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シリーズ 京の100年企業を訪れる

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シリーズ 京の100年企業を訪れる
号
夏季特別企画 1
「厚生労働省の助成金についての解説」
夏季特別企画 2
シリーズ 京の100年企業を訪れる
「内藤印刷株式会社 内藤太郎社長に聴く」
∼質素・堅実なスタイルで地域密着∼
京都府印刷工 業 組 合
2009 Vol
. 607
目次
巻頭言/理事長 川宣治 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
夏季特別企画① 「厚生労働省の助成金についての解説」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
夏季特別企画② シリーズ 京の100年企業を訪れる
「内藤印刷株式会社 内藤太郎社長に聴く」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
平成21年度通常総会開催 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
京都府印刷業界功労者顕彰式・優良勤続従業員表彰式開催 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
―京都府開庁記念日記念式典―
「京の老舗表彰」を組合員企業4社が受賞される ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
平成21年度近畿地区印刷協議会定時総会開催 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
新入社員セミナー開催 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
全印工連・京印工組 共済制度等加入促進キャンペーン開催のご案内 ・・・・・ 32
「京すりもの」ロゴデザインコンペ 作品募集のご案内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
人材確保推進事業のご報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36
高度化技術訓練 5∼6月講座実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38
高度化技術訓練 平成21年度実施要領 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40
4月定例理事会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41
5月定例理事会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45
6月定例理事会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49
委員会だより/総務委員会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54
/経営委員会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54
会合だより/プリプレス部会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
/京都青年印刷人月曜会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58
統計だより/中小企業景況調査・京都府の概況より ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60
事務局からのお知らせ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62
印刷会館利用状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62
組合日誌 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63
組合員異動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
組合事務局異動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
訃報 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
巻頭言
京都府印刷工業組合理事長
川 宣治
さる5月29日の総会で平成20年度の事業報告・決算を承認していただき、ま
た1期2年の任期の後半に向け、平成21年の諸事業とその裏付けとなる予算を
審議し、決議してくださいまして有難うございます。
前期からの継続となります「京都ブランド」
「人材確保推進事業」を柱として、
各委員会が予定しています事業を本年度も精力的に実行いたしますので、従来
以上のご理解、ご協力をお願いいたします。
さて、景況は益々悪くなり、路線価も全国で総崩れとなっています。今後は
「自分の事は自分で守る。
政治は当てにしない。」という姿勢が必要かもしれませ
ん。景気を立ち直らせる新しい基幹産業が望まれていますが、印刷業はどの分
野にも対応できますから、
印刷もこの産業を柱に立ち直っていきたいものです。
印刷関連の最近のキーワードは
「ワンストップサービス」
「コラボレーション」
「感性価値」でありましょうか。いずれも生き残るのに必要充分条件の次の一
手であります。それにはまず、自社の得意分野を充分にてこ入れして開発し、
「出来ること」
「出来ないこと」
「求めること」「求められる事」をよく整理し、
余力を持って進めるべきでありましょう。
6月26日に奈良市で、近畿地区印刷協議会が開催されました。その中で、次
世代への取り組み課題として、
「環境」がパネラー2人によって取り上げられ
ました。詳しくは地区協報告の中でご賢察いただきたいのですが、厳しい質問
は、その利益性と社員の合意度でありました。パネラー2人の会社はまず合格
でありましょうが、私達もその本気度と経理的合理性を軸にしながら、進める
必要を感じました。
さて、私事を若干のべてみますと、
「老病生死」に年を重ねる度に会う事が
多くなり、その度毎に色々考えさせられています。6月に孫を得ましたが、
「じ
じ」と「孫」の関係を考えます時、その『「じじ」の存在意義は何か。』と問う
てしまいます。考えますに、
「じじ」の存在意義は「有形であれ無形であれ」
2●
●
伝承させる事、
「次ぎに伝える事」にあるのではと思いあたったのであります。
この「継承」を印刷組合で考えますとき、京印工では毎年、∼印刷感謝祭∼
「本木祭並びに組合員物故者を偲ぶ会」を開催して近代印刷の業祖、本木昌造
先生を顕彰すると同時に諸先達に感謝申してまいりました。諸先達が京都の印
刷を通して長年築き受け継いでこられた有形・無形の財産を、今、私達が享受
しているのであり、感謝祭・慰霊祭は先達諸先輩への感謝の儀式であり、今後
への継続の誓いの儀式でもあります。
この、営々として積み上げられてきました、京都の印刷の歴史の深さ、印刷
技術・文化を一般の方にもご理解していただき、また私達の「継承」を今後も
明確化する更なる一助として、今回「京都印刷発生の地」という碑を建てる事
にいたしました。京印工だけでなく、関連団体の諸組合様にもご賛同を得られ
れば嬉しく思います。
この碑の建設については京都市にもご協力をお願いしています。候補地も選
定いたしていますが、市の事情もあり、場所・時期は後日ご報告できると思い
ます。また、その場所の選定などの経緯も後日ご報告いたします。
この建設が「印刷への理解」を一般の方々に得ていただけると共に、京都の
印刷の活性化のシンボル・起爆剤となれば幸いです。どうか建立のご理解をお
願い申し上げます。
任期後半の一年を何とぞ宜しくお願い申し上げます。
3●
●
2009.7
2009 夏季特別企画①
2009 夏季特別企画①
「厚生労働省の助成金についての解説」
中小企業診断士・社会保険労務士 西河 豊氏
情報ネットワーク委員会では、京印季報夏季特別企画の一つ目のテーマとして、厚生労働省が運用して
いる 雇用安定のための各種助成金制度 を取り上げることにいたし、去る6月9日(火)に印刷会館で開
催した「不況期の雇用管理対策セミナー」の講師を務められた西河豊氏にご寄稿をお願いいたしました。
急激な景気変動による企業収益の悪化が懸念される中、
永続的な雇用の安定と維持を確保するためには、
公的な助成金の上手な活用も検討して良いのではないでしょうか。
本誌には、中小企業に適した各種助成金を受給するための要件や効果、留意点などについて、細部にわ
たって解説されていますので、各組合員企業の経営者の方はもちろん、労務管理責任者の方にも大いに参
考にしていただける内容になっています。是非ご一読していただき、今後の糧にしていただければ幸い
です。
③労働者名簿(入社日、生年月日、年齢がわかる
1.厚生労働省「助成金」の支援のス
キーム
こと。)
④出勤簿
中小企業に対する、国の公的支援制度を体系
⑤賃金台帳(天引きの経過等
化すると以下のとおりになります。
がわかること。)
⑥源泉徴収簿
⑦労使間で決め事をする場
公的支援制度 税制 (民間金融機関)
合の労使協定
資金調達 制度融資
補助金・助成金
3.助成金をめぐる状況
「補助金・助成金」
は中小企業支援の一環ですが、
・申請から支給までの期間が長い。先に出した人
通常、経済産業省の管轄が「補助金」であり、厚
件費の補助であるケースが多く、資金繰りのあ
生労働省の管轄が「助成金」といわれています。
てにしないこと。
今回は厚生労働省の助成金を解説します。
「助成
・支給先に無作為抽出調査がある。支給対象とな
金」は企業が労働保険
(雇用保険)
として納入して
った労働者の実在確認等がある。
いる掛金の運用として支給されますので、返済は
・不正が非常に多く、故意の場合は逮捕者(国の
不要です。
金を詐欺でだまし取ったことになる)も出てい
る。不正の内容は架空人材が多くなっています。
2.
