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スポーツ選手における日常的トレーニングが味覚に及ぼす影響

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スポーツ選手における日常的トレーニングが味覚に及ぼす影響
Shidax Research Vol.2 (2002)
スポーツ選手における日常的トレーニングが味覚に及ぼす影響について
因*1,西村佐喜子*1,小清水孝子*2,古泉佳代*2,高橋律子*2
*1
日本女子体育大学,*2 同・大学院
Effects of daily sport training on the sensitivity of taste in female collegiate students.
川野
Yukari Kawano,Sakiko Nishimura,Takako Koshimizu,Kayo Koizumi,Noriko Takahashi
Laboratory of Sports Nutrition, Japan Women's College of Physical Education
This study was undertaken to explore the relation among dietary intakes, a daily training and the sense of taste
for female collegiate students. The subjects were consisted from football(n=8),volleyball for 6 ( group A, n=11) and 9
players ( group B, n=24), and non-athletes (n=13). Following results were obtained:
1. Mean height and weight were the highest in volleyball for 6 players and the lowest in football players. Body fat
ratio was the lowest in football players.
2.Dairy energy intakes were lower than dairy energy expenditure in all 4groups. Most of the nutrient intakes were
the lowest in volleyball for 9 players than those in the other groups.
3. Depression-Dejection scores of Profile of Mood States (POMS) were the lowest in volleyball for 6 players. Vigor
scores of POMS were the highest in volleyball for 6 players, and the lowest in football players. All of the
Tension-Anxiety, Anger-Hostility, Fatigue and Confusion scores were lower in football players and volleyball for
6 players, and the highest in volleyball for 9 players.
4.A single shuttle running and/or a daily training program around 3.5 hours induced much more sensitive for the
sweet, salty and sour taste.
Based on these results, it was suggested that daily nutrient intakes and/or daily training affect the sensitivity
for taste; taste of sweet.
Shidax Research vol.2 10∼15 (2002)
Key Word: daily sport training , sensivity of taste , female collegiate students
緒
言
ばしば重篤な栄養素摂取不足を招来する危険性 2)が報告
された。このように味覚に対する反応性の低下は,日常
スポーツ活動を支える食生活のあり方を検討するに当
食生活に直接または間接的に影響し,各種の疾病を発現
させる危険性 2)がある。
