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湖の水質浄化に伴う生態系変化と それが生み出した新たな問題 諏訪湖
湖の水質浄化に伴う生態系変化と 湖の水質浄化に伴う生態系変化と それが生み出した新たな問題 それが生み出した新たな問題 諏訪湖から学んだこと 諏訪湖から学んだこと 信州大学山岳科学総合研究所 長野県諏訪建設事務所提供 花里孝幸 流出口 導水管 下水処理場 処理場排水中のリン濃度 は、諏訪湖の全リン濃度 の10倍以上 流出河川、天竜川水質への 流出河川、天竜川水質への 下水処理システムの影響評価 下水処理システムの影響評価 天 白 橋 新 樋 橋 天竜川(新樋橋)の水質への影響評価(TP:mg/L) 年平均 天竜川(新樋橋)の水質への影響評価(COD:mg/L) 年平均 湖水中の全リン濃度 山林・農耕地 からの流入負荷 工場・事業所 からの流入負荷 環境基準値 家庭からの 流入負荷 1984年 集水域から諏訪湖に流入する全リン量と 湖水中の全リン濃度の年変化 2001年 水質浄化に伴う 生態系の変化 アオコの激減 諏訪湖における1991∼2003 年のMicrocystisの現存量の 変化(本間・朴,2005) 年 2005 2003 2001 異常な冷夏 1999 1997 1995 1993 1991 20 0 1989 140 1987 1985 1983 1981 120 1979 1977 透明度(cm) 諏訪湖の夏(7∼9月)の平均透明度 アオコ激減 下水処理場の稼働 100 80 60 40 20 年 ユスリカの減少 至近距離からの写真 (黒い点がユスリカ成虫) 諏訪湖から発生したユスリカで壁が黒ずんだ湖畔に建つ建物(199 0年) 下水処理場の供用開始 信濃毎日新聞(2005年10月28日) 湖が汚れると 魚が増える! 「魚がたくさん棲めるような 「魚がたくさん棲めるような きれいな湖にしよう」 きれいな湖にしよう」 ↑ ↑ 生態学的に誤った表現 生態学的に誤った表現 昔は湖水がきれいでワカサギが たくさん獲れた? アオコの 大発生期間 下水処理場の供用開始 水草 浅い湖では水草が繁茂しやすい ヒシ 諏訪湖 エビモ エビモ帯における透明度と エビモの現存量との関係 数値は5ヶ年ごとの平均値 諏訪湖における密度評価による 5ヶ年ごとのエビモの分布の比較 武居 (2004) 諏訪湖 4m ヒシ 2m 2006年晩夏 2006年 諏訪湖 2008年 貧栄養化 富栄養化 太陽光 沈水植物 ヒシ 底 低/ 砂質 高 / 泥質 高 / 泥質 有機物 含量 水質浄化だけでは昔の生態系 は戻らない。 底質の改善も必要。 水質浄化よりも 時間がかかる 魚の少ない湖 湖のプランクトン群集 魚の多い湖 カブトミジンコ {ダフニア} (体長:∼2mm) ゾウミジンコ (体長:∼0.5mm) ツボワムシ (体長:0.2mm) 植物プランクトン の天敵 食う-食われる 競争 生物間相互作用 霞ヶ浦で 起きた事件 カブトミジンコ:∼2mm イサザアミ:∼15mm 白樺湖でのバイオマニピュレーション ニジマス放流(2000∼2003) カブトミジンコ放流(2000年) 水草(コカナダモ)の分布面積の変化 (b) 1999年 (a) 1998年 8.1% (c) 2000年 34.6% (d) The year 2005-2006 白樺湖 0% 52.1% 白樺湖における透明度の変化 水草が湖面積の3割程度覆うようになると、 湖全体の水質に影響を与えるようになる The change of Daphnia density & water transparency in Lake Shirakaba (1997-2006) 400 0 300 200 3 250 200 300 150 100 0 50 8.1 34.6 ここのデータはまだナイショ 0 400 水草被覆率 500 0 M J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N 1997 1998 Daphnia density Secchi depth 1999 2000 2002 2001 2003 2004 2005 Year 白樺湖 2006 Water transparency (cm) 100 2 Daphnia (x10 inds / m ) 350 ● ワムシや小型ミジンコに及ぼすダフニアの影響 250 ダフニア (ガブトミジンコ) 200 白樺湖 3 2 Daphnia density ( x10 Inds. / m ) Daphnia galeata 150 ダフニアの放流 ダフニアの放流 100 50 0 M J S N J M M J S N J 1998 1997 M M J S N J M 1999 M J S N J M M J S N J M M J S N J 2002 2001 2000 Date M M J S J S J S 2003 T o ta l C la d o c e r a 1 4 0 0 小型ミジンコ 1 2 0 0 3 x10 Inds. / m 2 1 0 0 0 8 0 0 6 0 0 4 0 0 2 0 0 0 M M J S N J M M J S N J M M J S N J 1 9 9 9 1 9 9 8 1 9 9 7 M M J S N J 2 0 0 0 M M J S N J M M J S N J M 2 0 0 2 2 0 0 1 M 2 0 0 3 D a te T o t a l R o t if e r a ワムシ類 2 5 0 0 0 1 5 0 0 0 3 x10 Inds. / m 2 2 0 0 0 0 1 0 0 0 0 5 0 0 0 0 M M 1 9 9 7 J S N J M M 1 9 9 8 J S N J M M 1 9 9 9 J S N J M M J 2 0 0 0 D a te S N J M M 2 0 0 1 J S N J M M 2 0 0 2 J S N J M M 2 0 0 3 N 白樺湖における透明度の変化 水草が湖面積の3割程度覆うようになると、 湖全体の水質に影響を与えるようになる The change of Daphnia density & water transparency in Lake Shirakaba (1997-2006) 400 0 300 200 3 250 200 300 150 100 0 50 8.1 34. 