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第2編 長野県 公共案内標識整備指針 の解説

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第2編 長野県 公共案内標識整備指針 の解説
第2編
長野県
公共案内標識整備指針
の解説
17
目次
第1章 基本的事項
1
目的
20
2
指針の対象範囲
21
第2章 公共案内標識整備の指針
第1節 企 画
3
基本方針の確立
22
4
年次計画の策定
22
5
財源の検討
22
第2節 計 画
23
第1 調 査
6
前提条件の整備
24
第2 システムの構築
7
事業目標及び方向性
25
8
一貫性の確保
25
9
掲載施設等
26
10
表記基準
31
11
配置方式
37
12
配置か所
39
第3 推進体制
13
関係機関との連携
40
第3節 設 計
42
第1 デザイン方針
14
デザイン方針
43
第2 表示部分の仕様
15
表示面の大きさ
55
16
地図
56
18
17
文字
58
18
ピクトグラム(絵文字)
62
19
レイアウト(割付け)
65
20
色彩
69
21
照明等
71
22
素材
72
23
印刷方法等
73
第3 本体部分の仕様
24
本体の高さ
74
25
素材、色彩
75
第4 設 置
26
設置位置
76
27
表示板面の方向
77
第4節 実 施
28
発注、製作、施工監理
78
第5節 管 理
29
情報の更新
79
30
メンテナンス
79
19
第1章 基本的事項
指針1 目的
この指針は、
公共案内標識に関する仕様、基準その他の事項を定めることにより、本県における
公共案内標識の整備充実を図り、もって景観形成及び国際化に資することを目的とす
る。
〔解説〕
公共案内標識の役割は、街を構成する様々な機能や特性に関する情報を来訪者に的確
に提供することである。
近年、交通機関の発達や人の活動の多様化などの影響を受けて、街の中に置かれる案
内標識類も増加する傾向にある。それぞれの案内標識は、その時々の必要に迫られて設
置されたものであろうが、一方では、こうして「その場しのぎ」の整備手法が、案内標
識自体の乱立による景観阻害を引き起こしているという事実も看過できない。
本件においては、いくつかの市町村による先進的な試みは別として、一般に歩行者を
対象とした公共案内標識の整備が遅れており、交通網の整備や国際化の進展に伴って、
今後こういった面への積極的な対応が必要になるものと考えられる。
その際、市町村等の整備主体に求められるのは、街の景観を良好な状態に保ちつつ来
訪者への十分な情報提供を行うという二つのテーマに同時に応えることであり、そのた
めには、外国人も含めた利用者の立場から、表示内容の読みとりやすさや情報の連携な
どに配慮して、システムとして簡潔でわかりやすい公共案内標識「群」を整備するとと
もに、新設するものについてのデザイン上の配慮はもとより、既に設置されているもの
についての整理統合も検討していかなければならない。
このような課題をクリアして公共案内標識を整備するには、市町村等の整備主体があ
らかじめ公共案内標識の整備に関する計画を策定しておく必要がある。
また、現実には公共案内標識は市町村だけが整備主体となる訳ではない。市町村以外
の整備主体としては、道路管理者、施設管理者、区画整理事業や市街地再開発事業の施
行者、商店街組合、公共交通機関などが考えられるが、こういった様々な設置主体が個々
に整備計画を立案したのでは、結局一貫性のない様々な標識の林立をもたらすこととな
り、そもそもの目的を没却してしまう可能性が高い。この意味からも、まず市町村が公
共案内標識の整備に関する計画を策定し、各整備主体がこの計画に沿って事業を実施す
るのが理想的な姿であろう。
この指針は、上記のような観点から、市町村の担当者が整備計画を立案する際に有用
と思われる基礎的な知識と、本県における公共案内標識が満たすべき基本的なルールを
示したものである。
20
指針2 指針の対象範囲
この指針は、
(1) この指針は、公共案内標識(文字、絵などの視覚的要素を媒体として、公共的な性
格の強い情報を伝達する案内標識で、市町村等が設置するもの)のうち主として歩行
者を対象とし、かつ、法令等により規格、基準等が定められていないものを対象とす
る。
(2) 前号の公共案内標識を例示すると、概ね次のとおりである。
ア 広域案内標識(比較的広い範囲の地域を対象とし、地図等を用いて案内する標識)
イ 周辺案内標識(比較的狭い範囲の地域を対象とし、地図等を用いて案内する標識)
ウ 施設誘導標識(目的となる施設又は地域への方向及び距離を示すもの)
エ 記名標識(目的となる施設又は地域の名称を示すもの)
オ 説明標識(事物の説明を行うもの)
〔解説〕
歩行者がその行動の起点から目的地まで移動していく中で、必要となる案内標識は以
下のとおりに整理できる。
本指針は市町村が公共案内標識に関する計画を策定する際のマニュアルとして
作成されていることから、内容的には主に市町村設置の公共案内標識を対象としてい
るが、市町村以外のものが設置する公共案内標識でも同様の公共性を持つものについ
ては、本指針(市町村が本指針に基づいて公共案内標識整備に関する計画を策定して
いる場合にはその計画)が示す一定の基準に適合するよう配慮することが望まれる。
また、例えば地図やパンフレットの英文の表記方法などについても、本指針の活用
及び「観光庁ガイドライン」に配慮し、公共案内標識との連携を図ることが必要です。
(活用例) ・車両系案内標識の英文の表記
・各種交通機関に関する案内の英文の表記
・地図、パンフレットなど
21
第2章 公共案内標識整備の指針
第1節 企 画
指針3 基本方針の確立
この指針は、
地域の実情及び特性並びに関連事業への影響及び効果について配慮し、事業の目的及
び位置づけを明確にした基本方針を確立すること。
指針4 年次計画の策定
(1) 事業の概要とスケジュールを設定し、年次計画を策定した上で事業を進めること。
(2) 事業の進行に伴い、適宜年次計画の見直しを行うこと。
指針5 財源の検討
年次計画に基づき、維持管理費用まで含めた財源の手当について検討すること。
〔解説〕
企画段階は、以後の事業全体の方向付けを行う意味をもっており、その役割は非常に
重要である。
基本的には公共案内標識は、街の様々な側面を、来訪者や居住者に伝える媒体である
ことを考慮して、事業のよりどころとなる一つのテーマを定める必要がある。
(例)
「わかりやすい快適な街づくり」
「安全で美しい街づくり」
年次計画の策定に当っては、公共案内標識整備は長期的な事業になることが多いとい
う点を考慮しておく必要がある。
一般的な公共案内標識整備に必要な金額を目安として、以下を例示する。
これに管理費までを含めた財源を、企画段階において検討しておく必要がある。
なお、地域性の演出の観点から必要に応じてオリジナルのデザインとすることを検
討し、既製品を用いる場合も、地域の特性に見合ったものを選択する必要がある。
オリジナルデザインを用いる場合は、設計費に加えて、公共案内標識の本体価格も
若干ますことになる。
22
第2節 計 画
効果的な公共案内標識整備のためには、その地域で必要なもの、求められているもの
を読み取り、いかにそのニーズに応えるかが鍵となる。計画の目的はこのような基本的な
公共案内標識整備の方向性を定めることである。
計画のフロー
留意事項
1.調査
・利用者の視点
・都市全体を捉える視点
現状の問題点を抽出し、都市構
造や地域の特性を把握する。
2.システム
3.事業推進体制の検討
関係機関との調整を行う。
案内・誘導対象施設を選択し誘
各事業主体間、市町村間の調整
導ルートを設定する。
を行う
留意事項
・地域の特性に適合した
システム
・既存案内標識の扱い
設計へ
23
留意事項
・横断、断続的な連絡調整
第1
調
査
指針6 前提条件の整理
この指針は、
(1) 現況の問題点を抽出し、課題を整理すること。
(2) 街の構造や特性を調査し、地域にふさわしい公共案内標識を整理するための前提条
件を把握すること。