たり,練習の前後の味覚変動を明らかにすることは,選
手の日常食生活における食品摂取の偏りを把握し,献立
ところが,スポーツ選手を対象とした味覚調査の報告
例はあまりみられない。
作成面での注意点を喚起する意味から重要と考える。
味覚は食べ物をおいしく食べるだけでなく,危険物へ
そこで,今回,われわれはサッカー選手及びバスケッ
の自己防衛機構として,生きることに深く関わる,重要
トボール選手を対象に,一過性および日常練習という 2
な役割
1)
を持つと考えられている。近年,若年者を中心
種類の運動負荷前後の味覚状態を水と違うと認識した点
に多発する味覚の低下が明らかになり,ペットボトル症
(認知濃度)と,明らかな味を同定できた濃度(同定濃度),
候群と総称されるまでの社会問題となった。一方,高齢
それぞれについて調査した。その結果,興味ある知見が
者の味覚変動は,加齢退化と軽視されがちであるが,し
得られたので報告する。
キーワード:日常スポーツトレーニング、味覚、女子大学生
(連絡先:〒157-8565
東京都世田谷区北烏山 8-19-1
日本女子体育大学体育学部運動科学科スポーツ科学専攻
10
Shidax Research Vol.2 (2002)
方
法
に記入し,RMR を用いて 1 日の消費エネルギー量を計算
により求めた。用いた基礎代謝基準値は 0.023kcal
1.対象者の特性
/kg/min,一日の消費エネルギー量は A=0.9×Bm×Tb×
W+Σ(RMR+1.2)×Ta×Bm×W の計算式により求めた。
対象者は全て大学女子学生。年齢 18 歳から 22 歳。
非運動群
ール部選手
13 名,サッカー選手
③アンケート調査:身長,体重,月経発現状況,生活状
8 名,9 人制バレーボ
況,運動暦と過去における減量状況について自己記入
24 名,および,6 人制バレーボール部選手
した。また,練習前後の選手の心理状態を把握するこ
11 名。
とを目的に Profile
of
Mood
States テスト(以下,
4)
POMS:金子書房発行 )を実施した。
④味覚検査 5):「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うまみ」の 5
2)調査日
味について,明らかに水と違うと判定した濃度(以下,
認知濃度),および,明らかな味と同定した濃度(以下,
平成 13 年 8 月及び 9 月。サッカー部は速度漸増性の 30
mシャトルラン(一過性運動)を,バレーボール群は通常
同定濃度)について,練習前と練習後 10 分以内に一定
練習(日常運動)を対象の運動負荷とした。
量を口にふくんで判断するよう指示をした。甘味は
0.15%から 2.0%濃度のショ糖液を,塩味については
サッカー部の一過性運動負荷は環境温として,乾球温
27.3 度,湿度 42.0%で実施し,選手は 84±10 本,565±
0.05%から 0.8%濃度の食塩液,酸味については
60 秒間で疲労した。
0.003%から 0.035%濃度の酢酸溶液,苦味については
一方,バレーボール群は 6 人制,9 人制ともに日常練習
0.000125%から 0.001%濃度の塩酸キニーネ溶液,うま
時間として 3 時間 30 分であった。体育館の環境温は乾球
みについては 0.01%から 0.05%濃度のグルタミン酸ナ
温 27.5 度から 32.3 度,黒球温 28.4 度から 33.0 度,WBGT
トリウム溶液を調整した。対象者は調査期間中,互い
値は 26.1 度から 29.0 度であり,いずれも練習中に上昇
に相談することを禁じた。
していた。
いずれの味覚実験・調査は乾球温 20℃,湿度 45-50%環
境下で実施し,調査に用いた各水温は 5−10℃とした。
結果
3)調査項目
1.対象者の特性
考察
対象選手の身長と体重は表 1 に示したとおりであり,
①食物摂取頻度調査法による栄養素等摂取状況の把握:
平均体脂肪率はサッカー選手で 17.6%,バレーボール選
吉村らにより開発された食物摂取頻度調査票「エクセル
栄養君
及び
3)
FFQg」 を用いて,最近1∼2週間の食物摂
手で 26-27%であった。競技暦はサッカー選手が 4.1 年で
取状況から,1日あたりの栄養素等摂取量を把握した。
あるのに対し,バレーボール 6 人制群が 11.6 年と最も長
②生活時間調査:練習日当日の生活時間を5分毎に記録
かった(p<0.05)。
用
表1
紙
所属クラブ群
対象者の特性
(n)
身長(cm)
体重(kg)
BMI
体脂肪率(%)
無所属群
(13)
161.1 ± 4.3
(154-168)
54.1 ± 6.7
(46.4-65.0)
20.7 ± 2.0
(16.9-24.6)
24.1 ± 3.4
(16.1-29.4)
サッカー
(8)
