...

開催報告書pdf 2.7MB

by user

on
Category: Documents
4

views

Report

Comments

Transcript

開催報告書pdf 2.7MB
大磯にアライグマっているの!?
∼外来生物アライグマ問題展示会∼開催報告書
2005.DEC
在来生態系保全ネットワーク カコダえもん
はじめに
~なぜ、大磯町で外来生物問題の展示会をしたか
在来生態系保全ネットワーク カコダえもん
城谷
歩惟
外来生物の問題は、新・生物多様性国家戦略において第3の危機として取り
上げられ、自然保護を考えていく上で重要な問題です。私たち在来生態系保全
ネットワークは、外来生物の中でも、特に生態系への影響が大きい侵略的外来
生物であるアライグマについて、主に調査や研究、普及啓発活動を行っていま
す。
アライグマは神奈川県では 1988 年頃から鎌倉市で野生化が発見され、’90 年
に鎌倉市扇ヶ谷で繁殖が確認されました。その後、急速にその数と分布域を拡
大していきました。
「アライグマ生産地」である三浦半島では、今や年間 148
頭ものアライグマが有害駆除で捕獲され(平成 16 年度、横須賀市・逗子市・鎌
倉市・葉山町・三浦市)、殺処分されています。このような、アライグマがす
でに爆発的に増えてしまった地域で、アライグマを完全に排除し本来の自然生
態系に戻すことはとても難しく、地域に定着してしまった外来生物を完全に排
除できた事例はまだ日本にありません。それは、外来生物の対策が、既に数が
増え被害が目に見える状況になってから行われてきたからです。外来生物をい
なくするには、その数が増える前の段階で対策を立てる「早期対策」が重要で
あると言われています。
神奈川県大磯町は鎌倉市から西へ 30 キロメートルほどに位置し、山と海に
囲まれ温暖な気候に恵まれた自然豊かな町です。しかし大磯町でもついにアラ
イグマが見つかりました。ただ、まだ数はそんなにいるわけではなく、被害も
確認されていないため、多くの住民の方はアライグマの侵入を知らずにいます。
しかし、豊かな自然と山に接近した町はアライグマにとっても住みやすい環境
で、今後アライグマが急増する可能性は大きいと考えています。そのためにも
大磯町でもいち早く対策を立案することが必要です。
とはいえ、被害の出ていない地域で外来生物問題に関心を持って頂くことは
とても難しいことです。そこで、まずアライグマが大磯町に侵入したことを伝
え、そして、アライグマ問題を通して、どんな自然を大磯に残していきたいか
を町民一人一人の方に考えていただくことで、
「おおいそ式」の自然とのつき
あい方が見い出せればと思い、展示会を開催しました。
――――
目
展示会開催概要
……2
展示会会場見取り図
……3
展示内容の紹介
……4
展示① ポスター「ごあいさつ」
展示② ポスター「あなたの好きな大磯をえらんでください。
」
展示③ ポスター「大磯の自然1 」
展示④ ポスター「大磯の自然2 」
展示⑤ 写真パネル、アオバトカービング、書籍等
大磯の自然の展示について
展示⑥ ポスター「外来生物を知っていますか? 」
展示⑦ ポスター「外来生物がいると何が問題なの? 」
展示⑧ ポスター「外来生物の法律ができました。
」
外来生物の展示について
展示⑨ ポスター「アライグマも問題になっています」
展示⑩ 野生動物目撃情報マップ
展示⑪ ポスター「どぅも
アライグマです」
展示⑫ ポスター「アライグマだって生きている」
展示⑬ アライグマグッズの展示
アライグマの展示について
展示⑭ ポスター「あなたの考える大磯の未来」
展示会の結果
……22
展示会のようす
来場者のようす
「あなたの考える大磯の未来」
「野生動物目撃情報マップ」
展示会の成果
……34
アライグマ対策と私たちの活動
……36
次
展示会開催概要
主催:在来生態系保全ネットワーク カコダえもん
後援:
(財)日本自然保護協会、かながわ野生動物サポートネットワーク、三浦
半島自然誌研究会
日時:2 0 0 5 年8 月1 6 日~8 月3 1 日
場所:大磯町立大磯図書館(神奈川県大磯町大磯 992)2 階まちのギャラリー
広報:ビラ(オンライン配給、町内掲示板 35 箇所他3 カ所計 38 カ所)
広報「おおいそ」8 月号掲載
日本自然保護協会会報「自然保護」誌掲載
メーリングリストで配信
「野生動物 ML ([email protected])」
「移入種問題 ML([email protected])
」
「野生動物学生間ネットワーク ML([email protected])」
2
展示会会場見取り図
大磯町立大磯図書館2F
順路
⑫
⑪
⑨
⑧ ⑦ ⑥
⑩ ⑨ ⑧
⑬
⑩
⑮ ⑭ ⑬
④
③
②
①
⑦⑥ ⑤ ④ ③ ② ①
⑤
⑤
5 ⑪
⑬
⑤
⑰ ⑯
⑭
階
①ポスター「ごあいさつ」
⑤写真パネル 「アオバズク」
②ポスター「あなたの好きな大磯をえらんでください。
」
「ミルンヤンマ」
③ポスター「大磯の自然1」
「ギンリョウソウ」
④ポスター「大磯の自然2」
⑤写真パネル 「カヤネズミ」
⑥ポスター「外来生物を知っていますか?」
書籍
⑦ポスター「外来生物がいると何が問題なの?」
写真パネル 「アオバト」
⑧ポスター「外来生物の法律ができました。
」
「アオバトのふしぎ」
⑤写真パネル 「アオバト」
⑨ポスター「アライグマも問題になっています」
資料
「アオバトについて」
⑪ポスター「どぅも アライグマです」
カービング 「アオバト」
⑫ポスター「アライグマだって生きている」
⑩白地図
⑭ポスター「あなたの考える大磯の未来」
⑬各種アライグマグッズ
3
「野生動物目撃情報マップ」
展示内容の紹介
4
展示①
ポスター「ごあいさつ」
大磯にアライグマっているの?
外来生物アライグマ問題展示会
ごあいさつ
本日はご来場いただきありがとうございます。
私は、
(私事で大変恐縮ではありますが)この大磯で生まれ、育ちました。今、私は藤
沢市にある大学で動物のことについて勉強しています。
日本は、野生動物にとって、暮らしていく場所が減っていったり、環境が悪化してい
たりとなかなか大変な場所であるようです。幸い、私の大磯は、今でも豊かな自然に
恵まれ、タヌキやイノシシが出てくることもあったり、カエルが鳴いている田んぼが
あったりして、なかなかの町だと思います。
ところが、野生動物についての勉強をしている時に「外来生物問題」という問題が起
きているのを知りました。人間に連れてこられた生き物が増え、自然を壊してしまっ
たりするというのです。外来生物のひとつ、アライグマは鎌倉市や藤沢市などで増え、
カエルなどを食べてしまったりしているらしいのです。 大変だなぁ、なんて、遠い
世界の出来事のように考えていたら、去年の春、母が、
「庭にアライグマいたわよ」な
んて言い出し、さらに正式に大磯へのアライグマの侵入が発表されました。一方で、
同じ外来生物でもアメリカザリガニは、大磯の自然遊びではお馴染みの生き物です。
大磯でアライグマが増えカエルとかが減ってしまったらどうしよう? ところでアラ
イグマが居なければ大磯のカエルやタヌキたちはずっと元気に暮らせるんだろうか?
