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タマネギの差別化品種に関する検定調査

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タマネギの差別化品種に関する検定調査
1 試験分類 「顔の見える農業」推進対策試験
2 課 題 名 タマネギの差別化品種に関する検定調査
3 実施期間 継続(平成 16 年度∼)
4
担
当
地産地消推進係
5
目的
平成 16 年度から「札幌黄ルネサンス事業」の一環として、伝統ある「札幌黄」の血統を
引き継いだ札幌黄改良品種の選定を行ってきた。
「札幌黄ルネサンス事業」は平成 18 年度で終了したが、「さつおう」を含め「札幌黄」、
とともに、他品種との差別化を進めるうえで、耐病性や収量性等を調査し、札幌産タマネギ
のブランドづくりを進める。「さらら」は平成 22 年度で種子生産が終了しており、今年度で
調査を終了する。(種子は平成 22 年度産種子)
6
平成 23 年度の結果
(1) 試験方法
ア
試験圃場及び規模 農業支援センター露地圃場 (R-52) 69.3 ㎡
イ
供試品種 検定系統:さつおう(中生)
〔㈲植物育種研究所育成〕
:札幌黄(中生)
〔支援センター採種〕
:さらら(中生)
対照品種:スーパー北もみじ(晩生・北見系調査と重複)
ウ
試験規模 1区面積:9.9㎡ 2反復
エ
耕種概要 播
種:3月 1日
定
植:5月 20 日
栽植密度:畝幅 30cm 株間 10cm(330 株/区)
施 肥 量:N=1.5 P2O5=2.7 K2O=1.8(㎏/a)
:化成肥料 S082(10:18:12)・N=15 ㎏/10a
防
除:除草剤1回・殺虫殺菌剤混合4回散布
(2) 結果の概要
ア 生育経過
3月、4月の気象条件は比較的低温で推移し、日照不足も重なり苗の生育は若干緩慢気
味であった。発芽は3月 11 日に確認した。4月の降水量は 120 ㎜(平年比 220%)と非常
に多く、特に4月下旬以降に集中し、5月上旬まで続いた。そのため圃場が乾燥せず、定
植作業が平年であれば連休前に終えるが、今年は5月 20 日と大幅に遅れることとなった。
そのため約 80 日の育苗期間となり、老化苗の移植となった。定植後は逆に降雨も少なく、
活着が遅れ葉の枯れ上がりが目立ち、葉部の生育が抑制された。裸苗使用のため、定植時
に根を痛めているのも影響しているものと思われる。6月下旬から7月に向けての気温は
平年より高く、適度な降雨もあったが、8月は真夏日が続き、降雨もなく旱魃気味であり、
肥大期の根の活性が弱まり、以後の生育が抑制された。その後も肥大が停滞したまま根切り、
枯葉期に入り各生育ステージも1週間から 10 日程度遅れた。また、収穫も9月上旬の降雨
により、圃場に入れず遅れる結果となった。球肥大が抑制され、全体的に小玉傾向となり、
平均一球重、規格内収量、総収量に影響する結果となった。
病害虫防除に関しては、7月から8月にかけて4回の散布で終了。除草剤は1回の散布で、
その後は3回手作業で行った。
表1−1 生育調査結果(定植∼肥大期)
5月20日(定植時)
6月28日
品種・系統名
本葉数 葉鞘径
根数
草丈
生葉数
さつおう
3.7
4.5
12.1
33.7
5.6
札幌黄
3.5
4.7
13.9
34.0
5.8
さらら
3.4
4.6
13.9
36.1
5.7
スーパー北もみじ
3.4
4.7
12.1
34.1
5.8
*定植時の苗の基準 ・葉数3∼4枚 ・葉鞘径3∼4㎜ ・根数10∼15本
*単位:本葉数・生葉数(枚) 根数(本) 葉鞘径(㎜) 草丈(㎝) 2区平均
7月22日
草丈
生葉数
67.8
9.5
65.6
9.1
64.9
9.3
67.7
10.1
表1−2 生育調査結果(肥大期∼収穫期)
品種・系統名
肥大期 倒伏始
さつおう
7/20
8/7
札幌黄
7/21
8/7
さらら
7/21
8/5
スーパー北もみじ
7/20
8/6
*倒伏揃・枯葉期は80%確認された日 倒伏揃
8/26
8/26
8/23
8/24
根きり
8/30
8/30
8/30
8/30
枯葉期
9/5
9/5
9/3
9/3
2区平均
収穫期
9/8
9/8
9/8
9/8
