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高等植物の自家不和合性における 自他識別機構の分子的解析
; 高等植物の自家不和合性における 自他識別機構の分子的解析 ‡ /(課題番号I1238101) 享一平成17年3月 磯貝彰 1 姿'∼ TLl ;-.7 (-奈良先端科学技緬大学院大学・ /†イオサイ土ンス研究科,l・>教授) はしがき 本報告書は、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究によって、平成1 1 年度から平成1 5年度までの5年間に実施された。 「高等植物自家不和合性にお ける自他識別機構の分子的解析」 (略称:植物自家不和合性)における研究成果 の主なものを収録したものである。 自家不和合性は、被子植物の生殖システムとして、きわめて特徴的なもので あり、植物科学の永年の課題であった。本特定領域研究では、アブラナ科植物、 バラ科・ナス科植物、ヒルガオ科植物を材料として、自家不和合性の自他識別 の制御するS遺伝子座の解析と、 S遺伝子の産物、それらの相互作用、進化に ついての研究を進展させ、さらには、自己認識の情報伝達系の解析を目指した。 また、それらの知見を総合することによって、植物の自家不和合性の多様性と 共通性について、理解を深めることを目指した。さらには、その中で、相互の 研究交流、若手研究者の育成等への員献も視野に入れた。 この5年間、 5つの計画研究が、それぞれに、また協力しあって、研究を展 開し、 S遺伝子座の解析、 S遺伝子産物の解明、など、当初の研究目的の大部 分を達成できたと考えている。また、国際シンボジウムなどを通じて,我が国 の自家不和合性研究の進展を海外の研究者に印象づけるなど、その成果を広く 海外にも発信することができた。本研究の成果としての発表論文の質もきわめ て高いものがあり、今後の世界の植物自家不和合性の研究の発展に大きく責献 できたと自負している。 本報告書は、本特定領域研究の5年間の成果のとりまとめとして、編集され たもので,本研究の発表論文リストと代表的な発表論文の別刷を集めた。それ ぞれの研究課題の代表者のみならず、これに加わった多くの研究者の皆さんに お礼申し上げたい。また、こうした研究の進展は、科学研究費の補助金がなけ れば、達成できなったものであり、文部科学省および関係各位にお礼申し上げ たい。さらには、本特定研究の進展を暖かく見て、日頃ご指導いただいた、総 括班評価委員の先生方にもお礼を申し上げたい。 平成16年3月1日 研究代表者磯貝彰 目次 頁 l.研究組織と交付決定額 2.研究成果の概要 3.発表論文リスト 4.主要論文別刷集 1 2 23 31 研究組織 総括班 研究代表者:磯貝彰(奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科教授) 研究分担者:神山康夫(三重大学生物生産学部教授) 高山誠司(奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科助教授) 大山莞爾 (京都大学大学院生命科学研究科教授評価委員) 崎山文夫 (大阪大学名誉教授評価委員) 鈴木昭憲 (秋田県立大学学長評価委員) 原田宏 (筑波大学名誉教授評価委員) 日向康吉 (東北大学名誉教授評価委員) 村田紀夫 (岡崎基礎生物学研究所教授評価委員) 計画研究班 研究代表者:磯貝彰 (奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科教授) :渡辺正夫 (岩手大学農学部助教授) :西尾剛 (東北大学大学院農学研究科教授) :神山康夫 (三重大学生物生産学部教授) :乗岡茂巳 (大阪大学大学院生命機能研究科教授) 交付決定額 (金額単位:千円) l 直接経費 総括班 磯貝 渡辺 西尾 神山 乗岡 間接 経費 合計 11 年 度 9 ,0 0 0 18 ,0 0 0 1 4 ,0 0 0 1 ,6 2 0 0 1 7 ,7 0 0 18 ,0 0 0 0 9 2 ,9 0 0 12 年 度 1 2 ,7 0 0 2 1 ,2 0 0 1 4 ,2 0 0 1 3 ,2 0 0 18 ,6 0 0 1 1 ,0 0 0 0 9 0 ,9 0 0 13 年 度 1 2 ,7 0 0 2 1 ,2 0 0 9 ;0 0 0 10 ,7 0 0 13 ,9 0 0 8 ,5 0 0 0 7 6 ,0 0 0 14 年 度 1 5 ,30 0 2 1 ,3 0 0 11 ,9 0 0 9 ,1 0 0 12 ,8 0 0 8 ,5 0 0 0 7 8 ,9 0 0 15 年 度 13 ,6 0 0 17 ,0 0 0 1 0 ,2 0 0 9 ,10 0 1 0 ,2 0 0 8 ,5 0 0 0 6 8 ,6 0 0 16 年 度 1,5 0 0 0 0 0 0 0 0 1,50 0 6 4 ,8 0 0 9 8 ,7 0 0 5 9 ,3 0 0 5 8 ,3 0 0 7 3 ,2 0 0 5 ,4 5 0 0 0 4 0 8 ,8 0 0 総計 -1- 研究成果の概要(計画研究1 ) l.研究課題 アブラナおよびぺチュニアの自家不和合性の分子機構 2.課題番号 1 1238205 3.研究組織 研究代表者磯貝彰(奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科・教授) 研究分担者高山誠司(同大学・同研究科・助教授) 柴博史(同大学・同研究科・助手) 岩野恵(同大学・同研究科・教務職員) 4.研究目的 アブラナ科植物およびナス科・バラ科植物の自家不和合性は、 1遺伝子座上の5複対立遺 伝子系により説明される。すなわち雌ずい側の5遺伝子産物と花粉側の5遺伝子産物の相互 作用を介して自己・非自己の認識が行われると考えられている。従来の研究により、これら の植物における雌蕊側の5遺伝子産物の実体が各々明らかにされてきたが、花粉側の5遺伝 子産物の実体が不明であり、自己・非自己の花粉の認識反応から自己花粉の発芽・伸長の停 止に至る分子機構も末解明のままであった。本研究は、アブラナ科植物およびナス科植物の 自家不和合性に関わる花粉側因子の実体解明を第1、第2の目標としたoさらに、アブラナ 科植物については、雌ずい側因子SRK下流の情報伝達因子の解明を第3の目標としたo 5.研究成果 アブラナ科植物の自家不和合性 ( 1)花粉因子SPllの発見と発現解析,機能証明、および立体構造解析 B招SSl・cwapa島およびS12系統間で多型を示す荊発現遺伝子を,蛍光ディフアレンシヤル デイスプレイ(FDD)法を用いて探索し、花粉因子の候補遺伝子GPlを発見したo同時期 に、東北大の鈴木らは、 E mpa島ハプロタイプのS遺伝子座上に、荊発現遺伝子SFllを 発見した。島,島, S12ハプロタイプ間のGPl/SPllの塩基配列の相同性は極めて低いもので ぁったが、詳細なゲノムマッピングにより、いずれもSLGおよびSRK遣伝子の間に位置す る対立遺伝子の関係にあることが判明した(以下SPllと呼ぶ)o SFllは、 8つの保存され たCys残基を持つ分子量5-7kの分泌型の塩基性蛋白質をコ-ドするが、成熟蛋白質部分 は極めて多型に富む。ただし、比較的保存されたシグナルペプチド部分でプライマ-を設計 することで、ほぼ全てのクラスI (後述)に属するSハプロタイプから, SPl1遣伝子を同定 することが出来た。その後、本法では同定できなかったクラスⅡ (後述)に属する5ハプロ タイプのSPllを増幅するプライマ-も設計することに成功し、 SPll遺伝子の網羅的同定 が可能となった。 花粉表層には、 8つのCys残基を持つPCP bonen coat proteh)類と呼ばれる塩基性蛋 白質が多数存在する。 SPllは、他のPCP類とはCys残基の位置が異なり,新規PCP類と -2- 考えられた。また、発現部位をhsl'tuハイブリダイゼ-ション法により調べると、花粉での み特異的な発現を示す他のPCP類(PCPlゝ1, SLRl-BPetc.)とは異なり、 SPllは花粉に 加え蔚の夕ぺ-ト細胞で強く発現していた.特にクラスIIに属するSハプロタイプでは、 SPllはタペ-ト紺胞でのみ発現が認められた。さらに、免疫組織化学的解析により、夕ぺ -ト細胞で生合成されたSPll蛋白質は,タペ-ト組織崩壊以前に脂溶性物質と共に剤空内 に分泌され花粉表層に移行することが示唆された.こうしたSP11の発現様式は、本科植 物の自家不和合性の花粉の表現型が胞子体型に決定されるという事実を矛盾なく説明するも のであった。 SPllが花粉因子の本体であることの最終証明は、花粉の吸水・伸長を指標としたバイオ アッセイ系と形質転換系により得られた。前者においては、大腸菌発現あるいは化学合成 SPll蛋白質を用い、それらを柱頭に予め処理した後に和合(他家)受粉すると、 SPllと同 じ5ハプロタイプの柱頭を処理した時のみ特異的に不和合性反応が誘起され和合花粉の吸 水・伸長が阻害されることが示された。後者においては、 SP11遺伝子を植物体に形質転換 の手法を用いて導入すると、形質転換体の花粉が、導入したSPl1と同じSハプロタイプの 表現型を獲得することが示された。以上により、我々が第1の解明目標としたアブラナ科植 物の自家不和合性の花粉因子の実体は、 SPllであることが明らかとなった。 さらに、以降の機能解明に先立ち、 SPll蛋白質の立体構造を決定した。