「助成金」
申請前に整備しておくべ
きもの
・国の施策にあった助成金がスポット的に打ち出
されますので情報収集しましょう。
基本は労務管理をきっちりすることです。
4.まず、雇用保険適用事務所である
ことが必要
①労働契約書類
(雇用契約書、雇用条件通知書)
②就業規則
(10人以下の会社は就業規則と同等の
取り決めを証明した資料)
・事業所としての届け出はまず、所轄の労働基準
4●
●
「厚生労働省の助成金についての解説」
意図するところではないのですが、「整理解雇す
監督署→ハローワークです。
るより」一時休業して欲しいという意味があるよ
・基本的に雇用保険・労災保険はセットでしか加
うです。また在職時に能力向上の教育をして欲し
入できません。
いとの意図もあります。
・適用事業所になっても、保険料未納の場合は支
給されないことがあります。
6.申請窓口を覚えましょう
5.助成金の申請ができる事業所の類型
①京都労働局
〒604 0846 京都市中京区両替町通御池上ル金
具体的な話の前に、どのような考え方で助成金
吹町451 Tel:075 241 3211(代表)
が支給されるかを理解した方が、制度の全容をス
②公共職業安定所(ハローワーク)又は、事業所所
ムーズに理解できます。
①人を雇う
在の管轄の公共職業安定所です。
注)ご紹介する助成金についてはその時点での
基本的な助成金のコンセプトは、雇用保険のハ
窓口を①にお問い合わせください。
ローワークで休職している人が減って、被保険者
のホルダー数が増えるということです。したがっ
7.よく使われている助成金について
て、ほとんどの助成金は、事業所が雇用保険の適
用事業所となり、
(ほとんどのケースで)
雇用した
人が、雇用保険の被保険者とならないと支給され
キーワード.1 人を雇う
ません。
①トライアル雇用奨励金
②雇用する事業所が成長する
<受給できる事業主の要件>
「人を雇う」で書きましたように、被保険者の
・雇用保険の適用事業主であること。
ホルダー数が増えることが目的ですから、一方で
・対象労働者をトライアル雇用として原則3ヶ月
間雇い入れること。
リストラして、一方で雇うというのでは支給され
・トライアル雇用として雇い入れた後、2週間以
ないケースが多いようです。企業自体が成長して
いくことも大きなポイントです。例えば、
政策上、
内にトライアル雇用実施計画書を提出する
介護事業進出については多くの助成金の種類があ
こと。
・トライアル雇用を開始した日の前日から3年間
ります。また、成長する分野の業種であると認定
に当該対象労働者を雇用していないこと。
されると、助成金に繋がりやすくなります。これ
・資本、人事、取引等の状況からみて、対象労働
は、成長する業種で雇用を吸収して欲しいという
国の政策的意味合いがあります。
者を雇用していた事業主と密接な関係でない
③高齢者の雇用に資する
こと。
助成金は、通常では 雇われにくい 人を 雇
・トライアル雇用を開始した日の前日から起算し
われやすい ように誘導するという意味もありま
て6ヶ月前の日からトライアル雇用終了までの
す。そのひとつの事例が高齢者です。高齢者の場
間において、雇用する雇用保険被保険者を事業
合、「雇う」というケースと「定年延長
(再雇用)
」
主都合により解雇したことがないこと。
という2通りのケースで支給されます。
<助成金受給額>
④教育する、能力開発する
トライアル雇用を実施する労働者1人につき月
教育することに助成金を出すというのは、その
額40,000円が最大3ヶ月間支給されます。
<助成金の受給までの流れ>
企業が成長するためと、たとえその従業員がリス
(1)求人票にトライアル雇用に関する事項を記入
トラされても、技術・能力で生きていけるためと
して求人募集を行います。
いう2つの意味があります。
⑤雇用調整する
(2)トライアル雇用奨励金の対象となる労働者
は、中高年齢者(45歳以上65歳未満)、若年者
休業して支給するというのは、本来の助成金の
5●
●
2009.7
2009 夏季特別企画①
等
(30歳未満)
、母子家庭の母等、障害者、日
<助成金受給額>
雇労働者、ホームレス、季節労働者となり
1年間の賃金の90万円(大企業は50万円)を、45
ます。
万円づつ半年毎に2回の申請にて支給されます。
(3)トライアル雇用奨励金の支給申請はトライア
ル雇用が終了した翌日から起算して1ヶ月以
キーワード2.雇用する事業所が成長する
内です。
「トライアル雇用結果報告書」と「試
①中小企業基盤人材確保助成金
行雇用奨励金支給申請書」を提出しなければ
<受給できる事業主の要件>
なりません。
新分野進出等(創業・異業種進出)に伴い新たに
経営基盤の強化に資する労働者を雇い入れた場合
②若年者等正規雇用化特別奨励金
や、生産性を向上させるための基盤となる人材を
<受給できる事業主の要件>
新たに雇い入れた、又は大企業等から受け入れた
年長フリーター及び30歳代後半の「不安定就労
場合、これらの基盤人材の賃金相当額として一定
者」又は「採用内定を取り消しにされて就職先が
額を助成します。また、これらの基盤人材の雇い
未決定の学生等」を正規雇用する事業主が、一定
入れ・受入れに伴い、一般労働者を雇い入れる場
期間ごとに、引き続き正規雇用している場合に奨
合には、当該一般労働者の賃金相当額として、さ
励金が支給されます。
らに一定額を助成します。
<助成金受給額>
新分野進出等に伴う事業の用に供するための施
第一期50万
(6カ月経過後)
第二期25万
(1年
設、又は設備等の設置・整備に要する費用を250
6カ月経過後)
第三期25万
(2年6カ月経過後)
万円以上負担する事業主であることが条件です。
※中小企業の場合
「基盤人材」に該当する人とは、
③派遣労働者雇用安定化特別奨励金
●事務的・技術的な業務の企画立案、指導
<受給できる事業主の要件>
を行える専門的な知識技術を有する人
・6カ月を越えて、期間継続して労働者派遣を受
●部下を指揮・監督する業務に従事する係
け入れていた業務に、派遣労働者を無期又は有
長相当職以上の人
期又は6カ月以上の有期
(再更新に限る)
で直接
上記のいずれかで、年収350万円以上の条件
雇用する場合。
で採用する人です。
・労働者派遣の期間が終了する前に派遣労働者を
