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森林技術 - 日本森林技術協会デジタル図書館
昭和26年9月4日第三種郵便物認可平成20年2月10日発行(毎月1回10{ヨ発行)彌巻791号 ISSN1349-452X 森林技術 F 蝿雷一知率一‘ 茸 ▲ K 謝凶 凶 索'観 鼻副 a ■ 暗一 準 が 。 垂 タ ン 』 ■ 汚 麹 ■別 鰯寧, 《論壇》杯業のイ皇ノターブリテーシヨニノを考える/永野雅夫 《特別寄稿》チユーリニノケミンの森一ケーデとイルメナゥー/杉野千鶴 ●CPD-010-環境-002学校における森林環境教育のあり方(下) ●協会からのお知らせ 激日本森林技術協会 2 200 No.791 読みつがれて20年,21世紀新版(3訂版)。 親子で読む 森林環境教育への取り組みにも最適の教材本〃 森と木の質問箱。 I学生のための森林教室 ●林野庁監修 ●編集・発行(社)日本森林技術協会 ●A4変型・64ページ・4色刷 ●定価682円(本体価格650円)・〒料月 (30冊以上のお申し込みは,送料は当方が負担します) 子どもたちの疑問に答える形で,樹木森林についての知識, 国土の保全に果たす森林の役割,緑化運動,林業の役割現状, 木のすまいの良さ,日本人と木の利用,生態系に果たす森林の 役割地球環境と森林,等々について,平易な文章イラスト・ 写真でやさしく面白く説き明かします。 − 浬 露 。’●ご注文はFAXまたは郵便にてお申し込みください。 〒102-0085東京都千代田区六番町7 FAXOS−S2S1−5BgB 資料のご請求、 お問い合わせは (社)日本森林技術協会販売担当まで / フ 呆 才 ス OSOO-600-4132 VertexCompaSs全遮繍罵瀞 │GPSカメラGX652 −’ I i引詞翻個か一■己同l︲︲1劃﹃ 1 (PANASONIC松下製CCD採用) 轌顯;網'ス{測鯛)‘,鞭臺筐綴X2 コンパス測量 (+樹高測定) リ超蕊繍騨齢慰撫謁霧鐵獺 が 1 製鰯騒ぐ悪童控蹴墓剰懸篭麓簾 雪醗熱碓聖蝋膿罐審1t"に出力が 1 行うことができます。 日鴬龍黙’ TruPulse (日本語メニュー) 露歴?’ ArCher (扉薊蒔簡而蒔問 ) レーザー距離測定器魎唾蚕翻圃圃防水。耐衝撃現場用PDA(孫罰蒔簡而i 本体重量わずか2209で片手にすっ ぽりと収まる超コンパクトレーザー 距離計。測定距離は最大1000m(反 射板使用時は200伽)まで可能ながら、 距離精度は±30cmと高精度11. また、森林用フィルターを使用するこ とで薮の中などでも使用可能。 = 診 USBポート標準搭載で測定機器から のデータ収集・保存に適しています。 I 6ISのWebshop 〒078-835O h 矛 加 〃 W W W W 【 胆 C " I蝿ルシ 一 北海道旭川市東光10条1丁目3−20 FAX:0166-33-0335 森林 技 術 2.2008 No.791 目次 ■論壇 ❷ 林業のインタープリテーションを考える……………………………………… 水 野 雅 夫 ■特別寄稿 チューリンゲンの森―ゲーテとイルメナウ―………………………………… 杉 野 千 鶴 ■報告 ❾ クマタカと列状間伐……………………………………………………………… 木 下 仁 道東における素材生産の現場から―北海林友株式会社の冬季事業―……… 宮 本 廣 ■予算 平成 20 年度 森林・林業関係予算案の概要 ………………………………… 石 井 康 彦 ■コラム 緑のキーワード: 広がるシカの波紋/小泉 透 本の紹介:森林の再発見 /丹下 健 こだま:小さなことでも確実に! 統計に見る日本の林業: 林野火災と森林国営保険 ■連載 森林系技術者コーナー:CPD-010- 環境 -002-200802 10. 学校における森林環境教育のあり方(下)………………………… 山 下 宏 文 山村の食文化 30. こんにゃく(2) ……………………………………………………… 杉 浦 孝 蔵 ■ご案内 新刊図書紹介 平成 19 年度年会費納入のお願い 森林・林業関係行事 協会からのお知らせ……催しのお知らせ/林業技士:スクーリング研修実施 /訂正/普及部関係連絡先/雑記 〈表紙写真〉 『春を待つ森林』 第 54 回森林・林業写真コンクール 2 席 撮影:松崎盛樹氏(静岡市 駿河区在住) 静岡市井川にて。 キャノン EOS1v,ズーム,F11,オート。 「2 月下旬。 温暖な静岡の中でも,ひと足遅い春を待つ北部,井川の森林。この雪が解けると春が訪れ 林業活動が始まる。」(撮影者) 本会ホームページ【URL】http://www.jafta.or.jp 林業の インターフリテーションを 考える F o r e s t e r ' sNPO WoodsmanWorkshop代表理事 干 5 0 1 4 2 0 2岐阜県郡上市八幡町市島 2 2 1 0 Te l E-ma i l :woodsman@yamaiki . com URL http://www.yamaiki.com 1 9 6 2年 , 名古屋市生 まれ。長良川流域を歩き通すイベ ン 卜を開始 し 1 9 97年 , 郡上市の林業家に師事。 3 5歳のとき 0 0 1年 , 全国 に郡上市に移住。民間の林業事業体に勤務。 2 s hopを設立。人材 初の森林整備 NPO法人 WoodsmanWork 育成と間伐の推進を活動の柱とし,造林 ・素材生産に従事し ながら研修会 ( 1林業 │ タ ン ・ミ テイ ングJ1 山仕事の研 修会 林業 ・寺子屋プロジェク 卜J ) 等を展開し ている。共 著に「 山 で働 く 人の 本~ 見る ・ 読む林業 の仕事 ~ J ( 全林協) がある。 みずのまさお 水野雅夫 -はじめに 平成 1 8年度から熊本県で「講師養成研修」と呼ばれる事業が始まっている。正確には 「 熊本県 ・緑の雇用担い手対策事業[講師養成研修] (集合研修) j という。 (財)熊本県林 業従事者育成基金が県から受託・実施したもので 熊本県内の森林組合を含めた林業事業 8年度 体から技術者や経富者が 1 1 9年度ともに 9名が受講した。受講者のキャリアは数 年~約 30 年と幅広く,年齢も 20 代~60 代と親子以上の聞きがある。 「林業事業体での 職場内研修に係る講師の養成」を目的とし,今年度は①教育方法, ②高性能林業機械操作 及びメンテナンス指導方法, ③林業労働安全の 3教科に先進地視察を加えた四つのメ 二 ユ で構成された。私は教育方法の講師として 1回目から講義をさせていただいている。 昨年度は二日間で 1 0時間の講義すべてが座学だったが,今年度は菊池森林組合のご協力 で事業現場をお借りし,二日目には緑の研修生が休日返上で、実習のモテ、 ルになってくださ った。 この熊本県以外に例のない(あったら教えてください) I 講師養成研修Jや, 1 9年度か ら主催している山仕事の研修会「林業 ・寺子屋プロジェク卜 j,昨年第 8回を迎えた 「 林 業│ タ ン・ミ テイングj,森林ボランティアへの出前講師,小 ・中学生向けの環境教 育など,森林(林業)を仲立ちとして多くの人たちと接する機会が増えてきた。そのつど, @ 森林技術 NO. 7 9 1 2008. 2 対象と内容は違っても林業をテーマにした「伝える作業」すべてを,私は「林業のインタ ープリテーション」と呼んでいる。 ●外の世界は どの局だったか,いつだったのかも忘れたが,テレビでトヨタ自動車の人材育成を取り 上げていた。興味深い内容で,トピックを林業に置き換えながら見ることができた。不確 かだが内容は次のようなものだ。トヨタのカンボジア工場にタイから技術者が研修に来る。 研修生はタイに戻ると指導者として後進の育成にあたる。後進の指導者を「トレーナー」 と呼び,トレーナーを指導する技術者は「トレーナーズトレーナー」と呼ばれる。トヨタ 本社から退職間近いベテランがリーダーとして赴任している。カンボジアのトレーナーズ トレーナーは,会社が作ったトレーナー育成マニュアルに沿って研修を続けるがうまくい かない。何度やっても研修生に作業のポイントが伝わらない。トレーナーズトレーナーは 悩み,マニュアルを何度も読み返す。でもうまくいかない。じっと経過を見守っていたリ ーダーがトレーナーズトレーナーにアドバイスをする。 「自分が仕事を覚えたプロセスを 思い出せ」と。トレーナーズトレーナーは,自らが研修生だったころのノートを取り出し, 紙面を埋め尽くしたメモを一つ一つ確認した。後日,トレーナーズトレーナーの表情は一 変していた。研修生との呼吸も合ってきたようだ。研修中の対話が増え,笑顔も見られる ようになった。自らの経験を自らの言葉で伝え始めた彼は,トレーナーズトレーナーとし て確かな一歩を踏み出した。リーダーは間もなく退職し日本へ帰った。 ●どこでも同じかも さすが世界のトヨタだと思ったけれど,企業・業界が生き残るためには当たり前の取組 みとも思えた。では,林業はどうか? 後継者育成に独自のノウハウで取り組む事業体も あるが,総じて「後継者の育成も事業体の重要な仕事」という認識は薄いのではないか。 就業後「できないヤツ」のレッテルを貼られた作業者は,陰口を叩かれ職場内での居心地 も悪くなるだろう。そうなったら悪循環で,さまざまなトラブルのきっかけになりかねな い。珍しい話ではないと思うが, 「できないヤツ」に責任を背負わせるだけでは何も解決 しない。新規就業者に対して「あいつは何年やってもできないヤツ」と愚痴るベテランや 経営サイドは少し考えてほしい。新人に対して「何年も何をやっていたのか?」と。何年 教えてもできるヤツに育てられない経営のあり方こそ,まず,問い,見直す必要があるの ではないか。ただし仕事には適性があるので,林業を志したすべての人が,現場で「でき るヤツ」になるわけはない。その適性を見極め,応じた指導をすること,場合によっては 転職を勧めることも重要なアドバイスだろう。一方で「仕事を覚えたころに辞めていく」 と経営者の嘆きが後を絶たないことも事実だ。一人につき何十万円も投じて資格を取らせ 特別教育を受けさせる。実働の 3 倍,4 倍の賃金を先行投資と割り切って支給し,現場の 遅れはベテランに無理をさせてカバーする。でもしばらくすると新人は,一人で仕事を覚 えたような顔をして賃金や待遇に対して不満を言い始め「辞めます」なんてコトになる。 これもまた,悪循環の始まりである。どんな業種にも共通する話だが, 「仕方ない,困っ む だ たもんだ」と,ボヤくだけでは「金」と「気持ち」の無駄遣いが繰り返されるだけだ。 森林技術 No.791 2008.2 3 ●見て覚えろ 「見てろ」 「わかったな」 「やってみろ」 。林業技術の指導における定番の 3 フレーズだ。 「見てろ」「はい」 , 「わかったな」 「たぶん」 , 「やってみろ」「………」。こんなやり取りが 繰り返され, 「後はやっておけ,気をつけてな」と,ベテランは作業の遅れを取り戻すべ く別の持ち場に去っていく。例えばの話だが,こんなことが現場で続いているとしたら何 百億円投じて新規就業者を確保しても, 「できるヤツ」は育ちにくい。 林業現場で活躍するベテランには高度な技術者「名人」がいる。名人でなくともうまい ベテランの近くで仕事をすることは,自身の技術を伸ばすうえで大いにプラスになる。で も,これには条件がある。そのベテランの何がうまいのかを理解できるということだ。だ から,右も左もわからない新人には名人の凄さがわからないことが多い。 林業は中山間地で生まれ育った人たちが担い支えてきた。彼らの家の納屋には,使い込 のこ と なた まれた鋸があり,研ぎ上げられた鉈があったはずだ。時が移り動力機械が主流になれば, かつ 刈払機の音が近所の田畑から聞こえ,当時は鉄の塊だった父親のチェーンソーを担がされ 間伐に向かったかもしれない。つまり,彼らにとって山仕事は特別なものではなく,日常 的に接し,感覚的に身につけることができた技術だったろう。だから,学校を出て現場に 入った時点で最低限の知識と技術が備わっており,見るべきポイントを理解できた彼らは ベテランの仕事を見ながら腕を上げることができた。 今はどうか? 新規就業者の多くが主に都市近郊からの移住者,いわゆるⅠターン者で ある。私は 30 数年間名古屋市で暮らした後,岐阜県の山間地に移住した。名古屋の実家 に鋸はあったが,鉈はなかった。チェーンソーは存在しか知らなかったし刈払機は存在す ら知らなかった。名古屋で腰に鉈をつけて歩いたら警察が飛んでくるだろうし,甲高いエ ンジン音は暴走族のものだった。そんな悲しいくらいの素人たちに「見て覚えろ」は,通 用しにくい。 ●名選手と名コーチ では,どうすればいいのか? 「見てろ」 「わかったな」 「やってみろ」が間違っている わけではない。それぞれを少しずつアレンジすればいい。 「○○を見てろ」 「○○がわった か」「じゃあ,次は○○を見てろ」 「わかったか」 「○○に気をつけてやってみろ」 。この作 業をひたすら繰り返す。そして,なぜそうするのか? そもそも,この作業は何のためな のか? そうすることで何がどうなるのか?と,行為の理由付けを明確にすることが必要 だ。過保護と思われるかもしれないが,林業を構成する人員の経歴も価値観も肉体もすべ て時代とともに変化しているのだ。 駆け出しのころ,大ベテランと植付けをしたことがある。淡々と植え続けるベテランの 動きはゆったりとしている。けれど,早い。 「どうして,そんなに植えられるの?」との 問いに「そんなもなぁ~(それはな~) ,お前……」。次の言葉を待ったが,それっきりで 作業に戻ってしまった。意地悪な人ではなく教える気がないわけでもない,伝える言葉を 持たないのだ。暮らしの中で学び,現場で磨いた技術は誰に教えられたものではなく, 「何 気に」身に付いたものだ。ベテランには寡黙な人が多く, それは大いに魅力だったりもする。 しかし,スタートラインに立つことさえ覚束ないド素人に仕事を教える「仕事」は,寡黙 4 森林技術 No.791 2008.2 あ では難しい。寡黙なベテランにとっては「当たり前」なことを敢えて「言葉」にすること, それは,ベテラン自身が教えることのスタートラインに立つ気持ちにならなければ,簡単 にできることではない。名選手と名コーチはイコールではないのだ。 ●トレーナー 緑の雇用で毎年多くの新人が林業現場に入ってくる。でも,思うように育たない。なぜ か? その問いに熊本県は「講師が足りない」と答を出した。これは,とても勇気の要る ことだと思う。指導者(トレーナー)不在を公言するようなものだからだ。でも,全国の 関係者はわかっているはずだ。講師が足りないのはどこも同じだと。 新人の指導にベテラン技術者を抜擢する例は少なくないが,ココは考えどころだ。名コ ーチである名選手もいるのだが,強打者にはガンガン点を取ってもらって,ドンドン勝ち 星を伸ばしてもらわなければチームが苦しくなる。最大の戦力をコーチ兼任にしようとす るから,「教えるより自分でやったほうが早い」ということになり, 「かかりっきりになっ ていられるか」と気が急き, 「後はやっておけ,気をつけてな」となってしまうのではな いか? 一流選手には全体の範となる 1 軍のヒーローがふさわしい。 これまでの何百人に対する林業インタープリテーションを通して思うのだが,飲み込み の早い人には「何気型」が多いように思う。特に現場作業では立ち位置,立ち方,歩き方 で,ある程度の判断ができる。何気型は的確な指導者につけばグングン伸びる存在だ。だ が,問題もある。ソコソコの技術レベルまで一気に伸びるために,早く大きな壁にぶつか る。また,身体能力の優れた人は伸びた技術に経験値が追いついてこないことがある。 「何 となくできる」ことを人は「なぜできるのか」とは考えないものだ。優等生が受験に失敗 ざ せつ したような挫折感,あるいは初心者マークがハイパワーなスポーツカーに乗るようなアン バランスな時期をどうクリアするか,画一的な接し方では多くの人材は育たないのだ。 ほとんどの新人には技術がない。だから指導者はベテランである必要はない。トレーナ ーにとって,経験年数は大した意味を持たない。大切なのは,何年やってきたかではなく, どのようにやってきたかなのだ。 ●トレーナーズトレーナー 熊本県の講師養成研修に出かける際に,受講者の皆さんに事前アンケートでキャリアや 指導経験の回答のほかに,こんなコトをお願いしている。 【次の文章を,平易な文章に直してください。】 「植栽後,適切な密度管理がされず過 うっぺい 密になった 8 ~ 9 齢級の育成単層林では,樹冠の鬱閉,樹冠長率の低下,形状比の上昇, 表土の流亡などが確認される。……」 私のお願いの仕方がマズいのだろうが,残念なことに空欄の方が多い。二日目のお昼ご ろになると「なるほど,そういうコトね~」と問いかけの意図をご理解いただける。でも, 受講者皆さんの頭の中には初めからリアルな風景が広がっていたのだろう。ふだん接して いる薄暗い人工林をイメージされていたはずだ。でも,頭の中にどれだけ明確なイメージ があっても,それだけでは人には伝わらない。つくづく人の頭にUSB端子があったら便 利だと思う。講師養成研修でシッカリと認識していただきたいことの一つが「言語化」で ある。思いを言葉にする。当たり前を言葉にする。ヴィジュアルを言葉にする。間伐の際, 森林技術 No.791 2008.2 5 立ち位置は適切か? 何がまずく,どうすればいいのか。目立てはできているか? どこ がまずく,どうすればいいのか。 