6 400 0 水草被覆率 500 0 M J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N 1997 1998 Daphnia density Secchi depth 1999 2000 2002 2001 2003 2004 2005 Year 白樺湖 2006 Water transparency (cm) 100 2 Daphnia (x10 inds / m ) 350 白樺湖 水草(コカナダモ)の分布面積の変化 (b) 1999年 (a) 1998年 8.1% (c) 2000年 34.6% (d) 2005-2006年 0% 52.1% 白樺湖の透明度の経年変化 (1997-2006) LMND HMND (1) (2) LMND LMHD HMHD (3) (4) (1) 0 Secchi depth ( cm ) 100 200 Mean secchi depth 300 400 500 M J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N J MM J S N 1997 Stages 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 (1) : LMND (Low density of macrophytes and no or a few Daphnia) (2) : HMND (High density of macrophytes and no Daphnia) (3) : LMHD (Low density of macrophytes and high density of Daphnia) (4) : HMHD (High density of macrophytes and high density of Daphnia) 2006 それぞれのステージの 平均透明度 350 250 Secchi depth 12 b,c 10 b a Chlorophyll a. c b,c 8 200 mg / L Secchi depth (cm) 300 c それぞれのステージの 平均クロロフィル濃度 150 a,b 6 a 4 100 50 2 0 0 LMND HMND LMHD HMHD Microcystis sp. LMND HMND LMHD HMHD (Standard error) The mean values denoted by the same letter are not significantly different from each other in Tukey's test (P > 0.05). 諏訪湖 諏訪湖 における1996-2005年の における1996-2005年の inds. /L inds. /L 大きさ:最大で10mm inds. /L ノロ inds. /L ミジンコ個体群の変遷 ミジンコ個体群の変遷 1500 1200 900 600 300 0 400 300 200 100 0 240 180 120 60 0 6 5 4 3 2 1 0 Bosmina longirostris B. fatalis Diaphanosoma brachyurum Leptodora kindtii M J S DM J S DM J S DM J S DM J S DM J S DM J S DM J S DM J S DM J S DM J S DM J S 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 諏訪湖における動物プランクトンの調査 霞ヶ浦から 諏訪湖への ワカサギの移入 1907-09 Daphnia sp. 1914-15 1947-49 × 1969 × 1970 × 1971-72 × 1977 × 1978 × 1982-85 × 1986 × 1987 × 1992 × 1993 × 1994 × 1996× 諏訪湖 諏訪湖 ! 2007年5月下旬 諏訪湖でついにカブトミジンコ (Daphnia galeata)が出現 白樺湖 魚除去 水質浄化 大型ミジン コ増加 植物プラン クトン減少 諏訪湖 窒素・リンの 削減 生物の生産量 の低下 (水質浄化の 進行) 魚の減少 大型ミジン コ増加 水質浄化 植物プラン クトン減少 クロモ 第5期諏訪湖水質保全計画 長期ビジョンとそこに至る道筋 昭和30年代の「人と生き物が共存する諏訪湖」を 20年後の長期ビジョンとして掲げる中で… 2007年秋 クロモ 環境問題の対策の実行 ↓ より好ましいと考えられる生態系への変化 ↓ その時につくられている社会システムの中で 問題を起こさないか? 将来の生態系構造の変化と社会システムの変化、 それぞれの予測が重要 クロモ 諏訪湖 あちら立てればこちら立たず 湖を(ひとつの生態系を)多くの人々が 異なった目的で利用しているため [漁業, 観光, 水道水源池, 憩いの場 等々] 生態系変化の将来予測をし、 生態系変化の将来予測をし、 対策を立てる 対策を立てる 河川環境管理財団提供 人の立場が変わると評価が変わる 人の立場が変わると評価が変わる 水草の堆肥化 →集水域と湖の間での物質循環 肥 料 P N 農 地 P 水 草 N 集水域 湖 (空間的スケールを変えると、見方が変わる) 日本を中心にした 日本を中心にした 地球規模の窒素・リンの動き 地球規模の窒素・リンの動き 大気 リン鉱石 (海洋) 魚介類 (外国) 食糧 排 泄 日本の湖が富栄養化するのは当たり前 (空間的スケールを変えると、見方が変わる) 300年後にリンが枯渇する! 300年後にリンが枯渇する! リン鉱石 (外国) 食糧 農業生産量が大きく落ち込み、 食糧不足が深刻になる。 300年後にリンが枯渇する! 300年後にリンが枯渇する! リンはどこにある? 日本の湖の底にある! 日本の湖の底にある! 将来は、日本がリンの輸出国なる。 今、湖底に堆積して問題を起こしているリンは、 300年後には宝物になる! 時間的スケールを変えると見方が変わる。 天竜川のトビケラの 現存量は日本一 Q. なぜ天竜川にはトビケラが多いのか?