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2014.6/28(土)「市民の輪いこま」講演レジュメ 今なぜ食品の放射能測定か ∼奈良・市民放射能測定所この1年で判ったこと∼ 辻本 誠(奈良・市民放射能測定所 代表) 1.測定のむずかしさと奥深さ ①100検体以上の測定を体験・研修を経てようやく使いこなせるようになった測定器 ・奈良・市民放射能測定所は、測定器が搬入された2013年1月20日からの研修を経て、3月10日に開設し た。以来約1年4ケ月、検体数は700を越えた。 ・チューニングやバックグラウンドチェックによる測定環境の確認、汚染濃度が判明している食品の測定による測 定器の精度確認から始めた。 ②測定器が表示する測定結果と判断力の習得 ・生駒の米ぬかからセシウムが検出された!?⇒ K−40の「コンプトン散乱」の悪戯による誤検出だと判明! 参照チャート:F米ぬか」(生駒の岡田農園)、「やさしお」 ・ゲルマ器とのクロスチェックを通した土壌測定への挑戦 ⇒ 天然核種の誤検出 参照チャート:「培養土(検出と誤検出)」、「培養土(検出と誤検出)」(ゲルマ器) ③核実験やチェルノブイリ事故の影響の再発見 ・農水省調査による土壌汚染(Cs−137の2010年の記録) <畑作土>全国平均 6.4±2.2軸/短、最大値(15カ所中)10.1鞄/kg 記録最大値65.6Bq/kg(1964年) <水田作土>全国平均5.9±3.1鞄/kg、最大値(15カ所中)12.9的/kg 記録最大値115,9的/kg(1964年) ・北海道立林産試験場によるきのこの汚染調査(1990年採取) ホティシメジ(苫小牧市)cs−137188.8±0.5軸/kg Cs−1343,5±0.4鞄/kg オシロイシメジ(文節柵嘲Cs−1379.9±0.2Bq/kg Cs−134検出限界以下 ④測定結果を踏まえた行政との有意義な話し合い ・測定結果で汚染が検出された場合、生産者・販売者・行政などを攻撃・糾弾するために使うのではなく、ともに 汚染の原因を追究し、力をあわせて改善のために努力するという測定所の役割の第一歩を踏み出した。 ⑤測定結果の実例から見える現実 (チャート参照) ・東北・関東圏産の食材(水産物も含めて)が汚染されているとは限らない。 ・東北・関東圏の土壌は濃度の差はあるが押し並べて汚染されている。 ・関西で流通している加工食品や培養土などで、国の基準以下だが汚染されている場合がある。 1/4 ・静岡県産や埼玉県産の茶葉は国基準以下だが汚染されていることが多い。 2.国の放射能汚染に関する「安全」基準と問題点 ①食の安全基準値と測定 ・測定所開設への直接の動機は、給食の安全を求めるお母さん方の取り組みにあった。立ちふさがる国の緩い基準 の現実を前にして、“やっぱり市民測定所が必要だね’’という機運が生まれたEx・奈良市の測定下限値は国 基準の25Bq(現在は10的)で、それ以下は全てND表示になっている。 ②国の基準値の設定根拠と問題点 ・国の基轡直(飲料水10 牛乳50 ∵般食品100 乳児用食品 50)は年間の被曝限度を1叩SVに設定し、年 間1msv以内に収まる各年齢のセシウム限度値のうち最も厳しい13∼18歳男子120を下回る数値に設定したもの である。 ・1msvの被曝は、1秒に1万本の放射線が身体に吸収されることが1年間持続し、人間の全ての細胞に100個ず っの分子切断をもたらすほどの被曝で、非常に大きい値である。←「経済的・社会的要因を考慮して合理的に 達成できる限り、放射能を防護する」HCRP19鮒年勧告) ③国による緩和に向けた“見直し論議”の動き 原子力規制委員会の田中俊一委員長が国の一般食品100ベクレルの基準値を緩和する必要性に言及した(2014・3・5)0 ④総御暴時代に生きる者としての次善の第 ・放射能ゼロをめざすが、最低基準を決めるとすれば、政府基準の100分の1を基準にし、生産者も消費者も守る0 (矢ケ崎克醇) ・「乳児、チビも、青少年に対しては、1kg当たり4ベクレル以上のセシウム137を含む飲食物を与えないよう推 奨されるべきである。成人は、1kg当たり8ベクレル以上のセシウム137を含む飲食物を摂取しないことが推奨 される」(ドイツ放射線防護協会) 3.