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ドム語第二ドム方言 - 熊本大学言語学研究室
ドム語第二ドム方言∗ The “Number Two” dialect of the Dom language 千田俊太郞 TIDA Syuntarô 1 はじめに ドム語はグミネ地區とシネシネ地區にかけて廣がつてゐるドム地域、 びグミネ地區の エラ地域で話されてゐる。話 人口は 16000 人ほどと推定する (Tida 2006)。ドム語の方言 は地域によつて以下の三種に けることができると へられる。 (1) a. グミネ地區ドム地域 (第一ドム=ドム 1 方言) b. シネシネ地區ドム地域 (第二ドム=ドム 2 方言) c. グミネ地區エラ地域 (エラ方言) ワギ河を挾んでグミネ地區側のドム地域が 稱 Namba Wan Dom(第一ドム) でディキネ山 (£ĹDikne) を中心に丸く廣がつてゐる。シネシネ地區側のドム地域が 稱 Namba Tu Dom(第 二ドム) でカウル山 (£ĹKaul) のワギ側の面を中心に廣がつてゐる。ドムの氏族を大きく八 Ă Ă Ă Ă つにわける時、そのうち七つ (£ĎNon=£ Ku、£ĹKurpi、£ĹKoma=£ Ku、£ĎKum=£ Ku、£ĎIlai=£ Ku、 Ă Ă Ă £ĎGor=£ Ku、£ĹKopan) が第一ドムに 布してをり、第二ドムに居 するのは £ Kwiwa=£ Ku Ă Ă のみである。言ひ傳へによれば £ Kwiwa=£ Ku も現在のグミネ地區側に居 してゐたものが ある時移 したものらしい。 本稿ではまづドム語による口承傳統、つぎにドム 1 方言と比べたドム 2 方言の特徵を記 し、 2 後にドム 2 方言によるテキストを付す。 ドム語の口承傳統 ドム地域の口承傳統はドム語では £Ďkuria と £Ĺkaman の二つのジャンルに るのが ∗ 當である。二つのジャンルを表す語彙は、以下に 本稿の記 の多くは科學硏究費補助金「ドム語の民族誌 言語 して記 す べる如く、どちらも多義 で 料の 査硏究」(代表 究課題番號: 20720107) によつて可能になつた。本稿のテキスト蒐集は「 コパートナーシップ事業」の支 を受けた。記してここに謝 1 を表する。 : 千田俊太郞、硏 部科学省委託事業 日本/ユネス あり、また卽興 な側面を含む場合があり、嚴密に同一の內容・形式を保つたまま繼承さ れゆくべきものではない。 2.1 Kuria £ĎKuria は「呪 」と「歌」の兩義があり、その區別はドム語話 も 確に把握してゐる*1 。 「呪 」には戰鬪の どちらの 利を 念する £Ďkuria £Ďnpn と盜みを 慣もキリスト敎の普 からない。「呪 とともに 」の £Ďkuria はすでに らしめる £Ĺbika £Ďkuria があつた。 になくなり、現在その內容を知る 滅したか 滅の 機に もしその知識を持つものが見付かればおそらくはその人が した 後の繼承 は見つ と言つてよい。 であらう。ただし £Ĺbika £Ďkuria に關 する 慣の一部に今も續くものがある。 作物が盜みの被 に つた時に、ある種の羊齒 (£Ĺbika) を摘み取り、その葉に向かつて吹 き む呪 が £Ĺbika £Ďkuria である。呪 の切り取られた痕の部 を吹き んだ羊齒は盜みの痕跡、例へばバナナの に結び付けられる。呪 大きな惡事に關與し、 には盜みをはたらいた れる。現在では £Ĺbika £Ďkuria を知る により、盜みをはたらいたものが が誰だつたのかが に らかになるとさ はないが、盜みの痕跡に羊齒の葉を結び付ける 慣 は殘つてゐる。 「歌」の 味での £Ďkuria はかなり廣く「歌一般」を表せる (以下に記す例外がある) が、特 Ă に £ ge £Ĺkau £Ďdugwa と呼ばれる求婚の歌が典型 な傳統 £Ďkuria として擧げられる。求婚歌 は 常クマン語の歌であり、相手の部族名や出身地を卽興で り んで男集團が一人の女 性に向けて齊唱するものである。 2.2 Kaman £ĹKaman はお伽話の Ă に屬する £ kup £Ĺkaman と訓誡に關する £Ďkrn £Ĺkaman の二つに られる。單に £Ĺkaman といふ場合、ドム 1 では訓誡を表はすが、§4.1 の うにドム 2 ではお伽話を表はすことができる。 Ă £ Kup £Ĺkaman の特徵は、1) 子供だましの虛 とされ大人にとつて價 *1 ドム語の £Ďkuria と同源のクマン語キンデコンド方言/£Ďkudia/は戀の呪 け 頭に現はれるや がないものと見做 のみに關係する。Bergmann (1966) の辭書項目「kundia, kundia si-」には「女性あるいは少女を誘惑したりその氣にさせるために行なふ蠱惑呪 、その呪 を行なふこと ( 人した未婚、 婚の男なら誰でも保 する)」(Liebeszauber, – machen / um Frauen oder Mädchen anzulocken oder willig zu machen (Trägt jeder erwachsene Bursche und Mann), 引用 が 一部表記を改めた) とある。誰でも知つてゐるやうな呪 がドムにもあつた可能性があるが、現在は殘され てゐないと へられる。一方、歌の 味のドム語 £Ďkuria はクマン語キンデコンド方言で/£ĎgÏage/ (辭書項目 としては「giglaNge」と表記) に相當する。なほ、トビアス・バウアー先生にドイツ語に關する助言をいた だいた。 り うございます。ただしありうべき 2 りは て筆 の責に歸す。 されること、2) 卽興 の歌が差し な 素が多く話の 體が語り手の創作の場合すらあること、3) 特定 まれるものがあること、4) 出だしと はりに字句 りの 味では解釋しがた い決まり 句があることである。 Ă Ă £ Kup £Ĺkaman の特徵について順に少し詳しく べる。まづ、£ kup £Ĺkaman に される Ă 話を古老に ふと、 「£ Kup £Ĺkaman なら子供の方にむしろそのストックが豐富にある」と言 はれたり「あんな子供の話をしてほしいのか」と笑はれることが多い。「これは噓の話だ ぞ」と念を押されることもある。 Ă また、£ kup £Ĺkaman は子供が自身の創作を語り合つて ぶことでもある。このやうに、 Ă £ kup £Ĺkaman はそもそも個々人の創作による部 、卽興 な部 が多い。その傳承の本來 の在り方を探るには今少し 査が必 だが、これまでも內容自體は變 、新たな創作を加 へられながらジャンルとして繼承されてきた可能性が高い。一方で、しかし、ドム地域を 超えて同一內容が廣がつてゐるものもあり、傳承されてきた民話も中にはあるやうである。 Ă Ă 歌の插入された民話は 4 に紹介する話の 初の二つの £ kup £Ĺkaman に見られる。£ Kup £Ĺkaman に現はれる歌は、なぜ登場人物が歌ひ始めるのか不 だつたり、また歌詞と話の筋 との關 も見出しがたかつたりすることが多い。例へば §4.1 の £Ĺapal £Ĺaye, £Ĺkola £Ĺmle £Ďple Ă Ă £ na £Ďsno £ nl £Ďmumu £Ĺkan £Ďmumu といふ歌は話の流れと歌詞の 味はつながりを見付けられ ない。 源 には、もともと他の民話の插入歌だつたものを別の民話に差し んだものも ありさうである。例へば §4.2 は Tida (2002) の Palele の筋と似てゐる。§4.2 の yopa moke dala nalo parwena parwena wena といふ歌の歌詞はこの說話の中では よく似た歌詞の歌を折り んだ Palele の中では民話と歌詞との關聯は 話と歌詞との不整合は語り手の個人 不整合は 味が からないが、 らかである。民 な りである可能性もある。しかし、このやうな Ă であり、また特定の語り手にのみ見られることではない。なほ §4.3 は £ kup £Ĺkaman ではなくジャンルの名 がない傳說であるが擬 にリズミカルな部 がある。 Ă Ă Ă £ Kup £Ĺkaman の出だしに特徵 な無 味句は £ ker £ ker £Ďdi であり、 はりに特徵 な無 Ă Ă 味句は £ kupa £Ďaipa £Ďbl £ tol £Ĺtal である。 は今のところ く語源が れないが、後 Ă Ă 2 3 は £ kupa (眞菰の * )、£Ďaipa (小さな葉野 * ) を合はせた £ kupa £Ďaipa (日常 な野 ) とい Ă Ă ふ表現が見てとれるほか £ bl £ tol (火がぱちぱち爆ぜる擬 ) と關係のありさうな 素列が *2 Hide (1979: 22) ではニマイ語 kuba を Setaria palmifolia とし、「With aiba (Rungia klossii), the most common *3 vegetable eaten with the staple, sweet potato, throughout the year (shoots eaten)」とある。記 內容からドム語 Ă の £ kupa と同じものに言 してゐるものと へられるが、 物の同定に疑問が殘る。Setaria palmifolia は日 Ă 本の笹黍 (ササキビ) だが、£ kupa は肥大した根元の芯を⻝用にするところなど眞菰 (マコモ) にむしろ似て Ă ゐる。ただし、£ kupa の葉付きは笹黍にも眞菰にも似ない。 £Ďaipa は Rungia Klossii。ニマイ語の aiba(Hide 1979: 11) やクマン語キンデコンド方言の £ĎaÏba に同じ。 3 入つてゐる。しかし、それがなぜ民話の はりを示すのか不 である。 £ĎKrn £Ĺkaman は「 すなかれ」 「盜むなかれ」 「鍬を持て畑を せ豚を育てよ」といつた訓 誡であるが、それに理由付けがなされる場合も多く、中には 信念體系の理解が必 Ă な部 がある。例へば「女と寢たあとに川に下るな」といふのは £ balm £Ďkai (川邊に棲む Ă 鬼) の標 となりやすいからである。