害は、地震動・液状化による断線と火災による溶断を対象とし、支持物被
害率をもって架空線の被害率とした。
b) 復旧日数
被災地域における電力の復旧にどの程度かかるかは、以下に設定する復旧対象被害数
に復旧効率を乗じた復旧作業量に対して、投入できる復旧人員を比較することによって
求めた。
①復旧対象
電力の供給復旧のためには、物的被害量が多く発生する架空配電線の処置が重要であ
る。そこで、応急復旧対象被害を、次のとおりとした。
○地震動・液状化、建物倒壊への巻き込まれにより被害を受けた配電線支持物およ
び配電線
○火災により被害を受けた配電線支持物および配電線のうち 20%
配電線被害は、配電支持物(電柱)被害基数と同量の径間数の被害が発生するものと
した。
延焼区域の復旧は、家屋焼失により当面電力不使用となるため、非延焼区域への送電
の確保、または延焼区域の夜間の安全確保を目的として実施されることになる。延焼区
域のうち応急復旧対象となる割合については、神奈川県(1986)を参考にしている。
−130−
②復旧効率
被災種別毎の応急復旧に必要な作業人員は、埼玉県で想定している表 4.4-3 の復旧効
率を用いた。
表 4.4-3 配電線施設復旧効率
被害種別
復旧効率
電
柱
3.6 人日/基
電
線
4.6 人日/径間
③復旧作業要員
電力の復旧作業員は、平成 16 年度の事業所・企業統計調査より、電気業、電気工事業
の従業員数から推定した。調査では、このうち電力復旧作業に従事可能な従業者を5割
として、世帯数比率により区に配分して、復旧作業人員を想定した。
また、大規模震災時には、阪神・淡路大震災時の実績から、県外・市外からの応援が
見込まれるが、受け入れ体制の問題や市外の被害の状況は不明であり、本調査では考慮
しないものとした。
(3) 被害額の想定方法
平成 17 年度調査では、被害額は、被害が生じた箇所等により大きく異なるが、電力施設
全体の被害額は、次式により求めることができるとしている。
y=10.141 x1.0532
y:被害額(百万円)
x:電柱被害数(箇所)
本調査でも、この式を用いて被害額を想定した。
−131−
4.4.3 被害想定結果
表 4.4-4∼4.4-7 に想定地震時の区別の施設被害箇所数および復旧状況を示す。また、図
4.4-3∼4.4-6 には、想定地震毎にメッシュ毎の支持物被害箇所数を示す。
以下は、延焼による被害の多く想定される冬の夕のケースについて述べる。
さいたま市直下地震では、電柱が 11,100 基以上の被害を受け、約 96,000 世帯(停電率
19%)が停電すると想定される。復旧には、27 日程度要すると想定される。被害額は 1,650
億円以上になると想定される。
東京湾北部地震では、電柱が 1,200 基以上の被害を受け、15,000 世帯以上(停電率 3%)
が停電すると想定される。復旧には、7 日程度要すると想定される。被害額は 170 億円以上
になると想定される。
ここで想定した復旧日数は、被災地が全面的に応急復旧するまでの時間であるが、実際
の復旧にあたっては、避難所や重要地域を優先する一方で、家屋倒壊が著しい地域や住民
が避難している地域については当面復旧作業の必要はないことから、住民への供給は想定
日数よりは早まると考えられる。
電力供給のための発電・送電ネットワークは全国規模で組まれており、平常時の安定供
給や緊急時の電力確保に大きく寄与している。ただし大規模地震時には、発電所の被災や
安全確認のための操業停止、送電経路の局所的被災により、供給システムが一時的にダウ
ンする可能性がある。
−132−
表 4.4-4 電力の被害想定結果(さいたま市直下地震:夏の昼)
物的被害
区名
機能支障
被害箇所数(基)
地震動 建物
火災
計
液状化 巻込
被害率
(%)
停電
戸数
(世帯)
復旧
停電率
(%)
要復旧
人員
(人日)
市内復
旧人員
(人)
復旧
日数
(日)
被害額
(百万円)
西区
6
118
229
353
3.2
3,226
9.7
1,391
140
9.9
4,890
北区
6
47
48
102
0.9
1,545
2.6
518
248
2.1