直接雇い入れる場合。
<助成金受給額>
<助成金受給額
(新分野進出等に係る基盤助成金)
>
・期間の定めなしの場合 第一期50万
(6カ月経
基盤人材の雇い入れ…140万円/人…半年毎2
過後)
第二期25万
(1年6カ月経過後)
第三
回の申請にて支給
期25万
(2年6カ月経過後)
※中小企業の場合
一般労働者の雇い入れ…30万円/人…半年毎2
・6カ月以上期間の定めのある契約 第一期30万
回の申請にて支給
(6カ月経過後)
第二期10万
(1年6カ月経過
後)
第三期10万
(2年6カ月経過後)
※中小
キーワード3.高齢者の雇用に資する
企業の場合
①高年齢雇用継続基本給付金
<受給できる被保険者の要件>
④特定求職者雇用開発助成金
この助成金のみ事業所でなく、「被保険者本人」
<受給できる事業主の要件>
に支給されます。
60歳以上の人をハローワーク経由で雇用保険被
(1)支給対象者(失業給付を受給しないで雇用を
保険者として雇った場合。
(その他、
「身体障害者」
継続する者)
など)
[1]60歳以上65歳未満の一般被保険者である
6●
●
「厚生労働省の助成金についての解説」
こと。
じ就業規則が適用されていること等によ
[2]
被保険者であった期間が通算して5年以上
り、一般被保険者と労働条件が同一である
あること。
(基本手当等を受給したことが
ことが客観的に判断できる者を除く)及び
ある場合は、受給後の期間に限ります。
)
日雇労働被保険者以外の雇用保険の被保険
[3]
賃金が60歳到達時に比べ75%未満に低下し
者をいう。以下同じ)が300人以下の事業主
たこと。
であること。
(2)支給対象期間
[2]65歳未満の定年を定めている事業主が、労
[1]
被保険者が60歳に達した月
(又は受給資格
働協約又は就業規則(以下「就業規則等」
を満たした月)
から65歳に達する月まで。
という)により、65歳以上への定年の引上
[2]
この期間の各月を暦月単位
(月の初日から
げ又は定年の定めの廃止を実施したこと。
末日まで)で支給対象月といい、2ヶ月ご
[3]65歳以上への定年の引上げ又は定年の定め
とに支給申請を行います。
の廃止を実施したことにより、退職するこ
<助成金受給額>
ととなる年齢が、平成9年4月1日以降に
次の算式により算定された低下率に基づき支給
おいて就業規則等により定められていた定
額が決定されます。高年齢雇用継続給付金、及び
年年齢(以下「旧定年」という)を超えるも
高年齢再就職給付金の支給額は、各支給対象月ご
のであること。
とに次の計算式より決定されます。
[4]支給申請日の前日において、当該事業主に
(1)支給対象月に支払われた賃金の額が「賃金月
1年以上継続して雇用されている60歳以上
額」の61%未満である場合
65歳未満の常用被保険者が、1人以上いる
支給額=支給対象月に支払われた賃金の額の
こと。
15%
(2)次の[1]から[4]のいずれにも該当する法人
(2)支給対象月に支払われた賃金の額が「賃金月
等(法人、法人ではない社団若しくは財団又
額」の61%以上75%未満である場合
は個人をいう。以下同じ)を設立(法人にあっ
支給額=−
(183/280)
×支給対象月の賃金額
ては設立登記、それ以外にあっては事業開始
+
(137.25/280)
×「賃金月額」
をいう。以下同じ)した事業主であること。
注意:高年齢者を雇用する場合、在職老齢年金
[1]雇用保険の適用事業主であり、実施日にお
との関係もありますので賃金の配慮をす
いて常用被保険者が300人以下の事業主で
ることが必要です。
あること。
[2]65歳未満の定年を定めている事業主が、法
②定年引上げ等奨励金
(70歳まで働ける企業奨励
人等の設立日の翌日から起算して1年以内
金)
に、就業規則等により、65歳以上への定年
<受給できる事業主の要件>
の引上げ又は定年の定めの廃止(法人等の
65歳以上への定年の引上げ又は定年の定めの廃
設立時に65歳以上の定年を定めている場合
止を実施した中小企業事業主に対して助成し
及び定年の定めをしていない場合を含む。
ます。
以下同じ)を実施したこと。
(1)次の
[1]
から
[4]
のいずれにも該当する事業
[3]支給申請日の前日において、当該事業主に
主であること。
雇用される60歳以上65歳未満の常用被保険
[1]
雇用保険の適用事業主であり、65歳以上へ
者(当該事業主に1年以上雇用されている
の定年の引上げ又は定年の定めの廃止を実
必要はない。以下同じ)の数が3人以上で
施した日
(以下「実施日」という)
において、
あり、かつ、当該事業主に雇用される常用
常用被保険者
(短期雇用特例被保険者
(当該
被保険者全体に占める割合が1/4以上で
事業主に1年以上雇用されている短期雇用
あること。
特例被保険者であって、一般被保険者と同
[4]給申請日の前日において、当該事業主に雇
7●
●
2009.7
2009 夏季特別企画①
用される常用被保険者全体に占める55歳以
(2)労働組合等の意見を聴いて[事業内職業能力
上65歳未満の常用被保険者の割合が1/2
開発計画]及びこれに基く[年間職業能力開
以上であること。
発計画]を作成している事業主であって、当
※次の
[1]
又は
[2]
のいずれかに該当する事業主
該計画の内容をその雇用する労働者に対して
は、上乗せ支給されます。
周知しているものであること。
[1]
70歳以上への定年の引上げ又は定年の定め
(3)職業能力開発推進者を選任し、都道府県職業
の廃止を実施したことにより、
(1)
の
[1]
能力開発協会に選任届を提出していること。
に該当する事業主であること。
(4)労働保険料を、過去2年間を超えて滞納して
[2]
法人等の設立日の翌日から起算して1年以
いないこと。
内に、70歳以上への定年の引上げ又は定年
(5)過去3年間に雇用保険二事業に係るいずれの
の定めの廃止を実施したこと
(法人等の設
助成金の不正受給を行ったことがないこと。
立時に70歳以上の定年を定めている場合及
(6)前記(1)∼(5)のすべての助成金の支給要件
び定年の定めをしていない場合を含む)に
に該当し、あらかじめ独立行政法人 雇用・
より
(1)の
[2]に該当する事業主である
能力開発機構 都道府県センター統括所長の
