Comments
Description
Transcript
ビールの輸出 - 税関ホームページ
ビールの輸出 博多港3年連続(2012 年~2014 年) 輸出数量及び金額 全国第 1 位 平成27年6月17日 門 司 税 関 【はじめに】 6月も中旬となり、梅雨があけると、まもなく暑い夏の到来 です。 「夏は、ビール」という時代から、現在は、少し変化してきて いるようです。報道によると、2014 年のビール系飲料(ビー ル・発泡酒・新ジャンルなど)の出荷量は、10 年連続で過去 最低となったとのことです。 若者のビール離れなどにより、国内のビール市場は縮小傾向 が続くと見られていますが、海外においては、日本のビール人 気は高く、輸出量も増加しています。 今回は、 「ビール」の輸出にスポットを当ててみました。 【※本稿における「ビール」とは、輸出統計品目番号「2203.00-000」を集計したものです】 【※発泡酒、新ジャンルのアルコール飲料はビールには含まれません。 】 【輸出動向】 2014 年の「ビール」の全国の輸出実績は、数量 55,672KL(対前年比 19.7%増) 、金額は 65 億 84 百万円(対前年比 20.8%増)でした。 このうち、門司税関管内における輸出実績は、数量 32,114KL(対前年比 19.9%増) 、金額は 33 億 23 百万円(対前年比 21.3%増)となっています。 リーマンショック後の世界的な景気後退で、2008 年から 2009 年にかけて全国及び門司税関と もに数量及び金額は下降傾向となりましたが、2010 年以降は数量及び金額が増加に転じています。 2014 年は、全国、門司税関ともに数量及び金額が 2004 年以降、最高を記録しました。 1 【国別推移】 全国の国別輸出金額の推移をみると、2004 年の韓国への輸出金額は 2 億 16 百万円、シェアは 10.1%でしたが、2014 年は 34 億 67 百万円、シェアは 52.7%と大幅に伸び、韓国が輸出国全体 の 50%以上を占めています。 【門司税関 国別シェア】 2004 年は、台湾(数量 7,814KL、金額 6 億 4 百万円)が、数量、金額ともに門司税関の輸出国 の 90%以上を占めていましたが、2014 年になると、韓国(数量 28,341KL、金額 29 億 91 百万円) が数量、金額ともに輸出国の 80%以上を占めるようになりました。 韓国向けの輸出はこの 10 年で数量は 72.9 倍、金額は 61.6 倍と大きく伸びています。 これは、韓国国内における輸入ビールの市場の拡大にともない、日本のビール会社の積極的な 営業活動により、日本ビールの人気が高まってきたことが大きく影響しているようです。 2 【港別輸出推移】 全国の港別の輸出推移をみると、博多港からの輸出が 2011 年から急速に伸び、2012 年から 2014 年において数量・金額ともに、 「3 年連続全国第 1 位」となっています。 ビール生産工場から至近距離であり、また、最大輸出国である韓国にも近いことが、博多港の輸 出シェアが高い理由のようです。 【おわりに】 業界は、 ① 日本のビールは品質面で非常に高い評価を得て、海外において人気が高い。 ② 新規輸出国の市場開拓についても積極的に行っている。 などの理由により、今後もビールの輸出は堅調に推移するとみているようです。 ※ 2004 年~2014 年の統計数値は確定値です。 ※ 統計数値の単位未満は、四捨五入を行うため、総数の内訳の計が一致しない場合があります。 3 【参考資料】 ① ビール輸出推移(門司税関及び全国) 門 司 税 関 年 数量(L) 全 国 金額(千円) 前年比 数量(L) 全国比 前年比 全国比 金額(千円) 前年比 前年比 2004年 (平成16年) 8,232,478 91.7% 40.6% 657,437 87.0% 30.7% 20,253,188 79.7% 2,144,564 2005年 (平成17年) 8,115,471 98.6% 44.9% 700,594 106.6% 36.1% 18,080,773 89.3% 1,939,609 71.6% 90.4% 2006年 (平成18年) 8,181,087 100.8% 30.3% 736,347 105.1% 25.4% 27,028,666 149.5% 2,896,985 149.4% 2007年 (平成19年) 8,047,092 98.4% 34.8% 750,297 101.9% 26.7% 23,098,682 85.5% 2,812,513 97.1% 2008年 (平成20年) 2,233,161 27.8% 9.5% 276,768 36.9% 9.2% 23,526,178 101.9% 2,998,267 106.6% 2009年 (平成21年) 752,557 33.7% 3.6% 131,095 47.4% 4.9% 20,925,243 88.9% 2,698,850 90.0% 2010年 (平成22年) 1,184,719 157.4% 4.9% 193,383 147.5% 6.1% 23,977,541 114.6% 3,181,710 