1,321
大宮区
5
71
0
76
0.9
1,315
2.7
621
205
3.0
966
見沼区
10
42
0
52
0.3
547
0.9
428
268
1.6
653
中央区
3
57
159
220
3.6
4,543
10.9
758
176
4.3
2,971
桜区
4
120
179
303
3.6
4,471
10.9
1,311
172
7.6
4,168
浦和区
5
77
106
187
2.1
3,974
6.2
842
268
3.1
2,509
南区
6
146
168
320
2.8
6,458
8.5
1,524
320
4.8
4,411
緑区
7
40
0
47
0.4
459
1.1
384
182
2.1
583
11
27
0
37
0.2
249
0.6
307
188
1.6
461
64
744
890 1,698
1.4
26,788
5.2
8,084
2,167
9.9
22,934
岩槻区
計
表 4.4-5 電力の被害想定結果(さいたま市直下地震:冬の夕)
物的被害
区名
機能支障
被害箇所数(基)
地震動 建物
火災
計
液状化 巻込
被害率
(%)
停電
戸数
(世帯)
復旧
停電率
(%)
要復旧
人員
(人日)
市内復
旧人員
(人)
復旧
日数
(日)
被害額
(百万円)
西区
5
101
1,778 1,884
17.3
8,482
25.5
3,782
140
27.0
28,529
北区
6
38
1,196 1,240
10.7
11,679
19.8
2,324
248
9.4
18,374
大宮区
4
53
1,622 1,679
20.0
13,554
27.8
3,123
205
15.2
25,268
見沼区
9
36
1,699 1,744
9.6
12,039
18.9
3,152
268
11.8
26,300
中央区
3
54
483
8.0
7,327
17.5
1,164
176
6.6
6,808
桜区
4
92
1,693 1,789
21.5
11,915
29.1
3,562
172
20.7
27,019
浦和区
5
70
643
717
8.0
11,170
17.5
1,666
268
6.2
10,322
南区
6
135
698
839
7.4
12,992
17.1
2,299
320
7.2
12,167
緑区
7
35
521
564
4.3
5,523
12.8
1,203
182
6.6
8,009
10
27
141
178
0.9
1,184
2.7
535
188
2.8
2,378
640 10,417 11,116
9.5
95,865
18.6
22,810
2,167
岩槻区
計
58
427
−133−
27.0 165,174
表 4.4-6 電力の被害想定結果(東京湾北部地震:夏の昼)
物的被害
区名
機能支障
被害箇所数(基)
地震動 建物
火災
計
液状化 巻込
被害率
(%)
停電
戸数
(世帯)
復旧
停電率
(%)
要復旧
人員
(人日)
市内復
旧人員
(人)
復旧
日数
(日)
被害額
(百万円)
西区
3
6
0
10
0.1
91
0.3
82
140
0.6
114
北区
3
2
0
5
0.0
71
0.1
39
248
0.2
52
大宮区
3
2
0
5
0.1
86
0.2
41
205
0.2
55
見沼区
7
7
0
14
0.1
145
0.2
114
268
0.4
161
中央区
2
3
0
5
0.1
98
0.2
39
176
0.2
53
桜区
4
9
0
13
0.2
186
0.5
104
172
0.6
147
浦和区
3
4
0
6
0.1
135
0.2
52
268
0.2
71
南区
6
19
0
25
0.2
507
0.7
206
320
0.6
303
緑区
7
14
0
21
0.2
202
0.5
169
182
0.9
245
岩槻区
7
11
0
17
0.1
116
0.3
143
188
0.8
206
44
77
0
120
0.1
1,639
0.3
988
2,167
0.9
1,407
計