こと。
受給資格認定を受けていること。
※訓練等支援給付金(対象職業訓練)の場合の支給
支給される額
(一回限り)
要件
(1)年間職業能力開発計画に基づき、その雇用す
支 給 額
企業規模
る労働者(雇用保険の被保険者に限る。以下、
70歳以上への定年
65歳以上への 引上げ又は定年の
定年引上げ
定めの廃止
(上乗せ額を含む)
1人∼ 9人
40
80
10人∼ 99人
60
120
100人∼300人
80
160
同じ)に対して目標が明確であり、職業に必
要な専門的な知識、もしくは技能を修得させ
るための職業訓練、配置転換等により新たな
職務に就かせるために必要な職業訓練、又は
定年退職後の再就職の円滑化等のために必要
な訓練を受けさせること。(対象:中小企業
(単位:万円)
のみ)
(2)職業訓練1コース当たり、実訓練時間が延べ
キーワード4.教育する、能力開発する
10時間以上のものが対象です。(OJTは対象
①訓練等支援給付金
外)
<受給できる事業主の要件>
<助成金の受給額>
企業内における労働者のキ
(1)事業内で自ら行う場合は、外部講師の謝金、
ャリア形成の効果的な促進の
施設の借り上げ料及び教材費等の運営費を。
ため、その雇用する労働者を
事業外の教育訓練機関に委託して行う場合は
対象として、職業能力開発促
入学金及び受講料の1/2に相当する額。1
進法に基づく事業内職業能力
人1コース5万円(総訓練時間300時間未満)、
開発計画を作成し、目標が明確化された職業訓練
10万 円( 総 訓 練 時 間300時 間 以 上600時 間 未
の実施、職業能力評価の機会の確保及び労働者が
満)、20万円(総訓練時間600時間以上)を限度
自発的に行う職業能力開発の支援を行う事業主に
として助成されます。
対して助成する制度です。
(2)職業訓練期間中の従業員の賃金(時間単位)の
<支給対象事業主>
1/2に相当する額(1人当たり1,200時間を
助成金を受給するためには、次のいずれにも該
限度 ただし、認定職業訓練は制限なし)が
当する事業主であることが必要です。
助成されます。
(1)雇用保険の適用事業の事業主であること。
8●
●
「厚生労働省の助成金についての解説」
キーワード.5 雇用調整する
8.助成金申請の際の中小企業の定義
①中小企業緊急雇用安定助成金
<受給できる事業主の要件>
雇用調整助成金制度を見直し、中小企業緊急雇
上記中に、中小企業という表現のある箇所の分
用安定助成金制度を創設されました。
(平成20年
類の見方は以下のとおりです。
12月から当面の間の措置となります。
)
中小企業の範囲
(これ以上の規模が大企業)
景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の
理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた中
業 種
小企業事業主が、その雇用する労働者を一時的に
範 囲
資本又は出資の額が 5,000万
小売業
円以下、又は常時雇用する労
(飲食店を含む)
働者数が 50人以下
休業、教育訓練又は出向をさせた場合に、休業、
教育訓練又は出向に係る手当若しくは賃金等の一
部が助成されます。
※主な受給の要件
サービス業
資本又は出資の額が 5,000万
円以下、又は常時雇用する労
働者数が 100人以下
卸売業
資本又は出資の額が 1億円
以下、又は常時雇用する労働
者数が 100人以下
(1)
[ 1]最近3ヶ月の売上高又は生産量等
がその直前3ヶ月又は前年同期比
で減少していること。
[2]
前期決算等の経常利益が赤字であ
資本又は出資の額が 3億円
その他の業種
以下、又は常時雇用する労働
(製造業はここ)
者数が 300人以下
ること。
(生産量が5%以上減少し
ている場合は不要)
(2)従業員の全一日の休業又は事業所全員一斉の
短時間休業を行うこと。
(平成21年2月6日
9.まとめに変えて
から当面の期間にあっては、当該事業所にお
ける対象被保険者等毎に1時間以上行われる
休業
(特例短時間休業)
についても助成の対象
私の経験では、先に助成金ありきで申請した場
となります。
)
合、支給にまで至らないケースが多くありました。
それは、採用した従業員へのアフターフオロー不
(3)3ヶ月以上1年以内の出向を行うこと。
<助成金受給額>
足ですぐにやめてしまう等の要因がありました。
・休業等の場合 休業手当相当額の4/5
(上限
あくまで雇用を正しくとらえた上で、助成金のフ
レームワークを正しく理解し申請することが必要
あり)
です。
※従業員の解雇等を行わない事業主に対しては
また、昨今の世界的な不況で中小企業緊急雇用
助成率を上乗せしています。
安定助成金(雇用調整助成金)を申請する企業が増
支給限度日数:3年間で300日
(最初の1年間で
えてきました。これも、一時休業中に会社をどの
200日分まで)
ような方向に持っていくかの、どのように教育し
※教育訓練を行う場合は上記の金額に1人1日
ていくかの次の戦略への展開が必要であると思わ
6,000円を加算します。
れます。
・出向の場合 出向元事業主の負担額
(出向元事
(文責・編集委員会)
業主の負担額が、出向前の通常賃金の1/2を
超える時は1/2が限度となります)
の4/5
※但し、1人1日当たり雇用保険基本手当日額
の最高額が限度となります。
9●
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2009.7
2009 夏季特別企画②
2009 夏季特別企画②
シリーズ 京の100年企業を訪れる
「内藤印刷株式会社 内藤太郎社長に聴く」
∼質素・堅実なスタイルで地域密着∼
100年を超えて経営を続けておられる企業様を訪問し、その歴史と魅力をシリーズでご紹介する企画の第
二弾として、
今回は、
亀岡で地域密着型の事業展開をされている内藤印刷様を取材させていただきました。
一見してとても印刷会社とは思えない外観。町家を改造した社屋には、歴史を大切にし、地域のお客様
とのコミュニケーションを重視する企業姿勢が感じられます。
丹波地方の教科書づくりで明治5年に創業。
その後時代と地域のニーズに対応して事業内容も変遷する中で、大切にしてこられたものは、質素に、堅