ここに £Ďkrn £Ĺkaman の一部として £ balm £Ďkai による被 の事例報吿が補足 會 に語られる場合がある。その內容は民話 なものであるから、£Ďkrn £Ĺkaman は訓戒にとどまらぬ廣がりをみせる部 があるわけである。ただし、£Ďkrn £Ĺkaman Ă に含まれる話は て事實と見做され、歌の插入はなされないなど、£ kup £Ĺkaman とは峻別 される。 メラネシア 會は一般に階 がない 等 會とされる*4 。ドムもその例外ではない。 いはゆるニューギニア高地のビッグ・マン (大小の集團において指 は、少なくとも筆 なく、 對 のドムにおける觀察においては一般の人々と若干の相對 な權威を持つてゐない。指 長幼男女の別は少々 を果たしてきたと ト敎が倫理 て 格の 重される。また傳統 つたやうである。以上の特徵をもつドム な役 な役 識を形作る に 待されるのは な信仰は必ずしも 德 を果たす な ) ひしか に雄辯さである。 な側面を強 しなか 會において £Ďkrn £Ĺkaman は倫理規範として重 へられる。しかし、この地域ではキリスト敎の傳來後、キリス なものとなつた。£ĎKrn £Ĺkaman は若い世代には、昔語りとし 識される傾向がある。おそらく今後、このジャンルの繼承は脅かされてゆくことに なる。 その他 2.3 ジャンルの名 のない傳承には、ドムの 源に關する話 (§4.3) などがある。ドムの 源 Ă に關する話の場合、內容 には £ kup £Ĺkaman とほとんど區別が付かない。しかし、形式 Ă には出だしと りの決まり 句がないことが、また事實の傳承と見做されることが £ kup *4 Brown (1970: 99) 「Melanesian communities are small, unstratified, and the ties between persons and groups are established and maintained by gifts.」 Brown (1970: 111) 「A Chimbu ‘Big Man’ is an organiser, mobiliser and stimulator of activities. He has a large household, and many people are associated with his household who support, contribute and make his large participation possible.」 大塚 (2002: 17) 「ニューギニアでは、ポリネシアの広域やメラネシアのフィジーなどで発 はみられないし、いわんやアジアやアフリカの多くの地域にみられる王国のような広域に 発 したことはない。ニューギニアの伝統 会で、政治 で個人の能力と努力により獲得される」 4 が リーダーとしてよく知られるのは高地で広くみ られるビッグ・マンである。ビッグ・マンは、ポリネシアなどの首長が生得 に、自己 した首長制 ぶ統治機 に決定されるのとは対照 £Ĺkaman と大きく異なる點である。 本稿に收めたドム 源說話には豚祭りの場面が出て來る。豚祭りはニューギニア高地に 廣く行なはれてゐた儀禮である (Nilles 1950, Brown 1970, 吉田 1972, 1974)。曆のない であつたから完 に定 會 な行事ではなかつたはずだが、Brown (1970: 104) の推定では、 シンブーでは六∼十年のサイクルで豚祭りが行なはれてゐた*5 。ドム地域では 1986 年に 後の豚祭りが行なはれたといふ*6 。その際には、豚祭りの負擔が大きくなりすぎたために その後は行なはないことがすでに諒解されてゐたとのことである。シンブーの豚祭りは宣 敎師や 人 學 の手によつて記 がなされてはゐるが、現地の多くの人たちにとつて、 このやうな說話を じて接するだけのものになつたのである。口承傳統の重 性はここに も見出だせる。 その他、言葉に關する 慣に £Ďkai £Ĺtom と呼ばれる死 を哭する際の歌がある。こ の歌はドムにとつては £Ďkuria の一種とは見做されず、決まつた歌詞もない。 に共 され、それに合はせて ドムにおける な變 囘しが 默 に女性が卽興 に しみを歌にするものである。 と傳統の 失は西洋の物質 の流入とキリスト敎の到來が大 きく關はつてゐることは事實である。ただし、現地では、多くの傳統の抛棄が宣敎師の強 制によるものではなく自 會が 去にも現在にも變 に行なはれたことがむしろ強 しつづけてをり、 されてをり、またシンブー 取の氣性に富む人々がその を支へてゐ ることは押さへておかなければならない*7 。 3 ドム 2 特徵 Ă も長く關はつてゐる方言はドム 1 の氏族ノン・ク (£ĎNon=£ Ku) の話すものであ Ă り (1997 年より 査)、この氏族と 接する地域に居 するコマ・ク (£ĹKoma=£ Ku)、クム・ Ă ク (£ĎKum=£ Ku) の諸氏族もそれほど大きく異なる方言を持たないことが確 されてゐる。 筆 が この方言を以下ドム 1 ノン・ク方言と呼ぶ。ドム 1 ノン・ク方言は にクマン語諸方言と り合ふ地域で話されてをり、いくつかの特徵から、ドム語の中ではクマン語の影 が強 *5 「The pig ceremony (bugla gende) is the largest collective activity of a Chimbu tribe[.] ... I have estimated that the *6 ドムの *7 Chimbu hold a pig ceremony approximately every six to ten years.」 後の豚祭りについては筆 の言語 査の相手をしてくださるドム 2 の方々に伺つた。 Brown (1972: 121) 「Chimbu have never felt that their way of life was stable and unchanging. All of their beliefs and traditions, their language, their social relations, their transactional society rest upon a fundamental premise that people contantly adapt and change with external conditions, interpersonal and intergroup relationships. Theire is no image of a fixed universe or social structure.」 畑中 (1975: 251) 「メラネシア は一般にいって、その変 に対して開放 であること、折衷 義、 の枠組の伸縮を自由にするという特徵がある。」 5 い變種と へられる。2008 年から數囘、ドム 2 に 査に入る機會を得たが、ここでいくつ かドム 1 ノン・クとの方言差を めることができた。ただし母語話 は相互傳 に く支 Ă 障を感じてゐない 。ドム 2 の方言はドム內では對岸のドム 1 地域のゴル・ク (£ĎGor=£ Ku) *8 氏族の話す方言やエラ地域のエラ方言などと も い關係にありさうである。しかし、現 在のドム 2 はシネシネ諸方言に圍まれてゐるためか、それらとも共 する特徵を多くもつ。 ドム 1 ノン・ク方言と異なる特徵について順に べてゆくことにする。 素とその實現 3.1 素の實現については のことが言へる。 (2) a. /b, d, g/が 閉 で實現しない。 b. /g/が/w/の や/p/の後で に脫落する (任 )。 c. 上昇型語聲 (£Ĺ) が、提示形 (citation form) では語頭に H が付加される。 d. 下降型語聲 (£Ď) が、提示形では語末に H が付加される。 e. 多 語の語末の/e/の脫落が自由に こらない。 /b, d/はドム 1 ノン・ク方言ではそれぞれ [mb, nd]、ドム 2 では [b, d] である。シンブー 語に る 聲閉 はドム語では語頭以外にほとんど殘されてゐないが (千田 2011)、形 態 な組み合はせであつた +/k/の 形から語中の/g/が發生してゐる。 /g/はドム 1 ノン・ク方言においては常に [Ng] で實現されるのに對しドム 2 においては 語頭で [g]、語頭以外で [N] で實現する。ドム 2 では で任 に、兩脣 の後、あるいは/w/の に脫落する。以下にドム 2 方言の/g/の實現の例を示す。 Ă (3) a. /£Ďgla/ (口) [gl £aĂ£] " Ă Ă b. /£Ďmolgwa/ (ゐる.3.SRD) [mol £NwaĂ£] ∼ [mol £waĂ£] Ă Ă c. /£Ĺmopge/ (ゐる.1 NSG . IND) [mo £pN£ĂeĂ£] ∼ [mo £pe;Ę£] " ドム語には語彙 ・辨別 な語を單位とするピッチ・パタンがある。メロディーは高型 Ă (£ )、下降型 (£Ď)、上昇型 (£Ĺ) が區別される、 素 な聲 (トーン) である。ドム 1 ノン・ク では上昇型にさらに二種あり、第一 *8 ドム 1 とドム 2 の相互理解は受動 語としないドム語話 らず他方言話 多方言 用により促 されてゐる部 がありさうである。ドム語を母 (他地域からドムに嫁入りした女性など) の中には一方の方言を流暢に話すにも拘は とドム語で完 ム 2 訪問時は自 のピッチが必ず低く實現するもの (A, ほとんどの な 思疏 ができないやうなケースが散見される。筆 自身も初めてのド のドム語による發話が理解されてゐるのに相手のドム語による發話が理解できないこと を何度も經驗した。 6 語彙) と、第一 のピッチが指定されてゐないもの (B, 動詞未來形の一部のみ) がある*9 。 ドム 2 では同樣のメロディーがあるが、上昇型の二種の區別はあまり A は第一 常第一 確でない。上昇型 の低いピッチが任 で高くなり、(4) のやうな搖れを示す。特に提示形では の任 の高 (H) 付與が見られる。 