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世界の水環境保全に果たす日本の 役割と今後の課題
世界の水環境保全に果たす日本の 役割と今後の課題 北海道大学・公共政策学研究所/環境バイオ・ナノ工学研究センタ 客員教授 眞柄 泰基 (トキワ松学園理事長) これからお話したいこと 1.なぜミレニアムゴールか 2.水と衛生の意義は 3.水と衛生に係るコストと課題は 4.わが国のODAは 5.近隣諸国の課題は 6.まとめ ミレニアムゴール(MDGs) 安全な飲料水とし尿の衛生処理の意義 感染症対策 乳幼児・子供の死亡率の低下 周産期障害の減少 女性と子供の社会参加 貧困と飢餓の減少 Demand of irrigation water Irrigated Area Population Cultivated Area 安全な飲料水を利用できない人々 アジア アフリカ 中南米・カリブ諸国 ヨーロッパ 11億人 衛生的なトイレがなかったり 屎尿が処理されていない人々 アジア アフリカ 中南米・カリブ諸国 ヨーロッパ 24億人 Regional differences of death of cause 100% Europe 80% America 60% E.Medit. Africa 40% W.Pacific 20% S.E.Asia 0% 33% Infectious parasite 6% 5% Mal-delivery. Accidents Suicide 26% Circulatory 8% Cancer 憲法25条 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を 営む権利を有する。国は、すべての生活部面につい て、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び 増進に努めなければならない」 水道法 「水道の建設及びその管理を適正かつ合理的ならしめると ともに、水道事業を保護育成することによって、清浄にして 豊富、低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生 活環境の改善に寄与する」 わが国における水道・下水道等の整備 120000 人口 人口 ( 1000) 100000 80000 屎尿の衛生処理率 60000 40000 75% 屎尿の不衛生処理率 公共下水道 20000 0 水道 1910 1930 1950 年 1970 1990 2010 わが国における水系感染症の推移 100000 6000 Shigellosis 5000 80000 4000 3000 60000 Poliomyelitis 40000 2000 Paratyphoid 1000 Typhoid 20000 0 0 1960 1965 年 1970 1975 赤痢 赤痢以外の水系感染症 (1960-1975) 寄生虫は 感染症 栄養失調 知育発達障害 消化器系寄生虫 タイにおけるトイレの整備と感染症 120 20000 トイレの整備率 15000 80 60 10000 40 5000 20 0 0 19601962196419661968197019721974197619781980198219841986198819901992199419961998 UNICEF Dr.Luongb 感染症による死亡 100 アジアの砒素汚染地域 世界70カ国 1億4000万人 Mo n g o lia Chin a Pa kis t a n N ep a l Ba n g la d es h Ind ia M ya nm a r La o PD R Tha il a nd Vi e tna m Ca m b o d ia Est. 200 million already affected Population at risk - not known Damage to health - irreversible and untreatable • Arsenic contamination - • “An emerging public health problem” Arsenic • Toxic and carcinogenic • Known poison for >4000 years • Acute poisoning symptoms occur within 30 min. of ingesting lethal dose • Arsenic toxicity in drinking water & Environment • Chronic in