実に、真面目に生活するということ。それらが印刷文化を次の世代に引き継いでいく力の源泉になってい
るようです。
最近では、亀岡の商業、観光の活性化にも力を入れておられ、印刷にとどまらず、カード事業や情報誌
の発行など、地域のお客様との関係をとても大切にされている経営姿勢は、業態変革に取り組んでおられ
る多くの組合員の皆様にも参考になるのではないでしょうか。是非ご一読下さい。
ります。独立することが流行っていた時代があり、
印刷全般、そしてカード事業を展開
メーカーなどが盛んに勧めていました。「軒先貸
して母屋潰れる」と昔から言いますが、そうなっ
てはダメだという危機意識を持って頑張ってきま
した。ただ、決して親子でけんかしているという
ような状況ではありません。競合していますが、
皆顔見知りばかりなので、性格もよくわかってい
ます。ですから、商売がやりにくいということは
ありません。独立当初の頃は、下請けをやっても
らうということもあったのですが、これだけ小さ
な市場ですので、最近はやはりバッティングもし
ます。今の時代はどこも競合は避けられないので
はないでしょうか。
内藤印刷㈱社長 内藤太郎氏
亀岡には、弊社のような古い印刷会社は他にな
いので、それも一つの特徴になるのですが、それ
現在の内藤印刷は、商業物を含めて印刷品目全
よりも「スピード」を前面に出した営業展開をし
般を取り扱っています。情報誌の発行等、出版の
ています。私の口癖でもあるのですが、「とにか
分野にも進出しています。そして、この亀岡にし
く一回よその印刷屋さんへ行ってもらって、それ
っかり根ざした地域密着型の事業を展開していま
でもできなかったらうちにきてください」とよく
す。明治5年の創業以来、一歩も亀岡から出てい
言います。「引き受けたものはなんとか仕上げる」
ません。
が、当社の一番の特徴です。また、「スピード」
亀岡市内には印刷会社が12社ほどありますが、
と「的確な納期」は、我々の業種には当然のこと
このうち、当社から独立していった会社が4社あ
なので、商売の柱にしています。
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シリーズ 京の100年企業を訪れる「内藤印刷株式会社 内藤太郎社長に聴く」∼質素・堅実なスタイルで地域密着∼
一方で、営業活動という面ではなかなかうまく
対応できませんでした。当社の従業員は、皆性格
がおとなしいので、電話を受けては「ハイ、伺い
ます」という受身の姿勢で商売をずっとしてきま
した。専門の営業職もいるのですが、ほとんど配
達に追われるばかりでした。しかし、
最近になり、
心 得
ようやく営業展開もできるようになってきまし
た。緊迫したこの経済状況の中で、やっと気がつ
いてきてくれたのかなと思っています。
社内では、月に1回、しっかりとミーティング
積極的な営業展開ができるようになったのは、
をして、私の信条を伝えています。生涯雇用では
関連企業のマークスという会社で昨年からポイン
ないので、例えば転職して「どこにいたのか」と
トカード事業を手がけるようになってからです。
聞かれて、「内藤印刷にいました」と言えば、そ
亀岡という狭い地域はキャパシティが小さいの
の会社の社長が「よし、内藤印刷にいたのだった
で、開業当時はずいぶん心配しましたが、一生懸
ら安心だ」と言わせるほどの意欲を持って従事し
命取り組み続けている
て欲しいといつも言っています。
と、次第に若手経営者
雇用体制が厳しい中、どこの地域、どこの会社
の方々の意欲がどんど
に行っても社会で責任を持てる人間であって欲し
ん感じられるようにな
い。従業員には礼儀が第一だと、メンタルなこと
り、手応えが出てきま
だけを言っています。礼儀を大事にしていたら、
した。おかげさまで、
必ずお客様にも、社会的にも認められる。まずは
このカード事業も順調
人間形成を大事にして欲しい。それはテクニック
に進んでおり、当社の
大きな柱になってきま
した。
ではないと思うのです。
バリューカード加盟店紹介冊子
「バリューブック」
亀岡に突出した大きな会社がなかったからなの
かもしれませんが、当社には、私の親の代から「商
当社は月2回情報誌を発行しているのですが、
売はそんなに大きくしなくて良い」という考え方
カード事業を行なうようになってから、スポンサ
があります。顧客数、つまりお客様をどれだけ集
ーの開拓と同時にカード事業の勧誘を行なえるよ
められるか、いかに多くの方に来ていただけるか
うになりました。相乗効果により、印刷の営業も
を重視していました。浅い取引でも良いのです。
展開しやすくなりました。当社のカード事業は、
子供の頃から耳にしている言葉なので、私もそれ
加盟店舗が全国8千店という広いサービスエリア
が一番正しいという気持ちで営業展開をしてきま
を持っているので、初めて取り組まれる商業者の
した。
方も熱心に聞いてくれます。カード事業をしてい
もちろん、商売を始めた頃からそうは思ってい
ることで、営業活動も活発になり、印刷部門とも
た訳ではありません。成長期の時代には、「お客
うまく連携が取れ出しました。
様の数が多くても、忙しく、仕事量が増えるだけ。
Aランクのお客様があればとても楽なので、C、
大切な礼儀、そしてお客様との関係
Dランクのお客様は切ってしまえる」と思ってい
ました。しかし、時代の流れの中で長年経験して
弊社の心得
(写真参照)
は、現在の社屋に移転し
いると、顧客層が多いのは強みであるということ
てきて2年ほどたった時に作りました。私は「陰
がようやくわかってきました。
徳善事」という言葉が好きで、その考えを従業員
「心の時代」と言われて久しいですが、私が40
に理解してもらい、働く指針にしてもらうために
年間経営に携わった中で感じているのは、商売人
書き留めたものです。当社に代々伝わってきた考
には、質素に、堅実に、真面目に生活するという
え方をまとめたものです。
気持ちが大切だということです。自分の身の丈を
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しっかりと測れているか、という思いを持ってい
なければいけません。他社がどんどん販路を伸ば
していくのを見たときは、うらやましいと思った
こともありました。しかし、内藤は内藤のスタイ