(3) 道路整備計画、地域開発計画その他の関連計画を把握すること。
〔解説〕
公共案内標識整備計画における調査は、利用者の立場に立ってミクロな視点と都市全
体を捉えるマクロな視点の双方を捉えながら進める必要がある。
公共案内標識整備により改善可能な街の問題として
・看板類の乱立による景観の阻害
・複雑な道路網などによるアクセスルートのわかりにくさ
・歩者ルートの混在による不快で危険な歩行者空間
・様々な魅力的要素の埋没
・駅、バス停など移動拠点の埋没
などが考えられる。
また、調査において把握すべき街の構造、特性として
・街の景観、歴史、文化、風俗
・施設類
自然要素(地形、山、丘陵、河川、森林、湖沼など)
道路(高速道路、国道、主要地方道、歩行者専用道など)
交通機関(鉄道、バスルートなど)
移動拠点(駅、バス停、空港など)
公共施設等(行政施設、公園、教育施設、医療施設、福祉施設、文化施設、スポー
ツ施設、集会施設、公益企業、金融機関、報道機関など)
著名地点(史跡・名勝、宿泊施設、商業施設など)
などがあげられる。
関連する計画については、特に、先行する他の案内標識整備事業(道路標識など)に
配慮し、情報の重複を避ける必要がある。
24
第2
システムの構築
指針7 事業の目標及び方向性
調査結果に基づき、次に掲げる事項について基本的な考え方をまとめること。
ア 事業の対象者に関する事項
イ 案内・誘導の方法に関する事項
ウ デザインの手がかりに関する事項
指針8 一貫性の確保
この指針は、
(1) 公共案内標識のシステムは、整備対象となる区域内で一貫性をもって展開すること。
(2) 既存の案内標識がシステムの一貫性を著しく乱す場合は、適宜整理、統合を検討す
ること。
〔解説〕
公共案内標識のシステム構築とは、誰に対し、どこに、どのような公共案内標識を整
備するかを設定することである。
より具体的にいえば
・対象者の設定(来訪者への配慮)
・案内、誘導対象の設定(観光施設、史跡、その他主要施設)
・誘導ルートの設定
・デザインの基本的な考え方
などを行うことである。
システムは公共案内標識整備の中で最も重要な検討項目である。公共案内標識が効果
を発揮するためにはそのシステムが地域の特性に適合している必要がある。
また、公共案内標識が伝える情報を効果的に連携させるためには、設定した公共案内
標識のシステムは、対象となる地域内で一貫性を持って展開する必要がある。
従来の方法にとらわれない新しいシステムを試みる場合、関係機関との調整が必要に
なることがある。一般に外部との調整、協議は設計段階で行われるが、時間的な制約の
ため不調に終わることもあり、協議事項が複雑な場合などは、システム段階で調整を行
う必要がある。
新しい公共案内標識のシステムを展開していく中で、既存の案内標識の存在が、新設
する公共案内標識の統一を乱したり、案内誘導上必要でなくなる場合は、街の景観形成
上からも、既存の案内標識の撤去を検討する必要がある。
25
指針9 掲載施設等
この指針は、
公共案内標識に掲載する施設等を選択するための基準を、地域の特性に応じて作成す
ること。
〔解説〕
施設掲載基準の作成に当たっては、施設の選択方法の設定がポイントとなる。
合理的な選択を行うためには、施設の種類ごとに掲載条件や細目を定め基準化するこ
とが望ましい。これは、公共案内標識設置後の情報の更新を円滑に行うためにも必要な
ことである。
基準を作成する上で注意しなければならないことは
・
掲載施設が公共空間に設置する案内標識としてふさわしいこと
・
掲載する情報量を適度に保つこと
・
対象施設により施設数が大きく異なるため、それぞれに適切な量の施設を選択で
きるように基準を工夫する
などがある。
掲載する施設は公共施設が主となるが、利用者の利便を考慮すると、民間施設であ
っても、利用者が不特定多数に及ぶ施設、移動の手がかりとして認識されている施設
などは掲載していくことが望ましい。逆に公共施設であっても一般の人があまり利用
しない施設は掲載しない方がよい場合がある。
1
広域案内標識の掲載基準の考え方
広域案内標識は、利用者がその街の構造や交通機関の路線網などを理解するため
のものであるので、掲載する施設については、地勢、地名、道路、交通機関などを
中心に表現し、個々の施設はランドマーク性のあるものや主要な公共施設に限定す
ることが基本である。
2
周辺案内標識の掲載基準の考え方
周辺案内標識は、利用者が地理を理解し、目的地へのルートを判断するためのも
のであるので、移動の手がかりとなる施設等をきめ細かに表現する必要がある。
なお、公共的施設、民間施設については、計画対象地域の施設の密度に応じて掲
載の条件を定める必要がある。特に文化施設、スポーツ施設、集会施設、史跡・名
勝、宿泊施設、商業施設においては、施設の規模、利用者数によって客観的な選択
を行うことが望ましい。
26
3
施設誘導標識の掲載基準の考え方
施設誘導標識は、利用者を特定の施設等へ誘導するためのものであるので、掲載
する施設等は地名、地点名、交通機関等を中心とし、個々の施設については公共施
設等に限定することが基本である。
以下に施設密度の高い都市部における施設掲載基準の例を示す。
公共案内標識の施設掲載基準(例)
項目
地勢
地名等
道路等
交通機関
公共施設等
著名地点
掲載が望ましい施設等
地勢
人工物
自治体等
住居表示
道路名
地点名
空路
鉄道
バス・タクシー
その他
行政施設
山、河川、湖、池、堀
ダム、水門
市町村、郡
公園・緑地
教育施設
医療施設
福祉施設
文化施設
スポーツ施設
地区公園以上の規模の公園
大学
公立の病院、総合病院、大学病院
史跡・名勝等
状況に応じて掲載
を検討する施設等
町名
高速道路、国道、通称名のある道路
インターチェンジ
空港
鉄道路線、鉄道駅
バスターミナル
ロープウェイ、ケーブルカー
県庁、市役所、町村役場
警察署、消防署、郵便局(特定局は
除く)
主要な橋
裁判所、税務署、法
務局、保健所、地方
事務所、建設事務
所、福祉事務所、児
童相談所など
老人福祉施設
公的機関の運営する主要なもの
移動の手がかりになる規模の大き
なもの
特に著名なもの
27
冬期スポーツ施設
周辺案内標識の施設掲載基準(例)
項目
地勢等
地名等
道路等
交通機関
公共施設等
地勢
人工物
自治体等
住居表示
道路名
地点名
空路
鉄道
バス・タクシー
その他
行政施設
公園・緑地
教育施設
医療施設
福祉施設
文化施設
スポーツ施設
集会施設
公益企業
著名地点
金融機関
報道機関
その他
史跡・名勝等
宿泊施設
商業施設
その他
掲載が望ましい施設等
山、河川、湖、池、堀
ダム、水門
市町村、郡
町名
高速道路、国道、通称名のある道路
インターチェンジ、主要な橋、主要
な交差点
空港
鉄道路線、鉄道駅
バスターミナル
ロープウェイ、ケーブルカー
県庁、地方事務所、建設事務所、保
健所、市役所、支所、町村役場、警
察署、消防署、郵便局(特定局は除
く)、裁判所、税務署、法務局、刑
務所、職業安定所、運転免許試験場
近隣公園以上の規模の公園
小・中・高等学校、大学、短期大学、
研究所
公立の病院、総合病院、大学病院
老人福祉施設、児童福祉施設
図書館、美術館、博物館、劇場、ホ
ール
動物園、植物園、遊園地
球技場、運動場、プール、テニスコ
ート
冬期スポーツ施設、キャンプ場、ゴ
ルフ場
市民会館、公民館、公会堂
公団・公社
放送局、新聞社
観光案内所
史跡・名勝として重要な神社、寺院、
教会
国または自治体の指定する文化財
一定の規模以上のホテル、旅館
第一種または第二種大規模小売店
舗
単一の名称をもつ商店街
移動の手がかりになるビル、工場、
団地
28
状況に応じて掲載を
検討する施設等
街区番号、住居番号
地下鉄出入口
バス路線、バス・タク
シー乗り場
公共的な駐車場
不特定多数の者が利
用する行政施設
児童公園
幼稚園、保育園、各種
学校、専修学校
左記以外の救急病院
近隣住区の集会場
電話、電気、ガス関係
企業の本支店
都市銀行、地方銀行等
の本支店
各種団体など
施設誘導標識の施設掲載基準(例)
項目
地勢等
地名等
道路等
交通機関
公共施設等
地勢
人工物
自治体等
住居表示
道路名
地点名
空路
鉄道
バス・タクシー
その他
行政施設
公園・緑地