Ă (4) a. /£Ĺapane/ (アパネ草*10 ) [aĂ£paĂ£neĂ£] ∼ [a £paĂ£neĂ£] b. /£Ĺbonna/ (脛.1.POSS) [bonĂ£naĂ£] ∼ [bonĎ£naĂ£] Ă c. /£Ĺapal/ (女) [aĂ£palĂ£] ∼ [a £palĘ£] 以上のやうに、上昇型 A の語頭の高 語では任 に 付與は、三 以上の語、 こるが、それ以外の語 (短い語) では語頭の高 び重 を含む二 は付與されない。 (5) a. /£Ĺpo/(行け) [po:Ę£] b. /£Ĺkom/(ヤム芋) [komĘ£] c. /£Ĺkepa/(薩 芋) [keĂ£paĂ£] ところで以上の事實とドム 1 の知識だけではつぎの語頭の高 付與を說 できない。 Ă (6) a. /£Ĺkaulaa/ (大黑 ) [kauĂ£laaĘ£] ∼ [kau £laaĘ£] b. /£Ĺmuuna/ (背.1.POSS) [mu:Ă£naĂ£] ∼ [mu:Ď£naĂ£] c. /£Ĺmrgwa/ (口を噤む.3.SRD) [mrĂ£NwaĂ£] ∼ [mrĎ£NwaĂ£] " " d. /£Ĺmrn/ (肝臟.2.POSS) [mrnĘ£] ∼ [mrnŊŔ£] " " ドム 1 ノン・クでは高型の語の語末の以外で母 の長短の區別があるといふ強い證據は今 のところない (Tida 2006)。ところが (6a, b) のやうな例から、少なくともドム 2 ではその 境以外でも母 の長短が 素 鳴 にもつ は重 を さらに共鳴 のやうに二 に區別されてゐると に、(6c) のやうに、共 としてはたらける。(6d) のやうに が續く場合は、一見一 でも高 語として めるべきかもしれない ドム 2 の上昇型 B は第一 へられる。 付與が *11 共鳴 に こる。このやうな場合、/mr.n/ 。 のピッチがほぼ必ず高い (7)。 Ă (7) a. /el£Ĺale/ (私が作らうと) [e £laĂ£leĂ£] *9 *10 *11 メロディーの符號は基本 の一種で黃色い纖維を腕 /mr.n/のやうな できる。 を に語の先頭に く。上昇型 B のみ未來を表はす形態素の に く。 等樣々な裝 に利用する。Bergmann (1966) のクマン語辭書項目「ambane」。 めると、トーンの 聲實現の搖れは [mrĂ£nĂ£] ∼ [mrĎ£nĂ£] のやうに表はすことが " " " " 7 Ă b. /kol£Ĺana/ (お が みに) [ko £laĂ£naĂ£] 以上、ドム 1 の體系 (語彙 な上昇 A/B) を基盤にして記 したが、ドム 2 特 の別の語彙 なパタンがある可能性も檢討すべきかもしれない。 下降型の語の實現についてもドム 1 との の長短を問はず任 に語末の に高 ひが められる。以下の り、ドム 2 では語 (H) が付與される。(8) の變異のうち右側のものは ドム 1 では見られない*12 。 (8) a. /£Ďi/ (この、その、あの) [i:Ď£] ∼ [i:ŊŔ£] b. /£Ďdol/ (玉蜀黍) [dolĎ£] ∼ [dolŊŔ£] Ă Ă c. /£Ďaml/ (高地 の木*13 ) [a £mlĂ£] ∼ [a £mlĘ£] " " Ă Ă d. /£Ďkomna/ (野 ) [kom £naĂ£] ∼ [kom £na:Ę£] 後に、ドム 1 ノン・クでは多 語の語末の/e/が任 に、しかし に脫落する。 Ă Ă Ă Ă (9) a. /£ kale/ (足) [ka £le £] ∼ [kal £] Ă Ă Ă Ă Ă Ă b. /£ mukale/ (竹の一種) [mu £ka £le £] ∼ [mu £kal £] c. /£Ĺmaune/ (地面) [mauĂ£neĂ£] ∼ [maunĘ£] ドム 2 では語末の/e/脫落は に母 始まりの語が後續する際に見られる。しかし發話末で はほとんど こらない。三人稱 語 說法の動詞が若干例外 に發話末でも/e/脫落を示 す。本稿のテキストでは/e/脫落を こして發 された場合、e を上付き e で表記してある。 3.2 法形式と體系 ドム 2 は、以下のやうに 法 にもドム 1 ノン・クと異なる側面がある。 (10) a. 動詞の二三人稱 語形は數による區別がなされない。 b. 動詞の一人稱雙數 語形の 用が非常に稀である。 c. 動詞の共 指示形などの接尾辭の形式が少々異なる。 d. 動詞の同 語接續形-(r)e の強形-(r)ere が に用ゐられる。 e. その他の形態 韻論 f. 一般 な場 Ă Ă 標識が=£ la ではなく=£ mle である。 *12 ドム 2 では上昇型も下降型も HLH のメロディーで實現されえる。ある種の 形では一つの變異のみでトー *13 堅果を⻝べる の木。眞つ赤な油脂の部 ンが決定できない。例へば (3c) の右の變異のみを示されても上昇型か下降型か からない。 を⻝用にする £Ďkopa(red pandanus) に對する highland pandanus。 8 まづ、動詞の接尾辭で區別される人稱・數は、ドム 1 ノン・クでは一、二、三人稱と單、 雙、複數の範疇が區別される。雙數と複數においては二人稱と三人稱が區別されないため 七つの 素からなる體系をもつ。表 1 に 說法の接尾辭で人稱・數の體系を示した。ドム 1 ノン・クでは人間が 語である場合に動詞雙數形の 用がほとんど義務 であり、 「複數」 は動詞においては三人以上に對してしか用ゐられない範疇である。 ドム 2 では一、二、三人稱と單數・非單數の範疇が區別され、二人稱と三人稱において は數が區別されないため四つの は一人稱非單數を 素からなる體系をもつ。また「我々二人」が つても雙數を つてもよい。表 2 はドム 2 の 說法接尾辭である。 單數 雙數 複數 一人稱 -ke -pke -pge 二人稱 -ge 三人稱 -gwe -ipke -igwe 一人稱 單數 非單數 (任 の雙數) -ke -pge (-plke) 二人稱 -ge 三人稱 -gwe 表 2 ドム 2 の動詞人稱・數接尾辭 (IND) 表 1 ドム 1 の動詞人稱・數接尾辭 (IND) 上の 語の場合 說法などの場合には、異なる體系で同一の形式が少々異なる範疇にあてはめられ て現れたものと言へる。 面 にではないが形式自體が異なる 法接尾辭も存在する。以下の表 3、表 4 は動詞 共 知識形の接尾辭の例である。 單數 雙數 複數 一人稱 -krae -pkrae -pdae 二人稱 -dae 三人稱 -wdae -ipkrae -iwdae 一人稱 非單數 (任 の雙數) -kra -pgna (-plkra) 二人稱 -gna 三人稱 -una 表 4 ドム 2 の動詞人稱・數接尾辭 (MK) 表 3 ドム 1 の動詞人稱・數接尾辭 (MK) 同 單數 語接續形接尾辭-(r)e の強形-(r)ere は、ドム 1 ノン・クでは年配の話 これまで數例確 トだけでも できただけだが、ドム 2 では日常 のやうな例が確 に が はれてゐる。本稿末尾のテキス できる。 Ă Ă Ă Ă (11) a. £ u-rere「來て」、£ s-rere「打つて」、£ i-rere「取つて」、£ p-rere「行つて」 b. £Ďmol-ere「ゐて」、£Ďel-ere 「作つて」、£Ďpl-ere「聞いて」 c. £Ĺkan-ere「見て」 9 つた例が 以上のやうにこの接尾辭は高型動詞語根には-rere の形で (11a)、その他の場合は-ere の形で (11b, c) 付く。 その他の形態 韻論 も方言で若干異なる。まづ、語根が高型の動詞の命令形が、 ドム 1 ノン・クでは下降型聲 を取る (12a) のに對し、ドム 2 では上昇型を取る (12b)。以 Ă Ă 下は £ p-(行) と £ ne-(⻝) の命令形である。 (12) a. £Ďpo「行け」、£Ďno「⻝べろ」 b. £Ĺpo「行け」、£Ĺno「⻝べろ」 Ă Ă 高型動詞語根の一部は £ d-(言)、£ s-(打) など子 一つからなる。ドム 1 ではこのやうな 語根に一人稱雙數、一人稱複數、三人稱單數の接尾辭が後續すると必ず u 插入が こる が (13a)、ドム 2 では三人稱接尾辭が gw で現はれるときのみ u 插入が で現 こり、兩脣 はれる形態素が後續する場合に母 u の插入が こらない (13b)。以下は兩方言における Ă £ d-(言) の同源活用形であり、u 出沒を語幹側の 替と捉へて形態素境界を付した。 (13) a. £Ďdu-me (3 SG . EM) £Ďdu-gwe (3 SG . IND) £Ďdu-pne (1 PL . EM) £Ďdu-pge (1 PL . IND) b. £Ďd-me (3. EM) £Ďdu-gwe (3. IND) £Ďd-pne (1 NSG . EM) £Ďd-pge (1 NSG . IND) Ă Ă 後に、ドム 1 ノン・クでは £ ila「の中」に由來する=£ la が場 標識「のところ」とし Ă Ă てはたらくが、ドム 2 では £ mle「の上」と同一の 形をもつ=£ mle が場 標識である。 3.3 語彙 語彙 な ひは瑣末なことを含めれば非常に多い。また語彙の 味自體が一對一の對應 をしてゐない場合も含まれる。例へばドム 1 ノン・クでは名詞としても強 たらく £Ďkawan「本當のこと、本當に」と強 語の役 語としてもは しかない £Ďwone「とても、本當に」 が區別されるがドム 2 では兩方の 味領域を £Ďone で表はす。一方、ドム 1 ノン・クでは網 を「作る」といふのに £Ďel-「作る」といふ動詞を ふしかないが、ドム 2 では £Ďel-のほか £Ĺwar-「(網 を) 作る」といふ作 動詞がある。 同じ 味の語彙でも 用 度が異なつてくる。例へばドム語には兄弟姉妹語彙として、 男女の區別をする語彙 (14a) と長幼を區別する語彙 (14b) があるが、ドム 1 ノン・クでは (14b) の 用は稀であるのに對し、ドム 2 ではしばしば耳にする。 (14) a. £Ĺal-「兄、弟」、£Ĺaupal-「姉、妹」 Ă Ă b. £ ap-「兄、姉」、£ kep-「弟、妹」 10 語形變 の一部が異なる場合も多い。動詞 £Ĺkan-「見る」と £Ĺwan-「囘る、步く」の語幹 は、ドム 1 ノン・ク方言では一人稱 れ £Ĺkar-、£Ĺwar-といふ形式に 語標識、二三人稱雙數標識と共 する際にそれぞ 替する。