イ 収量調査
規格内収量については、昨年に引き続き気象条件の影響で、生育も緩慢となり、肥大も
停滞したことから、全品種標準反当り収量(5,500kg/10a)を大幅に下回る結果となった。
平均一球重においても、全品種 200g に達しておらず、MからSサイズが大半を占める結果
となった。
規格外収量については、多い順に「札幌黄」
、
「スーパー北もみじ」
、
「さらら」
、
「さつおう」
、
となり、欠株率では「札幌黄」
、
「さつおう」に多く見られた。
貯蔵前腐敗数については、乾腐病が「さらら」の 3.6%と一番多く、他の品種は例年と比
較すると少なかった。軟腐病は全品種1%代でこちらも例年と比較するとかなり少なかった。
貯蔵腐敗数については、貯蔵試験調査後の数値と併せて検討することとしたい。
因みに昨年の貯蔵試験調査の結果では、11 月から4月までの貯蔵腐敗は、
「札幌黄」で 18%、
「さつおう」5%、
「さらら」3%、
「スーパー北もみじ」に腐敗はなかった。12 月に入り
茎盤突出の兆候が出始め、4月の最終調査の段階で健全球としての割合は「スーパー北も
みじ」50%、
「さらら」10%、
「札幌黄」2%で「さつおう」に健全球はなかった。
表2 収量調査結果
品種・系統名
さつおう
札幌黄
さらら
スーパー北もみじ
*一球重:g
規格内収量
個数
重量
一球重
2,666.7
315.3
118.2
2,272.9
262.7
115.6
2,394.0
231.4
96.7
2,363.7
269.1
113.8
規格外収量
個数
重量
484.9
35.4
803.3
67.6
727.4
37.5
939.5
54.0
2区平均(個・㎏/a)
貯蔵前腐敗数
欠株率
乾腐
軟腐
(%)
15.2
60.6
3.2
30.3
45.5
4.5
121.2
30.3
1.4
0.0
15.2
0.5
規格別収量の内訳は、L以上の割合が多い順に「札幌黄」の 21%、
「スーパー北もみじ」
の 14%、
「さつおう」の 13%、
「さらら」が一番少なく7%であった。2Lの収穫は4品種
ともなく、全品種MからSサイズが大半を占め全体的に小玉傾向となった。
表3 規格別収量調査結果
品種・系統名
さつおう
札幌黄
さらら
スーパー北もみじ
品種・系統名
さつおう
札幌黄
さらら
スーパー北もみじ
2L
球数
0.0
0.0
0.0
0.0
L大
重量
0.0
0.0
0.0
0.0
S
球数
重量
1,378.8
131.4
984.9
82.8
1,439.4
117.1
1,333.4
118.8
球数
15.2
0.0
0.0
30.3
L
重量
3.7
0.0
0.0
8.5
合計
球数
重量
2,666.7
315.3
2,272.9
262.7
2,394.0
231.4
2,363.7
269.1
球数
212.1
303.1
106.1
151.5
2区平均(個・㎏/a)
M
重量
球数
重量
38.7 1,060.6
141.5
54.0
984.9
125.9
17.2
848.5
97.1
28.5
848.5
113.3
規格外収量では天候不順の影響で肥大が停滞し、全品種S以下に占める割合が例年になく
多くみられ、
「札幌黄」
、
「さらら」
、
「スーパー北もみじ」
、
「さつおう」
、の順となった。
全品種皮むけは見られなかったが、
「札幌黄」で変形が目立った他は裂皮、分球、長球、扁
平が平均して見られた。
「さらら」は変形、裂皮、長球が散見された。
「スーパー北もみじ」
は長球が目立った他変形が、
「さつおう」は変形、裂皮、長球が散見された。これまで問題
視されていた「さつおう」の長球について、毎年 50 ㎏/a を超えていたが、今年は 9.0kg/a
とかなり少なくなっており、改善されてきているものと思われる。
表4 規格外収量調査結果
品種・系統名
さつおう
札幌黄
さらら
スーパー北もみじ
品種・系統名
さつおう
札幌黄
さらら
スーパー北もみじ
S以下
球数
重量
333.3
19.0
727.3
35.9
681.8
33.0
606.1
31.1
分球
球数
0.0
15.2
0.0
0.0
変形
球数
60.6
15.2
15.2
15.2
裂皮
重量
6.2
25.9
2.0
1.9
長球
重量