教育施設
医療施設
福祉施設
文化施設
スポーツ施設
集会施設
著名地点
史跡・名勝等
掲載が望ましい施設等
状況に応じて掲載を検
討する施設等
河川、湖、池、堀など
ダム、水門
市町村、郡
町名
通称名のある道路
主要な橋、主要な交差点
空港
鉄道駅
バスターミナル
ロープウェイ、ケーブルカーなど
県庁、地方事務所、建設事務所、 刑務所、運転免許試験
市役所、町村役場、警察署、消防 場など
署、郵便局(特定局は除く)
裁判所、税務署、法務局、保健所、
職業安定所
近隣公園以上の規模の公園
大学、短期大学、研究所
公立の病院、総合病院、大学病院
老人福祉施設、児童福祉施設
公的機関の運営する主
要なもの
公的機関の運営する主
要なもの
市民会館、公民館、公
会堂
特に著名なもの
29
指針 10 表記基準
この指針は、
(1) 原則として英文を併記すること。
(2) 日本語の表記は別表1に基づいて行うこと。
〔解説〕
公共案内標識の立場から国際化を考え、表示内容には英文を併記することを原則とす
る。以下に標準的な日本語表記基準を示す。特に施設名の省略方法については、よりき
め細かく基準化したり、具体的な施設名称表としてまとめるなど、地域の特性に応じた
対応が必要となる。
別表第1
日本語表記基準
表記の基準
1 原則として国文法、現代かなづかいによ
る表記を行う。ただし、固有名詞において
はこの限りでない。
2 施設名称等は、以下の項目を考慮し、適
切でわかりやすい表記を行う。
・ 表示面の繁雑化を防ぐために、明確
に理解される範囲内で省略できる部分
を省略する。
・ 正式名称よりも明らかに理解されやす
い通称名がある場合はそれを用いる。
・ 複合的な施設の場合は、目的に応じて
省略できる部分を省略する。
・ アルファベットによる名称が慣用化さ
れている場合は、それを用いてもよい。
・ 類似の施設が多く、混乱を招く可能性
がある場合は正式名称を用いる。
3 数字の表記は、原則として算用数字を用
いる。ただし、固有名詞として用いる場合
はこの限りではない。また、~丁目のよう
に地名として用いる場合は漢数字を使用す
る。
4 地名、歴史上の人名など読みにくい漢字
にはふりがなを付記するなどの配慮を行
う。
5 紀年は西暦により表記する。必要に応じ
て日本年号を付記してもよい。
30
表記の例
信州大学
JR
国立信州大学
NTT
4月1日
第二別館
松本市丸ノ内三丁目
1994年
1994年(平成6年)
指針 10 表記基準等
この指針は、
(3) 英文の表記は別表第2に基づいて行うこと。
(4) 中国語及び韓国語の表記は、国土交通省観光庁平成 26 年 3 月策定「観光立国実現
に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」
(以下「観光庁ガイドライン」
という。
)に基づいて行うこと。
〔解説〕
英文表記の目的は第一義的に外国人に日本語の表記内容を理解してもらうことである。
このため、次の観点により作成した。
・ 「英文表記基準」は、ローマ字による表記と機能、種類を示す英訳を組み合わせる
表記方法とする。
・ 対応する英単語がない場合は、外国人にも日本語の発音が分かるようにローマ字で
表記する。また、外国人に施設等の機能、種類を理解してもらうために必要に応じて
説明的な英文をカッコ書きで付記する。
・
地名は固有名詞であり、また、外国人にも日本語の発音が分かるようにローマ字で
表記する。
・ 英訳については原語の表記が原則であるが、表記スペースが狭いことなどにより慣
用化されている略語を使用することができる。
略語の例
原語
Avenue
Building
Center
Department
Expressway
Government
National
Prefecture
River
Route
Station
Street
Television
University
Village
*
略語
Ave.
Bldg.
Ctr.
Dept.
Expwy.
Govt.
Natl.
Pref.
Riv.
Rte.
Sta.*
St.
TV
Univ.
Vil.
Sta.は英国での表現。米国ではStn.が主に使用される。ここでは道路標識に準
じてSta.とした。
31
・ ローマ字の表記は広く使用されているヘボン式を基本とし、実際の発音に近い表記
方法とする。
ローマ字の表記方法
1
つづり方
あ
か
さ
た
な
は
ま
や
ら
わ
ん
が
ざ
だ
ば
ぱ
きゃ
しゃ
ちゃ
にゃ
ひゃ
みゃ
りゃ
ぎゃ
じゃ
びゃ
ぴゃ
い
き
し
ち
に
ひ
み
え
け
せ
て
ね
へ
め
り
う
く
す
つ
ぬ
ふ
む
ゆ
る
れ
お
こ
そ
と
の
ほ
も
よ
ろ
ぎ
じ
ぢ
び
ぴ
ぐ
ず
づ
ぶ
ぷ
げ
ぜ
で
べ
ぺ
ご
ぞ
ど
ぼ
ぽ
a
ka
sa
ta
na
ha
ma
ya
ra
wa
n
ga
za
da
ba
pa
きょ
しょ
ちょ
にょ
ひょ
みょ
りょ
ぎょ
じょ
びょ
ぴょ
kya
sha
cha
nya
hya
mya
rya
gya
ja
bya
pya
きゅ
しゅ
ちゅ
にゅ
ひゅ
みゅ
りゅ
ぎゅ
じゅ
びゅ
ぴゅ
i
ki
shi
chi
ni
hi
mi
e
ke
se
te
ne
he
me
ri
u
ku
su
tsu
nu
fu
mu
yu
ru
re
o
ko
so
to
no
ho
mo
yo
ro
gi
ji
ji
bi
pi
gu
zu
zu
bu
pu
ge
ze
de
be
pe
go
zo
do
bo
po
kyu
shu
chu
nyu
hyu
myu
ryu
gyu
ju
byu
pyu
kyo
sho
cho
nyo
hyo
myo
ryo
gyo
jo
byo
pyo
2 その他
(1) 長音は、母音字の上に長音記号「¯」
(マクロン)を付して表すこともで
きる。
東御 Tōmi
(2)
(3)
はねる音「ん」は「n」で表す。
本町 Honmachi
はねる音を表す「n」に続く母音字および「y」は、ハイフンによって
切り離す。
信越 Shin-etsu
万葉橋 Man-yo Bridge
(4) つまる音は最初の子音を重ねて表す。
別所 Bessho
ただし、
「ch」が続く場合は「c」ではなく「t」を重ねる。
高ボッチ高原 Takabotchi Heights
32
・
英語と米語とで表現が異なる場合は、原則として米語とする。
・
外国人に対する案内には、「公共案内標識」に限らず、地図、ガイドブック、パン
フレット等がある。
地図、ガイドブックについては、外国人がそれに基づいて行動することが多いため、
「公共案内標識」と同じ表記が望ましい。
なお、説明標識については、使用目的、対象者、掲載できる情報量が多いこと等か
ら、
「英文表記基準」による表記と共に、英訳による表記を併記することが望ましい。
33
別表第2-1
英文表記基準
表記の基準
1 一般的な英訳に従い、固有名詞をローマ字
表記し、普通名詞を英訳に表記する。
ただし、固有名詞だけ切り離しても意味を
なさなかったり、普通名詞部分を含めた全体
が不可分の固有名詞として広く認識されてい
る場合は、全体をローマ字表記し、さらに普
通名詞部分を英訳により表記する。
また、スペース、視認性の観点等から略語
を用いることができる。
2
茶碗、温泉など一定の対訳があるものの、
日本文化を正しく理解するために、日本語の
読み方を伝える必要がある場合は、ローマ字
で表記する。
3
表記の例
浅間山=Mt.Asama
千曲川=Chikumagawa River(Riv.)
諏訪湖=Lake Suwa
志賀高原=Shiga Heights
長安橋=Choan Bridge
長野県庁=Nagano Prefectural Office
松本駅=Matsumoto Station(Sta.)
若里公園=Wakasato Park
長野市役所=Nagano City Hall
上田市=Ueda City
信州まつもと空港=Shinshu Matsumoto
Airport
飯田郵便局=Iida Post Office
須坂病院=Suzaka Hospital
(全体が一つの固有名詞として切り離
せない場合等の例)
砥川=Togawa Riv.