「大磯は暮らしやすいのでどんどん増えてもいいでしょうか」とアライグマが言って
いました。そうなってしまう前に、どんな自然を残していきたいかを、もう一度大磯
のみんなと考えたいと思い、この展示会を企画しました。
この展示会を開催するにあたって、協力して下さった多くの皆様と、暑い
中、この会場にお運び頂いた皆様に、心から感謝申し上げます。
2005 年 8 月 16 日
在来生態系保全ネットワーク 大磯プロジェクト代表
城谷 歩惟
5
展示②
ポスター「あなたの好きな大磯をえらんでください。」
展示の一番最初に、好きな大磯の写真を選んで頂きました。大磯町の自然や、外来生物問
題を通して大磯の未来を考えて頂くときに、自分の好きな大磯(未来に遺していきたい大
磯)を意識して頂きたかったからです。期待した効果は定かではありませんが来場者の方
があまり深く考えずに、ここどこだろう? なんて推測しながら気軽に楽しんでもらえ、
展示にすんなりとけこんで頂けたかと思います。
好きな大磯の写真に●緑のシール
を貼って頂きました!
(1段目左から)
善兵衛池、城山公園に咲くあじさい、こまたん
とアオバト観察、大磯駅、城山公園
(2段目左から)
国道一号線沿いの魚屋さん、和菓子屋(新杵)、
大磯カトリック教会、鴫立庵、西小磯の田園風
景
(3段目左から)
旧東海道松並木、横穴群、駄菓子屋、照ヶ崎周
辺の海、高来神社
(4段目左から)
大磯小学校、役場近くの蕎麦屋の道、国道一号
線沿いの町並み、東海道松並木、高麗山の道
使用した写真は、会員が自転車で行ける範囲で撮影し
たものなので多少偏りがありました。
断然のトップは大磯駅! 老若男女問わず、「やっぱり駅よね∼」
と言われるほどの圧倒的支持。ちょっとずつ変わっていく町並み
の中、昔から変わらない大磯駅は町民にとって心を和ます存在な
のかもしれません。続いての人気は、海の写真。ゴミの多い写真
を使ったためためらう人が多く、得票率は大磯駅より下回りまし
た。
真剣に選んで下さった皆様、本当にありがとうございます。
6
展示③
ポスター「大磯の自然1 」
大磯の自然の全体像について紹介しました。(大磯の位置、人口、気候、風土等)
「大磯町史9 別編自然」等の資料を参照して作成しました。
大磯は、丹沢の山々と相模湾に挟まれた風光明媚なところです。
豊かな自然と多くの重要な文化財は、自然と文化を共に育んできた大磯の歴史を感じさせ
ます。
温暖な気候のため昔から別荘地として利用され、黒潮の影響を受ける海は漁業が盛んです。
江戸時代には東海道の宿場町として栄え東海道五十三次にも描かれています。
また、明治18年に日本最初の海水浴場が出来た場所としても有名です。
高麗山(こまやま)
特徴的な景観の標高 168m
程の山で、昔から人々に親
環境に関するアンケ
しまれています。古くから
ート(平成 13 年度大
朝鮮半島の高麗人が住み
磯町実施)では 76.3%
着いた場所で、それが名前
の町民の方が「緑の保
の由来にもなっています。
全を優先すべき」と回
ハイキングコースでは野
答しました。大磯の自
鳥観察を楽しむこともで
然が豊かであり、多く
きます。南斜面は神奈川県
の町民がその自然を
の天然記念物で、近くの鷹
誇りに思っているこ
取山とあわせて大きな森
との証です。
を形づくっています。
照ヶ崎(てるがさき)
大磯の田畑
砂浜が多い大磯では貴重な岩磯で、大磯港の横にありま
大磯には、山から海に向かって広がる谷に
す。三浦半島から箱根・富士までが一望できる名所で、
は、田んぼや畑があります。山と海に挟ま
神奈川県の天然記念物です。
れた大磯は淡水の水田が少なく、昔は溜池
アオバトが海水を飲む場所としても有名ですが、他の多
(善兵衛池など)を造るなど水田作りは大
くの渡り鳥にも大切なところです。
変でした。
田んぼは水辺の生き物の住処になってい
ます。
7
展示④
ポスター「大磯の自然2 」
大磯でよく見られる生きものの一部を紹介しました。その豊かな自然の裏にある、さまざ
まな問題についても考えて頂きました。
「大磯町史9 別編自然」等の資料を参照して作
成しました。
大磯は、山と海の両方の環境を持ち、たくさんの生き物が生息しています。これ
から紹介するのは、そのほんの一部ですが、大磯でよく見られる生き物です。普
段は気がつかないかもしれませんが、気をつけて観察すれば、身近に出会える生
き物もたくさんいます。
ほ乳類
鷹取山・高麗山の大きい森
があるので、周辺と比べて
特に多くのほ乳類が住んで
います(タヌキ、ノウサギ、
イタチ、カヤネズミなど)
。
鳥類
照ヶ崎の岩場付近では、ア
オバトが海水を飲む姿が
見られる他、山野や海岸な
どで様々な鳥が見られま
す(ゴイサギ、カルガモ、
は虫類・両生類
イワツバメ、シメ、など)
。
アズマヒキガエル、ヤマアカガ
エル、クサガメ、アカウミガメ、
植物(草本)
ニホンヤモリ、ニホンマムシな
山林や道端では様々な野草
どがいますが、両生類の住む水
が季節毎に花を咲かせ、私た
辺は減ってきています。
ちを楽しませてくれます(ヤ
マユリ、シャガ、ドクダミ、
植物(樹木)
ヒガンバナなど)
。
最近は、スギやヒノキなどの針葉
樹が減ってきています。その他、
昆虫類
クロマツ、スダジイ、エノキ、ヤ
水辺が少ないため、トンボや
マグワ、クヌギ、コナラなどが生
ゲンゴロウの仲間が少ない
息します。
ようです。オオムラサキ、ス
ズムシ、オオスズメバチ、カ
ブトムシなどが住んでいま
す。
その他の節足動物
淡水魚・海水魚
海では、様々なエビ・カニが
淡水魚としてはモツゴ、ホトケ
見られます(クルマエビ、サ
ドジョウ、ナマズが見られ、大
ラサエビ、ホンヤドカリ、ト
磯港では様々な海水魚(ヒラメ、
ラフカラッパ、アカテガニな
マアジ、メバル、フサカサゴな
ど)
。
ど)が水揚げされています。
ところが、大磯でも自然は少しずつ壊れています。
乱開発など∼マンション建設など、大規模開発によって、生物の生息環境が減少しています。
農家などの後継者不足∼水田耕作をする人がいなくなることで、水田などの水辺が減少し、生息環
境が変化しています。
環境汚染∼農薬や廃棄物などによって大気や水質が悪化し、生物の住む環境が汚染されています。
8
展示⑤
写真パネル、アオバトカービング、書籍等
他団体からのご厚意で、大磯の自然に関する写真パネルや他資料をお借りして展示しまし
た。
(右から)アオバズク、ミルンヤンマ、
ギンリョウソウの写真パネル。どれ
も大磯で見られる野生生物です。
厚木郷土資料館から写真をお借りし
ました。
カヤネズミの写真パネル。これも
厚木郷土資料館からお借りしまし
た。
アオバトは夏に大磯に海水を飲みに
来る美しいハトです。
書籍「アオバトのふしぎ」
、アオバト
の写真パネルを大磯の自然保護団体
「こまたん」からお借りしました。
アオバトのカービング。こまたん
からお借りしました。本物そっく
りのカービングがあったおかげで
沢山の人のアオバトへの関心が高
まったと思います。
アオバトの写真パネルとアオバト
についての資料。これもこまたん
からお借りした物です。
パネル写真撮影 アオバズク、ギンリョウソウ、カヤネズミ 青木雄司氏(厚木郷土資料館)
ミルンヤンマ 槐真史氏(厚木郷土資料館)
アオバト資料作成 こまたん
9
ご協力ありがとうございました。
大磯の自然の展示について