117.9% 2011年 (平成23年) 10,959,592 925.1% 35.3% 1,225,352 633.6% 32.3% 31,077,831 129.6% 3,799,359 119.4% 2012年 (平成24年) 20,369,833 185.9% 53.1% 2,104,495 171.7% 47.0% 38,379,715 123.5% 4,475,131 117.8% 2013年 (平成25年) 26,788,475 131.5% 57.6% 2,739,873 130.2% 50.3% 46,511,691 121.2% 5,448,796 121.8% 2014年 (平成26年) 32,114,301 119.9% 57.7% 3,323,000 121.3% 50.5% 55,671,765 119.7% 6,583,697 120.8% ② ビール国別輸出推移(全国/金額) 年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 大韓民国 金額(千円) 台湾 構成比 215,545 200,743 293,567 438,701 703,128 726,545 998,210 1,517,471 2,206,134 2,827,600 3,467,013 10.1% 10.3% 10.1% 15.6% 23.5% 26.9% 31.4% 39.9% 49.3% 51.9% 52.7% 金額(千円) 1,058,134 979,560 974,691 904,959 510,421 370,419 390,339 555,601 629,483 741,612 850,273 アメリカ合衆国 構成比 49.3% 50.5% 33.6% 32.2% 17.0% 13.7% 12.3% 14.6% 14.1% 13.6% 12.9% 金額(千円) 271,102 142,305 195,980 264,458 370,535 355,286 409,363 415,932 412,820 499,500 572,934 構成比 12.6% 7.3% 6.8% 9.4% 12.4% 13.2% 12.9% 10.9% 9.2% 9.2% 8.7% シンガポール 金額(千円) その他 構成比 102,006 106,905 134,963 161,673 184,736 185,707 267,000 337,934 285,338 366,095 403,686 4.8% 5.5% 4.7% 5.7% 6.2% 6.9% 8.4% 8.9% 6.4% 6.7% 6.1% 金額(千円) 497,777 510,096 1,297,784 1,042,722 1,229,447 1,060,893 1,116,798 972,421 941,356 1,013,989 1,289,791 構成比 23.2% 26.3% 44.8% 37.1% 41.0% 39.3% 35.1% 25.6% 21.0% 18.6% 19.6% ③ ビール国別輸出推移(門司税関/金額) 年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 大韓民国 金額(千円) 48,529 79,288 96,478 87,259 75,915 1,164 690,816 1,620,502 2,399,723 2,991,146 台湾 構成比 7.4% 11.3% 13.1% 11.6% 27.4% 0.6% 56.4% 77.0% 87.6% 90.0% 金額(千円) 603,931 609,526 619,353 592,202 77,435 17,483 235,619 300,028 307,388 317,666 アメリカ合衆国 構成比 91.9% 87.0% 84.1% 78.9% 28.0% 9.0% 19.2% 14.3% 11.2% 9.6% 金額(千円) 15,558 50,408 32,691 29,319 23,826 10,959 - 4 構成比 2.1% 18.2% 24.9% 15.2% 1.9% 0.5% - シンガポール 金額(千円) 7,102 13,827 17,174 18,794 34,546 70,683 95,570 28,343 - その他 構成比 1.0% 1.9% 2.3% 6.8% 26.4% 36.6% 7.8% 1.3% - 金額(千円) 4,977 4,678 6,689 38,104 54,216 63,858 74,734 179,521 144,663 32,762 14,188 構成比 0.8% 0.7% 0.9% 5.1% 19.6% 48.7% 38.6% 14.7% 6.9% 1.2% 0.4% ④ ビール国別輸出シェア(門司税関 2004 年) 数量(L) 国 世界 金額(千円) 前年比 91.7% 90.3% 155.9% 40.7% 8,232,478 7,814,090 388,738 29,650 台湾 大韓民国 その他 ⑤ ビール国別輸出シェア(門司税関 構成比 100.0% 94.9% 4.7% 0.4% 