「ダメダメ!」 「危ない!」だけでは,代替案を提示でき ないクレーマーと同じである。 話は飛ぶが,例えば「樹冠の鬱閉」という表現がある。関係者には当たり前でも,東京 新宿のアルタ前を通り過ぎる何十万人の中で意味を解する人が何人いるだろうか? 林業 の活性化や窮状からの脱出には,広い層からの理解を得なければならない。これは,現場 仕事と同じくらい大切な仕事だと思う。それには,言葉の働きが大きい。音は目に映らず, ヴィジュアルは耳に響かない。でも,言葉は映り,響く表現なのだ。 「樹冠の鬱閉」に替 わる言葉を創り出すだけでも林業は一歩前進する。 言葉の点だけで見ると, 「何気型」よりも「苦戦型」のほうが長けていることがある。 「苦 戦型なにくそタイプ」の人は, 「なぜだ?なぜだ?」と苦汁の原因を考える。できないヤ ツと笑われても,前向きに取り組み続ければ膨大な言葉の脳内ストックができ上がる。技 術が低いことの辛さを知っている。戸惑ったコト一つ一つの関連づけが進んでいる。これ は,トレーナーとして大きな財産になる。もちろん言語明瞭意味明快な「何気型」もいる わ ので一概には言えないが,トレーナーは降って湧くものではない。新規就業者を早く育て るためにはトレーナーの指導が有効だ。そして,トレーナーを育てるためには,トレーナ ーズトレーナーの役割を経営サイドが十分に認識する必要がある。 ●誰が誰に何を 学ぼうとする相手によって目的が違う。目的の違いによって伝える内容が変わる。林業 就業者には単に技術だけでなく,効率と安全を両立させた「ビジネス」としての認識を持 もう ってもらわなければならない。森林ボランティアが対象であれば儲ける云々は必要ない。 効率も大切だが,とにかく「安全!安全!安全!」だ。子どもが対象ならば安全の確保は すべてわれわれの責任であり,驚きと発見をどれだけ「喜び」として感じてもらうかの工 林業技術そのものではなく表現方法, 接し方, 夫が必要となる。トレーナーが対象であれば, その他林業に限らない普遍的な「ノウハウ」をどのように林業現場で活かすかをともに考 えなくてはならない。仕事巧者がうまいトレーナーとは限らないし,うまいトレーナーが 優れたトレーナーズトレーナーとも限らない。森林環境教育が盛んになりつつあるようだ が,アイスブレイクの得意なインストラクターが掛かり木を放置していたりもする。誰が 誰に何を伝えるのか? 林業のインタープリテーションを本気で考えなくてはならないと 思う。 よ そ ●余所者のこと 人材育成の重要性が当たり前に認識されれば林業は変わる。人が育つということは人の 可能性が伸びるということだ。業務に必要な資格取得や特別教育が人材育成と言えなくも ないが,これらは運転免許と同じであって付加価値を高めるものではない。今の時代,ス キルアップのために金を払って自分を磨くことはごく当たり前のことなのだ。セミナーの 流行に乗る必要はないし時代と関係ない生き方も悪くないが,今の林業はそんな悠長なこ とを言っていられる状況ではないだろう。 人材育成と同様に見直してほしいのが余所者(I ターン者)の活かし方だ。余所者の山間 6 森林技術 No.791 2008.2 はら 地への流入はいろんな問題も孕んでいるが,私のことは別として,さまざまな生き方をし てきた彼らを,カモがネギを背負ってきた宝ととらえられないか。私の知人だけでも,測 量士,環境コンサル,土木コンサル,土木作業員,教師,コンピュータプログラマー,雑 誌編集者,舞台関係者,自動車エンジニア,レーサー,農家,営業マン,ライン工場労働者, 光合成研究者,フリーター,自衛隊,暴走族etcと,実に多彩だ。そして,彼らの人脈 はさらに賑やかだろう。本人が過去と決別したいならともかく,彼らのキャリアを林業で 活かさない手はないと思う。そのために必要なことは二つ。理解できない異分子を排除し ようとする業界や地域社会のあり方を見直すこと,もう一つは彼らと業界や地域社会をマ ネージメントできるコーディネーターの存在だ。バリ・ロードマップが林業にどうかかわ ってくるか社内でディスカッションをしている事業体がいくつあるだろう? 企業のCS R活動との連携のためにプレゼンを準備している事業体がいくつあるだろう? 林業に身 を置く潜在的で多彩な存在と彼らの人脈が動き出せば,素晴らしいプランが生まれてくる と思うのだが…。 ●総力戦 行政も業界も,次々と有能な人材を見つけ出しドンドン磨いていかなければいけない。 アンテナを張り巡らせるためにも,林業が生き残るためにもワークシェアリングが必要だ。 ささやかな既得権にしがみついていても未来はない。間もなく巨大な資本が本気で山に介 入し始めるかもしれない。林業だけ別の世界で生きることはできない時代なのだ。 ソフトに目を向けてほしいと思う。人を集めることはハードがあればできる。しかし, ソフトがなければ人は育たない。まずはトレーナーの育成から始めてはどうだろうか。ト レーナーは多くの新人を育て,何人かはやがてトレーナーズトレーナーになる。友人に素 晴しいトレーナーがいるが,彼の才能は職場で十分に活かされていない。彼の力が職場で 発揮されれば若手の技術だけでなく,意識が変わるだろう。多くの事業体で若手の意識が 変わり始めれば,数年後には業界の意識が変わるに違いない。そして多彩な人脈と出会う とき,新しい林業が生まれるのかもしれない。現在の経営サイドにはドキッとする話かも が い しれないが,先を見て英断を下していただきたい。林業が,食えて,面白くて,やり甲斐 があって,子どもたちが憧れる持続可能な仕事になるために。 トレーナー同士の交流も始まっている。ティーチングとコーチングなどという言葉が目 おうせい 立てを介して交される。トレーナーたちは向上心が旺盛だ。なぜなら,それがビジネスに なることを知っているからだ。最近,森林ボランティアの人たちからレッスンプロと呼ば れることがある。面白い発想だと思う。中高年男性にはゴルフ用語がなじみ深いのだ。そ しゅ ら ば して,世の修羅場をくぐってきた彼らは容赦なくレッスンプロを吟味し始めた。彼らもツ アープロとレッスンプロの違いに気づいたのだ。素人に選別される私たちは,プロとして さまざまな技術を磨かなければならない。でも,それは大きな可能性に向けたチャレンジ でもある。 ●さいごに いと 私は指導を厭わないベテランのもとで仕事を学んだ。生まれて初めての現場は除伐だっ つか た。まだ,機械を持たない私を師匠は自分の肩に掴まらせた。そして「決して離れるな」 森林技術 No.791 2008.2 7 作業中か作業後か,アドバイスするタイミングにも配慮する。 目立ても現場で対応できなければ実践技術とは言えない。 森林ボランティアへの目立て指導は,判断基準を持ってもらうことから始め る。 伐り口を見ながら伐倒作業を振り返る。〔第 8 回林業 I ターン・ミーティン グ初心者組の実習風景〕 間伐の知識や技術だけでなく,作業の難易度や時間配分を判断する力が必要 になる。〔森林環境教育のインタープリターへの研修風景〕 と言い,除伐を始めた。私は仕事を浴びた。エンジン音,排気臭,斜面の凹凸,切断音, にお 樹液の臭い,汗,息づかい,鼓動,身のこなし,筋肉の脈動。初めてド素人に仕事を教え る師の苦肉の策だったのだろう。その後二年間,試行錯誤の師と「デキ」の悪い私の根比 べが続いた。注視されながらの間伐に汗が噴き出し,妥協しないクオリティーを要求され 途方に暮れた。でも,山を下りる気にはならなかった。いや,ますます山仕事が好きにな った。これほど面白くてやり甲斐のある仕事はめったにないと思った。そして今,この仕 事を多くの人に伝えたいと思う。 林業のインタープリテーションは多岐にわたる。当然プロの育成が中心だが,子どもも いれば森林ボランティアのオジ (イ) サンたちもいる。プロの育成には現場の技術や知識だ けでなく多くのことを伝えたい。地域社会の暮らし,林業を取巻く社会状況,これからは 地球規模の環境問題も必要だろう。そして,自分が何のために何をして,その結果,何が どうなるのか。そのこと自体をプランニングして実施できる人材になってほしい。 近い将来,林業の担い手を志す人たちに,存分に学んでもらえる学校を創りたいと思っ ている。林業インタープリテーションの普及と併せて,私の中期的な夢である。 熊本県及び熊本県林業従事者育成基金,講師養成研修の受講者,寺子屋プロジェクトの 受講者,林業 I ターン・ミーティングの参加者,森林ボランティアの皆さん,環境教育の 主催者,強い思いで食いついてくる若者など,私に講師の機会を与えてくださる方々には 本当に感謝している。私にとって,そのすべてがケーススタディーであり,林業のインタ ープリターとして,学びと気づきの繰り返しなのだから。 8 森林技術 No.791 2008.2 〔完〕 報告 クマタカと列状間伐 木下 仁 山形森林管理署最上支署 支署長 〒999-5312 山形県最上郡真室川町大字新町200-11 Tel 0233-62-2122(代) Fax 0233-62-2706 ●は じ め に● 山形県最上地方は山形県の北東部に位置し,出羽山地, 青森県 丁山地,奥羽山脈等に囲まれ,その 8 割を山地が占める森 確認されている(写真①) 。伝統的な鷹狩りも行われてき 岩手県 秋田県 林の豊かな地域である(図①) 。また,全国でも有数のク マタカが生息する密集地域であり,人家の周辺でも生息が た地域であり,歴史的にもクマタカをはじめとするワシタ カ類と人々の営みが共存してきた。 山形県 ぜクマタカが高密度で生息しているのか,森林施業とクマ タカの生息の関係を解明することによって,人と生態系の 宮城県 当支署では,歴史的に林業が盛んな最上地方においてな 共存のあり方,今後の森林施業のあり方を検討することと し,具体的には,スギ人工林を列状に間伐することによっ ▲図① 山形県最上地方の位置 てクマタカの生息環境にどのような影響・効果を与えてい るのか委託による調査を実施していることから,平成 12 年度から平成 18 年度までの報告 書を参考にその概要を紹介する。 ●最上地域におけるクマタカの分布状況● 調査対象は,最上地方北部の真室川町,金山町に所在する国有林で,両町とも古くから 豊かな森林資源を有し,森林率は約 75%,うち国有林は真室川町で約 80%,金山町で約 55%と特に国有林の割合の高い地域となっている。 国有林内の植生の特徴としては,天然スギを含むスギ-ブナ群落が広く分布しており, ここにクマタカの営巣地が多数存在している。 最上地方では約 60 つがいのクマタカが存在すると言われ,そのうち両町内の国有林に 森林技術 No.791 2008.2 9 ▲写真② クマタカの巣 24 つがいの存在と営巣木が確認されている (写真②) 。 ▲写真① 最上管内のクマタカ しかも,この地域は昔から「金山スギ」に 代表されるスギ人工林の適地であり,このクマタカの営巣区域と多くのスギ人工林の区域 が重なっている。また,二次林においても薪炭やなめこ生産の資材供給を多く行ってきて おり,森林と生活が密接にかかわってきている地域である。このことから,これらの人工 林もクマタカの営巣環境としては何かしら適正を有しており,採餌環境と森林施業の有無 や内容の良否の間に何らかの関係があるのではないかと推察された。 ●クマタカと人工林● 一般的にクマタカは,地形や人為的影響により生じたオープンスペースを巧みに利用し ながらハンティングを行っていると考えられている。 人工林においても,間伐遅れの状態では餌動物も生息困難でクマタカのハンティングに 不適であるが,適正に間伐された人工林では,ハンティングに適したスペースが発生する と推察される。特に今回は,よりオープンスペースを得やすい環境として列状間伐を行う ことにより,クマタカがどのような指向性により行動するのかを調査した。 今回の列状間伐は,写真③のとおり 5m 程度の伐採列とその 2 ~ 3 倍程度の幅の保残 伐を設けるものとした。 ●列状間伐によるクマタカの指向性● 間伐の実施によるクマタカの行動の変化を調べるため,クマタカに電波発信機を装着さ せて追跡するラジオテレメトリー調査を実施した。テレメトリー調査とは,発信器から発 信される電波を受信し位置を把握する手法で,行動域を把握するのに有効な手法である。 対象調査地内のメス一羽を捕獲し発信器を尾羽に取り付け(写真④) ,間伐実施前と間伐 実施後に行動域の推定を行った。 調査はまず,調査対象のテリトリーを車で移動しながら,車外に取り付けた無指向性の 10 森林技術 No.791 2008.2 ▲写真③ 列状間伐の様子 ▲写真④ 発信器の装着 アンテナにより受信状況を確認し,おおよそのクマタカの位置を推定し,電波の強弱等に よってクマタカの現在位置の絞込みを行った。次に,指向性のある八木アンテナを用いて, 複数箇所から方向探索を行い,クマタカ位置の定位を繰り返し行った。また,クマタカの 行動に影響を与えない範囲で,目視等も実施した。発信機は飛翔時とパーチ(とまり)時 ひしょう の姿勢の違いにより,発信間隔が変化するアクトグラム型を使用することにより,飛翔へ の移動の開始を把握した。 これらのデータを基に確率密度を示すカーネル法を用い,行動圏を解析した。 図②は間伐実施前と間伐実施後の高利用域の比較であるが,ご覧のとおり間伐実施前で は,立木密度の疎な天然林や雪崩植生地や新植地のような疎開地の利用頻度が高かったも のが,間伐実施後は見事に間伐実施林分周辺の利用頻度が高くなる結果となった。間伐実 施後に高利用域となった森林は,いずれも間伐実施前にはクマタカに利用されることがな かった森林である。特に列状間伐を行い,開空率 20%を超える,まとまった空間が創出 されると利用頻度が高まることが確認された。クマタカの利用頻度を高めるために必要な 開空率 20%を列状間伐によって創出する目安は,伐採幅が 6m であり,このような列状 間伐を行った人工林が,林内での飛翔が容易で,餌狩場等として利用可能となるものと推 察される。 ●列状間伐箇所の餌動物の出現状況● 次に,列状間伐箇所での餌動物の出現状況を把握するため,自動撮影カメラを設置し出 現種を確認した。その結果,間伐実施林分では新たにクマタカの餌となり得るニホンリス, ネズミ,テン等が確認され,出現種数が間伐前よりも増加する結果となった。また,ノウ サギの糞の数も,列状間伐実施林分では明らかに糞数が増えており,特に,伐採列に限っ て糞の固まりが大量に発見された(図③) 。このことは,ノウサギが好む植物が列状間伐 の伐採列の跡地に発生したことが要因ではないかと推察される(写真⑤) 。 これまでに確認されたクマタカの営巣環境の特徴としては,営巣木周辺に空間が存在し ていることが挙げられる。今回の調査箇所では,小規模な崩壊地や沢のほか間伐等を実施 した箇所や新植地等の人工林も多く存在しており,人為的な空間の創出も好影響を与えて いると推察される。 森林技術 No.791 2008.2 11 図② 間伐実施前と間伐実施後の高利用域の比較 間伐実施前 ▲ ▲ ▲ ▲ ★ ★ ●クマタカと人間活動との共存● 調査地における過去 10 年間のクマタカの繁殖状況を見ると,ブナの種子が豊作だった 12 森林技術 No.791 2008.2 ▲ ▲ ▲ ★ 図② 間伐実施前と間伐実施後の高利用域の比較 間伐実施後 列状間伐した区域が高利用区域となっている。 ▲ ★ 年の翌年は繁殖成功率が高い傾向が認められていることから,クマタカの餌資源たる草食 性の鳥類や小型~中型哺乳類の生息環境保全の重要性,つまるところ,こうした動物の餌 資源たる下層植生を確保することがクマタカの生息環境の保全につながると考えられる。 森林技術 No.791 2008.2 13 4 1m×1mあたりの糞数 列状間伐実施前 平成17年7月4,5日実施 3.5 列状間伐実施後 平成18年11月27日実施 3 第1四分位点(上側25%)=Q1 第3四分位点(下側25%)=Q3 中位点(メジアン/平均)=M ←最大値 2.5 ← Q1 2 ←M ← Q3 1.5 ←最小値 1 増加 変化無し 0.5 0 列状間伐予定区(間伐実施前) 最大値 第1四分位値 平均値 第3四分位値 最小値 列状間伐区(間伐実施後) 0.8 0.3 0.2 0.0 0.0 対照区(間伐実施前) 3.7 1 .2 1 .2 0.7 0. 1 対照区(間伐実施後) 2.3 0.5 0.3 0.0 0.0 0.4 0.5 0. 1 0. 1 0. 1 ▲図③ 列状間伐実施前後の糞粒調査結果の比較 列状間伐後,糞粒が増加している。 ▲写真⑤ 列状間伐実施後の林内で撮影された,モミジイチゴを採餌するトウホクノウサギ(中央) 人工林においては,人為的に林床の光環境を改善する強度の間伐,特に列状間伐は,ク マタカが飛翔することのできる林内空間の確保により,林床の光環境改善効果が期待され ることから,クマタカの生息環境保全と木材生産を両立させる間伐方法だといえよう。ま た,餌動物となるノウサギ等の生息地の保全を考えると,林床に草本類の発達を促すだけ ではなく,積雪よりも高い樹高を持つ低木層を発達させることも検討課題として挙げられ る。 このように,クマタカと人のみならずこれに関連するさまざまな要因について,伝統的 に保たれてきた関係性を科学的に解明しつつ,実際の施業の中にその本質を取り込んでい くことが重要だと考えている。今回の調査は,クマタカと人間活動の共存のあり方を考え る重要な一歩になるのではと思う。 