展示会はアライグマ問題を前面に打ち出した展示でしたが、最終的には大磯の自然をどう
遺していくかを考えてもらいたいと考えました。
そこで、初めに大磯の自然の全体像についての展示をしました。
大磯の自然について展示するに際して、
「大磯は自然が豊かである」という認識はあっ
たものの、具体的に、大磯のどの場所のどんな生態系が良好な状態にあるのか等、知らな
い事に気づき、一般の大磯町民も知らない人の方が多いだろうと考えられました。
図書館の資料などで調べるだけではなく、実際に何度も大磯をメンバーで歩きどんな生
きものがいるのかを調べました。展示では私たちがフィールド調査で得た情報だけでは不
充分と思われたため、町史などの資料からも引用しました。この展示の準備は私たちに多
いに勉強になりました。
資料を収集していた際に町役場で見た町実施のアンケート調査で、町民の 76.3%が大
磯の自然をこのまま遺していきたいと考えている、という事実は、展示会開催に向けての
勇気づけにもなりました。
展示では、私たちは野生動物について学んでいる学生が多いために、どうしても大磯の
自然の紹介が動物のことに偏りがちでしたので、地形や文化的なことも触れるよう意識し
ました。また、文字ばかりにならないようにと、写真パネルを準備することにしました。
これには厚木市郷土資料館と「こまたん」が協力して下さり、さらに象徴種であるアオバ
ト(鳩の一種)のバードカービングもお借りすることができました。写真パネルやカービン
グは、文字を読むのが面倒くさかったり時間のない方にも楽しんでいただくことができま
した。
多くの来場者が大磯の自然の展示をみて、大磯の自然の豊かさを改めて実感下さったよ
うです。バードウォッチングや山歩きを普段からされている大磯の自然に慣れ親しんでい
る方々は、自分の好きな自然が展示されている事を喜んで下さり、あまり野外を出歩いた
事はないけれど大磯は自然が豊かという事だけ知っている方には、大磯の自然を具体的に
知っていただく機会になったと思います。
この展示を見て、町内のそれぞれの地域が抱えるマンション建設問題など詳細な情報に
ついて指摘して下さる来場者もいました。
10
展示⑥
ポスター「外来生物を知っていますか? 」
外来生物の基礎的な情報について紹介しました。
外来生物とは
人間は、自動車や飛行機・船舶などを使ってとても広い範囲で行動することが出来ます。
その人間の活動によって、他の生き物たちが、本来 行けなかった所に運ばれてしまうことがあ
ります。そうした時に野外に逃げ出しても、多くの場合、子孫を残すことが出来ず、その生き物
は死に絶えてしまいます。
ところが! なかには、子孫を残す−つまり、本来
生息していなかった地域で増えていく生
き物もいます。
外来生物とは、そうした人間の活動によって本来の生息(生育)域ではないところへ運ばれ分
布する生き物たちのことをいいます。
(※生き物に国境はありません。日本のなかであっても人間が運び、そこで生息するになれば
それは外来生物です。
)
例えば、お祭りのカメすくいなどでおなじみのミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)はアメリカ
から輸入されたカメですが逃げ出したり、飼いきれなくなって野外に棄てられたりして各地で増え
ています。
(財)日本自然保護協会では、2003 年に日本全国でカメの調査をしました(NACSJ 自然しらべ 2003
「日本全国カメさがし」
)
。新聞やインターネットなどで全国に呼びかけてカメの観察例を集めたと
ころ、寄せられたカメの目撃情報は 5966 例。その6割以上が外来のカメでした!
11
展示⑦
ポスター「外来生物がいると何が問題なの? 」
外来生物によって引き起こされるさまざまな問題を紹介しました。
「自然生態系への影響」
「人の健康や生活への被害」
「産業への被害」
「文化・教育への被害」と、4つの問題があ
るといわれていますが、私たちが外来生物問題を考えていく上で最も重要だと考えている
「自然生態系への影響」に重きを置きました。
生き物たちは、それぞれの地域で太古からの何万年という長い時間をかけて、そこ
の環境と生き物、生き物と生き物同士で生き抜くためのバランスを築き上げてきま
した。ところが、そこに外来生物が住み着くようになるとそのバランスが崩れてし
まい、そのため絶滅してしまう生き物もいます。
自然生態系(生物多様性)への影響∼捕食・
競合・遺伝的かく乱・伝染病の伝播・物理
的環境破壊
外来生物が、元々そこで暮らしていた生き
物を食べしまったり(捕食)
、餌や住みかが
同じ生き物と奪い合ったり(競合)するこ
とで、元々住んでいた生き物が住みにくく
なります。
外来生物と似た種類の生き物が元々いて繁
殖してしまうと雑種が生まれ、元々の生き
物の性質を変えてしまう(遺伝的かく乱)
も心配です。また、その地域ではなかった
伝染病を持ち込むこと(伝染病の伝播)や、
その場所の土や水の質や地形を変えてしま
ったりして元々住んでいた生き物が暮らせ
ないようにしてしまったり(物理的環境破
壊)します。
人の健康・生活への被害
文化・教育への被害
産業への被害
噛み付くなどして人間に
「ふるさと」の景観が外来
農作物や水産物を食べて
直接危害を加えたり、住宅
生物によって変わってし
しまったり、農耕地などで
に侵入して天井裏や柱な
まう事で昔ながらの自然
生い茂ったりして、農業や
どを傷つけたり汚したり、
遊びが出来なくなったり、
水産業が被害を受けます。
池の鯉などを食べてしま
社寺仏閣などの文化財産
ったり、人間にも伝染する
が侵入などで壊されてし
病気を運んだりします。
まったりします。
12
展示⑧
ポスター「外来生物の法律ができました。」
平成 17 年 6 月から施行された「外来生物法」について紹介しました。
また、環境省作成のパンフレットも配布しました。
外来生物問題は、日本も条約国となっている「生物多様性条約」で生物多様性損
失の危機としてあげられています。そこで、政府は2004年6月に「特定外来
生物による生態系等にかかる被害の防止に関する法律」
(外来生物法)を制定し、
今年6月1日から施行しました。
外来生物のうち「海外から持ち込まれたもの」
「明治以降に持ち込まれたもの」
を対象に「特に生態系への影響の大きいもの」を「特定外来生物」として指定し、
①飼育・栽培・保管・運搬・販売・譲渡・輸入の原則禁止 ②野外に放すことの
絶対禁止 を定め、違反すると厳しく罰せられます。
また、すでに野外に定着してしまった外来生物の問題を解決するため、③防除を
進められるような取り決めもされています。
外来生物法で特定外来
飼ってはダメ!!
生物に指定されている
栽培もダメ!!
生物のリスト、全 39 種
保管するのも運ぶのもダメ!!
売ってもダメ!!
を掲載しました。
もらったりあげたりもダメ!!
(平成 17 年度 8 月 16 日
輸入するのもダメ!!
現在のもの)
野外に放すのもダメ!!
外来生物法 Q&A
Q:特定外来生物は誰が決めているの?
A:専門家グループによる会合が開催されています。そこで検討されて特定外来生物が選定されます。
Q:特定外来生物はリストにあるだけ?
A:現時点ではそうですが、現在 二次選定が進められています。以降もリストが更新される予定です。
Q:今、リストに入っている生き物を飼っている…。どうしよう?