世界 構成比 100.0% 91.9% 7.4% 0.8% 前年比 121.3% 124.6% 103.3% 43.3% 構成比 100.0% 90.0% 9.6% 0.4% 金額(千円) 前年比 119.9% 122.6% 106.3% 33.3% 32,114,301 28,340,566 3,712,976 60,759 大韓民国 台湾 その他 前年比 87.0% 85.1% 141.1% 44.7% 2014 年) 数量(L) 国 657,437 603,931 48,529 4,977 構成比 100.0% 88.2% 11.6% 0.2% 3,323,000 2,991,146 317,666 14,188 ⑥ ビール港別輸出推移(数量) 年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 博多 数量(L) 8,202,828 8,088,080 8,151,204 7,997,443 2,182,191 679,659 1,111,004 10,837,136 20,272,614 26,770,131 32,103,601 大阪 全国比 40.5% 44.7% 30.2% 34.6% 9.3% 3.2% 4.6% 34.9% 52.8% 57.6% 57.7% 数量(L) 名古屋 全国比 3,474,795 3,299,231 7,180,789 6,152,046 9,487,544 9,547,522 10,882,109 11,255,560 10,527,829 11,336,206 13,420,221 17.2% 18.2% 26.6% 26.6% 40.3% 45.6% 45.4% 36.2% 27.4% 24.4% 24.1% 数量(L) 東京 全国比 223,027 115,200 257,355 23,040 21,014 16,801 989,941 3,078,388 3,056,218 4,143,942 1.1% 0.6% 1.0% 0.1% 0.1% 0.1% 3.2% 8.0% 6.6% 7.4% 数量(L) 神戸 全国比 880,406 575,057 1,696,657 834,470 984,058 1,123,119 1,053,881 588,627 522,758 914,572 979,034 4.3% 3.2% 6.3% 3.6% 4.2% 5.4% 4.4% 1.9% 1.4% 2.0% 1.8% 数量(L) その他 全国比 2,317,110 2,768,225 6,453,378 5,764,445 6,828,490 7,182,377 8,707,947 5,392,888 2,553,400 2,623,756 2,820,120 11.4% 15.3% 23.9% 25.0% 29.0% 34.3% 36.3% 17.4% 6.7% 5.6% 5.1% 数量(L) 全国比 5,155,022 3,234,980 3,289,283 2,327,238 4,022,881 2,375,765 2,222,600 2,013,679 1,424,726 1,810,808 2,204,847 25.5% 17.9% 12.2% 10.1% 17.1% 11.4% 9.3% 6.5% 3.7% 3.9% 4.0% ⑦ ビール港別輸出推移(金額) 年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 博多 金額(千円) 652,460 695,916 730,949 742,002 268,605 120,786 182,967 1,205,358 2,087,864 2,736,342 3,318,019 大阪 全国比 30.4% 35.9% 25.2% 26.4% 9.0% 4.5% 5.8% 31.7% 46.7% 50.2% 50.4% 金額(千円) 374,571 371,620 733,296 724,669 1,108,851 1,096,821 1,293,562 1,335,939 1,230,048 1,340,773 1,608,286 名古屋 全国比 17.5% 19.2% 25.3% 25.8% 37.0% 40.6% 40.7% 35.2% 27.5% 24.6% 24.4% 金額(千円) 33,385 20,125 25,552 4,201 3,019 7,745 119,744 391,726 414,155 507,329 東京 全国比 1.6% 1.0% 0.9% 0.1% 0.1% 0.3% 3.2% 8.8% 7.6% 7.7% 5 金額(千円) 133,508 102,588 227,395 207,331 280,995 292,608 288,486 184,007 198,498 316,418 374,357 神戸 全国比 6.2% 5.3% 7.8% 7.4% 9.4% 10.8% 9.1% 4.8% 4.4% 5.8% 5.7% 金額(千円) 289,875 338,384 762,005 793,732 851,871 856,772 1,090,256 675,228 338,951 342,393 373,984 その他 全国比 13.5% 17.4% 26.3% 28.2% 28.4% 31.7% 34.3% 17.8% 7.6% 6.3% 5.7% 金額(千円) 660,765 410,976 417,788 340,578 484,926 324,118 326,439 279,083 228,044 298,715 401,722 全国比 30.8% 21.2% 14.4% 12.1% 16.2% 12.0% 10.3% 7.3% 5.1% 5.5% 6.1% ビールはいつ頃から、飲まれていたのでしょうか。 