当支署では,さらに必要なデータを積み重ね,具体的な手法を検討していくこととして いる。 (きのした ひとし) 14 森林技術 No.791 2008.2 ≪特別寄稿≫ チューリンゲンの森 ▼イルメナウ市街 ―ゲーテとイルメナウ― 杉野千鶴 ストラテジーコンサルタント E-mail:[email protected] チューリンゲンの森 「ドイツの緑の心臓」と呼ばれるチューリンゲンの森はドイツのほぼ中央に位置し,北 西から南東に連なる長さ約 130km,幅 10 ~ 35km の山地(厳密には二つの中級山地 1), 「チューリンゲンの森」と「チューリンゲン粘板岩山地」 )である。最高峰のグローサー・ ベールベルク(982m)をはじめとして 700 ~ 900m 級の山が多い。トウヒなどの針葉樹 が約 7 割を占める。約 21 万 ha が自然公園に指定されている。近い都市としては北西で 接するアイゼナハ,森から少し離れた北部にゴータ,チューリンゲン州都エアフルト,ワ イマール,イエナなどがある。チューリンゲン山地の尾根を歩く全長 168km の歴史的ト レッキングルート「レンシュタイク」やゲーテの足跡を訪ねる「ゲーテ道」ほかハイキン グやトレッキングコースが数多くある。 ゲーテとイルメナウの森 26 歳の大臣 「若きウェルテルの悩み」で一躍有名になったゲーテはザクセン・ワイマール公国の若 すう みつ い領主カール・アウグストからワイマールに招かれ,1776 年 6 月に枢密外務参事官に任 命された。26 歳の大臣である。当面の公務の一つにイルメナウ鉱山の復興があった。か つては銀や銅が採掘され,600 ~ 800 人が働いた鉱山は閉山していたのだ。ゲーテはチュ ひんぱん ーリンゲンの森のほぼ中央に位置する町イルメナウと周辺の森や村を頻繁に訪れるように なる。イルメナウには生涯で 28 回訪れ,220 日を過ごすことになった。 「厳粛な濃緑と芳香をもったあらゆる種類の針葉樹,喜ばしい眺めのブナの林,なよな かんぼく よしたシラカバと低い名もない灌木,すべてがその所を求め,その所を得ていた。そして われわれはこれらすべてのものを,幾マイルにも及ぶ広大な,粗密の差はあれ樹木の多い 2) 山林のなかで眺め渡し,認識することができた」 。 林業と「常に緑なす森」 ゲーテは鉱山再開の準備には十分時間を取った。まず自分の目で見て自然を理解するこ 森林技術 No.791 2008.2 15 とが大切なのである。森を歩き,馬に乗り,植物や岩石を観察する。山小屋で詩をつくり, 恋するシュタイン夫人 3)に手紙を書き, 森を案内する。スケッチをする。狩猟にも参加する。 チューリンゲンの森は広く開放され,ワイマール所有地に隣接した森にも自由に出入りす ることができた。村では主君とともに悪ふざけをしたり農家の娘たちと楽しく踊ったりす ることもある。もちろん森林の専門家でもある狩猟仲間たちと仕事の話もした。例えば森 林の経済的,技術的考察についてである。貧しいイルメナウで林業は磁器・ガラス製造と ともに重要な産業であった。建築材,燃料として,また樹脂の需要もあった。フォン・カ 5) ルロヴィッツ 4)が「育つ分だけ伐採せよ」 ,という持続可能な林業を提唱してから 60 年 余りが経過している。ゲーテはスケル山林官 6)から測量に基づいた伐採計画や植林につ いて学んだ。「長期のことを考え仕事の伐採区分が決められた」この方法は 1768 年以降イ ルメナウで 76 年に狩猟監督官,97 年に森林監督官となったエッテルト 7)が開発したもの である。彼は貴族が上級職を占める当時の森林官庁で能力が認められた人で,著書「数学 が林業で不可欠な役割を果たす実践的証明」 (1765)はドイツの林業に影響を与えた。一 定面積を皆伐して植林するサイクルを繰り返す,つまり「育つ分だけ伐採する」合理的な やり方は荒れた森の回復の役に立った。ゲーテが 1776 年に描いた 1 枚のスケッチを見る と皆伐された山肌が多いことに驚く。今のほうがずっと森林は多い。1800 年以降植林の 効果が見られたとフラウエンヴァルト森林局は歴史を振り返っている。皆伐・植林方式は 濫伐に歯止めをかけた。その一方で速く育ち,利益に直結するトウヒ純林中心の,つまり 本来の森の姿からはかけ離れた森が増えたことも事実である。イルメナウの街路に菩提樹 を植樹した詩人ゲーテは少年のころからブナやオークを愛した。ワイマールの自宅の庭に もブナやオークを植樹して成長を見守ったし,イルメナウに近いマルティンローダにある 「太いオーク」を最後の誕生日を祝った年に孫とともに 2 度も訪れた。しかし「イルメナ ウ鉱山復興」の夢を追った事業家でもあり,財務大臣を務め,財政再建に尽くしたことも あるゲーテは人手の入った常緑の森を讃えることを忘れなかった。 「清々しい谷よ,常に緑なす森よ」と始まる長詩「イルメナウ」に登場するのは,常に もみ 緑なす森,樅やトウヒである。 「背の高い樅の樹の風にそよぐ爽やかな響き, 滝をなしてたぎり落ちる水の爽やかな響き。 雲が沈み霧が谷をおおうと 8) 夜と夕闇が手をたずさえてやってくる」 狩猟の問題 上級森林監督官フォン・ヴェーデル 9)をゲーテは「職務を正直な心で,ひじょうに公 10) 正に処理した」 と評した。ヴェーデルは狩猟の楽しみのために猟獣を保護しすぎること いのしし は農業にも林業にも多大なる害となると主張していた。狩猟好きのアウグスト公は,猪に よる甚大被害の苦情が報告されて初めて,大規模な狩猟を楽しむのである。ゲーテは狩り やり ほ が好きではなかった。槍が折れ,雄猪に突かれそうになったことがある 11)し,吠える犬 もきらいであった。 16 森林技術 No.791 2008.2 「農夫はくずれやすい砂の手に種子をゆだね, 甘藍が実れば野獣の餌食となり, 坑夫は坑(あな)の中での働きにわずかな食料を求め, 12) 炭焼きは狩人の呪いにおびえている」 「山々の頂きに憩いあり」―キッケルハーン 莫大な経費がつぎ込まれたイルメナウ鉱山プロジェクトは 1784 年にオープニングを祝 い,株券まで発行した(ゲーテ自身は三株しか買わなかった)のだが,結局失敗に終り, ゲーテの足は遠のいた。見果てぬ夢は「ファウスト」の中で,悪魔の力を借り,無気味に 実現されるほかなかった。鉱山が再び閉山してから 20 年近い月日が流れた 1831 年の 8 月, ゲーテはかつて歩いたこともある 50km の道のりを馬車に乗ってやって来た。ゲーテの 最後の旅である。ゲーテはイルメナウで温かく歓迎され,誕生日が盛大に祝われた。詩人 は深く感動した。アウグスト公,シュタイン夫人,妻のクリスチアーネ,息子のアウグス ト,ヴェーデル―皆すでにいない。ゲーテは山林監督官マール 13)とともに,5km ほど離 れたキッケルハーン山(861m)の狩猟小屋へ行く。31 歳のときに壁に書き付けた「旅人 の夜の歌」を今一度読むためである。 山々の頂きに 憩いあり。 木々のこずえに そよ風の気配もなし。 森に歌う小鳥もなし。 待てよかし,やがて なれもまた憩わん。 旅びとの夜の歌 (高橋健二訳) 純白のハンカチをゆっくりと取り出し,詩人は涙をぬぐった。そして 「そうだ。待てよかし,なれもまた憩わん」と言い,しばらく沈黙したあと 「さあ,行こう」とマールに呼びかけた。 今のイルメナウの森 今のイルメナウとゲーテの道 チューリンゲンの州都エアフルトから南に 40km,郊外電車で 1 時間の所にイルメナウ 市はある。電車に乗ってしばらくは広い空と牧場が続く。裏の農園でニワトリが走り回る 駅もある。電車は徐々に標高を上げ,人口約 3 万人の「ゲーテと工科大学の町」イルメナ ウ市(標高 500m)に着く。 市内にはゲーテゆかりの建物が多い。1733 年に建てられた旧森林監督官住居(写真①) はイルメナウの中で最古の建物である。1752 年に焼失した宮殿の脇にあったがこちらは 焼けずに残った。今はギャラリーになっている。 「ゲーテがここに何度か滞在した」とい 森林技術 No.791 2008.2 17 ▲写真① 旧森林監督官住居 ▲写真② マーネバッハ地区(奥はイルメナウ市) ▲写真③ ゲーテ道の標識 ▲写真④ トウヒ純林 う簡単な標示がある。例えばよく泊まってい た「ツム・レーヴェン(獅子亭) 」の主人が 急死した 1796 年,上級森林監督官フォン・ フリッチュの招きに応じてここに移ってきた ときである。一緒に連れて来ていた 6 歳の息 子アウグストは近所に遊び友達を見つけ,ゲ ーテも喜んだ。 マルクト広場から「ゲーテ道」は始まる。 イルメナウ―マーネバッハ(写真②)―キッ ケルハーン―ガーベルバッハ―シュトゥッツ ァーバッハまで 14),6 ~ 8 時間の行程である。 ゲーテのサインに模したイタリックの筆記体 ▲写真⑤ トウヒとブナ の「G」という標識が道しるべ(写真③)となる。森に入ってしばらくは明るいブナや, シラカバが多かったがベーレンティーゲルという歴史的な林業場に来るとトウヒの純林が 広がった。枝をきれいに落としてもらい,皆同じような格好をして無言で整然と立ってい 18 森林技術 No.791 2008.2 ▲写真⑥ シュヴァルベンシュタインの岩と小屋 ▲写真⑦ シュヴァルベンシュタインからの眺望 ▲写真⑧ キッケルハーン山の遠景 ▲写真⑨ キッケルハーン山から見るチューリンゲンの山々 るトウヒたちは物悲しく見えた。そこに 1 本のブナが交るだけで景色は変わって明るく見 える。(写真④,⑤) 途中シュヴァルベンシュタインの巨岩と小屋(写真⑥) , そこからのすばらしい眺望(写 真⑦)など見るものは多いが, 「ゲーテ道」 のハイライトはやはりキッケルハーン山 (写真⑧) と「ゲーテの小屋」であろう。キッケルハーン山から見るチューリンゲンの山々(写真⑨) は今も穏やかで安らぎを与えてくれるような優しさがある。空気は澄み切っている。展望 塔があり,小さなレストランもある。夏でも寒い日には暖炉に火が入るうれしい場所だ。 頂上の下に火事で焼失した「ゲーテの小屋」 (旧狩猟小屋)が復元され,15 か国語に翻訳 された「旅人の夜の歌」のテキストが展示されている。31 歳のゲーテは「荒れ果てた小都市, し り めつれつ 度しがたいものたちの不平や要求,支離滅裂な人間たちから逃れるために」15)夜を過ごし たキッケルハーン山上でこの詩をつくったのだった。 キッケルハーン山頂から少し下った所にガーベルバッハの旧狩猟館がある。シンプルで 気品ある後期バロック様式で 1783 年に建てられた。今はゲーテ関係の博物館になってい て「ゲーテの小屋」の焼け残ったドアなどが展示されている。東ドイツ時代もここを訪れ る観光客は多かったと管理人は語った。 森林技術 No.791 2008.2 19 イルメナウの森とフラウエンヴァルト森林地区 イルメナウ市有林(1,129ha)を管理しているのはフラウエンヴァルト地区森林局で, 地区全体の森林は 17,000ha。標高は 420 ~ 944m,年間平均気温は 4 ~ 6.5℃,年間平均 降雨量は 650 ~ 1340mm である。所有者では州や自治体などの公有林が 90%以上を占め る。生物生息圏保護地区 16)フェッサータールのうち 12,000ha がこの地区内にある。 トウヒが 80%近くを占めているが,10 年前ごろから立地条件に合った混交林を長期的 に増やす方針に切り替えている。また 90 年代まで続けられてきた皆伐方式よりも自然に 即した造林を優先するようになった。皆伐方式は転換期を迎えたのだ。トウヒは主要な樹 木であり続けるという。トウヒは生活の糧を与える「パンの木」でもある。効率を高める ためにハーヴェスタなどの各種機械が導入され,急斜面での伐採にはクレーンの投入が増 えた。 ドイツ統一から 18 年,旧東ドイツは変わった。ベルリンの壁が落ち,町のショーウィ ンドーが一変し,新築の家やホテルが建ち,交通網も一新された。この地方では西部や南 部と結ぶため,増えた交通をさばくために,高速鉄道 ICE(エアフルト―ニュルンベルク) やチューリンゲン州とバイエルン州を結ぶアウトバーン 17)71 号線が建設された。森の真 ん中を縦断するうえに,長く高い橋脚の橋やトンネルが建設されたので,当初自然保護 の観点から反対も多かった。しかし山間部や河川に近い国道は距離が長く,増える交通量 と渋滞を放置するほうが結局は自然にとって害が大きいと判断されたという 18)。走ると や ゆ 車が壊れる,などと揶揄された旧東ドイツのでこぼこ道路は排気ガスをまき散らしながら よたよた走る旧東ドイツの象徴のような車トラビ同様今ではほとんど見なくなった。ICE はもとより,郊外電車もピカピカしている。森の標識なども新しく充実して,所によって は修復の滞っている旧西ドイツよりも新しい施設が多い。こんなところに統一税 19)が使 われたのだと感慨にふけることもしばしばである。民営化と合理化も実施された。風格あ るイルメナウの駅舎が閉ざされたのは一例にすぎない。今はホームに設置された乗車券販 売機がインフォメーションの役割も果たしている。窓口で待たされるよりもインターネッ ト検索を好む乗客も増えてきた。そのうちに駅舎は立派に修復されて復活すると思う。古 く美しい建物を簡単に壊すことをしない国柄である。アウトバーンや ICE 高速鉄道線の 建設によって自然が破壊されたことは事実で,フラウエンヴァルト地区では 100ha の森 が失われてしまった。それを取り戻すことを同森林局は重要なプロジェクトの一つである としている。自治体や企業がスポンサーとなり,94 年以来 28ha の混交林が植林された。 暴風キリルの風害と森林再生への道 森は自然災害によっても失われる。昨年の 1 月にヨーロッパを吹き荒れた「モンスター 暴風キリル」はドイツで 13 人の死者を出し,各地で甚大な被害が報告された。瞬間風速 56m,各地で 30m の風が吹き荒れ,ドイツでは 4,000 万本の木が倒れたり折れたりした と推定された。チューリンゲン州では 4,500ha20)が壊滅状態となった。 「キリル」は記録的な暖冬に続いて起きたという点でも被害の大きさからも 1990 年の一 連の風害に似ているといわれる。今回もまた高温,キクイムシ,大気・土壌汚染などが原 因で弱り,根が浅い「植林トウヒ純林」が暴風に耐えられず,一斉に倒れるケースが多か った。混交林の場合では,個別に木が倒れることはあっても全滅するケースはなかったと 20 森林技術 No.791 2008.2 ▲写真⑩ 倒木の後片付け現場 ▲写真⑪ 路傍の倒木材 ▲写真⑫ 倒木の後片付け現場その 2 ▲写真⑬ 路傍の倒木材その 2 いう。また,これはハルツ地方の例で以前のケースだが,同地方で育ち,長い間に低温・ 強風に適応したトウヒ(ハルツトウヒやブロッケントウヒ)は植林された「トウヒ」に比 べて風害に強かったと聞いた。トウヒの純林でも樹齢が異なっていれば安定性は違ってい たかもしれない。問題は「植林トウヒ純林」が,立地条件に合わなくなってきたことであ る。環境が変わらなければひょろひょろした浅い根のトウヒでも倒れないで済んだのでは ないだろうか。しかし環境は変わる。自然の原因もあれば人為的な原因もある。立地条件 に合った混交林や天然更新を基にして,自然に即した林業を実施する方針に関してはドイ ツではほとんど一致を見ているようだ。しかし今,木を売って生活しなければならない林 業家,特に小規模林業家には時間と費用が足りないことが多く,話は簡単ではない。 イルメナウ付近の山中でも筆者が訪れた 9 月初め,倒木の後片付け作業はまだ続いてお り,森の道端には膨大な量の木材が積まれていた(写真⑩,⑪,⑫,⑬) 。犬を連れた通 りがかりの人に話を聞くと今は木材価格が高いから相当の売り上げになるだろうと言った。 石油価格高騰の折,燃料として薪を使うことへの関心も高まっている。 全滅した跡地が,天然更新により立地条件に合った混交林になればよいのだがそうなる とはかぎらない。その場合植樹するのだが,それには労力と費用が必要になる。立地条件 森林技術 No.791 2008.2 21 ▲写真⑭ リンデンベルク山 に合った混交林をつくることが推奨されているが,何を植えるかは結局のところ所有者の 自由である。成長が速く利益に直結するトウヒを再び植えたり,クリスマスツリーを栽培 したりするほうが混交林をつくるよりは簡単ですぐお金にもなる。問題は労力と費用だけ ではない。地元の新聞などによると,チューリンゲンの森では地元種の苗を植えることが 決められているが不足しているという。そのため植樹には時間をかけ,足りない所は天然 更新に任せるということである。 リンデンベルク山(749m)に関しては明るいニュースがある。イルメナウ駅から見え, ゲーテの山キッケルハーンに連なるこの丸い山はトウヒが密生していたのだが「キリル」 は でほとんどが倒れ,倒木が除去された今は寒々しい禿げ山(写真⑭)であった。手前の街 灯に飾られたゼラニウムがまるで鎮魂花のように見える。しかしイルメナウ市はこれを不 安定なトウヒの純林から脱却して立地条件に適した広葉樹を増やす良い機会であるとして, 市民に参加と寄付を呼びかけていた。1 本につき 20 ユーロ(約 3,200 円)を支払う植樹が 4 月から 5 回行われた。2,200 人が参加し,約 5ha に約 8,000 本のブナ,モミ,ダグラスモミ, カエデ,ボダイジュ(シナノキ)が植えられた。植樹はこれからも続けられるそうだ。駅 前の山だけに人々はこの山にいろいろな木が育ってゆくのを朝な夕なに眺めることだろう。 食害と狩猟 チューリンゲン州ではドイツで最も食害が多いと言われる。