表 4.4-7 電力の被害想定結果(東京湾北部地震:冬の夕)
物的被害
区名
機能支障
被害箇所数(基)
地震動 建物
火災
計
液状化 巻込
被害率
(%)
停電
戸数
(世帯)
復旧
停電率
(%)
要復旧
人員
(人日)
市内復
旧人員
(人)
復旧
日数
(日)
被害額
(百万円)
西区
3
6
0
10
0.1
91
0.3
82
140
0.6
114
北区
3
2
0
5
0.0
71
0.1
39
248
0.2
52
大宮区
3
2
0
5
0.1
86
0.2
41
205
0.2
55
見沼区
7
7
0
14
0.1
145
0.2
114
268
0.4
161
中央区
2
3
0
5
0.1
98
0.2
39
176
0.2
53
桜区
4
9
266
278
3.3
4,103
10.0
536
172
3.1
3,807
浦和区
3
4
0
6
0.1
135
0.2
52
268
0.2
71
南区
6
19
174
199
1.8
4,010
5.3
486
320
1.5
2,670
緑区
6
13
672
692
5.2
6,572
15.2
1,263
182
6.9
9,937
岩槻区
7
11
0
17
0.1
116
0.3
143
188
0.8
206
75 1,113 1,231
1.0
15,428
3.0
2,794
2,167
6.9
17,126
計
43
−134−
図 4.4-3 電力被害想定結果(さいたま市直下地震:夏の昼)
図 4.4-4 電力被害想定結果(さいたま市直下地震:冬の夕)
−135−
図 4.4-5 電力被害想定結果(東京湾北部地震:夏の昼)
図 4.4-6 電力被害想定結果(東京湾北部地震:冬の夕)
−136−
4.5 電話の被害想定
阪神・淡路大震災は、情報化社会になってから初めて経験する大都市の直下型地震で、
通信設備にも兵庫県を中心に未曾有の被害が発生し、被災地においてNTT設備のうち架
空ケーブルは 1.7%、電柱は 1.5%、地下ケーブルは 0.23%の被害となった。
被災回線数は、1,443,000 回線のうち約 193,000 回線(13.4%)となり、復旧は、半月後
に家屋の全半壊・焼失を除く 10 万回線が回復している。さらに、過去の災害のいずれをも
上回る通話の輻輳(通話量が回線設備容量を上回り新たな通話がかかりにくくなる状態)
という事態に直面した。
本調査では、電話回線(NTT)の地震災害時のケーブル被害を推定するとともに、設
被害による機能支障および復旧日数について検討した。
4.5.1 調査対象
これまでの地震事例では、市内ケーブル被害に多大な復旧作業を要していることから、
本調査では物的被害想定の対象として市内の架空ケーブル支持物を取り上げた。
調査にあたり、さいたま市前回調査より区毎の電話柱基数・電話線延長を把握した。
被害想定を行う調査単位毎の施設分布状況は道路延長を基に推定した。架空配電施設(電
話線)の分布は、電柱数に比例するものとした。
表 4.5-1 に、区毎の電柱基数、電線延長を、図 4.5-1 に、メッシュ毎の電柱基数を示す。
−137−
表 4.5-1 電話の現況
区名
電柱基数(基)
電線延長(㎞)
西区
3,211
270.4
北区
5,592
470.9
大宮区
4,681
394.1
見沼区
6,096
513.3
中央区
3,976
334.8
桜区
3,936
331.4
浦和区
6,144
517.3
南区
7,280
613.0
緑区
4,084
343.8
岩槻区
4,747
400.0
計
49,747
4,189.0
図 4.5-1 電話現況(電柱基数)
−138−
4.5.2 被害想定手法
電話の被害想定の流れは、図 4.5-2 のとおりである。
電話線施設資料
既往震災事例
地震動
建物被害
火
災
物的被害確率の設定
施設の物的被害数想定
加入回線資料
機能支障率の設定
機能支障の想定
復旧人員
復旧効率の設定
復旧日数の想定
図 4.5-2 電話の被害想定フロー
(1) 物的被害の想定手法
電話施設は、電力施設と同様のネットワーク形態であるため、電力施設と同じ手法で、
地震動・液状化による被害、建物倒壊への巻き込まれによる被害、延焼による被害に分け