nature • Takes 5-20 years to develop symptoms • Symptoms found in infants in China, India & Thailand (possible transfer from mother to child?) Bangladesh ・~ 1970 water source was surface water & Shallow dug well High mortality rate especially in infants and children by water related infectious diseases Many tube well have India developed Decreasing infant & child mortality Nwabganghee Dahkka India Ganges delta ・In 1990 Ground water were contaminated by As Excessive use of ground water irrigattion Burma Tubewell & Dugwell As concentration and rice As in rice µg-As/kg-dry ) 2500 200 As(Ⅲ) 180 As(Ⅴ) 160 DMA 2000 140 TMAO 120 Irrigation water 1500 100 80 1000 60 40 500 20 0 0 A B C As in irrigation water( µg-As/L) 3000 バングラデッシュ、インド ・1970年代,表流水利用 衛生設備不足による汚染の深刻化,コレラなどによる高死亡率 多数の井戸を設置 幼児死亡率の改善 インド ナワブガンジ ダッカ ・1990年代,井戸水のヒ素汚染判明 インド 多数の慢性ヒ素中毒患者 ・労働可能年齢で発症 ミャン マー W O R L D PO PU L A T IO N 世界の人口は 8.0 billion 6.0 billion 4.0 billion 1975 2000 2015 都市域の人口増加と不法居住者の分布 不法居住者(%) 27 30 25 20 15 10 4.02 5 0 -5 アフリカ 人口増加率(%) 17.9 9.3 2.05 アジア 2.1 中南米諸国 2.4 3.06 2.7 -0.46 オセアニア ヨーロッパ 飲料水供給と屎尿等衛生処理にかかる費用 (2005年から2015年) WHO試算 ミレニアム目標達成費用(10億ドル) 1400 1200 衛生処理施設の更新と維持管理 1000 800 衛生処理施設の新規整備 600 400 200 飲料水供給施設の既存施設の更新と維持管理 飲料水供給施設の新規整備 0 MDG目標 水道・下水道 共同水栓・VIP 農村除外MDG 都市水道の漏水率 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 アフリカ アジア 中南米 東京都は僅か5% 北米 なぜ上下水道事業に民間関与? 資本調達力と人的資源の確保 水道サービス内容の透明性 サービス水準の明確化 サービス向上と料金の低減化 資本調達力とサービス水準の維持 世界の地域別水道事業民営化率 欧州 英国 フランス スペイン ドイツ アフリカ ア ジア ・豪州 日本 北米 中南米 チリ ア ルゼンチン ブラジル 0 20 40 60 80 100 上下水道分野のアジア地域へのODA ○2000年から2004年までの5年間で水と衛生分野におけるDAC諸国の 二国間ODA実績の41%を占める。 ○水と衛生分野への日本の援助のうち、有償資金協力では90%、 無償資金協力では47%がアジアに対して行われている。 出典:水と衛生に関するパートナーシップ・イニシアティブ(WASABI) 日本は、アジアにおける衛生的な水供給に関して重要な役割を果たしてきた。 引き続き、ODAを通じた貢献の意義は大きい。 水道分野のアジア諸国への貢献 アジアへのヒトの流れ(長期専門家派遣) ○現地での技術協力に携わる長期専門家として、 から05年までの間に118名をアジア地域に派遣。 ○77年から05年までの長期専門家派遣( タイ、インドネシア) 12 日本からアジア地域への長期専門家 (水道分野)の派遣数 10 その他 1% 8 中南米 3% 6 アフリカ 20% 4 タイ 28% 人2 その他アジア 26% 近年、派遣数が減少している 20 05 20 03 20 01 19 99 19 97 19 95 19 93 19 91 19 89 19 87 19 85 19 83 19 81 19 79 19 77 0 インドネシア 22% タイ インドネシア その他アジア アフリカ 中南米 その他 タイ王国首都圏水道公社(MWA) 1967年、バンコック首都圏の水道サービスを 実施するため近隣水道の統合で設立 給水人口 約900万人 給水契約戸数 約180万件 年間給水量 1739百万m3 水道料金 約9バーツ(約28円) 水道施設整備はOECF融資 人材育成 タイ水道技術センター等長期に亘り人材 育成・日本式水道技術の定着 東南アジア最大の浄水場は 円借款で整備された JICAの無償資金協力と技術協力 で整備された人材開発センター タイ王国首都圏水道公社(MWA) 1997年アジア通貨危機に伴うIMF融資条件 公益事業への民間活力の導入 タイ王国政府が70%以上あるいは51%以上 を保有する首都圏水道株式会社(新MWA) の設立 その後の、経済発展によりゆるい条件での新 MWAを設立する方向 2000年にマスタープランをフランス系コンサ ルタントが策定 日本が参画しようと検討したが、未完 タイバンコック首都圏水道公社 (MWA)でのケーススタデイ タイ王国政府 民営化 国営首都圏水道株式会社(新MWA) 開発部門 財政部門 人事経理部門 その他管理部門 融資 出資 民間水道会社(タイ・日本合弁会社) 維持管理部門 浄水・送配水部門 建設部門 徴収部門 その他技術部門 その2 民間水道会社(タイ・日本合弁会社) 維持管理部門 浄水・送配水部門 建設部門 徴収部門 その他技術部門 出資 融資 JBIC 借入 日本国内水道会社 民間会社 国内法上で可能な出資と支援 東京都水道局 その3 タイ王国政府 建設資金融資 技術協力 民営化 国営首都圏水道株式会社(新MWA) 開発部門 財政部門 人事経理部門 その他管理部門 事業権譲渡 民間水道会社(タイ・日本合弁会社) 維持管理部門 浄水・送配水部門 建設部門 徴収部門 その他技術部門 JICA JBIC 水道事業体等 人的支援 カンボジアプノンペン水道 マスタープランと日本の リーダーシップによる水道整備 カンボジア難民キャンプ プノンペン水道の急速濾過池 プノンペン水道は、アジアで最も 維持管理が徹底している水道 国内の水道と同等 無償援助と技術協力による人材育成の効果 バンガロール インド 下水 井戸 By Jenssenn 公衆便所の整備 By Jenssenn トイレや下水処理の方式は多様である 湿式 排水 流入 下水道 腐敗槽 分散式 集中式 ピットラトリン 汲み取り バキュウム車 乾式 排水処理施設に対する費用便益分析 調査地区と同レベルの新しい住宅地 合併処理個別浄化槽を整備 (30mg/L) 現場製作コンクリート製、耐用30年 日排水量:一人一日210 L (5人家族) BOD負荷: 一人一日40 g イニシャル:インドネシアの市場価格で積算 1300万ルピア(日本の約20%) ランニング:ブロワ−の電力使用量と汚泥の引 き抜き処分費 その結果、ODAが無いと整備できない WTPと総費用比較したB/C比・・・0.13 便益、費用の再評価・・・・・・・0.35∼0.56 割引率を変化させる(8% 4%) WTPの時間的上昇(GDP上昇に比例) 社会的便益を見込む(日本と同じ40%) 開発ローン・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 0.91 JBICの円借款(金利0.75%、40年償還) 上下水道・衛生分野のODAは 都市部を中心とした施設整備 都市への人口移動とスラムの形成 発展のための都市基盤・産業基盤の整備 水資源の有効活用 漏水対策、節水、メータ設置、下水の再利用 事業運営・財務改善 料金設定、無収水対策、人材開発 PPP活用 効率的な施設管理、人材開発 市民参加 顧客サービス、生活環境教育、住民参加、 中国主要地区の水資源 地区 北京 天津 河北 河南 山東 山西 水資 源量 329 153 363 441 381 456 日本の1500m3/人・年に比べて非常に少ない 直飲水道を目指している 給水点処理施設 公共水栓の下部に膜 濾過部を組み込む方式 団地の流入点にRO・ NFを設けて、 10∼20%の処理水を直 飲水として別途供給、 残りの水はそのまま供 給 シンガポールのNew Water マレーシアのジョホールからの導水契約が継 続されない可能性が高い 元来、水資源を確保するために雨水利用や海 水淡水化湖(貯水ダム)を積極的に開発して きた それでも水需要に対応できないので、下水の NF濾過水を貯水ダムに1% 流入させている 韓国では 国民の3%しか、水道水を飲まないという調査 結果 その理由は、水道水は臭い ダム・貯水池の水質悪化 プランクトンの生産する異臭味物質 塩素臭 そのための高度浄水処理の導入が進められ ている。 