焼岳=Mt.Yakedake
茶碗=Chawan(Tea bowl)
温泉=Onsen
※日本語の読み方が広く認識されている場合は
英語の補記は不要
寺(仏閣)
、神社については、普通名詞部分 善光寺 = Zenkoji Temple
の表意を表記した英語に対応する日本語が複 穂高神社= Hotaka-jinja Shrine
数存在しており(例:Temple→○○寺・○○院等、 諏訪大社= Suwa-taisya Shrine
Shrine→○○神社・○○神宮・○○天満宮・○○大 北野天満宮= Kitano-tenmangu Shrine
社等)、仮に、普通名詞部分について英語によ
る表意表記のみとすると、誤って認識される 布引観音=Nunobiki Kannon
恐れがある場合は、外国人旅行者に意味・呼
(The Goddess of Mercy)
び名を正しく伝える必要があることから、ロ
ーマ字による全体の表音表記に加えて、普通
名詞部分の表意を表記することが望ましい。
また、観音、庵、関所などのように対応す
る英単語がない場合は、ローマ字により表記
する。
必要があれば説明的な英文を括弧( )で付
記する。
4 地名は固有名詞部分のみローマ字表記し、 (例)長野市神楽橋三丁目=
「市」、
「町」、
「村」は英訳する。
Kagurabashi 3-chome, Nagano City
5 普通名詞部分が外来語の場合は、できるだ 野沢温泉アリーナ=Nozawaonsen Arena
け英訳により表記する。
6 県庁、市役所、空港等周辺に該当する施設 長野県庁=PREFECTURAL OFFICE
が一つしかなく、間違うおそれがない場合に 長野市役所=CITY HALL
は、固有名詞部分を省略することができる。
松本空港=AIRPORT
この場合は大文字で表記する。
34
7
英語名称が定められている施設について
は、それを使用することができる。
8 英語部分において慣用化されている略語を
使用してもよい。
9 ローマ字の表記はヘボン式を基本とする。
長音は、母音字の上に「¯」(長音符号)を
付けて表すことができる。
また、長音が大文字の場合は母音字を並べ
ることができる。
10 発音のしやすさ等から、複数の名詞等で構
成される固有名詞や o が重なる場合等は、そ
の間に「-」
(ハイフン)を入れてもよい。
Bldg.(Building)
Vil.(Village)
例)ta chi tsu te to
東御市 - Tōmi City
大町市 - Ōmachi City
長野大橋=Nagano-ohashi Bridge
白馬乗鞍岳=Mt.Hakuba-norikura
ほおづき市=Ho-ozuki Ichi
注)1 はねる音「ン」は「n」で表すが、
「m」
、
「b」
、
「p」の前では「m」を用いることができる。
2 はねる音を表す「n」と次にくる母音字又は「y」とを切り離す必要がある場合には、「n」
の次に「-」を(ハイフン)を入れる。
3 つまる音は、次に来る最初の子音時を重ねて表すが、次に「ch」がつづく場合には「c」を重
ねずに「t」を用いる。
4 特殊音の書き表し方は自由とする。
5 文の書きはじめ並びに固有名詞は語頭を大文字で書く。
なお、固有名詞以外の名詞の語頭を大文字で書くこともできる。
35
別表第 2-2
英文表記の具体例
項目
日本語
地勢
地勢等
人工物
自治体
地名等
地名
道路
道路等
橋
空港
交通機関
鉄道
英語表記
浅間山
Mt.
千曲川
Chikuma
諏訪湖
Lake
志賀高原
Shiga
Heights
丸子温泉郷
Maruko
Onsen
黒部ダム
Kurobe
Dam
奈川渡隧道(トンネル)
Nagawado
長野県
Nagano
Prefecture
長野市
Nagano
City
木曽町
Kiso
栄村
Sakae
長野市松代町
Matsushiromachi, Nagano
City
松本市大手一丁目
Ote
City
昭和通り
Showadori
長野大通り
Nagano-odori
国道 20 号
Route
志賀中野有料道路
Shiga-Nakano
長安橋
Choan
長野大橋
Nagano-ohashi Bridge
信州まつもと空港
Shinshu
AIRPORT
松本駅
Matsumoto
JR 中央線
JR
長野市役所
行政施設
教育施設
著名地点
木曽町役場
栄村役場
公園・緑地
史跡・
名勝等
※別冊「英文表記マニュアル」参照
River (Riv.)
Suwa
Resort
Tunnel
Town
Village
1-chome, Matsumoto
Street
Avenue
20
Toll
Road
Bridge
Chuo
Matsumoto
Airport
Station(Sta.)
Line
Nagano Prefectural Office
PREFECTURAL OFFICE PREF.OFFICE
Nagano City Hall
CITY HALL
Kiso Town Office
TOWN OFFICE
Sakae Village (Vil.) Office
VILLAGE OFFICE
VIL.OFFICE
長野県庁
公共施設
等
Asama
松本警察署
Matsumoto
信州スカイパーク
Shinshu Sky
南部小学校
Nanbu
善光寺
Zenkoji
穂高神社
Hotaka-jinja
諏訪大社
Suwa-taisha
松本城
Matsumoto
36
Police
Station
Park
Elementary
School
Temple
Shrine
Shrine
Castle
指針 11 配置方式
この指針は、
次に掲げる方式から各地域の特性に合わせて適宜選択し、場合によっては組み合わせ
ながら配置のシステムを検討すること。
ア 階層配置
イ 線条配置
ウ 軸線配置
エ 投網配置
〔解説〕
常に移動している利用者に情報を提供するためには、人の移動のパターンを把握し、
適切な位置に情報を配置する必要がある。したがって、公共案内標識の配置は年の構造
と密接に関係しており、主に歩行者を対象に基本型を考えると以下の4つに整理するこ
とができる。
a 階層配置
限られた移動の起点を想定し、そこから不特定の終点に向かって情報を配置する考え
方である。
数か所の行動の起点に対して複数の目的地がある場合に有効である。
鉄道駅等が限られている一般的な都市部では、階層配置が合理的といえる。
階層配置
行動の起点を特定、終点は不特定
d 線条配置
あらかじめ起点と終点を想定し、その間の要所に情報を配置する考え方である。
一つの行動の起点に対して一つの目的地がある場合に有効である。
比較的小さな都市で観光ルートなど限定された歩行経路を案内する場合に適してい
る。また、最終型としては投網あるいは階層配置が適切である場合に、段階的な整備の
ステップとして線条配置を採用することもできる。
線条配置
行動の起点・終点とも特定
37
c 軸線配置
一対の起点と終点を結ぶ軸を、案内誘導上の中心的なルートとしながら、周辺の施設
へも、人々を導いていこうとする考え方である。街の中に、特に著名な二施設(地点)
があり、それらを結ぶ軸に利用客が集中している場合に有効である。
軸線配置
一対の行動の起点・終点が
直線的に結ばれる
b 投網配置
計画対象地域にくまなく情報を配置する。人の移動の起点及び終点を特定せず、あら
ゆる移動ルートに対応しようとする考え方である。
複数の行動の起点に対して複数の目的地があり、利用者の移動経路が限定できない場
合に有効である。
投網配置
行動の起点・終点とも不特定
実際の配置方式は、これらを単独で使用する場合もあれば、複数のパターンを町の構
造に応じて組み合せて使用する場合もある。
38
指針 12 配置か所
この指針は、
(1) 公共案内標識は、移動の起点及び主要な分岐点ごとに行うこと。
(2) 主要な分岐点以外の場所でも、距離が長い場合などには、歩行者が不安を感じない
程度の間隔で確認のための公共案内標識を配置すること。
〔解説〕
情報なしに人が不安なく歩ける距離は、概ね150~300メートルといわれており、
歩行者の利用が集中する中心市街地などにおいては、歩行者を対象とする公共案内標識
の間隔も、これに準じたものが適切であるといえる。
また、両側に歩道を有するなど広幅員の道路では両側に公共案内標識が必要であり、
ちどり配置が一般的である。同じく主要な交差点でも、利便性と視認性を考慮し、効率
的な案内となるよう配置か所を設定することが必要である。
配置か所
両側に歩道のある広復員
道路の場合(ちどり配置)
歩道のない道路の場合
一般の交差点の場合
主要な交差点の場合
(2か所に設置)
39
第3 推進体制
指針 13 関係機関との連携
(1) 企画、設計の段階から、道路管理者その他の関係機関と十分な調整を行うこと。