158.3 ± 4.1
(149-163)
54.2 ± 4.9
(45.4-63.0)
21.6 ± 1.2
(20.3-23.7)
17.6 ± 2.2
(14.0-20.0)
4.1 ± 2.1
(0.6-5.8)
バレー6 人制
(11)
169.6 ± 5.0
(161-181)
62.2 ± 5.8
(54.4-73.4)
21.6 ± 1.9
(19.0-25.4)
19.8 ± 2.7
(16.7-24.2)
11.6 ± 2.1
(7.4-14.4)
バレー9 人制
(24)
163.4 ± 4.6
(153-170)
59.3 ± 6.0
(47.6-68.0)
22.2 ± 2.0
(19.0-25.9)
19.9 ± 2.9
(16.4-28.4)
9.2 ± 2.3
(3.3-12.3)
11
競技暦(年)
Shidax Research Vol.2 (2002)
サッカー部では大学に入学後に競技をはじめた選手が
歳代女性と比べてもほぼ同量しか摂取できていなかった。
多いのに対して,バレーボールは小学生頃からはじめた
そして,エネルギーと栄養素摂取量に個人間変動も大き
選手も見られた。バレーボールが瞬発力と持久力が求め
く見られた。
られるのに対して,サッカーは持久力の大小が競技に直
食品群別摂取状況は(表 3),米類が 1 日 100g,肉類・
接的であることから,今回の競技間における体脂肪率の
魚類がそれぞれ 30g 弱,牛乳が 100ml,緑黄色野菜類が
差は興味ある知見である。選手の居住状況は 1/3 が自宅
50g 弱,その他野菜類が 60g前後であった。これらは厚
通学生,2/3 が一人暮らし生であった。
生労働省が健康の保持・増進のために定めた一日の食品
今回対象となった選手はそれぞれ,サッカー部が大
群別摂取目標量の約半量であった。食品をとっていない
学選手権準優勝チーム,6 人制バレーボール部は大学日本
ことが明らかになった。
を制覇した実力を持つ,国内最強チームに所属する学生
一人暮らし生は練習が終わって食事を作り,ひとりで
たちである。
食べるのがわびしいと回答し,食事を作るくらいであれ
ば,その時間だけ寝たいと答えていた。食事は家族や誰
2.食物摂取状況の比較
かがそばに居て,一緒に食べるから楽しく,美味しく,
作りたくなるのかもしれない。決して彼女達は食事づく
大学選手のエネルギーはじめ栄養素摂取量不足が指摘
りができないわけでなく,むしろ,食べることにはかな
されているが,今回の調査結果を見ても,消費エネルギ
りの執着を持っていることもある。このように考えると,
ー量に対して摂取エネルギー量が 500kcal から 1300kcal
大学女子選手の食事づくりには食べる環境づくりととも
と大幅な低値を示した(表 2)。学生選手の体重変動を尋ね
に,食事を楽しんでくれる友達が大切かもしれなかった。
たところ,「最近,体重は大幅に変化していない。」と答
エネルギー摂取量が多くの栄養素摂取量と相関するこ
えていたことから,今回の結果では用いた計算式で対応
とはよく知られた事実であるが,今回の調査結果を見て
できない,消費エネルギーの過大評価と摂取エネルギー
も,6人制群に比べて9人制群ではエネルギーはじめ多
の過小評価が起きている可能性が考えられる。特に,サ
くの栄養素摂取量が低下していた。夜の食事づくりがお
ッカー選手で 1000kcal,バレーボール 6 人制群で
ろそかになり,コンビニ生活を続ける選手たちに,朝食
1300kcal,9 人制群で 1100kcal と,エネルギー出納に差
を抜く回数が多いことはすでに明らかになっている。女
が見られた。たんぱく質はじめ多くの栄養素摂取量も 20
子学生選手の多くに栄養素摂取量が不足する背景として
表2
エネルギー消費量
(kcal)
<栄養素等摂取量>
エネルギー(kcal)
たんぱく質(g)
脂 質 (g)
炭水化物 (g)
カルシウム(mg)
鉄 (mg)
ビタミンA (μgRE)
ビタミンB1(mg)
ビタミンB2(mg)
ビタミンC (mg)
亜鉛 (mg)
栄養素等摂取量及び推定エネルギー消費量の比較
無所属
サッカー
バレー6人制
バレー9人制
(13)
(8)
(11)
(24)
2173 ±
1604 ±
58 ±
49 ±
228 ±
537 ±
8.6 ±
612 ±
0.77 ±
1.04 ±
95.2 ±
5.33 ±
361
2706 ±
704
3251 ±
299
2572 ±
302
253 1748 ± 316 1976 ± 402 1477 ± 527
14
60 ± 14
65 ± 16
47 ± 18
9
56 ± 14
67 ± 14
46 ± 19
43 248 ± 40 275 ± 59 212 ± 82
192 655 ± 208 641 ± 149 467 ± 279