まず、鳥系統株 の花粉抽出物より免疫沈降法により島ISPllを回収し, MLWI-TOFIMSにより分子量を 測定した結果、成熱型鳥-SPllは予想部位でシグナルぺプチドが除去された後、全てのCys 残基がS-S結合を形成した酸化型の単量体として存在することが示された。次に立体構造解 析のために、鳥-SPllを全化学合成した。全体を8つのブロックに分けて液相合成したもの を締合させて合成したo保護基を除去した後、 -度還元し、その後穏和な条件下で酸化させ ると、 -つの安定したコンフオメ-ションをとることが示された。この酸化型島-SPllの S-S結合の位置は、化学的にCトC8、 C2-C5、 C31C6、 C4-C7であると決定した。さらに、 NMRを用いた解析により、鳥-SPllは4つのS-S結合によりコン^oクトに折りたたまれた 植物ディフェンシン類似のβ αβ β構造を持つことが示された。また、他の5ハプロタイプ のSPllの構造をホモロジ-モデリング法により推定し、安定型を求めて比較したところ、 -次配列の相同性は極めて低いものの、全体としては類似した立体構造をとることが示唆さ れたoさらに、 α-β2間のIDOP-1やβ2-β3間のIDOpT2の部分が分子表面に露出してい て、しかも多型に富んでおり、 Sハプロタイプの特典性に関わっている部位であると予測さ れた。さらに、前述のバイオアッセイ系において、本鳥-SPllが極微量(1柱頭当たり約 50缶nol)で不和合性反応を誘起することが示され本立体構造を持つSPllが、花粉因子 本体であると結論した。 (2)花粉困予SPllの雌ずい因子SRKの相互作用解析 東北大の高崎らによる形質転換実験により、 5遺伝子座上にコ-ドされ雌ずい乳頭紳胞で 特異的な発現を示すSRK (S-receptor kinase)とSLG (Sllocus glycoprotekl)の内、 SRK が雌ずい因子本体であることが明らかになったo花粉因子SPllと雌ずい因子SRKは、構 造的特徴からリガント受容体の関係にあることが容易に推定された。しかし、両者間の相 互作用は、通常の生化学的・分子生物学的手法ではなかなか検出されなかった。例えば、 BLAcore装置を用いた解析において、 SPll蛋白質は、カイコを用いて発現させたSRKの細 -3- 胞外領域と全く相互作用を示さなかった。また、 SRKの細胞外領域とFGFRのチロシンキ ナ-ゼ領域のキメラ蛋白質をSPllと共に酵母内で共発現させ、酵母内蛋白質のチロシン残 基のリン酸化レベルの上昇を検出しようとしたが、結果は否定的であったoさらに、 SRKを 動物培養細胞のCOS7に発現させ、 SPllとの結合活性およびSRKの活性化を測定したが, 機能的な受容体括性は検出されなかった。これらの結果は、 SRKの植物独自の翻訳後修飾あ るいは乳頭細胞中のSRK以外の因子の必要性を示唆するものであったo そこで、 125Ⅰで標識した島-SPllを作製し、花粉因子としての活性が保持されていること を確認した後、柱頭の膜画分との相互作用を解析したoその結果、島-SPllは、島系統の柱 頭の細胞膜画分にSハプロタイプ特異的に強く結合することが判明した(Kd-0・7nM)o結 合吾陀を特定するために、化学架橋剤を用いた架橋実験とそれに続く免疫沈降実験を行った ところ、島-SPllは柱頭細胞膜上のSRK8に直接結合していることが示されたoさらに、 h vl・tnoリン酸化実験において、 SPllは柱頭細胞膜上のSRKをSハプロタイプ特異的に活性 化(自己リン酸化)することが示されたo以上の結果は、 SPllが単独でSRK受容体と結合 し、それを括性化させることを示しており、このいわゆるリガンドー受容体間の結合・括性 化の5ハプロタイプ特異性が、アブラナ科植物の自他識別機構の基本であることが明らかに なった。 ( 3) SRK下流の情報伝達系の解析 上記解析により、自己花粉の情報はSRKの自己リン酸化という形で乳頭細胞内に伝達さ れることが明かとなったが、自己花粉の吸水・伸長阻害に至るSRK下流の情報伝達系の解 明が次の課題として残された。この解明には、自家和合性変異株の解析が最も有効と思われ た。東北大の日向らにより見出されたB・ mpBVar・ Yenow Sarsonは自家和合性の変異株で、 m (modi・Her)と名付けられた劣性の変異遺伝子を持つ。我々は、鳥島n-遺伝子型の自家 和合性株が、自家不和合性の野生型(島即必切と変わらない島-SPll受容能(結合能)を 有することを確認し、 〟遣伝子産物はSRK下流で重要な役割を果たしていると結論した。 1997年に米国コ-ネル大学のグル-プより〟遺伝子はアクアボリン様蛋白質ⅦP-MODを コ-ドしていると報告されたが、東北大の深井らにより反証が成されM遺伝子の実体解明 は重要課題として残された。 我々は、 M遺伝子のボジショナルクロ-ニングに向け、 M遺伝子座近傍のAFLPマーカ -を作製し、これらを基に遺伝地図を作製したo M遣伝子座はAFLPマ-カ∵A23とA40 の間の0.8 cMの領域にマップされたo -方、 A4tP-MODはM遺伝子座とは1・65 cM離れ ていることが示され、 M遺伝子本体でないことが確認されたo次にA23とA40を起点に遺 伝子歩行を行い、0.8 cMの領域について約500 kbpのBACクロ-ンコンテイグを作製したo 2,157染色体の組み換え解析の結果、 BAC251-22上の約50 kbpの領域にM遺伝子座が絞 り込まれた。 この領域には12の予測ORFカ蒋在したが、その内の1つが柱頭において強い発現を示す Mlocus proteinkinase (MLPK)と名付けた蛋白質キナ-ゼをコ-ドしていたo m変異 体のMばKは、 1塩基非同義置換により、キナ-ゼドメインVIa内の保存されたGly残基 がArg残基に変化していることが示されたoまた、大腸菌発現MlガKを用いた解析により、 この変異型はキナーゼ括性を欠失していることが示唆されたoまた、 m変異体において、 A4u?KのmRNAの発現は認められたものの、ウエスタンブロツト解析では変異型MlガK -4- は検出されず、蛋白質レベルでの不安定性が示唆された。いずれにせよ、これらの結果はm 変異体ではMLPKが機能していないことを示すものであった。几孔戸打が〟遺伝子の本体で あることを確かめるため、m変異体の柱頭の乳頭細胞にパーティクルガンを用いて野生型の MlガKを一過的に発現させて受粉試験を行ったところ、自家和合性であった乳頭細胞が、自 己花粉を特異的に拒絶することが示された。この結果は九軋P打がm変異を相補するのに十 分であることを示しており、〟遺伝子の本体がル吼P打であることが明らかになった。 MLPKは受容体キナーゼと進化的に近縁であるにも関わらず細胞外領域を持たない receptor止kecytosolickinase(RIJCK)ファミリーの一員である。RI£Kの機能はこれま で殆ど知られておらず、本結果はその一員が受容体キナーゼを介する情報伝達に関わってい ることを示す始めての発見として注目される。MLPKは、N末端にミリストイ)Hヒモチーフ を持ち、実際に、GFPとの融合蛋白質を用いた局在性試験や生化学的解析により、MLPK の細胞膜への局在性が示された。今後、MIPKがSRKの近傍で受容体複合体を形成してい る可能性も含めて、MLPKの機能解析を進めていく必要がある。 (4)5ハブロタイプ間の優劣性発現機構 アブラナ科植物の自家不和合性は胞子体型(2n)に分類され柱頭に加え花粉も植物体用包 子体)の2つの5複対立遺伝子の影響を受けた表現型を示す。2つの5複対立遺伝子間には、 柱頭と花粉で独立に共優性あるいは優劣性の関係が認められる。これまでの研究で、クラス Ⅰに分類される5系統(島,烏,阜2,量2など)は、クラスⅡに分類される5系統(量9,も,転, 島0など)に対し花粉側で優性を示すことが知られてきたが、その機構は不明であった。我々 はクラスIIに属するS系統のSPllがクラスIに属するS系統のSPllとは進化的に疎遠な 一つのグループを形成すること、クラスⅠおよびクラスⅠⅠの5複対立遺伝子をヘテロに持つ 個体の荊では、クラスⅠⅠの5P=遺伝子の発現が完全に抑制されることを明らかにした。さ らに、クラスⅡ内においても、個々の5複対立遺伝子間で直線性の優劣性の関係(も>島。 >も>量9など)が生ずることを明らかにすると共に、これらの優劣性も劣性側の5Pり遺 伝子の発現抑制という形で制御されていることを明らかにした。この優劣性の発現機構解明 は当初の研究目標に掲げていたものとは異なるが、これまでに知られていない新たなエピジ エネティツクな遺伝子発現制御の例として注目を集めており、本特定領域研究の副産物とし て、今後究明していくべき重要課題が与えられたものと考えている。 ナス科・バラ科植物の自家不和合性 (1)ナス科植物の5遺伝子座の解析 ナス科・バラ科植物の自家不和合性については、これまでに雌ずい因子としてR陥se活 性を有する糖蛋白質(S−RNase)が見出され自己花粉のRrnを特異的に分解する細胞毒 として機能していることが示唆されてきたが、花粉因子の実体は不明であり、S−RNaseによ るRNA分解の特異性発現機構も全く不明であった。 我々は、本学において確立したナス科植物勘L〟通力J他の複数の5遺伝子系統株を対 象に5遺伝子座の解析を進めてきた。まず、転→ひおe遺伝子の周辺約33kbpのゲノム領 域と転」訊b5e遺伝子周辺約21kbpのゲノム領域に相当する入ファージクローンのコンテ イグを作製し、それらの塩基配列を決定した0その中には、多数の反復配列に加え複数の予 測コード領域(ORF)が含まれその内のいくつかはmゲルプロット解析により花粉管 − 5 − で発現している可能性が示唆されたが、いずれもレトロエレメント様特徴を有しており、ま た島Jおよび‰ハブロタイプ間で相同性を示さないことから、花粉因子をコードしている可 能性は低いと考えられた。 