(2) 公共案内標識整備の各段階において、それぞれ主体となる機関、部局が異なる場合
は、連絡調整組織などを設けて、計画から管理に至る各事業主体が連携を保つこと。
(3) 広域的な観光地等で、複数の市町村の区域で統一的な公共案内標識整備が必要な場
合には、市町村間における連絡調整を図ること。
〔解説〕
公共案内標識は、
・道路付属物
(道路管理者、交通管理者が設置する場合)
・道路占用物
(設置主体が道路管理者以外の場合)
の2通りにわけられる。
公共案内標識は事業主体にかかわらず、必要に応じて設置されることが望ましく、企
画・計画の段階から道路管理者等の関係機関と十分な調整を行い、進めていく必要があ
る。
整備体制の例-1
連絡調整組織
関係機関
事業主体
検討委員会など
交通管理者
関係部局
道路管理者等
観光・土木・建築
関係
事業部局
協議
協議
設計・製作・施工・管理
40
複数の市町村の区域で統一的な公共案内標識の整備が必要な場合は、各市町村の事業
部局同士が、連絡を密に保つ必要がある。
整備体制の例-2
広域連絡調整組織
A市
B町
C村
事業部局
事業部局
事業部局
関係部局
関係部局
関係部局
関係機関
関係機関
関係機関
検討委員会など
検討委員会など
検討委員会など
設計・製作・施工・管理
設計・製作・施工・管理
設計・製作・施工・管理
公共案内標識に関係する部局、機関の例
関係機関
関係する案内標識
道路管理者
道路標識(案内標識、警戒標識等)
、案内や誘導標識
交通管理者
道路標識(規制標識、指示標識等)
鉄道事業者
鉄道関係案内標識(駅名表示、駅前広場の案内標識等)
バス事業者
バス関係案内標識(運行時刻表、乗り場案内等)
開発事業者
団地、ニュータウン、大規模施設の案内標識
施設管理者
施設案内標識、公園案内標識
その他
街区案内板、観光案内版、消防水利標識、避難標識
41
第3節
設
計
計画内容を現実の公共案内標識として成立させるのが設計段階の作業である。関係機
関と協議を行い、適宜修正を加えながら作業を進める必要がある。
設計のフロー
1
留意点
デザイン方針の策定
・システムとしての一貫性
・案内標識同士の関係
・案内標識と他の環境要素との関係
表示情報の種類と量、本体
・法令との整合性
の構成、表示の構成等を決
定する
2
本体・表示仕様の検討
・技術的な課題の解決
・機能性、安全性、経済性、耐久性など
基本的な仕様
本体及び表示の素材、形態、
加工方法、仕上げ方法など
・美しさ、個性、街づくりへの効果など
を検討する。
3
付加価値的な仕様
配置の詳細検討
・利用者にとって見やすい場所の選択
・周囲の工作物や地下埋設物等への配慮
街の中にどのタイプの案内
・表示内容の詳細検討と平行して進める
標識を設置するかを詳細に
検討する。
4
設計図書の作成
・事業主体と設計者間の調整
設計図書をまとめる
実施へ
42
第1 デザイン方針
指針 14 デザイン方針
(1) 表示方法に一貫性を持たせるとともに、情報相互の関連性を整理して表示すること。
〔解説〕
表示部分は、情報伝達という公共案内標識の主要な機能を担うものであり、意図する
情報が利用者に的確に伝わるか否かは表示のデザインに大きく左右されるといえる。
したがって、表示デザインに求められる第一の条件としては、わかりやすく効果的に
情報を伝える、ということがある。
一般に表示デザインについては、文字や図形などの形態的な要素に関心が集中しがち
である。しかしながら、わかりやすい表現方法を考える場合には、情報の序列、情報相
互の関連性など表示内容が的確に組み立てられ整理されていることがポイントとなる。
より具体的にいえば
1
一貫性を持たせる
2
情報同士の関係を整理する
などの方法により、よりわかりやすい表示面をつくる必要がある。
1
一貫性を持たせる
公共案内標識は、相互に連携することにより効果を発揮する場合が多いが、その場
合表示デザインに一貫性を持たせ、
・情報の伝わり方を安定させる
・情報に連続性を持たせる
ことが大切である。
具体的には、情報内容の共通性に応じて表示デザインを共通化することによって、
情報に一貫性を持たせ、情報の伝わり方を安定させることができる。
また、書体や色彩など表示デザインを共通化することにより、情報に連続性を持た
せることができる。
なお、表示デザイン共通化の範囲は自治体レベル、県レベルなど、ある程度の広が
りを持っていることが、より効果的である。
43
地図を共通化した例
本体を場所の特性に応じて変える場合でも、表示は共通のデザインで統一し一貫性を持たせる。
書体、色彩を共通化した例
形態が管理区分ごとに異なっていても表示デザインを共通化することで、情報に連続性を持たせ
ることができる。
44
2
情報同士の関係を整理する
情報同士の関係を整理すること、すなわち、情報の種類の違い、重要度の差に注
目し各々を強調することによって、繁雑さを避けながら豊富な内容を表示することが
できる。
特に、掲載される情報量が多く紛らわしい場合には、種類の違いを色彩、書体、
文字の大きさ等を変えて表現することが効果的である。
ただし、これを過度に施すと情報の文脈が失われて逆効果となるので注意を要す
る。
情報の種類の違いに応じて表示
デザインを変えた例
色によるもの(道路標識)
高速道路:緑・白
一般道路:青・白
書体によるもの(案内図)
名称表示を、点的なもの(施設名等)、線的なもの(通り名等)面的なもの(町、
丁目等)によって書体を使い分ける
45
指針 14 デザイン方針
(2) 公共案内標識自身の乱立による景観阻害を防ぐため、複数の公共案内標識の関係を
整理し、適宜複合化を検討すること。
(3) 周辺景観との調和に配慮すること。
〔解説〕
デザインの視点としては、以下の3つがあげられる。
1
複数の公共案内標識の関係
2
乱立を防ぐ工夫
3
周囲との調和
表示板面を構造的に支える本体部分については、これまでは必要な構造強度を持って
いればよかったが、公共案内標識は街の中に繰り返し用いられる景観要素であるとの考
え方から、周辺景観に配慮したものであることが求められている。
また、公共空間のデザインについて個性化への指向が高まりつつあるなか、比較的整
備負担の軽い公共案内標識を街づくりのきっかけとしていく動きが、各地で見られ始め
ている。
上記の3つの視点のそれぞれについて、デザインの方向性が幾つか考えられる。公共
案内標識の整備計画では、計画の条件や整備方針に照らしあわせ、適切な方向性を定め
ることにより、本体デザインを合理的に検討することができる。
1
複数の公共案内標識の関係
複数の公共案内標識の関係を考える上では
(a)共通化デザイン
(b)個別化デザイン
の2通りの考え方がある。
46
(a) 共通化デザイン
すべての公共案内標識の本体を共通のデザインで統一することにより、
・空間を秩序立て、連続景観をつくりだすことができる
・公共案内標識の存在が認識されやすくなり、整備の効果が高まるなどの効果が期
待できる。
ただし、表示できる情報量が限定されるため、やや画一的な展開となる可能性もあ
り、場所によっては必要な情報が大きく異なる場合などは、基本形態を慎重に検討す
る必要がある。
各種標識のデザインを
共通化した例
消防水利標識
タクシー乗場
記名標識
道路記名標識
規制標識+
道路記名標識+
周辺案内標識
47
規制標識+
交通機関記名標識+
周辺案内標識
交通機関記名標識+
周辺案内標識+
タクシー乗場案内標識
(b) 個別化デザイン
表示内容などに応じて本体のデザインを変えることにより、情報や空間の理解を
促進するなどの効果が期待できる。
ただし、デザインのバリエーションが増えすぎると、逆に利用者を混乱させるこ
とにもなり、注意が必要である。
情報化する情報の種類にしたがって
デザインを個別化した例
周辺案内標識
施設誘導標識
バスシェルター+記名標識
48
広域案内標識
2
乱立を防ぐ工夫
公共案内標識の氾濫による情報伝達効果の低減や、景観の阻害を防ぐためには、本体
デザインを工夫し
(a) 同種情報の複合化
(b) 異種情報の複合化
(c) 標識以外の要素との複合化
を積極的に行っていく必要がある。
(a) 同種情報の複合化
互いに関連している情報を複合化することにより、それぞれの情報価値が高まり
相乗効果が期待できる。
具体的には、記名標識(道路等)+案内標識、施設誘導標識+案内標識など、同
じ種類の情報を表示する公共案内標識の複合化を進めていく。
同種の情報を複合化した例
49
(b) 異種情報の複合化
案内標識+規制標識、鉄道記名標識+案内標識など種類の異なる標識の複合化に
より、市街地など特に案内標識の高密な地域では景観を整えることができる。
ただし、車両系と歩行者系を複合化する場合、求められる視認性が大きく異なる
ので、慎重な配慮が必要である。
異なる種類の情報を複合化した例
(c) 標識以外の要素との複合化
さらに積極的な考え方として、案内標識+ストリートファニチュアなど、公共案