A:平成 17 年 12 月 1 日までに許可を得ればその個体に限り飼育することができます。
詳しい情報は、環境省の外来生物法ホームページに載っています。
外来生物法ホームページ
http://www.env.go.jp/nature/intro/
環境省から「外来生物法」パンフレットを提供頂きました。ありがとうございます。
13
外来生物の展示について
大磯の自然の紹介に続いて、自然破壊問題のひとつとして外来生物問題を紹介しました。
外来生物とは何か、外来生物による問題、そして 2005 年 6 月に施行されたばかりの法律
「外来生物法」の解説を展示しました。
来場者の多くは、テレビや新聞などで取り上げられることが多いからか、外来生物を知
っておりアライグマやタイワンリスが鎌倉などで問題になっている事をご存じでした。し
かし、お祭のカメすくいのミドリガメが外来生物のミシシッピアカミミガメであること、
そのカメが大量に野生化していること、大磯に定着して問題となっているハクビシンが外
来生物であることはご存じでないなど、外来生物問題が身近な問題であると認識されてい
る方は少ないという印象を持ちました。
「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」について、
すでに知っていた方は希であり、すべての外来生物が法規制の対象になるのか心配された
り(外来生物を飼養されている方など)、逆に法律ができたならアライグマ問題は国が解決
してくれると考える方も少なくなく、会場スタッフの口頭説明が欠かせなかった展示でし
た(ポスターだけでは伝わりにくかったという反省もあります)。説明しながら法の難しさ
も実感しました。が、多くの人が興味を持って環境省発行のリーフレットをお持ち帰り下
さいました。リーフレットは、環境省自然環境局野生生物課から 300 部ご提供いただき
ましたが展示会の終了前にその全てがなくなりました。外来生物法について知って頂く良
い機会になったと思います。
14
展示⑨
ポスター「アライグマも問題になっています」
外来生物法で特定外来生物に指定されたアライグマについて、神奈川県での事例を中心に
紹介しました。また、かながわ野生動物サポートネットワーク作成のパンフレット「アラ
イグマ注意報」も配布しました。
「外来生物法」で、特定外来生物に指定された生き物にアライグマがいます。ア
ライグマは神奈川県で分布をどんどん拡大し、ついに大磯でも見つかりまし
た!!
アライグマがいるとどんな問題が起きるのでしょうか?
アライグマの神奈川県内の分布拡大図をのせました。鎌倉や
三浦半島を中心に 2000 年から 2003 年にかけて確実にアラ
イグマは生息域を拡げています。
(資料提供:かながわ野生動物サポートネットワーク)
在来の生態系への被害①
小動物がアライグマに食べられてしまうことがあります。
生き物は餌のとり方、敵からの身の守り方などを他の生き物などとバランスをとりながら生きていま
すが、元々日本にいなかったアライグマから身を守る方法を知りません。
在来の生態系への被害②
住みかや餌などがアライグマと同じような動物はそれをアライグマと取り合うことになります。雑食
性で体の大きいアライグマは、例えばタヌキなどには困ったライバルです。
在来の生態系への被害③
アライグマが、他の生き物にもうつる病気を運んでしまう可能性があります。元々そこにはない新し
い病気を持ちこんだり、そこに住む生き物と違った経路で病気が流行すると問題です。
人の暮らしへの被害
神奈川県内では、産業や生活など人の暮らしへの被害が起きています。
三浦半島でスイカが食べられてしまうなどの農業への被害額は年間900万円ほどです。
また、住宅の軒下などから入って、天井裏に住みつき、家を傷めたり、ダニやノミを運んだりします。
神奈川県アライグマ分布図 かながわ野生動物サポートネットワーク
トウキョウサンショウウオ、タヌキ、フクロウの写真 三浦半島自然誌研究会
15
資料提供ありがとうございました。
展示⑩
野生動物目撃情報マップ
来場者の方に、大磯町での野生動物の目撃情報をシールで貼って頂きました。アライグマ
の情報やその他の外来生物の情報を得るためです。日を追うごとにシールが増えてゆき、
来場者の方も、他の方が貼ったシールを見て、
「こんなところにタヌキがいたんだ」
「ハク
ビシン多いね」など、改めて野生動物の多さや、外来生物の現状を実感されたように思い
ます。
●ピンクのシール…アライグマの目撃情報
●黄色のシール…他の野生動物の目撃情報
●オレンジのシール…アライグマ?タヌキ?ハクビシン?どれか分からない目撃情報
タヌキとアライグ
マの足跡の違いを
展示し、足跡の目
見分けにくい、タ
撃情報もよせてい
ヌキ・アライグ
ただきました。
マ・ハクビシンの
違いを写真で解説
しました
16
大磯町白地図 一部拡大
展示⑪
ポスター「どぅも
アライグマです」
そもそもアライグマとはどんな動物なのでしょうか。外来生物問題やアライグマ問題にふ
れた後に紹介しました。アライグマについてより深くご理解頂けたかと思います。
・耳が白い
・おしりがでかい
・鼻筋に黒い線がある
・しっぽがしましま
・ごわごわの毛がある
・ヒゲが白い
・手先は器用
・目の周りが黒い
アライグマの日本国内で野生
世界でのアライグマ分布図で
化が確認された都道府県の地
す。原産国は北アメリカで、日
図です。
本、ロシア、ドイツ、オランダ、
2005 年 12 月現在では愛媛と
スイス、フランスで外来生物と
鹿児島以外の 45 都道府県で
して確認されています。
野生化が確認されています。
アライグマについて
食肉目アライグマ科
寿命 5∼8 年(飼育下 10∼12 年)
体の大きさ 40∼60cm
妊娠期間 約 63 日
体重 5∼8kg
出産期(神奈川 3 月末∼10 月末)
雑食性
産仔数 1∼7 頭(普通 3∼4 頭)
17
展示⑫
ポスター「アライグマだって生きている」
外来生物やアライグマがいることで様々な影響があることをここまで紹介してきました。
しかし、アライグマもひとつの命であることを忘れてはいけないと考えています。ここで
は今後、大磯でアライグマをどうしていくべきかを考えるため、各地域の事例を紹介しま
した。
生態系への影響を防ぐためには、アライグマを完全に野外から除かなければなり
ません。ですが、捕まえたアライグマをどうすべきか…殺す事はよくないと、活
動している方たちもいます。
…そもそも30年前に、みんなでまじめに考えればこんな事にはならなかったの
に…。
今、各地でこんな対策がとられています。
北海道では10年かけて野外のア
鎌倉市では、管理計画のための
ライグマを完全にいなくする計画
基礎データを集めようとした捕
をたて、それに基づいた捕獲がなさ
獲調査が「殺さないで」という
れています。アライグマが増える割
声により中止になりました。そ
合などから1年ごとの捕獲目標数
して、市民、専門家、関係団体
が科学的に決められています。捕獲
を交えた対策協議会が設置さ
された個体は学術研究に活かされ、
れ、どう対策を進めるか話し合
計画の見直しにも役立てられます。
いが持たれています。
動物愛護団体の中には、捕獲された
大阪府では、対策として被害届
アライグマが殺されずにすむよう
があった所での捕獲をしていま
に里親制度をすすめている団体も
す。捕獲後の殺処分については
行政が責任を持って安楽死する
あります。不妊化手術や、マイクロ
施設を設置しました。
チップをつけることをボランティ
アで行い、責任を持って飼うための
指導も行っています。
多くの地域では、農林水産業や生活へ被害を受けた方から被害届が
あった場合に、捕獲、殺処分するという管理がなされています。
しかし、殺処分方法が苦痛を伴う方法であったり、生態系への被害
は防げなかったり、被害のあった時だけの対策であるためにアライ
グマは増え続けてしまったり、といった問題があります。もし、こ
うした被害を減らそうとするなら、アライグマの数が少ないうちに
根本的な解決法を探すことが効率的です。
18
展示⑬
アライグマグッズの展示
ショーケース2台を使い、本会員個人のアライグマ
グッズを持ち寄り展示しました。
ポスター展示は難しそうだけど、これはおもしろそ
う!と子供達にも大人気でした。
改めて見回すと身近にあふれるアライグマグッズ
に、今後は違った視点で見つめられるかと思いま
す。
アライグマの毛皮の帽子
原産国アメリカでは開拓の象徴として扱わ
れていました。
「ぼのぼの」の「あらいぐま君のぬいぐるみ」
いがらしみきおのコミック「ぼのぼの」にもアラ
イグマはキャラクターとして登場している。擬人
化しやすいからか様々なアニメやコミックに登
場します。有名なディズニーではポカホンタスに
出てきます。
「あらいぐまラスカル」のぬいぐるみ
アライグマのことが書かれた本もたくさん
∼1997 年まで放映されたテレビアニメでこの番組
あります。是非読んでみよう!