次に、円SH法を用い5遺伝子座の解析を行った0まず、も→ひ由Se遺伝子をプローブに 用いた解析により、5」靴王Se遺伝子を含む5遺伝子座が、第3染色体のセントロメア近傍 に位置することが明かとなった。さらに、5→掛おeの周辺領域をプローブとしたnSH角抑 は、この周辺領域におけるセントロメア特異的な高頻度反復配列など様々な反復配列の存在 を示唆し、本植物のS遺伝子座の解析が極めて困難であることを予見させる結果となった0 (2)バラ科植物ウメの花粉因子の発見 p加地の5遺伝子座の解析が困難であることが予測されたため、ゲノムサイズがP Iv地(ca.1,500Mbp)より小さなバラ科植物(ウメ触usmLme(ca290Mbp)、ソ メイヨシノ丹L∽uSX搾ぬ虚(a・340Mね)、ユキヤナギ蜘田班∽わe蘭(仏・200 Mね)など)を対象に、5遺伝子座の解析に適した植物を探索した0様々なバラ科植物を対象 に、5」ひ血se遺伝子のクローニング、ゲノムコスミドライブラリーの作製、5」訂由se含有 クローンのスクリーニングを進めたが、最終的にウメPmumeの自家不和合性品種の南高 (昂阜)より、5遺伝子座領域を含む比較的大きな2つのコンテイグを得ることに成功した。 それらは、量ノ\プロタイプの5−「即由se遺伝子周辺領域約64kbpと57→\プロタイプの同 領域約63kbpに相当したが、両5ハプロタイプ間で対立遺伝子の関係にあると予測される 13個のORFを含んでいた。それらの内、5→ひ由se遺伝子とそのすく下流に位置するSLF (5一女(フuSFわ(適と名付けた遺伝子のみが、有意な多型を示すことが判明した0さらにHa汀 pbt解析の結果、5」ひ血seとSLF遺伝子を含む約27肋p(阜−ハブロタイカおよび約15 kbp(阜−ハブロタイ男の領域のみが、両5ハブロタイプ間で全く相同性を示さず、逆に残り の11個の対立遺伝子を含む周辺領域は高度に保存されていることが示された0これと類似 したゲノム構造はアブラナ科植物の5遺伝子座領域でも観察されており、ハブロタイプ間で 全く相同性を示さないゲノム領域がPmumeの5遺伝子座に相当するものと推察された0 さらに、肝−PCR法を用いた発現解析の結果、Sぼ遺伝子は葉や雌ずいでは発現が認められ ず、花粉において特異的に発現していることが示された0さらに、保存された5」ひ怨seと sぴのプロモーター領域で設計したプライマーを用いたloI唱PCR法により、畏,$−ハブロ タイプに加え、量,島,烏−ハブロタイプからも特異的なSLF遺伝子が増幅されることが示さ れた。以上の結果は、5LFが花粉側因子をコードしていることを極めて強く示唆するもので ある。 − 6 − 研究成果の概要(計画研究2 ) 1.研究課題 アブラナ科自家不和合性における5遺伝子座上遺伝子群の機能解明 2.課題番号 11238201 3.研究組織 研究代表者渡辺正夫(岩手大学農学部・助教授) 研究分担者鈴木剛(大阪教育大学教育学部・助教授) 4.研究目的 アブラナ科植物B. cmpes!n'sの自家不和合性は、 1遺伝子座S複対立遺伝子系によって 説明されている。研究開始時点までの解析から、 S)系統を材料として、柱頭側の認識物質と 考えられているSLG9, SRPeを単離・解析するとともに、 SLG9, SRfeを含む76kbの連続し たゲノム断片を単離した。このゲノム上には、 SLG9, S#以外に12の遺伝子があることを 明らかにしてきた。そこで、これらの5遣伝子座上の遣伝子群と従前の研究において単離し た30を越える5遺伝子ホモ系統を組み合わせることによって、雌雄の5因子を同定すると ともに、これらの遺伝子の機台朗牢明を目的とする。研究を推進するに当たり、従来から実施 してきた奈良先端大・磯貝教授との共同研究を押し進めるとともに、それぞれの実験に関し て有益な情報を有している研究室との共同研究も実施した。 5.研究成果 (1)花粉側S遭伝子SP11の同定・ Sハプロタイプ間での多型性・優劣性発現機 構 SL,G9/S#に近接した領域に,蔚特異的遺伝子(SFll)を同定していた。今回さらに、 SPll の対立遺伝子となる可能性のあるクロ-ンを5F2系統から単離した。また、同様の構造をし た遺伝子が奈良先端大・磯貝教授のグル-プによって、 S8, S12系統から単離されていた。こ れらの4つのSPll対立遣伝子は、システインに富んだ新規のPCP(Ponen Coat汁otein) をコ-ドしていた。特徴として、シグナルペプチド領域が高く保存されていたので、この4 遣伝子の塩基配列からプライマ-を設計し、 R「PCRにより、 B. cmpesth'sの18 S対立 遺伝子ホモ系統からのSPll遺伝子の増幅を試みた。実験に用いた18 S対立遺伝子ホモ系統 のうち、花粉側で劣性を示すS29, S60を除いて、いずれの系統でも系統内で1種類のクロンが増幅した。また, CHEF解析によりSPllとSLG/S足打は強く連鎖していた。以上の 実験から、今回の手法により単離した遣伝子が、 SPl1の対立遺伝子であると考えられた。 単離したSPll対立遺伝子から推測されるアミノ酸配列を並べたところ、 8つの特徴的なシ ステイン残基のうち、 6ケ所すべての系統で保存されていたことから、これらのシステイン 残基は、 SPllの高次構造を形成する上で、重要であると考えられた。さらに、雌しべ側の5 遺伝子の候補であるSLG, SR打とどのように進化しているかという点について、現時点で SPll/SLG/SRKのすべての遺伝子がそろっている5系統について、アミノ酸レべルで、分 -7- 子系統樹を作製した。その結果、これら3つの遺伝子は共進化してきたと考えられた。以上 の結果から、 SPllは花粉側のS遣伝子として十分な条件を兼ね備えていることが明らかに なった。なお、本研究の実施過程において、奈良先端大でのバイオアッセイ・形質転換実験 によりSPllが花粉側S遺伝子であることが証明され結果的に花粉側S遺伝子の多様性を 示すことができた。 次に,花粉側劣性(class II) Sハプロタイプである5POゲノムクロ-ンの奈良先端大での解 析から得られたSP11クロ-ンが、他のS遺伝子系統にも発現しているかを確認した。その 結果、他のclass-II SハプロタイプのS29, S40, S44でもSP11クロ-ンが単離できた。これら のクロ-ン間の相同性は、花粉側優性(class I) SハプロタイプのSPllにおける対立遺伝子 間の相同性よりも高かった.また, 5POxS29のF2分離個体を用いたWIP解析から、この遺 伝子は確かに5遺伝子と連鎖していることを確認した。 CHEFによる高分子DNAの分離、 DNA gel blot解析から、 SL,G, SK, SPl1は近接した領域に存在していることを明らかに した。以上の情報から、これらの遺伝子が対立遺伝子関係にあることは明白であり、花粉側 努性S遺伝子系統のSPllであると結論づけた。 B. campestTIs chss-II Sハプロタイプ内の優努性は、遺伝学的な実験から、柱頭側では、 それぞれが共優性であるのに対して、花粉側では, 5P今S't>S4C>S29であった。次に、 class II 内での花粉側優劣性関係とへテロ個体でのSPllの発現についてRNA gel blot解析から、 比較・検討した。その結果、 classlvs. classIIの時と同様に、すべての組合せのへテロ個体 の荊では、優性を示す対立遣伝子のSPllのみが発現していた。このことからclass II内で 見られる1inearな花粉側優劣性関係もSPl1の発現量によって制御されていることが明らか になった。 swとSq4由来のゲノムクロ-ンには、 SPllの上流約10kbにSRZ{の-部が座乗していた。 s29については、 SPl1とSR打の物理的距離を正確に測定できなかった。奈良先端大で解析 された伊フのゲノム構造と比較したところ、 SPl1とSRZ{の相対的な位置関係及び両者の転 写方向が-致していたため、 class-II Sハプロタイプ内ではSF11, SRZ{, SLG遣伝子の配列 と同様に,ゲノム構造も保存されていると考えられた。 SPl1の転写制御領域と推測される ATGより-300bp上流までの領域では、対立遺伝子間で69.2-85.5%の相同性を有していた。 研究協力者(楓田葉子(総研大) ,甲斐直子(東北大) ,畠山勝徳(採種研) , 伊東明子,柿崎智鳳高田美信(岩手大)) ( 2)柱頭側5遺伝子の決定と優劣性発現機構 柱頭側で特異的に発現しているS遺伝子として、 S乙G, SRZ{の2つを解析してきたo雌し べ側の自家不和合性認識反応が、どちらの遺伝子で制御されるのか、両方が必要なのかを明 らかにするために、遣伝子導入個体を作出し、その表現型の変化から機能解析を行ったo SLG9 については,おそめ(汐25PO)に導入し、 SRZヂについては5POホモ系統に遺伝子導入した。その 結果、 SRK9を導入した個体では雌しべ側の表現型が5P5POを示し、花粉側の表現型に変化は 見られなかった。さらに、自殖次代においてもこの表現型の変化は遣伝した。 -方、 SL@ を導入した個体では、表現型に変化は見られなかったo以上のことから、 SKが柱頭側の認 識の本体であることが明らかになった。