内標識と他の環境要素との複合化がある。これにより、街並みを整理し景観を整え
ることができる。
公共案内標識と他の要素とを
複合化した例
50
3
周囲との調和
公共案内標識本体のデザインと周辺環境の調和を考える上では
(a) 馴染ませる調和
(b) 対比させる調和
の2通りの考え方がある。
周囲に溶け込み、馴染ませる調和はコンセンサスが得られやすく、成功例も多い。
一方、色彩の対比のように、周囲から突出するような調和のとり方も景観にアクセント
を与え、街を積極的に変えようとするデザインとして有効である。
(a) 馴染ませる調和
周囲に溶け込み馴染む本体デザインにより、本体の存在感を感じさせず、多くの
人に違和感を与えない、という効果が期待できる。
具体的には、造形の工夫や、素材色や彩度を落した塗装などによって、周囲に溶
け込み、存在を誇示しないデザインを行う。
背景に馴染ませる本体デザインの例
51
(b) 対比させる調和
一方、本体デザインを周囲から突出させていく、対比調和の考え方では
・存在感のある本体デザインによって、街並みを整えたり、計画区域に不足して
いる景観の要素を付加することができる
・街の構造を顕在化させたり、人をある方向に導いたりすることも可能である
などの効果が期待できる。
公共案内標識の本体を積極的に活用するデザインは、景観に対するインパクトが
強く、一般に敬遠されがちである。しかし、計画地域に適合し、適切にデザインさ
れていればこのようなアプローチは非常に効果的である。
また、このような表示要素によらない情報の表現は、誰に対しても即座に理解さ
れる特徴がある。
背景と対比させる本体デザインの例
52
指針 14 デザイン方針
(4) 地域の個性を反映したデザインとすること。
街なかの繰り返し現われる公共案内標識には、その地域の持つ個性がある程度反映さ
れてしかるべきである。ただし、その役割や、地域性の本質を考えると、以下の点を守
る必要がある。
・本来の機能を逸脱したり、公共空間の質を支える要素としてふさわしくない行きす
ぎた表現や、過度の装飾性は慎む。
・公共空間における地域性は、地域の本質を表現したものであること。(これによっ
て、長い年月接する地域住民が愛着を持ち、飽きのこない街の財産となる。
)
こうした前提を踏まえて、公共案内標識の整備計画に反映される地域特性としては、
(a) 街の構造をシステムに反映させる
(b) 街の景観特性をデザインに反映させる
(c) 街の文化をソフトに反映させる
の3つがあげられる
(a) 街の構造をシステムに反映させる。
街の構造とは、地形などの自然要素、人口や都市の規模、道路や鉄道などの交通
機関、土地利用などであり、これらの特性をシステムに反映することにより、使い勝
手のよい公共案内標識とする。
53
(b) 街の景観特性をデザインに反映させる。
建物群による街並み、道路などの公共空間などの地域の景観特性を、スケールや
構成、素材・色などに反映させることにより、街並みや周辺の環境との調和を図るこ
とができる。
(c) 街の文化をソフトに反映させる。
街の個性や魅力となる文化的資産、すなわち、地場産業、観光要素、文化、風俗、
方言、しきたり、習慣、伝統、行事、伝承や伝説などを情報内容に反映させることに
より、街のイメージを強調し豊かにすることができる。
54
第2 表示部分の仕様
指針 15 表示面の大きさ
表示面の大きさは、基本モジュール(基準寸法)の考え方に基づいて設定すること。
〔解説〕
表示面に必要な大きさは、情報内容により異なるが、最も小さな表示面の大きさを一
つの単位(モジュール)として、他の表示面の大きさを設定していくことで、情報の種
類と形の種類を一貫して対応させることができ、公共案内標識としての統一感を強める
ことができる。
モジュール化の例(正方形)
表示面の基準寸法
展開例(a=250 mm)
55
指針 16 地図
広域案内標識及び周辺案内標識に用いる地図の範囲、縮尺、向きは、別表第3を目安
とすること。
〔解説〕
公共案内標識に用いられる地図の種類には
・広域案内標識の地図
地域全体の概略案内を目的とする。
・周辺案内標識の地図
歩行圏の詳細な案内を目的とする
の2種類があり、それぞれについて表示範囲、縮尺、表現手法等を適切に選択する必要
がある。
いずれも、情報量(案内すべき施設など)が多い場合は範囲をしぼりこみ、大きな縮
尺で繁雑にならないように表示し、逆に情報がまばらな場合は比較的小さな縮尺で市町
村全域を表示するなど、場所や状況に応じた設定が必要がある。
表示面の向きは基本的には表示面に向かって前方を上とするが、単独で設置される広
域案内図については北を上とすることも検討する。
別表第3
範囲、縮尺、向きの目安
広域案内標識の地図
周辺案内標識の地図
範囲
5km四方~市町村全域
1~2km四方
縮尺
1/5000~1/20000
1/1000~1/5000
向き
表示面に向かって前方を上
表示面に向かって前方を上
56
広域案内標識の地図
周辺案内標識の地図
57
指針 17 文字
(1) 和文の書体は、石井明朝体、石井ゴシック体、ゴナ体、ナール体又はこれらに相当
する可読性・加工性を備えたものとすること。
(2) 英文の書体は、センチュリー、ヘルベチカ、ユニバース又はこれらに相当する可読
性・加工性を備えたものとすること。
(3) 数字については、基本的に英文に準じること。
(4) 文字の高さについては、別表第4を目安とすること。
〔解説〕
1
書体の選択
公共案内標識に使用される文字が備えるべき条件としては
・可読性が高いこと(読みやすく視認性に優れること)
・加工性がよいこと(製作の作業効率が良いこと)
・情報内容および場の特性にふさわしいこと
があげられる。
現在、公共案内標識に使用される文字は、そのほとんどが写真植字による既製の書体
から選択されている。
以下に和文、英文の写真植字書体について代表的なものを紹介する。
●和文
和文書体には、明朝系とゴシック系の2系統があり、それぞれに特徴や太さの異なる
多数の書体が存在する。
明朝系
・毛筆文字の特徴を模したもの
・縦線に比べて横線が細く、遠方からは横線が見にくくなる
・縦組を主として作られているため、横組で使用するためには字詰めが必要である
・可読性、加工性の点で若干問題がある
・最も日本文字らしい表情を持った書体
・代表的なものに「石井明朝体」
ゴシック系
・文字の線幅がほぼ一定で可読性に優れている
・代表的なものに以下の3種類がある
「石井ゴシック体」
・明朝体の筆勢感を残している
58
・横組で使用するためには字詰めが必要
「ゴナ体」
・字枠いっぱいに設計されているため縦組、横組ともに字詰めの必要がほとんどな
い
・メンテナンスに容易に対応できる
「ナール体」
・ゴナ体の角を丸めたもの
●英文
明朝系和文に併記する英文には「センチュリー」などセリフのあるものを使用し、一
方、ゴシック系和文に併記する英文には「ヘルベチカ」「ユニバース」などのセリフの
ないものを使用するのが一般的である。
●数字
基本滝には英文に準じるが、和英のバランスをとるためには、和文中の数字であって
も対応する英文書体のものを使用することが望ましい。
その他文字の変形として、横幅だけを縮小する長体や、縦幅だけを縮小する平体、及
び文字に角度をつける斜体が可能で、表示の長さを調整したり、書体の表情を変えるこ
とができる。
また、表示内容が比較的尐ない誘導、記名標識については、これらの他に演出性の強
い書体も使用できるものとする。
文字の変形
59
公共案内標識の
代表的書体
和文書体
英文書体
60
2
文字の大きさ
判読に必要な文字の大きさは、利用者の視認距離と移動速度によって決り、それより
も小さすぎるもの、大きすぎるものは避けた方がよい。
なお、英文の大きさは大文字天地が和文の1/2程度が標準とされているが、適宜小さ
くなり過ぎないように設定する。
また、英文のカウンター(字間)は隣り合う文字により異なるが、コンピューター及
び写真植字機には書体ごとに標準的なカウンターが組み込まれており、それらに従った
英文の表記方法が外国人には読みやすいとされている。
別表第4
文字の高さの目安
情報の種類
移動速度
視認距離
文字の高さ(高さ)
歩行者用
低速移動~停止
1~7m
5mm以上
歩者共用
中速移動
30~50m
100~150mm
車両用
高速移動
65~100m
200~300mm
61
指針 18 ピクトグラム(絵文字)
(1) ピクトグラムは、原則として、一般案内用図記号検討委員会で定めた「標準案内用
図記号」を使用すること。
(2) 地域において積極的に宣伝する必要がある施設、地点等を表現する独自のピクトグ
ラムを作成し、演出的に使用することもできるものとする。
〔解説〕
ピクトグラム(絵文字)の特徴と使用上の留意点としては
・主に外国人への配慮のために使用されている