0.0
1.8
0.0
0.0
球数
75.8
15.2
15.2
318.2
球数
15.2
15.2
15.2
0.0
2区平均(個・㎏/a)
皮むけ
重量
球数
重量
1.2
0.0
0.0
1.2
0.0
0.0
1.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
扁平
重量
9.0
1.4
1.5
21.0
球数
0.0
15.2
0.0
0.0
合計
重量
0.0
1.4
0.0
0.0
表5 生産力検定調査結果(2区平均)
腐敗球率
規格内
規格内 平 均
倒伏期
同左比
品種・系統名
乾腐病 その他 収 量
率
一球重
(月日)
(%)
(%)
(kg/a)
(%)
(%)
(g)
さつおう
8/7
0.5
1.8
315
117
90
111
札幌黄
8/7
0.9
1.4
263
98
80
107
さらら
8/5
3.6
1.4
231
86
86
86
スーパー北もみじ
8/6
0.0
0.5
269
100
83
98
注)腐敗球率のその他には、軟腐病、ボトチリス性病害、肌腐症、虫害を含む。
注)腐敗球率:栽植株数に対する割合(a当り栽植株数3,333本)
注)規格外球数には、S以下、変形、裂皮、皮むけ、分球、長球、扁平、障害球を含む。
球数
484.9
803.3
727.4
939.5
総収量
(kg/a)
351
330
269
323
重量
35.4
67.6
37.5
54.0
規格外
球 数
(%)
15.4
26.1
23.3
28.4
(3) 考察及び次年度計画
昨年と今年の2年続きの天候不順により、収量等に多大に影響を受けた年であった。
「さつおう」に関しては、昨年までは規格外品の裂皮、長球について、他の品種と比較して
多く見受けられ、球の不揃いが目立つ傾向にあったことから、生産者からも指摘を受けており、
開発者も改善に向けた取り組みを行ってきたところである。今年は双方とも軽減され、長球
に関してはかなり少なくなっているが、単年の結果であり継続して調査する必要がある。
「さつおう」の種子に関して、毎年5ha 前後の採種量を目標として採種を行ってきたが、天
候不順により採種が思わしくなく、3ha 前後の採種量に留まり生産者に迷惑をかける結果と
なった。今後「さつおう」を普及するにあたり、採種から育成まで一貫した取り組みによる
差別化を図り、開発者、JAとともに今後の生産計画等を調整しながら、販路拡大を進めて
いく必要がある。
毎年継続している「札幌黄」の採種に関しては、種の保存という目的もあり、年々、生産
者も増加傾向にあることから今後も継続していくこととし、今までは露地で採種を行ってき
たが、来年度からは採種量の増加を図り、ハウス内で採種にすることとした。また、JAも
今後の「札幌黄」の生産拡大に向け採種を検討していることから、それぞれが連携を図り協
力をすべく取り組んでいきたい。
今年度まで行ってきた試験栽培で品種毎に、ある程度の数値を把握してきたことから、次
年度からは展示栽培に切り替え、収量調査は継続していくこととする。
(参考資料)
※過去5年間の品種別収量比較(kg/a)
平成19年度
平成20年度
平成21年度
品種・系統名
規格内 規格外 総収量 規格内 規格外 総収量 規格内 規格外 総収量
さつおう
461
155
616
695
147
842
647
117
764
札幌黄
415
157
572
619
58
677
612
89
700
さらら
448
65
513
630
71
701
657
33
690
スーパー北もみじ
570
77
647
719
85
804
601
33
634
品種・系統名
さつおう
札幌黄
さらら
スーパー北もみじ
平成22年度
平成23年度
5年間平均
規格内 規格外 総収量 規格内 規格外 総収量 規格内 規格外 総収量
427
46
473
315
35
350
509
100
609
324
38
362
263
68
331
447
82
528
453
63
516
231
38
269
484
54
538
465
11
476
269
54
323
525
52
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