がアライグマブームを引き起こしたと言われてい
る。未だに人気のあるキャラクターである。
清潔のシンボル!?アライグマと石けん
物を洗うようにみえる仕草からか、アライグマが手(や
物)を洗うイメージシンボルに使われることが多いよう
です。実際のアライグマは決して清潔好きな感じはしな
いのだけれど…(臭いし)
なんでドイツの切手に!?
アライグマはドイツにも外来生物として侵入してい
ます。そのドイツの「自然」のデザインの切手になんで
アライグマが…!?
コンビニでキャンペーン商品になったあらい
アメリカでは身近な生きものアライグマ!!
ぐまラスカル
人の暮らしに身近な生きものとして、アメリカではとてもなじみ
のある生きものです。ティーポットやマグネットなど様々な生活
用品にもデザインされています。
19
アライグマの展示について
展示会のタイトルが「大磯にアライグマっているの!?」だったこともあり、多くの方か
ら「本当に大磯にアライグマはいるのですか?」と聞かれました。
なかには、時間がないなかでお運び下さり、大磯の自然や外来生物の展示をとばして、
この展示を最初にご覧下さった方もいました。テレビや新聞などで知ったアライグマ問題
は、
「アライグマは凶暴」等といったものであり、アライグマがどんな生物なのか、その
侵入がどんな問題をもたらすのかなど正確な情報は伝わっていない印象を受けました。
ポスターと説明で、アライグマとその問題に知っていただいた上で、
「野生動物目撃情
報マップ」と神奈川での分布拡大図をご覧いただくと来場者の多くが危機感を持ってくだ
さいました。
またアライグマ問題での課題である生命倫理の問題にもポスター展示していたところ
「野生化アライグマは問題で殺処分には抵抗があるけどしょうがない」等の感想をくださ
いました。
アライグマグッズの展示は、日本で兎や狸などがさまざまにデザインされて身の回りで
用いられているのと同様に、原産地でシンボリックに親しまれていることや、さまざまな
西洋文化の輸入と共に、日本やそれ以外の国々でも一般的に知られる動物となっているこ
とを知っていただくために展示しました。
「こういうものがあるからアライグマが増えて
しまった」という感想を持った方も多かったようです。ですが、アライグマ問題が起こっ
たのはアライグマを野外に放してしまったこと、そしてそれをずっと放置しておいた私た
ち人間の責任だと考えています。この考えまで踏み込んだ展示となっていなかったのは今
回の反省点の一つです。
また、この展示で「対策をどうするのか(どうすればいいのか)?」とよくたずねられ
ました。対策についてはすでに専門家からいくつかのアイデアが打ち出されていますが、
今回の展示ではそうした具体策を掲げることはしませんでした。それはアライグマ問題が、
専門家と行政などといった「誰か」が取り組み、一般はその方針に理解を示せばいいとい
う問題ではなく、地域に住むひとりひとりが自身の住む環境の問題として考える必要があ
ると思ったからです。対策をどうすべきか? という問いには、スタッフがそれぞれ個人
の考えを述べ、来場者と意見の交換をするようつとめました。声をかけて下さった来場者
の数だけ、この問題について解決にむけての考察がなされたと思います。
20
展示⑭
「あなたの考える大磯の未来」
最後に、大磯の未来について自由に書いていただきました。アライグマがいるかいないか
だけではなく、どんな自然を大磯に遺していきたいか考えて頂くきっかけにしてほしかっ
たからです。計 75 名の来場者が大磯の未来を書いてくださいました。
21
展示会の結果
22
展示会のようす
開催日 平成17年8月16日~31日(月曜休館のため全 14 日)
9時半~19時(平日)、9時半~17時(土日)
来場者数 403人
スタッフ数 のべ32人
23
来場者のようす
展示会開催期間中は、本会員が交替で解説スタッフとして常駐しました。パンフレット
の配布や質問に回答するだけでなく、来場くださった方に積極的に声をかけ、大磯町のこ
とやアライグマのこと、野生動物のことなど、さまざまなテーマについて来場者とコミュ
ニケーションをはかりました。
そのことで展示を熱心に見てくださったり、展示ポスター等で充分に伝えられなかった
ことを伝えることができました。同時に私たちにとっても一般の方々がアライグマや外来
生物問題や野生動物についてどんな認識や印象を持っているのか生の声で理解すること
に結びつきました。私たちが知らなかった大磯町のさまざまな自然の情報についても、た
くさん教えていただくことができました。
会員個人個人によって、声のかけ方や、アライグマについての知識の差異があったり、
声のかけ方によってはご来場くださった方がかえってゆっくり展示を見ることの妨げに
なってしまったりといった問題もありました。日々のようすは、翌日の当番と電子メール
で伝達しましたが、
「展示会日誌」として会場で来場者から聞けた話や対応の注意点、来
場者の傾向などをメモに残しました。来場者の皆さんからは、大磯の自然についてだけで
なく、私たちの展示そのものについての感想や、大磯町のあり方等についても聞くことが
できました。ここでは、その「展示会日誌」のうち、来場者からの声を掲載します。
16日(火)来場者数38人 (展示会スタッフ:金田、城谷、李)
来場者の方から聞けた話
・ 田や畑が放棄や開発などによって減り、両生類・爬虫類が減り、
ミサゴ(ワシの仲間)やヒバカリ(ヘビの一種)が減った。
・ 大磯の外来生物はタイワンリス、ハクビシン、ガビチョウ、ソ
ウシチョウ(秋冬)
。
・ 虫窪のなきが原、黒岩、大磯高校の屋上は富士山がきれい(12
月上旬が特に雪がよい)
。
・ 赤坂台でハクビシンをみた。
・ 大磯八景がある(おうみ八景、金沢八景と同じ感じ)
。
・ 大磯の未来を語る会というのがある(老人が月一で集まって未
来を語る。R1沿いの自転車屋)
。
・ 10月22日に役場福祉課主催で「大磯まちづくりフォーラム」
ある。
・ 磯の池はホタルがいる。
・ 城山公園にはカブトムシがたくさんいるが、業者による乱獲が
あり今では減ってしまった。イトキリムシ、クワガタもいる。
トノサマガエル、メジロ・ウグイス、トンボは昔多かった。
24
17日(水)来場者数29人 (展示会スタッフ:金田、城谷)
来場者の方から聞けた話
・ 家でタヌキを捕まえている。ハクビシンはいた。
・ 家でプレーリードックを飼っていた。サルをみた。
・ 屋根裏にハクビシンが入っている。
18日(木)来場者数50人 (展示会スタッフ:石渡、城谷、早川、)
中西せつ子さんと環境省野生生物保護対策検討会委員の羽山伸一さんが来場されました。
来場者の方から聞けた話
・ 新幹線の線路沿いでタヌキの死体をよく見る
19日(金)来場者数19人 (展示会スタッフ:北原、城谷)
来場者の方から聞けた話
・ アライグマとタヌキの違いが知りたい。
・ アライグマが農作物を荒らす。ワナをかけて捕まえたが死んで
しまった。(捕獲は)みんなやってる。二宮小学校のトウモロコシ
がアライグマによって全滅。
(二宮町在住の女性)
・ 照ヶ崎の磯が少ししかなくて寂しい。港の所に昔は磯があった。
大磯という名が生きていない。
20日(土)来場者数30人 (展示会スタッフ:石渡、北原、高野)
21日(日)来場者数24人 (展示会スタッフ:高野、森)
来場者の方から聞けた話
・ 家の桃の実がハクビシンに食べられてしまうらしい。(西小磯在
住の男性)
・ 展示の手書きの文字がデザインとして見れない。伝えたいことが
あるならもっと綺麗に書くべきでは?