・アイキャッチとしての訴求力が強い
・表示スペースが小さくてすむ
・多用すると繁雑さを招く
・限定した情報に対して効果的に使用する
・自己開発以外のピクトグラムを使用する場合には、著作権等について注意を要する
などがあげられる。またピクトグラムの使用方法としては以下の4通りがある。
・文字に代えて単独で表示する。
文字に比べ視認距離が大きく、一目で内容が理解でき、外国人にもわかりやすいも
のであるが、特に普及しているものに限られる。
・誘導表示、案内図等で文字と併記する。
文字による施設名などの表示に加え、その施設等の属性をピクトグラムで表現し、
情報を補う。
・案内図等で凡例と共に使用する。
文字に比べ表示スペースが小さいことを活かした使用法。
凡例のみであれば複数の外国語を記載することも可能となり、利用者層を広げるこ
とができる。
・特定の施設を演出的に表示する(○○城、△△美術館など)
多用を避け効果的に使用する。
単独での使用は難しく、文字との併用が必要である。
ピクトグラムについては、公益財団法人「交通エコロジー・モビリティー財団」が日本
財団の助成を得て設置した「一般案内用図記号検討委員会」で定めた「標準案内用図記号
ガイドライン」で125種類(平成26年3月現在)が示されている。そのうち116種類(平成
26年3月現在)がJIS(日本工業規格)化され、JIS Z 8210として制定されているので、ピ
クトグラムの活用にあたっては、これらのピクトグラムを使用することが、統一性・連続
性の確保からも重要です。
62
一般案内用図記号検討委員会で定めた「標準案内用図記号」
63
64
指針 19 レイアウト(割付け)
(1) 文字組みについては、横組み、縦組み又は横組みと縦組みの併用とすること。
〔解説〕
・横組み
公共案内標識では最も一般的な組み方で、英文との併記も容易である。
・縦組み
表示面の横幅を小さくしたい場合や、名所旧跡の表示等日本語独特の組み方を積極
的に活用する場合などに用いられる。
・横組みと縦組みの併用
同一視野内で過剰に行うと読みやすさを損なう恐れがあるが、地点名称と施設誘導、
あるいは概略を伝える情報と詳細を伝える情報のように、異なる情報を区別して表示
するときに有効である。この場合、文字高や色をかえるなど表現にめりはりを着ける
工夫が必要である。
65
指針 19 レイアウト(割付け)
(2) 行合わせについては、頭合わせ、末尾合わせ又はセンター合わせとすること。
〔解説〕
・頭合わせ、末尾合わせ
表示の重心が偏るために方向性が出しやすく、秩序感がある。
・センター合わせ
安定感があり、記名表示に多く用いられる。
・均等合わせ
単語をかたまりとして認識しにくいので、用いない方が良い。
66
指針 19 レイアウト(割付け)
(3) 英文を併記する場合のレイアウトは、別図第1を目安とする。
〔解説〕
英文の大きさは、大文字天地が和文の1/2程度とする。
表示する場所は、和文の下や横が一般的であるが、情報量が多い場合には別記が望まし
い。
英文には長体1、長体2などの変形を行った方が、バランスがよい場合が多い。
別図第1
英文併記の目安
67
こうしたレイアウトの基本的な原則に従って表示面の構成を検討する段階において
は、広域・周辺案内標識、施設誘導標識、記名・説明標識などの別で、情報量など表示
の条件が異なるため、それぞれの情報内容を美しく、わかりやすく伝えるには、種類ご
とにレイアウトの基準となるフォーマットを設定し、それにしたがって文章、地図、ピ
クトグラム等を配置していく方法が有効であるといえる。
一般的なものに、正方形を単位とする基準線を設定し、それに従って文字、図版等を
配置するグリッドシステムがある。
表示構成の例
グリッドシステム
また、誘導ルートが複雑で距離等がわかりにくい場合は、表示板面を構成する際に距
離、所要時間の併記を検討する必要がある。
68
指針 20 色彩
(1) 色彩により情報内容のグルーピング等を行う場合は、多数の色彩の組み合わせが見
苦しくならないように配慮すること。
(2) 色彩を演出的に使用する場合は、機能を損なわない範囲で、かつ、地域にふさわし
いものとすること。
〔解説〕
1
色彩の使用方法
色彩の使用方法としては以下の3通りがある。
・文字を補助する記号として使用する
「消火栓等の緊急施設を赤で表示する」あるいは「注意に関するものを黄色で表示
する」など、色彩によって迅速に情報を伝えることが可能となるが、色彩とその意味
が広く一般に慣習化していることが前提となる。
・色彩をアイキャッチに利用する
複雑な文字情報のグルーピングによって明解にする、あるいは重要な情報を色彩で
区別し強調する、などの方法があるが、いずれにせよ多数の色彩が見苦しい景観を生
むことのないようデザインの配慮が不可欠である。
・演出的に使用する
基本的には自由な発想で良いが、表現によっては周辺環境全体に大きな影響を与え
るので、慎重に検討することが大切である。
公共案内標識の機能を損なわないことと、場所にふさわしい表現であることの2点
は最低限満たす必要がある。
69
2
色彩と視認性
色彩の差異は、明るさ(明度)
、鮮やかさ(彩度)、色み(色相)の3つの色の特性
の違いで認識される。
色彩の白や黒、グレーなど色みのないものは、無彩色と呼ばれ、無彩色の場合は明
るさの違いのみで認識される。
一般に隣合う色彩は、明度、彩度、色相の差が大きいほど、境界がはっきり見える
(視認性が高い)といえる。
つまり、個々の色彩について視認性の良い色、悪い色という比較は成立せず、地と
図の色の組み合わせにおけるコントラスト(主に明度差)が問題となる。
また、同じ色の組み合わせでも、暗い地に明るい文字を表示する方法が、その逆よ
りも文字が膨張して大きく見えることが知られている。
地と図のコントラスト
サ サ サ
コントラストが小さい
コントラストが大きい
暗い地に明るい図は、
組み合わせは視認性が低い
組み合わせは視認性が高い
図が膨張して大きく見える
70
指針 21 照明等
(1) 夜間の利用が見込まれる公共案内標識については、照明装置の設置を検討すること。
(2) 街の状況により、点字又は音声の使用を検討すること。
〔解説〕
夜間における利用が見込まれる場所(駅前広場、主要交差点など)に立つ公共案内標
識については、夜間の利用耐えるだけの明るさを確保することが必要である。方法とし
ては外部光源からの照射、照明装置の組み込み、内照などが考えられる。
照明の方法
特徴
留意点
外部光源からの照射
どのタイプの表示板面にも
表示面と光源の位置関係に注意する
対応
光源のまぶしさ(クレア)が利用の妨
げとならないように注意する
照明装置の組み込み
どのタイプの表示板面にも
電源の確保が必要
対応
灯具のおさまりについてデザイン的
に配慮する
メンテナンスに配慮したデザインと
する
内照式
ガラスなど、光を透過する
電源の確保が必要
素材の板面に限られる
見やすいが素材が限定される
視認性に優れる
メンテナンスに配慮したデザインと
すること
また、主要な交差点、行動の起点、終点など特に案内誘導上の手がかりとなる場所に
おいては、点字や音声による情報提供を行ってその利便に供することが、これからの公
共案内標識の課題だといえる。
71
指針 22 素材
(1) 表示板面の素材は、各地域の気候その他の環境条件に応じ、耐久性、耐候性に優れ
たものとすること。
(2) 本体部分の素材と調和し、かつ、総体として地域にふさわしいものとすること。
〔解説〕
表示板面に使用される主な素材とその特徴を以下に示す。
素材
仕上げ
耐久性、耐候性
加工性
特徴
アルミ板
塗装
良好
良好
押し出し加工により高精度
アルマイト処理
ステンレス製
生地
の部材を大量に生産できる
良好
良好
塗装
木板
生地
生地の状態で耐久性、耐候
性に富む
防 水 ・腐 敗 処 理 が
やや限られる
必要
自然の風合いを感じさせる
場合に応じて屋根や副木を
つける必要あり
ガラス
生地
安全性の観点から
やや限られる
破損に注意
透明な美しさが周囲から浮
き立って見える
アクリル
ハードコート
傷、熱に注意
良好
透明感はガラスに务る
ポリカーボネイト
ハードコート
傷に注意
良好
透明感はガラスに务る
陶板
焼付け
半永久的な耐久性
やや限られる
独特の素材感がある
を保つ
破損に注意
72
指針 23 印刷方法等
(1) 印刷、表示方法については、表示板面の素材との相性がよく、かつ、耐久性、耐候
性に優れたものとすること。
(2) 街の変化による情報内容の更新に対応できるものとすること。
〔解説〕
主な印刷、表示方法とその特徴を以下に示す。
印刷、表示方法
耐久性、耐候性
表現の自由度
仕上がり
スクリーン印刷
5年程度で退色
色彩、形態とも精度高い
表情は多彩
クロマリン印刷
5年程度で退色
色彩、形態とも精度高い
表情は多彩
エッチング
良好
色彩は限られる