て物的被害の想定を行った。
(2) 機能支障・復旧の想定手法
a) 機能支障
埼玉県(1998)は、東京都(1997)の結果を利用し、支持物被害から機能支障を求め
る回帰式を作成しており、本調査ではこの式により通信機能支障を推定した。
Y=2.26985X
ここに、Y :機能支障率(%)
X :支持物被害率(%)
支持物の被害は、地震動・液状化による被害と火災による焼損をもって支持物の被害
とした。
b) 復旧日数
復旧日数がどれくらいになるかは、復旧対象被害数と投入できる復旧人員を比較する
ことによって求めた。
①復旧対象
応急復旧対象被害を、次のとおりとした。
○地震動・液状化、建物倒壊への巻き込まれにより被害を受けた配電線支持物およ
び配電線
−139−
○火災により被害を受けた配電線支持物および配電線のうち 20%
延焼区域の復旧は、家屋焼失や内線焼失等により使用不能となるため、非延焼区域へ
のルートの確保を目的として実施されることになる。延焼区域のうち応急復旧対象とな
る割合については、電力と同様と考えた。
②復旧効率
応急復旧に必要な作業人員は、表 4.5-2 の復旧効率を設定した。
表 4.5-2 電話設備応急復旧効率
被害種別
復旧効率
支 持 物
0.9 人日/基
架 空 線
備
考
新設または建入直し
4.7 人日/条・スパン ケーブル 36m 新設切替接続 2 箇所
③復旧作業要員
電話の復旧作業員は、平成 16 年度の事業所・企業統計調査より、電気通信・信号装置
工事業の従業員数から推定した。調査では、このうち電力復旧作業に従事可能な従業者
を5割として、世帯数比率により区に配分して、復旧作業人員を想定した。
また、大規模震災時には、阪神・淡路大震災時の実績から、県外・市外からの応援が
見込まれるが、受け入れ体制の問題や市外の被害の状況は不明であり、本調査では考慮
しないものとした。
(3) 被害額の想定方法
平成 17 年度調査では、被害額は、被害が生じた箇所等により大きく異なるが、電話施設
全体の被害額は、次式により求めることができるとしている。
y=10.141 x1.0532
y:被害額(百万円)
x:支持物被害数(箇所)
本調査でも、この式を用いて被害額を想定した。
(4)携帯電話の被害想定手法
携帯電話は、移動媒体であり、個々の不通回線を把握することは困難である。そこで、
本調査では、中央防災会議(2004)の手法を参考に、区毎の固定電話の不通回線率と停電
率により相対的に評価することとした。通話規制による輻輳は考慮しないものとした。
表 4.5-3 携帯電話の評価ランク
ランク
評価内容
A
停電率、不通回線率の少なくとも一方が 15%以上
B
停電率、不通回線率の少なくとも一方が 10%以上
C
停電率、不通回線率の少なくとも一方が 5%以上
D
停電率、不通回線率とも 5%未満
−140−
4.5.3 被害想定結果
表 4.5-4∼4.5-7 に想定地震時の区別の施設被害箇所数を示す。図 4.5-2∼4.5-5 には、
想定地震毎にメッシュ毎の支持物被害箇所数を示す。また、表 4.5-8、4.5-9 に想定地震時
の区別の携帯電話の被害想定結果を示す。
以下は、延焼による被害の多く想定される冬の夕のケースについて述べる。
さいたま市直下地震では、電柱が 5,000 基以上被害を受け、120,000 世帯以上(支障率
23%)が回線不通になると想定される。復旧には、1 ヶ月以上要すると想定される。被害額
は 720 億円以上になると想定される。携帯電話は、緑区、岩槻区を除いて A ランクになり、
緑区で B ランクになると想定される。
東京湾北部地震では、電柱が約 500 基の被害を受け、約 12,000 世帯(支障率 2%)が回
線不通になると想定される。復旧には、8 日程度要すると想定される。被害額は 65 億円以
上になると想定される。携帯電話は、緑区で A ランク、桜区で B ランクになると想定され
る。
なお、電話回線は施設被害による機能支障の他に、集中利用による輻輳が発生するが、
これについては評価していない。阪神・淡路大震災でも初日に通常ピーク時の約 50 倍、2
