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最近の米国経済について

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最近の米国経済について
情 報 報 告
シカゴ
●最近の米国経済について
○2015年11月の米小売売上高は前月比 0.2%増の 4,481 億ドル
12月11日、米商務省は2015年11月の小売売上高(速報)を発表した。11月の小売
売上高(季節調整値)は、4,481 億ドル(前月比 0.2%増)となった。年末商戦前半の値引きセー
ルの中心となるブラックフライデー期間は落ち込んだものの、11月全体を通してみると、衣料、
スポーツ・娯楽品・書籍、総合小売り、家電などが伸びており、年末商戦は堅調な滑り出しとい
うのが大方の見方だ。なお、10月の小売売上高は、4,473 億ドル(前月比 0.1%増)から 4,471
億ドル(0.1%増)に下方修正された。
11月は、11月26日の感謝祭から、翌金曜日のブラックフライデー及びその週末の4日間
にセールが集中することから、同期間の売上高の伸びが期待されている。11 月 29 日に全米小売
業協会(NRF)が発表した調査結果によると、ブラックフライデーのセール期間に店舗やオンライ
ンで買い物をした消費者は約 1 億 5,100 万人で、1 人当たりの平均支出額は 299.6 ドルとなった。
最近はブラックフライデーに先駆けて、セールを前倒しする小売店も多いため、ブラックフライ
デーの期間だけでなく、11 月を通した売上高が注目されている。
業種別に売上高をみると、食品・飲料(前月比 0.7%増、572 億ドル)をはじめ、総合小売り(0.7%
増、572 億ドル)、フードサービス(0.7%増、530 億ドル)
、無店舗小売り(0.6%増、417 億ドル)、
衣料(0.8%増、213 億ドル)、家電(0.6%増、87 億ドル)、スポーツ・娯楽品・書籍(0.8%増、
76 億ドル)が伸びた。一方で押し下げ要因となったのは自動車・同部品で、0.4%減の 937 億ド
ルとなった。ガソリンスタンド(0.8%減、345 億ドル)
、建材・園芸用品(0.3%減、279 億ドル)
、
ヘルスケア(0.0%減、266 億ドル)
、家具(0.3%減、88 億ドル)も不振だった。
○米消費者マインドは前月より 8.7 ポイント低下
11月24日、米コンファレンスボードは11月の消費者信頼感指数(※)を発表した。11
月の消費者信頼感指数は 90.4(前月比 8.7 ポイント減)となり、市場予測の 99.5(ブルームバー
グ調べ)を大幅に下回った。今回の結果に関してコンファレンスボードの経済指標ディレクター
のリン・フランコ氏は「労働市場に対し慎重な見方を示していることや、景気がさらに良くなる
ことへの期待が薄いといった消費者心理の表れ」と述べた。内訳をみると、現況指数は 108.1
(114.6)、6 ヵ月先の景況見通しを示す期待指数は 78.6(88.7)と、それぞれ前月から 6.5 ポイ
ント、10.1 ポイント下降した。
(※)全米 5,000 世帯を対象に毎月、経済状態や雇用情勢についてアンケートし、結果を指数化
したもの。現況指数は経済、雇用の 2 項目、期待指数は 6 ヵ月後の経済、雇用、所得の 3 項目
の平均値で、信頼感指数は両者を合わせた 5 項目の平均値。
○米連邦準備制度理事会(FRB)がゼロ金利政策を 7 年ぶりに解除
米連邦準備制度理事会(FRB)は、12 月 16 日発表の FOMC 声明で、事実上のゼロ金利政策を解
除する決定を行った。これにより、2008 年 12 月から 7 年続いたゼロ金利政策が解除され、現在
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情報報告 シカゴ
のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標 0~0.25%を引き上げ、0.25~0.5%とされた。