素材感をいかすことができる
形態の精度は高い
切り文字(シート)
普通
色彩は限られる
張り替えが可能
複雑な形態は難しい
切り文字(金属)
掘り文字
良好
良好
色彩は限られる
素材感をいかすことができる
複雑な形態は難しい
表示板面に立体感をつける
色彩は限られる
素材感をいかすことができる
形態の精度は高い
陶板
半永久的な耐久性
色彩、形態とも自由だが精
独特の素材感がある
度は落ちる
一般的には案内図など、使用する色彩の種類が多いものはスクリーン印刷やクロ
マリン印刷で対応し、特に複雑な色合いが要求されるものについては、クロマリン印
刷が使用されることが多い。
エッチングや掘り文字は、表示板面に絵柄や文字を直接刻み込むため、素材感を
いかしながら、印刷と比べて格段に優れた耐久性を得ることができる。
切り文字は、情報内容を容易に変更することができる、また金属チップなどの使
用より、ある程度の立体感を表示板面に与えることができる。
陶板による表示は、焼付けの落ち着いた色彩と、反永久的な耐久性が特徴であり、
自然景観に調和しやすい表示方法だといえる。
特に頻繁に情報内容を更新する必要が生じると予想される地域については、表示
板面を分割可能なものとするなどの工夫により、情報更新時に必要な手間やコストを
大幅に省略することができる。また、暫定的な施設などを表示する場合は、シールな
どにより対応することも効果的である。
73
第3 本体部分の仕様
指針 24 本体の高さ
本体部分の高さは、別図第2を目安とすること。
〔解説〕
公共案内標識の表示板を支える本体のデザインは、各市町村の実情に合わせ、さまざ
まものがあってしかるべきだが、情報提供の対象別あるいは、情報の内容により、表示
板面が掲げられる高さにはある程度の目安がある。
その関係はおおまかに以下の通りに整理できる。
・歩行者用
詳細な情報内容のため、歩行者の視線の高さに掲示する。
・歩者共用
歩行者用と車両用の中間程度の高さに掲示する。
・車両用
道路上空に掲げられる。下端の高さは建築限界の4.7mに余裕を加えた5m程度とす
る。
別図第2
表示の要素ごとの
本体の高さの目安
74
指針 25 素材、色彩
(1) 本体部分の素材は、各地域の気候その他の環境条件に応じ、耐久性、耐候性に優
れたものとすること。
(2) 素材の選択に当たっては、地域性の演出の観点から地場産の素材など、各地域の
特性に見合ったものを検討すること。
(3) 色彩については、素材の風合いをいかすものとし、塗装などによる表面処理が必
要な場合も、複雑な配色や派手な色彩は用いないこと。
〔解説〕
本体部分に使用される主な素材とその特徴を以下に示す。
素材
耐久性、耐候性
つくりやすさ
仕上がり
一般鋼材
防錆処理が必要
良好
塗装色
耐候性鋼材
良好
良好
色彩は限られる
ステンレス
良好
良好
生地をいかすことができる
鋳鉄
良好
型形成、精度はやや落ちる
独特の素材感
アルミ型材
アルマイト処理により良好
型形成、高精度
シャープな表情
アルミ鋳物
良好
型形成、高精度、高自由度
独特の素材感がある
石材
極めて良好
高精度
自然の風合いがある
コンクリート
良好
精度はやや落ちる
汚れが目立たない
模石コンクリート
良好
精度はやや落ちる
骨材によって表情は多彩
GRC*
良好
型形成
塗装色
木材
防水、防腐処理が必要
自由度は高い
自然の風合い
GRC* ガラス繊維強化コンクリート
素材の選択の基準として、まず第一に耐久性、耐候性、安全性などの基本的な性
能を備えている必要がある。それらに加えて演出的な観点から、地場産の素材の使用、
あるいは街の中の繰り返し出現するものとして色彩面にも十分な配慮をする必要が
ある。
75
第4 設
置
指針 26 設置位置
道路上に設置する場合は、歩道のある広幅員道路については歩道内の敷地境界寄り又
は歩道内の歩者境界寄りとし、歩道のない道路については道路上の敷地境界寄りとする
こと。
〔解説〕
設置位置として、道路、広場、施設敷地内の3つがある。広場と施設敷地内では比較
的設置の自由度が大きいが、道路上では様々な制約があり、設置位置は限られてくる。
設置場所の選定にあたっては、以下の点に注意すること。
・公開空地やセットバック部分を積極的に利用すること。
・地下埋設物等を確認し、位置調整すること。
・設置場所と情報の整合性を確認すること。
・公共案内標識の視認性が妨げられないこと。
・利用者の行動特性に配慮すること。
・歩道等の有効幅員を必要以上に狭めないこと。
・既設の標識、信号機の視認性を妨げないこと。
・損傷を受けるおそれが尐ないこと。
・交差点、曲がり角等においては見通しを妨げないこと。
・建築限界(道路構造令第12条)を侵さないこと。
76
指針 27 表示板面の方向
表示板面の方向は、道路に対して平行を原則とし、公開空地など設置場所に余裕があ
る場合は、道路に対して直交の設置を検討すること。
〔解説〕
表示板面の向きは、道路に対して平行あるいは直交の2通りがあるが、基本的には歩
道の有効幅員を狭めないよう、道路に対して平行に設置する。ただし、駅前広場、公園、
公開空地などに設置できる場合は、適宜最適な方向に向けて設置するものとする。
1
道路に対して平行
・
対面方向からの視認性が良く、表示板面の横幅を大きく取ることができる。
・
車両からは見づらい。
2
道路に対して直交
・
進行方向からの視認性が良く、車両からも見やすい。
・
幅員が狭い場合は通行の妨げとならないよう、表示板面の横幅を小さくするなど
の工夫が必要である。
・
進行方向の逆方向への誘導が困難であり、両面表示が基本となる。
77
第4節
実
施
指針 28 発注、製作、施工監理
(1) 発注に当たっては、復旧工事など付帯的な項目についても、もれがないように注意
すること。
(2) 製作、施工監理については、設計者が必ずチェックを行うこと。
(3) 発注者と製作・施工者と設計者の三者間で、連絡を密に保つこと。
〔解説〕
実施における工程は公共案内標識そのものの製作と、設置工事とからなる。最終的に
品質及び設置場所とのおさまりを決定する重要な段階であり、製作・施工者との間でき
め細かい打ち合せや細部の検討を行っていく必要がある。
実施のフロー
78
第5節
管
理
指針 29 情報の更新
管理者は街の変化に合わせて、随時情報内容の更新を行うこと。
指針 30 メンテナンス
汚れや务化損傷に伴う機能の低下を補うため、定期的にメンテナンスを行う体制を整
えること。
〔解説〕
公共案内標識のメンテナンスは照明や車止めなどの工作物に比べ多くの労力と費用を
要する。
特に情報内容の更新のためには、管理者が街の移り変わりを常時把握している必要が
あり、単なる道路の管理とは大きく異なるものである。
こうした情報内容の管理を効率的に行うためには、尐なくとも管理台帳を作成し、定
期的に点検を行う必要がある。また、コンピューターに地図情報を入力して保存するな
どの方法も有効である。
街の様相が段階整備などにより随時変化していくことが想定される場合は、情報の更
新が容易な印刷・表示方法を検討しておく必要がある。
管理のフロー
79
管理台帳の記載内容(例)
管理番号
○○町 公共案内標識 管理台帳(1)
種別
各部仕様
設置年月日
柱
設置場所見取図
・大きさ
・素材
所在地
・仕上げ
本
体
製
作
業
者
社名
部署名
表
示
面
担当者
電話
・大きさ
・素材
社名
施
工
業
者
部署名
・仕上げ
担当者
電話
基
礎
備考
・大きさ
・素材
・障害物
検
査
承
認
○○町 公共案内標識 管理台帳(2)
定期メンテナンス記録
チェック記号とその説明
第 回実施 年 月 日
第 回実施 年 月 日
第 回実施 年 月 日
担当
担当
担当
A
現場で修理
清掃
清掃
清掃
B
部品取り替えの必要あり
□柱 □表示面
□柱 □表示面
□柱 □表示面
C
本体取り替えの必要あり
柱
柱
柱
D
現場で塗装
□健康状態
□健康状態
□健康状態
E
部分塗装の必要あり
□ボルトのゆるみ
□ボルトのゆるみ
□ボルトのゆるみ
F
全体塗装の必要あり
□キズ・破損
□キズ・破損
□キズ・破損
表示面
備考
記号 記号の説明
表示面
表示面
処理経過
□表面の状態(ひび割れ等)
□表面の状態(ひび割れ等)
□表面の状態(ひび割れ等)
年 月 日
□がたつき
□がたつき
□がたつき
内容
□パネルのゆがみ
□パネルのゆがみ
□パネルのゆがみ
□キズ・破損
□キズ・破損
□キズ・破損
□情報内容(更新の必要性)
□情報内容(更新の必要性)
備考
□情報内容(更新の必要性)
備考
年 月 日
内容
年 月 日
内容
80
○○町 公共案内標識 管理台帳(3)
正面
側面
写真貼付
写真貼付
遠景
写真貼付
撮影年月日
81
年 月 日
82
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