2.0
8.2 ± 2.3
9.3 ± 2.4
6.8 ± 2.5
21 735 ± 1006 682 ± 562 741 ± 573
0.11 0.83 ± 0.24 0.84 ± 0.20 0.95 ± 1.51
0.04 1.21 ± 0.30 1.46 ± 0.95 1.43 ± 1.85
38 87.0 ± 44.0 234 ± 102 198 ± 321
0.41 6.60 ± 3.00 7.74 ± 2.27 5.54 ± 2.78
12
Shidax Research Vol.2 (2002)
表3
食品群別摂取状況
無所属
サッカー
バレー6人制
バレー9人制
(13)
(8)
(11)
(24)
米類(g)
100.7 ± 43.2
97.5 ± 31.0 110.6 ± 50.3
80.3 ± 44.1
肉類(g)
23.1 ± 16.5
54.3 ± 32.9
34.4 ± 14.2
21.4 ± 12.3
魚類(g)
51.4 ± 34.0
32.1 ± 16.1
34.3 ± 32.4
28.3 ± 22.5
牛乳(g)
116 ± 125
252 ± 153
アイスクリーム類(g)
20.2 ± 19.2
海藻類(g)
小魚類(g)
93 ±
60
84 ± 161
24.6 ± 23.2
77.7 ± 28.5
41.8 ± 32.1
2.5 ± 2.0
1.1 ± 1.4
0.9 ± 0.8
0.6 ±
0.7
2.6 ± 3.7
1.4 ± 1.7
1.4 ± 2.2
0.9 ±
2.4
緑黄色野菜類(g)
48.9 ± 28.9
50.5 ± 30.3
40.9 ± 31.2
32.4 ± 24.2
その他野菜類(g)
102.0 ± 59.4
59.8 ± 55.7
73.4 ± 47.7
62.5 ± 45.0
は,コンビニ生活と朝食の欠食,また,簡便な昼食(おに
が最も低値を示した(p<0.05)。シャトルランは運動能力
ぎりとお茶,パンとお茶など)といった生活状況に加え,
の指標として日常的によく用いられている選手にとって
学生ということから来る「経済的負担感」の大小も関係す
は約 10 分間の短い時間とはいえ,全力を出して,今現在
るかもしれなかった。
の走能力を評価されることがかなりの負担・苦痛におも
われ,結果的に運動負荷前の活気得点を低下させた可能
3.実験当日の心理状態
性が考えられる。
4.味覚調査
実験当日の心理状態について POMS 調査用紙を用いて調
べた結果(表 4),緊張・不安得点はバレーボール 9 人制群
が高く,実験を前にやや緊張気味な様子が伺えた。抑う
サッカー選手群で特に,いろいろな味を高濃度におい
つや落ち込みは 6 人制群が他の群よりの有意に低値を示
ても認識・同定できないことが明らかになった。図 1 に甘
した(p<0.05)。怒り・敵意得点は 9 人制群が他チームに比
みに対する反応性をまとめた。運動負荷前のサッカー選
べて高値を示した(p<0.05)。活気得点はサッカー選手群
手群は他の選手群と比べて,旨み,甘み,塩味,酸味を
表4
緊張・不安
抑うつ・落ち込み
怒り・敵意
活気
疲労
混乱
選手の心理状態
無所属
サッカー
バレー6人制
バレー9人制
(13)
(8)
(11)
(24)
10.5 ±6.7
12.1 ±8.8
9.4 ±7.8
13.7 ±7.1
9.2 ±6.6
8.5 ±4.0
12.8 ±3.9
14.6 ±6.4
8.0 ±4.3
9.9 ±7.2*
8.8 ±4.1
8.8 ±4.4
11.5 ± 3.8
8.4 ± 5.5*
7.4 ± 4.9
16.8 ± 5.8*
7.1 ± 4.4
8.7 ± 2.8
15.1 ±5.2*
18.0 ±9.2*
13.1 ±8.2*
13.5 ±6.0
12.2 ±7.0*
10.3 ±4.5
*: その他のチームと比較して有意な差を認めた(p<0.05)。
13
Shidax Research Vol.2 (2002)
認識・同定できていなかった。味覚の反応性に精神的な影
練習によって消費されたエネルギーや塩分の不足を補う
6)
ことが報告されていることから,サッカー
ための何らかの調節機構が働いている可能性が考えられ
選手群における味覚の落ち込みは精神的な問題が関係す
た。そして,このような結果は,練習で失われた糖分・
る可能性も考えられるが,今回は充分な結果が得られな
塩分をより直接的に補充することに効果的に働くのかも
かった。この点については,更に検討する必要がある。
しれなかった。
響を受ける
サッカー選手群はバレーボール 6 人制群と同じくらいに
練習後にどんな味のものを食べたいかを尋ねたところ,
エネルギーおよび栄養素を食べていたことから,食事摂
サッカー選手群は 87%が甘いもの,50%がすっぱいもの
取に問題がある可能性はあまり考えられなかった。