一方でドム 2 では常に一定の語幹を保ち、異形態 £Ĺkar-、£Ĺwar-を持たない。例へばドム 2 の kan-£Ĺa-l-a(見-FUT-1 SG - PERM) 「見よう」はドム 1 ノン・ク方言では kar-£Ĺa-l-a で現れる。 多くの語彙がドム 1 ノン・ク、ドム 2 に共 形が異なる場合、一、二の の の 形をもつが、さうでないものもある。 ひにとどまるものもあれば く異なる語根からなる語 彙もある。表 5 の例を以下にいくつか示す。 ドム 1 ノン・ク ドム 2 我々 (EXCL) £Ďmapne Ă £ tapn Ă £ no £Ďmamne Ă £ tamne Ă £ ne 我々 (INCL) £Ĺnone £Ĺnene £Ĺgran Ă £ s £Ĺtogwe £Ĺgraune 根本 羊齒の一種 昨日 (雨が) やむ 齒 £Ĺsik-i 蝶 £Ĺkuim £Ĺkaim £Ĺtorgwe Ă £ kumne Ă £ ki-m Ă £ ur £Ĺkopa 異なる £Ĺmore £Ĺpere い £Ďekl Ă £ gl £Ďdugwe £Ďpai 匂ひ £Ĺmnane 強い £Ďnma Ď£ogwe 表 5 ドム內方言差 (語彙) 3.4 まとめ 以上に見たやうに、ドム 1 ノン・ク方言とドム 2 方言は 方言差を示す。筆 の手にあるまとまつた 含まれてゐない。ここにみた ひが 査にまたなければならない。斷片 はクマン系諸方言からの影 な 韻・ 聲、 法、語彙の面で 料にはドム 1 の非ノン・ク方言やエラ方言が ての方言においてどのやうに現はれるか、今後の 料から、ドム 1 ノン・ク方言のみに見られる特徵 、ドム 2 のみに見られる特徵はシネシネ地區諸言語からの影 によるものが大きいと豫測する。 11 テキスト 4 4.1 お けに子供が まれる Told by Kum Kora Recorded on 26 September 2012 Ă Ă (15) £ na £Ďglmai=£ kene £Ĺkaman £Ďd-ra-l-e 私 (人名)=と 話 £Ďel+£Ďlo 言-FUT-1SG-IMM 作.1SG+EXPL 「ギルマイと一緖に民話を話します」 (16) £Ĺene £Ĺene さて さて 「さてさて」 Ă (17) £Ĺgal £Ĺgam*14 £Ĺsu=£ ta=£Ďo 子供 子供 二=或=PF 「二人の子供が、 」 (18) £Ĺne-m £Ĺma-m £Ďkonan £Ďgol el-£Ĺa-l-e -3.POSS 母-3.POSS 仕事 Ă £ ne-re £Ďmol-gwa Ă £ p-re £Ĺene £Ĺkepa £Ĺke-gwa 共同 作-FUT-1 SG - IMM 行-SS さて 薩 芋 炊-3.SRD ⻝-SS 居-3.SRD 「兩親が共同 作をしに出掛けて、さて、薩 芋を炊いたのを⻝べてゐたのだけれど」 (19) £Ĺene £Ďepal £Ĺkepa さて 人 £Ĺp-o 薩 £Ďne-na-gwa £Ďno mol-£Ĺa-m+£Ďio £Ďnl kol-£Ĺa-n-a 芋 ⻝-FUT-3. SRD 喉.3.POSS 詰-FUT-3+ EXPL 水 -FUT-2- PERM £Ďdu-gwe 行-IMP 言-3.IND 「さて、(親が子供に) 薩 芋を⻝べたら喉につまる人もあらう、と、水を みに行き なさいと言ひました。 」 *14 £Ĺgam は今のところ唯一の例である。說話にしばしば登場するドム語の £Ĺgau-m(孫-3.POSS) に由來するもの かもしれない。 のなんらかのシンブー語 (ケパイ語やゴリン語に見られる gan「子」) と混 である可能性もある。 12 した形式 Ă Ă Ă Ă (20) £Ĺgal £Ĺsu=£ rae £ ere*15 £ nule=£ rae £Ďo-una 子 二=MK 去 川=MK 行-3.MK 「二人の子供が川に行つたところ」 Ă Ă (21) £Ďaipa £ gukl £Ďgalne £Ďnl £Ĺsuna £Ďile=£ rae ( 物名) £Ďu-n-e 水 中 水 Ă (£Ĺ)pai £Ďmol-ere £ en £Ĺnale £Ďi-ra-l-e . あの=MK 臥.INF 居-SS 汝 何 取-FUT-1 SG - IMM £Ďdu-gwe 來-2-npint 言-3.IND 「アイパ・グクル・ガルネ (葉野 ・ ・ 味不 ) が川の眞ん中にをり、お たちは 何を取りに來たんだと言ひました。 」 Ă (22) £ na £Ĺnape 我 Ă £ na £Ĺmna=£Ďo .1 SG . POSS 我 母.1 SG . POSS = PF 仕事 「僕 の兩親が共同 (23) £Ďepal £Ĺkepa 人 £Ďkonan £Ďgol £Ďel-gwa 作をしてゐるのだけれど」 £Ďne-na-gwa 薩 芋 ⻝-FUT-3. SRD £Ĺp-o 共同 作-3.SRD £Ďno Ă mol-£Ĺa-m+£ ia £Ďnl kol-£Ĺa-n-a 喉.3.POSS 詰-FUT-3+ EXPL 水 -FUT-2- PERM £Ďdu-gwe*16 行-IMP 言-3.IND 「薩 芋を⻝べたら喉に詰まる人もあらうから、水を Ă Ă (24) £ na £Ďnl kol-£Ĺa-l=£ d 我 水 £Ďw-i=£Ďua みに行けと言ひました。」 £Ďdu-gwe -FUT-1 SG . EM = Q 來-1 SG = CF 言-3.IND 「(それで) 僕は水を Ă (25) £Ĺena £ ta £Ĺime*17 みに來たんだと言ひました。 」 £Ďnl £Ďkol さて 別 下方. その 水 mol-£Ĺa-m+£Ďio .INF 居-FUT-3+ EXPL 「それならそこの一人が水を めばよろしい。」 *15 *16 *17 Ă Ă Ă £ ere は £ p-(行) か £ u-(來) の に任 に現はれる不變 詞でそれ自體はほとんど 味をもたない。目 地、 Ă 到着地は £ ere の後に かれる。 Ă 引用 の 中であるため £Ďdugwe ではなく £Ďdum=£ ia あるいは £Ďdum=£Ďua などの表現を ふのが普 。 Ă ドム語には中立 な指示詞 £Ďi∼£ i 「この、その、あの」を含め 12 の指示詞がある。多くの指示詞は話し手 Ă からの高低を三段階、すなはち上方、水 、下方に區別する。£Ďi∼£ i 以外の指示詞は名詞を修 できるほか 場 名詞「ここ、そこ」としてもはたらく。 13 Ă Ă Ă (26) £Ĺena £ en £ ta £ ere £Ďya Ă £ na £Ďu-ge さて 汝 別 去 この 來-2.DS 我 Ă — £Ďnman £Ĺbl-n=£ mle £Ďipe*18 虱 Ă £Ĺpa-m+£ ia*19 — 頭-2.POSS = LOC 上方. あの 臥-3+EXPL £Ďnman £Ďi £Ĺkan-e £Ďs-ra-l=£Ďua 虱 見-SS 打-FUT-1 SG = CF 言-3.IND DEM 「お £Ďdu-gwe たちのもう一人の方はこちらに來たら、俺が—虱がお の頭にゐるから— そ の虱を探してつぶしてやらうと言ひました。 」 Ă £Ďone £Ďd-me =£ d*20 Ă (27) £Ĺgal=£ rae Ă £u 子=MK 眞 言-3=Q Ă *22 Ă £ ur £s £Ďkor-gwa (VN) LV. INF £Ďmala 來.INF £Ďu-una*21 Ă Ă £Ďaipa £ gukl £Ďgalne=£ r ae 來.3.MK ( 物名)=MK COMPL -3. SRD 「子供は本當のことと思ひ づいたところ、アイパ・グクル・ガルネときたらシュッ と ひ んでしまつて」 Ă (28) £ ere £Ďde-m 去 Ă £Ĺsuna £ p 腸-3.POSS 中 £Ďkor-gwa 行.INF COMPL -3. SRD 「(子供は) お腹の中に入つてしまつたので」 Ă Ă (29) £Ĺgal £ ta=£ rae £Ďkai 子 Ă £d 別=MK £Ďel-e £Ďel-e Ă £p (£Ĺ)ne-m 泣 (VN) LV. SS LV. SS 行.INF £Ĺma-m £Ďmol-gwa £Ďai -3.POSS 母-3.POSS 居-3.SRD £Ďto-gwa 言.INF 與-3.SRD 「もう一人の子供は泣きながら兩親のゐるところに行つて話をしたところ」 *18 ドム語の指示詞では發話參與 からの 離による三段階の區別、すなはち 稱、中稱、 稱の區別がある。 聞き手の身體部位に言 する名詞句を修 する指示詞としては 稱 £Ďipe ではなく中稱 £Ĺipe が はれること が多いが、 稱の系列は發話參與 からの 離に關はりない 離中立用法も見られる。ここでは 稱の 離中立用法か。 *19 說 法の用法の一つは插入句を作るものである。この では異 語接續の £Ďuge「お が來たら」は £Ďsral=£Ďua 「俺が *20 *21 *22 す」を 引用標識を ふ 語とする との 接を示してをり、この插入句の說 法の 語とは關係してゐない。 は「∼と」と譯せるほか「∼と思ひ」と譯せる場合がある。 Ă Ă ここから け物側の 點で 示動詞 £ p-(行) と £ u-(來) の ひ けがなされる。 語 な 味をもつた名詞を動名詞と呼ぶことにする。動名詞を 語として ふ場合、語彙 に決まつた 何らかの輕動詞が後續する。輕動詞は て單獨でも動詞としてはたらくことのある語彙だが、動名詞 + 輕 動詞の 味に寄與しないことも多い。 においてはほとんど 體の 14 Ă £Ĺma-m=£ rae (30) (£Ĺ)ne-m Ă £ u-rere Ă Ă £Ĺena £Ďaipa £ gukl £Ďgalne=£ ra £Ďno*23 -3.POSS 母-3.POSS = MK 來-SS さて ( 物名)=MK 首.3.POSS Ă Ă Ă Ă Ă £ kupa £ s-rere £Ďde-m £Ĺsuna=£ rae £Ĺpul £ s kan-£Ĺuna £Ĺgal=£ rae £Ĺpa-gwe 棒 打-SS 腸-3.POSS 中=MK 打.INF 見-3.MK 子=MK 臥-3.IND 「兩親は行つて、さてアイパ・グクル・ガルネの首を棒で打ちお腹の中を て見たところ子供がゐました。 