日目に約 20 倍が集中しており、輻輳が発生した。したがって、大規模地震発生直後におい
ては、一般電話(災害対策機関等の電話および公衆電話を除く)は、一時的に利用困難に
なると予想される。
復旧の応援要員数はさいたま市の従業員数から推定したものであり、状況によっては想
定結果より復旧日数が短縮されることがある。
−141−
表 4.5-4 電話の被害想定結果(さいたま市直下地震:夏の昼)
物的被害
区名
機能支障
被害箇所数(基)
地震動 建物
火災
計
液状化 巻込
被害率
(%)
不通
戸数
(世帯)
復旧
不通率
(%)
要復旧
人員
(人日)
市内復
旧人員
(人)
復旧
日数
(日)
被害額
(百万円)
西区
2
35
67
104
3.2
2,437
7.3
746
70
10.7
1,346
北区
3
23
23
49
0.9
1,168
2.0
454
125
3.6
610
大宮区
3
40
0
42
0.9
995
2.0
632
103
6.1
521
見沼区
3
14
0
17
0.3
410
0.6
259
135
1.9
204
中央区
2
38
104
144
3.6
3,437
8.2
908
88
10.3
1,904
桜区
2
57
85
143
3.6
3,382
8.3
1,134
87
13.0
1,895
浦和区
3
52
72
128
2.1
3,007
4.7
1,052
135
7.8
1,678
南区
4
94
108
206
2.8
4,886
6.4
1,793
161
11.1
2,771
緑区
2
12
0
14
0.4
346
0.8
216
92
2.3
168
岩槻区
2
6
0
9
0.2
182
0.4
128
94
1.4
97
26
370
460
856
1.7
20,249
3.9
7,323
1,090
13.0
11,194
計
表 4.5-5 電話の被害想定結果(さいたま市直下地震:冬の夕)
物的被害
区名
機能支障
被害箇所数(基)
地震動 建物
火災
計
液状化 巻込
被害率
(%)
不通
戸数
(世帯)
復旧
不通率
(%)
要復旧
人員
(人日)
市内復
旧人員
(人)
復旧
日数
(日)
被害額
(百万円)
西区
1
30
523
554
17.3
13,023
39.2
2,033
70
29.0
7,861
北区
3
18
574
596
10.7
14,228
24.2
2,041
125
16.3
8,485
大宮区
2
29
903
934
20.0
22,068
45.3
3,179
103
30.9
13,627
見沼区
3
12
569
583
9.6
13,823
21.7
1,928
135
14.3
8,303
中央区
2
35
280
317
8.0
7,553
18.1
1,396
88
15.9
4,364
桜区
2
44
801
846
21.5
19,954
48.8
3,083
87
35.4
12,286
浦和区
3
48
439
490
8.0
11,518
18.1
2,081
135
15.4
6,905
南区
4
87
449
539
7.4
12,804
16.8
2,704
161
16.8
7,644
緑区
2
11
161
174
4.3
4,177
9.7
677
92
7.4
2,318
岩槻区
2
6
33
42
0.9
889
2.0
226
94
2.4
516
10.2 120,036
23.3
19,348
1,090
35.4
72,309
計
24
320 4,731 5,075
−142−
表 4.5-6 電話の被害想定結果(東京湾北部地震:夏の昼)
物的被害
区名
機能支障
被害箇所数(基)
地震動 建物
火災
計
液状化 巻込
被害率
(%)
不通
戸数
(世帯)
復旧
不通率
(%)
要復旧
人員
(人日)
市内復
旧人員
(人)
復旧
日数
(日)
被害額
(百万円)
西区
1
2
0
3
0.1
65
0.2
41
70
0.6
29
北区
1
1
0
2
0.0
53
0.1
33
125
0.3
23
大宮区
1
1
0
3
0.1
65
0.1
41
103
0.4