空間線量と土壌汚染 ①土壌汚染の実情 東北や関東圏の土壌汚染の現実 ②除染の限界 ・環境省と地元の自治体が、達成すべき空間線量の目標値を、毎時0.23〃知から0・4∼0・毎勤に引き上げることを 2/4 検討(2014・6・6)。、*「毎時0,23〃軌の根拠:毎時0.19〃談を1年間に換算すると(1日のうち屋外16時間、 屋内8時間<屋外の0・4倍>)、年間lmSvになる。毎時0.19〃訪二年間1m丸÷(8時間+0.4×16時間)× 365日。それに大地からの放射線0.0毎談をプラスして、0,23直談となる。 ③移住選択の権利 ・原発事故子ども・被災者支援法の早期実施 ・「子どもは土壌汚染50的/kgから危険が始まる。大人は200Bq/kgから危険です」(バレンチナ・スモルニコワ、 ベラルーシ・ゴメリ州医師) 4,低線量・内部被曝の危険性 ①放射線の特徴 ・アルファ線:空気中で45mm、人体内で4恥m(100分の4mm)程度飛ぶ。1本のアルファ線で約10万個 の分子切断を行う。 ・ベータ線:空気中で1m、人体内でlcIm程度飛ぶ。1本のベータ線は約2万5000個の分子切断を行う。 ・ガンマ線:空気中で70m飛ぶ。人体を通り抜ける。 *ベータ線の分子切断の間隔はアルファ線の1000倍であり、ベータ線の方がアルファ線よりもずっとまばらな切断 を行う。しかし、例えば、アルファ線を出すプルトニウム239の半減期は24,000年、ベータ線を出すヨウ素131 の半減期は8日で、約100万倍の違いがある。1本当たりの分子切断の密度が1㈱分の1でも、実際にはヨウ素 131からのベータ線の方がプルトニウム139のアルファ線よりも分子切断の密度が多くなる。 ②内部被曝のメカニズムの恐ろしさ ・内部被曝では、外部被曝ではほとんど起こらないアルファ線やベータ線の被曝が生じる。 ・ガンマ線と比較すると、局所的な被曝であるために分子切断の範囲が狭く、放射線到達範囲内の被曝線量が大き くなる。Ex.1ミリメートルからの内部被曝は1mからの外部被曝の100万倍の強さがある。 ・高密度な被曝になるた鋸こ、DNAの二重切断を多く引き起こし、DNAの死滅や、異常再結合がたくさん生じ る。 ・放射性物質が体内にある限り、継続して被曝する。 *政府やICRPは甲状腺に対するヨウ素以外の内部被曝自体を公式には一切認めていない! ③低線量と高線量、低線量率と高線量率 ・「低線量」「高線量」という表現はガンマ線による外部被曝モデルでのみ言えることである。内部被曝では放射 線が局所に密集してあたるので、体内に入った放射性物質が「微小な微駈子」であっても、その周囲には「高線 3/4 量」領域が構成される。 ・ICRPモデルと比較すると、実際の内部被曝線量は、アルファ線で約337万倍、ベータ線で1000倍になる(矢 ケ崎克馬)。 ①低線量被曝の危険性 ・平均被曝が20m勤以下の原発労働者(世界15ヶ国、407,391人)の死亡危険率が、全てのがん伯血病を除く) 1.97倍、固形がん1.87倍、白血病2.93倍になっている(2005年カナダのデーター)。 ・原発から5km以内に住む5歳未満のがん発生率が、全悪性腫瘍1.61倍、白血病2.19倍も増加している(2007年 ドイツkikkスタディー)。 ⑤甲状腺ガンの異常多発と白血病などの体液性ガン・神経・循環器・胎児などへの影響増加の可能性 5.結び:市民放射能測定所の役割 ①国や行政の“安全宣言’を監祝し、汚染食品の流通を防ぐト放射能汚染はもとより、広く食の安全について学び、 正しい知識を広げる。 ・4月から17都県の放射能検査対象食品が98品から65品に削減された) ・横浜市で、4月から給食用食材の放射能測定費が大幅に削減された。 ②市民が科学を取り戻し、国や自治体依存ではなく自らが命を守るという生き方を選択する。 ・『美味しんぼ』バッシングの非科学性・独善軋福島でもチェルノブイリでも鼻血を訴える住民が多いという事 実から出発せず、「(鼻血と被ばくの)因果関係がないという証明はされていない(津田敏秀岡山大軸受、2014.5.20 毎日新聞)」のに、検証もしないで、「考えられない」と否定する反応=思考停止から一歩踏み出す。 ③低線量・内部被曝の危険性を発信し、市民を守ってゆく拠点にする。子育て中のお母さん方や避難者が誰もが気軽 に集い交流できる場として発展させる。 ・避難者交流会・ツキイチカフェの開催(次回は7月曾日)/ ・奈良セーフティーグルメナビの開設 4/4