また, SL,G導入個体とSRP{導入個体の交配から、 sLGは認識反応を安定させることを明らかにした。 導入遺伝子の供与体であるS9は、柱頭側でいくつかのS遺伝子系統に対して優性を示すo -8- そこで、形質転換体(5PIO5PIO, SK砕/-)を、柱頭側で5Pに対して劣性を示す3系統S12, S?bl, s8 と交配し、柱頭表現型を調査した。 S8を交配した個体(S8SeV, S#/-)の柱頭は、 S9とS60の 花粉に対して不和合を示したが、 S8の花粉に対しては和合であった。つまり、優性である5P が柱頭の表現型として現れ劣性のS8はマスクされていた。さらに、 S8を戻交配して得られ た、導入SMを持つS8ホモ個体(S8S8, SRZP/-)の柱頭表現型もS'となった。 S8以外の劣性 系統と交配した場合も、同様な結果であった。また、花粉の表現型には変化がなかった。こ の様に、柱頭側において、内在遣伝子と導入遣伝子間の優劣性が対立遺伝子間の優劣性と同 じように発現することを確認した。以上の結果から、 S足打は柱頭の認識特異性のみならず、 優劣性も決定していることを明らかにした。 研究協力者(高崎剛志(神戸大),畠山勝徳(採種研),日向康吉(採種研)) ( 3)シロイヌナズナを利用したS遺伝子座上遺伝子の機能解析 Bz;assk22 SP遺伝子群とシロイヌナズナゲノム配列との相同性検索から、シロイヌナズナ におけるS遺伝子座対応領域のゲノムクロ-ン(BAC; T12I7)を同定した。このT12I7の塩 基配列を利用したSP遺伝子相同領域のクロ-ニングを行うことにより、 T12Ⅰ7がConner らの示したクロ-ン(BAC; TIA8, 6F5, 2P16)の領域をカバ-していることを明らかにした。 T12Ⅰ7領域をカバ-している4つのcontigについてORF予測を行い、 SP遺伝子群の位置 を確認した。シロイヌナズナの塩基配列をBTaSSla 5Pハプロタイプの76kb S遺伝子座領 域と比較すると、 SF3, SF4, SP8遺伝子は、シロイヌナズナにおいてもtandemに並んでお り、その順序も両者で保存されていた。また、 SF2, SLL2も同様であり、 SP7と相同な遺伝 子もシロイヌナズナに同定された。さらに、シロイヌナズナゲノム配列には、 5AElからS摺 に対応する領域が欠失していた。この領域には、 SLG, Sm{, SPllを含む自家不和合性制御 遺伝子を含んでおり、 Connerらの主張するSLG, S尺打対応領域の欠失を塩基レベルで確認 するとともに、花粉側因子SPllの欠失も明らかにした。推定ORFの発現を確認するため に、 fU-PCRを行った。その結果、発現量に多少の差異はあるが、 L,7Pと相同性のある F4N2ト4を除いて、はとんどのORFについて、葉(栄養器官)と膏(生殖器官)での発現を確 認した。 研究協力者(高田芙信(岩手大)) (4)日本・トルコ系統間で見られる-側性不和合性の遭伝学的解析 5P2, 5PO個体で生じる-側性不和合性は、 B. a77PeStn'sという同-種内で起こり、従来の ような和合性・不和合性系統間で生じるようなものではなく,柱頭側、花粉側両個体ともに 自家不和合性系統で起きる現象であったoこの現象を解明することにより、受粉時の花粉と 柱頭との情報伝達機構の解明に何らかの新しい知見を与えることができると考え、解析を進 めたoまず、花粉側因子について遺伝学的解析を行った。トルコ由来SR,(83-5t)と日本由来 S29(7-53)系統のFl, F2個体の解析を行ったところ、 Fl個体はいずれも柱頭側-側性不和合性 を持つ罪--12, S60-9の柱頭に対して、和合性を示した。 F2集団16個体では、和合性と不和 合性の個体が分離してきたことから、この形質が遺伝的に制御されている現象であると考え たoそこで、 F2集団のRFu解析によりS遺伝子型を決定したところ、この-側性不和合性 の表現型の分離はS遺伝子型の分離とは-致しないことを明らかにし、少なくともここで見 出した-側性不和合性において、花粉側表現型を決める遣伝子座と5遣伝子座は、独立の遺 -9- 伝子座によって制御されていることを明らかにした。 研究協力者(高田芙信(岩手大)) ( 5) B. campestn'sにおけるSL,G欠失系統の解析 現在までに報告されたデ-タ(Westem blot解析、 DNA gel blot解析、特異的prherに よるSLGの増幅、 SP11遺伝子の単離など)から、 B. c2mPeStn'sにおいては、 S92, S93, S% の3系統で、 SLGが欠失している可能性が考えられた.そこで、これら3系統において、 sLGがゲノム中に存在しないことをSLG. SRZ{-mプロ-ブを用いたDNAgelblot解析 から明らかにし、また、近接した領域にSPllが存在していることも明らかにした.さらに、 RNAgelblot解析から、これらの系統では、 SR打に対応する転写産物と合わせて、 SLGと ほぼ同じ大きさの転写産物(eSRZOの存在を明らかにした. 研究協力者(高田芙信,柿崎智博(岩手大)) (6)シロイヌナズナヘ自家不和合性閑連遺伝子(SLG, SRK, SPll)の導入と表現 型の観察 sLG, SRZ{導入シロイヌナズナを交配して得られたSLG/SR打系統を母本とし、 SPll導 入シロイヌナズナの花粉を用いた交配実験を行った。短目処理を行うことにより、大型の花 を大量に咲かせた。それに先立ち、個々の個体での遺伝子の発現をR「PCRにより確認し、 発現の見られたものを交配実験に供した。その結果、導入した遺伝子の発現が確認された個 体相互の交配実験でさえも、花粉管の侵入が見られ、 SLG/SRZUSPllを導入しただけでは、 シロイヌナズナの和合性を不和合性に変化させることは不十分であると結論づけた。 研究協力者(二宵知恵,高田芙信(岩手大)) (7)自家和合性変異体の作出と解析 在来種,近交系統を83系統スクリ-ニングし、花粉管の侵入が20本以上観察される自家 和合性と考えられる系統を1系統見出した。さらに、自家不和合性と和合性の中間的な表現 型を示す(花粉管が5-20本侵入)系統を47系統見出した。 -方、 B. G町PeStTl's S9系統に0.2% EMS処理を行ったM2世代、 100系統1,000個体を 展開した.閉鎖型網室内で栽培し、ミツバチを用いた放任受粉により、 M2世代をスクリ-ニ ングした。その結果、和合性と思われる系統を5系統見出した。これら5系統について、顕 微鏡観察を行ったところ、 1系統(♯1ト11)のみが和合性と判断できたo S9系統との相互交配 実験から、この和合性が柱頭側での変異により和合性になったことが明らかになったo 研究協力者(新倉聡(㈱ト-ホク),阿部知子(理研),小松聡,菊田利奈,白揮彰(岩手カ) -10- 研究成果の概要(計画研究3 ) l.研究課題 S複合遺伝子座の構造と荊発現遺伝子のS特異性の解析 2.課題番号 1 1238202 3.研究組織 研究代表者西尾剛(東北大学大学院農学研究科・教授) 研究分担者鳥山欽哉(東北大学大学院農学研究科・助教授) 4.研究目的 自家不和合性の分子機構の解明が最も進んでいるアブラナ科植物においては、柱頭表層の 細胞膜を貫通しているSレセプタ-キナ-ゼ(SRK)が雌しべ側の自己・非自己認識の特異 性を決定することが分かっていたので、未解明の花粉側の自己認識分子である花粉リガンド の解明を当初の研究目標とした。その後、本特定領域研究と米国において、それぞれ花粉表 層に存在するディフェンシン様タンパク質(SPll/SCR)が花粉リガンドであることが明ら かとなったため、種内に存在するSハプロタイプの大多数を収集し、それらのSRZ{, SPll 遣伝子の塩基配列を決定し、 5遣伝子座の構造を比較することによって、認識特異性を決定 する分子の構造を推定すると共に、 5ハプロタイプの進化の機構を明らかにしようとした。 また、 5ハプロタイプ以外に自家不和合性に関わる遺伝子を見出すことによって、自家不和 合性機構の全体像を解明しようとした。 5.研究成果 ( 1)アブラナ科SハプロタイプのSRK及びspll遭伝子の変異解析 B・ c)1emceB- B・ mpa及び&ph-us satl'vusの野生集団やF l品種のSハプロタイプを同 定し、既存のSテスタ-ラインとは異なるSハプロタイプを複数見出した。既存のSテスタ -ラインを整理し、 B・ olemc朗で約50系統、 B・mpaで30系統以上、 R. satl・vusで20系 統以上のSテスタ-ラインを作成した.これらの系統には、まだ異名同種や他系統の混入等 の間題もあるため、系統の維持増殖においては常に5ハプロタイプの同定が必要である。そ のため、ドットブロット法によるSPll遣伝子の分析法をPCRIRFLP法に代わる新たなS ハプロタイプ同定技術として開発した(Fujimoto & Nisho 2002).この技術は、国内の大 手種苗会社において、その有用性が高く評価されている。 B・ c)1emceaとB・ mpaのS足打のS領域の塩基配列を36種類のSハプロタイプについて 決定し、 SLGについては13種類、 SPllについては14種類新たに決定し、既に報告されて いる配列も含めて塩基配列の解析を行った。その結果、 S毘打の超可変領域とSPllの成熟タ ン^oク質をコ-ドする領域が同様に多様化して共進化してきたことや2種が分化するかなり 前に、 SR打とSPllの多様化が起こったことを明らかにした。また、 SR打のS領域とSLG の塩基配列および推定アミノ酸配列が極めて類似するB・ c'1emc朗とB. mpBのペア-を9 種類見出した。