」 (31) {£Ĺapal 女 (CL) £Ĺay-e £Ďnl mu} 母-1 SG . POSS (歌詞) (お婆ちやん、ヌル、ム..) (32) £Ĺapal £Ĺkola*24 £Ĺay-e Ă £ na £Ďs-n-o £Ĺmle £Ďpl-e 女 (CL) 母-1 SG . POSS 木の一種 實 Ă £ nl £Ďmumu £Ĺkan £Ďmumu 思-SS 我 打-2-PINT (歌詞) 「お婆ちやん、コラの實のせゐで僕をぶつの? ヌル、ムム、カン、ムム」 (33) £Ĺapal £Ĺay-e £Ĺkola Ă £ na £Ďs-n-o £Ĺmle £Ďpl-e 女 (CL) 母-1 SG . POSS 木の一種 實 Ă £ nl £Ďmumu £Ĺkan £Ďmumu 思-SS 我 打-2-PINT (歌詞) 「お婆ちやん、コラの實のせゐで僕をぶつの? ヌル、ムム、カン、ムム」 Ă (34) £ d £Ĺel Q Ă Ă Ă £ d-re £Ĺgal=£ rae £ i 斯樣 言-SS 子=MK £Ďer-gwa £Ďkui £Ďmol 取.INF 出-3.SRD 生 £Ĺpa-m=£Ďuo 居.INF IPFV-3= CF 「とかう歌つて子供を取り出したらまだ生きてゐましたとさ。 」 Ă (35) £ kupa £Ďaipa 眞菰の一種 葉野 Ă £Ďbol£ tol £Ĺtal の一種 (擬 か) 「いつもの野 のぱつちぱち (おしまひ)」 *23 *24 Ă £Ďno (ドム 1 ノン・ク: £ no) は首、あるいは喉を指す。 £Ĺkola は Ficus copiosa Steud.。若葉が⻝用で、實も⻝べる。 15 物で切つ 4.2 イララ Told by Kum Kora Recorded on 26 September 2012 (36) £Ĺena £Ĺapal Ă £Ĺay-e=£ ta さて 女 (CL) £Ĺena £Ďkan £Ĺpuule 母-1 SG . POSS=或 さて 蔓 .INF Ă £i Ă Ă £ p-rere £Ĺkr=£ d 取.INF 行-SS (擬態)=ADV £Ĺpuul-e £Ďmol-gwa 解-INF 居-3.SRD 「さてあるお婆ちやんが、ええ、紐を撚るための蔓を つて來てスーと裂いてゐ たら、」 Ă Ă Ă (37) £Ĺpuule £Ďmol-gwa £Ďai=£ ra=£ we £ are £Ĺyul 解.INF 居-3.SRD Ă — £ are £Ďkui £Ĺmoo 太陽 新 Ă £ are £Ĺyul =MK = PF Ă £Ďu-m+£ ia £Ĺye-re 太陽 日光浴 (VN) LV- SS — 昇.INF 來-3+EXPL Ă £Ďmol-gwa £Ďai=£ rae £Ĺye-re £Ďpl 太陽 日光浴 (VN) LV- SS 感.INF 居-3.SRD =MK 「スーと裂いてゐたのだが、このお婆ちやんは日なたぼつこをして— 日が出てきた ところだつたものだから — 日なたぼつこをして日差しを浴びてゐたところ」 Ă (38) £Ďirala=£ rae Ă £ u-re £Ĺbl-e £Ĺmaa £Ĺbl-e £Ĺmaa Ă £Ďel-m+£ ia 鳥の一種=MK 來-SS 頭-3.POSS 拔.INF 頭-3.POSS 拔.INF 作-3+EXPL 「イララ (小さな鳥) が來て髮の毛を引き拔き引き拔きするものだから」 Ă Ă Ă (39) £Ďkan £ dula £ kupa=£ rae £Ďsu-una 蔓 小枝 棒=MK 打-3.MK 「(お婆ちやんは) 蔓の小枝で打つたところ」 Ă (40) £Ďirala=£ rae £Ďgol Ă £Ĺpa-m+£ ia 鳥の一種=MK 死.INF 臥-3+EXPL 「イララは死んでしまひました。 」 16 Ă (41) £ i Ă £p Ă £Ďdo-gwal £Ďime=£ rae Ă £Ďgal-e £Ĺai-m=£ rae 取.INF 行.INF 燃-3.LOC 下方. あの=MK 燒-SS 母-3.POSS = MK Ă Ă £ na £Ĺnene £Ďsi-ka £Ĺpa-m+£Ďio £Ĺbl-e £Ďne-ra-l+£ la 我 自 打-1 SG . SRD 臥-3+EXPL 頭-3.POSS ⻝-FUT-1+ EXPL 「それを火のところに持つて行つて燒いて、お婆ちやんは「私が獲つたものだ、私が 頭を⻝べよう。 」 Ă Ă (42) £Ĺgau-m=£ rae £ kal-e 孫-3.POSS £Ĺn-o £Ďdu-gwi £Ďkore 足-3.POSS ⻝-IMP 言-3.DEM ところが 「孫は足を⻝べなさい」と言ふのに」 Ă Ă Ă (43) £Ĺgal=£ rae £ na £ muru*25 £Ďne-ra-l=£Ďua 子=MK 我 £Ďdu-gwa ⻝-FUT-1= CF 言-3.SRD 「子供は「ぼくが一人で⻝べるんだ」と言ふので」 Ă Ă (44) £Ĺgal=£ rae £ s 子=MK £Ĺipe £Ďer-una 打.INF 上方. その 移動-3.MK 「(お婆ちやんは) 子供を叩きはらひ上げたところ」 (45) £Ďbol-e £Ĺapal 被-SS 女 (CL) £Ďkai £Ďel-gwe Ă £Ĺai-m=£ rae 母-3.POSS = MK £Ďsu-gwa £Ďbol-e £Ĺgal Ă £Ĺgau-m=£ rae 打-3.SRD 被-SS 子 (CL) 孫-3.POSS = MK 泣 (VN) 作-3.IND 「打たれて、お婆ちやんに叩かれて子供の孫は泣きました。 」 Ă (46) £Ĺkan-ere £Ĺene {£Ĺai-m=£ rae 見-SS さて Ă £Ĺai-m=£ rae Ă £ d} £Ĺgal Ă £Ĺgau-m=£ rae £Ďkai £Ďel-ere 母-3.POSS = MK 言.INF 子 (CL) 孫-3.POSS = MK 泣 (VN) 作-SS Ă £Ĺel £ d £Ďto-gwe 母-3.POSS = MK 斯樣 言.INF 與-3.IND 「それを見て、さて (お婆ちやんが言ひ) 子供の孫は泣いてお婆ちやんにかう言ひま した。」 *25 Ă £ muru は 語が「一人で」といふ 味の時と目 語を「まるごと」といふ 味の時がある。 17 (47) £Ďyopa*26 £Ďmo-ke £Ďdala £Ďna-l-o parwena parwena wena 木の一種 居-1 SG . IND 木の一種 行.FUT-1 SG - PINT (歌詞) £Ďyopa £Ďmo-ke £Ďdala £Ďna-l-o parwena parwena wena 木の一種 居-1 SG . IND 木の一種 行.FUT-1 SG - PINT (歌詞) £Ďdu-gwe 言-3.IND 「「ヨパの木にゐます、ダラの木に行きませうか、パルウェナ、パルウェナ、ウェナ。 ヨパの木にゐます、ダラの木に行きませうか、パルウェナ、パルウェナ、ウェナ。」 と言ひました」 (48) £Ĺel £Ďdu-gwa 斯樣 言-3.SRD Ă £ na £Ďelma £Ĺpore 我 今 £Ďyaue £Ĺape .1 SG . POSS £Ďel-e Ă £ kup £Ĺkaman £Ďdu-gwa £Ĺay-e .1 SG . POSS 母-1 SG . POSS お伽噺 言-3.SRD £Ďd-ke 話 (VN) LV- SS 言-1 SG . IND 「こんな風に さん、爺さん婆さんがお伽話をしたのを、私がここにお話ししました」 Ă (49) £ kupa Ă Ă £ bo £ to £Ĺtal £Ďaipa 眞菰の一種 葉野 の一種 (擬 か) 「いつもの野 のぱつちぱち (おしまひ)」 4.3 ドム 生 Told by More Apeke Recorded on 26 September 2012 Ă (50) £Ďyale £ ya*27 £Ďyal £Ďbl £Ďipe 男 TS 男 Ă £ ta £Ďepal £Ďel 大 上方. あの 或 人 £Ďer-gwa £Ďi=£Ďwe 作.INF 出-3.SRD DEM = PF 「男をあれして... 神樣があるとき一人の人間を創り出したのだけれど、 」 Ă (51) £Ďyal £ i 男 DEM £Ĺkupe £Ďgla 夢 Ă £Ĺmr-gwa=£ we £Ďdu-gwa 口.3.POSS 噤-3.SRD = PF £Ďel £Ďer-gwa Ă £i 言-3.SRD 作.INF 出-3.SRD DEM 「クペ・グラ・ムルングワ (夢・口・噤み) といふ男を創り出したのだけれど、」 *26 *27 ここから歌つてをり錄 ではトーンははつきり からない部 が多い。本來のトーンを付した。 切な言語形式がすぐに思ひ付かなかつた場合に假に言ふことば。必ずなんらかの表現を見付けて補足說 する。 18 Ă £i (52) £Ďer-gwa Ă £p Ă £p Ă £Ďkople £ ila £Ďipe £Ďdle 出-3.SRD DEM 行.INF 行.INF 石の一種 石 「(その男は、) 奧の方、ドゥレ・コプレに (53) £Ďdle £Ďkople £Ďone £Ďipe 石の一種 石 £Ĺel £Ďel £Ĺpai 眞 上方. あの Ă £ s#£Ďbol £Ďkor-gwi 內 £Ĺpai 上方. あの £Ďmol-gwe .INF 居-3.IND んでゐました。」 £Ďmol-gwa £Ĺoo .INF 居-3.SRD 手.3. POSS Ă £i DEM £Ĺel Ă £s 斯樣 打.INF 斯樣 作.INF 閉塞.INF COMPL -3. SRD 「まさにドゥレ・コプレに んでゐたのだけれど、手がこんな風になつて、こんな風 にくつ付いてしまつてゐて」 (54) £Ďgla £Ďi £Ĺel Ă £s £Ďel £Ĺmr £Ďkor-m+£Ďio 口.3.POSS DEM 斯樣 作.INF 打.INF 噤.INF COMPL -3+ EXPL 「口はこんな風になつてつむつてしまつてゐるわ」 (55) £Ĺomle £Ďi £Ĺel Ă £Ĺgi £ d £Ďkor-m+£Ďio £Ďel 目.3.POSS DEM 斯樣 作.INF 堅 LV COMPL -3+ EXPL 「目はこんな風になつて閉ぢてしまつてゐるわで」 Ă £ kale (56) £Ĺoo Ă Ă Ă £ muru £ s#£ i £Ďi 手.3. POSS 足.3. POSS DEM £Ďkor-gwe 着.INF COMPL -3. IND 「手足がみな引つ付いてしまつてゐました。 