FRB のイエレン議長は会合後の記者会見で、
「これは、経済が強くなり続けるとの委員会の信頼
を反映している」と述べた。また、注目されていた今後の利上げの道筋については、段階的に進
めるが、機械的に進めることはしないと表明している。労働市場環境やインフレ圧力、インフレ
期待に関する指標、金融情勢や世界経済情勢の分析などに基づいて今後の利上げを判断する姿勢
を示した。
また、12 月の FOMC 声明によると、米国経済全般について「緩やかなペースで拡大してきた」
とし、景気判断の変更はなかった。先行きについては、
「金融政策のスタンスにおける段階的な調
整により、経済活動は引き続き緩やかに拡大する」と予測。また、経済全体の先行きに対するリ
スクと労働市場のリスクについては、
「安定した状態」とした。インフレ率の先行きについては、
エネルギー価格の下落や輸入価格の低下といった一時的要因が消えることで、中期的にはインフ
レ率 2%に近づく、との見通しを強調した。
金利水準について、FOMC メンバーの予測の中央値をみると、2016 年は 1.375%となった。その
ため、市場関係者の間では、誘導目標の上げ幅を 0.25 ポイントと想定して 2016 年中に 4 回の利
上げを行うのではないか、との見方が広まっている。他方、イエレン議長は会見の中で、
「『段階
的』とは、定期的に同じ率で上げていくという機械的な利上げを意味しない」点を強調した。
○2015年10月の米貿易赤字は前月比 3.4%増の 439 億ドル
12月4日、米商務省は2015年10月の貿易統計を発表した。輸出は(国際収支ベース、
季節調整済み)は 1,841 億ドル(前月比 1.4%減、前年同月比 6.9%減)、輸入は 2,280 億ドル(前
月比 0.6%減、前年同月比 5.2%減)となり、貿易赤字は 439 億ドル(前月比 3.4%増、前年同月
比 2.7%増)と縮小し、市場予測の 405 億ドル(ロイター調べ)上回った。なお、9月の貿易赤
字は、408 億ドルから 425 億ドルに改定された。
財貿易のみでは、輸出が 1,306 億ドル(前年同月比 10.2%減)、輸入が 1,951 億ドル(同 7.4%
減)となった。財貿易を主要財別(通関ベース、季節調整済み)にみると、輸出では工業用原材
料(前月比 4.6%減、336 億ドル)、資本財(2.0%減、444 億ドル)、食料品・飲料(5.5%減、102
億ドル)、消費財(3.0%減、165 億ドル)、自動車・同部品など(1.3%減、128 億ドル)と軒並み
減少した。輸入では、工業用原材料(前月比 5.3%減、364 億ドル)、食料品・飲料(4.0%減、103
億ドル)が減少した。一方、資本財(1.1%増、498 億ドル)
、自動車・同部品など(1.0%増、291
億ドル)、消費財(0.5%増、517 億ドル)は増加した。
原油の輸入額は前月比 11.6%減少した。通関ベース(季節調整前)で 1 バレル当たりの輸入単
価は 6.1%低下し、40.12 ドルとなった。輸入量は 10.7%減の 2 億 674 万バレルだった。
国・地域別の輸出では、カナダが前年同月比 15.2%減、ブラジルが 43.6%減とそれぞれ大幅に
減少した。一方で、ドイツ(19.2%増)、英国(11.9%増)などが伸び、EU 全般は堅調だった。
ドイツは自動車が 3 割強、英国は航空機(88 類)が 4 割強増加し、それぞれの伸びを牽引した。
また、輸入では、カナダ(22.3%減)、日本(9.6%減)、ブラジル(21.7%減)などが落ち込んだ。
一方で、フランス(5.6%増)、ドイツ(5.0%増)などが伸び、EU 全体で 3.3%増加した。
対日貿易は、輸出が前年同月比 6.8%減の 52 億ドル、輸入が 9.6%減の 108 億ドルとなり、貿
易赤字は 12.0%減の 56 億ドルとなった。
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○2015年12月の米新車販売台数は前年同月比 1.3%増の約 132 万台