B・ c)1emGeaのS124はSLGを欠失するSハプロタイプであるが、これとSK = ilE! - 遺伝子が類似するB. mpaのST32やS-36でも、 SLG遣伝子が検出できないことが分かっ た.これら種間のSハプロタイプのペア-は、 SPllの塩基配列も互いに類似することが分 かり、種分化前は同-のSハプロタイプであったと考えられた(Sato et al. 2002)。 R・ satl'vus の10種類のSPll遣伝子、 9種類のSRP(のS領域の塩基配列を決定したところ、 B・ mpa の2種類の5ハプロタイプと極めて類似していた。このように、種や属が異なっても類似す るSハプロタイプが複数組合せあることを明らかにした(Okamoto et al. 2004)。 B. dem(溺とB. mpaの問TjRK, SPll遣伝子が極めて類似するSハプロタイプの対が 同じ認識特異性を有するかどうかを調べるため、種間雑種を用いた方法、形質転換体作成に ょる方法、及び合成SPllタンパク質を用いた認識特異性の検定を行い、 6対が同じ認識特 異性を持つことを見出した(Kimura et al. 2002, Sato et al. 2003)。 R・ satl'vusとB・ mpa の間で類似する5ハプロタイプの対については、 SPllタンパク質を用いた認識特異性の検 定では明確な結果が得られなかったが、 SFll遺伝子を導入した形質転換体を用いた検定で、 同じ認識特異性を持つことが明らかになった(SatoetalJnpress)。このことから、これら の対は、 2種あるいは2属の分化前は同-の5ハプロタイプであり、その認識特異性が現在 まで変わらず維持されてきたと考えられる。 sハプロタイプの種問ペア-や属間ペア-のSRK, SPllの推定アミノ酸配列の比較から、 これらの自己認識分子の認識特異性を決定する領域が推定出来た。同じ認識特異性を有する spll間で変異が多く見られるRegion IVは自己認識特異性にあまり重要でなく, 2種間で 異なるアミノ酸が少ないRegion IIIとRegionVは認識特異性に重要と考えられた(Sato et al.2003). BTaSSl・canapus51品種のSLG遺伝子をPCR-RFLP法で分析したところ、クラスⅠが12 種類、クラスⅡが3種類あると推定され、多数の5ハプロタイプが存在することが明らかと なった。それらの塩基配列を決定したところ、 B. mpBやB. c)1eraceaのSLGの中に極めて 相同性が高いものがそれぞれ見いだされた(Odash血a et al・末発表) 。 (2) S遺伝子座の巨大DNAクロ-ンの単離と構造比較 パルスフイ-ルド電気泳動によるS遣伝子座の解析で、 SRKとSLGの間、あるいはそれ らの近傍に存在するSP4やSWの間の拒離は、 B・ olemceBの方がB・ mpBより長いことが 推定できた(St血i et al. 2000)。この分析には無作為に選んだSハプロタイプを数系統ず っ用いたが、種分化前同-のSハプロタイプであったと推定されるペア-についても、 SLG とSだ打の間の距離はB. olemceBの方がB. mpaより長いことを明らかにした(fhuraet al.2002). sハプロタイプの種間ペア-3対(BTS-46/BoS-7, BTS-47/BoS-12, BTS-60/BoS-1 5) についてSRZ<とSPllを含む入フアージ、コスミド、 BACクロ-ンを単離し、コンテイグ を作成し、それぞれ30-90 kbの塩基配列を決定した(Ki-a et al・ 2002, Fukai etal・ 2003, Fuj血oto et al.末発表) 。同-種内の異なるSハプロタイプ間では、 SRKI SLG- SPll 遣伝子の配列、遣伝子の転写方向、遺伝子間の距離が大きく異なるのに対し、種間ぺア-に おいては、遺伝子の配置は-致するものの、遺伝子間の拒離が大きく異なることを見出した。 いずれの種間ペア-においても、 B. c'1eTaCeヨの方がB・ mpaよりもS遺伝子座がかなり大き いことが確認できた。 B. olemceaのS遣伝子座には、 B・ mpaのS遺伝子座には見られない 多様なレトロトランスポゾン様配列が検出された。これらのことから、 B・ c,1eyBCeaのS遣 -12- 伝子座がB・ mpaのものより-般に大きい原因は,種分化後にB. deT;3α8のS遺伝子座に レトロトランスボゾンが多数挿入されたためと考えられる。 S遺伝子座は種分化後も大きな 構造上の変異が生じたにも関わらず、 s尺打とSPllの認識特異性は変わらなかったことは興 味深い。 5遺伝子座に存在するレトロトランスポゾン様配列7種類をgag領域の配列をもとに分類 したo既報のシロイヌナズナの63の節g配列とともに系統樹を作成すると、大きく6つの クラスタ-に分類されS遺伝子座のレトロトランスボゾン様配列は2つのクラスタ-に分 かれたo S遣伝子座のレトロトランスボゾン様配列は、 B.mpaよりもB. olemGeaのゲノム 中により多いコピ-数で検出された(Fu)'imoto et al.未発表)o ( 3)自家不和合性の強度を決める遭伝子の解析 B・ mpaの自家和合性をもたらすmod遣伝子は、柱頭で発現するアクアポリン遺伝子の突 然変異とされたが、この遺伝子(MLMと命名した)がMCD遺伝子の本体ではないことを 明らかにしたo MZMはMODと密に連鎖しているため、コマツナの巨大DNAのライブラ リ-を作成し、 MIM遺伝子を含む約1・5Mbの20クロ-ンからなるコンテイグを得た。そ のゲノム領域において柱頭やその他器官で発現している遺伝子を複数明らかにし、その塩基 配列を決定したoこの領域の遺伝子の多くは、この領域にシンテニ-が見られるシロイヌナ ズナの領域の遺伝子と相同性があった(Fukai etal.末発表). キャベツのF2集団においてS遺伝子分析と不和合性強度の評価を行って、自家不和合性の 強度がS遺伝子以外座の遺伝子により支配されていることが分かっている集団を有するので、 それらを用いた不和合性強度に関わる遣伝子のマッピングを行おうとした。しかしながら、 これらの系統間では多型が検出できるDNAマ-カ-がほとんどない。そこで、近縁の組合 せでDNA多型が検出できるSNP簡易分析法であるPCR-RトSSCP法を確立した(Sato & Nis士血2002) o遺伝子のマッピングにこれまでよく用いられてきたRFIPやCAPS法では、 マッピングに利用する集団の両矧こ遠縁の系統を利用する必要があったが、この方法では、 キャベツ品種間で効率よく多型が検出できた。 PCR-RトSSCP法でSNPマ-カ-の連鎖解 析を行い、 100マ-カ-以上の連鎖地図を作成し、その-部は染色体を同定した。 -13- 研究成果の概要(計画研究4 ) 1.研究課題 ヒルガオ科における胞子体型自家不和合性遺伝子座の分子的解析 2.課題番号 1 1238203 3.研究組織 研究代表者:神山康夫(三重大学生物資源学部・教授) 研究分担者:掛田克行(三重大学生物資源学部・助教授) 土屋亨(三重大学生命科学研究支援センタ- ・助教授) 研究協力者:鈴木剛(大阪教育大学教養学科・助手) 4.研究目的 自家不和合性は、多くの被子植物に見られる遺伝的性質であり、植物進化の早い段階で 確立されたと推定されている。最近の自家不和合性に関する分子生物学的研究から、アブラ ナ科とナス科あるいはケシ科植物などにおいては、それぞれ独自の分子的機構が関与してい ることが明らかになり,進化の過程で多元的に自家不和合性が確立されたことを示唆してい る。このことから、被子植物における自家不和合性の進化的成立過程を明らかにする上で、 様々な植物種についてそれらの分子機構を解明することが重要であると思われるo ヒルガオ科のサツマイモ野生種は胞子体型自家不和合性を有しており、この自家不和合性 は1遣伝子座(5遣伝子座)の複対立遺伝子によって支配されているo本研究では、 5遺伝 子座を含むゲノムDNA領域の解析を中心にして、サツマイモ野生種における自家不和合性 の分子機構を明らかにすることを目的としている。 5.研究成果 ( 1 ) S連伝子座周辺の精密遭伝地図の構築 s遣伝子座に座乗する遺伝子を単離・同定する方法のひとつとして、遣伝地図に基づくボ ジショナルクロ-ニング法(Map⊥based clo血唱method)が有効であり、アブラナ科におけ る花粉側のS遺伝子(SPll)は、この方法によって同定されたo本研究では、まず最初に、 S 遣伝子座に連鎖するDNAマ-カ-の同定とそのマッピングを行った。 サツマイモ野生種の柱頭蛋白質を用いて二次元電気泳動分析を行い、 S複対立遺伝子と共 分離する柱頭特異的な蛋白質(SSP)を同定したoこのSSPをコ-ドするcDNAクロ-ンの解 析から、 SSP蛋白質は、 short-chainalcohol dehydrogenase farrdyに属する蛋白質であ ること、およびS複対立遣伝子間でアミノ酸配列の多型性が殆ど無くS遺伝子座の近傍に連 鎖している遺伝子の産物であること等が明らかになったoこのSSP遺伝子は、その後の実験 において、 S遺伝子座から1.14cMの距離に位置していることが示されているo 次に、 S遣伝子座に緊密に連鎖するDNAマ-カ-を同定するため、 A托ガ(amp止fied fragment length polmor如sm)法およびAMF(AFW-based mRNA firlgerPrhthg)法 によるDNA解析を行った。