」 Ă (57) £ me Ă Ă £ muru £Ĺgal=£ mere £Ďmol 子=如 CRAN £Ďkor-gwe 居.INF COMPL -3. IND 「 くメ・ムル童子*28 のやうな樣子でした。」 Ă (58) 千田: £ me Ă £ muru £Ĺgal 子 CRAN 「メ・ムル童子。」 Ă (59) £ me CRAN Ă Ă £ muru £Ĺgal=£ mere £Ďmol-gwe 子 居-3IND 「メ・ムル童子のやうでした。 」 *28 メ・ムル童子はのつぺら坊のだるまのやうな怪物。 19 Ă (60) £Ďmol-m=£ ba £Ďkore Ă £Ďyal £Ďi=£ rae Ă £Ďdogwa £ ino £Ďel 居-3=だが £Ďdika ところが 男 DEM . MK 火 (CL) Ă Ă Ă £ gi £Ĺsu=£ kle=£ ta £Ĺkan-m-e*29 £Ďdu-gwe (部族名) 娘 二=だけ=或 見-3-EM £Ďel £Ďel-gwa Ă £i 作.INF 作.INF 作-3.SRD DEM 言-3.IND 「ところが、その男が火を焚いて の立つてゐるのを二人のディカ族の娘が見付けた のださうです。 」 Ă Ă Ă (61) £Ďdogwa £ ino=£ ta £Ďmala £ ilan £Ďipe 火 (CL) =或 Ă Ă £ ino=£ ta £Ďel £Ďel =或 內 Ă £Ďkople £Ďmamne £ ila £Ďipe 上方. あの 石 根元 內 £Ďdogwa 上方. あの 火 (CL) £Ďel-m+£Ďio 作.INF 作.INF 作-3+EXPL 「「 がすぐあの奥に、岩根の奧に Ă (62) £ na kan-£Ĺa-l-a=o が立つてゐるよ。 」 Ă Ă Ă Ă £ d-re £ gi £Ĺsu £ i=£ rae £Ďo-gwa £Ďo-gwa 我 見-FUT-1 SG - PERM = PF 言-SS 娘 二 DEM = MK 行-3.SRD 行-3.SRD 「見に行かう」と言つて二人の娘はどんどん行つたところ」 Ă (63) £ p Ă £p £Ďipe Ă Ă £Ĺkan-gwa £ i=£ rae Ă £Ďyal £Ďi=£ rae 行.INF 行.INF 上方. あの 見-3SRD DEM = MK 男 £Ďmol-m-e £Ďdu-gwe DEM = MK 居-3-EM 言-3.IND 「しばらく行つて見たところその男がゐたと言ひます。 」 Ă Ă Ă (64) £Ďmol-m+£ ia £ gi £Ĺsu £Ďi=£ rae Ă £Ĺkan-ere £ aya £Ďdogwa Ă Ă £ ino=£ ta £Ďel 居-3+EXPL 娘 二 DEM = MK 見-SS わあ 火 (CL) =或 Ă Ă £Ďel-una £ en £Ďe-ga £Ďepal £Ďmo-n+£Ďio=£ d £Ĺkan-m-e £Ďdu-gwe 作.INF £Ďel 作.INF 居-2+EXPL = Q 見-3-EM 言-3.IND 作-3.MK 汝 作-2SRD 人 「そこで二人の娘はそれを見て、どうも が立つと思つてゐたらあなたがした人なん だねえと思つたさうです。 」 Ă Ă Ă (65) £Ĺkan-gwa £Ďi=£ rae=£ we £Ĺena £ di £Ĺpul 見-3.SRD DEM = MK = PF さて 斧 (CL) 「さうして、さて、竹ナイフ」 *29 Ă 表出法動詞に £ d-「言」の三人稱 語形が後續すると傳聞表現 (誰が言つたのかを問題にせずに傳へ聞いた 事實であることを表はす) として へる。 20 Ă £Ďelma £Ďu-m+£ ia (66) — £Ďnaipe=£Ďya £Ĺkal £Ďi ナイフ=や 物 今 Ă £Ĺyo-m=£ ia — £Ďelma £Ďel 今 作.INF £Ďelesia £Ďi 來-3+EXPL 剃刀 DEM DEM -3+EXPL 「 — 金屬のナイフみたいなものは 入つたもので、剃刀だのが今は作られるのだ けれど — 」 Ă £ mukale (67) £Ďkomne £Ďi £Ĺku-pga 先 DEM 竹の一種 Ă Ă £ mukale £Ďi=£ rae £Ĺau £Ďmala -1NSG . SRD Ă £Ĺdna £ d-re £Ďdu-gwa Ă £ yale 存-3.SRD 水 Ă £Ďi=£ we . あの DEM = PF Ă £ i-rere 竹の一種 DEM = MK 握.INF 裂 (VN) LV- SS 取-SS 「昔だからすぐ外にあるうちのあの竹だよ、竹を裂いて取つて來て」 Ă £Ďi=£ rae (68) £Ĺene £Ĺo £Ĺpul £Ďbol さて 手.3.POSS DEM = MK £Ďbol £Ďbol £Ďbol £Ĺye 切.INF 切.INF 切.INF 切.INF .INF 「それで切り みを入れて手を作り」 Ă £Ďi=£ rae Ă (69) £ kale £Ďbol £Ďbol £Ďbol £Ďbol £Ďkor-e 足.3.POSS DEM = MK 切.INF 切.INF 切.INF 切.INF COMPL - SS 「切り みを入れて足を作り」 Ă £Ďi=£ rae (70) £Ĺomle £Ďbol Ă £ ara Ă £d £Ďkor-e 目.3.POSS DEM = MK 切.INF 毀 (VN) LV. INF COMPL - SS 「目を切り開けて」 Ă Ă £ i=£ rae (71) £Ďgla £Ďbol Ă £ ara Ă £d £Ďkor-e £Ďel-gwa 口.3.POSS DEM = MK 切.INF 毀 (VN) LV. INF COMPL - SS 作-3.SRD Ă £ u*30 £Ďepal £Ďo-me £Ďdu-gwe 來.INF 人 行-3.EM 言-3.IND 「口を切り開けて、さうしたら人間になつたと言ひます。 」 Ă (72) £ u Ă £Ďepal £ p 來.INF 人 *30 Ă £Ďkor-m+£ ia Ă Ă Ă £ gi £Ĺsu=£ rae £Ĺkan-ere=£ we 行.INF COMPL -3+ EXPL 娘 二=MK Ă Ă £ u X £ p-(來.INF X 行-) は「X になる」を表はす 。 21 見-SS = PF £Ďkor-e COMPL - SS 「完 に人間になつたので、二人の娘はそれを見て」 Ă (73) £ na £Ďyal Ă Ă £Ĺsu=£ rae=£ ta £Ďu-pl-kra Ă £ u-re Ă £Ĺkal £ ta £Ďel £Ďel-pl-kra Ă £Ďte*32 =£ ra 我 男*31 二=MK=或 來-1DU - MK 來-SS 事 一 作.INF 作-1DU - MK DEM = MK Ă Ă Ă Ă £u £Ďepal £Ďo-m-e £ d-re £ gi £Ĺsu=£ rae £Ďwai £Ďpl-m-e £Ďdu-gwe 來.INF 人 行-3-EM 言-SS 娘 二=MK 好 感-3-EM 言-3.IND 「 「私たちここへ來て一仕事したらこれが人間になつたわ」と言つて喜んださうです。 」 Ă (74) £Ďwai £Ďpl-m+£ ia 好 Ă Ă £Ďyal=£ rae=£ kene £Ĺpa-m 感-3+EXPL 男=MK=と 「そこでその男と一 臥-3.EM 言-3.IND を共にしたと言ひます。 」 Ă Ă Ă Ă (75) £Ĺpa-m+£ ia £Ďkui#£Ďmol=£ ra=£ we £ bo 臥-3+EXPL £Ďdu-gwe 日=MK = PF 砂 Ă Ă £Ďba £Ďyal-gwa £ i=£ rae 黍 赤 -3.SRD DEM = MK £Ďbal £Ďto-m-e 刈.INF 與-3-EM £Ďdu-gwe 言-3.IND 「そしてその の日、(男は娘 に) 自 の育てた赤砂 黍を刈つてあげたさうです。」 (76) £Ďbal Ă £Ďto-m+£ ia Ă Ă £Ďno-m+£ ia £Ďyal £Ďi=£ rae 刈.INF 與-3+EXPL ⻝-3+EXPL 男 DEM = MK £Ĺel Ă £d £Ďto-m-e £Ďdu-gwe 斯樣 言.INF 與-3-EM 言-3.IND 「それを娘がしやぶると男はかう言つたさうです。 」 Ă (77) £ bo Ă £Ďbal £ en £Ďte-ka 砂 黍 赤 £Ďer-e £Ďi=£Ďwe 汝 與-1.SRD £Ďna-ga DEM = PF £Ďna-ga Ă Ă £ ne-re £ bo ⻝-SS 砂 £Ďgaple £Ďi 黍 皮 DEM £Ďkol £Ďbl £Ďi 大 DEM £Ďna-ga 放-SS 行.FUT-2. SRD 行.FUT-2. SRD 行.FUT-2. SRD 「「あなたにあげたその砂 黍はしやぶつて皮を Ă (78) £ p Ă £p £Ĺike (£Ĺ)ke 行.INF 行.INF 家 .INF £Ĺpai-gal*33 £Ďipe に てながらずつと行つて」 Ă £Ďna-gna=£ we Ă Ă £ na £ bo £Ďgaple -2.LOC 上方. あの 行.FUT-2. MK = PF 我 砂 黍 皮 *31 Ă Ă Ă Ă 「私たち二人」を表はす £ na £Ďyal £Ĺsu、£ ne £Ďyal £Ĺsu や「私たち (三人以上)」を表はす £ ne £Ďyal=£ kane などの *32 句においては £Ďyal「男」が はれてゐるが、男女に拘はらず「我々」の 味を表はす。 Ă Ă £Ďte∼£ te は £Ďi∼£ i と同樣の指示詞だが「まさにこれ」といふニュアンスがあり共 知識標識と共 い。 *33 (£Ĺ)ke £Ĺpai-は「 む」を表す熟語。「∼の家」といふとき「∼が む家」を表はす ふことが多い。 