ルで行くという堅実なスタイルを持っていたから
こそ、商売が長持ちするのだと思います。今もそ
の気持ちは変わりません。
明治5年創業、丹波地方の教科書から
「むかしむかし亀岡で発刊された教科書」リスト
(部分写真)
上記は、前述の学校教育関係書籍の研究をされ
ている方が作られた「むかしむかし亀岡で発刊さ
れた教科書」というリストですが、発行所、発行
者として、半月堂、内藤半七、内藤半月堂という
系 図
名前が出てきます。例えば、丹波の地理について
内藤印刷の創業は、明治5年という記録がある
が、奥付には内藤半月堂、内藤半七と記してあり
のですが、実を言うと、あまり昔のことはわかり
ます。当社の版権で発行していたものです。他に
ません。私の親が早くに亡くなったので、会社の
も歴史、読み書き、理科、習字、そろばんなど、
こともあまり聞かされていなかったのです。地域
様々なものがあります。これが内藤印刷の創業時
の方の代々の言い伝えや、この亀岡に郷土古文書
の印刷物です。
説明する「丹波地誌略」という教科書があります
を研究されている方がおられて、
「おまえのとこ
ろは古いのだぞ」と教えていただきました。
国定教科書というものが発行になる以前、各地
方で教育用の書籍を作っていたのですが、当社が
丹波の学校教育の版権を持っていたようです。あ
る教職につかれていた方が、学校教育関係の昔の
書籍を集めておられて、その中から提供いただい
教科書類
た資料によってわかったことです。当社が教科書
を作り、地域の各書籍屋さんで売っていたよう
です。
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シリーズ 京の100年企業を訪れる「内藤印刷株式会社 内藤太郎社長に聴く」∼質素・堅実なスタイルで地域密着∼
この頃はまだ木版の時代ですが、読んでみると
刷屋を継ぐとは思っておらず、商売のことは全然
なかなか凝っています。文字だけでなく、図版な
聞いていませんでした。
どもいろいろ工夫されています。京都は昔から絵
教科書を取り扱わなくなってからは、学校関係、
師が多く、伊藤若沖や幸野楳嶺など、私も大好き
農業協同組合、役場関係の仕事をしていたようで
な作家がいました。その関係で、京都では特に木
す。5、6名の家内作業でした。その頃は、針金
版刷りがいち早く教科書にも使われたのではない
というものがなかったので、紙縒(こより)を作っ
かと思っています。
て綴じていました。特に役場関係のものは全て紙
創業の半七という人は、技術者ではなかったよ
縒で綴じて、上からクロスを巻いていました。そ
うです。たぶん経営者でしょう。京都にいた半七
ういう仕事をよく手伝っていた記憶があります。
のいとこの彦一という人が彫り師を知っていて、
藤吉から種次郎にかけての時代は、内藤印刷も
そのネットワークを活用していたと思われます。
かなり隆盛だったようです。従業員も6名ほどい
もちろん木版の心得もあったのでしょうが、当時
ましたし、子供心にとても賑やかだった印象が強
の亀岡では、このようなものは容易に作れなかっ
いです。当時、表が工場で、裏が事務所、2階が
たと思います。
自宅でした。子供の頃の私は印刷機の音がしない
お寺などの資料を見ると、当社の元祖は木綿屋
と寝られませんでした。機械が静かになると目が
半七という木綿屋だったようです。前掛けや丁稚
覚めたのをハッキリ覚えています。みんなが働い
の鞄などを扱っていました。それが、三代目半七
ているのが心地良かったのでしょう。温泉や海水
の時に印刷屋へ180度転換したというわけです。
浴にもよく連れて行ってもらい、今から思えば充
印刷屋というより、どちらかというと出版社に近
実した生活をさせてもらっていたと思います。
いのですが、実質的には、これが今の内藤印刷の
この頃、亀岡にも5、6社くらいの印刷屋さん
創業といえます。
がありましたが、それでも充分な市場だったと思
この頃の半月堂という屋号を、今また使わせて
います。当社以外の印刷屋さんは、ご主人だけで
もらっています。この屋号は、もともと初代の内
営んでおられるような規模だったので、半分畑仕
藤半七という名前から取ったようですが、この近
事をして、半分印刷をしてというような状況で
所でも昔のことを知っている方はほとんどいらっ
した。
しゃいません。お客様は「あんたのところは古い
その後、一大転換の時代が来ます。戦争中、供
なあ」と言って下さるのですが、半月堂という屋
出というのが始まりました。昭和15∼16年の頃で
号まではご存知ないようです。なんとか昔のイメ
すが、企業統制が行なわれ、当社だけが残ること
ージを大事にしたいと思い、20年ほど前、私の代
ができました。当社以外の印刷屋さんは、設備な
になってからこの半月堂を復活させたのです。
ど全て金属類を供出して、事業を止めてしまわれ
ました。
隆盛の時代、そして運良く生き残りへ
当社を印刷の形態で大きく分けると、初代の半
七の時代は木版、二代目の藤吉の時代からは活字
と思われます。しかし、創業の半七の時代につい
ては、前述の通り、現物が少し残っているのです
が、その後の藤吉の時代のものは何もありません
昔の活字、道具類
ので、詳しいことはわかりません。
藤吉は私の祖父ですが、私が生まれる前に亡く
なっています。父親に少し話を聞いたことはあり
ますが、小さい頃のことなので、詳しくは覚えて
いません。また、私は四男だったので、夢にも印
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が多かったのです。当時は、日吉町、八木、園部、
無からの再出発、そしてまた一大転換期
高槻など、お客様は広範囲にありました。しかし、
家族から「そんな無理せんとき」と反対され、こ
その後、
3代目である父が昭和25年に亡くなり、
つこつ長く続けたいという思いもあったので、結
兄が引き継いだ時代には、経営的にかなりの下り
局亀岡から出ることはありませんでした。
坂になっていました。私の兄は商売にあまり熱心
この頃、地元の商業者は皆、元気でした。他の
ではなく、また42才の若さで亡くなってしまった
地域からの進出も無く、亀岡は市場が結構大きか
ので、途中から手伝っていた私が4代目というこ
ったのです。亀岡をしっかり固めたら大丈夫とい