29
見沼区
2
2
0
4
0.1
105
0.2
66
135
0.5
49
中央区
1
2
0
3
0.1
74
0.2
47
88
0.5
33
桜区
2
4
0
6
0.2
139
0.3
89
87
1.0
66
浦和区
2
2
0
4
0.1
102
0.2
65
135
0.5
47
南区
4
12
0
16
0.2
383
0.5
242
161
1.5
190
緑区
2
4
0
6
0.2
149
0.3
93
92
1.0
69
岩槻区
1
2
0
4
0.1
82
0.2
58
94
0.6
42
18
33
0
52
0.1
1,216
0.2
774
1,090
1.5
578
計
表 4.5-7 電話の被害想定結果(東京湾北部地震:冬の夕)
物的被害
区名
機能支障
被害箇所数(基)
地震動 建物
火災
計
液状化 巻込
被害率
(%)
不通
戸数
(世帯)
復旧
不通率
(%)
要復旧
人員
(人日)
市内復
旧人員
(人)
復旧
日数
(日)
被害額
(百万円)
西区
1
2
0
3
0.1
65
0.2
41
70
0.6
29
北区
1
1
0
2
0.0
53
0.1
33
125
0.3
23
大宮区
1
1
0
3
0.1
65
0.1
41
103
0.4
29
見沼区
2
2
0
4
0.1
105
0.2
66
135
0.5
49
中央区
1
2
0
3
0.1
74
0.2
47
88
0.5
33
桜区
2
4
126
132
3.3
3,103
7.6
463
87
5.3
1,730
浦和区
2
2
0
4
0.1
102
0.2
65
135
0.5
47
南区
4
12
112
128
1.8
3,033
4.0
571
161
3.5
1,677
緑区
2
4
207
213
5.2
5,125
11.8
710
92
7.7
2,875
岩槻区
1
2
0
4
0.1
82
0.2
58
94
0.6
42
18
33
445
496
1.0
11,805
2.3
2,095
1,090
7.7
6,536
計
−143−
表 4.5-8 携帯電話の被害想定結果(さいたま市直下地震)
夏の昼
区名
電力支障率 電話支障率
(%)
(%)
冬の夕
ランク
電力支障率 電話支障率
(%)
(%)
ランク
西区
9.70
7.33
C
25.50
39.16
A
北区
2.62
1.98
D
19.84
24.18
A
大宮区
2.70
2.04
D
27.82
45.29
A
見沼区
0.86
0.64
D
18.92
21.73
A
中央区
10.88
8.23
B
17.54
18.08
A
桜区
10.94
8.27
B
29.15
48.81
A
浦和区
6.24
4.72
C
17.55
18.09
A
南区
8.48
6.42
C
17.07
16.82
A
緑区
1.06
0.80
D
12.77
9.66
B
岩槻区
0.56
0.41
D
2.66
2.00
D
表 4.5-9 携帯電話の被害想定結果(東京湾北部地震)
夏の昼
区名
電力支障率 電話支障率
(%)
(%)
冬の夕
ランク
電力支障率 電話支障率
(%)
(%)
ランク
西区
0.27
0.19
D
0.27
0.19
D
北区
0.12
0.09
D
0.12
0.09
D
大宮区
0.18
0.13
D
0.18
0.13
D
見沼区
0.23
0.16
D
0.23
0.16
D
中央区
0.24
0.18
D
0.24
0.18
D
桜区
0.46
0.34
D
10.04
7.59
B
浦和区
0.21
0.16
D
0.21
0.16
D
南区
0.67
0.50
D
5.27
3.98
C
緑区
0.47
0.34
D
15.19
11.85
A
岩槻区
0.26
0.18
D
0.26
0.18
D
−144−
図 4.5-2 電話被害想定結果(さいたま市直下地震:夏の昼)
図 4.5-3 電話被害想定結果(さいたま市直下地震:冬の夕)
−145−
図 4.5-4 電話被害想定結果(東京湾北部地震:夏の昼)
図 4.5-5 電話被害想定結果(東京湾北部地震:冬の夕)
−146−
Fly UP