22 例が多 部內在型關係 を £Ďi Ă £ dule £Ďbol £Ďu-ra-ka £Ďu-ra-ka £Ďu-ra-ka 從 (VN) LV. INF 來-FUT-1 SG . SRD 來-FUT-1 SG . SRD 來-FUT-1 SG . SRD DEM 「あなたたちが Ă £Ĺpai-gal=£ rae £Ďu-ra-l=£Ďua (79) £Ĺike (£Ĺ)ke 家 んでゐる家に行つたら俺はその砂 黍の皮にずつとついて行き」 £Ďdu-gwe £Ďd-m-e -2.LOC = MK 來-FUT-1 SG = CF 言-3-EM 言-3.IND .INF 「あなたの家まで行かう」と言つたさうです。 」 Ă (80) £Ďd-m+£ ia Ă Ă £ gi £Ĺsu=£ rae 言-3+EXPL £Ďo-m+£Ďia £Ďkol 娘 二=MK £Ďo-m+£Ďia £Ďo-m+£Ďia Ă Ă £Ďgaple £ i=£ rae Ă Ă £Ďbl £ i=£ rae Ă £ bo 大 DEM = MK 砂 黍 皮 £Ďdika DEM = MK £Ĺike*34 £Ďipe 行-3+EXPL 行-3+EXPL 行-3+EXPL (部族名) 家 Ă £ ne-re £Ďo-m-e ⻝-SS £Ďdu-gwe 上方. あの 行-3-em 言-3.IND 「そこで二人の娘は を砂 黍をしやぶりながらずつと行きディカ族の地域に行つた さうです。 」 (81) £Ďo-una Ă £d £Ďbola £Ďgol 行-3.MK 豚 £Ĺyo-m-e £Ďdu-gwe -3-EM 言-3.IND 豚祭 (VN) LV. INF 「そこでは豚祭りが行なはれてゐたさうです。 」 Ă (82) {£ p-rere} £Ďkuml-m*35 (行-SS) Ă Ă Ă £Ďi=£ rae=£ we £Ĺena £ u £Ďyal-m 靑年-3.POSS 男-3.POSS DEM = MK = PF さて 來.INF え £Ďkor-m-e 好 眞 甚 行.INF £Ďdu-gwe COMPL -3- EM 言-3.IND 「(行つて...) 件の若 の方はと言へば、(え) (83) £Ĺpul £Ďbol Ă {ep} £Ďwai £Ďone £Ďtia £ p Ă £Ďkor-m+£ ia く非常に美しくなつたさうです。」 Ă £Ďkuml-m=£ rae Ă Ă £ ula#£ kre £Ďmol 切.INF COMPL -3+ EXPL 靑年-3.POSS = MK 美麗 「竹ナイフで切り みを入れたので若 Ă (84) £Ĺena £Ĺapane*36 £Ďkorai=£ rae £Ďpl さて アパネ草 蓑=MK £Ďkor-e 居.INF COMPL - SS は く見目麗しくなつて」 £Ďkor-e 着.INF COMPL - SS 「さてアパネ草の 蓑をつけて」 *34 *35 *36 £Ĺike は 居を表はすほか部族名を ひその居 地域を指す。 三人稱 接辭は指示語 な用法 ( 示、照應) をももつ。ここでは指示語 用法で はれてゐる。 アパネ草の纖維を りとしてつけた美しいものを着用してゐたといふこと。 23 Ă Ă Ă £ sm=£ rae £ de (85) £Ĺapane アパネ草 帶=MK £Ďkor-e 締.INF COMPL - SS 「アパネ草の帶を締めて」 (86) £Ĺoo Ă £Ďdike=£ rae £Ĺmool-e £Ďkor-e £Ďdike £Ĺapane 手.3. POSS 腕 アパネ草 腕 「腕 を、アパネ草の腕 種々 COMPL - SS をはめて」 Ă Ă Ă (87) £Ĺkal £ kane=£ kane £Ďi=£ rae 物 穿-INF =MK £Ďel DEM = MK £Ďel £Ďel £Ďel £Ďkor-e 作.INF 作.INF 作.INF 作.INF COMPL - SS 「いろいろなことをして」 (88) £Ďoon £Ďkol 鼓 £Ĺkukl-e 張.INF -SS 「太鼓を持つて」 Ă (89) £ p Ă £p Ă £i 行.INF 行.INF 取.INF Ă Ă £p £p £Ďdika Ă £ p-re Ă £ bo 行-SS 砂 黍 皮 Ă Ă £Ďgaple £ i=£ rae £Ĺike £Ďipe 行.INF 行.INF (部族名) 家 Ă £ dule DEM = MK £Ďbol 從 (VN) LV. INF Ă £p 行.INF £Ďo-m=£Ďba £Ďkore 上方. あの 行-3=だが ところで 「出かけると、砂 黍の皮について行き遙かディカ族の地域に行つたのですが」 Ă (90) £Ďipal £Ĺekn=£ rae — £Ďbola £Ďgol 人 Ă £p 豚 =MK 豚祭 (VN) 作.INF {£Ĺike} £Ĺkiine £Ďbnane £Ďile 行.INF (家) 隅 Ă Ă Ă £Ĺyo-m+£ ia — £Ĺekn £Ďel-m=£ ba £Ďyal=£ rae £Ďel 端 水 -3+EXPL £Ĺpai . あの 臥.INF 作-3=だが 男=MK £Ďkor-e COMPL - SS 「人が りを — 豚祭りなので — 着 つてゐるのですが、男は (家...) 隅つこに行つて 陣取つて」 Ă Ă (91) £Ďoon £ i=£ rae 鼓 DEM - MK £Ďyu £Ĺel Ă £s Ă Ă £Ďmol-gwa £ i=£ rae 徒 斯樣 打.INF 居-3.SRD DEM = MK 「太鼓をただこんな風に打つてゐると」 Ă (92) gil gil gapal gapal gil gil gapal gapal £ d (擬 ) (擬 ) £Ďmol-m-e £Ďdu-gwe 言.INF 居-3-EM 24 言-3.IND 「ギルギル、ガパルガパル、ギルギル、ガパルガパルと鳴つたと言ひます。 」 Ă (93) £ d Ă Ă Ă Ă £Ďmol-m+£ ia {£Ďyal=£ rae £Ďpl-ere=£Ďwe e} £ gi £Ĺsu £Ďi=£ rae £Ďpl-ere=£Ďwe 言.INF 居-3+EXPL Ă £ aya £Ďoon £Ďsu-gwa 男=MK 聞-SS = PF え 娘 二 DEM = MK 聞-SS = PF Ă Ă Ă Ă £ ila gil gil gapa gapa £ d £Ďd-m+£ ia*37 £ ne わあ 鼓 內 打-3.SRD Ă £Ďyal £Ĺsu=£ ta £Ďkaa-ne 男 二=或 (擬 ) 言.INF NVS-3+EXPL 我々 (EXCL) Ă Ă Ă Ă £Ďd-m+£ ia=£ d £Ĺkan-gwa £ te=£ rae £Ďdal 名-1NSG . POSS 呼.INF NVS-3+EXPL=Q 見-3.SRD DEM = MK 「それで (男はそれを聞いて、いや) 二人の娘はそれを聞いて、あらまあ太鼓がギルギ ル、ガパルガパルと鳴つてゐるわ、私たち二人の名 を呼んでゐるわと見たところ」 Ă Ă £ ti=£ rae (94) £Ďkuml-m Ă Ă £Ĺnene £ ula#£ kre £Ďmol 靑年-3.POSS DEM = MK 自 「若 ときたら 夢 £Ďdu-gwe 居.INF COMPL -3. EM 言-3.IND 美麗 く見目麗しくなつてゐたさうです。 」 (95) £Ďyale £Ĺkupe £Ďgla 男 £Ďkor-me Ă £Ďti=£ rae £Ĺmr-gwa 口.3.POSS 噤-3.SRD Ă £u Ă Ă Ă £Ďkuml £ ula#£ kre £ p-re 來.INF 靑年 美麗 DEM = MK 行-SS £Ďo-m-e*38 £Ďdu-gwe 行-3-EM 言-3.IND 「クペ・グラ・ムルングワさんが見目麗しき若 になつてゐたと言ふのです。」 Ă Ă (96) £ gi £Ĺsu £Ďi=£ rae Ă £Ĺkare £ p 娘 二 DEM = MK Ă £Ĺkau £ p Ă (97) £Ďkol-m+£ ia £Ďkuml-m £Ďdu-gwe 際 行.INF 密着-3-EM 言-3.IND 行.INF 「娘二人はすぐ仲良くなつて寄り £Ďkol-m-e つたさうです。 」 Ă £Ďi=£ rae £Ĺkare £Ĺaul 密着-3+EXPL 靑年-3.POSS DEM = MK Ă £ i-re Ă £u £Ĺipe £Ďo-m-e 帶同.INF 取-SS 來.INF 上方. その 行-3-EM £Ďdu-gwa £Ĺipe 言-3SRD 上方. その 「それで若 はすぐに (娘 を) すぐ上の方に *37 Ă Ă £ d £Ďdm+£ ia が (言.INF NVS -3+ EXPL ) なのか ( Q 言-3+ EXPL ) なのか から必ずしも らかではないが、そ Ă に らかな gil gil gapal gapal£ d((擬 ) 言.INF) があり に らかな NVS があるので同樣に解釋する。 Ă 動いてゐるので動詞 £ p-「行く」を つてゐるが日本語で「ゐる」といふのにあたる。 の *38 れて行つたと言ひます。 」 25 (98) £Ďdle £Ďkople £Ďo-m-e 石の一種 石 £Ďdu-gwe 行-3-EM 言-3.IND 「(上の方とは) ドゥレ・コプレに行つたと言ひます。 」 Ă (99) £ p £Ďkor-e 行.INF COMPL - SS Ă Ă Ă £ gi £ ta £ i Ă mol-£Ĺa-m+£ ia Ă Ă Ă £ gi £ ta £ i Ă £ ere £Ĺp-o 娘 別 DEM 居-FUT-3+ EXPL 娘 別 DEM 去 行-IMP £Ďdu-gwe £Ďd-m-e 言-3-EM 言-3.IND 「一方の娘は殘ることにしてもう一方の娘は去りなさいと言つたさうです。 