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バックナンバー(6號

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バックナンバー(6號
2014 年 5 月 号外(通巻 6 号)
『伊福部昭 語る』の編者
だと実感しました。
こから音楽そのものが聞こえてきた、という体験
小林 ある意味、これが一番の問題、課題ですね。
自分自身、本や雑誌に書かれた文章を読んで、そ
した。やはり日本映画の歴史の証言者のおひとり
小林 私が伊福部さんにインタビューを始めた
のは、伊福部さんが映画音楽の現場に復帰され
論家の先生の文章でも、音楽自体が直線的に聞こ
がほとんどないんです。先達の方や著名な音楽評
――伊福部昭は小林さんにとって、常に立ち返る
〝原点〟と思っていいですか?
たドキュメンタリー映画の『土俗の乱声』から
な ん で す。 あ れ が 一 九 九 一 年 で す か ら、 も う
ろう、と頁を作ってくれたんです。ありがたい
の編集者が、小林に伊福部さんを取材させてや
の 仕 事 で し た。 親 し く し て い た「 キ ネ マ 旬 報 」
映画を問わず。私が映画音楽に目覚めたのは、当
です。通常の映画マニアでした。外国映画、日本
も伊福部音楽ばかりを追ってきたわけでもないん
れらを観て育ってきた世代ですから。でも、なに
るべく避けようと。いや、やっているかもしれま
ひとつ心がけているのが、既成の楽曲を出して、
「~のような」とか「~みたいな」というのはな
何とも自分でも答えようがないと申しますか……。
ファ、とか並べたもの以外に。ですから、これは
え て き た、 と い う 記 憶 が ほ と ん ど な い。 ド レ ミ
お話でした。
時、映画館で観てきた映画を反芻する手立てが、
せんね(笑)。まあ、自分なりに何とか伝えよう
二 十 年 以 上 も 前 に な り ま す ね。「 キ ネ マ 旬 報 」
それから伊福部さんは東宝のゴジラ映画音楽
に戻ってこられて、平成「ゴジラ」シリーズを
数冊の映画雑誌、プログラム、ポスターぐらいし
小林 そうかもしれません。幼い頃から、伊福部
さんの映画音楽、主に 特撮怪獣映画ですが、そ
4本担当されました。その時も、これは東宝が
すが、これは読者の方々の評価に委ねる以外にな
た。そうして映画を回想して楽しむ。そんな日々
音し、プログラムを眺めながらよく聴いていまし
がよく流れていたんですよ。それをカセットに録
ですよね。読譜など音楽的なことはどこで学ばれ
――総譜(スコア)との参照など、大変なお仕事
いと思っています。
と考えて、真摯に対処しているつもりではありま
かなかった中、映画のサントラ盤が大きな存在感
作るムックの仕事でしたが、それぞれの映画で
ロング・インタビューをさせていただきました。 を放っていたからです。当時、ラジオで映画音楽
を送っていました。そうした体験が根っこにある
たのですか? 小林さんの経歴に記されていない
もので(笑)。
こういう仕事が土台になり、その後、 や東宝
くという仕事の過程を経て、私の初めての著書
ような気がします。なので、特定の作曲家、伊福
の
となった「伊福部昭の音楽」に至っていくわけ
部さんの音楽をいつも意識していたわけではな
などで過去の映画のお話を聞かせていただ
かったんです。でも、私が
らみなさん、頷かれると思いますが、こちらの
しました。伊福部さんにインタビューした方な
――「 伊 福 部 昭 綴 る 」 と「 伊 福 部 昭 語 る 」 小林 もちろん私にとっての憧れの存在、偉大
の編者・小林淳さんに伺います。淳はジュンじゃ な方ですから、いつも緊張感を抱きながら取材
になっている気は自分でもしています。ノスタル
できませんが、そうしたものが今現在の活動の源
今でも忘れられません。ですので、うまくは表現
り、血であるんだ、と。このときの血の昂ぶりは
感 し た わ け で す。 あ あ、 こ れ が 自 分 の 原 点 で あ
コ ー ド が 出 た。 こ れ を 買 っ て 聴 い た と き に、 実
というわけでもないとも思っているんです。音楽
て。特殊な才能を持った方々だけが音楽を語れる