特にノロジカによる被害が 2000 年以降増加し続けている。森林局は森林と動物の共存と維持を目的とし,持続可能 な自然利用として狩猟を実施している。広葉樹の幼木を守るためにネットや網は掛けられ 22 森林技術 No.791 2008.2 ているのをよく見るが,フラウエンヴァルト森林地区では防護柵は設置されていない。猟 師が駆除に協力してくれるのではないかとも思うが,狩猟と林業との関係はとても複雑で ある。ゲーテの時代でも領主が狩猟好きであったため,動物を育(はぐく)む森は大切に された。しかし林業家や農家が被る被害も甚大であった。今狩猟好きの領主はいないが, 狩猟連盟がある。狩猟家たちはたくさんの動物がいることを好むし,森林育成のために猟 をしているわけではないので森林所有者との調整は簡単ではない。 《注》 1)高さ 500 ∼ 1500m の山地。ドイツに 41 ある。 2)P144「植物学」,ゲーテ全集 14 巻,潮出版社 3)Charlotte von Stein(1742-1827) 4)Hans Carl von von Carlowitz(1645-1714) 5)Sylvicultura Oeconomica,1713 6)Johann Ludwig Gottlieb Skehl(1740-1808) 7)Carl Christoph Oettelt(1727-1802) 8)「イルメナウ」より,P243,松本道介訳,ゲーテ全集 1 9)Otto Joachim Moritz von Wedel(1759-1794) 10)P144,「植物学」,ゲーテ全集 14 巻 11)「ゲーテ」フリーデンタール(上),P273 12)「イルメナウ」より,P243,松本道介訳,ゲーテ全集 1 13)Johann Christian Mahr(1787-1868) 14)現地の標識による。 15)1780 年 9 月 6 日付シュタイン夫人宛の手紙 16)ユネスコに認定されており,ドイツで 12 ヵ所,日本に 4 ヵ所ある。 17)無料(2005 年以来 12t 以上大型車両は 12.4¢ /km)の高速道路。制限速度(現実的最高速度 160 ∼ 180km)のない箇 所が大半。 18)http://www.3sat.de/3sat.php?http://www.3sat.de/nano/serien/38264/index.html 19)Solidaritaetszuschlag 連帯税とも言われる。旧東ドイツ支援などのために 1991 年に導入された。 20)Pressemitteilung 176/07 Thuringer Ministerium fur Landwirtschaft, Naturschutz Freies Wort 紙(17.11.2007)によると 6,200ha 以上 ≪文 献≫ Ausshuss fur die Goethe-Hundertjahrfeier Ilmenau 1931 : Goethe und Ilmenau Dargel,Hagen Forstamtsleiter Frauenwald,Thueringen Fraenkel, Jonas : Goethes Briefe an Charlotte von Stein 1960 Freies Wort 紙(17.11.2007) http://www.3sat.de/3sat.php?http://www.3sat.de/nano/serien/38264/index.html http://www.ilmenau.de/akt_waldneu.htm http://www.nationalenaturlandschaften.de/index.php?content=park-kurzinfo&nid=13 http://www.thueringen.de/de/tmlnu/themen/naturschutz/reservate/thw/ http://www.thueringer-wald-info.de/de/index.html http://www.thueringerwald.com/de/ K.Mantel und J.Pacher : Forstliche Biographie vom 14.Jahrhundert bis zur Gegenwart",Band 1 1976 Ministerium fur Landwirtschaft, Naturschutz und Umwelt, Thueringen : ・Die zweite Bundeswaldinventur(BWI II)im Freistaat Thueringen ・Forstbericht 2006 ・Pressemitteilung 176/07 ・Thueringer Forstamt Frauenwald Thueringen Tourismus : Ferienkarte Thueringen 2001 「植物学」,ゲーテ全集 14 巻,野村一郎訳,潮出版社 「イルメナウ」同 1 巻,松本道介訳 「ゲーテ詩集」,高橋健二訳,新潮文庫 リヒャルト・フリーデンタール :「ゲーテ(上)」,講談社 1979 坂井栄八郎「ゲーテとその時代」1996 (すぎの ちづる) 森林技術 No.791 2008.2 23 報告 道東における素材生産の現場から ―北海林友株式会社の冬季事業― 宮本 廣 北海林友株式会社 業務部長 〒 080-0802 北海道帯広市東 2 条南 11 丁目-20 Tel 0155-26-2225 (代) Fax 0155-26-1437 ●当社の業務● 当社の業務は,主に国有林の生産請負と造林で,事業地は北海道東部に位置する雌阿寒 岳西方の十勝東部森林管理署管内と,ほかに立木購入で十勝西部森林管理署管内,東大雪 支署管内で素材の生産と販売を主要業務としています。 ●冬季事業● この地方の気候は,夏は太平洋高気圧に伴う日照が多く,冬は西高東低の気圧配置によ り積雪が少なく晴天が多く,春・秋の不安定な時期を考慮すれば林内作業日数の確保は比 較的良い地方です。ですが,冬季の気温は- 20℃以下の日が多いために路面等の凍上が 激しく,除雪した林道などは 15cm 前後も凍上し,融雪期に使用すると田植え時期の水 田のようになってしまうので,4 月~ 6 月上旬ぐらいまでの 2 か月間は林道の使用ができ なくなります。したがって,11 月中旬~ 3 月にかけて,凍結を利用するメリットを追求 した冬季事業を進めています。 じゃ り この利点は,①沢筋の作業道は締固や砂利入れの必要がないこと,②林内の表土を必 けん 要以上に捲らないこと,③軟弱地等での機械の活用が容易であること,④スキッダの牽 いん 引負荷が少ないこと等々ありますが,これにかかわる準備も計画的に進めておかなければ なりません。冬季実行可能地の選定では,地形(特に斜度) ,立木材種(広葉樹は傷みが 少ないこの時期) ,運材道除雪コストを考え併せ,作業着手の 3 ~ 4 日前には使用予定路 網は除雪を完了させ,路面を凍結させておくこと(積雪下ではほぼ 0℃で一定しているた め,十分な凍結深度が得られない)なども必要です。 このとき,長期天気予報等を活用することはもちろん,冬季作業のリスクアセスメント による評価を事業の安全教育に活かしています。 24 森林技術 No.791 2008.2 イワフジインテグラルアーチ 装着 CAT 低接地圧ブルドーザ 集材ブルドーザ D4G8600kg インテグラルアーチスキッダ クレーン仕様グラップル CAT312C 選別,椪積グラップル CAT312 ▲図① 集材,椪積用機械 ▲写真① 伐木作業の様子(径 48cm) ▲写真② 樹幹凍結に対応した木製クサビ(中央) ●受光伐実行● 次に,この時期の国有林請負事業について紹介します。 「国有林の森林環境保全整備事 業」受光伐実行で,素材生産を十勝東部森林管理署 103 林班ろ,に,ほ,へ林小班(面積 280ha,資材 N,L 込み 5,899m3,完了 4,350m3,立木 1 本当たり材積 1.6m3 の現場)で 実行中です。 作業仕組 作業仕組は,先山全幹伐倒 3 名,全幹小集材 1 名,全幹集材 2 名,造材 3 名で,主要機 械は,先山チェンソー 3 台=ハスクバーナ(352) ,スチール(450) ,小集材グラップル= CAT315C,集材= CAT(D4GLGP)2 台,造材=チェンソー 2 台,椪積= CAT312C です(図①)。 ほかに 4WD 通勤用バス 1 台,W ピック小型トラック 1 台を,休憩用と緊急時の対応 用を兼ねて配置しています。 先山全幹伐倒 次に,各作業の流れについて若干説明します。先山全幹伐倒は作業地移動を 3 ~ 4 日前 から行い,全幹材 300m3 前後を先行していきます(写真①,②) 。 小集材 次いで,小集材作業が入ってきます。この作業はバックホーをベースマシンにしたグラ 森林技術 No.791 2008.2 25 ▲写真③ 小集材作業 ▲写真⑤ 荷掛の様子 ▲写真④ 小集材された全幹材 ▲写真⑥ 玉切の様子 ップル(CAT315C)を用い,全幹材を,残 存する立木や地表を傷めないよう材を浮かし ながら集材路に引き出し,スリングワイヤが 掛けやすいように 3 ~ 5 本にまとめていきま す。この作業での留意点は,伐倒作業者との 間隔は先行作業の 1 日分以上としており,接 かかりぎ 近しないために掛木処理,既設作業道の補修 を併用し,1 日 170m3 前後の処理を行いま す(写真③,④) 。 ▲写真⑦ 選別椪積用のグラップルドーザ 造材・集材 集積土場,玉切盤台の準備を進め,造材・集材を開始します。集材スキッダは作業道を 一巡し,道の不都合部分修正や小集材されている材を確認しておきます。1 回の荷は 5 ~ 6m3(4 ~ 6 本)です。一作業道の終点付近から集材を開始しますが,荷掛者はワイヤの 26 森林技術 No.791 2008.2 シューに着けられているスパイク(中央,両端) ハーベスタベースマシンのブル仕様シュー スパイク付き ▲図② 凍結路での作業性と安全性の工夫 引き戻し等の作業がないことから配置してい ません(写真⑤,⑥) 。 はい 土場に到着したスキッダは椪作業者の合図 を受けるまで土場入口の停止位置で待機しま す。指示を受けてから進入し,グラップルと スキッダオペレータとで荷を外し,材を盤台 に並べます。この間の合図は手信号,機械の ホーンが複合しています。 玉切された材は,材種,用途別に選別椪積 をグラップルドーザで行っています。このグ ▲写真⑧ ハーベスタによる伐倒,枝払 ラップルはクレーン仕様で,前幹材を玉切盤台へ並べる際に材の振れがなく,作業範囲が 小さく,安全性が高く,材の傷みがない等の利点があります。 この作業での 1 日当たりの生産量は 110m3 で,林内生産は 1 人約 12m3 になっていま す(写真⑦)。 凍結路での工夫 一連の伐木造材を大まかに紹介しましたが,凍結路での作業性と安全性の工夫について 付言します。クローラタイプのサイドスリップ防止,登坂能力保持のため,図②のような 工夫をしています。 ●間伐実行● 次に,間伐作業を若干紹介します。現在行っている間伐は若齢トドマツの列状間伐です。 「伐採率 33%,1 伐 2 残」で使用している機械はハーベスタ,グラップルローダ,D4G ス キッダ,チェンソーを使用します。5 人セットで,伐倒はハーベスタ,チェンソーの併用, チェンソーは伐倒のみで枝払はしません。全木,全幹をグラップルで作業道へ集積し,ス キッダで土場へ運び,全木材,全幹材を分けて積み上げます。 森林技術 No.791 2008.2 27 ロープガイドアーム ワイヤーロープ 9mm × 50m この部分がロープドラム ▲図③ 機械の改良例 林内条件によって,ハーベスタが使用不可能の場合は土場で主に枝払を行い,また,玉 切,椪積も行っておきます。チェンソーは先山先行し,グラップルは掛木処理と集積に当 たり,一定量(トラック輸送量を考慮した量)を土場に集積した段階で,ハーベスタ,チ ェンソー,グラップルで同時に造材を行っています(写真⑧) 。 作業仕組 3 作業仕組みは 1 日 40 ~ 50m で,林内生産 1 人 10m3 になっています。 機械の改良 この間伐作業でグラップルの稼働率向上と掛木処理,集材行程の向上に貢献している機 械の改良について紹介します。使用機種は,ベースマシンに CAT312C,グラップルはイ ワフジ GS901J ですが,GS901J グラップルに図③のようにワイヤドラムを装着し,ベ ースマシンが接近できない箇所へワイヤーを伸ばし,材を引き寄せ,グラップルで集積処 理しています。チェンソー伐倒での掛木も容易に処理できます。 この装置の今後の改良点は,ロープガイドのロープ摩擦の減少が可能になる構造と,ロ ープの送り出し時のドラムの空転可能化と考えています。 ●終わりに● 以上,現在の当社での冬季作業を紹介しましたが,作業能率,安全作業についてご助言 等をいただければ幸いです。 (みやもと ひろし) 素材生産の現場は「林業最前線」。そこを職場として奮闘されている皆さんは,ほかの 現場ではどのようなシステムを組んで作業しているのか,細かいところの工夫はどのよう にしているのか,ふだん感じている不具合を解消してくれそうなヒントがないか……,最 も気にかかるところではないでしょうか。今回は道東の事例紹介を宮本様が快諾してくだ さいました。気候条件の似通った地方の皆さんには大いに参考としていただけるでしょう。 オレも書いてやろうという皆さん,投稿をお待ちしています。 編集子 28 森林技術 No.791 2008.2 ●コラム● 国土の約 40%に生息し,この 25 年間に生息面 は,林床植生の消失によって表土が流亡し,一部 積が 1.7 倍に拡大し,全国で毎年約 12 万頭が捕 で大規模な斜面崩壊が発生したことが報告されて 獲されている動物は?と言えば,答えはシカ(ニ いる。 ホンジカ)である。 こうした生態系被害は,すでに全国的に,特に 年間の農林業被害面積も全国で約 4 万 ha にの 国立公園などの自然保護区で,顕著になりつつあ ぼる。増大する被害に対処するため,1999 年に る。自然保護区は「地域の原生的な生物群集を長 は「特定鳥獣保護管理計画制度」が創設され,昨 期に安定して維持する」ことを目的として設置さ 年 12 月には「鳥獣によ れ,人為を加えず自然の る農林水産業等に係る被 成り行きに任せることが 害の防止のための特別措 望ましいとされてきた。 置に関する法律」が制定 このため,シカを人為管 広がるシカの波紋 された。 産業振興上の害獣とし て取り上げられることの こ いずみ 小泉 多いシカだが,自然環境 とおる 透 (独) 森林総合研究所 野生動物領域長 の分野でもシカに関連し 理するか自然放置するか, 管理方法を巡る議論には 決着がついていない。両 者の主張が水掛け論にな らないように科学委員会 を設置した所もある。こ て“生態系被害”という の委員会に期待されてい 言葉を目にすることが多 くなってきた。1990 年代に日光のシラネアオイ ひん るのは,これまでのような現状報告ではなく,生 がシカの採食により絶滅に瀕したのは有名である。 態系変化の長期予測と意志決定のためのシナリオ 北海道東部ではシカの好むハルニレが急減しつつ の提示,という新しい活動である。 あると言われている。また,林床植生の後退は, シカは生態系のみならず,それを管理する科学 ウグイスに代表される,いわゆる「やぶ」を利用 のデザインをも大きく変化させようとしているの する生物種の存続にも影響を及ぼしていることが である。 懸念されている。さらに,東京都の奥多摩地域で □そうだ,葉っぱを売ろう! 過疎の町,どん底からの再生 著者:横石知二 発行所:ソフ トバンククリエイティブ(Tel 03-5549-1201) 発行:2007.9 B6 判 215p 本体価格: 1,500 円 [林野庁図書館・本会普及部受入] ◆ 新 刊 図 書 紹 介 ◆ □はっぱ 監修:林 将之 発行所:STUDIO CELLO(Tel 03-5728-6553) 発行:2007.10 A4 判 61p 本体価格:1,400 円 □古木の物語 著者:牧野和春 発行所:工作舎(Tel 03-3533-7051) 発行:2007.10 B6 判 234p 本体価格:2,200 円 □新訂版 林業・建設業の労災保険率適用必携 編集:(株)労務行政 発行所:労務行政 (Tel 03-3584-1231) 発行:2007.10 A5 判 270p 本体価格:3,619 円 □シベリア大自然 知られざる山河とタイガの植林 著者:むさしの・多摩・ハバロフスク協会 発行所:東京新聞出版局(Tel 03-6910-2527) 発行:2007.10 A5 判 295p 本体価格: 1,600 円 □麗澤の森―仁草木に及ぶ 著者:井田 孝 発行所:麗澤大学出版会(Tel 04-7173-3331) 発行:2007.10 新書判 127p 本体価格:714 円 □割り箸が地域と地球を救う 著者:佐藤敬一・鹿住貴之 発行所:創森社(Tel 03-52282270) 発行:2007.10 A5 判 91p 本体価格:1,000 円 □きれいな地球は日本から 環境外交と国際会議 著者:大木 浩 発行所:原書房(Tel 03-3354-0685) 発行:2007.10 B6 判 322p 本体価格:1,900 円 注:□印=林野庁図書館受入図書 ○印=本会普及部受入図書 森林技術 No.791 2008.2 29 森林系技術者コーナー ● CPD-010- 環境 -002-200802 学校における森林環境教育のあり方(下) 山下宏文 京都教育大学 教育学部 教授 〒612-8522 京都市伏見区深草藤森町1 Tel 075-644-8219 現在の学校教育は「森林」や「林業」を どのように扱っているか の観点から扱うようにし,森林資源の育成や保護 に従事している人々の工夫や努力及び環境保全の ための国民一人一人の協力の必要性に気付くよう 現在の小・中学校の教育課程における「森林」 に配慮すること。 