」 (100) £Ĺena £Ďmol-gwa £Ĺgal £Ďi さて 居-3.SRD 子 Ă £u £Ďo-gwa*40 £Ďkul DEM £Ĺye-re £Ďipe*39 £Ĺyo-gwi=£Ďwe £Ďkul 產.INF -3.DEM = PF 產.INF -SS Ă £s 配 (VN) LV. INF 來.INF 行-3.SRD 「そして子供を產んで、取り けながら暮らして」 Ă (101) £ ne Ă £Ďyal=£ kane £Ďmala £Ďel 我々 (EXCL) 男= £Ďi Ă £u £Ĺpai あたり DEM £Ďo-pgi .INF 來.INF 行-1NSG . DEM 「我々が今ここにこの地域に廣がつてゐるわけで」 (102) £Ďstori £Ďdu-gwa 話 £Ĺp-pga 言-3.SRD £Ĺp-pga £Ďi £Ďi £Ďtumbuna 聞-1NSG . SRD DEM Ă {£Ďgore} £ wa-m £Ďstori £Ďdu-gwa 上方. あの 話 £Ďkul 聞-1NSG . SRD DEM (氏族名) 息子-3.POSS 產.INF 「話を聞いたところでは、ご先 £Ďipe £Ĺyo-gwa -3.SRD 言-3.SRD £Ďi=£Ďwe DEM = MK が話したことを聞くに、(ゴレ)、產んだ息子といふ のは」 (103) £Ďgore=£Ďwe Ă £ kwiwa=£Ďwe £Ďdu-gwa £Ďi=£Ďwe £Ĺene £Ĺnuul=£Ďwa Ă £Ďkuman=£Ďwa=£ d (氏族名)=PF (氏族名)=PF 言-3.SRD DEM = MK さて (亞氏族名)=PF (亞氏族名)=PF = Q Ă Ă £Ďkaa £ kane=£ kane £Ĺye £Ďkor-gwa £Ďi=£Ďwe 名.3.POSS 種々 命名.INF COMPL -3. SRD DEM = MK 「ゴレ、クイワと言ふのと、それからヌールとかクマンとか名 を樣々につけたのが」 *39 部族、氏族、亞氏族などの單位は儀禮において⻝べ物の *40 こでも「さまざまの集團に かれて暮らす、 かれていつた」ことを表はす。 Ă Ă £ u £ p- (來.INF 行-) はあちこちに 布することを表はす。 26 配を受ける單位として象徵 に表現される。こ Ă (104) £Ĺnul=£ ku £Ĺpa-gwa (氏族名) £Ĺalwa#£Ďkama £Ĺma-n*41 -3.SRD (人名) £Ĺalwa#£Ďkama=£Ďya £Ďmol-gwi 母-2.POSS (人名)=や 「(その一つが今の) ヌール・ク氏族でアルワ・カマ、お 居-3.DEM の伯母さんであるアルワ・ カマなどの人たちで」 Ă (105) £ te £Ďkuman=£Ďwe £Ďdu-gwa それから (氏族名)=PF £Ďile 言-3.SRD £Ĺdaware £Ďile 水 . あの (地名) 水 £Ďi=£Ďwe DEM = MK Ă £Ďkuman=£ kane (氏族名) Ă £ ila £Ĺpa-gwa -3.SRD 內 £Ĺpa-gwi . あの -3.DEM 「それからクマンと言ふのはその奧に むクマン・カネ、ほらあつちのダワレに ん でゐる」 Ă Ă (106) £ en £Ĺdaware £ ta 汝 (地名) £Ĺkan+(£Ĺ)k-ge 見 +NEG -2. IND NEG 「お はダワレは見たことがなかつたね」 Ă (107) 千田: £ ta NEG £Ĺkan+(£Ĺ)ki-ke 見 +NEG -1 SG . IND 「見たことがありません。 」 Ă (108) £ ta NEG £Ĺkan+(£Ĺ)k-n-a 見 +NEG -2- EXPL 「さうだつたね。 」 Ă Ă (109) £Ĺena £ kum=£ wa £Ďdu-gwa さて (氏族)=PF £Ďime £Ďi Ă £Ĺena £Ĺa=£ de £Ĺkapama*42 £Ďmol-gwa £Ĺnene 言-3.SRD DEM さて (人名) 母方親戚 居-3.SRD 我々 (INCL) £Ďo-pgnae 下方. あの 行-1NSG . MK 「それからクムといふのが、ええ、アデの母方親戚でお も一緖にその下方地域を訪 ねたね」 *41 ある人物を聞き手である本稿筆 も親族關係になぞらへて位 き、正確にはここでは筆 *42 の「母」と呼んでゐる。ある づけられる。なほ、ドム語では 度親しい關係にある 方の 母はみな 義の は餘 であつて 母と呼ぶことがで の「 」の姉にあたる人物をさしてゐることから「伯母」と譯した。 話し手 (女性) が自 の出身氏族のことを子供 Ade を基準にして母方親戚と呼んでゐる。このやうに子供を 基準にした親族表現は珍しくない。ここでは聞き手である筆 が話し手の「子」にあたる關係 (Ade の「兄 弟」) であること踏まへると聞き手への配慮も影 した可能性がある。 27 (110) £Ĺena £Ĺel £Ďel-gwa £Ďkul £Ďer-gwa 產.INF 出-3.SRD さて 斯樣 作-3.SRD £Ďipe £Ďsu-gwa 配 (VN) £Ĺpai Ă £u .INF 來.INF けながらここ一帶に んでゐ LV-3. SRD £Ďo-pge 行-1NSG . IND 「さてかういふ 合で產んだ子が、 け を取り ます。」 Ă £u (111) £Ĺpai Ă £ ne £Ďo-pn-a Ă £Ďepal £Ďmala £ i .INF 來.INF 行-1NSG - EXPL 我々 EXCL 人 Ă Ă Ă £Ĺkal=£ ta £Ďel-gwa £ i=£ we 事=或 DEM £Ďbola £Ĺki-gwa=£Ďya 豚 炊-3.SRD =や 作-3.SRD DEM = PF 「そして我々はここで豚を料理するとかなにか きた時には」 Ă Ă (112) £Ďkape £ gurau*43 £ tamne*44 =£Ďya £Ďbal £Ĺke-gwa Ă £i £Ďdle £Ďkople £Ďipe=£Ďwa 上方. あの=PF 動物 パンの木 羊齒の一種=や 刈.INF 炊-3.SRD DEM 石の一種 石 Ă Ă Ă Ă Ă £Ďkape £ tamne £ ne-re £Ďu-pga £Ĺmo-pn=£Ďwa=£ d £ gurau £ tamne £Ďi 動物 羊齒の一種 ⻝-SS 來-1NSG . SRD 居-1NSG = CF = Q £Ĺau £Ďwai £Ďel-e 握.INF 好 パンの木 羊齒の一種 DEM £Ďno-gwe 作-SS ⻝-3.IND 「 に山 など つて料理する時には、我々はドゥレ・コプレで 、山 を⻝べてを り、さうしてやつて來たんだと言つて山 Ă (113) £ ne-re £Ďel-gwa £Ĺel £Ďel-gwa をちやんと準備して⻝べるんです」 Ă £ ya £Ďel-m=£Ďua £Ďdu-gwe ⻝-SS 作-3.SRD 作.INF 作-3.SRD TS 作-3=CF 言-3.IND 「それで、そのためにあれだと言ふんです。 」 (114) £Ďepal £Ďu-gwa 人 來-3.SRD Ă £Ĺpa-pn=£Ďwa=£ d £Ďstori £Ďdu-gwa -1NSG = CF = Q 話 Ă £i 言-3.SRD DEM 「かういふ出自をもつてゐると話をしたもので」 *43 *44 ドムではパンの木は若葉のみを⻝用にする。 パンの木の葉と⻝用羊齒は に 作によらず野山で る野 の代表格として竝び稱される。これらは 炊きすると美味であるとされる。ドムの故地ドゥレ・コプレが野山の野 記念して、ドム諸氏族の擴散ののちもこれらを缺かさないやうにしてゐるといふ話をしてゐる。 28 ととも に富んでゐたので、それを Ă (115) £Ďtumbuna=£ kane £Ďipe £Ďstori £Ďdu-gwa 上方. あの 話 = £Ĺp-pge 言-3.SRD 聞-1NSG . IND 「昔のご先 たちが話をしたのを聞きました。」 Ă (116) £ ne Ă £Ďyal=£ kane £Ďi 我々 (EXCL) 男= Ă £ ta DEM £Ĺkan+(£Ĺ)k-pge 見 +NEG -1 NSG . IND NEG 「私たちは見たわけではありません。 」(傳へ聞いた話である) Ă (117) £ ta Ă £Ďtumbuna £Ĺkware £Ďtumbunane £ kona £Ďipe £Ĺkan+(£Ĺ)k-pn-a NEG 見 +NEG -1 NSG - EXPL £Ďstori £Ďdu-gwa 話 等 £Ĺyel £Ďdu-gwa £Ĺp-pga 言-3.SRD 斯樣 言-3.SRD 聞-1 NSG . SRD 「先 が、ずつと昔の先 上方. あの £Ďdu-gwe*45 -3.IND が話をするにこんな風に言つたのを聞いたのです。」 略號一覽 {...} 言ひ り DU 雙數 NEG 表出法 NPINT 否定 = 接語境界 (ゆるい) EM + 接語境界 (かたい) EXCL 除外 NSG 非單數 # 語彙 EXPL 說 法 NVS 非 覺知覺 1 一人稱 FUT 未來 PERM 2 二人稱 IMM 將然 PF 句末 3 三人稱 IMP 命令法 PINT 肯否疑問 ADV 副詞 INCL 括 POSS 句內語境界 非肯否疑問 許可法 接辭 CF 末 IND 說法 Q 引用標識 CL 別用法 INF 用形 SG 單數 SRD 從屬法 SS 同 語接續 COMPL CRAN 完 相 クランベリー形式 IPFV 非完結相 LOC 場 詞、場 辭 DEM 指示詞 LV 輕動詞 TS 臨時代替 DS 異 語接續 MK 共 VN 動名詞 *45 從屬法動詞に £Ďdugwe「ある」(コピュラ 味 ・形式 にも日本語のノダ に 知識 にもはたらく) が後續する は背景理由說 などに はれ、 じるところがある。ここでは「見たわけではないが傳へ聞いたのだ」 あるいは「傳へ聞いたのでここにお話しする 第だ」といつたニュアンスをもつ。 29 參考文獻 Bergmann, Wilhelm (1966) Wörterverzeichnis der Kuman Sprache gesprochen im Inland von Neuguinea im Chimbu District. typescript. (460pp copy held in SIL library). Brown, Paula (1970) “Chimbu transactions”. Man, 5 (1), 99–170. Brown, Paula (1972) The Chimbu. Shenkman Books. 畑中幸子 (1975) 『われらチンブー』. 三笠書房. 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