1月5日、オートデータは、12月の米新車販売台数は 164 万 3,289 台(前年同月比 9.0%増)
と発表した。季節調整済みの年率換算台数は 1,734 万台となった。月間の販売台数としては金融
危機以降最多となった。12月の伸びは、低水準のガソリン価格や雇用の増加、低金利ローンな
ど、需要を取り巻く好環境が後押しした、というのが大方の見方だ。
また、2015年年間を通しての累計販売台数は 1,747 万 499 台(前年比 5.7%増)となり、これ
までの最高販売台数であった 2000 年の約 1,741 万台を上回り、過去最高の記録となった。
車種別では、小型トラックが前年同月比 19.0%増と伸び、乗用車は 3.2%減となった。SUV が
全体の伸びを牽引し、中でもクロスオーバーSUV(CUV)が増加台数の 7 割超を占めた。一方で、
大型・高級乗用車や小型乗用車が押し下げ要因となった。
主要メーカー別では、米系、日系の主要メーカーとも、高級車ブランドの小型トラックが好調
だった。一方で、不正ソフト問題で複数のモデルの販売を停止しているフォルクスワーゲン(VW)
は減少した。
各メーカーを販売台数順にみると、ゼネラルモーターズ(GM)は前年同月比 5.7%増の 29 万 230
台となった。高級車ブランドのキャデラックが好調で、中でも重厚感ある外観が人気の CUV「SRX」
が 43.5%増と大きく伸びた。
トヨタは 10.8%増の 23 万 8,350 台となり、メーカー別販売台数では 2 ヵ月連続の 2 位だった。
CUV「RAV4」や中型セダン「カムリ」といった主力モデルに加え、高級車ブランドのレクサスが好
調だった。レクサスの販売台数は過去最多の 4 万 1,380 台で、高級車ブランドでは BMW を上回り、
全米首位となった。
フォードは 8.3%増の 23 万 7,606 台だった。CUV「MKX」が 77.4%増と大幅に増加したほか、高
級車ブランドのリンカーンの伸びが目立った。
フィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)は 12.6%増の 21 万 7,527 台となった。前
年同月比は 69 ヵ月連続の増加だった。ジープブランドが引き続き伸びを牽引しており、12 月は
41.7%増と特に大きく伸びている。
ホンダは 9.9%増の 15 万 893 台となった。主要モデルは押しなべて好調だったものの、人気車
種の CUV「CR-V」は 3.2%減少した。
日産は 18.7%増の 13 万 9,300 台だった。日産ブランドでは、主力モデルの CUV「ローグ」が
78.0%増と大幅に伸びた。
現代は 1.5%減の 6 万 3,508 台となった。小型乗用車が落ち込んだことが影響した。同社は、
2016 年 7 月にジェネシスブランドの高級車「G90」を米国市場に投入すると発表している。
スバルは 12.7%増の 5 万 6,274 台で、販売台数は過去最多、前年同月比は 48 ヵ月連続増だっ
た。米国市場での根強い人気を裏付けている。
起亜は 19.0%増の 5 万 4,241 台と大幅に伸びた。小型乗用車「ソウル」や CUV「ソレント」な
どが伸びを押し上げた。
VW は 3.4%減の 5 万 2,015 台となった。不正ソフト搭載モデルの販売停止が影響したとみられ
る。司法省と環境保護庁(EPA)は 1 月 4 日、大気浄化法に違反したとして、違法行為の差し止め
と民事制裁金の支払いを求め、同社をミシガン州の東部連邦地裁に民事提訴した。ロイターによ
ると、制裁金は 480 億ドルに上るとみられている(1 月 6 日)。
そのほかでは、電気自動車メーカーのテスラモーターズの販売台数が前年同月比約 2 倍の 3,300
台となったことが注目された。
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