」 や「林業」の扱いは,決して十分といえるもので ○小学校理科第 4 学年内容の取り扱い (1)イ(植 はない。もうすぐ新しい学習指導要領が告示され 物の成長の内容に関して) 「夏生一年生植物のみ る予定だが,そこで「森林」や「林業」の扱いが を扱うこと。なお,その際,それらと落葉樹を対 増えるかといえば,それは期待できそうにない。 比することによって植物の個体の死について触れ しかし,現行の学習指導要領と同程度の扱いは維 ること。 」 持されるだろうし,教師が取り上げ方を工夫しさ ○中学校技術・家庭科内容の取り扱い (1)イ(製 えすれば,いろいろな場面で森林・林業について 作にかかわる内容に関して) 「主として木材・金 学習していくことは可能であるということも見落 属などを使用した製作品を取り上げること。 」 としてはなるまい。むしろこうした前向きな姿勢 このほか,間接的な扱いとして,小学校生活科 で,教育課程における森林・林業の扱いをとらえ には「身近な自然」 「草木や木の実」 「自然の材料」 たほうがいいのかもしれない。 「野外の自然」 「植物」 , 社会科には「市の土地利用」 現在(平成 10 年版)の学習指導要領では, 直接, 「地域の重要な産業活動」 「主な産業」 「伝統的な 「森林」や「林業」に関して扱いを規定している ところは次の三カ所である。 技術を生かした工業」 「土地利用」 「資源の分布」 「自 然災害」 ,理科には「身近な植物」 「植物」 ,道徳 わ ○小学校社会科第 5 学年内容 (4) 「我が国の国土の には 「身近な自然に親しみ」 「動植物にやさしい心」 自然などの様子について,次のことを地図その他 「自然のすばらしさや不思議さ」 「自然と動植物を の資料を活用して調べ,国土の環境が人々の生活 大切に」 「自然の偉大さ」 「自然環境を大切に」な や産業との密接な関連をもっていることを考える どがある。 ようにする。・・・中略・・・ウ 国土の保全や水資源 また,中学校社会科には「環境の多様性」 「自 かん よう の涵養のための森林資源の働き」 ,内容の取り扱 然と人々」 「産業と地域」 「地域の自然環境」 「産 い(6)のエ「ウについては,我が国の国土保全等 業の発達」 「環境の保全」 ,理科には「植物の生活 30 森林技術 No.791 2008.2 と種類」「生物のつながり」 , 技術・家庭科には「作 義を明確にするうえでは,意識する必要がある。 物の栽培」,道徳には「自然を愛し」 「美しいもの 森林の体験そのものが目的となる場合の森林体 い けい に感動する豊かな心」 「畏敬の念」などの間接的 験の意義は,子どもの心や感性に働きかけること な扱いが示されている。 である。心の癒しや情緒の安定といったことも含 学習指導要領に示された教科・領域における 「森 まれる。自然体験が子どもの心に及ぼす影響はい 林」や「林業」の扱いの構造を概観すれば,小学 くつかの研究でも明らかにされているところであ いや 校低学年で「遊びを通して森林に触れる」 ,山間 るが(文献参照),森林体験を通して子どもの心 地域の中学年で「林業の仕事を調べる」 ,高学年 や感性を豊かにすることに貢献できれば,この目 で「森林資源のはたらき,森林資源の保護・育成 的が達成できたことになる。現在の子どもの置か などについて調べる」となる。 れた状況や社会的な背景を想えば,この森林体験 さらに,中学校では,社会科で「自然条件とし も重要であるには違いない。 ての森林」「産業としての林業」 「森林の保全」な これに対して森林環境教育としての体験の意義 どについて,理科で「樹木の生活や種類」 「森林 は,森林環境教育の目的である「森林に対する正 の生態」などについて学び,技術・家庭科で「木 しい認識と適切な森林へのかかわり方を身につけ 工品の製作」を行うといったところであろう。 ること」への貢献である。つまり,子どもの心や こうした構造をもっと意識し,森林環境教育の 感性への働きかけはその一部であってすべてでは 系統・発展を踏まえた扱いをしていけば,学校に ない。体験を通して,子どもは森林をとらえる技 おけるその扱いも現状よりは充実できるはずであ 能(調べ方や見方)をも身につけていく必要があ る。 る。そして環境教育の三つの視点である「環境の このほか,「総合的な学習の時間」では,教科・ 中で/から」 の視点だけではなく, 「環境について」 領域のように学習指導要領に規定されない森林環 や「環境のため」の視点へも密接にかかわらなけ 境教育を行うことができる。その場合,森林環境 ればならない。体験が,認識の形成や態度の形成 教育の理念をしっかり踏まえ,教科・領域との関 にもかかわっていかなければならないのである。 連を重視しつつ,まさに総合的に展開していくこ 子どもは,大人が思っている以上に自然や環境 とが期待されよう。その際,森林関係者との密接 に対して関心を持っている。自然を大切にしよう な連携のもと,その専門的な知識や技能を積極的 とする意識も強い。しかし,こうした関心や意識 に活用していくことも重要なこととなる。 が大人になるまでなかなか持続しない。それはな 森林環境教育を進めるうえで 留意すべきこと おも ぜか。それは,こうした関心や意識がすべて間接 的な情報によって形成されたものであり,自らの 体験や経験によるものではないからである。だか ①森林体験の意義 ら,こうした関心や意識は,何か別の関心が高ま 森林の体験には,二つの意義がある。一つは, ってくれば脆くも崩れてしまうのである。そうで 森林の体験そのものが目的となる場合の意義であ あるならば,子どもが自然や環境に対して関心を り,もう一つは森林環境教育としての体験の意義 持っているときに,自然を大切にしようとする意 である。この二つの意義は,密接に重なっている 識があるときに,これらの関心や意識を体験によ ため,厳密に区別してとらえるということもあま って実感のあるもの,直接的なものに強化してお り意味がないが,森林環境教育における体験の意 くことが必要となろう。こうした子どもの態度形 もろ くず 森林技術 No.791 2008.2 31 成といった観点からも森林体験をとらえ ていかなければならない。 ②森林に関する子どもの認識 森林に関して子どもたちは,どのよう な認識を形成しているのだろうか。その 現状を把握すると,学校教育における森 林環境教育の課題が浮き彫りにされると ともに,国民一般が持つ森林に対する認 識の課題も見えてくる。 まず,子どもは日本の国土における森 林面積の割合を,実際よりもかなり低く とらえている。特に,都市部に生活する 子どもたちにとっては,身近な所で広大 ▲校庭の樹木を活用した森林環境教育 な森林と接することが少なくなっている ため,そう感じるのも当然であろう。しかし,日 化していないことをしっかりと確認すべきである。 本の森林は国土の 2/3 を占め,この割合の高さ そのうえで,天然林と人工林に分け,それぞれの は世界でも有数であることをきちんと踏まえるこ 森林が抱える問題をとらえていくことが重要であ とが基本である。そして,日本の国土の自然条件 る。そうすれば, 減ってきた天然林は, いかに「守 と対応させるとき,各種の災害などからわれわれ る」かということが課題となるだろうし,増えて の生命や生活を守ってくれているのが,まさにこ きた人工林はいかに手入れをして「使う」かとい の森林であることをしっかり確認しておくべきで うことが課題となるだろう。天然林でも,人の影 あろう。 響を極力少なくして守らなければならない森林も 次に,子どもは日本の森林が,年々減少してき あれば,里山のように人が積極的に手入れをして ていると思っている。マスコミをはじめとして, 守らなければならない森林があることが理解でき さまざまな場面で自然破壊が進んでいるというイ るだろう。天然林と人工林を区別した認識が必要 メージを持たされているからである。この認識は, であるということである。 子どもだけではなく教師も同様である。教師もそ う思っているから,子どもの間違った認識は修正 もう一つ,子どもの認識として特徴的なのは, 「伐ること」=「悪いこと」という図式があるこ されることなく,そのまま生き続けていくことに とである。これは, 「自然破壊」=「伐ること」 なる。日本の森林が年々減少しているという間違 という図式から導かれるのであるが, 「伐ること」 った認識のもとでは,日本の森林が抱える問題を =「生命を奪う」といった図式とも密接に関係し 正しくとらえることを困難にする。なぜなら,こ ているものと思われる。道徳教育などでは, 「生 の認識のもとでは,「日本の森林が抱える問題は, 命の尊重」や「自然への畏敬の念」などを扱って 森林の量的減少であり,それを解決するには森林 いるが,このことと「木を伐ること」との矛盾と を伐らずにいかに保護するかということである」 いってもよい。この問題は,食料生産一般にも当 という結論に行き着くからである。 てはまることであるが, 「食べること」=「悪い 日本の森林面積は,この半世紀ほどほとんど変 こと」という図式にはならない。 32 森林技術 No.791 2008.2 人工林や里山などは, 「伐ること」によって初 国民一人一人の協力となっていくはずである。 めて健全な森林を育成したり維持したりすること おわりに ができるということを,しっかりととらえさせる ことがら 必要がある。また,われわれの生活が,こうした 今後,これまで述べてきたような事柄に配慮し, 木の生命を使うことによって維持できるというこ 森林関係者と学校とが連携しながら森林環境教育 とにも目を向けさせたい。ただ,こうした認識は を進めていくことを期待したい。 言葉だけではなかなか定着しにくい。間伐や枝打 こうした連携の一つに,森林環境教育の教材を ちなどの木を伐ることや植林といった活動を実際 一緒に開発するということも考えられる。現在, に体験したり,森林の育成に従事している人々の 本誌において隔月で「誌上教材研究」という森林 話を直接聞いたりすることで,実感を伴った認識 環境教育の教材作成が連載されているが,この連 とすることが重要となる。 載を通して,森林環境教育の教材の条件として, 森林に関する子どもの認識について,いくつか 次の五つが浮き上がってきている。 の課題を述べてみたが,森林環境教育はこうした ①美しい森林を実感できること 課題に直接,対応できなければならない。 ②現実の森林の様子が具体的にとらえられるこ ③森林へのかかわり と 森林体験を取り入れ,森林に対する認識も形成 できればそれでよいかといえば,まだ,十分では ③生活と森林との「かかわり」が具体的にイメ ージできること ない。森林環境教育は, 「森林と私たちとの関係 ④日本人と森林とのかかわりが見えること 性(かかわり)に着目し,その関係性のあり方を ⑤体験を促すことができること 問い直すことが意図されなければならない」から これらの条件のいずれかを満たす教材を,森林 である。つまり,自分自身と森林との関係性(か 関係者からいろいろ示唆してもらったり,実際に かわり)の再構築が求められるということである。 作成してもらったりすることも,極めて有意義な 自分自身の関係性の再構築が求められるという 連携になるのではないかと思っている。最後に, ことは,何か特定の態度や行動を課すということ こうした教材研究への協力の依頼を付け加えて本 ではない。学習を通して身につけてきた感性や認 稿を閉じたい。 識をフルに働かせて,自分なりの価値判断と実践 うなが 行動に結びつけていくように促すということであ る。それぞれの子どもによって,その関係性は当 然のことながら異なっていてよい。緑の少年団や 森林ボランティアなどに参加するようになること もあるだろうし,自分の家の庭の樹木に関心を向 けるということもある。あるいは,木製品を使う ようにするということも自分なりの関係性である。 重要なのは自分なりの関係性を再構築していく ことである。そして,森林環境教育を継続しなが ら,この関係性を積み重ねていくことである。こ の関係性の積み重ねこそが,森林の保全に対する ≪参 考 文 献≫ 生涯学習審議会答申,「生活体験・自然体験が日本の子ど もの心をはぐくむ」,1999.6 山下宏文,学校教育における森林文化教育―教育改革の 実現に向けた森林文化教育のビジョン―,森林科学, No.31,2001.2 山下宏文,教員養成において「森林」への関心・理解を高 める取り組み,林業技術,No.728,2002.11 誌上教材研究(その 1 ∼ 25),林業技術 No.742 ∼森林技 術 No.790,2004.1 ∼ 2008.1(隔月) 山下宏文,今,求められる森林環境教育の教材― 1 枚の写 真を通して―,森林技術 No.776,2006.11 (やました ひろぶみ) 森林技術 No.791 2008.2 33 予算 平成 20 年度 いし い やすひこ 森林・林業関係 予算案の概要 石井康彦 林野庁 森林整備部 計画課 〒 100-8952 東京都千代田区霞が関 1-2-1 Tel 03-3502-8111 平成 20 年度森林・林業関係予算案の概要 平成 20 年度の林野庁の一般会計予算については,総額で 3,854 億円(対前年度比 97.7%),内訳は公共事業(災 害復旧含む)2,779 億円(同 95.0%),非公共事業 1,076 億円(同 105.1%)となっている。(表①) 林野一般公共事業は,2,824 億円(対前年度 94.9%)となっているが,林野公共予算から 79 億円を非公共事業 にシフトして,新たな政策ニーズに応えつつ森林整備の推進に資する事業の展開を図ることとしており,森林整 備事業の予算額については,このシフト額を含めた場合,前年度を上回るものである。(表②) 京都議定書森林吸収目標の達成に向けては,平成 19 ~ 24 年度の 6 年間において,毎年 20 万 ha の追加整備 が必要な状況の中で,平成 20 年度においては,前年度に引き続き,補正予算と併せて 20 万 ha を超す(概ね 21 万 ha)追加整備に必要な予算を計上したところである。 ▼表① 平成 20 年度林野庁関係予算概算決定額 区 分 19 年度予算額 (単位:百万円) 20 年度概算決定額 対前年度比(%) 公共事業 一般公共事業 災害復旧事業 292,342 282,368 9,974 277,859 267,885 9,974 95.0 94.9 100.0 非公共事業 102,359 107,582 105.1 林野庁一般会計総計 394,701 385,441 97.7 ※上記のほか,地域再生基盤強化交付金措置額を内閣府に計上。 ▼表② 平成 20 年度農林水産一般公共予算概算決定額 区 分 19 年度予算額 (単位:百万円) 20 年度概算決定額 対前年度比(%) 農業農村整備 674,656 667,736 99.0 林野公共 282,368 267,885 94.9 治山事業 112,012 105,250 94.0 森林整備事業 170,356 162,635 95.5 水産基盤整備 144,148 133,937 92.9 19,338 18,635 96.4 農林水産一般公共事業計 1,120,510 1,088,193 97.1 政府一般公共事業 6,874,605 6,662,452 96.9 海 岸 (注)1.上記のほか,地域再生基盤強化交付金措置額を内閣府に計上。 2.農業農村整備には,国営土地改良事業特別会計の一般会計化に伴い増加する経費を含む。 34 森林技術 No.791 2008.2 平成 20 年度林野庁予算の重点事項 未来に向けた「美しい森林づくり」の推進と国産材の復活のため,以下の予算を編成。 Ⅰ 国民ニーズを捉えた「美しい森林づくり」に向け多角的な森林整備の推進 平成 20 年度概算決定額(平成 19 年度予算額)(単位:百万円)…【森林整備事業・治山事業 267,885(282,368) 百万円の内数】 【美しい森林づくり推進国民運動の展開 1,433(1,118)百万円の内数】【花粉発生源対策プロジェ クト 2,587(30)百万円】 ●対策のポイント…地球温暖化防止と森林資源の次世代への継承のために,「美しい森林づくり」を推進します。 その内容は,総合的な間伐推進のための「美しい森林づくり」促進対策,美しい森林づくり推進国民運動の展開, 花粉発生源対策などです。 (我が国の森林・林業の現状) ・森林吸収目標達成を図るために間伐実施が必要な 330 万 ha のうち,高齢級(10 齢級以上)の森林が約 150 万 ha(45%) 。 ・私有林の 4 分の 1 を不在村森林所有者が所有(327 万 ha) 。 ・平成 18 年の木材の自給率は前年に引き続き 2 割を超え(20.3%),国産材の利用量は増加傾向。 ●政策目標…① 2007 年~ 2012 年の 6 年間で 330 万 ha の間伐を実施し間伐の遅れを解消,② 100 年先を見据え, 広葉樹林化, 長伐期化,針広混交林化等多様な森林づくりを推進⇒京都議定書第 1 約束期間(2008 年から 2012 年) における森林吸収目標 1300 万炭素トンの達成 1.「美しい森林づくり」推進総合対策 (1) 「美しい森林づくり」促進対策:森林所有者の負担,地方財政事情など森林整備を巡る情勢に対処し,また, 人工林の資源内容の変化等に対応するため,制度の充実を図るなど,総合的な取組を展開します。 *充実内容 1:高齢級森林の利用間伐を進めます。10 齢級以上(46 年生以上)の森林の間伐について,民間 資金の活用,事後精算という全く新しい方式で助成します。間伐実施者が,短期資金を民間金融機関から借り入 れる際に,これに要する利子を全額負担します。返済は間伐による収入で行い,間伐実施により損失が発生した 場合は,損失額の 2/3(間伐経費の 1/2 以内)を補填します。間伐実施者はリスク軽減により意欲的な事業実施 が可能となります。高齢級森林整備促進特別対策事業 1,000(0)百万円,補助率:定額,事業実施主体:民間団 体 *充実内容 2:7 ~ 9 齢級の間伐への補助を本格的に実施します。人工林の高齢級化に対応して,補助対象を 拡充し,団地的な森林整備を推進します。また,水源かん養や山地災害防止などの機能の程度にかかわらず補助 の対象とします。育成林整備事業等(公共)28,711(35,065)百万円の内数,補助率:3/10,事業実施主体:地 方公共団体,民間団体等 *充実内容 3:現場の創意工夫が活かせる柔軟な助成を行います。国から市町村に交付金を直接交付する仕組 みを創設します。間伐,耕作放棄地等への植林などに取り組むとともに,地域提案枠(事業費の 1 割)を活用し た事業を実施することができます。美しい森林づくり基盤整備交付金(公共)1,000(0)百万円,補助率:1/2, 事業実施主体:地方公共団体,民間団体等 *充実内容 4:定額助成方式による森林整備を引き続き実施します。地方公共団体や森林組合等が,集約化等 の取組を行いつつ,森林所有者等の自己負担を軽減することができるよう,定額助成方式の間伐を推進します。 未整備森林緊急公的整備導入モデル事業(森林・林業・木材産業づくり交付金)2,169(1,971)百万円,補助率: 定額,事業実施主体:地方公共団体,民間団体等 *充実内容 5:森林整備法人等による「非皆伐施業」を推進します。間伐等を繰り返す非皆伐施業への転換に 地域一体で取り組めるよう,合意形成,分収林契約の変更,協定締結等の取組の支援や,有利子の農林公庫資金 と併せ貸しする無利子資金(森林整備活性化資金)の貸付割合の引上げを行います。「美しい森林」共同整備特 別対策事業 700(0)百万円,補助率:定額,1/2,事業実施主体:都道府県協議会 *充実内容 6:水土保全機能の低下した保安林を整備するため治山事業を充実します。過密化等が進んでいる 保安林の水源かん養機能や山地災害防止機能を回復するため,健全な成長促進を図る森林整備の対象齢級を引き 上げ,また,えん堤等の治山施設の整備と併せて行う森林整備の制度を導入します。保育事業,復旧治山事業等 森林技術 No.791 2008.2 35 (公共)57,292(59,533)百万円の内数,補助率:1/2,1/3 等,事業実施主体:国,都道府県 *充実内容 7:路網の整備,間伐材の利用促進等を進めます。低コスト作業システムに対応した路網整備を計 画的に行うとともに,林業用機械の整備,間伐材の用途開拓等により間伐実施の条件を整えます。【林道改良統 合補助事業(公共)499(550)百万円】【森林・林業・木材産業づくり交付金 9,692(9,756)百万円の内数】【山 村再生総合対策事業 300(0)百万円の内数】 *充実内容 8:利用間伐を推進する融資制度を創設します。利用間伐に係る計画に基づき利用間伐を拡大する 林業者(個人,法人,林業公社等)に対して,利用間伐に必要な資金と農林公庫資金の償還元金の円滑な支払い に必要な資金を併せて貸し付ける融資制度を創設します。(利用間伐推進資金(仮称))また,間伐材の生産・引 取・加工を大規模に実施する者に対して,一層低利で運転資金を融通します。(木材産業等高度化推進資金)【金 融措置】 *充実内容 9:地方財政措置を充実します。森林吸収目標達成に資するため,追加的な間伐等の実施に必要な 地方負担について地方債の対象とするなど,地方財政措置を充実します。【地方財政措置】 *充実内容 10:効率的な森林整備が可能な担い手を確保します。低コスト作業等に必要な技術を有する人材 の育成・定着,森林組合等の林業事業体における「森林施業プランナー」の養成の加速化,高性能林業機械のリ ースによる導入を支援し,低コストで効率的な森林整備を担いうる林業就業者,林業事業体を確保します。【緑 の雇用担い手対策事業 6,700(6,700)百万円】【施業集約化・供給情報集積事業 592(559)百万円】【がんばれ! 地域林業サポート事業 100(0)百万円】 (2)美しい森林づくり推進国民運動の展開:美しい森林づくりに向けた森林の整備・保全に取り組むため,民間 組織・企業・個々の国民と一体となった「美しい森林づくり推進国民運動」の展開を図ります。【美しい森林づ くり推進国民運動の展開 1,433(1,118)百万円の内数】 (3)森林病虫害対策の推進:松くい虫被害の北上阻止のための防除対策やトキの野生復帰に向けた松林の保全対 策を推進します。また,ナラ枯れ被害の効果的な防除手法を開発します。 【森林害虫駆除事業委託 151 (151) 百万円】 【営巣木等保全整備事業 40(41)百万円】【ナラ枯れ被害の総合的防除技術高度化調査 10(0)百万円】 2. 花粉発生源対策の推進…花粉症対策品種の開発,苗木の生産量の増大に向けた供給体制の整備を図ります。 また,少花粉スギ林への更新・広葉樹林等への誘導を重点的に促進します。【花粉発生源対策プロジェクト 2,587 (30)百万円】 3. 緑資源幹線林道事業の廃止と新たな交付金の創設…緑資源幹線林道事業については,独立行政法人の事業と しては廃止し,平成 20 年度からは,残区間を対象に地方公共団体が森林整備等を促進する観点から現行計画を 柔軟に見直して行う路網の骨格となる「山のみち」の整備に対して助成を行い,地域活性化を推進します。山の みち地域づくり交付金等(公共)7,000(0)百万円,補助率:定額,事業実施主体:地方公共団体,民間団体等 Ⅱ 森林資源の利活用による地域の新たなビジネスの創出 【森林資源利活用新産業創出対策 2,547(51)百万円】 ●対策のポイント…森林や山村の地域資源を利活用した地域の新たなビジネスを創出することにより,林業・木 材産業の再生と適切な森林整備,地域の活性化を図ります。 (木質資源利用の可能性)・林地残材や製材工場残材など木質資源の年間発生量は 3,120 万 m3(推計)。・うち, 熱エネルギー等としての利用量 1,840 万 m3,未利用量 1,280 万 m3(41%)。林地残材の発生量 860 万 m3(推計) のほとんどが未利用。・2030 年頃まで達成すべき生産目標である国産バイオ燃料 600 万 kl のうち,木質系から の生産可能量は 200 万 kl から 220 万 kl と試算(国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた工程表)。・プラスチ ックの生産量は 1,400 万 t。バイオプラスチックの生産量は 8.7 万 t(推計)。・民有林における間伐材の利用量 は 284 万 ha(2005 年)。 ●政策目標…10 年後に 2,000 億円規模のビジネスを創出 1. 木質資源を利用した新たな産業の創出への支援 (1)間伐と木質資源の利用を一体的に推進する取組:間伐により発生する木質資源の安定的な確保及び燃料用等 への利用に対する支援を通じて,間伐と木質資源の利用を一体的に進めるモデルを構築し,木質資源を利用した 36 森林技術 No.791 2008.2 新たな産業の創出と森林・林業の活性化を図ります。【木質資源利用ニュービジネス創出事業 573(0)百万円】 【提 案型未利用木質資源利用地域再生施設モデル整備(森林・林業・木材産業づくり交付金)400(0)百万円】 (2)森林資源活用型ニュービジネス創造のための製造システムの構築:林地残材や間伐材等の未利用森林資源活 用のため,先進的な技術による木質からのエネルギーやマテリアルの製造システムを構築することにより,新た なビジネスを創出し,地域を活性化します。森林資源活用型ニュービジネス創造対策事業 1,200(0)百万円,事 業実施主体:民間団体 2. 森林・山村資源を活用した新たな産業づくり…森林やこれに関連する自然的・文化的資源及び間伐材,広葉 樹,竹などの資材を幅広く活用した新たな産業の創出等を支援し,山村を活性化します。【山村再生総合対策事 業 300(0)百万円】 【特用林産物消費・流通総合支援対策事業 74(51)百万円】 Ⅲ 木材の加工流通体制の整備と林業生産コスト削減による国産材の競争力の向上 【国産材の競争力の強化 15,868(15,885)百万円】 【森林・林業・木材産業づくり交付金 9,692(9,756)百万円の内数】 ●対策のポイント…林業再生の担い手の育成や森林組合等の林業事業体の活性化の支援を通じて,林業生産コス トを削減し,国産材の安定供給体制を確立します。また,製材品の品質向上や物流効率化の支援等を通じて,高 品質製品生産体制の確立と流通の改革,国産材の利用拡大を進めます。これらにより,国産材の競争力の向上を 図ります。 (我が国の素材生産の労働生産性)・我が国の素材生産の労働生産性は全国平均で 4.7m3/ 人日だが,低コ スト作業システム(作業路網と高性能林業機械を組み合わせた低コスト・高効率な作業システム)を採用し, 8.0m3/ 人日の生産性をあげている事業体も存在。 (我が国の木材利用) ・平成 18 年の木材の自給率は前年に引き続き 2 割を超え(20.3%),国産材の利用量は増 加傾向。 ・平成 18 年の建築基準法改正等により,品質・性能の確かな木材製品の安定的な供給に対するニーズが 更に高まっているが,建築用製材品に占める乾燥材の割合は約 2 割どまり。・木造住宅の構造材に使用される国 産材のシェアは,梁・桁では 1 割弱,柱は約 5 割どまり。 ●政策目標…森林施業の集約化に取り組む森林組合の拡大:森林組合員所有森林面積の約 4 割(19 年)→約 8 割(21 年) ,木材供給・利用量を平成 27 年までに 35%拡大:1,700 万 m3(16 年)→ 2,300 万 m3(27 年) 1. 林業再生の担い手の支援と地域の活性化 (1)多様な技術を有する人材の育成・定着の促進:「緑の雇用」を拡充し,低コスト施業等に必要な技術の向上 に向けた取組に対して支援することにより,多様な技術を有する人材の育成・定着を促進します。緑の雇用担い 手対策事業 6,700(6,700)百万円,補助率:定額,事業実施主体:民間団体 (2)提案型集約化施業の推進と不在村森林所有者への働きかけの強化:森林組合等の林業事業体における「森林 施業プランナー」の養成の加速化を支援し,森林所有者への積極的な提案により集約化した施業の安定的な受託 を推進します。また,司法書士団体と森林組合系統との連携による都市部在住の不在村森林所有者への森林施業 の働きかけを強化します。施業集約化・供給情報集積事業 592(559)百万円,補助率:定額,1/2,事業実施主体: 民間団体 (3)地域のニーズへのよりきめ細かな対応:森林づくり交付金と強い林業・木材産業づくり交付金の一体化,本 交付金を国から市町村に直接交付する仕組みの導入により,地域のニーズによりきめ細かく対応した取組を支援 します。森林・林業・木材産業づくり交付金 9,692(9,756)百万円の内数,補助率:定額,事業実施主体:地方 公共団体等 2. 低コスト作業システムの普及・定着の促進と低コスト育林技術の開発・評価…路網と高性能林業機械の組合 せによる低コスト作業システムの普及・定着を図るため,高性能林業機械のリースによる導入を支援します。ま た,苗木の運搬から造林,間伐に至るまでの作業工程の低コスト化を図るため,育林技術の開発・評価を行いま す。 【がんばれ!地域林業サポート事業 100(0)百万円】【低コスト育林高度化事業 36(0)百万円】 3. 森林情報の収集などの地域活動への支援…意欲ある林業事業体等による森林施業計画の作成を促進するため, 森林施業の集約化に必要な「森林情報の収集活動」を支援します。さらに,森林施業計画作成後は,森林施業の 実施に必要な「施業実施区域の明確化作業」及び「歩道の整備等」を支援します。森林整備地域活動支援交付金 森林技術 No.791 2008.2 37 7,247(7,453)百万円,補助率:定額,事業実施主体:地方公共団体 4. 大規模産地と大規模加工施設を直結した新生産システムの着実な実施…全国 11 のモデル地域において,地域 材の需要拡大と林業の再生を図るモデルを構築する「新生産システム」の着実な実施を図ります。具体的には, 施業の集約化を通じた安定的な原木供給を通じ,川上・川下の事業者が一体となって低コスト・大ロットの安定 的な木材供給体制を確立します。新生産システム推進対策事業 848(964)百万円,補助率:定額,1/2,事業実 施主体:民間団体 5. 品質向上と流通効率化などによる木材産業の競争力強化…乾燥度合いや寸法精度等の品質管理の徹底による 高品質製品の生産体制整備と邸別配送に対応した物流拠点の整備による流通の改革を進め,地域材利用量の増大 を図ります。また,川上と川下の協定等に基づき大ロットでの安定取引を確立するため同業種間の連携を図る者 に対して,一層低利の運転資金を融通します。【地域材生産・物流拠点整備支援対策 895(0)百万円】【木材産 業等高度化推進資金(金融措置)】 6. 住宅分野における地域材利用の推進…住宅分野における地域材の利用を拡大するため,住宅の構造材におけ る地域材の新たな利用技術の開発や,森林所有者,製材工場,工務店などの連携による地域材を活用した家づく りの普及を図ります。住宅分野への地域材供給支援事業 250(209)百万円,補助率:定額,1/2,事業実施主体: 民間団体 Ⅳ 流域保全のための効率的かつ総合的な国土保全対策の推進~大規模山地災害総合対策~ 【治山事業 105,250(112,012)百万円】 ●対策のポイント…大規模災害に備えるため,既存の施設や森林等を活用する形で効率的に山地防災力を強化し ます。また,危険地区の情報提供や災害発生時の支援等のソフト対策とも一体となって,総合的な治山対策を推 進します。 (我が国の山地災害の発生状況等)・「非常に激しい雨(1 時間降水量 50mm 以上)」のアメダス 100 地点当た り年間発生回数 16.6 回(昭和 51 年~昭和 60 年平均)→ 21.8 回(平成 8 年~平成 17 年平均) (気象庁資料より)・山地災害危険地区数 約 23 万 6 千箇所(平成 17 年度末)・山地災害発生箇所数約 3,300 箇所(平成 18 年) ・強い降雨現象は頻度が増す可能性が非常に高く,洪水リスクを増加させる。「気候変動に関 する政府間パネル(IPCC)作業部会報告書(平成 19 年 4 月 6 日公表)」より抜粋 ●政策目標…周辺の森林の山地災害防止機能等が確保された集落数を平成 20 年度末までに 4,000 集落増加:約 4 万 8 千集落(15 年度)→約 5 万 2 千集落(20 年度) 1. 治山施設機能強化事業…山地災害の危険性の高い地区において,既存の治山施設の防災機能を強化すること により,大規模な崩壊や土石流等の山地災害による被害を効果的・効率的に防止・軽減します。治山施設機能強 化事業(公共)1,400(0)百万円,補助率:1/2 等,事業実施主体:国,都道府県 2. 火山防災林整備促進対策…火山山麓部の森林地帯において,泥流等の流出抑制を図る緩衝帯としての機能を 発揮させるための森林の整備や,泥流等を安全に下流に誘導する土塁の設置等を総合的に実施し,火山活動によ る被害を防止・軽減します。土砂流出防止林造成事業等(公共)832(645)百万円の内数,補助率:1/2 等,事 業実施主体:国,都道府県 3. 流域全体を対象とした治山対策の推進…国有林と民有林とが連携して一体的な整備を行う特定流域総合治山 事業等により,流域全体を対象とした治山対策を推進し,大規模な山地災害の復旧等を効果的・効率的に進めま す。特定流域総合治山事業等(公共)53,586(55,185)百万円の内数,補助率:1/2 等,事業実施主体:国,都 道府県 4. 山地災害危険地区情報の再整備…山地災害危険地区の再点検の結果を活用し,山地災害危険地区に関する情 報を地域住民等へ提供することにより,迅速な避難を助長し,大規模な山地災害による被害を軽減します。森林・ 林業・木材産業づくり交付金 9,692(9,756)百万円の内数,補助率:定額,事業実施主体:都道府県 5. 森林管理局による迅速・円滑な支援の実施…大規模山地災害発生時における被害箇所の調査や,災害復旧対 策についての助言を行う専門家の派遣など,森林管理局による都道府県に対する支援を引き続き迅速・円滑に実 施します。 