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今がある 岡山市小学校長会長 岡山市立中山小学校長 冨山 靖光(PDF
教育研究研修センター 教育研究研修センターだより センターだより 通巻 NO. 193 平成26年2月14日(金)発行 心を揺さぶられ…今がある 岡山市小学校長会長 岡山市立中山小学校長 冨 山 靖 光 「日本のスポーツ界のために貢献する」 これは,私が小学校の卒業文集 に書いた将来の夢です。今のようなスポーツクラブやスイミングスクー ルや体操教室がない時代でしたので,野球・ソフトボール,相撲,水泳, かけっこ,なわとびなど,小学校に入る前から近所のお兄さんたちがや っている運動遊びを見よう見まねで何でも経験しながら大きくなってい きました。特に,ソフトボールが得意で ,「大きくなったらプロ野球選手になるんだ」という当 時の男の子の多くがもっていた憧れを,私も同じようにもっていました。 それが,小学校5年生のとき開催された東京オリンピックをテレビ観戦し(当時は白黒テレビ でしたが ),バレーボール,重量挙げ,体操,マラソン,柔道,レスリング,ボクシングなど, それまで私の身近になかったスポーツで,各選手たちの躍動感溢れる姿を目の当たりにすること になりました。そして,活躍する選手に対する応援で,日本中が盛り上がっている雰囲気を子ど もながらに強く感じ取りました。それからは,小学校の校庭にある平行棒で体操の真似ごとをし たり,棒の両端に重い物を付けて重量挙げの真似をしたり,マラソンをしようと言って学校の周 りを何周も走ったり。テレビ画面を通してですが,東京オリンピックに出場していた一流選手の 格好良さ,言い換えれば本物の素晴らしさに触れ,心を揺さぶられて視野が広がったのだと今に なって思います。それが冒頭の将来の夢に繋がったのでしょう。 残念ながら ,「日本のスポーツ界のために貢献する」という大きな夢は叶いませんでしたが, 子どもの頃のたくさんの運動経験は,担任をした子どもたちと一緒に,本気で体を動かすことに は大いに役立ちました。また,子どもたちに「運動・スポーツって楽しいなあ」と感じさせる授 業づくりを心掛けることにも繋がったように思います。 教師になって数年後の講演会で聞いた,ある体育系大学教授の「一流選手になるために必要な 4つの条件」という話にも心を揺さぶられ,学級経営や授業づくりの基礎として,その後の30 年間の教師人生の礎になりました。 そのとき聞いた「一流選手になるために必要な条件」とは, ①自分の力に合っためあてをもって練習できる。………………【目標設定能力】 ②練習でどれくらい力が付いたかを正しく評価できる。………【自己評価能力】 ③練習に繰り返し取り組むことができる。………………………【行動継続能力】 ④他人と言葉で上手に関われる。……………………【コミュニケーション能力】 の4つです。その教授によれば ,「プロ野球選手の中にも,素質は王選手・長嶋選手と同等以上 のものをもっている者は何人もいるが,どれかが足りないために大成できないで終わるのが本当 に残念なんだ」ということでした。 これらの条件は,運動選手だけでなく,人としての高まりにも通じるものだと感じています。 子どもたちが一流の人間に成長するためにはどれも欠かすことができません。①のめあてが高過 ぎれば嫌になり,逆に低過ぎればすぐにできて面白くないので,どちらも③には繋がりません。 ②ができなければ①にも③にも繋がりません。人は,孤独では③に繋がらないので,④は絶対に 必要になります。ただし,④の他人とは,同級生のレベルに留まらず「関わってくれる大人(野 球選手で言えば監督・コーチやマスコミ,子どもで言えば親や教師など )」との言葉のやり取り を含めることが必要です。その際,子どもからの関わりを引き出すには,教師からの言葉かけは 称賛や感謝・助言などが基本になります。 子どもが元々好きな「体育」を柱の教科に据え,子どもたちの指導・支援に関わることができ たのは,私にとって幸せなことでした。しかし,子どもたちの心を揺さぶることが果たして何回 できただろうかということについては,自信がもてないところです。 私の人生の一つの節目は,小学校5年生で見た東京オリンピックでした。 2020 年には,オリ ンピック・パラリンピックが再び東京で開催されます。6年後の東京オリンピックで,また心を 揺さぶられるようなことに出会えることを今から楽しみにしています。 岡山市小学校長会は,子どもたちのよりよい成長,岡山市の教育の発展に向けて,これからも 行動します。今後とも,岡山市小学校長会をよろしくお願いします。 -1-