イスラエル考古学庁が、2015 年 3 月 29 日に中部テルアビブの建設現場で、約 5,000 年前にエジプト 人がビールを製造するのに使った陶器の破片が発見されたと発表しました。(フランス公共ラジオが 報じました) 【ビールの誕生】 ビールの誕生については諸説があるようですが、紀元前 8000~4000 年までさかのぼるといわれ、 文明とともに古くから人々に親しまれていたのは確かなようです。紀元前 1700 年代半ばに制定され た初めての成文法『ハムラビ法典』にもビールにかかわる法律が制定されています。(ビールを水で 薄めた者は、水の中に投げ込まれるという罰、ビアホールで謀叛の密議などをしているのを知った主 人はすぐに届け出ないと同罪を処す など) 【日本のビール醸造の起源】 ペリーが来航した嘉永 6 年(1853)に、蘭方医川本幸民は蘭書の記載を見て、江戸の露月町の私 宅でビールを試醸したといわれますから、これが日本でのビール醸造の起源といえるでしょう。 わが国にビールが入ってきたのは、英米の船が来航してからのことです。万延元年(1860)、幕府の 第一回遣米使節の一人、玉虫佐太夫は初めてビールを飲んで「苦味ナレドモ 口ヲ湿スニ足ル」と書 いています。 【近代ビール産業の形成】 明治 20 年代に入ると日本も産業革命による近代化が本格的になって きます。近代的なビール会社が各地に誕生し、新しい時代を迎えつつあ りました。 明治 45 年には、門司市の合資会社九州興業仲介所の代表社員山田弥 八郎らが、門司の大里町に九州初のビール会社を設立しました。 明治 16 年、日本のビールの総生産量は 1,155 石(約 208kl) 、輸入が 2,500 石(約 450kl)だったものが、20 年には国産 17,508 石(約 3,151kl) 輸入 9,053 石(約 1,630kl)となり国産と輸入が逆転し、30 年には国産 大正末~昭和初期のポスター 65,717 石(約 11,829kl)、輸入が 858 石(約 154kl)となり、この時期、 ビール産業の著しい成長がわかります。 6 【戦時下のビール産業の混乱】 太平洋戦争への突入により原料である大麦やホップは次第に入手困 難となり、また電力・石炭なども不足したため、生産量は減少の一途を たどりました。終戦の年の生産量は昭和 14 年当時の 4 分の 1 となりま した。(昭和 14 年は戦前の最高である 31 万 kl の生産量を記録) 昭和初期の海外向けポスター 各社の商標がない戦時中のビールのラベル 【戦後の再建から復興へ】 戦後の混乱のなかでビール会社は復興への努力を開始しました。昭和 24 年 6 月には料飲店の 再開を待ってビアホールも各地で復活、ビールファンが押し寄せ、大にぎわいだったといいます。 東京都内では 500ml 入りのジョッキ 1 杯が 130 円でした。 (昭和 24 年東京都のうどん、そばの小 売価格の平均:15 円) 昭和 30 年代は所得倍増の波に乗ってビールに対する需要も大幅に伸びた時代でした。戦前の ビールの消費がほとんど料飲店であったのに対し、戦後はこの時期から家庭で飲まれるビールが 飛躍的に伸びてきています。電気冷蔵庫が普及したのもこの時期で、家庭に買い置きされたビー ルが食卓に並ぶことになったのも大きな原因でしょう。 【昭和から平成へ】 昭和 40 年代はビール需要の伸び率が徐々に鈍化してきましたが、 全国で 10 工場が新設され、 製造量は 10 年間で約 2 倍に達しました。その後、昭和 62 年に製造量が 500 万 kl を突破し、 平成元年には 600 万 kl になり、平成 6 年に記録した 713 万 5,000kl が過去最高の製造量とな っています。平成 6 年に麦芽比率を抑えた発泡酒が発売され、その後、麦芽以外の原料から製 造する新ジャンルと呼ばれるアルコール飲料が発売されると、ビールの市場は年々減少傾向と なりました。平成 26 年のビール類(ビール、発泡酒、新ジャンルなど)出荷量は、4 億 2,707 万ケース(1 ケース=大瓶 20 本換算)と 10 年連続で過去最低となったとビール大手各社より 発表されました。 ビール類の市場の低迷が続いていますが、本格的な味わいの高級ビール『プレミアムビール』 は好調のようです。 これからも、日本の各ビール会社は、ビールの品質を益々高め、 『made in JAPAN』の美味しい ビールを私たち日本人に、また世界中の人々に届けてくれるはずです。 (参考:ビール酒造組合 7 ホームページ)