38 森林技術 No.791 2008.2 6. 直轄地すべり防止事業の新規着手…大規模な地すべりによる災害を防止するため,新たに,徳島県那賀郡那 賀町阿津江の民有林において,直轄地すべり防止事業に着手します。 Ⅴ 持続可能な森林経営の実現に向けた国際的な取組の推進 【違法伐採総合対策推進事業等 156(151)百万円】【国際林業協力事業等 356(363)百万円】【国際機関への拠 出金 189(196)百万円】 ●対策のポイント…国際的な協調の下で持続可能な森林経営を推進するため,地球規模の課題である違法伐採対 策及び森林の減少・劣化対策に取り組みます。 (森林・林業の国際的動向)・インドネシアで生産される木材の 50%以上が違法伐採であるとの報告(英・イ ンドネシア政府の共同調査 1999 年)。・世界の森林は,2000 年から 2005 年にかけて,日本の国土の 2 割に相当 する年平均 730 万 ha の純減(FAO「世界森林資源評価 2005」)。 ・森林減少・劣化により発生する温室効果ガスは, 総排出の 2 割を占めると言われており,地球温暖化防止の観点から極めて重要な課題。・2008 年の G8 サミット (我が国主催)において,温暖化対策及び違法伐採対策において国際イニシアチブを主導することが重要。 ●政策目標…○木材トレーサビリティ技術を活用した木材生産国における違法伐採対策を実現,○森林減少・劣 化防止に向けた技術を開発し,事業対象国における持続可能な森林経営を支援 1. 違法伐採対策の推進…2 次元バーコードによる木材トレーサビリティ技術の現地実証を行い,木材生産国にお いて早急な対策が求められている違法伐採問題への取組を推進します。木材追跡システム実証事業 32(0) 百万円, 補助率:定額,事業実施主体:民間団体 2. 森林減少・劣化対策の推進…衛星画像等によって途上国の森林資源動態の要因分析や経年変化を把握できる モデルの開発を行います。また,技術移転や,途上国での人材育成を通じて,森林減少・劣化問題に取り組みま す。熱帯林資源動態把握支援事業 40(0)百万円,事業実施主体:民間団体 Ⅵ 国有林野の管理経営の適切かつ効率的な推進 【事業施設費 76,138(68,636)百万円】 【公益林等保全管理費 31,279(31,888)百万円】 【利子補給 20,845(21,925) 百万円】 ●対策のポイント…公益的機能の維持増進を旨として地球温暖化防止等の課題に積極的に取り組みつつ,国有林 野を適切かつ効率的に管理経営するため,必要な経費について一般会計より繰り入れます。 (国有林野の現状) ・我が国森林面積の約 3 割を占める国有林野は,奥地脊梁山脈や水源地域に広く分布してお り,その約 9 割が保安林に指定されているなど公益的機能の発揮に大きな役割を果たしています。・国有林野は, 白神,屋久島,知床といった世界自然遺産のほとんどを占めており,そうした原生的な天然生林等について,保 護林 833 箇所 78 万 ha を設定。・また,種の保全や遺伝的な多様性を確保するため保護林相互を連結した「緑の 回廊」については,24 箇所 51 万 ha を設定(平成 19 年 4 月 1 日現在)。 ●政策目標…公益的機能の維持増進を旨とした効率的かつ着実な森林の整備・保全等を推進 1. 森林の公益的機能の維持増進…京都議定書の森林吸収目標達成を図るため,国有林野事業としても間伐等の 森林整備を集中的に実施し,地球温暖化の防止とともに,美しい森林づくりを推進します。【森林整備の推進(事 業施設費) (公共)76,138(68,636)百万円】 2. 世界遺産の保全…世界遺産にふさわしい森林の保全を推進するため,自然遺産として暫定一覧表記載地域と なっている小笠原諸島については,推薦に向けての外来種対策を実施します。また,文化遺産として世界遺産推 薦地域及び暫定一覧表記載地域となっている富士山周辺等の森林の保全策を実施します。【世界遺産保全緊急対 策事業 107(79)百万円】 3. 生物多様性の保全…生物多様性条約の締約国会議の目標のひとつである,2010 年までに生物多様性の損失速 度を顕著に減少させることや,生物多様性国家戦略の着実な実施を図るため,新たな保護林の設定を緊急に推進 するための取組を実施します。【保護林拡充緊急対策事業 29(0)百万円】 森林技術 No.791 2008.2 39 くさ 野趣味があり、動物質を使わな くても栄養たっぷりなのだそうで こんにゃくと人とのかかわり ロリーであるから肥満防止に効用 す。 こんにゃくの食品成分は、一〇 筆者も、これに習い作って試食 〇g当たりわずか五~七カロリー をしました。こんにゃくとごぼう ( 五 訂、 食 品 成 分 表 ) で す。 低 カ でき上がりました。 神山さんは 「お く、全く臭みのないこんにゃくが を油で炒めるので、こんにゃくは が あ る と 言 わ れ て い ま す。 ま た、 ろしこんにゃく」は「ミキサーこ 番美味しいのでしょう。神山さん ないと言います。だから刺身が一 幾分しこしこしますが、汁も油が こんにゃくには血中コレステロー お い んにゃく」に比べて、ざらつきが のお勧めで、灰汁抜きをしながら 浮き肉汁の食感で、体が温まりま よく似た食感でとても懐かしいも どものころに食べた塩くじら汁に 作ったのですが、なんと筆者が子 そこで家内は、こんにゃくと野 菜をたっぷり入れてけんちん汁を す(写真⑥)。 物と考えられることから、生産量 ります。健康食品として有望な作 しかし、わが国のコンニャク栽 培面積、栽培農家は減少傾向にあ われます。 としてさらに見直されていくと思 あるとされ、最近は美肌効果があ ルや中性脂肪を低下させる効果が 刺身にして賞味しました。まさに のでした。 を増大し、地域振興を図るように 1 こんにゃくのたぬき汁 こんにゃくのたぬき汁の食べ方 のあらまし(郷土の生活文化集 食物編、天竜市教育委員会)は次 め、野菜との炊き合わせなどがあ 神 山 さ ん の こ ん に ゃ く 料 理 は、 刺身のほかに豆腐の白和え、油炒 おわりに るとも言われて、今後は健康食品 こんにゃくのたぬき汁をいつご ろから食べ始めたのかはわかりま 期待したいものです。 こんにゃくの食べ方 せんが、これも山村食文化の一つ 前回に紹介できなかった食べ方 を二点ほど紹介します。 のようです。 と賞味しました。 して、水にさらし、灰汁を抜きま にさらして灰汁を抜き、洗って水 す。ごぼうをささがけにし、酢水 気を切ります。鍋を熱し、植物油、 って天ぷらにしました。一つはふ そ ります。また、こんにゃくのほか み つうの天ぷら揚げと同じく、衣を いた こんにゃく、ごぼうを入れて軟ら いろあります。再度訪問してご紹 こんにゃくを、塩、コショウ、小 付けて揚げたもの(写真⑦右)と、 にもそば打ち、漬物作りなどいろ 介したいと考えています。 き、炒めた材料を入れてしばらく 弱火で煮ます。味噌汁の味がなじ さっと火を通して食べます。 神山さん、いろいろありがとう ん だ ら、 ね ぎ の ぶ つ 切 り を 入 れ、 し て 軽 く 揚 げ ま す( 写 真 ⑦ 左 )。 どちらも軽やかに揚がり美味です。 ございました。 麦粉を混ぜ味付けしたものでまぶ かく炒めます。味噌をだし汁で溶 2 こんにゃくの天ぷら こんにゃくを短冊に切り、クッ キングペーパーに包んで水気を切 こんにゃくをひと口で食べられ る大きさにちぎり、水から下茹で 「とろ刺し」の食感です(写真⑤)。 す。けんちん汁に近い味で美味で 写真⑤ 刺身こんにゃく ▲ ▲写真② こんにゃく の素 ▼写真⑦ 天ぷら ▼写真③ こんにゃくの素 を入れてかき混ぜる ▲写真④ 2 倍に大きくなり 丸みを帯びる ▲写真⑥ たぬき汁 今回のおろし金ですりおろした こんにゃくは、薄い灰色で軟らか 森林技術 No.791 2008.2 40 ▲写真① おろし金ですりおろす 山村 の 食文化 今月のお品書き 三十の膳 こんにゃく(2) すぎうらたかぞう 杉浦孝蔵 東京農業大学名誉教授 食材 ①こんにゃく芋、②こんにゃく の素 あるバットに静かに流します。こ ひた してあるので、一晩水に浸した芋 のとき、こんにゃくに空気が入ら 次にボウルに水を七~八分目入 れます。そして、両手にゴム手袋 ります。 がら芽やひげ根などをきれいに取 がよく固まるといいます。 神山さんは、一晩屋内に置いたほ 面を軽く叩きながら平らにします。 ないように、手でこんにゃくの上 む をたわしでよく洗い、皮を剥きな をはめ、おろし金を支えるための 翌朝、こんにゃくの灰汁抜きを します。 あ く 四~五時間経過すると固まります。 板(厚さ約五㎜、幅はおろし金の 幅より少し広く、長さはボウルに 斜めに入れてもボウルより少し長 中で包丁で切り形を揃えて切り目 まず、バットのこんにゃくを取 り扱いやすい大きさに、バットの そろ し金をのせて歯の細かい面で芋を めがよい)を当て、その上におろ ます。 ふっとう ットから取り出しやすいようにし 丁寧にすりおろします(写真①) 。 に水を少し入れ、こんにゃくがバ すりおろされた芋は、ボウルの 底に沈みます。すりおろしが終わ をよくかき混ぜます。 で少しピンク色になります。これ リンゴをすりおろしたような感じ と、 こんにゃくは約二倍に膨張(写 返します。四〇分ほど沸騰させる ように何度もこんにゃくを上下に ゃくの中まで熱がよく通り煮える の 直 径 よ り 幾 分 長 い 物 )、 ⑤ バ ッ って三~四分経過すると沈殿しま 次に、鍋で沸騰させた湯に、切 おおなべ うわ みず ト、⑥大鍋(直径四〇~五〇㎝)。 す。 上 水 を 少 し 残 し て 捨 て る と、 ったこんにゃくを入れて、こんに 用具 はじめに ①ゴム手袋、②ボウルまたはバ 前 号 に、 こ ん に ゃ く の 作 り 方、 ケツ、③おろし金、④板(ボウル 食べ方は地方によっていろいろと 異なることを記しました。 山村の古老の話によると、こん にゃくはなんといっても「おろし ま 金でおろしたこんにゃく」が一番 う 美味いと言います。 真④)し、丸みを帯びるので、さ 三〇分ほど煮ます。次に、新しい こんにゃくの作り方 芋一㎏に二五〇gの割合で入れて 水に入れてさらします。これでい らに小さく切り、同じ鍋でさらに こんにゃく作りに用いるこんに ゃく芋は、当地では畑で栽培した よくかき混ぜます。上手にかき混 つでも食べられます。 素(炭酸ナトリウム、写真②)を 三~四年生の芋を使いますが、今 ぜないと、粒々ができてきれいに 次 に、 あ ら か じ め カ ッ プ 一 杯 と の湯で溶いてあるこんにゃくの ん(七十八歳)を昨年の十二月上 回は神山さんの茶畑近くに生育し 保存はあまりできませんが、茹 で汁に入れておくと十日前後はも そこで、今回は栃木県鹿沼市(旧 粟野町)にお住まいの神山雅子さ 旬にお訪ねして、おろし金で芋を て い た 三 年 生 の 芋 を 使 い ま し た。 仕上がりません。五~六分かき混 ちます。食べるときに水にさらし、 いも すりおろして作るこんにゃく作り ぜるとピンク色は消えます(写真 洗って食べます。 つぶつぶ について、いろいろとご指導をい したがって、無肥料、無農薬の芋 ③)。 こ れ を、 こ ん に ゃ く が バ ッ ゆ ただいたので紹介します。 トに付かないように、水を入れて こんにゃく芋は掘り取って乾燥 です。 準備するも の 41 森林技術 No.791 2008.2 本の紹介 ●コラム● 太田誠一 編 大きかった。 生物資源から考える 21 世紀の農学 第 4 巻 時代によって注目される機能は 森林の再発見 移り変わるが,森林は人間の生活 の身近にあり,多くの恵を期待す 発行所:京都大学学術出版会 〒 606-8305 京都市左京区吉田河原町 15-9 京大会館内 TEL 075-761-6182 FAX 075-761-6190 2007 年 11 月発行 A5 判 401p 定価:本体 4,200 円+税 ISBN978-4-87698-339-1 る存在である。 しかし,われわれは森林につい てどこまで知っているのだろうか。 本書は,それぞれの分野を代表す る研究者が,多様な機能や生物的 温暖化が深刻な環境問題として 消失が地域の気候に与える影響も 特徴などの森林の実態について, 認識され,森林の二酸化炭素の吸 指摘されている。また,急激な熱 最新の知見も含めてわかりやすく 収源としてやカーボンニュートラ 帯林の消失や劣化が大きく取り上 解説したものである。 す ルな資源の供給源としての機能に げられたときは,そこに棲む野生 本書は,第 1 章 資源管理から 注目が高まっている。海から遠い 動物への影響が注目された。戦後 見た森林の新たな価値,第 2 章 内陸部の森林がなくなることが降 の森林が荒廃していた時期は,水 森林生態系における土壌動物群集, 雨環境を大きく変えるなど,森林 土保全機能に対する国民の期待が 第 3 章 森林土壌を腐植から科学 ●お知らせ● 平成 19 年度 年会費納入のお願い ●会員の皆様にはますますご清栄 ●なお,会費納入には「自動引き のこととお喜び申し上げます。ま 落とし」も可能です。ご利用に際 た,本会の会務運営では平素より しては下記担当までご連絡くださ ≪記≫ ● 19 年度会費(平成 19 年 4 月~ ご高配を賜り厚く御礼申し上げま い。また,「自動引き落とし」の 平成 20 年 3 月) す。 手続きをされている会員は,10 ●普通会費 3,500 円 月中に引き落としとなっておりま ●学生会費 2,500 円 すのでご承知おきください。 ●法人会費 6,000 円(1 口) ●さて,平成 19 年度会費の納入 期限(毎年度 12 月末日)が過ぎ ております。まだお納めいただ ●すでに納入されている場合はご いていない皆様は, 「払込取扱票」 容赦ください。 を同封した会費納入の案内状を別 担当:普及部 加藤秀春 〒 102-0085 東京都千代田区六番町 7 途お送りいたしておりますので, ●特に支部幹事の皆様方へのお願 T e l 03-3261-6968 これにより納入方,よろしくお願 いです。支部につきましては,会 Fax 03-3261-5393 いいたします。 「払込取扱票」を 員の皆様の名簿を併せてご提出い ご利用されますと,送金手数料は ただくこととなっております。ま ※お問合せの際は,会員番号の明 かかりません。 だお寄せいただいていない支部幹 示をお願いいたします。 事様には,ご提出方,よろしくお ●前年度会費が未納の会員につい 願いいたします。 ては,未納分が合算されますので, ご承知願います。 42 森林技術 No.791 2008.2 (社)日本森林技術協会 ●コラム● こだま 「一年の計は元旦にあり」,「今年こそは!」 と目標を立てるが,「そのうちにやれば」と 先送りになり,結局 1 年が過ぎてみれば目標 それ自体が何であったかと考える情けない結 果で終わっている。反省しきりである。そん な中で今年は小さなことでも日々確実にと考 森林の役割,第 5 章 良質の水の 源としての森林,第 6 章 森林の 防災機能,第 7 章 森林の多様性 と動態を読み解く,第 8 章 人間 と野生動物との新たな関係,第 9 章 京の原風景―文化に育まれた 都市の野生―,第 10 章 バイオマ スの新たな機能探求,で構成され ている。 第 1 章が,総論的な内容を含ん でおり,第 2 章以下が各論的な内 容となっている。 いずれの章も,非常に読みごた えのある内容で満たされ,新たな 知識を提供してくれる。特に,バ イオマスの新たな機能探求の章に 紹介されている木材の素材として の大きな可能性は,私にとって新 鮮な驚きであった。 小さなことでも確実に! する,第 4 章 水の循環における えている。 さて,最近の大きな関心事は地球温暖化の 問題である。新年早々の新聞には「怒る天, 人に牙,温暖化の脅威急加速」の見出しが大 きく出ていた。世界各地での異常気象の多発 の記事である。ノーベル平和賞を受賞したア ル・ゴアの,人類が直面している最大の危機 として取り上げた「不都合な真実」,不都合 なものには耳を貸そうとしない真実としての 地球温暖化の問題である。 昨年末にバリ島で開催された地球温暖化国 際会議 COP13 において,「ポスト京都」の 新たな枠組みづくりを 2009 年までに仕上げ る行程表に各国が合意した。そして,今年は とう や こ 洞爺湖サミットが開催される。 京都議定書の温室効果ガス削減のための約 束期間が今年から始まる。基準年(1990 年) から 6%の削減を課されている中で,森林に よる吸収目標を確実に達成するため,間伐等 の追加的な整備を行うための予算も措置され た。 一方,現状では基準年に対し 6%強も増加 しているという。特に,「業務(オフイスビ ル等)・家庭」で増加しているという。私た ちが日々の暮らしの中で小さな努力を重ね, ある程度の用語を知らないと読 少しでも事態の改善につなげていかなければ み進むのに苦労する箇所もあるが, ならない。 著者らがわかりやすく説明しよう 100 年後の人々はどんな環境の中で生活す としていることは文面からよく伝 るのか。 わってくる。 今そこにある危機・地球温暖化の問題は「そ 一般の方が森林についての正し のうちにやれば」では済まされない問題であ い知識を学ぶ本として,また特に る。 森林関係の大学院生が,自分の研 毎日の生活,そして家庭で,自分でやれる 究課題の位置づけや将来的な展開 ことは小さいことでも,日々確実に取り組ん のヒントを得る本としてうってつ でいきたい。 