25
23日(火)来場者数29人 (展示会スタッフ:田畑、三島、李)
来場者の方から聞けた話
・ ハクビシンは見たことがある。
・ 子どもの時にはアオバトが海水を飲みに来るなんて知らなかっ
た。けど最近はよく来るみたいだね(大磯在住のご年配)。
・ アオバトの写真をときどき撮っている。タイワンリス、アライ
グマが外来生物だと知らなかった。
・ 大磯プリンスホテルに(アライグマが)いるの!
・ 稲荷神社の裏でタヌキ、昔はオオタカもよく見た。代官山での
マンション建設計画が問題。
・ こういう企画はいいと思う。展示会だけじゃなく、何か形にな
ればいいわね。
・ 知り合いの植木屋さんがハクビシンを捕まえているらしい。
24日(水)来場者数48人 (展示会スタッフ:金田、城谷)
来場者の方から聞けた話
・ アライグマって凶暴?(アライグマがテレビで放映されて気にな
って来た女性)
・ 野生動物の問題の数の多さに今後困る。もうどうしようもない
・ 「あいさつ」を見て感動。
・ 外来生物は入ると大変。
・ よい活動ですね。
・ ハクビシンがドブの穴をすりぬけて出てくるのを見た。
・ ネコを外に出してるから、アライグマがいたら危険だね。
・ (町内でシカを見たという経験を持つ男性)アライグマを拾った
場合どうするべきか。届け出は必要?
・ タイワンリス、ハクビシンなどどんな被害があるの?(小2)
・ 対策どうするんですか?入ってきてしまったアライグマをどう
排除していくべきかが気になる。
26
25日(木)来場者数8人 (展示会スタッフ:城谷)
台風の影響で図書館の来館者数も含めて来場者数は少なかった。
26日(金)来場者数20人 (展示会スタッフ:石渡、田畑)
来場者の方から聞けた話
・ ふだんこういう特定外来生物とか関心を持ってなかったんです
が…。(展示内容を丁寧に見てくださいました。)
・ 3年くらい前、家の近くでサルを見かけ追いかけた。今度議員
さんと会うのでアライグマについて話してみようと思う。
・ 金目川沿いでタヌキを見た。
・ 昔、ハクビシンらしきものをみた。
27日(土)来場者数38人 (展示会スタッフ:城谷、李)
来場者の方から聞けた話
・ 西湘バイパスが出来て大磯は変わった。昔は海でシラスもとれ
た。よい自然を残したい。
(大磯に45年間住んでる男性)
・ 税金安くして欲しい…。
・ (高麗在住の女性)夜にゴミを荒らす生き物がいる。近所の人
はハクビシンだという。
・ 小磯の山ではキジが出る。
・ 「生態系の大切さをどう伝えるか」
、
「愛護団体との折りあいに
ついて」、
「対策をどうしていくべきか」、
「大磯はいいけど既に
拡がってしまった地域については、どのように対策や方針を決
め、進めていくか」
、
「ハクビシンも対応しないと」
(国交省の方)
・ 猫がのどぼどけを噛まれたので、アライグマかと思って来てみ
た。
・ ツマグロヒョウモン(チョウの一種)とか最近見るようになった。
温暖化の影響?、ガビチョウは最近見るようになった。ソウシ
チョウはバッタとか食べちゃう。田んぼも少なくなって、普通
の虫さえも減ってきている。
・ 運動公園のドブさらいしたときに、ブルーギルが多かった。
27
28日(日)来場者数23人 (展示会スタッフ:城谷、金田)
来場者の方から聞けた話
・ 学祭の展示でソウシチョウやるから見に来た。
・ 網戸あけたら動物いたから何かと思って来た。(お話からハクビ
シンであることが分かりました。)
・ 大磯では97年にガビチョウを初認。その後増え続け、40羽
以上の群れさえいる。ソウシチョウは冬のみ。夏は丹沢など高
いところにいる。アライグマ出たら地面に巣を作る鳥は大変。
鷹鳥山は冬鳥の越冬地だから禁猟区にしたいが、農家とかの地
元民が有駆でハンターにやってもらえなくなるから嫌がる。土
屋は禁猟区にしたい。
・ マンション建設絶対反対。
30日(火)来場者数25人 (展示会スタッフ:城谷、金田)
滋賀県立琵琶湖博物館の中井克樹さん、かながわ野生動物サポートネットワークの葉山
久世さん、Wolf Network JAPAN の原亨さんがご来場されました。
来場者の方から聞けた話
・ (子ども3人)ミドリガメを台風の時に逃がしてしまった。
(ミ
ドリガメはバッタとか食べちゃうんだよと言ったら)バッタは
水の中に入ったら死んじゃうから、カメに食べられても良いじ
ゃん。
・ 1年前、屋根の上でアライグマと猫がケンカ。足跡がアライグ
マなので間違いなし。
31日(水)来場者数22人 (展示会スタッフ:金田、北原、城谷)
環境省自然環境局野生生物課の堀上勝さんがご来場されました。
来場者の方から聞けた話
・ 大磯のグリーンマップ作ったら?