まず4種類のS遣伝子型分離集団から任意の20個体を選び、 -14- 同-遣伝子型個体間でバルク化した柱頭と蔚のcDNAおよびゲノムDNAを調整し、これら をテンプレ-トとしてPCR増幅を行い、アクリルアミドゲル電気泳動法で解析した。その 結泉S複対立遺伝子に特異的と考えられるDNA断片が多数検出された。さらに、これら DNA断片を用いたRFIガ分析により、 8個のDNAマ-カ-がS遺伝子座に連鎖している ことが明らかになった.このうちのA姐-68マ-カ-では組換え体が検出されず、このマ -カ-はS遺伝子座に最も緊密に連鎖しているマ-カ-であることが明らかになった。これ ら8種類のDNAマ-カ-の連鎖解析に基づいて、 S遺伝子座近辺の遺伝地図が構築された。 さらに、次に述べるBACクロ-ンの末端配列を用いた連鎖解析から、 S遺伝子座は、遣伝 地図上で最も近傍の2つのDNAマ-カ-(6811SP6とAF-41)に挟まれた0.57 cMの範囲 内にあると限定された。 (2) S遭伝子座嶺域をカバ-するゲノムクロ-ンの単離と染色体FISH解析 Slホモ型個体の核から高分子DNAを単離し、約4万個のクロ-ンからなるBACゲノ ムライブラリ-を作成した。また、 BACクロ-ンでカバ-できなかった内部のギャップを埋 めるため、コスミドライブラリ-も作成された。これらのゲノムライブラリ-から、 S遺伝 子座周辺のDNAマ-カ-をプロ-ブとしてゲノムクロ-ンのスクリ-ニングを行ない、 S 遺伝子座領域をカバ-するBACおよびコスミドクロ-ンを得た。得られたゲノムクロ-ン の物理的サイズから、 S遣伝子座近辺では、その周辺のゲノム領域と比べて、遺伝的組換え が顕著に抑制されていることが明らかになった。この組換え抑制が、遺伝子の動原体近辺に おける偏在によるものであるかどうかを明らかにするため、染色体FISH解析を行った。そ の結果、 S遺伝子座は、染色体の末端部に位置しており、動原体から離れた場所にあること が明らかとなった・また、 DNAIBber FISH解析から,染色体DNA上にBACクロ-ンが 位置付けられ、 BACクロ-ン間の物理的な位置関係が確認された.これらの実験結果から、 S遺伝子座のボジショナルクロ-ニングの妥当性が裏付けられた。 (3) S遺伝子座嶺域のゲノムDNA解析 S遺伝子座領域をカバ-するゲノムクロ-ンの解析から、末端が互いにオ-バ-ラップし ている5個のコンテイグ・クロ-ンが選抜された。このコンテイグの物理的サイズは、全長 約300 kbであると推定された・そこでこの街域全長についてシ-ケンス情報を得るため, これらのクロ-ンについてショットガン法により全塩基配列の解析を行った。シ-ケンス解 析に用いたショットガン・クロ-ンは約3,200個であり、 10倍の反復で塩基配列の解析が なされたoこの嶺域の-部には、マイクロサテライト等の高頻度反復配列のため塩基配列デ -タを得るのが困難な1 kb以下の短いシ-ケンスギャップが6カ所残されているが,全長 313 kbに及ぶゲノム領域の塩基配列が明らかになった。このシ-ケンスデ-タを基にORF 検索を行った結果,この領域において43個のORFが推定された。 l (4) S遭伝子座嶺域の発現解析 推定されたORFに相当する遺伝子が、植物組織で実際に発現しているかどうか、またそ の中に柱頭あるいは荊・花粉で特異的に発現している遺伝子があるかどうかを明らかにする ため、ノ-ザンブロット法による発現解析を行った。ノ-ザンブロットに用いた組織は、 (1) 開花2週間前(花粉の小胞子期)、 (2)開花1週間前(花粉の2細胞期)、および(3)開花前日 -15- (花粉の3細胞期)の3種類の発育ステ-ジの柱頭と荊、ならびに菓,茎、根、子房、花弁 および花柱であり、これらの組織から単離したITRNAを用いてノーザンブロツトを行った。 このノ-ザン解析では,全長313kbの領域をカバ-する約130個のショットガン・クロン(インサ-トサイズは平均2.6kb)をプロ-ブとして用い、ハイブリダイゼ-ションを行 った。その結果、柱頭特異的発現を示すシグナルが6個(SE-1,2,3a, 3b, 4, 5)、荊・花粉特 異的発現遺伝子が4個(AB11-4)検出されさらに荊と柱頭で高い発現を示す遺伝子仏S-1)、 および蔚と花弁で高い発現を示す遺伝子(AP11)も見出された。また、これら生殖器官に加え て葉または根など栄養器官でも非特異的に発現している遺伝子が15個見出された。 SE-3に 相当するプロ-ブでは、 500bのSE-3aと1000bのSE-3bの2種のシグナルが開花2週間 前の柱頭において検出された。これら生殖器官特異的な遺伝子について,ゲノムDNAのサ ザン解析を行った結果、柱頭特異的なSE-l-SE5および桁特異的なAB-2-AB-4遣伝子 はシングルコピ-でゲノム中に存在すると推定された。 AB11遺伝子のみは、 2-3コピと推定され、 S遺伝子座以外の遺伝子であると考えられる。 ( 5 )桂頭および蔚特異的発現遺伝子の多型性とS遭伝子候補 雌蕊側(柱頭)および雄蕊側(蔚・花粉)で特異的に発現しているS遺伝子候補について、 3種類のSホモ型個体の柱頭または荊からcDNAライブラリ-を作成し、 cDNAクロ-ン のスクリ-ニングと塩基配列の解析を行った。また上述のSlホモ型個体のゲノム解析に加 えて、このゲノム嶺域に相当するSIOホモ型個体のゲノム解析を行い、約35kbのシ-ケン スデ-タを得た。これらの塩基配列デ-タに基づいて、 S複対立遺伝子間における多型性を 調査した。 柱頭特異的遺伝子のうちSE-1遺伝子については, 3種のSホモ型個体のcDNAから推定 されたアミノ酸配列において25-72%の相同性が認められ多型性があると推定された。 sE-2遺伝子については、スプライシング部位の異なる数種類のcDNAクロ-ンが見出され、 このうちのひとつの推定アミノ酸配列においてSlとSIOホモ型個体間で57.5%の相同性が 認められた。さらに、 SE-3a, SE-3bおよびSE-5のノ-ザンシグナルに相当するcDNAの 解析から、 SE-3bとSE-5は同-の転写産物であり、これらとSE-3aは、同-の遺伝子か ら選択的スプライシングによって生じたものであることが明らかになった。さらに、ゲノム 配列との比較から、 SEr4シグナルに相当する塩基配列が、 SE-5のゲノム領域に含まれてい ることから、ノ-ザン分析で検出された4種類の転写シグナル(SE-3a, SE-3b, SE-4, sE-5)は同-遺伝子(SE-A)にコ-ドされていると示唆された。このSE-A遺伝子におい ても、 SlとSIOホモ型個体間で48.9%の相同性を示し、多型性があると推定された。以上 の解析から、 S遣伝子座を含むゲノム領域において、柱頭で特異的に発現している3種類の 遺伝子(SE-1, SE-2, SE-A)が同定されいずれもSホモ型個体間で多型性が認められる ことから、有力なS遺伝子候補であることが判明した。これら遺伝子についてデ-タベ-ス でBIAST検索をしたが、有意な相同性を示す遺伝子は見出されていない。 次に、荊・花粉で特異的に発現している4種の遺伝子仏B-1-ABr4)について、 cDNAと ゲノムDNAのORFから推定されるアミノ酸配列の解析を行った。AB-1遺伝子については、 3種類のS遺伝子ホモ型個体から得たcDNAにおいて、 N末端側のアミノ酸配列が同-であ り、多型性が低いと推定された。また相同性検索の結果、 Guanosine polyphosphataseと の相同性が認められている。 AB-2とAB-3遺伝子については、コ-ドするアミノ酸配列の -16- 中に8個のシステイン残基の保存が認められdefensin-nke proteinをコ-ドしていると推 定された。このうち、 AB-3遺伝子ではSホモ型個体間のアミノ酸配列で90%以上の相同性 が認められたのに対し、 AB-2遣伝子ではSlとSIOホモ型個体間で38.5%と低い相同性を 示し、 Sホモ型個体間で多型性があると推定された。 AB-4遺伝子については、 Slゲノム DNAから158個のアミノ酸からなるORFが推定されているが、デ-タべ-ス検索におい て、これに相同性を示す遺伝子は見出されていない。 AB-4遺伝子がSホモ型個体間で多型 性を示すかどうか、現在解析中である。 以上の結果から、荊で特異的に発現し多型性が認められているAB-2遺伝子が、花粉側の S遺伝子候補として有力であると考えられる。アブラナ科植物の花粉側遺伝子として SPll(SCR冶ミ同定されており、この遣伝子もdefensin-nke proteinfdrTdyに属し、 SRK 蛋白質のリガンドとして機能していることが明らかにされている。しかし、サツマイモ野生 種から同定されたAB-2とSPllのアミノ酸配列には顕著な違いがあることから、両者が同 じ機能を有する蛋白質である可能性は低いと考えられる。さらに上述のように、雌蕊側で特 異的に発現している遺伝子群の中に、 S尺打に類似する遺伝子は見出されていない。このこと は、サツマイモ野生種の自家不和合性には、アブラナ科とは異なるユニ-クな分子機構が関 与していることを示唆している。 (6)形質転換法の確立 上述の研究から明らかになった3種の柱頭特異的遺伝子(SE-1, SE-2, SEIA)のうち、 どの遺伝子が自家不和合性機構に関与しているのか、また荷特異的発現と多型性を示すS遺 伝子候補仏B-2)が真のS遺伝子であるかどうか、等の疑間に答えるためには、形質転換 体での解析が不可欠であるoサツマイモ野生2倍体種においては、効率的な形質転換法が確 立されていなかったことから、アグロバクテリウムの感染による形質転換系について詳細な 条件検討を行ってきたoその結果、生長点由来Embryogenic cal1us (EC)へのアグロバクテ リウムの感染による形質転換系の最適条件が決定され種々のS遣伝子型個体から100個体 以上の形質転換植物を得る系が確立された。