けである。 (東京大学 教授/丹下 健) (みどり) ( この欄は編集委員が担当しています ) 森林技術 No.791 2008.2 43 コラム ● ● ● 統計に見る 日本の林業 ●● ●● ● 林野火災と森林国営保険 近年の林野火災の動向を見ると, に春の入山者が増加する時期を中 短期的な増減はあるものの,長期 心に,防火意識を高めるための啓 的には減少傾向で推移しており, 発活動を実施することが重要であ 平成 17 年の林野火災については, る。 発生件数が 2,215 件,焼損面積が * 1,116ha となっている(図①)。 森林国営保険は,政府が森林国 一般に,林野火災は冬~春(12 営保険法に基づき,森林に対する 月~ 4 月)に集中して発生してい 火災,気象災等を対象として実施 る。火災の原因は,そのほとんど する保険事業である。近年,大規 が人による不注意な火の取り扱い 模な自然災害が多発している状況 によるものである。このため,特 や高齢級の森林が急増しつつある 状況から見て,林業経営の安定及 び森林の多面的機能の持続的発揮 を図るうえで,森林保険は必要不 可欠のものである。 しかしながら,その加入率は平 成 17 年度末現在で 16%程度と漸 減傾向にあることから,保険金支 払の迅速化,事務の効率化等を通 じて一層活用しやすい保険とする ことにより,加入を促進すること が必要である(図②)。 (件数) 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 昭和40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 平成元 3 5 7 9 11 13 15 17 (年) ▲図① 林野火災の発生件数推移 資料:消防庁統計資料に基づき作成 (%) 35 30 25 20 15 10 5 0 昭和59 61 63 2 4 6 8 10 12 14 16 (年度) ▲図② 森林保険加入率の推移 資料:林野庁業務資料 注:加入率は,民有人工林面積に対する,森林国営保険と全森連共済の加入面積合計の割合である。 44 森林技術 No.791 2008.2 森林・林業関係行事 2月 行事名 開催日・期間 会場 主催団体 連絡先 平 成 19 年 度 中 央研修 (財) 日本住宅・ 主婦会館プラザエフ 東京都港区赤坂 2-2-19 「マーケットが 2/22 木材技術セン (東京都千代田区) Tel 03-3589-1796 求める木材と ター は」 行事内容等 木材産業界以外の分野からの情報提供及び 提言を受けることにより,モデル地域内に おける参加企業等の連携を図り,林野庁が 実施する木材安定供給圏域システムモデル 事業の推進に資するための研修。 3月 行事名 担当者研修会 「 木 育 フ ォ ー ラムin島根」 担当者研修会 「 赤 レ ン ガ 木 育 フォーラム (in北海道) 」 第 7 回全国編み 組工芸品展 開催日・期間 会場 主催団体 連絡先 行事内容等 (財) 日本木材総合情報センターでは,「日 本の森を育てる木づかい推進緊急対策事 「くにびきメッセ」(財)日本木材 東 京 都 文 京 区 後 楽 1- 業」として,新たな木の文化を創造する「木 3/2 国際会議場 総合情報セン 7-12 育」事業への取組みを開始した。「木育と (松江市) ター Tel 03-3816-5595 は何か」の再認識とともに,「木育の目指 すもの」についての理解を深めてもらうた めに開催。 (財) 日本木材総合情報センターでは,「日 本の森を育てる木づかい推進緊急対策事 「旧・北海道庁 (財)日本木材 東 京 都 文 京 区 後 楽 1- 業」として,新たな木の文化を創造する「木 3/8 (赤レンガ) 」 総合情報セン 7-12 育」事業への取組みを開始した。「木育と (札幌市) ター Tel 03-3816-5595 は何か」の再認識とともに,「木育の目指 すもの」についての理解を深めてもらうた めに開催。 編み組工芸品に秘められた魅力を広く周 交流センター 奥会津三島編 福島県大沼郡三島町大 3/15 ~ 知し,全国各地の編み組工芸品の振興と伝 山びこ 組品振興協議 字名入字諏訪ノ上 395 23 統的技術技法の発展を図ることを目的に開 (福島県三島町) 会 Tel 0241-48-5502 催。 ●シンポジウム 上下流が連携した森林・林業木材産業の再生を目指して ―平成 19 年度上下流連携いきいき流域プロジェクト事業 日時:2 月 25 日(月)13:00 ~ 17:00 場所:スクワール麹町 3 階「錦華」 (東京都千代田区麹町 6 丁目 6 番地) 主催:日本林業技士会 後援:林野庁・全国森林組合連合会・(社)全国木材組合連合会 定員:200 名,入場無料 プログラム 開 会:主催者・来賓あいさつ 13:00 ~ 13:10 第 1 部:事例発表 13:10 ~ 14:10 流域森林・林業活性化センター(3 団体) 第 2 部:講演 14:20 ~ 17:00 「転換期を迎えた林業・林産業への提言」 鹿児島大学農学部教授 遠藤 日雄 氏 「提案型集約施業による林業経営」 日吉町森林組合理事兼参事 湯浅 勲 氏 「元気あふれる森を創造し,子どもを元気にする」 (株)モビリティランド・ツインもてぎ・ハローウッズ 森のプロデューサー 﨑野 隆一郎 氏 申込先:(社)全国森林レクリエーション協会 Tel 03-5840-7471 Fax 03-5840-7472 http://www.shinrinreku.jp (申込書ダウンロード可) 締 切:2 月 15 日(金) 森林技術 No.791 2008.2 45 協会からのお知らせ(再掲) 林業技士 ●第 54 回森林技術賞:所属支部長推薦,締切は平成 20 年 3 月末を予定。 登録更新のご案内は 森林・林業にかかわる技術の向上に貢献し,森林・林業振興に多大な業 届いていますか 績を上げられた方に贈られます。 ●更新グループ A(今月号裏表 ●第 19 回学生森林技術研究論文コンテスト:所属大学支部長推薦,締切 紙参照)の皆様のH 19 年度の登 は平成 20 年 3 月 15 日を予定。森林・林業にかかわる技術の研究推進と 録更新受付は終了しました。更新 若い森林技術者の育成を図るため大学学部学生を対象として,森林・林 のご案内は届いていますか。不達 業に関する論文(政策提言も含む)を募集しています。 郵便が事務局に戻っています。住 ●第 12 回日林協学術研究奨励金助成テーマ募集:募集期限は平成 20 年 2 所変更の場合は事務局までお知ら 月末日を予定。詳細は,本会ホームページ[検索⇒日本森林技術協会- せいただくこととなっています。 技術開発の奨励-学術研究奨励制度-助成の内容と募集要領]をご参照 8 月号の 25 ページ末尾にも「お ください。 知らせの郵送」に関する記載があ ●森林技術コンテスト/森林・林業写真コンクール:諸般の事情により, りますのでご確認ください。 開催並びに募集を「見合わせ」とさせていただきます。 ●会員配布図書『住民ボランティア奮戦記 まちの森林づくり 10 余年』 普及部関係連絡先 及び『森林ノート 2008』を,会員の皆様には 2 月号と同時にお届けし ています。大幅に遅れ,皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました。 ●林業技士事務局 担当:佐藤政彦 林業技士 スクーリング研修を実施しました Tel 03-3261-6692 Fax 03-3261-5393 ●森林総合監理部門:平成 20 年 1 月 16 ~ 17 日,於日林協会館(東京), 白石則彦氏(東京大学大学院)ほか 3 名を講師として実施。受講者 14 名。 ●森林環境部門:平成 20 年 1 月 28 ~ 31 日,於日林協会館(東京),福嶋 ●森林情報士事務局/会員事務 担当:加藤秀春 Tel 03-3261-6968 司氏(東京農工大学)ほか 6 名を講師として実施。受講者 25 名。 Fax 03-3261-5393 ●平成 19 年度のスクーリング研修は,予定の 6 部門すべてを終了しまし ●森林認証審査室(SGEC) た。林業技士は 7 部門ありますが,林産部門が休講だったためです。 ●平成 20 年度の開講予定科目,研修全体のご案内は,5 月中旬ごろに本 担当:関 厚 Tel 03-3261-5516 誌及び HP 等でお知らせする予定です。 Fax 03-3261-5393 訂正 ●本誌編集 深くお詫び申し上げます 担当:吉田 功 ● 12 月号論壇 p6 の写真「ホオノキの花」⇒天地逆。 Tel 03-3261-5414 ●同 p29 写真⑩のキャプション「コノキガシワ」⇒「コノテガシワ」。 雑 記 高校の授業に「生物」がなかった。 大好きな科目だったので,仕方なく 塾で勉強した,という人に会った。 そういえば,中1で地理を勉強して, それが最後になる子どもも多いと聞 いたことがある。地学も不人気らし い。地べたを歩き回る学問は受けが 悪いようだ。でもそれでは林業や環 境の探求が危ぶまれる。山でも町で も,野でも林でも,歩くって楽しい 発見の宝庫なのに…。 (吉木田独歩ん) 46 森林技術 No.791 2008.2 Fax 03-3261-6858 森 林 技 術 第 791 号 平成 20 年 2 月 10 日 発行 編集発行人 根 橋 達 三 印刷所 株式会社 太平社 発行所 社団法人 日本森林技術協会 ○ http://www.jafta.or.jp 〒 102-0085 TEL 03 (3261) 5 2 8 1(代) 東京都千代田区六番町 7 FAX 03 (3261) 5 3 9 3(代) 三菱東京 UFJ 銀行 麹町中央支店 普通預金 0067442 振替 00130-8-60448 番 SHINRIN GIJUTSU JAPAN FOREST published by TECHNOLOGY TOKYO ASSOCIATION JAPAN 〔普通会費 3,500 円・学生会費 2,500 円・法人会費 6,000 円〕 図書のご案内(日本森林技術協会発行) まちの森林(もり)づくり 10 余年 -住民ボランティア奮戦記- 金本一夫・宮下國弘 著 ●定価:本体 1,200 円+税 A5 判 130 ページ 送料:実費 (H19 年度会員配布図書) ●まちの森林(もり)づくりに立ち上がった住民ボランティア活動のさまざまな試みと失敗。都会の 大規模集合住宅地内にある雑木林の管理を巡る苦闘を取りまとめたもの。マンション管理組合必読, 必携の書 !! タ ウ ヌ ス -輝ける森の日々- 杉野千鶴 著 ●定価:本体 1,200 円+税 A5 判 140 ページ 送料:実費 (H18 年度会員配布図書) ●ドイツ中西部に位置するなだらかな山地,タウヌス。一人の市民としてこの森に親しんだ著者の美 しい文章でつづられた散文風随筆だが,「自然」が実は造られたものであること,経済との調和が たゆまない努力の上にあることに気づいていく……。 ●お問い合わせ・お求めは……(社)日本森林技術協会 販売担当まで。 〒 102-0085 東京都千代田区六番町 7 TEL 03-3261-6952 FAX 03-3261-5393 ●お申込は,お名前,〒,お届け先,電話番号,冊数を明記のうえ,ファクシミリにて願います。 ●お支払いは,送付図書同封の振替用紙によってください。 <写真>山梨県:イチイ 星需奮藝は『緑の循環』認証会議(SGEC) の審査機関として認定され,<森林認証〉 <分別・表示>の審査業務を行っています。 S雌℃ 『緑の循環』認証会識 SustainabIeGreenEcoSy5temCouncil か各 日 本 森 林 技 術 協 会 は , S G E C の 定 め る 運 営 規 程 に 基 づ き , 公正 正で で中立 ■ を 整 え 夕 全 国 つ 透 明 性 の 高 い 審 査 を 行 う た め 〆 次 の 『■.認 証 業 務 体 制 」 地 の S G E C 認 証 を ご 検 討 さ れ て い る皆 皆様のご要望にお応えします。 タ 巳 一 1234 【日本森林技術協会の認証業務体制】 学識経験者で構成する森林認証審査運営委員会による基本的事項の審議 森林認証審査判定委員会による個別の森林および分別・表示の認証の判定 有資格者の研修による審査員の養成と審査員の全国ネットワークの形成 森林認証審杳室を設置し、地方事務所と連携をとりつつ全国展開を推進 ︾︾ 日本森林技術協会システムによる認証審査等 ・臺準・指標からみた当該森林の長所・短所を把握し,認証取得のために事前に整備すべき 事項を明らかにします。 ・希望により実施します。・円滑な認証取得の観点から,事前診断の実施をお勧めします。 申請から認証に至る手順は次のようになっています。 <申請>→<契約>→<現地審査>→<報告書作成>→<森林認証審査判定委員会による認 証の判定>→<SGECへ報告>→<SGEC認証>→<認証書授与> 書類の確認,申請森林の管理状況の把握利害関係者との面談等により審査を行います。 現地審査終了後,概ね40日以内に認証の可否を判定するよう努めます。 ・現地審杳 ・結果の判定 l認証の有効期間| 間露露罰 5年間です。更新審査を受けることにより認証の継続が行えます。 毎年1回の管理審査を受ける必要があります。 (内容は,1年間の事業の実施状況の把握と認証取得時に付された指摘事項の措置状況の確 認などです。) … 「森林認証」と「分別・表示」の2つがあります。 凧3雨 持続可能な森林経営を行っている森林を認証します。 ・認証のタイプ 多様な所有・管理形態に柔軟に対応するため,次の認証タイプに区分して実施します。 ①単独認証(−人の所有者,自己の所有する森林を対象) ②共同認証(区域共同タイプ:一定の区域の森林を対象) (属人共同タイプ:複数の所有言自己の所有する森林を対象) ③森林管理者認証(複数の所有者から管理委託を受けた者委託を受けた森林) ・審査内容 SGECの定める指標(36指標)ごとに,指標の事項を満たしているかを評価します。 満たしていない場合は,「懸念」「弱点」「欠陥」の指摘事項を付すことがあります。 '2『分別9表示 認証林産物に非認証林産物が混入しない加工・流通システムを実践する事業体を認証します。 ・審査内容 SGECの定める分別・表示システム運営規程に基づき入荷から出荷にいたる各工程にお ける認証林産物の,①保管・加工場所等の管理方法が適切か.②帳簿等によって適切に把握 されているか,を確認することです。 [諸審査費用の見積り]「事前診蜘「認証審査」に要する費用をお見積りいたしま説①森林の所在地(都道府県市町村名). ②対象となる森林面積,③まとまりの程度(およその団地鋤を,森林認証審査室までお知らせ ください。 [申請書の入手方法]『森林認証事前診断甲請書」「森林認証審査申請薑」,SGEC認証林産物を取り扱う「認定事業体 登録申請書」などの申震雷は,当協会ホームページからダウンロードしていただく力lまたは森 林認証墨書室にお申し出ください。 ■ a 萱 に 関するお問合せ 先 ◆SGEeの審査に 団法 人 日 本 森 林技 術 協 会 森 林 認 証 審 査 室 社団j 1-5516Fa×0 -5516Fa×03-3261-5393 〒102戸0085東蒻稽ロ千代田区六番;m]7TelO3 8261 p/ :// 2 ●当協会ホーム' ページでもご案内!してしぽすb[http: WW ww ww .. jj a fttaorj aorjp] 可 』 客匿 C F グループ 爵8-12蘆 可 以降も5年 5 ゴ 賊26鞭5 、■ ごとに更新 』 L 認定登録蓋, 里 ■ グルーD、 藍13-18蘆 複数部門の資格登録者は、直近の認定登録年度をもって技術認定登録を行うものとします。 蕊議 可︲I型 垂 蔚 弓垂弓 以下の条件のいずれかを満たす者が登録更新を申請することができます。 ①日本森林技術協会が開催した林業技士再研修を受講し再研修修了証の交付を受けた者(平成16 18年度実施) ②日本森林技術協会力曾旨定する研究会、講習会、研修会等に参加した者 ③日本林業技士会会員 ④日本森林技術協会会員であって会誌「森林技術」誌面の森林系技術者コーナー等で学習した者 更新手続:林業技士登録更新申請書嶬式9)に更新手数料振込済みの写を添えて林業技士事務局に郵送 更新手数料:3,000円(複数部門を同時に更新する場合も手数料は同額の3,000円です。) ●定められた年度に登録更新手続きを行わなかった者は、特例として次年度以降においても申請することができますが、有効期間は当初 定められた更新年度からの5ヶ年間とします。 ●更新の案内通知は登録者本人宛に郵送しますが、住所変更等により届かない場合も考慮し、本協会のHP、会誌「森林技術」、林業技士 会ニュース等をご覧下さい。 お問い合せ お問い合せ 社団法人日本森林技術協会林業技士事務局 〒102-0085東京都千代田区六番町7TELO3-3261-6692FAXO3-3261-5393 ホームページhttp://www.jafta.or.jp 、 燕聯絡謹溌︵会員の購読料は会貿に含まれています︶送魁、八円 認定登録者, 、 ■ 昭和二十六年九月四日第三種郵便物認函毎月一回十日篝︶森林技術第七九一号 Fも 平成二十年二月十日発一丁 1画. 2