ただ、こういう人間でも音楽を語ることは不可
能ではないとも思っているんです。伝わる、伝わ
となるんでしょうね。
独学となるでしょうし、いい方を換えれば、我流
通って、という経験はありません。あえていえば
学校にも行っていた。だからどこかの音楽学校に
大学もなぜか経済学部ですし(笑)。編集の専門
なく、アツシと お 読 み す る ん で す ね 。 ご 本 名 で
ジー、懐古趣味とも違うんですね、明らかに。こ
し、答えてくださるので、気は抜けなかったで
すね。真面目で誠実な方でした。伊福部さんは、 のへんは、話をしていると、他の伊福部研究者の
拙い質問にも真剣に耳を傾けてくださいます
方々も大なり小なり同じですね。ああ、あなたも
レ
小林 前のご質問にも関係するのですが、私はど
こかで音楽を勉強してきた人間ではありません。
です。そうした流れの中で、伊福部さんに今ま
く機会が増えていったんですね。
い と き に、 初 め て 伊 福 部 さ ん の 映 画 音 楽 の
代になるか、ならな
でやってこられた映画のお話を聞かせていただ
――ずっと接してこられて、伊福部さんの人と
すか? 小林秀雄と江藤淳(じゅん)にあやかっ
た筆名かな、と(笑)。
そんな流れで、というのが意外なほど多い。
でに担当してきた映画の話題、映画人のことや
すね。当たり前でもありますが。多くが、今ま
心を伺えますか?
――音楽という抽象的なものを、文字に移すご苦
あった、ということでしょうね。
ではないかな、と。ただ、もっともっと勉強しな
も、いってみれば受け手が存在して初めて成立す
なりを、教えて下さい。
小林 ええ、本名なんですよ。平凡な名前なの
で、得するとき と 損 す る と き が あ り ま す ね 。 ま
時にユーモラスな言い方をなさるんですよ。こ
当時の録音時の思い出などでした。これが、私
(聞き手・浦崎浩實)
くてはダメですね。これは自戒しております。
る大衆芸術でしょうから、こういうやり方もアリ
たでしょうから 、 よ か っ た ん で す が 。
にはすこぶるおもしろかったし、貴重な証言で
んなお時間がか か っ た で し ょ う ね 。
――「伊福部昭 語る」では、膨大な作品につ
いて、伊福部さ ん は 語 ら れ て い ま す が 、 た い へ
らない、正しい、正しくない、というのは別とし
あ、単純にいえ ば 目 立 ち た い と き は 損 、 逆 の と
れは文に起こしてもなかなか味は伝わりません
に聞 く
LD
きは得だ、 みたいな(笑)。小林秀 雄と江藤淳
TEL・03-3369-9218 FAX・03-3369-1436 www.wides-web.com
ね。やっぱりいろいろなところに話が飛ぶんで
〒160-0023 東京都新宿区西新宿 7-7-23-7 F にあやかったペ ン ネ ー ム だ っ た ら 文 才 に 恵 ま れ
小林 淳 さ ん
ワイズ出版
まあ、逆にいえば、そこまで受け手を虜にする
力、伊福部さんが作る音楽にはそれが間違いなく
LP
CD
SF
20
H O N TA M A
伊福部昭
綴る
伊福部昭・著/小林淳・編
代表作「ゴジラ」や「ビルマ
の 竪 琴 」、 さ ら に「 座 頭 市 」
シリーズなどで有名な映画音
楽の巨星・伊福部昭が語る現
代音楽論をここに集成! 伊福
部昭は音楽ばかりじゃない、
彼は名文筆家・文明批評家で
もあった。
生誕 100 年に向け、その相貌
に迫る。
伊福部昭、初のエッセイ集!
(A5 判並製/ 400 頁/定価 2750 +税)
(A5 判並製/ 176 頁/定価 1600 +税)
生誕 100 年・伊福部昭 & 小國英雄
没後50 年・川島雄三
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歿 映画人忌辰抄 浦崎浩實・著
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(四六判並製/ 286 頁/定価 2200 +税)
これまでに映画・美術・劇画・写真集等の本を 358 册出版、
映画7作品を製作。今後ともよろしくお願いいたします。
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