現在、上述のS遺伝子候補について、形質転換 用のセンスコンストラクトならびにRNAiコンストラクトを作成し、これらを導入した形質 転換体の作出実験が進行中である。 (7)自家和合性変異体の解析 サツマイモ野生2倍体種I・ tn'i3daの中南米における自然集団において,この地域から収集 された多数の種子サン7o)レから,自家和合性の1個体(MXl)が見出された.この変異体の遺 伝学的解析から, (1) MXlは, S遣伝子座における変異によって自家和合性を示すこと、 (2) この変異遺伝子Scは,最劣性の複対立遺伝子で正常な自家不和合性形質を示すS3に対して、 ドミナントナガテイブに働くこと等が明らかになった。ドミナントネガテイブ型の自家和合 性突然変異遺伝子はきわめてユニ-クであり、この変異遣伝子の分子棚牢析によって、 S複 対立遺伝子間の優劣性決定機構の解明に手懸かりが得られるものと期待される。また、放射 線照射による自家和合性突然変異体の誘発を目的として,種々の発育ステ-ジの膏を含む SISl個体にガンマ-線を照射し,照射後1 -20日にわたり当謝固体の花粉を非照射のS3S3 個体およびs10SIO個体に授粉した・得られた交配種子から約400個体を育成し,創国体の 自家不和合性表現型を調査したoここでSl遺伝子はS3およびslO遣伝子に対して優性で -17- あるため,自家不和合性形質に変異がなければ,これらの個体の表現型は雌雄ともにSlと なる.調査の結果、自家和合性を示す個体は認められなかったが、表現型盟を示す個体 (R3ト1、 T2および-3),および表現型SIOを示11固体(RIOト1)が見出されたoさらに、 s遺伝子座近傍の数種類のDNAマ-カ-をプロ-ブに用いてサザンブロツト分析を行った 結果、これらのうちの2個体(R3ト2およびRIOl-1)では,Sl遺伝子を中心とする約12cM にわたる染色体領域が欠失していることが明らかとなった。また花粉稔性を調査したところ、 この2個体では大幅な稔性の低下が認められたoまた,後代検定の結果,この自家不和合性 変異形質に関するホモ型が検出されなかったことから、欠失をもつ雌雄配偶子はともに致死 になることが示された。 (8)マイクロアレイ解析 自家不和合性反応では、花粉と雌蕊との間の自他認識反応が最初に起こり、それに引き続 いて花粉発芽阻害や花粉管伸長阻害が起こるoこのような受粉初期における雌蕊と雄蕊の間 の細胞間相互作用を明らかにすることは、自家不和合性における-連のカスケ-ド反応とそ の全体像を理解するためにも重要であるoそこで、生殖器官で特異的に発現する遺伝子を網 羅的に解析するため、成熟期(開花前日)の荊と柱頭よりcDNAライブラリ-を調製し、 ESTを約1,600クローン単離した.これらのクローンについて両末端の塩基配列を解読する とともに、マイクロアレイを作成し、小胞子期・ 2細胞期・ 3細胞期の荊と柱頭のmRNA に由来するcDNAをCy5で、菓のmRNAに由来するcDNAをCy3でラベルしハイブリダ ィズした、その結果、供試したESTクローンの約10%が生殖器官特異的な発現を示した。 葉でも共通して発現している遺伝子の多くはハウスキ-ピング遺伝子であったo柱頭または 荊で特異的に発現しているESTクロ-ンについては、全鎖長cDNAクロ-ンの解析や、そ れらの組織特異的発現を誘導するプロモータ-の同定と形質転換実験への利用に,今後役立 てられる。 -18- 研究成果の概要(計画研究5 ) 1.研究課題 バラ科植物における配偶体型自家不和合性の分子機構 2.課題番号 1 1238204 3.研究組織 研究代表者乗岡茂巳(大阪大学蛋白質研究所・助教授) 4.研究目的 顕花植物の自家不和合性とは自家受粉では受精できない現象で、 5遣伝子座により支配さ れている。配偶体型自家不和合性を示すナス科やバラ科植物では雌しべ側5遺伝子産物が S-R他seと呼ばれるRNase T2型の酵素である。このS-R他seは雌しべ花柱内に大量に発 現し、伸長してくる花粉管との間で自己・非自己の認識反応が行われ自己花粉と認識され た花粉管のrRNAのみSIRNaseの分解を受け、花粉管伸長が停止すると考えられている. しかし、 S-RNaseとの認識に関与している花粉側5遺伝子産物は末だ発見されず、また S-R他seによるrRNAの分解が花粉管伸長停止の原因であるという説も実験的に証明され ていないoそこで本研究では、バラ科ニホンナシを研究対象にS-RNaseの立体構造解析、 花粉側S遺伝子産物の検出・同定、およびS-fNaseによる花粉管伸長阻害機構の解析から、 配偶体型自家不和合性の分子機構の解明を目指す。 5.研究成果 ( 1) S-RNaseの立体構造解析 ニホンナシの7種類のS-RNaseの蛋白質構造および遣伝子解析を通じ、花粉側S遣伝子 産物と相互作用する認識吾陀の候補として、非同義置換数が同義置換数を上回る4つの領域 (PSl-PS4領域、従来指摘されてきた=V領域はPSl領域に含まれる)の存在を指摘し たoニホンナシS3-RNaseとS5-RNaseのアミノ酸配列の相同性は95.5%に達し、 PS領域 内でのアミノ酸置換数も5残基であるため、両S-R他seの立体構造を明らかにして比較す れば、 sIR他seの認識部位やそれと相互作用する花粉側S遣伝子産物に関する重要な知見が 得られると考えた。 そこで、まず蒸気拡散法によりニホンナシS31RNaseの結晶化を試みた。種々の条件を検 討した結果、 0・1M MES-NaOH (pH7・0)、 0・2 MAcONa、 26% (w/v) PEG6000の結晶化 溶液に対して、 2mi蛋白質(S-RNase)溶液(4mg/mi) + 2mi結晶化溶液のドロップを 作成し、 20℃で5日間放置することにより、 0・1xO・1xO・05Imの大きさの良質の結晶を 得ることに成功したoこの結晶を用いて放射光Ⅹ線(Sfhr唱8)により1.5 Åの分解能で S31fNaseの3次元構造を明らかにした。 S3-fNaseは8本のhe放(6本のα-helixと2本 の3101he放)と7本のβ-strandから成り、主鎖のfold止唱は、 fNase T2型酵素であるR他se 臥、 RNaseLEやfNase MClと殆ど同じであったo RNase臥の立体構造との重ね合わせ から、触媒部位はfiis33とfiis88で構成されPlサイト、 Blサイト、 B2サイトを構成する -19- ァミノ酸残基も帰属できた。このような括性部位の構造から、 S3-RNaseは新規な塩基特異 性をもたず、他のRNaseT2型酵素と同様、塩基非特異的にRNAを分解すると推測されたo バラ科S-RNaseの花粉側5遺伝子産物に対する認識吾陀の最も有力な候補であるHV領域 はS3-fNaseでは長いル-プと短いα-helixから成り、括性部位から離れて分子表面に露出 し、その表面は弱く正電荷を帯びていた。また、 4つのPS領域の内、 PSlとPS2領域およ びPS3とPS4領域がそれぞれ隣按し、活性吾陀を挟む形でS3-RNaseの分子表面に露出し ていた。このような構造は、 HVおよびPS領域が花粉側因子に対する認識苦階として十分 機能しうることを示唆するものであった。 さて、当初比較対象として予定していたS5-RNaseに関しては、結晶化が難航し、 3次元 構造を明らかにすることは出来なかったo S-RNaseの花粉側因子に対する認識吉陀をさらに 詳細に解明していく上でも非常に重要な今後の検討課題であるo ( 2 ) S-RNase遺伝子周辺嶺域の解析による花粉側S遺伝子の探索 配偶体型自家不和合性が1遣伝子座(S遺伝子座)に支配されていることから、花粉側因 子もS-RNase遺伝子近傍にコ-ドされていると考えられる。そこで、 S-RNase遺伝子周辺 の塩基配列を決定することで、花粉側因子の検出・同定を試みたoニホンナシ島ホモ個体か らゲノムDNAを調製し、入DAS=IIに挿入したゲノムライブラリ-を作製したo S31RNase 遺伝子の-部をプローブにゲノムライブラリ-のスクリ-ニングを行ったところ、約20 kb のDNAフラグメントが挿入されたボジテイブクロ-ンを得たoこのDNAフラグメントの 全塩基配列を決定したところ, GENSCANプログラムによりS3-RNase遺伝子を含む5種 類の遺伝子(PP-1-PP-5)の存在が示唆されたoしかし、このDNAフラグメントのほぼ 全域を覆う8種類のDNA断片をPCRで増幅し、それらをプローブにして花粉ト-タルRNA に対してノ-ザンブロツト分析を行ったところ、花粉特異的に発現している遺伝子は得られ ず、花粉側S遺伝子がこのDNAフラグメントの領域外に存在することを示唆したo ( 3) S-RNaseとの相互作用を指標とした花粉側5遭伝子産物の探索 花粉側因子はS-RNaseと相互作用すると考えられるため、花粉(管)可溶性画分、膜画分、 および花粉管から分泌される画分に対して、 S3-RNaseをリガンドとした様々なafBrdty cI廿OmatOgraphyを行った。まず, glutathone-5>transferaseとS3-RNaseの融合蛋白質 (GSTIS3-RNase)をリガンドとしたglutathoneカラムでafBrdty chomatographyを 行った。