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シカゴ再訪

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シカゴ再訪
海 外 研 究 報 告
シカゴ再訪
〔イリノイ大学シカゴ校(アメリカ)〕
西村 正秀(経済学部准教授)
研究機関
人の証言、記憶など様々な
私が現在研究を行っている機関は、アメリカのイリノイ大
信念獲得ソースの内、知
学シカゴ校(UIC)です。
シカゴは摩天楼が有名なアメリカ中
覚によって獲得された信念
西部の大都市で(最近ではオリンピック誘致失敗で有名で
に関して権原のメカニズム
しょうか?)、人口は約 283 万人、経済・工業・交通の要所
を与える理論です。
です。UIC はそのシカゴの中心部ダウンタウンのすぐ西に位
知覚的権原の理論を展
置しています。2001 年より、私は UIC 大学院哲学科博士
開している代表的哲学者
課程に属しており、2009 年 7 月末から 2010 年 8 月の間、
は、Tyler Burge, Fred
再びシカゴに滞在し、当大学院の博士論文を執筆していま
Dretske, Christopher
す。
Peacocke の三人です。
こ
研究内容
れらの哲学者は別の仕方
私の専門は哲学であり、その中でも、英米圏の認識論が
で理 論を展 開しています
現在の主な研究分野です。
「認識論」
とは、簡単に言えば、
が、それぞれに問題点が
知識や信念に関する哲学です。具体的には、「私たちは何
ありま す。私 は、こ の 内
を知ることができるのか?」、
「知識はどのように獲得されるの
Burge の理論が最も見込
か?」、
「ある事柄について、それが正しいと信じてよいのは
みがあると考えているので、彼の理論に幾つかの修正を施
どのような場合か?」
などの問題を扱います。
すことによって、知覚による信念に対する認識的保証につい
私の博士論文のテーマは「知覚的権原 (perceptual
UICのUniversity Hall
ての十全な理論を提出することを試みています。
entitlement) の理論」です。私たちは知覚を通じて世界に
以上の博士論文を、私は David Hilbert 教授の指導下
関する様々な信念を獲得します。例えば、私たちは視覚を
で執筆しています。Hilbert 教授は知覚(特に色の知覚)に
通じて
「あのトマトは赤い」
ことを信じたりします。
でも、このよ
関する哲学の専門家であり、毎週博士論文の一部を書い
うな知覚による信念を正しいものと見なしてよいという保証
て提出し、それについて批評してもらうという形で研究を進
はどこにあるのでしょうか?例えば、錯覚や幻覚の可能性を
めています。哲学的議論については言うまでもなく、学生の
考えれば、現時点で「正しい」
と思っている事柄でも、後に
指導方法についても学ぶべき点が多々あり、忙しいながらも
なって間違いだったことが発覚するかもしれません。
そこで、
充実した研究生活を送っています。
信念を真なるものとして受け入れても構わないという保証は
何によって与えられるのかという問題が、認識論において問
われて来ました。
「権原」
とは、このような認識的保証の一種
です。伝統的には、認識的保証は、信念の主体がその信念
を正しいと考えてもよい「理由」を有している場合にのみ与
えられると考えられてきました。
このような立場を「内在主義」
と言います(また、内在主義的な認識的保証概念は(狭い
意味での)
「正当化」
と呼ばれます)。
それに対して、20 世紀
後半から、認識的保証を主体の心の「内」にある理由にで
はなく、信念とその信念が表す対象との関係に求める立場
が登場してきました。
この関係は主体に理解されている必
要はなく、言わば主体の心の
「外」
にあります。
ここから、この
立場は「外在主義」と呼ばれます。権原は外在主義におけ
る認識的保証概念であり、その理論は 1990 年代以降本
格的に発展してきました。知覚的権原の理論とは、知性、他
ダウンタウンのミレニアムパーク
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