我が国での留学生が活躍している 欧米水道界の我が国への参入 アジア、中南米での実績 主要都市水道での調査 わが国ODAの限界(公共セクターが主対象) 中国などにおける事業権譲渡事業の経験 国内での資本調達規制の緩和 アジアゲートウエイ構想の概要 開放的で魅力ある日本を創る 訪れたい、学びたい、働きたい、住みたい国に 開かれたアジアをともに創る 経済を中核とした開放的な地域秩序の維持・進化 互いを尊重し、共に生きる 多様性を前提に相互理解・相互信頼の関係を構築 最重要10項目の内 3.アジア高度人材ネットワークのハブを 目指した留学生政策の再構築 4。世界に開かれた大学作り 10.アジアの共通課題に関する協力研 究の中核機能の強化 重点7分野の内 2.国際人材受け入れ・育 成戦略 4.「国内市場型」産業の 競争力強化 「アジア・ゲートウェイ構想」における 水道関係の記載内容 最重要項目10:アジアの共通課題に関する協力研 究の中核機能の強化 水の管理・供給:アジアにおける飲み水と衛生、水不足、水 質悪化、洪水等に対する対策のニーズの高さを踏まえ、第 1回アジア・太平洋水サミットへの積極的関与、アジアの水 管理・供給政策の立案支援等を推進 重点7分野4:「国内市場型」産業の競争力強化 市場のボーダレス化に対応した非製造業等の経営力強化 公共サービス業(水道事業等)などいわゆる「官業」も、海 外進出を促進 水道事業の国際展開が政府の重要政策として位置づけ WHOの役割 水質ガイドラインや 維持管理指針の策定 グロバールスタンダードへの貢献 欧米諸国に比べて拠出金や人材派遣が 少なくなり発言権が低下しつつある ISO24510∼24512 上下水道サービスに関するガイドライン サービス水準を維持できる料金体系と財務の透明性 職員のモラルとインセンテイブの向上 水道施設の維持管理と持続的な発展 消費者の参加と情報公開 水質の安全性とより良い水質への努力 環境保全・負荷削減 システムの安定性の向上 量・質のリスク管理 グローバルスタンダード作りへの参加 資本と技術は共軛である 相手国の文化・習慣に配慮する 国の社会資本整備の原則を見通す 水道事業体は公であった民 技術は国際的標準に/国際的な連携 日本での教育(R/D)を資源とする わが国の技術と経験を生かす わが国の技術と経験を生かす道 WHO等国際機関への人的・財政的参画 例えばWHOの飲料水質ガイドライン関連の予算と人員は 困窮している 漏水防止などO/M技術移転 PPPによる海外進出のためのプラットホーム 水道国際貢献推進協議会の強化 アジアの大都市の上下水道事業への参入推進 上下水道に関するISO等グローバルスタンダードへ の参画 ISO規格は第三者規格であるため公的関与が制約 上下水道施設の維持管理に費用効果分析 Strength of water pollution Water pollution aspects of industrialized countries Industrial wastewater Domestic wastewater Nitrogen, Phosphate Hazardous chemicals 1960 1970 1980 1990 Distribution of Cancer Risk of Tap Water in Metropolitan Area P olluted Industrial wastewater Domestic wastewater Nitrogen, Phosphate Hazardous chemicals C lean Strength of water pollution Current situation in developing countries 1960 1970 1980 1990 Sustainable Development of Water Supply Services WATER SUPPLY SYSTEM WATER BENEFIT PAYMENT CONSUMER/COMMUNITY SAVE LABOUR WATER CORRECTION & TREATMENT CONTROL PATHOGENIC DISEASE PROVIDE SANITARY FACILITIES FIRE PROTECTION OTHERS BENEFICIENCE - BORN SYTEM CHARGE アジア諸国との共生 ミレニアム基金の創設。 地球環境基金を増加し、水分野 も対象として、国際的な連携に リーダーシップ ありがとうございました。