とになっています。引き継いだとき、私は印刷の
う思いがありました。しかし、いいものは京都で
ことが全くわからなく、端的に言えば屋号だけを
刷るという意識を持ったお客様が次第に増え出し
継いだような状態でした。
たので、京都からの同業者の侵入を防ぎ、また仕
そして、事業を引き継ぎ、さあどうしようかと
事の流出を防ぐにはどうしたらいいのかを考え始
考えていたときが、ちょうど活版印刷から軽オフ
めました。そのためには、やはりシャープな印刷、
印刷への転換期の時代でした。その時、メーカー
京都に負けない印刷をすることが必要だと思いま
が盛んに薦めてくる軽オフ印刷に対して、
「のる
した。従業員にもずっとそう言ってきました。
かそるか、先行きも全くわからないけれど、印刷
恵まれてタイミング良く次世代へ、
そして新しい時代へ
業界の転換になるなら先手必勝だ」と考えたので
す。口丹波で唯一のオフセット印刷を目指そうと
思いました。高度成長期、昭和47年頃の一代転換
振り返ってみると、結果論かもしれませんが、
期でした。
事業の波はそれほど大きくなかったと思います。
その頃は相談する人も無かったので、私1人で
時代に対応したというほど大層なことではなく、
決めました。性格上、受注生産に満足できなかっ
運が良かったのです。
たからかもしれません。お客様をリードしたい、
私は経営者としての教育は受けておらず、印刷
もっと自分でできることをやりたい、お客様に新
業界内でのアドバイスなども全く受けていないの
しいものを見せたい、
ものごとを完成させたいと、
で、視野がとても狭かったと思います。すべて自
そういう思いから一念発起しました。今から考え
分の頭の中で描いてきましたので、非常に苦労し
ると、よくそこまでできたものだと思います。次
た部分もあります。情報が全くなく、仲間もあり
の世代に渡す間に、自分でも何か一つ残したいと
ませんでした。
いう思いがあったからかもしれません。
そんな中、息子が手伝ってくれるようになった
そうやって始めた仕事に対して、
お客様から
「き
のが、今から12年くらい前です。ちょうどデジタ
れいね!」
「どうやって刷ったの?」と感心して
ル化が進み始めた頃で、本当に助かりました。う
いただき、感動していただきました。それまでの
まく次世代にバトンタッチできたかなと思ってい
活版印刷は、紙の裏がベコベコしていましたが、
ます。親族にかかわらず、当社はとても良い人材
新しい平版印刷は全く平らなのです。シャープさ
に恵まれています。
がものすごく受けました。そのとき、発想を転換
息子には、この内藤印刷が130年以上も続いて
すると印刷屋はまだまだ伸びると自信を持ちま
いるのは奇跡だとよく言われます。経済や業界の
した。
転換期、また最近のデジタル化の波もうまく対応
一方で、亀岡だけではそれほど大きくはなれな
できたというのは、すごく運が良かったと感じて
いという思いもありました。創業から今までずっ
います。その一因として、自分たちの力量以上の
と、この亀岡の地で営みを続けていますが、高度
ことをしなかったからではないかと思ってい
成長期の頃は、園部へ行きたい、出張所を出した
ます。
い、営業所を出したいと、しきりに思った時期が
母からよく「人には持ち分がある。あまり無理
ありました。親の出身地だった園部にもお得意先
しないで」と言われました。自分の背丈の範囲で
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シリーズ 京の100年企業を訪れる「内藤印刷株式会社 内藤太郎社長に聴く」∼質素・堅実なスタイルで地域密着∼
頑張って、無理はしないという、母親として、ま
っています。
た女性としての気持ちが感じられました。彼女は
亀岡には外から商売にこられる方が多いです。
どん底で苦労した時代がありますので、そういう
そして、新しく事業を始められる方が多いようで
感覚はよく理解できます。私は母親の血を受け継
す。新しい方は、これまでの亀岡のスタイルとは
いでいると思います。
ちょっと違った商売をされます。当社としてはや
手前味噌ですが、永く続いたもう一つの理由と
りにくい面もありますが、こちらも変えていく必
して、企業よりも人を売る、自分を売るというこ
要があるのでしょう。絶えず、変化しないといけ
とを心掛けてきたからではないかと思っていま
ません。
す。若いときからずっとそういう考えできました
お店はどんどん入れ替わっています。今は一代
し、それが今の経営理念にも表せていると思い
で終わるお店や企業も多く、私の時代のお客様は
ます。
ほとんどありません。会社は長男と三男が継いで
創業の半七氏はもとより、その後の経営者にも
くれていますが、お客様も見事に転換しました。
そういう気持ちがあったのではないかと思いま
新しいお客様の社名は横文字ばっかりです。(笑)
す。私で4代目になりますので、各経営者がおよ
商売のやり易さ、難しさという点では、他の地
そ30年ずつ担ってきました。その時、その時代で
域とそう違いはないと思います。有難いことに、
面白いこと、新しいことに取り組んできました。
このあたりでは当社の存在を多くの皆様に知って
何れの時代においても、お客様に認められてきた
いただいています。しかし、京都でも同じでしょ
と自負しています。
うが、例えば物産を扱っているお店などは、ネー
歴史とは不思議なもので、お寺などで「先祖が
ムバリューが前面に押し出され、お客様も安心し
○○を寄付した」という話を聞くと、
「もっと気
て買い物できるというところがありますが、印刷
張れよ、頑張れよ」という自分への励みのメッセ
では、古いというのはあまり得になりません。古
ージに聞こえてくるのです。これが先祖代々続い
いというだけでは、お客様のメリットをアピール
てきた歴史の重みだと自覚しています。かなわぬ
できないからです。昔からやっているから安心、
ことですが、昔の人の言葉を聞いてみたい、先祖
というキャリアを買っていただけると有難いので
の人の声を聞きたいとしきりに思います。
すが。
亀岡の印刷業界の展望を述べますと、はっきり
これまでも、そしてこれからも
亀岡という町で
言って先行きが明るいとは言えません。今日の景
況下では止むを得ないのでしょうが、今は地元商
私たち印刷屋は二次産業です。最前線で商売は