28
「あなたの考える大磯の未来」
75 名の方に書いていただきました。ご協力くださった皆様、本当にありがとうございま
す。
・ いろいろなやせいどうぶつが山からでてくるとおもう
・ 空気のおいしいまち 路地裏の風情が残るまち 緑が多く、帰ってくるとホッとする
駅とまち 小鳥のさえずりが聞こえるまち
・ 自然の美しさは残し、歴史的財産は大切にし、芸術などの文化はもっともっと高めて
いけたらいいな
・ 乱開発を防ぐことで、昔からの生態系を守り、町そのものが自然公園になり、街のあ
る公園として人に親しまれるとよい。
・ 今の環境を残したい
・ 生物がすみよい環境はきっと人間にもすみよいのではと思っています。逆に人間が住
みよい環境は、生物にも…。環境と生き物→本質的に見つめられる大磯の人々の一人
でいたい
・ 広告がなにもない大磯駅が会社での疲れをいやしてくれます。ただしコンビニはほし
い。大磯にマッチしたイルミネーションで(51歳)
・ 何匹か絶滅する動植物がでてくる(小6)
・ 地震対策を強くする(小6)
・ 今ある自然(高麗山とか)を残しつつ産業を発展していきたい
・ 自然を大切に(高3)
・ 今ある自然を残しつつ、次の世代の人達への自然の良さを理解してもらえるような町
であってほしいと思う。また最近、マンションなど増え、自然が壊されているので、
なんとかして保護して欲しいと思う
・ 出来るかぎり現代の自然を残していって欲しい
・ 古来の姿を生かし(破壊せず、東海道を主として、忘れず)歴史文化の継続を望む。
最近むやみに山・森を崩し、住宅化しているのは問題。
・ 自然保護も大事だと思うが、もう少し人口が増えるよう、行政側も考えて欲しい(企
業の撤退もあり、税金が高いと思うから)
・ 自然を残して欲しい。夕方5時の時報はなくしてもよい(29歳)
・ (2歳)
・ 自然と人間の調和
・ 今大磯は家がたくさん建てられていて、ゆったりとした場所がなくなっているので、
29
なるべく緑を残してほしいです。今の大磯のままであってほしい。
・ マンションの建設が大磯のあちこちで進んでいますが、自然を残し、自然を愛する大
磯町であって欲しい。
・ 自然と調和はむずかしい
・ しぜんを大切に(9歳 K.S)
・ 将来もずっと大磯に美しい自然が残されることを望みます
・ 自然がたくさん残っていて、子ども達が安心して外で元気よく遊べる町。
・ 里山の自然を人が共存して、海も健康的である…。私もすみたい大磯です。
・ 山と海が大磯の魅力だと思うので、その自然を残して欲しいと思います。
(学生)
・ 日本の先を駆ける「国際交流地区」
(高1)
・ きれいな海
・ おいしい空気や水を与えてくれる、緑の丘陵を大切に残したい。
・ 大磯はあらためて感じたのですが、海とすぐ山があり、この恵まれた自然はなんとし
ても未来に残していかなければいけないと思いました。子ども達が故郷を離れ夏など
に戻ってきますと「大磯っていいなー」と言っています。大事にしたいと思います
・ 自然を残すのも大事…なのでいわゆる「街」として発展するのではなく、このままの
姿を残したい…(しかし行政としての対応は難しいでしょう)
・ アライグマの大量発生をふせぐ(小5 ※)
・ 木がいっぱいあるといいな(小2)
・ アライグマがいない 海がきれい(中1)
・ 海山(森)の自然環境をちゃんと残そう。小さな川だけど、ザリガニがいた川に戻し
ましょう
・ 古き良き伝統を残し、地域の人達のつながりがある温かい大磯
・ いのししはいらない(小1)
・ 今よりもっと自然を大切にしていきたい。
・ (いろいろな野生動物が住んでいるイラストを描いてくださいました。)
・ 小学校にプールがほしい
30
・ いつまでも町並みや松林等の景観が維持され、身近なところで常緑樹林等の自然にふ
れあう事の町であってほしい
・ アライグマのいない大磯。けど、アライグマを愛する大磯。(開発が多くなった秦野
市民より、自然ある大磯へ)
・ 人と動物、植物が共生できる未来づくりのために。開発、マンション建設などで森林
や山地が破壊されつつある。野生動物、植物は自然破壊で住む場所を失い、好むと好
まざるに関わらず人間の住居区域に住処や食べ物の在処を探すようになる。まず開発
による森林の山地破壊を防ぐ努力をしなければならない
・ 「事態が深刻化する前に賢明な対策がとられた」と将来、評価される街になれば…
・ 外来種を防ぐ
・ 町立の動物園をつくってほしい。かな?
・ 町民がみんなでアライグマについて野生動物について、大磯の自然について感じ、考
える町。団結してがんばる町・大磯!!
・ 大磯ならではの自然を生かし、共生すること。温暖で豊かな自然の素材にあふれた大
磯では来る高齢化社会にやさしいのではないだろうか?
・ 自然との共存。昔、岡山県地方で白蛇を祭った家が多くあった話を思い出しました。
・ 自然豊か、静か、優しい人々
・ (イラストを描いていただきました 小1)
・ (イラストを描いていただきました)
・ カッパもすめるキレイな水のまち
・ 大磯駅にマクドナルドやケンタッキーとかコンビニがほしいなぁ(M.K)
・ 地球の基本となるみどり、大磯の潜在的な植生である植物を積極的に植え続けていく
計画が必要だと思います。照葉樹林などを中心とした「ふるさとの森・100 年計画」
を実行に移したいです。図書館にもある「大磯町の植生」にはその方法論が述べられ、
提言されています。
・ 不便かもしれないけど、住みごこちの良い町であってほしいなー。そして個人のアイ
デンティティの源泉の自然や文化が良好な状態で次代に継いでいきたいなー。
・ 外国からきたコーカサスオオカブトやヘラクレスオオカブトをにがさない(小3
Y.A)
31
・ アライグマの大量発生をふせぐ(小6 ※)
・ たたみいわしとしらすの町 自然と文化の正しい共生
・ 野良猫のいないまち
・ 自然をそのままに活かして でも人は住み易い環境を創っていけたらいいと思う
・ コンビニがほしい(中2)
・ 駅前ののんびりとした空気と自然、文化のかおりを残した憩いの町
・ 海と山の自然をそのままのこしたいです(小3)
・ 大磯運動公園、野村不動産の土地のもっと有効利用。でもできるかぎり自然を利用し
て。動物と人間がすみやすい町に。
・ 海と山の自然にめぐまれた所です。例えば開発して家を建てる場合、木を切ったらそ
の分、新しい木を植えるくらいに自然を大切にしてほしいです。自然とマッチした古
い家の保全を考えて街づくり、子ども達に自然の残った街を残していきたいです
・ 海がきれいで自然がいっぱい!!
・ 文化財を守ること、現状どんどん壊されてゆく不安があります。町並景観を大切にし
たい。
・ 今のままで十分ですが、川がもう少しきれいになってほしいです
・ 小さい私の子が大きくなっても大磯が好きでいられるように、海も山も今よりずっと
豊かにキレイになって欲しいです。(だからうちでは台所でも選択でもお風呂でもせ
っけんを使っています)
・ 今のままで良い。大磯らしさって何なのかうまく言えないけど、そのまま残したい。
何か問題が起きたときは、どういう大磯にしていきたいのかをよく考え、町民の間か
ら解決策を提案していけるような大磯でありたい。ただコンビニはほしい。
・ 人間動物が共同して一緒にくらせたらいいな。動物も人間が環境をこわしているから
くまとかが街にでてきてしまうって思うから。
だから自然をたいせつにしたほうが良いと思う。
・ 海・山がこのまま美しくあって欲しい。子どもの多い大磯になってほしいです。その
子達がのびのび住める大磯であってほしいです(主婦)
。
・ テトラポット、海を減らさないで。松の木を大切に、また、くさっても植えて、緑が
いっぱいに。土地ばかりたてて自然をこわさないで。
・ しぜんがもっといっぱいになるといいなー(小2)
※ 大槻駿太さん、斉藤啓太さんはお名前も記入して下さいました。
32
野生動物目撃情報マップは別ファイルになっています
33
展示会の成果
展示会はたった14日間でしたが、
400 人以上もの方に来ていただきました。
大磯町の人口は約 3 万人ですので、町外からみえた方の分を差し引いても、町
民の約1%、100 人に1人が来場くださった計算になります。大磯町のたくさ
んの方にアライグマ問題について知ってもらえたこと、大磯の自然保護につい
て考えてもらえたことが、まず何よりの成果だったと考えています。
多くの来場者は、アライグマは鎌倉などの「よそ」の問題であると考えてお
り、大磯町にアライグマが侵入してしまっていることを知らずに驚いていらっ
しゃいました。また、今回アライグマ問題を知った大磯の方の多くがアライグ