複数の相互作用物質の存在が示唆されたが,いずれもGSr-S3-RNaseのS3-RNase 部分に特異的に結合するものではなかったoこれは作製した融合蛋白質内ではS3-RNase部 分が正しくfo此1gしていなかったためと判断した.そこで次に、精製したS3-RNaseのア ミノ基と樹脂のカルボキシル基を直按結合させたafBrityカラムを作製し、相互作用する花 粉蛋白質を探索したが、見出されなかったo S3-RNaseの=VやPS領域に多くのリジンが 存在し、その側鎖が分子表面に露出しているため,側鎖のe-アミノ基を介して樹脂と鰐合し たために、 S3-RNaseが花粉側因子と結合できなくなってしまった可能性が推測されたo そこで、括性部位や認識吾陀から遠く離れた位置にある糖鎖に着目したS3-RNaseの新た な標識法を開発した.まず、糖鎖を過ヨウ素酸酎ヒし、生成したアルデヒド基にビオチンヒ ドラジドリンカーを反応させ、最後に水素化シアノホウ素ナトリウムで還元することで、糖 鎖をビオチン化した.ビオチン化されたS3-RNaseはSoftLinkTM Soft Release AvidinResin -20- によるアフィニティークロマトグラフィーで精製したoこのビオチン化S3−R随seは」ntact なS3−R随seとはぼ同じR陥se活性を有し、次項(4)で述べるhl尭m花粉管伸長阻害 実験系においても伸長阻害活性を示したことから、S−RNaseとしての活性を保持しているこ とが期待された0そこで、このビオチン化S3−RNaseをアピジンビーズに結合させ、これを 血豆加花粉管伸長阻害実験で伸長阻害を起こした花粉管の抽出液に加え、遠心によりアピ ジンビーズを回収して、S3−R他seと結合する蛋白質を捕捉した。アピジンビーズのみで回 収された蛋白質をコントロールとしてSDS−PAGEにより比較分析したところ、S3−RNase と特異的に結合していると考えられる3つの蛋白質バンドが検出された。現在、これらの蛋 白質の実体をプロテオミクスの手法を用いて解析中である。 (4)血勇知花粉管伸長阻害実験系の確立 配偶体型自家不和合性の研究は、ナス科、バラ科やゴマノハグサ科を中心に進められ花 粉側因子がRNaseインヒビターであるとするインヒビター説とS−R随seの取り込みに関与 するレセプターであるとするレセプター説が唱えられてきた。しかし、近年、キンギョソウ (ゴマノハグサ科)やウメ、アーモンド(バラ科)においてFqb(Ⅸ遺伝子がS−R陥se遺伝 子近傍に存在し、5遺伝子型に対応する多型を有していることが明らかなり、トb∝タンパ ク質が関与するユビキチンープロテアソームシステムによるタンパク質分解が配偶体型自家 不和合性の本質である可能性が示唆された0しかし、FLboxタンパク質がS−R陥seと相互 作用する花粉側因子であるという直接的証拠は得られておらず、配偶体型自家不和合性とユ ビキチンープロテアソームシステムの関係についても依然曖昧である。そこで研究では、 S−RNaseおよびF−b皿タンパク質の花粉管伸長阻害時における挙動を追跡するために、h Ⅵ勉℃における花粉管伸長阻害実験系の確立を行った。 ニホンナシ花粉を液体培地中で花粉管を発芽させた後、培地に精製したS−R陥seを添加 してハンギングドロップ法により花粉管伸長を観察した。培地の組成およびS−RNaseの濃 度を種々検討した結果、(RNaseTち,fNaseA,nOn−S−R陥seでは花粉管伸長阻害は見られ ないのに対し)S−R陥se甲濃度が1.6mg/血以上あれば再現性よく花粉管伸長阻害が起こ ることが判明した。しかし、この実験系ではS遺伝子型に関係なく花粉管伸長阻害が起こり、 5遺伝子型特異的花粉管伸長阻害を起こす要因を見い出すことが今後の研究課題である。 (5)S−RNaseのrRNA分解活性と花粉管内動態解析 花粉管伸長阻害機構として提唱された“S−R恥seによるrRNA分解説”を血t4tmの系 で検証した0超遠心法によりニホンナシ‘長十郎,(盟ぷ)花粉からリボソームを精製して 3種類のS−R他se(S3・洪,茄)およびnon−S−R陥seによる分解活性を測定し、S−R随se が5遺伝子型に関係なくhtactなリボソームの頭mAを分解できることを実証した。しかし、 S−RNaseと同じ雌しべ花柱に局在するnon−S−RNase(non−S−RNaseの存在量はS−R陥se の約30%)のはうがS−R随seより約50倍も高いrRNA分解活性を示した。このことは、 non−S−RNaseに比べてS−R随seが選択的に花粉管内に取り込まれるか、花粉管内に non−S−RNaseの活性を強く阻害するインヒビターが存在するなどの仮説を考えないと説明 できない。 そこで、(4)で確立した血ル兜町花粉管伸長阻害実験系を用いて花粉管伸長阻害時におけ るS−R阻seの動態を追跡した0まず、fNase−ちとS3−fNaseをFrICでラベルし、量ホモ −21− 花粉の花粉管伸長阻害活性を測定したところ、FTrC−RNaseTちでは花粉管伸長が阻害されな かったが、FrrC−S3−RNaseでは1・6mg/miの濃度で花粉管伸長阻害が観察された0このこ とは、mラベルの花粉管伸長阻害活性に及ぼす影響が殆どないことを示している0そこ で次に、共焦点蛍光顕微鏡を用いてFTIC−RNaseT2とFrIC−S3−RNaseの挙動を追跡したo RNaseTちは花粉管の細胞壁に吸着されず、また花粉管内にもほとんど侵入することができな かった。一方、S3−RNaseは花粉管の細胞壁にかなりの量が吸着し、また花粉管内にも侵入 し、その局在は花粉管内全体に及んでした。このことは、huらがイムノゴールド法により s−RNaseが花粉管のチップ部分に蓄積されるとした報告と若干異なっている0同様の実験を FTm−S3一肌aseと量ホモ花粉に対して行ったところ、1・6mg/miの濃度で花粉管伸長阻 害が観察されたが、FTIC−S3−RNaseの花粉管細胞壁に吸着される量と花粉管内に侵入する 量は、ともに量ホモ花粉よりも少ないことが判明した0このことが、血=痢のでの5遺伝子 型特異的な花粉管伸長阻害と関係があるかどうかを今後慎重に検討していきたい。 血血で自家不和合性反応を起こした花粉管は、その先端が異常に掛閏し、破裂してい るものも観測されている。また、ケシ科植物では不和合性反応によりアクチンの異常重合と それに続く脱重合が観察されている。しかし、我々の加ゎ如実験系では、花粉管伸長阻害 時における花粉管先端部分の異常形態や、アクチンの異常重合と脱重合は観察されなかった (アクチンを蛍光ラベルして共焦点蛍光顕微鏡で観察した)0このような血血と加ゎ加 での形態の相違の原因を今後慎重に検討していく予定である。 (6)花粉管伸長阻害時に発現しているタンパク質の解析 (4)で確立した実験系を用いて、花粉管伸長阻害時に特異的に発現しているタンパク質 ぉよびS−RNaseの構造変化を解析した。S−RNaseの添加により花粉管伸長阻害した花粉管 を集め、粉砕後、タンパク質を抽出して二次元電気泳動で分離し、ネガティブ染色によりタ ンパク質を染色した。その結果、花粉管伸長阻害時に特異的に発現している数十種類のタン パク質が検出され、そのうち18種類のスポットに対してプロテインシークエンサーでN末 端アミノ酸配列を決定したが、FIxⅨタンパク質と類似の配列をもつタンパク質は検出され なかった。残りのスポットは微量であるかN末端が修飾されているためにプロテインシーク ェンサーでの解析が不可能であった。現在、これらのスポットについて質量分析計による解 析を進めている。 上記の実験により二次元電気泳動ゲル中にS−RNaseが検出され、花粉管伸長阻害時に s−RNaseが花粉管内に取り込まれることがさらに明らかになった0しかし、花粉管内に取り 込まれたS−RNaseは何らかの修飾を受け、等電点は変わらず分子量のみ大きくなったもの から、分子量は封ヒせず等電点のみ酸性に射ヒしたものまで複数のS−RNaseスポットとし て検出された(S−fNaseの抗体と反応)0さらに、S∼RNase添加から12時間経過した時 の二次元電気泳動ゲル中のS−RNaseスポットはすべて消失しており、花粉管内に取り込ま れたS−RNaseの分解が示された。また、このようなS−RNaseの分解は花粉管内に取り込ま れたS−RNaseだけでなく、花粉管伸長培地に存在するS−RNaseにも観察された0さらに、 s−RNaseの代わりに血豆tm花粉管伸長阻害実験系にRNase℃やRNaseAを添加しても、 RNase自身の分解は観察されなかった0以上の結果は、S−RNaseを積極的に修飾・分解す るシステムが花粉管内に存在していることを示唆している0今後、質量分析計を用いて s−RNaseの修飾残基を明らかにしていく予定である0 −22− 卜」← J 「、・ 発表論文リスト (植物種別) く′ ヽ ヽノ ■ ■・⊃・≠l仰棚・岬r÷岬≠■!・;て−・・】1−I・−=帆IⅧ・・・∬・1ⅦJ珊咋・‥叫叫・■札・・肝 臓竿醜画廠輌痴壷扁痴油壷ぬふ赤緑靂毒㌫靂ふ㌫㌫㌫㌫㌫㌫ふ㌫ふ豪㌫読定義遠忌誌這這這這這蕊志志よ法定嘉志志蕊よよよよ云よ 発表論文リスト アブラナ科植物の自家不和合性 11 Suzuki, G・, Kai, N・, Hirose, T・, Fukui, K・, Nishio, T・, Takayama, S・, isg如A, Watanab旦 吐, and Hinata, K・ (1999). 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