と回答していた。この値は 6 人制群(18%,36%)や 9
つぎに,運動前後の影響についても検討をしたところ,
人制群(37%,4.2%)と比較しても高値であった。サッカ
シャトルランを実施したサッカー選手群の場合も,3 時間
ー選手群では,練習前の甘みに対する感受性が低いもの
半に及ぶバレーボール 6 人制,9 人制群の通常練習(準備
の,練習後は甘みに対する感受性が高まることと,甘み
期・専門的トレーニング)後も,甘み,塩味,旨み,酸味のい
に対する要求が高まっていたこととはよく対応していた。
ずれも共通して,同定濃度が低下していた(表 5)。この結
この背景に,普段から,甘み(炭水化物)を積極的に摂取
果はどんな運動も練習後は,練習前に比べてより低濃度
でできていない状況にあるのかもしれなかった。
で味を特定できることを示している。すなわち,このこ
今回の結果から,サッカー選手群の身体がエネルギー
とは薄味でも何味かが同定できることを意味しており,
源である炭水化物を要求した結果,練習前は甘み感受性
表5
五味に対する正答率の群別比較及び練習の効果
サッカー群(n=8)
練習前
甘味
塩味
苦味
旨味
酸味
6人制群(n=11)
練習後
38% (1.00%)
63% (0.50%)
100%(6.25x10-4%)
13% (0.05%)
88% (0.015%)
75% (0.75%)
50% (0.40%)
100%(6.25x10-4%)
38% (0.05%)
88% (0.012%)
練習前
100% (1.50%)
100% (0.40%)
90.9%(6.25x10-4%)
100% (0.03%)
100% (0.025%)
9人制群(n=24)
練習後
練習前
100% (1.75%)
100% (0.20%)
100%(6.25x10-4%)
100% (0.02%)
100% (0.02%)
100% (2.00%)
100% (0.50%)
95.0%(7.5x10-4%)
100% (0.05%)
100% (0.015%)
練習後
100% (1.25%)
100% (0.30%)
95.0%(7.5x10-4%)
100% (0.04%)
100% (0.012%)
値は最終正答率(最終濃度)
無所属群
9人制バレー群
正答率(%)
120
6人制バレー群
サッカー群
100
80
60
40
20
0
0.15
0.3
0.45
0.6
0.75
1.0
1.25
甘味濃度(%)
図1
運動前の甘味に対する反応性
14
1.5
1.75
2.0
Shidax Research Vol.2 (2002)
をさげて,甘みが身体に入ることを促したのに対して,
練習後はからだの炭水化物絶対量が不足したために,よ
り積極的に甘みを求めさせたのではないかと考えられた。
一方,6 人制群と 9 人制群を比較した時,6 人制群に比
べて栄養素等摂取状況の不足する 9 人制群で,練習前後
の味・感受性が低いことも明らかになった。また,甘味
に対する反応性がショ糖濃度 1.00%未満群と以上群の2
群に分けて検討した結果,1.00%未満群でエネルギーお
よび栄養素摂取量がより高値を示す 7)ことも明らかにな
ったことから,エネルギーと栄養素の各摂取不足が練習
前や日常生活での味覚感受性低下に関係する可能性が示
唆された。
さらに,スポーツ選手の栄養素等摂取状況の判定指標
のひとつとして,味覚感受性の評価が有用である可能性
が示唆された。
謝
辞
本研究を行うにあたり,快く調査に協力頂きましたN
大学サッカー部及びバレーボール部の選手の皆さんに深
謝申し上げます。尚,本研究の実施には,シダックス研
究機構からの研究助成による支援を頂きました。ここに
その旨を記述し,お礼申し上げます。
文
1)
山本
献
隆:
「おいしい・まずい」と「好き・嫌い」のメ
カニズム,食生活 95:14-19,2001.
2)
堀尾
強:味覚・嗜好はどのように変化するか,食生
活 95:20-25,2001.
3)
高橋啓子,吉村幸雄,開元多恵,國井大輔,小松龍
史,山本茂:栄養素及び食品群別摂取量推定のため
に食品群をベースとした食物摂取頻度調査票の作成
および妥当性,栄養学雑誌
59:221-232,2001.
4)
横山和仁,荒木俊一:日本版 POMS,金子書房
5)
川村一男編:8.感覚に関する実験,解剖生理学実験
(建帛社)111-117,1988.
6)
菅野
廣一:子供の「好き・嫌い」をなくす食環境づ
くり,食生活 95:26-33,2001.
7)
川野因ほか:日常の栄養素等摂取状況,練習が味覚
に及ぼす影響,日本女子体育大学スポーツトレーニ
ングセンター紀要
5:43-46,2002
15
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