マ問題をなんとか解決したい(野生化アライグマを町から排除したい)とおっ
しゃっていました。
大磯町の「野生動物目撃情報マップ」は大変好評でした。なかには一度来場
し、その後の開催期間中にマップに情報を書き込むのが目的で自然観察にでか
け、野生動物を観察し、再び会場にお運びくださる方までいらっしゃいました。
大磯町でのこれまでのアライグマ生息確認は専門に調査や研究をしている
方による2件の情報がありましたが、今回、来場者によって新たに7件の情報
を得ることができました。大磯に侵入しているアライグマがまだ少ないため情
報も少なかったのですが、今後の対策を立てるにあたって有益な情報を得るこ
とができました。さらに、これまで大磯では生息が確認されていなかった外来
生物タイワンリスについても今回の展示会で初めて情報が確認されました。
外来生物問題では、外来生物そのもの、例えばアライグマをどうするか、と
いうことばかりに焦点が当てられがちです。しかし重要なのは、アライグマが
悪者かではなく、地域の自然を守る上でアライグマの存在をどう捉えるかであ
ると私たちは考えています。仮に、ある地域で多大な努力と経費を費やしてた
くさんのアライグマの命を犠牲にして野生化アライグマを根絶したとしても、
その後、大規模開発をして生態系が破壊されてしまうといったようなことでは、
対策も、アライグマの命も報われません。そこで今回の展示では「あなたの考
える大磯の未来」を設けました。
「あなたの考える大磯の未来」では、具体的にどんな自然を遺していきたい
か、町の自然保全プランの立案に結びつくようなものにはなりませんでしたが、
来場者の方には、他の方が考えた「大磯の未来」を見て、大磯の将来について
意識していただくきっかけになっていたと思います。これまで各地で催されて
きた外来生物問題の展示ではみられなかった取り組みでしたので、展示できた
こと、来場者の反応があったこと自体が私たちには大きな満足感を与えてくれ
ました。
34
私たち「在来生態系保全ネットワーク カコダえもん」は主に野生動物について学んで
いる学生たちが集まったグループです。展示会の準備に際して、環境省や大磯町など政府
や自治体に自ら連絡をとるという経験を初めてしました。自分たちの暮らしのことである
のに政府や役所を遠い存在と考えていて関わりすら持とうとしてこなかったことを省み
る機会になりました。後援名義を頂こうと大磯町、大磯町教育委員会、神奈川県、環境省
に依頼しましたが、いずれも断られてしまいました。NGOが活動していくことの難しさ
や、学生の社会的にどの程度信用されているのかを推し量る機会となりました。また、外
来生物問題、アライグマ問題がニュースなどで取り上げられているわりには、あまりに理
解されていないことも実感しました。
さらに、展示会開催に向け富士フイルムグリーンファンド、藤本倫子環境保
全活動助成基金など、いくつかの環境活動助成団体に助成金の申請をしました
がすべて選外という結果になりました。申請書類の作成の難しさ、煩わしさを
実感し、助成金を受け活動されている市民団体のご苦労を知りました。私たち
の書類作成能力の至らなさも思い知りましたが、助成団体から受けたご連絡の
中には、外来生物を自然保護上の問題として受け止めていないことがうかがえ
るものもあり、環境団体であっても外来生物問題を理解されていないことを知
りました。
展示内容や方針をめぐり、メンバー同士での足並みまでも乱れがちになるこ
ともありましたが、展示会場を提供くださった大磯町立大磯図書館の皆様、貴
重な資料をお貸しくださった槐学芸員をはじめとする皆様、「こまたん」の皆
様、企画から相談にのってくださった「かながわ野生動物サポートネットワー
ク」と「三浦半島自然誌研究会」の皆様、面倒なお願いや相談にお付き合いく
ださり、パンフレットを提供くださった環境省自然環境局野生生物課の堀上勝
さんをはじめとする皆様からは、私たちのような学生の活動が期待されること
をあるのだと知り、勇気づけられました。
私たち自身の活動はとても小さいもので、それ自体に成果とよべるものはな
いに等しいくらいだったのかもしれません。しかし小さくとも一歩を踏み出せ
たことは、私たちにとっても、大磯にとっても、外来生物問題全体においても、
着実な一歩であり成果であったと感じています。
(文 城谷歩惟)
35
アライグマ対策と私たちの活動
展示会の開催で大磯でのアライグマ対策はようやく第一歩を踏み出すことがで
きました。
わずかではあったけれど町の人たちにアライグマ問題について知ってもらえた
こと、大磯での侵入地点が分かったことが、その第一歩です。
今後は、
①さらに多くの(計算上残り 99% の)町の人にアライグマ問題を知ってもらうこと
②アライグマ問題の解決にむけて町内のそれぞれの地域でどんな対応をして
いくのかや、どんな自然を未来に遺していくのかなどの指針をもつこと
③そのための話し合いの場を設けること
④それに基づいた具体的な取り組み
が必要です。
私たちの考えとしては町内から、野生化アライグマを排除するのが望ましいと
考えています。開発や管理放棄によって自然が破壊されないようにするのももち
ろんですが、アライグマの侵入で生態系が破壊されるのも間違いないと考えてい
るからです。ただし、排除イコール殺処分がすべてとは考えていません。生息数
の少ない大磯町であれば、捕獲した個体をすべて管理飼育することも不可能では
ないからです。しかし、どこで飼うのか誰が管理するのかといったことや、その予
算はどうやって捻出するのかなど課題は残ります。
そこで私は、今後、大磯町の中でタウンミーティングやシンポジウムなどの集
会を持ち、もっと多くの大磯の方とアライグマ問題を共有していきたいと考えてい
ます。
そして、これまで大磯で自然破壊に取り組んでこられた先輩自然保護団体や個
人、町(行政)と連携をはかり「アライグマの早期対応」の仕組み作りを提案した
いと考えています。これは、町内の様々な方が、アライグマの侵入について監視
して(例えば足跡の観察会を小学校で行うなど)、侵入の情報が得られた場合は、
情報ステーション(例えばインターネット上の掲示板など)へ連絡し、その情報に基
づいて速やかに捕獲するというものです。
また大磯以外でも二宮、伊勢原、秦野、真鶴、箱根、湯河原、南足柄、中井、
大井、松田、山北、開成市、県央部の海老名、大和、座間、綾瀬、愛川、清川、
県北西部の相模湖町や藤野では、大磯同様にこれまで捕獲や生息観察例があま
りなく、多くの住民は問題意識が低いと考えられます。こうした地域で今回同様の
展示会を開催するなどして、普及啓発と情報収集に勤めていきたいと考えていま
す。
36
アライグマ問題は、アライグマを棄ててしまった人間、野生化アライグマ問題を
放ってきた私たち人間ひとりひとりの責任です。そして、地域の自然を直していく
ことは地域の人間の責任です。そのことを忘れずに、今後も責任を持って活動を
続けていきたいと思います。
(文 城谷歩惟)
37
在来生態系保全ネットワーク
カコダえもん
平成 15 年 12 月に成立した学生を中心とした自然保護
NGO です。三浦半島自然誌研究会のトウキョウサンショ
ウウオの調査に協力していた学生が、アライグマ問題の
深刻さに気づき設立しました。現在(2006.1)は会員数
25 名で、神奈川・東京を中心にアライグマの調査や研
究、普及啓発活動等の外来生物への取り組みを主とした
自然保護活動を行っています。
カコダえもん展示会スタッフ
(あいうえお順)
石渡恭之(横浜国立大学大学院博士前期課程)
加藤卓也(日本獣医畜産大学獣医学部獣医学科 5 年)
金田正人
北原和彦(日本大学生物資源科学部国際地域開発学科2年)
小林正直(麻布大学環境保険学部動物応用科学科4年)
城谷歩惟(日本大学生物資源科学部獣医学科3年)
高野 愛(日本大学生物資源科学部獣医学科6年)
田畑真悠(日本大学大学院生物資源科学研究科博士前期課程)
早川 武(日本大学生物資源科学部獣医学科1年)
三島宏之(日本獣医畜産大学応用生命科学部動物科学科3年)
森 航也
李 謙一(東京農工大学農学部獣医学科4年)
著名
大磯にアライグマっているの!?
~外来生物アライグマ問題展示会~ 報告書
発行
2006 年 1 月 6 日
発行者
在来生態系保全ネットワーク カコダえもん
神奈川県三浦郡葉山町長柄 1182-3
www.kosac.org/caco/
編集責任者 城谷歩惟(しろたにあい:大磯プロジェクト代表)
神奈川県中郡大磯町東町 3-11-28
Fly UP