業者の方々に少し元気がありません。しかし、こ
できません。やはり、地元の小売業者さんに一念
こで生まれて、ここで石にかじりついても印刷業
発起していただいて、何とか商店街の再生、専門
をやっていくという気持ちに変わりはないので、
店街の活性化をして欲しいと願っています。
次の展開をどうするかということを真剣に考えて
亀岡の人口はおよそ9万4千人です。住宅地と
います。カード事業に力を注いでいる要因はそこ
しては安定していますが、産業面ではなかなか発
にあります。カード事業をはじめ、看板、情報誌
展していきません。もう少し工業関係の企業が増
などオールマイティに何でも取り組もうと考えて
えてくると良いのですが、八木や園部の方が土地
います。
やアクセスの面で有利ですし、行政の力の入れよ
次の世代へ引き継いでいく内藤印刷の心
うも違うようです。
観光には力を入れているようですが、京都に比
べるとまだまだ知名度がありません。しかし、縁
私が印刷業を継いで40年になりますが、「継ぐ」
あってこの度、亀岡市観光協会の会長職に就任い
と言うよりも、「お預かり」して、その間を維持
たしましたので、今後観光には、これまで以上に
しているという捉え方をしています。維持しなが
力を入れて取り組んでいかなければならないと思
ら、何とか継いだ時点から少しでも右肩上がりな
●
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2009 夏季特別企画②
ら、お預かりした者としての使命は達成したかな
カード事業は手数料ビジネスなので、非常に安定
という気持ちです。
先祖からお預かりしたものを、
しています。それが印刷事業とうまく相乗効果を
少しでも上向きな状態で次の世代にバトンタッチ
発揮できればいいと思っています。このように、
したいと思っています。
緩やかに前進しているのがいいのかなと思いま
す。印刷分野が5割、カード事業が5割程度にな
れば、非常に明るい展望が見えてくると思ってい
ます。
基本的には、事業は「細く長く」が理想です。
桜のようにぱっと咲いたときはいいけれど、続か
ないと何にもなりませんから。
「印刷屋らしくない印刷屋」を目指して
印刷なんてそのうち無くなるという人もいます
看 板
が、紙の文化も当然必要なものなので、まったく
内藤印刷もようやく亀岡での地盤ができてきま
無になるということはないでしょう。紙への様々
したが、お客様のニーズは年々高いものになって
な表現力、紙面を通じて何かを伝えるという印刷
います。物流社会の進展の中で、いいものが次々
の持つ魅力を、これからも大切にしたいと思って
と生み出されてきます。それに対処するには、企
います。商業印刷的なものは、やはりインターネ
画力を充実させ、プレゼンテーション能力を上げ
ットによってかなり衰退するかもしれませんが、
ていかなければなりませんので、企画やデザイン
印刷文化はどんなことがあっても消えることはな
のできる人にも入ってきてもらっています。
いと思います。これは確信しています。
この数年はパンフレットなどの注文も増え、お
客様からデザインについても高い評価を得ていま
す。顧客満足度も上がってきていると思ってい
ます。
ただ、先ほども述べましたが、当社の社員は温
厚で仕事も良くやってくれるのですが、いい人過
ぎる一面があるのです。
「社長、
これはこうですよ」
と、たまには向かってきて欲しいと思うことがあ
ります。時には ガツン と とんがる ことも
大事なのです。
内藤印刷の看板にぶら下がっているのではな
おふれ
く、もっとチャレンジをしていって欲しいと思っ
ています。我々の仕事は、お客様とダイレクトに
上記のコピーは、行政の方から提供いただいた
接することができるので、内藤印刷ではなく、自
京都府のおふれ書きです。出版人のところに内藤
分を評価してもらうようにといつも言っていま
半七の名前がありますが、創業者はこういうもの
す。これが結果として、事業継続の力となるの
も作っていたようです。木版で作ったものは、や
です。
はり味があります。我々もこういう面白いものも
おかげさまで、企画やデジタル制作についての
どんどん作っていきたいと思っています。印刷で
事業も安定してきました。若い子も力を付けてき
は「教育・文化」「経済」の二本柱を大事にした
ています。平行してカード事業にも、相当のウェ
いと考えています。
イトを置いて取り組んで行こうと考えています。
私は「印刷屋らしくない印刷屋」をずっと目指
16●
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シリーズ 京の100年企業を訪れる「内藤印刷株式会社 内藤太郎社長に聴く」∼質素・堅実なスタイルで地域密着∼
してきましたので、
いろいろこだわりがあります。
ます。会社のショーウィンドウのようにデザイン
例えば、この社屋もそうです。明治19年に建てら
したのがヒットしました。
れた町家を改造したものです。一見して印刷屋に
これからも、もっともっと「らしくない印刷屋」
は見えないでしょう。お客様には何かなと思って
を続けていこうと思います。そして、お客様との
もらいたい。何をやってくれるのだろうと期待し
コミュニケーションもどんどん取りたいと思って
て欲しい。文化財としても価値があるので、祭り
います。
の時などはお客様に開放しています。外観からし
来年は光秀の天守閣築城4百年です。亀岡がこ
て、まさに印刷屋らしくないものを目指してい
れまで以上に元気になると期待しています。当社
ます。
はお客様と密接な地域的なつながりがあります。
また、当社の入口近くに、ちょっとしたショー
これは今も、そしてこれからも強力な武器になる
ルームを作って昔の資料を置いています。お客様
ので、非常に有難く思っています。お客様との関
は有難いもので、それを見て、
「こんな本がうち
係をさらに大切にし、しっかりとフォローできる
の蔵にあったよ」
「内藤半七と書いてあるので、
内藤印刷を築いていきます。
これはあんたとこのや」といって、当社の印刷物
(文責・編集委員会)
をもって来て下さいます。益々歴史資料が集まり
会社外観
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Fly UP